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患者の権利と医療情報 (特集 患者の権利と医療情報の提供 : 病院図書室の果たす役割)

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病 院図 書 室 16(2):34−39,1996

特 集 : 患 者 の 権 利と 医 療 情 報の 提 供 一病 院 図 書 室 の 果 た す 役 割

患 者 の 権 利 と 医 療 情 報

H I V 薬 害事 件 か ら H IV ウイ ルスの混入し た輸入 非加熱血液 製 剤を 投与 さ れた多 くの血 友病患 者がHI V ウイル スに感染 させら れたとい う、未曾有 の 薬害 事件 は、医 療情報を患 者か ら隠すこ とが い かに重大 な人 権侵害であ るかを 、まざ まざ と見せつ け たものでし た。 血友 病患者 たちは 早 くか ら非加熱 血液製 剤の危 険を おそ れ、 繰 り 返し主 治 医にそのこ とを 尋 ねてい たのに、 正 しい 情 報 は隠 蔽さ れ 、安 全 で あ る とい う 誤った 評価 の下に、 血液製剤 は使わ れ続け、 被害者を 増 やしてい きまし た。 当時 の厚生 省内部 の資料 が一 部開示 される などす る中で 、情報公 開の重 要性、 憲法の保 障す る 「知 る 権利」、 そし て医 療 におけ る患 者の情 報を受 ける権利 の大 切さが、 いっそう 強調さ れる ようにな って きました。 正しい情 報が、 少な くと も「安 全であ る」 という誤 っ た評 価を 冠 した もので はな い情報 が、患者 に 伝え られて いれば、 被害 はずっと抑 えら れた はずで す。 と ころで 「患者 の権利」 とい うとすぐ 「イ ンフ ォームド・ コンセ ント」が取 り上げ られ ます が、 これ は、 十分な情 報を与 えられ た上 で の患者 によ る自由な意思 決定で すか ら、 ま さ に「情 報に対 する権利 」です。 よく耳 にす る言 葉で すが、 ここで はその成 り立ち からた ど って みます。 く ぼ い せ っ : 弁 護 士 九 州 合 同 法 律 事 務 所 34 2

久 保 井

イ ンフ ォームド・ コンセントの歴 史 「患 者の権利 」とい う概念 は、 まず実 験的 医療 の分野で 認めら れるよう にな った もので す。第 二次世 界大戦中 の ナチスによる人 体実 験を裁 いたニ ュル ンベル ク裁判で のニ ュルン ベ ルク綱領(1947年) は、実 験的 医療 にお い て は被験者 となる患者 の自由な同 意が必 要不 可欠で あ ることを宣 言し まし た。1964年 世界 医 師会総会 で採択さ れたヘ ルシンキ宣言 は、 こ の法理を 進め、 「被験者 となる人は、 その 研 究の目 的、方法、 予想さ れる利益と、 研究 が もた らすか も知 れない危 険性及び不 快さ に つ いて十 分知らさ れなけ ればならない ・・研 究 に参加 しない 自由を持 ち、参加して いて も いつ で もその同 意を 撤回 する自由があ るこ と を 知らさ れなけ ればな らない」と定め まし た。 ナチスの残虐 行為、更 にその後 の医 療の発 展の中で の実 験的医療 における被 験者 の非人 道的な 扱いが明 らか になったこと は、 それ ま で 聖 域におか れてい た医師の信 頼性を 大 きく 揺 るが す出来 事でし た。実験的医療 の危 険性 が指摘 され、 患者 の意思を尊重し なければ な らない とい う原理が 認められ るよ うにな った ので す。 つ いで、1950年代 から アメリカで医師 の説 明義 務違反を 認め る数 々の判決( 血管造影 検 査 に 伴 う危 険 につ いて あ ら かじ め 説明 し な か ったこ とが医 師の過失 に当 たるとい う判断 を示 した 判決を 唱矢とし ます)がなさ れ、19 60年代 になると国 際的な消 費者運動が展 開さ れ、とり わけ アメリカで は女 性の権利 や各種

