• 検索結果がありません。

大学CSIRT体制に対する考察と新潟大学への部局CSIRTの適用

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大学CSIRT体制に対する考察と新潟大学への部局CSIRTの適用"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

DOI:10.24669/jacn.24.1_116. 大学CSIRT体制に対する考察と新潟大学への部局CSIRTの適用 Consideration of Academic CSIRT and Application of. Department-CSIRT for Niigata University. 青山茂義,三河賢治 S. Aoyama, K. Mikawa. [email protected]. 新潟大学 情報基盤センター Center for Academic Information Service, Niigata University. 概要 新潟大学では,2016年度から情報セキュリティ対策強化のため,セキュリティ体制の大幅な見直 しを行ってきた.その一環として,既存の CSIRT(Computer Security Incident Response Team) の権限を強化し,2017年から新大 CSIRTが発足した.また,2018年度には,部局のセキュリティ セキュリティインシデントレスポンス能力向上のために,部局CSIRTの設置を行った.本論文では, 大学の CSIRT体制の考察を行い,新潟大学に適用した部局 CSIRTを中心に報告を行う.又,その 応用として,実際のセキュリティ管理組織構造に合うように,新潟大学で初めて導入した合同部局 CSIRTと分割部局 CSIRTについての報告を行う.. キーワード 情報セキュリティ,CSIRT,セキュリティ管理. 1 はじめに 新潟大学は,10学部,6研究科,附属病院,附属学 校,研究所等からなる大規模総合大学の一つであり,約 2万人のネットワーク利用者,及び,情報セキュリティ ポリシーの適用対象者がいる.また,セキュリティの管 理・運用も,学部などの部局を中心に行われており,組 織図上の部局数は約 40である. 本学では,最高情報セキュリティ責任者 (CISO)のもと に,2003年から外部 SOC(Security Operation Center) とも連携した中央集約型 CSIRT(常時対応できるメン バー 3∼4名)の構築・運用を行ってきている.しかし ながら,ネットワークやセキュリティの管理単位と組織 図上の部局が必ずしも一致しておらず,速やかなセキュ リティレスポンスを行う上での支障となっていた.ま た,部局におけるセキュリティレスポンスを含むセキュ リティ維持・管理は,部局情報セキュリティ委員会(学 部等大規模部局の場合)や部局運営委員会(センター等 の小規模部局の場合)などで行うことになっていた.昨. 今では,セキュリティレスポンスは,数分から遅くても 数時間程度での即時対応が要求される.しかしながら, 会議体である委員会組織では,このようなタイムスケー ルでの即時対応には向かず,多くの部局では実際に即時 対応出来ていないなどの問題が明らかになっていた.新 潟大学では,2016年度から 2018年度にかけて,セキュ リティ体制の大幅な見直しを行ったが,特に即時対応を 実際に行える組織として,部局 CSIRTの導入・整備を 行った. 中央集約型 CSIRT は,比較的構築も容易なので,. JPCERT の CSIRT ガイド [1] や各種 CSIRT 講習会 などでも解説されることが多いが,部局の独立性が高 い総合大学の実運用には向かないと思われる.中央集 約型 CSIRT以外にも分散型 CSIRTやハイブリット型 CSIRT[2]も考えられるが,その具体については公開や 解説されることはあまりない.又,大学の組織構成やコ ンピュータ管理体制も企業に近いとは言えないので,そ のまま適用できるわけではない.そこで,中央集約・分. - 116 -. 学術情報処理研究 No.24 2020年. https://doi.org/10.24669/jacn.24.1_116. 散ハイブリッド型 CSIRTモデル(図 1参照)をもとに 大学特有の問題等も考えながら,組織構成や各種規程・ 手順の整備,セキュリティ体制の変更を 2017∼2018年 度に行った.その目玉は部局 CSIRTの設置であるが, 本学に限らず,大阪大学のOU-CSIRT[3]など,他大学 でも導入が進みつつある所である.また,従来の中央集 約型 CSIRT構築も,各大学で急速に進んでいる [4]. 最近改定されたサイバーセキュリティ基本法の第八 条では,大学のセキュリティ対策等の研究開発の成果を 積極公開することが求めれれている.CSIRT体制につ いては,各大学のセキュリティポリシーの制約などもあ り,分かり易い形での文書化なども進んでいない.そこ で,本学での部局 CSIRTの構築を背景にモデル化し, 部局 CSIRTに対する考察や説明を行う.特に,「部局情 報セキュリティ委員会」などの会議体ではなく,各部局 で「部局 CSIRT」を直接持つことのメリットは,i)即 時対応が可能になること,ii)合同部局CSIRTのような 形で実情にあったセキュリティレスポンス体制を組める ことにある.これら本学で部局 CSIRTを導入する上で 行った考察や導入事例は,今後,他大学でも導入が進む と予想される部局 CSIRT構築や,独立性が高く複雑な 組織構成を持つような企業等の参考になると考え,本稿 としてまとめる.特に,実際の大学の組織構造に合うよ うに導入した合同部局 CSIRTと分割部局 CSIRTとい う概念と導入事例について詳細説明を行う.. 2 大学におけるCSIRT体制 2.1 新潟大学におけるCSIRT体制の概略 新潟大学では, 2002年 12月に情報セキュリティポリ シーが策定された.その翌年~翌々年には,CISO直属 の実働部隊として,情報基盤センター(当時の名称は 総合情報処理センター)情報セキュリティ相談室を中核 とする CSIRT体制の構築が行われた.