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うつ状態,パーキンソン症候,幻覚・妄想状態で経過し,認知症に進展したレビー小体型認知症(純粋型)の一剖検例

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Academic year: 2021

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は じ め に. レビー小体病(LBD)に認知症を伴うとレビー 小体型認知症(DLB)とされる。久山町の剖検例 では,LBDは41.4%の頻度と報告されている31)。 LBDは,その分布によって新皮質型,辺縁型, 脳幹型,大脳型,通常型・純粋型と記載される22)30)。 DLB は,高齢者のアルツハイマー型老年期認知 症(SDAT),血管型認知症(VaD)とともに認 知症の3大疾患とされ18),老年期認知症の数%か ら10数%の頻度とされる19)。DLB37例中28例にア ルツハイマー病(AD)病変が見られる通常型で あったとの報告がある17)。本症例は,AD病変を 伴わない純粋型の症例であった。DLBの疾患概 念について筆者の考えを報告する。 (本症例の報告にあたって親族の承諾を受けた). 症 例. 79歳(死亡時),男性。 主 訴:もの忘れ,あくびがよくでる,夜中に. 大声をだす。. 家族歴:実母が自殺。同胞は2人(女,本人)。 妻は健在。子供は2人(女,男)。 既往歴:57歳時にうつ病で精神科に通院したほ かに特記するものはない。 性 格:穏和,小心者,まじめ,神経質。 趣 味:野菜つくり。 生活歴・現病歴:大学卒後,教師として稼働。 X-9年:管理職になり職場での人間関係に苦 労し,精神的に疲れていた。夜中に大声で叫び翌 朝には,そのことを覚えていないことがあった。 人前で話すことが苦痛になったことを主訴に精神 科を受診,うつ病の診断で定期的に通院していた。 X-6年:退職。その後地元公民館の館長を2. 年間勤めたが,かなりのストレスとなり体調不良, 不整脈がみられた。 X年:当院初診。書類の忘れ,言葉がスムーズ に出ない。横になると,すぐに眠る。あくびがよ くでる。思いつきで行動する。夜中に大声をだす。 「人の影が二重に見えたりする。考えが思うよう にまとまらない(注意集中困難,思考渋滞,視覚 認知障害,レム睡眠行動障害:RBD?)。1回目 の入院(3カ月)。WAIS-Ⅲ:TIQ=104(VIQ=. 研究と報告. うつ状態,パーキンソン症候, 幻覚・妄想状態で経過し,認知症に進展した レビー小体型認知症(純粋型)の一剖検例. 三 山 吉 夫 大悟病院認知症疾患医療センター. 初期にはうつ病として治療され,経過中に幻覚・妄想状態,せんもう状態,パーキンソン症候 がみられ,その後認知機能低下が出現した。剖検により脳幹・間脳に加えて大脳皮質にびまん性 に多数のレビー小体(LB)がみられ,βアミロイドやタウ病理がほとんどみられなかったので DLBの純粋型と診断した。DLBは,臨床病理学的に規定される疾患であるが,日常の臨床で神 経病理学的検索が行われている症例は,必ずしも多くないと考える。臨床-神経病理学的概念を より確立するためにも一例一例の検討は必要と考え,13年間臨床経過を観察し,神経病理学的検 索が可能であった症例を報告する。. 九神精医 65:113-122,2019 Key words : DLB, depression, parkinsonism, psychosis, dementia. 〒889-1911 宮崎県北諸県郡三股町大字長田1270. (九州神経精神医学,第65巻,第 3~ 4号,令和1年12月15日発行) 113. 112,PIQ=93),MMSE=28/30,時計図描写テ スト:CDT8/10。東大脳研式記銘力テスト:8.5/ 1.5(有関係/無関係)。認知機能の低下は明らか でなかった。頭部CT・MRI:前頭葉の軽度萎縮 とVSRAD=2.19で側頭葉内側の軽度萎縮が見ら れた。脳血流シンチ:右前頭葉で血流低下。投 薬:①フルボキサミンマレイン酸塩(25)2T/日 (朝・夕),②ジアゼパム(2)1T/夕,③ニトラゼ パム(5)1T+メダゼパム(2)1T/眠前,④酸化マ グネシュウム1.5/日(3×)。退院後:夜中に「ム カデが出た(事実ではない)」と言ってハエ叩き を振り回した。