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マイノ リテ ィーの権利 に関す る市民 権運 動の 中で 、医療消 費者として の患者 の権利の 確立 を求 める運動が 高まって いき ました。こ うし て 「患者の権利 」は日常 診療 の場 で も受 け入 れられるよう になりま した。 そのような流 れを受け て、1981年 に開 催さ れた第34回世 界医 師会総 会 は患 者の権利 に関 す るリ スボン宣 言を採択 し、医 療全般 につ い て、 患者の自 己決定と不可 侵性を 尊重し なけ ればならない こと、医療 は可能 な限り患 者と の合 意によりな される べきであ ることを 明ら か にしました。 こうして国 際的に宣言 された 患者の権利 の 法 理 は、 各 国 の法 律 に も明 記 さ れ るよ う に な っています。 スウェ ーデ ンを はじ めとす る北欧の医 療に 関 する法律に は患者によ る医療 の形成過 程へ の参 加が規定さ れてい ます。 また、国連総 会 は1991年12月 に決議した 「精神病 者の保 護及 び精 神保健 ケア改善のた めの原 則」の中で、 精神医 療において も患者 の意思が 尊重さ れな け ればならない ことを明 らか にしました。 こ れ は、 イ ンフ ォームド・ コ ンセントを「威 嚇 又 は不当な誘導な しに、患 者が理 解でき る方 法及 び言語により 、適当で 理解で きる以下 の 情報( 診断結果、 治療目 的と予測で きる利益 ・不利 益、他の治 療方法な ど)を 患者に適切 に 説明 し た後 に、 自 由 に行 わ れ る同 意 をい う。」 と定義 して いま す。1994年 3月 には W H Oヨ ーロッパ会議 が 「ヨ ーロ ッパ の患者 の 権利 」という宣言を 発表し ました。 これ は、 それ まで 数年にわ たって実 施さ れたヨ ーロ ッ パ各国 における患者 の権利 の状況、 特に立法 や権利 擁護シ ステ ムに関す る調査研 究を踏ま え 、 今 後あ るべ き 患者 の権 利 とい う 視点 に 立って 宣言された ものです。 その内 容は自己 決定 権 を中 心 と し て一 層 深 め ら れた もの に なって います。 先に 述べたリ スボン宣言 は、患者 の権利に つ いて、 概括的に 6項目( 医師を選 ぶ権利、 外部か らの干 渉を受 けない 医師の診療を 受け る権利、 インフ ォームド・ コンセ ント、秘密 病 院 図 書 室 Vol.16 No.2,1996 保持の 権利、 尊厳を もって死を 迎え る権利、 宗教的 権利)を 宣言 したに過 ぎない ものでし たが、 世界医 師会 は1995年 9月 バ リ島で 開催 され た第47回 世界医師 会総会 にお いて、 これ を 全面 的に改訂 しま した。そ こで は、11項目 にわ たって、 かなり詳 細に患 者の権利を 規定 してい ます。 先述の WH Oヨ ーロ ッパ会議の 宣言 に沿っ た内容と なってい るのです。 その 規定し てい る11項目 は次の通りで す。 O )良 質の医 療を 受 ける権利 ( 2)選 択の自 由の権利 ( 3)自 己決定 の権利 ( 4)意 識不明 の患者 の場 合に関 する原 則 ( 5)法 的に無 能力な患 者に関 する原則 ( 6)患 者の意思 に反 する行為 に関す る原則 ( 7)情 報に対 する権利 ( 8)秘 密保持 の権利 ( 9)保 健教育を受 け る権利 (10)尊 厳の権利 (H)宗 教的な援 助を受 ける権利 中で も「情 報に対 する権利 」(Rightto information) につ いて別 項を 設け て明 確に 認めて いるこ とは、 この間の患 者の権利 概念 の発展を 示す ものとして 注目さ れます。 3。情 報に対 する権利 イ ンフ ォームド・ コンセ ントは直訳 すれば 情報を 提供さ れた上で の同意で すから、 言葉 上 はど うして も受 動的な 意味合いを 払 拭する ことがで きませ ん。 まして、医療 行為 におい て は、一方 は専 門家であ る医師で ある のに対 して、 他方 は疾病を 抱え てい る弱 い立場 の患 者 なので すから、 当然な がら両者 のあい だに は大 き な 隔 たり が あ り ま す。 し か し、 イン フ ォームド・ コンセ ントの基本 にある のは患 者 が医療 の主体で あり、 その患者 の自己 決定 によって医 療がな され るべきだ という発 想で す。 そうす ると、こ こで提 供され るべき情 報は、 患者 が 自己決定す るため に必要な質 と量を 備 えて いなけ ればなり ません 。 − 35−