平常時は,技術 面等の運用を統括する専従の全学セキュリティ担当教員 (著者の青山)に加えて,セキュリティ分析・対応を専 門とするセキュリティ技術者(外部委託),技術補佐員 (情報基盤センター所属),事務職員(兼任)の 3∼4名 体制で新潟大学のセキュリティ維持活動を行ってきた. 最近では,セキュリティ体制の大幅な見直しを行った が,2017年度から新大CSIRTという名称の中央CSIRT が発足し,2018年度からは学部等にも部局 CSIRT(次 節で説明)が発足した.また,情報基盤センター所属の セキュリティ専任教員 2名に加えて,新大 CSIRTの運 用を主業務とする技術職員1名と事務職員 2名 (技術系 専門職員含)を新たに採用して,新大 CSIRTへの配置 を行い,人員面でも,安定したセキュリティ維持活動が 可能になってきた.更に,セキュリティポリシーや各種. 規程の改定を行い,大幅な権限強化が行われた.例えば, セキュリティインシデント発生時には,セキュリティイ ンシデント発生機器の強制的な使用停止や証拠保全等 を含む具体的指示を新大 CSIRTリーダー(専任教員) の判断で行うことが可能になった.それ以前における セキュリティインシデント発生時の対応は,部局担当者 やセキュリティインシデント発生者への対応依頼という 形であったので,ユーザに対応等を拒否された場合は, 強制的な実施のため,CISOや当該部局長の承認等をと る必要があった.このような状況は,速やかなセキュリ ティインシデントレスポンスへの支障となっていたが, 大きく改善された. 新大 CSIRTの主な活動対象は,セキュリティインシ. デント発生時のセキュリティレスポンスに加えて,各種 セキュリティ手順の整備,構成員への啓発,情報提供, 講習会開催,講師派遣,セキュリティ相談等である.他 大学との比較で,特徴的な点は,初期の段階(2003年 頃)から,外部 SOCによるセキュリティシステムの 365 日 24時間監視と,平常時からセキュリティ会社のセキュ リティ技術者を CSIRT体制に組み込み,休日や夜間も 含む常時対応体制を取っていることにある.. 2.2 中央集約・分散ハイブリッド型CSIRT 2.2.1 CSIRT体制の型. 大学は,自由な教育研究環境を重んじる風潮がある. そのため,中央集権的であったりトップダウン的な発想 を好まない傾向が強く,大学組織の運用も,学部,学科, 研究室などに,大きな権限が分散している.コンピュー タの管理・運用も例外ではなく,大学全体の教育システ ムやメールシステム等の管理を行っている情報系セン ターであっても,学部等で独自運用しているサーバや研 究室のパソコンなどの内容は,通常は把握していない. この点が,トップダウン的な組織構成を持つような民. 間企業や官公庁等とは大きく異なっており,単純に中央 集約的なCSIRT(図 1上段)を手本 [1]にしても,うま くいくとは限らない.一方,民間企業でも,グループ企 業などの独立な会社の集合体などの場合には,独立性 の高い組織毎に,CSIRTを構築する分散型CSIRT(図 1中段)や中央集約・分散ハイブリッド型 CSIRT(図 1下段)が考えられる.中央集約・分散ハイブリッド型 CSIRTでは,セキュリティ発生時の分析や組織全体のセ キュリティ手順作成など,専門性の高い CSIRT業務は 中央の CSIRTが集約して行う.セキュリティインシデ ントレスポンス補助,再発防止策実行やセキュリティ意 識向上など,部局等に適した業務は,ブランチ CSIRT で行う.. - 117 -. 大学(主に,総合大学)では,部局毎の独立性が高い が,多くの部局では CSIRTを自己完結で運用できるほ どの体制が組めない.このような場合は,単純な中央集 約型 CSIRTや分散型 CSIRTではなく,大学全体とし ての中央集約・分散ハイブリッド型 CSIRTを構築した 方が,円滑な CSIRT運営が期待できる.. !"#$%&'(). *+,-. ./01 *+,-. ./01. *+,-. ./01. "#234!"#$%. 56789:;<=>?@A"BCDAEFGHI. JKLM. %&'(). ./01. NO:;. PQ4!"#$%. 56789:;<RSTU4?@AVWXYCDHI. JKLM. %&'(). JKLM. %&'(). JKLM. %&'(). "#23-PQZ[J\]^4!"#$%. 56789:;<_U?@A?CDHI. JKLM. %&'(). JKLM. %&'(). "#%&'(). 図 1: 典型的な CSIRT体制の型. 2.2.2 大学で部局CSIRTが重要となる理由. 企業等のトップダウン的組織では,情報システム全 体を統括する一つの情報部門があり,情報機器の調達・ 管理・運用を行っている場合が多い.このような組織で セキュリティインシデントが発生した場合は,中央の CSIRTが,情報システムを管理している部門と連携し て,セキュリティレスポンスを行えばよい.その後の対 応や日々の啓発等も,企業全体として必要な人員を確保 して行えばよいので,必ずしも,各々の部門や部署内に 個別に CSIRTを構成する必然性はない. 新潟大学でも,当初は前述の情報セキュリティ相談室 を CSIRTの核とし,各部局のセキュリティ委員会等と 連動したセキュリティインシデントレスポンスを念頭に 置いた中央集約型 CSIRTモデルでセキュリティ体制を 構築した.しかしながら,実際には,あまりうまくは機. 能しない場合も多かった.理由はいくつかあるが,大き なものの一つは,部局における情報機器の調達・管理・ 運用の独立性の高さにある. セキュリティインシデントが発生した場合には,ケー. ブル抜線を行ったり,セキュリティ分析のために管理者 アカウントが必要になったりする場合が多い.大学で は,多くの場合,部局や各教員がコンピュータを管理し ているので,これらを行う場合,基本的には部局やコン ピュータを管理している教員等の協力・許可を得る必要 がある.しかしながら,中央 CISRTには,誰がそれら の判断の権限を持っているのかが分かりづらく,ケース バイケースであるので,対応に時間がかかる.