そのことを翌朝にはぼんやりとし か想起できなかった。夜中にうなされたり,玄関 で放尿したりした。「夢の中で誰かが呼んでいる ような気がした」と言った(RBD?)。気がむけ ば,畑の手入れやジョッギングをしていた。動作 が鈍くなり服薬管理があやしくなった。嗅覚異常 や便秘は訴えなかった。人の話を聞いても忘れて いることが多くなった(注意集中困難,記銘力低 下,動作緩慢)。2回目の入院(2カ月)。MRI: 前頭葉萎縮(軽度),VSRAD=2.6(側頭葉内側 の萎縮は進行),IMP-SPECT:前頭・頭頂・後 頭葉・後部帯状回で血流低下。投薬:①バルサル タン(80)1T/朝,朝ニトラゼパム(5)1T/眠前, 眠酸化マグネシュウム1.5/日(3×)。 X+1年:一時期,「霧が晴れたような感じが する」と言っていたが,2カ月後には,「人ごみ に入ると疲れる。体がこわばったりする‥人の名 前が思いだせない‥前の仕事を思い出して気に なったりする‥考えがまとまらない」と訴えた (思考障害,注意集中障害)。「自分を脅しに来る」, 「今まで言わなかった浮気について悩んでいた‥ 20年前のこと‥この1か月間スキャンダルとし て脅されはしないかと不安だった」と話した(被 害・罪責念慮)。「八方ふさがりの気分です‥家の 中に子供が来たり,見えたり,道路標識がほかの 物に見えたりする」と言った(錯視・幻視)。睡 眠はとれていた。3回目の入院(6カ月間)。診 断:うつ病,DLB疑い。投薬:①フルボキサミ ンマレイン塩酸(25)2T/日(朝・夕),②ジアゼ パム(2)2T/日(朝・夕),③ニトラゼパム(5)1T +リルマザホン塩酸塩水和物(2)1T/眠前。向精. 神薬投与による精神状態の変動はみられなかった。 意欲低下,抑うつ気分が持続,促さなければ無為 の生活となった。夜中にトイレに起きた時,「蛇 がいるから殺さないといけない」と言ってハエ叩 きをもってウロウロした(幻覚・夢幻状態)。住 所・名前は正しく書き,簡単な家の図の模写も可 能であった。4回目の入院(3カ月間)。MMSE =25/30,Cognistat:68点,ADASJ-Cog=19.7, FAB=11点,WAIS-Ⅲ:TIQ=68(VIQ=80, PIQ=61)。FAB:10,EEG:軽度全般性徐波化 (軽度異常)。MRI:前頭葉萎縮(軽度)。VSRAD =3.38(側頭内側の萎縮はさらに進行)。IMP- SPECT:後頭葉での血流低下。 X+3年:「コタツ布団の端に孫がいるように. 見える‥近寄ってみると誰もいない‥夜中のこと で日中はみえない」,「よく夢を見る,子供たちが 出てくる。2~3日前は真っ赤な魚が風呂場に出 てきた,夢じゃないと思って妻を起こした」(錯 視,幻覚)。MMSE=22/30。 X+4年:「コタツの周りに人形がたくさんい るように見える‥自分でもおかしいと思う」(病 感の存在)。葬式費用のことを繰り返し言った。 5回目の入院(1カ月)。MMSE=21/30,Cog- nistat:67点。MRI:軽度大脳萎縮,PVH(+), VSRAD=3.51(さらに進行)。MIBG心筋シン チ:集積はみられず,優位な変化なし。この時点 で,臨床診断はDLB,probable。投薬:①ドネ ペジル(3)1T/朝,②クエチアピンフマル酸塩(25) 1T/夕,③センナ(0.5)2P/眠前。ドネペジルの効 果は明らかでなかった。 X+5年:「メモする前に忘れたりする」(病態 認識の存在)。歩行中に左側に傾く(姿勢異常)。 動作が一段と鈍くなった。下着の着脱がスムーズ にできない(パーキンソン症候群)。いびきが大 きい。6回目の入院(2カ月間)。 MRI(Fig. 1):前頭葉の軽度萎縮,側頭葉内 側部の中等度萎縮。MIBG心筋シンチ(Fig. 1): 初期像,後期像ともに心筋への集積を認めなかっ た。IMP-SPECT(Fig. 2):後頭葉での血流低下。 X+6年:便失禁でトイレを汚すことが多く なった。入浴が一人ではできなくなった。7回目 の入院(2ヵ月)。日時は正答した。. 114 DLB(純粋型)の剖検例. X+7年:食事をしたかどうかの記憶があいま になった。「小人が布団の中に入ってくる‥寝息 も聞こえる‥手で払いのけるといなくなる」,「コ タツ布団の模様が小人に見える」(錯視,パレイ ドリア現象)。読字が遅くなった。朝からあくび がよく出る(意識レベルの変容?)。尿失禁が多 くなった。8回目の入院(2カ月間)。