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病 院 図 書 室 Vol.16 No.2,1996 そのため 、 リスボン宣言 は、 まず 、「自己 決定の権利 」 にお いて「患 者は、 自己決定 の 権利 、すな わ ち自己に関す る自 由な決定を す る権利を有 す る。 医師 は患 者に対 して、 その 決定の もたら しうる結果 につい ての情報を 提 供す る」と定 め、これ に対 応す る形で 「情報 に対す る権利 」として、 「患者 は自己 のあら ゆる医 療記 録に記録さ れた自己 に関す る情報 の提 供を受 けるとと もに、 自己の健康状 態に つい て、容 態に関す る医 学的 な事実 も含め完 全 な情 報を 提 供さ れる権 利を 有 する。」と定 めて います 。完全な 情報と は、カ ルテなどに 記 載さ れ たあ ら ゆる情報 ( デ ータ)、 そして 診 療の結果 得ら れた情報で あり、 また、診断 結果 を踏 まえて、医 師が 自分に適 用しよう と して い る医 療処 置は何か、 その処 置によ って もたらさ れう る利 益・不利 益は 何か、そ の処 置でなけ ればど んな処 置を す ることがで きる のか、 また 仮に何の処 置もしな いとす ればど んな 結果が予 測さ れるのか、 といった ことが ら に関する 情報です。 こ うした 情報の提供を受 けて はじ めて 、患 者 は自分に とって何か 最善 の医療であ るかを 吟味 し、選 びとる ことがで きます。 それが自 己決 定とな ります し、自分で よく考え 、納得 した上で受 け入 れた処置であ れば、 後にあ る 程度予測さ れた危 険が現実化 した場 合 も、 そ の結果を受 け とめやすくなり ます。 この自 己決定原 理は、市民 革命以 降 の市民 法を 支え る大切な 原理で す。個人 はそ れぞれ が独立で対 等平 等であり、 個人 の尊厳を 保障 され、幸 福を 追求 する権利 を有 する( 日本国 憲法13条)。 そのよ うに 自 律し た人 格であ る 個人 は自ら 判断し決定 したこ とについて は責 任を引 き受 け る。それが民 主主 義の基 本とな る原理で す。 つまり、患 者の権 利と いえ ど基 礎にあ る ものは基本的人 権であ ると いえ ます。 と ころで 、基本的人 権として の情 報に対す る権利 は、プ ライバ シーの権利 (情 報プ ラ イ バ シ ー権) として捉え るこ とがで きます。こ れは特に 高度 に情 報化 され た現代 社会にお い て は、個人 が人格 的に自律 した ものとして 自 由 に 行 為 す る 上 で 欠 く こ と の で きな い 権 利 で す 。 医 療 に お い て は し ば し ば カ ル テ の 開 示 請 求 権 と し て 取 り 上 げ ら れ て い ま す。 カ ル テ に 記 載 さ れ て い る 内 容 は 、 患 者 の 診 療 に 関 す る 医 療 情 報 で あ り そ の 患 者 の 高 度 に 個 人 的 な 、 し か も コ ン フ ィデ ン シ ャル な 情 報 で す か ら 、 ま さ にプ ラ イ バ シ ー の 権 利 の 概 念 が 妥 当 す る 場 面 な の で す 。 