そのた め,速やかなセキュリティレスポンスを実現するために は,あらかじめ権限を明確にした大学全体の共通規格の 実行部隊が部局にも必要である.この状況は,大学全体 としては,CISOの下に情報セキュリティ委員会等の委 員会組織があったとしても,即時対応や常時対応には, CSIRTという実行部隊が必要であるのと同様である. そこで,新潟大学の本部CSIRT(旧体制)では,部局. の独立性が高い新潟大学では,各部局にも CSIRT機能 を有したブランチCSIRTも必要であると判断し,CISO や情報セキュリティの関係委員会等で部局 CSIRT設置 の提案を行い,新潟大学におけるセキュリティ体制の再 構築を行った. また,部局 CSIRT の主要な構成メンバーの名簿. (CSIRT 長,CSIRT リーダー,CSIRT 副リーダー, CSIRT事務担当)は,中央 CSIRTで管理することに した.本学では,学部等に設置したブランチ CSIRTの ことを部局 CSIRTと呼んでいる.単に新大 CSIRTと 呼んだ場合は,中央 CSIRTを指すが,実際の大学全体 の CSIRT 活動は,中央 CSIRT と部局 CSIRT 共同の もとに,二段構成で行っている.大学組織では,本部 CSIRT[3]や部局 CSIRTという呼称の方が役割等をイ メージしやすいと思われるので,以降は,本部 CSIRT と部局 CSIRTを用いる. 図 2 では,部局 CSIRTの概略を表しているが,部局. CSIRT長は,部局のセキュリティ維持等に責任を持つ 部局長である.しかしながら,部局長は,様々な業務 の責任者も併任しており,セキュリティインシデントレ スポンスの実務者にむいていない場合が多い.そのた め,実際の実務を行うための部局 CSIRTリーダーを部 局CSIRT長とは別においている.部局CSIRTリーダー として想定しているのは,部局内のコンピュータ管理に 詳しく,教授会等への参加資格もあるような中堅教員で ある.ただ,教員がリーダーの場合は,授業中であった り出張等が多く多忙であるというのに加えて,本学の場 合は勤務時間などがある程度自由な裁量労働制でもあ るので,セキュリティインシデントレスポンスを速やか に行えない場合がある.そのため,副リーダー(複数名. - 118 -. 可)も配置している.また,これまでの委員会ベースの 運用の大きな問題点の一つは,部局内での事務系の連絡 体制等をうまく活用できない場合が多いことであった. そのため,部局 CSIRTには,部局 CSIRT運用に必要 な事務作業や部局内連絡を担当する(総務系)事務職員 (複数名可)を含めていただき,事務系 CSIRT業務を 担当職員の正式な職務(部局 CSIRT規程)とした.こ れにより,セキュリティインシデントを発生させたコン ピュータを管理する教員が出張中などの場合も,緊急連 絡網(本部 CSIRTでは知ることができない個人携帯電 話番号等)を用いて,セキュリティインシデント発生者 に緊急連絡していただけるようになった. 部局 CSIRT構成員選定には制限はないが,その部局 の CSIRT活動を現場で中心になって担う技術職員,事 務職員や助教等の若手教員が想定であり,部局の実情 に合わせて,部局長(CSIRT長)によって選定される. 例えば,部局 CSIRT設置前は,技術職員は,セキュリ ティ業務を行う根拠が明確でない場合が多く,緊急対応 の場合も,正式な自業務に優先してセキュリティレスポ ンスを行う必然性はなかった.設置後は,部局長に選ば れた技術職員は,セキュリティポリシーや CSIRT規程 に基づいた大学の公式業務として行うことになった.. !"#$%&'. !"#$%&'()!"(. !"#$%&'*+,+)-./. !"#$%&'0*+,+)-./. !"#$%&'1234)12./56278. !"#$%&'9:/)-./. ;!#$%&'. <. =. >?@ABCDEF*GH. IJKL. >MNOPNQRSTNS. CUVWX. >!"CDEF*GHIJ. KL. >MNOPNQRSTNS. CYZ>[VWX. 図 2: 本部 CSIRTと部局 CSIRT. 2.3 合同部局CSIRTと分割部局CSIRT 新潟大学では,2004年頃からセキュリティ相談室とい う名称の実質的な本部 CSIRTと部局情報セキュリティ 委員会を中心とするセキュリティインシデントレスポ ンス体制を構築・運用していた.部局情報セキュリティ 委員会とは,部局のセキュリティの維持・管理をするた めに新潟大学の組織図にある部局が保持すべき委員会 であったが,部局によっては教授会,運営委員会やコ ンピュータ委員会等がその機能を兼ねている場合もあっ た.しかしながら,従来の部局情報セキュリティ委員会 を基本とするセキュリティインシデントレスポンス体制. には,大きく以下の三つの問題点があることがわかって いた. i)多くの小規模部局では,実質的なセキュリティ体制を 組むことができない. ii)大学が二重組織構成であるため,即時対応が困難な 場合がある. iii)組織図上の一つの部局が,セキュリティ上の一つの ユニットとして必ずしもふさわしいとは限らない. 1点目は,組織図上の一つの部局であっても,他部局に 主に所属した兼任教員や事務職員などが多い場合があ り,実質的な構成メンバーがほとんどいない場合であ る.この場合,運営委員会などを部局情報セキュリティ 委員会とすることは可能であったとしても,日々の啓発 やセキュリティインシデント発生時の対応を速やかに 行う人員がいない.2点目は,国立大学では,人事上の 組織(教育研究院,学系,機構など)と教育や業務を行 う組織(学部,大学院,センター等)の二重組織構成に なっている場合が多い.例えば,一人の教員が学系と学 部の二つの部局に所属している場合,セキュリティイン シデント発生時の対応や日々のセキュリティ講習会など の啓発をどちらの部局情報セキュリティ委員会がやるの かが自明ではない.3点目は,組織図上は一つの部局で あり部局長が一人しかいない場合でも,実質的には複数 の部局である場合がある.