MMSE= 21/30,CT,MRI,MIBG-SPECT,IMP-SPECT:. X+5年時の所見とほとんど変化はなかった。投 薬:①ドネペジルD(5)1T/朝,②酸化マグネシュ ウム(0.7g)2P/朝・夕,③レボドパ・カルビドパ 配合錠(100)2T/朝・夕,④フルメテオン(8)1T/ 眠前。 X+9年:9回目の入院(死亡時まで)。「頭の 中がこんがらがっています」「お金を盗られた」 (被害的発言)。妻に「新しい彼女を紹介する」,. Fig. 1 MRI・MIBG(X+5年):MRI:前頭葉の軽度萎縮,側頭葉内側部の中等萎縮。 MIBG:初期~後期ともに心筋への集積がみられない。. Fig. 2 IMP-SPECT(X+5年):後頭葉での血流低下. 115DLB(純粋型)の剖検例. 「何かせんといかん-・思いださん」(とりとめの ない思考)。「先生とは阿蘇であった」(事実無根)。 妻に「机の中に現金を入れておいたけど何に使っ たのか」とか,行ってもいない所に「どうしてそ んなところに行ったのか」と言った。「うちのは 他の男とどこかに出て行ってしまった」(嫉妬念 慮)。過去の体験を断片的に現在の出来事のよう に話した。「最近物忘れがひどくて‥退院できま すか」(病態認識の存在)と聞いたりした。夜中 に女性の部屋に入り,妻と思って女性の衣類に触 れたり,手をひいたりした(人物誤認)。書字困 難で,簡単な図の模写も不能となった。自宅の電 話番号は正しく記憶していた。他県に行っている 息子が帰ってきたときの応対は自然だったと妻は 述べた。失禁しても無関心。ベッドから転落して 右大腿骨頚部骨折し整形外科で手術を受けた(転 院7日後には再入院)。MMSE=17/30,HDS-R= 12/30。MRI:大脳,側頭内側部の萎縮が進行。 IMP-SPECT:頭頂・後頭葉での血流低下,FDG- PET:後頭葉で糖代謝能低下,Pib-PET:βアミ ロイドの沈着はみられなかった。投薬:①ドネペ ジル塩酸塩D(5)1T/朝,②パーキストン L(100) 3T/毎食後,毎センナ(0.5)2P/眠前,眠マグミッ. ト錠(330)4T/朝・夕。臨床診断:DLB,Parkin- son 病。 X+10年:病院名は正しく答えた。「誰かに聴 かれている‥見張られている」(被害的思考)。 「頭の中がすっきりしない‥お金の計算がうまく できない」(認知機能低下を自覚しているような 言動)。自宅に外出した時,仏壇の前で「早く良 くなって帰りたい‥みんなにお世話になって‥」 と言ったりした(思考過程が正常な時も存在)。 「共産党がいるから気をつけないと‥裏で何かさ れるようにある」(被害念慮)と面会に来た妻に 言った。「もう病気が進行して何もできない‥妻 はまだ力があるから」「もうどうなってもいいと 思うけど‥こう考えるのはおかしいとも思う」と 言った。介助する職員を足蹴りしたりした(感情 不安定)。二桁の筆算はどうにかできた。漢字の 書字は困難で,簡単な図の模写も不能となった (Fig. 3)。寡動-寡黙の状態になった。 MRI(Fig. 4)では,前頭葉と側頭葉内側部の 萎縮に進行がみられた。 投 薬:ドネペジル塩酸塩は中止した。①トコ フェノールニコチン酸エステルカプセル(100)3 cap/毎食後,②ヒドロキシドパOD(100)3T/毎. Fig. 3 (X+10年)漢字,計算,模写,文章. 116 DLB(純粋型)の剖検例. 食後,③酸化マグネシュウム錠(330)4T/朝・夕, ④センナ(0.5)2P/眠前。 X+11年:時々誤嚥による熱発が見られた。. PEG造設は家族が希望しなかった。妻と時にま とまった会話をした。夕方になると,落ち着かな い傾向があった(夕方せん妄の傾向)。 X+12年:ベッドから転落する可能性があった ので,床にマットを敷いたら「なんでこんなとこ ろに縛らんといかんのか」(状況の誤認)と言っ た。そのような時でも主治医の顔をみると,笑顔 をみせた(状況の認識はある程度可能)。妻をほ かの女性と間違えたりした(人物誤認,失認?; 人物認識が正しかったり,混乱したりの状態)。 X+13年:熱発が頻回となり,うとうとする状. 態が多くなった。介助しても食べなくなった。肺 炎をくりかえし死亡した。 脳のみ解剖:脳重:1,320g。前頭・側頭葉の軽 度萎縮,海馬の萎縮は軽度。脳幹部では,黒質・ 青斑核の色素脱落(中等度~高度)(Fig. 5)。脳 底動脈には硬化性病変がみられた(Fig. 5A)。 