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Mathematical Studies on Quantum Field Theory      (場の量子論の数学的研究)

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 鈴 木 章 斗

     学位論文題名

Mathematical Studies on Quantum Field Theory      (場の量子論の数学的研究)

学位論文内容の要旨

    本研究は、場の量子論における諸問題を数学的に厳密な方法で解決するものである。

この論文は、二部からなり、第一部は「場の量子論のモデルに対するスケーリング極限」、

第 二 部 は 「 不 定 計 量 空 間 上 の 場 の 量 子 論 に 関 す る い く っ か の 側 面 」 で あ る 。     第一部は、Davies (1979)によって導入された量子的粒子と量子場の相互作用系のハ ミルトニアンに対する弱結合極限の理論に関する研究である。特に、Arai (1990)が開発 し た強レ ゾルヴェ ント収 束の擬レゾルヴェント極限を用いるスケーリング極限と呼ばれ る方法を、いくっかの一般的な相互作用系のモデルに応用し、量子場の有効相互作用を導 出した。

    第一章では、Arai、Hirokawa (1997)らによって導入された一般化されたスピンボソ ン(GSB)モ デルに対 するス ケーリン グ極限 が論じら れる。GSBモデ ルのハミ ルトニアン は、スピンボソンモデルのハミルトニアンを一般化し、任意の量子系と量子場との相互作 用系を記述する抽象的なものである。スピンボソンモデルに対しては、既にArai (1990) によって、非相対論的極限に対応するスケーリング極限が論じられているが、本研究では、

よ り一般 的なGSBモデル に対する スケーリ ング極 限を論じ、そのいくっかの応用につい て述べた。

    第二章ではネルソンモデルのある種の一般化を施したモデルに対するスケーリング極 限を論じた。このような一般化によって、非相対論的粒子と内部自由度を持つ量子場が相 互作用するモデルのハミルトニアンの広いクラスに対する弱結合極限が、取り扱えるよう になった。その主な例として、原子核中の核子とアイソスピンの内部自由度をもつ71ニ中間 子の場との相互作用系のハミルトニアンの弱結合極限によって、核子間の有効ポテンシャ ルを導出した。

  第 二部は 、不定計 量空間上の場の量子論に関する構成論的な研究である。物理学にお いて、不定計量空間上の場の量子論は、さまざまな文脈で登場するが、その取り扱いは、

有限次元ベクトル空間や(無限次元)ヒルベルト空間の理論の類推が主であった。そのた め、数学的に厳密な理論の構築が期待され、一時多くの数学者によって、(無限次元)不 定計量空間の理論が研究されたが、その取り扱いの難しさのために、未だ物理的要求を満 たすに至っていないように思われる。本研究では、Krein空間上で定義される場の量子論 についてのいくっかの側面を述べる。

    第三章では、量子電磁力学におけるGupta‑Bleuler形式について、量子電磁場と古典     ‑ 1390―

(2)

場 と の相 互作 用系を例にとり、数学的な考察をした 。まず、状態の空間として、Fock空 間 上に、計量作用素 を用いて、不定計量のKrein空間を定義し、その上に正準交換関係 (CCR)の 表現 をひ とつ 定め 、そ れ を用 いて、作用素 値超関数としての量子輻射場を定義 し た 。こ れら が物理的に要求される場の方程式とHeisenbergの運動方程式の解となるこ と を 証明 した 。通 常のHilbert空 間で は、系のハミ ルトニアンが自己共役である限り、

Heisenberg方 程式を満たす作用素値超関数は一意的 に存在し、多くの場合、それが直ち に 場の方程式の解となる。不定計量空間では、ハミルトニアンは通常の意味での自己共役 性 を失い、  ‑自己共役であるに過ぎず、解の存在も一意性も全く自明ではなぃ。この場 合 に は 、CCRの 表 現 を ひ と っ 固 定 す れ ば 、 解 は 一 意 的 で あ る こ と が 証 明 さ れ る 。 Gupta‑Bleuler形式によ れば、Guptaの補助条件を用 いて、不定計量空間から物理的な状 態 が選びだされ、その状態全体のなす物理的空間は半正定値の部分空間となるはずである。

ひ とたび物理的空間が同定されると、ノルムがゼロのベタトルの空間で割ることにより、

Hilbert空間が構成できて、確 率解釈が可能となる。ところが、物理的空間は、あるベク ト ル方程式の解空間として特徴付けられ、そのべクトル方程式が非自明な解を持たなけれ ば 、物理的空間も自明となり得る。実際、赤外正則条件と呼ばれるある種の可積分性の条 件 の下では、物理的空間が非自明であり、赤外正則条件がなければ、物理的空間が自明に な る事を証明した。これは、赤外異常と呼ばれる現象の一種であると考えられるが、本論 文 では、赤外異常と物理的空間の自明性との関連を見出し た。