例えば,新潟大学は附属の小 中学校や幼稚園を持っているが,教育学部の一部(現在 は独立部局)であったので,教育学部の部局情報セキュ リティ委員会の担当であった.しかしながら,教諭,児 童・生徒に対する日々の啓発やセキュリティインシデン トレスポンスを考えると,普段はほとんど交流のない教 育学部の教員等が対応するよりも,校長を責任者とし, 学校教諭を中心とした実働部隊があるのが望ましいと 考えらる. これらの解決ために,本学では,以降で説明する合同. 部局 CSIRTと分割部局 CSIRTを導入した.また,こ れは,責任組織としての部局情報セキュリティ委員会と 実働組織としての部局 CSIRTという形で役割を分ける ことにより,柔軟にセキュリティ対応体制の構築が可能 になったものであり,部局 CSIRT導入の大きなメリッ トでもある.組織図では一つの部局であっても,実質的 に部局が複数の場合には,一つの部局で複数の CSIRT を持つ分割部局 CSIRTの場合は単純であり,それ以上 の説明を要しないと思われるので,以下では,合同部局 CSIRTについて説明する. 図 3では,上記の問題点 i)に対して,Aセンターを. 例に模式的に合同 CSIRTを示してある.学際領域を研 究する Aセンターが新たに出来る場合,従来は B学部 やC学部に所属していた関係教員の正式な所属先が,A センターとなる場合がある.このような場合でも,ホス. - 119 -. ト管理や障害通知などを,当該部局担当の事務職員と 情報系センターで分担しながら行えば,ネットワーク管 理自体は大きな支障はない.しかしながら,学部に比べ て小規模なセンターでは,必要なセキュリティのスキル レベルを持った Aセンター CSIRTを構築することは, 実際問題としては不可能な場合の方が多い.また,本 部 CSIRTで全てのセンターや研究科等の CSIRT業務 を代行するのも,マンパワーの面などからも難しい. この例のような組織の教員の場合は,兼任教員などの 形で,関係学部の教育・研究にも関って,教授会や学部 内セミナー等にも参加している場合も多い.そのため, 日々のセキュリティ啓発等は関係学部の CSIRTで担当 していただいた方が速やかにいく場合も多い.また,セ キュリティインシデント発生事にケーブル抜線やデータ フォレンジックを行う場合も,本部CSIRT単体よりも, 面識などもあり,ある程度のセキュリティ知識と経験を 有した関係学部の部局 CSIRTリーダー等に立ち会って いただく方が円滑にいく可能性が高い.そのため,本 学では,単体で部局 CSIRTを構成するのが難しい場合 には,CISOの承認のもとに,関連部局の CSIRTを加 えたような合同部局 CSIRTを可能にした.部局情報セ キュリティ委員会や運営委員会等を基本とするセキュリ ティインシデントレスポンス組織とした場合は,基本的 にその部局に閉じてしまうので,相対的にスキルレベ ル等の高い関係部局のセキュリティインシデントレスポ ンス組織があったとしても,その協力を得ることは難 しい.これが,部局情報セキュリティ委員会ではなく, 部局 CSIRT体制を全学的に導入するメリットの一つで ある. モデル的に想定される合同CSIRTの構成は,CSIRT 長がAセンター長である.また,合同CSIRTリーダー や副リーダーは,Aセンター,B学部,C学部,D学 部のリーダのいずれかが担当する。合同 CSIRTの事務 担当は,Aセンターの事務職員である.構成員は,各組 織の CSIRTの関連する構成員である.この構成のもと に合同 CSIRT全体の方針等が決定されるが,緊急のセ キュリティインシデント発生時には,各組織の CSIRT があらかじめ決められた範囲のセキュリティインシデン トレスポンスを行う.また,合同CSIRTやAセンター セキュリティ委員会の方針のもとに,各組織における常 時のセキュリティ施作(啓発等)も分担する. 新潟大学では,多くの場合,一人の教員が複数の部局 に所属している.本学では,教育研究を担当している教 員は,人文社会学系,自然科学系,医歯学系のいずれか に所属している.また,教育はいずれかの学部(大学), 又は,研究科(大学院)に所属して行う.実際の組織運 営上も,どちらの部局が主体とも言えない.また,名称 の違いはあれ,他大学でも同様に,一人が複数部局(教 育実施組織,研究実施組織,人事組織等)に所属してい. !"#$%&'(). *(+,&-./0123). 456,. !789+,. "789+,. #789+,. $!"#$:;"%&'(. !78"%&'(. #78"%&'(. "78"%&'(. $!"#$. $!"#$"%&'(. 図 3: 合同部局 CSIRTの例. る場合も多いと思われる.このような場合,単純に組織 図に基づいた部局 CSIRT構成とすると,セキュリティ インシデント発生時の初動などで大きな問題となる.例 えば,一人の教員がセキュリティインシデントを発生さ せた場合,学系 CSIRTと学部 CSIRTのどちらが対応 するのかセキュリティインシデント毎に決めなければけ ない.これを解決するため,部局 CSIRT運営を合同で 行ったり,一つの CSIRTが代表して対応を行う自由度 を認めて,実質的に動き易い部局 CISRTを構成するよ うにした.尚,実際にセキュリティインシデントが発生 した場合に,本部 CSIRTがどの部局 CSIRTと連携し て対応するのか混乱しないように,対応表と構成員表 (年一回更新)を管理することにした. 図 4は,本学の学系のセキュリティ組織の概略を示し. ている.最も単純な例として,学系に二つの学部と一つ の研究科がある場合は,部局数は四である.そのため, 部局情報セキュリティ委員会(部局によっては教授会や ネットワーク委員会)も四である.又,部局 CSIRT導 入前は,部局情報セキュリティ委員会にセキュリティ担 当者が一名(実務を中心に行うセキュリティ専門委員会 委員であるが,部局 CSIRT導入により解消)おり,本 部 CSIRTとの連携を行なっていた.従来は,部局情報 セキュリティ委員会が,部局のセキュリティインシデン トレスポンスや啓発を行うことになっていたので,部 局の CSIRT活動に相当する業務を行う組織は四つであ り,どれが主体というわけでもなかった.