リ ス ボ ン宣 言 は 医 療 記 録 に 対 す る患 者 の 権 利 、 即 ち カ ル テ の 開 示 を 含 め た 医 療 情 報 に 対 す る ア クセ ス 権 を 認 め た も の で す 。 医 療 記 録 の 開 示 を 求 め る 権 利 は 、 1980年 代 か ら ス ウ ェ ー デ ン 、 デ ン マ ー ク な ど の 国 々 に お い て 法 律 に 明 記 さ れ る よ う に な っ て お り 、 そ う し た 立 法 の動 き と 一 致 す る もの で す 。 さ て 、 日 本 で は 、 患 者 の 権 利 は 法 律 上 明 記 さ れ る に は 至 っ て い ま せ ん 。1995年 6月22日 、 厚 生 省 の も と に 設 置 さ れ た イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト の 在 り 方 に 関 す る 検 討 会 が 報 告 書 を 提 出 し ま し た が 、 そ こ で も 法 制 化 につ い て は一 層 の 検 討 が 必 要 で あ る と し て い る に と ど ま り ま す 。 カ ル テ 開 示 に つ い て は 、 よ う や く 最 近 に な っ て 、 カ ル テ の 開 示 を 実 践 し て い る 開 業 医 を 中 心 に 、 カ ル テ 開 示 を 進 め よ う と す る医 師 の 会 が 設 立 さ れ る な ど し て い ま す が 、 多 く の 医 療 機 関 は ま だ ま だ カ ル テ の 開 示 に つ い て は 否 定 的 で す 。 否 定 す る 根 拠 と し て よ く い わ れ る の は 、 カ ル テ は 医 師 の 手 控 え で あ る と か 、 専 門 用 語 で 書 か れ て い た り 医 師 の 主 観 的 な 評 価 が 記 載 し て あ っ た り す る ので そ の ま ま 開 示 す る と 誤 解 を 招 き や す い 、 患 者 に 知 ら せ る べ き で は な い 情 報 ( 告 知 し て い な い 悪 性 疾 患 一 特 に 悪 性 の が ん ーで あ る こ と な ど ) が 記 載 し て あ る お そ れ が あ り 、 そ れを 患 者 に知 ら せ る か ど う か は医 師 の 専 権 に ゆ だ ね ら れ る べ き で あ る、 な ど な ど で す 。 そ う し た 発 想 の 根 底 に は 、 患 者 は 専 門 家 で は な い のだ か ら 、 い く ら 自 分 の こ と だ と 言 っ て も医 療 行 為 に つ い て 最 善 の 判 断 が で き る と は 思 わ れな い 、 専 門 家 で あ る医 師 こ そ が 自 分 の 患 者 に と っ て の 最 善 の 医 療 を 選 択 し う る の − 36−