    一方 、Guptaの補 助条 件は 、 量子 輻射 場を 用い て定 式化 され るため、CCRの表現の と り 方に 依存 している。実際、上のFock空間上の表 現とは非同値な表現を用いることに よ り、赤外正則条件が満たされなくても、物理的空間が自明にならないようにできること を 証明した。

    また、物理学で期待されるような、物理的空間が満たすべきいくっかの性質(たとえ ば 半 正 定 値 性 ) が あ る こ と を 証 明 し 、Hilbert空 間 で 構 成 さ れ る 量 子電 磁場 の理 論   (Coulombゲージの理論)と の関連についても論じた。

    最後に、Krein空間とその 上の量子論に対する一般論を展開し付録とした。まず付録 Aでは、Krein空間の定義と一般的性質を概観し、 .自己共役性の簡単な判定条件を述べ た 。 付録Bで は、Krein空間上のSchr6di11ger方程式 の解について、半正定値な部分空間 上 ではある種の一意性があることを示した。これにより、三章で物理的空間が存在すれば、

Schr6di11ger方程 式の 解は その 上で 一意 であ ると いえ る。 付 録Cでは、抽象的 なKrein 空 間 上に 不定 計量のFock空間(これもKrein空間になる)が定義できることを示 し、van Hoveモデ ルと いわれる型の抽象的な場の理論のモデ ルを定義した。そのハミルトニアン の .自己共役性とSchr6d血ger方程式の解の存在を一般的に証明した。また、抽象的な 意 味 で の 赤 外 正 則 条 件 の 下 で 、 ハ ミ ル ト ニ ア ン が 固 有 値 を 持 つ こ と を 証 明 し た 。

1391

(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査

教 授 教 授 准 教授

新 井 岸 本 山 / 内

朝雄 晶孝 毅彦

     学位論文題名

R/Iathematical Studies on Quantum Field Theory      (場の量子論の数学的研究)

近年、 量子的 粒子と 量子場 が相互 作用す る系に関 する数 学的研 究が盛んに行われてきている。本論文は、こ うした 研究動 向の中 に位置 付けら れるも のであり 、量子 場の3つ のモデ ルに対 する数 学的に厳密な解析に関 わ るも のであ る。本 論文は 二部か らなり、 第省Bで は,量 子場の2つのモ デルー 一般化 された スピン ボソン モデン レと一 般化されたネルソン型モデル←に対するスケーリング極限を論じ、第二部では、無限次元不定計 量 空間 に お け る量 子 場 の 理論 僵 輔 磯 力学 ) の 基 本的 な モデル のひと っを数 学的に 厳密に 構成し、 その主 要恕陸質を導出している。

  一般化 された スピンポソンモうつレは、抽象的な量子系とボース場カ滞合した系を記述するものであり、応 用範囲 は広い 。著者 は、相 互作用 を記述 する作用 素があ る一般 的なクラスに属する場合に、ハミルトニアン の レゾ ルヴェ ントの 強収束 の意味 において 、スケ ーリン グ極限 の存在 を示し 、量子 場の効 果をとり いれた 量子力学的ハミルトニアンニニニ実効的ハミルトニアンを導いた。この結果の応用として、次の3つの系に関す る実効 ハミル トアン を得ニ た:(1)ア イソス ピンを もっバ イ中間 子と核 カ湘互 作用す る系;(2)格子スピ ンとボース場の相互作用系;(3)フェルミ場とボース場が相互作用する系。

  ―イ没化されたネルソン型モうつレは、非相対論的な量子的粒子とボース場が相互作用する系のモデルの一般 化であ り、そ の特殊 例は、 原子核 物理に おける基 本的な モデル のひとっを与える。著者は、このモデルにつ いても 、スケ ーリング極限を考察し、―搬イ匕されたスピンポソンモデルと同様な結果を得た。応用として、

核子問の相互作用に関する実効ポテンシャルを導出した。

  スケー リング 極限に 関する 以上の 結果は ,いず れも以 前に得られていた結果を非自明な仕方で拡張する新 しい結果であり,独創的で意義深い.

  不定計 量空間 上の量 子場の 具体的 なモデ ルの数 学的に 厳密な研究は、その重要陸にも関わらず、ただちに 直面す る、あ る種の 数学的 困難さ のため に、ほと んど手 付かず の状況にあった。著者は、この困難に取り組 み、本 論文で は、理 論の発 展の基 礎とな る数学的 な枠組 みを論 述した。特に、具体的なモデルの数学的に厳 密な解 析を行 い、より一般的なモデンレを数学的に構築する際の基礎をっくった。この意味でも本論文は独創 的であり、その意義は大きい.

  これを要するに、著者は、量子場のいくっかのモデルに関するスケーリング極限の新知見あるいは無限次元不定 計量空間における量子場の理論に対する新知見を得たものであり、場の量子論の数学的研究ならびに数学における 作用素論に貢献するところ大なるものがある。

  よ っ て 著 者 は 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

1392 ‑

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