又,学系や研 究科は,学系全体や大学院教育の学部間の調整を行って いる意味合いが強く,主な意思決定は学部教授会や学部 委員会で行われる.そのため,C研究科の A学部系の 教員がセキュリティインシデントを発生させたとき,本 部 CSIRTは,名簿上で所属している X学系や C研究 科のセキュリティ担当者に連絡するべきなのか,実際に セキュリティインシデントレスポンス対応等を行う可能. - 120 -. 性の高い A学部の担当者と連絡をとるべきなのかが自 明でなく,どの部局が担当するか決めるまでに時間がか かり,初動対応が遅れる可能性が高かった. 2016年頃には,文部科学省から国立大学に対して,実 質的なセキュリティレスポンス体制を組むように依頼が あった.本学では,部局情報セキュリティ委員会を基本 単位として,全学を網羅するセキュリティセキュリティ インシデントレスポンス体制は従来からあった.しか しながら,上記の例のように,セキュリティレスポンス の即時対応という観点で見ると,二重組織の問題は解 決しなければいけない課題であった.そこで,セキュリ ティ系委員会などでの説明に加えて,次節のスケジュー ルの説明会など,部局の現場の担当者等に「部局情報 セキュリティ委員会ではなく,部局 CSIRTが必要な理 由」や「合同部局 CSIRTが必要な理由」を丁寧に説明 した.その上で,必要な場合は関連部局で協議して,合 同 CSIRTなどを構成するように依頼した. 学系の場合でいうと,図 4のように,学部 CSIRTが 主体なって分担する場合と学系 CSIRT が主体となって 学系全体のセキュリティレスポンスを行う場合の基本的 な二パターンがあり,承認・導入された.前者は,主な 意思決定を行う学部を中心に部局 CSIRTを設置するの で,新潟大学の組織運営上は自然である.後者は,文系 の学部の場合,セキュリティやネットワークの知識を持 つ教員数が少なく,コンピュータ担当の技術職員も配置 されたいないため,学部毎に部局 CSIRTを作るのが現 実的に難しいからであった. 合同 CSIRTの大きな問題点としては,組織図上では 別部局である CSIRT構成員が,セキュリティインシデ ントレスポンスを行ったり,セキュリティインシデント 内容等を知る可能性があることである.そのため,部局 間で事前に十分な協議をして,意識合わせをする必要が ある.合同CSIRT設置は,部局間での協議後に,CISO への申請を行い,その許可がをとる必要がある.そのた め,他部局の CSIRT構成員への権限付与は,CISO権 限で行われる.また,他部局の構成員がセキュリティイ ンシデントレスポンスする場合の根拠が明確になるよ うに,本学では,CSIRT規程の中に部局毎にどの部局 CSIRTが合同で担当するのか明記してある. 分割 CSIRTの運用等には大きな問題点はないと思わ れるが,将来的な統合は検討していく必要がある.組織 改革で複数部局が統合された場合,統合当初は実質的な 交流等が少ない場合が多い.分割 CSIRTは,このよう な場合の一時的な設置を想定している.しかしながら, 組織統合は,人員面でのリソースの共有等も目的の一つ であるので,分割 CSIRTは組織統合の進捗に従って基 本的に解消されていく必要がある.. !"#$%&'()*+,. -".. $%&'(). *+,. /012$%&'()*+,. 3"./4567-"./4567. 3".. $%&'(). *+,. !"#$%&'()*+,. -".. $%&'(). *+,. /012$%&'()*+,. !"#/4567. 3".. $%&'(). *+,. !"#$%&'(). !*#$%&'(). 図 4: 学系内の CISRT体制. 2.4 セキュリティインシデントレスポンスの 流れ. 本節では,図 5を用いて,本学における部局 CSIRT 導入後のセキュリティインシデントレスポンスの流れに ついての概略説明を行う.セキュリティインシデント発 生等の通報(外部 SOC,ログ,部局CSIRTや学内ユー ザ等)は,本部CSIRTに集約される.本学では,365日 24時間監視体制の外部 SOCと契約しており,セキュリ ティインシデントレスポンス開始のトリガーのほとんど は,外部 SOCからの通報 (セキュリティインシデント 発生機器の IPアドレス情報含)である.通報後は,本 部 CSIRTで通報内容の確認をし,速やかにネットワー ク遮断を行う.通報内容から機器や管理者情報の確認作 業は,主にネットワーク認証と連動したホスト登録シ ステム上に構築された IP管理データベースを用いて行 う.尚,夜間や休日などで外部 SOCから本学のCSIRT に連絡のつかない場合は,本学の判断を待たずに外部 SOCの判断で学外ネットワークとの遮断を行う. ネットワーク認証と連動したホスト登録システムは,. ネットワーク認証の黎明期から本学で開発運用してき たものである [5, 6, 7].現在は,市販の製品の中にも同. - 121 -. 様機能のものがあるので,CSIRT 活動に用いやすいよ うに再設計を行い市販製品への移行を 2019年に行った. IP管理データベース移行の詳細は,本論文の範囲を超 えるので,別報告等の形で公開予定である.本学では, IPセグメント単位で部局等に IPアドレスの管理を移 管(一部の小規模部局等は情報基盤センターで管理を代 行)している.その管理責任者は原則的に部局 CSIRT リーダーであり,データベースへの登録や維持管理は部 局責任となっている.そのため,部局 CSIRTは,ネッ トワークに接続されている自部局のネットワーク機器の 詳細情報を容易に確認できる.また,本データベースに 登録されていないネットワーク機器はネットワーク接続 できない(無線 LANルータの配下の端末等を除く)の で,ネットワーク機器の全情報は本データベースに集約 されている.