脳の組織学的所見:前頭葉:皮質神経細胞の萎 縮・軽度脱落(Fig. 6a),2~3層に軽度の海綿 状態(Fig. 6b),前頭葉皮質深部の神経細胞,神 経突起に LB(Fig. 6c~f)が存在。 側頭葉内側部の皮質に,多数の LB(Fig. 7a~. b)と深層の小型神経細胞内に LBや神経突起に α-synuclein 陽性所見が存在(Fig. 7c)。後頭葉 には散見する程度。海馬・海馬傍回に LBが存在 (Fig. 8a,b),側頭葉内側の皮質に神経原繊維変 化を散見(Fig. 8c)する。その他の終脳全域にア. ミロイド斑,神経原繊維変化はみられない。 中脳黒質では,色素細胞の中等度脱落(Fig. 9 a)と多数の LB(Fig. 9b)が存在。嗅覚神経細 胞,線条体(Fig. 10a),島葉皮質,無名核,青斑 核(Fig. 10b),縫線核(Fig. 10c),迷走神経背側 核(Fig. 10d)にも LBが存在。 神経病理診断:びまん性レビー小体病(純粋型)。. 考 察. 初期にはうつ病としての治療を受けていた。 DLBの初期に大うつ病の診断が多いという報告 はある28)。本例では,認知機能低下の変動が特徴 的で,最後まで重度認知症には到らなかった。疎 通性が保たれていたことも特徴的であった。常時 ではないが,これらの特徴は,ADの臨床経過と は異なり,皮質下性認知症の特徴を呈していた。 幻覚が夕方~夜間にかけて多いこと,幻視やパレ イドリア現象の背景に意識レベルとの関係を常に 考えておく必要があった。DLBでは,被害妄想 や嫉妬妄想が見られることは多く,人物誤認,カ プグラ症候群も記載されているところである21)24)。 DLB では,RBDの頻度が高い(75%)こともよ く知られている3)6)。純粋型ではAD病変がほと んどみられず,臨床的にはパーキンソン症候で発 症することが多いとされ,老年期発症例では認知 症が先行することが多いとある22)26)。ADに LBD の所見を見ることは珍しくないが,本症例は,記 憶障害-失行-失認などADの定型例としての経 過は見られなかったことから,症候学的にもAD とDLBは鑑別可能と考えた。筆者の経験では,. Fig. 4 MRI・CT(X+10年):前頭葉と側頭葉内側部の萎縮. 117DLB(純粋型)の剖検例. 早期に認知機能低下が目立つ場合は,ADが主疾 患であると考える。このことから,DLBで最も 多いとされる通常型(common type)でも臨床 上可能な限りADとDLBの鑑別をおこない神経 病理学的検索を重ねることが,現在でも必要と考. える。 臨床経過と脳病変との相関について:本例の主 な精神症状であったうつ状態,幻覚・妄想状態, 錯覚(視),誤認,認知機能低下の神経病理学的 背景は,脳幹の病変がドパミン減少→うつ状態,. Fig. 5 脳重:1.320g。側頭葉内側部の軽度萎縮,黒質・青斑核の色素脱落. Fig. 6 Frontal cortex : neuronal loss and atrophy (a : LFB), sponginess (b : H-E), LB-neuritic change (c~d : α-synuclein), LB (e : α-synuclein, f : H-E). 118 DLB(純粋型)の剖検例. 寡動状態に関与し,側頭葉内側部・大脳辺縁系の 病変が幻覚・妄想の発現,大脳皮質の病変が認知 機能の全般性減退に関係したと考える。大脳,脳 幹全域の病変が,脳機能を全般性に減弱させ,意 識レベルに影響を与え,多彩な精神-神経症状の 発現に至ったと理解した。幻覚症状や認知機能低 下に動揺性がみられたことは,病変の質よりも病 変の分布(とくに辺縁系の病変)が,これらの状 態の背景と考えた。本例の神経病理所見は,LB. Fig. 7 LBs in the temporal cortex (a : H-E, b~c : α-synuclein). Fig. 8 LBs in the hippocampal cortex (a : LFB, b : α-synuclein), NFT (c : Bodian). Fig. 9 substantia nigra, neuronal loss (a : LFB) and LB (b : H-E).. Fig. 10 LBs in putamen (a : H-E), N. locus caeruleus (b : α-synuclein), N. dorsalis Raphae (c : H-E), N. dorasalis vagi (d : α-synulein). 