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だ と い う 考え 方 が あ る よ う に 思 わ れ ま す 。 こ れ は パ タ ーナ リ ズ ム の 発 想 で す 。 こ う し た 考 え 方 はな か な か 根 強 く 、 患 者 が 安 易 な 「 お ま か せ 医 療 」 に 身 を ゆ だ ね が ち な 現 実 と も 相 ま っ て 、 患 者 の 権 利 の 実 現 を 妨 げ る も の に な っ て い ます 。 た だ 、 カ ル テ の 開 示 を 認 め る と し て も、 現 状 で は カ ルテ に 書 か れ て い る 情 報 は そ の ま ま で は 患 者 に は 理 解 不 能 な 場 合 が 多 く 、 自 己 決 定 に 必 要 な 情 報 と し て 十 分 だ と は と て も 言え な い こ と も ま た 事 実 で す 。 こ れ につ い て 、 ス ウ ェ ー デ ン の 医 療 記 録 法 (1985年 ) は 「 保 健 医 療 機 関 に お い て 作 成 さ れ る 記 録 は 、 ス ウ ェ ーデ ン 語 に よ っ て 明 確 に 記 録 さ れ 、 患 者 が 理 解 し や す い よ う に 記 載 さ れ な け れ ば な ら な い 」 と 規 定 し て い ま す 。 リ ス ボ ン 宣 言 で は、 「 情 報 は 、 そ の 地 方 の 文 化 に し た が い 、 患 者 が 理 解で き る よ う な 方 法 で 提 供 さ れ な け れ ば な ら な い 」 と して い ま す 。 ま た 、 カ ル テ 開 示 制 度 を 持 っ て い る 国 や 医 療 機 関 で は 、 そ の ほ と ん ど が カ ル テ 開 示 に あ た っ て は 主 治 医 に よ る 説 明 を 加 え る こ と に し て い ま す が 、 こ れ は正 し い 情 報 を 提 供 す る た め に は 不 可 欠 な こ とで す 。 そ れ に し て も、 医 師 の 説 明 は 必 ず 専 門 用 語 を 使 っ て な さ れ ま す し 、 医 療 現 場 で の 慌 た だ し い や り とり の 中 で そ の ひ とつ ひ と つ に つ い て 十 分 に 理 解 す る ま で に 質 問 し 答 を 求 め る と い う 作 業 は、 実 際 に は な か な か 困 難 で す 。 日 常 医 療 の 場 で の 患 者 に 対 す る 説 明 の 現 状 を 調 査 す る た め、 九 州 弁 護 士 会 連 合 会 が 実 施 し た ア ン ケ ー ト 調 査 に よ る と 、 医 師 の 多 く は 患 者 に 十 分 な 説 明 を し て い る と 答 え て い る の に 対 し 、 患 者 側で は十 分 な 説 明 が な さ れ て い な い と の 回 答 数 が は る か に 多 く な っ て い ま し た 。 こ の 胡 賠 は 、 医 師 に と っ て の 「 十 分 な 説 明 」 が 患 者 に と っ て は 必 ず し もそ う で は な い こ と を 端 的 に 示 す も の で す 。 ま た 、 量 的 に 十 分 な 説 明 が な さ れ た と して も、 医 師 の説 明 は ど う し て も そ の 医 師 の評 価 に よ っ て 修 飾 さ れ る こ と を 避 け ら れ な い も の で す。 説 明 の方 法 に よ っ て は い か よ う にで も 病 院 図 書 室 Vol.16 No.2,1996 患者を 誘導で きる ことに もなりま す。 そ れで は従 来のい わゆる ム ンテ ラと質的 には何 ら変 わり のない ものに なりか ねません。 十分 な説 明を 得 るために は、 患者 自らが能動 的 に医師 と のコ ミュニ ケーショ ンに関 わって い くこと が 必要で す。 4。情 報に対 する権利 を確保 するた めに 情 報に対 する権利を 実効性 ある ものとす る、 すな わち医療 につい て自己 決定す るに十分 な 情報を 得 るため には、医 師の説明を ただ受 け 身 に聞く ので は不十 分で す。 そこで リ スボ ン 宣言 は 「自己決定 の権利 」の項目 に次 のよう に 患者の 自己責任 と もい うべ き事 項を定 めて い ます。 「患者 は、あ らゆ る検査や処 置につい て、 その目的 は何か 、そ の結 果が 何を 意味 する の か 、そ して コンセ ントを 撤回 した場合 いかな る結果が 生じ うるのか について はっ きり と理 解すべ きであ る。」 逆 に言え ば はっきり と理解 しない限 り は処 置を受 け入 れるべきで はない と警鐘を 鳴 らし てい るので す。 中身 のあ る情報を得 るため に は、患 者自身 が納得 のいく まで質問 するこ と が必要 です。 ヨ ーロ ッパや アメリ カの書店 に は患 者の権利 の実践 法につ いて、市民 向け の 解説 書が数多 く置か れてい ますが 、その中 に は インフ ォー ムド・ コ ンセントの ための質 問 項目が 例示 してあり ます。 その ひとつを とっ て みます と、「病名 は ?」に始まり 、医 師の 勧 める治療 法、そ れに伴 う危険、 治療 に要す る期 間、 他に選択 しう る治療法、 その治 療法 と 勧め られてい る治療法 の違い、 治療法 につ いて の医 師の見 解など、 細かく質 問した上 で、 最 後に 次のよう な質問を するこ とを勧 めてい ます。 「こ の 検 査や 治 療 法 に関 して 、 家 に持 ち 帰 って読 める資 料を い ただけ ますか。 ここ に はフ ィルムや 他の資料を 見る ための患者 情報 セ ンターがあり ます か。」 資料を 持ち帰 って 検討す る、それを文 献な 37−