本部 CSIRTは,全部局の登録データを閲 覧等できるので,セキュリティインシデントが発生して いる IPアドレスを用いて,端末情報,ユーザ情報,担 当部局 CSIRT,最終認証日時等のセキュリティインシ デントレスポンスに必要な情報を即時に得ることがで きる. IP 管理データベースから得た情報をもとに,本部. CSIRT は,部局 CSIRT とセキュリティインシデント 発生者に対して,機器情報,セキュリティインシデント 内容,セキュリティインシデントレスポンス手順等の連 絡を行う.対応手順には,ケーブル抜線や当該機器の保 全(当該機器利用禁止,電源遮断禁止,張り紙等)が含 まれるが,セキュリティインシデント発生者自身等で対 応できない場合は,部局 CSIRTが行う.また,セキュ リティインシデントレスポンス終了まで,当該機器の利 用ができないため,本部CSIRTに抗議がよせられたり, 利用停止の対応等を拒否される可能性がある.その場 合には,学内規程等に従った義務となっていることを, 部局 CSIRTからセキュリティインシデント発生者への 説明を行っていただく.部局 CSIRTでは,部局長や構 成員へのセキュリティインシデント発生の報告を行い, 同様事象や関連事象がないか確認等を行う.その後,本 部 CSIRTが現地調査を行うが,セキュリティインシデ ント内容によっては,部局 CSIRTも現地調査に立ち会 う.緊急のセキュリティインシデントレスポンスの一次 対応は,セキュリティインシデント分析結果などをもと に本部 CSIRTから指示された対策を行うことにより, 終了する. その後の関係各所への報告,再発防止策の方針決定 や実施などの二次対応は,相応の責任等も伴うので,技 術職員や一般職員が中心メンバーであることが多い部 局 CSIRTでの実行が難しい場合もある.そのため,部 局情報セキュリティ委員会や教授会等の当該部局の意思 決定組織が中心となって行うことが基本となる.しか しながら,小規模部局等の場合は,部局 CSIRT自身が. 行なっても問題ない場合が多く,部局情報セキュリティ 委員会と部局 CSIRTのいずれで二次対応を行うかは, 部局の実情に合わせて部局判断となる.ただし,本部 CSIRTから部局への連絡等は,部局情報セキュリティ 委員会ではなく部局 CSIRTに行くので,部局 CSIRT は部局情報セキュリティ委員会の窓口業務を行う.二次 対応として,本部 CSIRTでは,分析結果をもとに再発 防止策なども含む報告書を作成し,部局 CSIRT等へ報 告する.部局 CSIRT(又は,部局情報セキュリティ委 員会等)では,その報告書をもとに,部局としての報告 書を作成して,再発防止策の検討と実施を行う.. !"#$"%&'. ()*+,-./. 012345. 6789:6;. <=>?@A%BC. DE67. FG:HI. !"#$"%DEFJ:KL. MNOP:QR. 0STU:VW. XYZ[\]^ !"#$"%&'2. *012/. 6789:6;. <=>?@A%_`. FG:_`. 012a:. 45bcde,af !"#$"%&'. g45. YhZ[\]^. Yhij. klm@no pq23jr. s>%tN?uv. wxyz3jr. jr{:|}. ~&��G:. ��a_`. jr{:|}. !"#$"%�A�"A:KL. wxyz3jr. 012. 1����� 1�. Yh����:1�. :&'��g(). *Yhijklm@no���/. 図 5: セキュリティインシデントレスポンスの流れ. 3 部局CSIRT導入スケジュール等 本節では,部局 CSIRT導入の主なスケジュールをも. とに,導入時に考慮した点等を説明する.全体的な流れ としては,2016年 8月から,情報基盤センター教職員 と情報セキュリティ担当事務職員を中心としたワーキン ググループで情報セキュリティポリシーの改訂原案を作 成し,情報セキュリティポリシー委員会で審議しながら 詳細を詰めて行った.最終的には,表 1にある 11月の 情報セキュリティポリシー改定の中に反映させた.この 流れは,通常のポリシー等策定手順の範囲であるので, 本論文で詳細説明は行わない.. - 122 -. 表 1: 部局 CSIRT導入の主なスケジュール. 日時 事項 内容 2018年 7月 4日 情報セキュリティポリシー説明会 (医歯学系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018年 7月 5日 情報セキュリティポリシー説明会 (文理系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018年 7月 6日 情報セキュリティポリシー説明会 (医歯学系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018年 7月 9日 情報セキュリティポリシー説明会 (文理系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018年 7月 10日 情報セキュリティポリシー説明会 (医歯学系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018年 7月 13日 情報セキュリティポリシー説明会 (文理系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018年 11月 16日 情報セキュリティポリシー改定 全学の情報セキュリティ委員会での承認 2019年 1月 10日 部局 CSIRT設置依頼 CSIRTの合同・分割を検討,構成員名簿作成 2019年 2月 28日 部局 CSIRT設置案提出期限 部局での検討結果提出 2019年 3月 1日 部局 CSIRT規程別表の検討・作成開始 各部局の担当部局 CSIRTを規程別表化 2019年 3月 29日 部局 CSIRT規程承認,新大 CSIRT規程改定 部局 CSIRT設置に伴う規程策定,改定等 2019年 11月1日 部局 CSIRT説明会 部局 CSIRTの業務説明・簡易訓練. 11月に予定していた情報セキュリティポリシーの大 幅改定の前の月上旬には,全 6回(内容は全て同じ)の 情報セキュリティポリシー説明会を行った.