119DLB(純粋型)の剖検例. が中枢神経系にびまん性に存在しADの所見は みられなかったことから,LBDのびまん性新皮 質型(diffuse neocortical Lewy body disease); 純粋型(pure type)に該当する所見であった。 DLBの通常型は,ADの病理を合併していること からADの Lewy型と記載されることがある7)9)。 筆者がかつて報告した症例23)は,記憶障害,意欲 減退,言語障害,感情不安定,失行,失認の症状 が見られ,死亡2年前からパーキンソン症候が見 られた症例で,神経病理学的にはADとしての 所見のほかに LBが大脳皮質の深部神経細胞に広 範にみられ, 脳幹, 辺縁系にも多数みられた。 LB の所見(分布)からは,びまん型,common type とされる所見で,脳幹部の病変は,パーキンソン 病に対応する所見であった。この症例については DLBとするかADの Lewy型とするかを検討し たが,臨床経過からADとした。 パーキンソン病に認知症を合併する疾患とし て,グアム島の認知症を伴うパーキンソン病が よく知られている。この症例群では LBの存在は 稀とされている10)。認知症をきたす疾患で,主病 変とは別に LBが存在していることは珍しくな い11)15)16)26)。孤発性ADでの LBまたはαシヌクレ イン陽性神経細胞内封入体の出現頻度は,43.5~ 60.7%と高率である2)8)12)13)。LB は中枢神経系の ほかに神経筋疾患の末梢神経系にも報告されて いる25)。臨床的にADと診断された例が剖検で パーキンソン病(脳幹型)の病理所見であった症 例5)29)や大脳皮質に多数の LBを認めながら生前 認知症が明らでなかった症例14)27)もある。LBは 臨床症候に関係なく,65歳以上の脳では5%にみ られ,パーキンソン病では,86%にみられるとの 報告もある20)。これらの報告から,LBと認知症 の相関については十分に検討されているか否かの 問題は,残っていると考える。 筆者は,LBDの純粋型の頻度はそれほど高く はないと考える。LBの存在だけで LBDの疾患 単位を共有することも一方法ではあるが,臨床- 神経病理学的考察に従えば,パーキンソン病(PD), パーキンソン病+認知症(PDD),DLBを必ずし も同じ範疇にしなくてもよいのではないか,との 考えも可能である。. これまでにも PDの症例でADの神経病理が併 存している例は多いとの報告がある1)15)32)。これ らの症例では,LBは側頭葉皮質にもっとも多く みられている16)32)。 本例も同様であった。 α-synu- clein の蓄積は迷走神経背側核と嗅球(前嗅核) にはじまり,その後延髄から中枢へと上行性に蓄 積が進展し,大脳皮質,島葉,鳥回,帯状回,前 頭前野へとひろがっていくとされている4)。α- synuclein とβ-アミロイド,タウとの強い相関も 報じられているが,本症例にはその傾向はみられ なかったことからこの問題については検討の余地 があると考える。臨床的にはADと診断された 例が,剖検で PD(脳幹型)の病理所見が見られ た症例29)や大脳皮質に多数の LBをみとめながら 生前に認知症が明らかでなかった症例27)もあるこ とから,LBの存在と分布の意義については,さ らに検討を重ねることが望まれる。. (令和2年4月9日 受理). 文 献. 1)Antonie, M., Hakim, M. and Mathieson, G. : Demen- tia in Parkinson disease : A neuropathologic study. Neurol, 29:1209-1214, 1979.. 2)Arai, Y., Yamazaki, M., Hori, O. et al. : α-synuclein- positve structures in cases with sporadic Alzheimer’s disease ; Morphology and its relationship to tau ag- gregation. Brain Res, 888:287-296, 2001.. 