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病 院 図 書 室 Vo.16 No.2,1996 ど の一 般 的な 資料 に照らして検証 するこ と も、 実 のあ る自己決定を するため には必要で す。 検 証の方 法 としては、こ のほか、別 の医 師の 見解を求 め るセカ ンド・ オピニ オ ンの権利が 挙げ られま す。リ スボン宣 言で は、 これにつ い て 「選択 の自由の権利 」として、 「患者 は、 医療 のいか なる段階 にお いて も、別 の医師 の 意見を 聞く 権利を有 する」と定めて います。 し かし、 セカ ンド・ オピニ オンの権利が 保 障さ れてい ると は言え ず、カ ルテや検査フ ィ ル ムの開示 もなさ れていない現 状にあって は、 む しろ、文 献など により患者 自らが医療 情報 にア クセスし、 イ ンフ ォームド・コ ンセント に必要な 情報を 獲得す るこ とが、自己決 定権 を 確保 するた めには重要だ と言えるで しょう。 ところ が、 現実に は患者 が医療に関 する専 門的な 情報 にア クセ スしようとして も、なか なか困 難で す。書店 に並 んでいる家 庭医学書 に は今自分 が受けよ うとしてい る処 置そ のも の につ いて の危 険情報を含めた十分 な情 報は 記載 されて い ません。かといって 、専門 書を 入手 しよ うと して も、どれが適 切か店頭で 直 ち に判断で きるわけで はなく、 その上、 医学 書 はど れ も高 価で人手し にくいとい う問 題が あり ま す。 この 見地 から、病院図書 室や医学部図 書館 が一般 の患者 に も公開さ れ、自由 に医 学文献 が閲覧で きるようにな ることは、患 者の自己 決定権を 実 のある もめ とするため に極めて重 要な ことだ と考え ます。 5。専 門医 学情報 への アクセス権 医 学専 門図書 とは言って も公 に出版さ れて い る文献 ですか ら、本来そ れに対す るア クセ ス権を妨 げ ることはで きません。ただ、 事実 上 、患者 から はア クセ スしにくい現状 があり、 その障 害をい かに解消 するかという問 題があ るに過 ぎま せん。 私 は、医 療過誤裁 判を 担当してい ます ので 、 よ く医 学文 献を検索 しています。 職場の 近く にあ る大学 の医学部 図書館で は、利 用者 登録 すれば誰で も閲覧・ 複写の サービ スを 利用す ることが可 能であり( 適切な 文献が 入手で き る かどう か は別と して)、ア クセ ス権 自体 は 妨げ られていない といえ るで しょ う。 病 院内図書室 の場合に は、 もと もと患者 に 開放 する目的で設 置さ れて い るもので はあ り ませんし、医学文 献は医 療 スタッフの専 用資 料 として集 められた もので すか ら、患者 にこ れを 開示す るという発想 への転 換は難 しい と 思われます。 また、開示 の是非を めぐ って、 医学的素 養のない患者 が入手 するの に適切な 文献か、 数字で示 して あ る危 険性等が 患者 に 誤った 情報を与え る結果を招 くので はない か。 医師・ 患者の信頼関 係を 阻害する ので はな い か、 そういった、 カルテ の開示 につ いてな さ れて いるのと全 く同じ議 論のあ ること は十 分 予測で きます。 ところで、 患者が自分 の医療 について より 詳 しい情報を求 めて医学 文献 にア クセスしよ うとする場 合、そ の前 提として 、医 師から正 しい情報が 提供さ れて い ることが絶対 に必要 で す。実 際には、正 しい病名 や処 置名が伝え られず、不 信感を もって、あ るい は真実 の病 名を知り たいと 願って患者 が医学文 献を入手 しよ うとす る場面 もある かと は思 いますが 、 そ れはイ ンフ ォームド・ コン セントの手 続き の一 環として の文献へ のア クセスとは性 質を 異 にする もので す。 インフ ォームド・ コンセ ントの実践 におい て は、医 師にとどま らずひろ く医療 スタ ッフ による共同 の作業が必 要で す。 スウェ ーデ ン で は、病 院内に患者 の苦情を 汲み取 って病 院 との間で 調整を図 るオ ンブ ズマ ン的 な委員 会 が設 置されてい ます。 アメリカで は、病 院内 に病 院が雇用して いる患者 の権利 擁護人 がい て、 入院患者 に患者の 権利 を説明 したり 、患 者 の代理人 として行動 する役割を 担って いま す。 欧米で は、病院内 の情報 セン ターや資料 室 が患者 の自己決定 に必要な 情報を提 供す る 場 となって いるこ とも多 いよ うです。 病院図書 室は、患 者の求 めに応 じて 必要な 文献検索を 補助す ること によって、 実践的 に − 38−

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はイ ンフ ォー ムド・ コンセ ントの実現を 支え る役割( 助言 者として の役割)を 担い うるの で はないで しょう か。 その実 践の成果 の積 み 重ねを 期待したい と考えてい ます。 〈 参 考 文 献 〉 池 永 満 「 患 者 の 権 利 」九 州 大 学 出 版 会 PromotionoftheRightsofPatientsin Europe,WH O,1995 TheRightsofPatientsinEurope,.H.Leenen, WHORegionalOfficeforEurope 対 訳 : 「 ヨ ーロ ッ パ に お け る 患 者 の 権 利 の 促 進 に関 す る 宣 言 」 患 者 の 権 利 法 を つ く る 会 。 1995 病 院 図 書 室 Vol.16 No.2,1996

仝KOSE

ISHA

I 鮮 度 の い い 情 報 を 大 量 に ス ト ッ ク

1 匡 学 情 報 医 学関連 記事を 全国2

1紙より抜粋

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