対象は,全 教職員の希望者であったが,主な参加者は,学部,学科 や研究室等においてセキュリティを中心に担当をして いる教員や,部局 CSIRTが設置された場合に事務担当 として構成員に組み込まれる予定の職員であった.情 報セキュリティポリシー説明会では,技術面などの改定 内容に加えて,部局 CSIRTの導入を柱とする新たなセ キュリティ体制や部局 CSIRTの行う業務内容の説明を 行い,質疑応答も丁寧に行った.また,その後の3ヶ月 間程度も,パブリックコメントや再検討期間として,構 成員の意見等を最終案に出来るだけ反映させた.従来の セキュリティポリシー改定等よりも構成員に丁寧に説明 を行い,意見を広く聞くことにしたのは,部局 CSIRT が設置された場合,その部局 CSIRT構成員に任命され たものにとっては大学の正式業務となり,実際にセキュ リティインシデント発生時には他の業務に優先させて行 う必要もあるからである.また,大学全体としても正式 に規程化されており,チームというような概念の実働組 織を全部局が持つという類似の前例もないので,新しい 組織形態の必然性等への理解が必要であった. 構成員からの説明会等での意見では,部局 CSIRT導 入に関して概ね好意的な賛同を得られた.これは,新 潟大学では一部の例外を除き,部局情報セキュリティ 委員会が実働組織として機能していなく,今後も委員 会組織をセキュリティインシデント発生時などに即時 対応できる組織としていくのも難しいであろうという 本部 CSIRTの見解と一致していたからである.また, 代表的な意見としては,部局 CSIRTを構築したとして も,セキュリティスキルの高い CSIRTを構築すること は大半の部局では現実的に無理であるので,技術面につ いては,本部 CSIRTが中心になって欲しいとのもので あった.. 改定された情報セキュリティポリシーでは,部局 CSIRTの主な業務内容や組織構成が明記されたが,大 学の正式な組織とするため,部局 CSIRT規程の制定と 新大 CSIRT規程の改定作業を行った.実働可能な組織 とするため,前節で説明した合同CSIRTや分割CSIRT という形態も関係部局間等で協議していただき,全組織 に対する担当部局 CSIRT表を作成し,部局 CSIRT規 程の別表とした.また,部局 CSIRTの主要構成員の名 簿(CSIRT長,リーダー,副リーダー,事務担当)も 作成した. 説明会等では,部局 CSIRT規程や部局 CSIRTのセ. キュリティインシデントレスポンス手順という文書だけ では,実際のセキュリティインシデント発生を想定した ような講習会や説明会を本部 CSIRTに実施して欲しい という要望が複数出た.そこで,2019年 11月には,簡 易訓練を含む部局 CSIRT業務の説明会を実施した.簡 易訓練では,仮想的なセキュリティインシデントをもと に,ロールプレイ(例:本部CSIRTから部局CSIRTへ 部局教員端末のウィルス感染対応の連絡がきた時に,事 務担当は自部局内の誰に何を伝えるのかなど)を考え, 隣席者とディスカッションなどを行っていただいた.当 初予定では,早い次期を予定していたのだが,簡易訓練 の教材検討などもあり遅延したことが反省点であった. 2020年度からは,部局CSIRTメンバーの多い年度初め に同様の訓練等を行う予定であったが,新型コロナウィ ルス対応のため,現在の所,実施できていない. 本学では,2019年 3月 1日の部局CSIRT規程策定時 の部局CSIRT(部局情報セキュリティ委員会)を持つべ き部局数は 39であった.実際に設置された部局CSIRT 数は 28であり,この内の二つは一つの部局CSIRTが分 割されたものである.残りの26の内の7つは合同CSIRT である.最も合同化したのは,文系の6部局(学部,大 学院,センター)が,合同したものである.以上,人事 組織と実務組織などという二重組織の問題を解消しつ. - 123 -. つ,一つの部局で部局 CSIRTを運営するのが難しい部 局は,関連部局で合同 CSIRTを構成するということで セキュリティスキルを持つ人員確保を行った.. 4 まとめと今後 新潟大学では,2016年度から情報セキュリティ対策 強化のため,セキュリティ体制の大幅な見直しと再構築 を行ってきた.これまでは,部局のセキュリティインシ デントレスポンスは,部局の情報セキュリティの維持・ 管理に責任を持つ部局情報セキュリティ委員会(又は, 教授会,運営委員会等)が行ってきたが,基本的に会 議体であるため速やかなレスポンスに支障が出ていた. そのため,新しく,責任組織としての部局情報セキュリ ティ委員会に加えて,実働組織としての部局 CSIRTを 導入した.又,大学は,一人の教員が人事組織と教育組 織の二つの組織に所属するなど,二重組織構造が多い. この場合,セキュリティインシデントレスポンスをどの 組織が行うか初動対応に曖昧さがある.それを改善する ため,合同部局 CSIRTと分割 CSIRTという概念を導 入して,セキュリティインシデントレスポンスへの二重 構造を改善するように,全学的な新たな CSIRT組織体 制を構築した.実際には,部局情報セキュリティ委員会 を持つべき部局数 39に対して,それらを網羅する形で 28の部局 CSIRTが設置された. 今回の部局CSIRT(合同CSIRT,分割CSIRT含)導 入により得られたメリット等をまとめる. i)セキュリティインシデント発生時に,本部 CSIRTと 連携する部局側担当者の特定・確保が円滑に行えるよう になり,本部 CSIRTと部局との連携体制構築までの初 動遅延が発生しなくなった. 従来は,本部CSIRTと連携するのは,部局情報セキュ リティ委員会の委員代表やその代理者ということになっ ていたが,委員代表の多くは,教授や准教授等の教員で あった.そのため,委員代表との連絡等もつかない場合 が多く,現地での初動開始に数日かかることさえもあっ た.また,多くの教員は,教授会などのメーリングリス トを除くと部局内全体や個別部署等への事務連絡の直 接手段を持たないので,教員以外への連絡や周知に遅延 が発生する場合があった.