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四本の水素結合に基づく相補的塩基対を      含 む 新 規 核 酸 に 関 す る 研 究

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 薬 学 ) 小 島 学 位 論 文 題 名

四本の水素結合に基づく相補的塩基対を      含 む 新 規 核 酸 に 関 す る 研 究

―イミダゾピリドピリミジンヌクレオシドの合成,および      オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド 中 に おけ る 諸 性質 につい て―

学位論文内容の要旨

  DNAは遺 伝情 報 の担 い手 とし てそ の 保存 、伝 達を 行 って いる 。DNAの 二本 鎖構 造 は主 に、

1) 二 組の 相補 的な 塩基 対(A:T,G:C)に よる 水素 結 合の 形成 、2)この塩基対の積み重な り によ るス タッ キ ング 効果 、お よ び3) 糖部 、 リン 酸部 、塩 基 部に よる親水性、疎水性の相 互 作用 によ り二 重 らせ ん構 造を 形 成し 、そ の熱的安定性を維持し ている。また、これらの相 互 作用 は核 酸一 蛋 白質 問な どで の 分子 認識 にも関与しており、様 々な生体機能の調節に深く かかわっている。

  著者 は天 然核 酸 の構 造や 機能 を 参考 にし て、非天然型の新規核 酸を創製することを計画し た 。 特 に 水 素 結 合 と 二 本 鎖 の 熱 的 安 定 性 と の 相 関 〔 天 然DNAで は 、A:T( 二 本 の水 素結 合 )、G:C( 三本 の水 素 結合 )の 二組 の塩 基 対に より 二本 鎖が 形 成さ れ、GCリ ッ チな 配列 ほ ど安 定な 二本 鎖 を形 成す る〕 に 着目 し、 天然には存在しない四 本の水素結合による相補的 な 塩基 対を 形成 す るヌ クレ オシ ド を合 成す れば 、こ の 塩基 対を 組み 込んだDNAでは熱的に非 常 に安 定な 二本 鎖 が形 成さ れる の では ない かと考えた。そしてこ のような機能を有する新規 塩基対による非天然型核酸の合成を計画し、四種の新規三環性化合物、イミダゾ[5.,4.:4,5]ピ リド【2.3‑d]ビリミジンヌクレオシド(NN,00 NO,ON)をデザインした。NN体と00体、No体と ON体は それ ぞれ 四 本の 水素 結合 に よる 塩基 対形 成が 可 能で あり 、DNA二本鎖内ではこの四本 の 水素 結合 形成 に よる 二本 鎖の 安 定化 が期 待できる。さらにこれ らの化合物では塩基部にイ ミ ダゾ ール 環‐ ビ リジ ン環 ‐ピ リ ミジ ン環 からなる三環骨格を有 しているため、天然型の核 酸 塩基 と比 ベ芳 香 環の 広が りに よ る強 いス タッキング効果が予想 され、この効果により二本 鎖 のさ らな る安 定 化が 期待 され る 。こ のよ うな機能を有する核酸 誘導体の合成は今までに報 告 例が なく 、そ の ためDNA二本 鎖内 にお ける 様 々な 性質 の解 析 を行 うことは非常に意義深い ことであると考えられる。

  目的化合 物のうち、NN体はAICA2.‐ デオキシリボシドより誘導した4.シアノ‑5‑ヨードイミ ダゾールヌ クレオシドと4‐アミノ‑2‑ク ロルピリミジンの有機スズ 化合物との間でのバラジウ ム触媒を用 いたクロスカップリング反応 を利用して合成した。他の 化合物も同様にイミダゾー ル ヌク レオ シド の ヨード体と2,4置換 ピリミジンの有機スズ化合物 を用いて合成した。まず、

NMR測 定、 およ びNOE実 験 によ り合 成し た化 合 物の 立体 構造 解析 を 行っ た。 そし て 、四 種の 化 合物 はい ずれ も 糖部パッカリング様 式がC2.‑endo構造であり、 グリコシル結合回りの配向 がanti配座 をと っ てい るこ とを 明 らか にし た。 この 構 造は 天然 のDNA二本鎖内におけるデオ キ シヌ クレ オシ ド の構 造に 類似 し てお り、 三環性化物を用いて合 成した非天然型核酸も天然