3)Boeve, B. F. : REM sleep behavior disorder. Update review of the core features, the REM sleep behavior disorder-neurodegenerative disease association, evolv- ing concepts, controversion and future directions. Ann NY Acad Sci, 1184:15-54, 2011.. 4)Braak, H., DelTredici, K., Rub, U. et al. : Staging of brain pathology related to sporadic Parkinson’s dis- ease. Neurobiol Aging, 24:197-211, 2003.. 5)Dickson, D. W., Fujishiro, H., Delledonna, A. et al. : Evidence that incidental Lewy body disease is pre- synaptic Parkinson’s disease Acta Neuropathol, 115: 437-444, 2008.. 6)Ferman, T. J., Boeve, B. F., Smith, G. 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Neuropathologically, the brain weight was 1,320g. Macroscopic findings showed atro- phy of the medial temporal lobes. Brain stem revealed marked reduction of pigmentation in the substantia nigra. The main histological findings were the presence of abundant LB throughout the central nervous system and brain stem. Cortical LBs were found in the small neurons of the deeper cortical layers, mainly in the temporal, frontal and insular cortices and parahippocampal region. In the brain stem, wide spread presence of LBs were found includ- ing the substantia nigra, locus caeruleus and dorsal raphae nuclei. A few NFTs were ob- served in the hippocampal region. Brain-stem pathology proceeds first to cortical pathology from clinical symptoms. These findings suggest that Lewy body related pathology is associ- ated with initial depressive symptoms. Clinicopathologically, it should be concluded that a common form with Alzheimer’s pathology and a pure form without it could be differentiated.. (Author’s abstract) Kyushu Neuropsychiatry, 65:113-122,2019. 122 DLB(純粋型)の剖検例

Fig. 6 Frontal cortex : neuronal loss and atrophy (a : LFB), sponginess (b : H-E), LB-neuritic change (c〜d : α-synuclein), LB (e : α-synuclein, f : H-E)
Fig. 9 substantia nigra, neuronal loss (a : LFB) and LB (b : H-E).

参照

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