これは,チームとして複数名 (5~10数名程度)の実働組織とすることや事務担当を 必ず加えることにより改善された. ii)技術職員や事務職員を中心構成員とすることが可能 な公式な組織(規程で定義)としたことにより,部局内 での CSIRT活動を円滑に行えるようになった. 大学の委員会組織の場合,委員の多数は教員である. そのため,セキュリティインシデント発生時には,基本 的に教員だけでセキュリティインシデントレスポンスを. 行なう部局が多かった.しかしながら,実際のセキュリ ティインシデントの一次対応,記録や報告等の事後処理 などは,教員よりはむしろ事務職員や技術職員の方が適 している場合が多い.部局 CSIRT導入により,部局内 での CSIRT体制が,教員主体から事務職員や技術職員 も含めた適材適所の体制に変わった.又,これにより, 部局内のセキュリティ維持活動は,教員,事務職員,技 術職員が一体として行うような意識改革が進んだ. iii)合同 CSIRT設置により,二重組織の問題点を改善 した. 本学では,例えば,学系や大学院の研究科が複数学部. と強く連携している.そのため,例えば,組織図上は大 学院に所属してはいるが,実質上は特定学部の教員とし て活動している教員がセキュリティインシデントを発生 した場合には,どの部局に連絡すればいいのかがケー スバイケースであり,初動遅延が発生する場合が多かっ た.合同 CSIRT導入により,組織図上では他部局の担 当を可能にし,本部 CSIRTから見たときの連絡先を可 能なかぎり一意にした.これにより,セキュリティイン シデント発生時の担当部局のたらい回しによる初動体 制構築の混乱等を解消した. 委員会や説明会経由の意見招集では,部局 CSIRT設. 置に肯定的な賛成意見が多数であり,否定的な意見は特 に見られなった.主な意見は,部局CSIRTが設置される とCSIRT構成員の業務負担増になるので,本部CSIRT からの技術サポートや教育を充実させて欲しいという ものであった.部局 CSIRT設置に 2年近い時間を費や したことを除くと,現在の所,デメリットと言える点は 特に見当たらない.部局 CSIRTからの問い合わせが増 加して,本部 CSIRTの負担は増えたが,部局への細や かな情報提供はもともと意図したものであり,部局のセ キュリティ意識向上にもつながっている. 今後は,部局 CSIRT構成員のスキルアップを目指し. た訓練の実施や各種手順書の充実を行い,大学全体のセ キュリティレベルの向上をはかっていく予定である.又, 直近では,コロナウィルス対策を理由にセキュリティイ ンシデント現地調査を拒否された事例があり,リモート 調査の手順も検討する必要が出ている.. 5 謝辞 新潟大学に新しい CSIRT 体制を導入するにあたり,. 尽力していただいた大原センター長,宮北助教(現:国 際情報大学講師),及び,情報基盤センターのスタッフ に感謝します.. - 124 -. 参考文献 [1] JPCERTコーディネーションセンター, CSIRTガイ ド, https://www.jpcert.or.jp /csirt material/files/ guide ver1.0 20151126.pdf(2019年 5月 18日最終 確認).. [2] 日本シーサート協議会, CSIRT 構築から運用まで, NTT出版 (2016/11/21), ISBN978-4-7571-0369-6.. [3] 日本シーサート協議会 OU-CSIRT(大阪大学 CSIRT)情報; https://www.nca.gr.jp/member/ou- csirt.html. (2019年 5月 18日最終確認). [4] 中西貴裕,福岡誠,金野哲士,田頭徹,鈴木健之, 田 口慎,大内慎也,木村優太,加治卓磨,川村暁, 岩手 大学における持続可能な情報セキュリティインシデン ト対応体制の構築,学術情報処理研究,No.22,pp.44- 53 (2018).. [5] 青山茂義,山本一幸,宮北和之,三河賢治,ホスト登録 システムへの非利用 IPアドレスの特定機能実装と IP 棚卸し,学術情報処理研究,No.22,pp.23-30 (2018).. [6] 浜元信州,五十嵐瑛介,青山茂義,三河賢治, ホスト登 録システムを利用したネットワークアクセス認証シス テムの運用,情報処理学会研究報告,Vol.2010-IOT-9 ,No.4,pp.1-6 (2010).. [7] 浜元信州,青山茂義,三河賢治, 全学ネットワークア クセス認証システムの導入,インターネットと運用技 術シンポジウム 2009, IPSJ Symp. Series Vol. 2009, No.15, pp.1-8 (2009).. - 125 -

表 1: 部局 CSIRT 導入の主なスケジュール 日時 事項 内容 2018 年 7 月 4 日 情報セキュリティポリシー説明会 (医歯学系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018 年 7 月 5 日 情報セキュリティポリシー説明会 (文理系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018 年 7 月 6 日 情報セキュリティポリシー説明会 (医歯学系) セキュリティポリシー改訂案の説明 2018 年 7 月 9 日 情報セキュリティポリシー説明会 (文理系) セキュリティポリシー改訂案の説明 201

参照

関連したドキュメント

手話の世界 手話のイメージ、必要性などを始めに学生に質問した。

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

本学陸上競技部に所属する三段跳のM.Y選手は

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

 活動回数は毎年増加傾向にあるが,今年度も同じ大学 の他の学科からの依頼が増え,同じ大学に 2 回, 3 回と 通うことが多くなっている (表 1 ・図 1

ダブルディグリー留学とは、関西学院大学国際学部(SIS)に在籍しながら、海外の大学に留学し、それぞれの大学で修得し

④