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型 に 類 似 し た 構 造 に よ り 二 本 鎖 を 形 成 可 能 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。   っぎ に糖 部 保護 体を 用い て 温度 可変NMR測定 を行 い、 予 想し た塩基対が形成可 能であるか 検 討し た。 そ の結 果、No体 、ON体 はそ れぞれ単独で四 本の水素結合によるアンチ パラレル型 の 二量 体を 形 成し てい るこ と がわ かっ た。No体とON体 の1対1混合溶液ではこの二 量体のシグ ナ ルに 加え 予 想し たN°体 とON体の 間で の 塩基 対形 成を 示 すシ グナルが観察され た。げ体と Oo体につ いても塩基対が実際に形成 されることを確認した。

  続い て、 三 環性 化合 物を オ リゴ ヌク レオ チド 中 に導 入し 、NN体と00体、No体 とON体 との 塩 基対 がDNA二 本鎖 内 でも 形成 可能 であ る かを 調べ た。 各 三環 性化合物は塩基部 を適切に保 護 した 後ア ミ ダイト体へと 変換し、DNA自動合成機によ りoligoI〜IVを合成した。OligoI,II は17 merの中心に一残基三環性化合 物を導入した配列であり、oligo III,IVは中心に連続三残 基 の三 環性 化 合物 を導 入し た 配列 であ る。この二組の 二本鎖について熱変成法に より50q0融 解 温度 、お よ び自 由エ ネル ギ ー変 化を 算出 し、 こ れら の結 果を 比較することによ りDNA二本 鎖内にお ける三環性化合物の水素結 合能の評価を行った。

  oligo.I,IIを用いた場合では二本 鎖の融解温度の差が小さく、ほとんど塩基特異性が観察さ れなかっ た。一方、三環性化合物を 中心に連続三残基導入したoligo. III,IVの二本鎖では、い ず れの 化合 物 にも 特徴 的な 塩 基特 異性 が観察された。 このうち最も安定な組み合 わせはや体 とON体 との 組 み合 わせ であ り 、こ のと きの融解温度は 天然型で最も安定なG:C塩 基対よりも 18度高 く、 や 体とON体 の一 組 の塩 基対 あた りG:C塩 基対 と 比較 して6度 以上 の安 定化 効 果が 得 ら れ た 。 こ の 結 果 よ りDNA鎖 内で のNo体とON体の 塩基 対に よる 四 本の 水素 結合 形成 が 強 く 示 唆 さ れ た 。NN体 と00体 の組 み合 わ せで もG:C塩 基対 より 高い 融 解温 度が 観察 され 、 今 回 合成 した ニ 組の 新規 塩基 対 によ る二 本鎖の安定化効 果が示された。その他にもNo:No塩基 対 など いく っ かの 安定 な組 み 合わ せが 見っかったが、 いずれの場合も二本鎖の熱 的安定性と 塩 基対 間で の 水素 結合 形成 能 との 間に 強い相関が観察 された。各三環性化合物は 天然核酸塩 基 と組 み合 わ せた 場合 でも 塩 基特 異性 を示し、同様に 二本鎖の熱的安定性と水素 結合形成能 との相関 が観察された。

  また 、オ リ ゴヌ クレ オチ ド 中の 様々 な部位に三環性 化合物を導入した二本鎖の 融解温度の 測 定に より 、 三環 性化 合物 と の塩 基対 による二本鎖の 安定化には、三環性化合物 が連続して 二 本鎖 内に 導 入さ れて いる こ とが 必要 であることを示 した。これは、三環性化合 物による塩 基 対が 天然 型 の塩 基対 に比 べ 嵩高 く、 そのため導入部 位前後の塩基対を不安定化 しているた めである と考えられる。

  さら に著 者 は三 環性 化合 物 によ るス タッキング相互 作用の評価を行ない、二本 鎖の安定化 が 三環 性化 合 物同 士、 ある い は三 環性 化合物と天然型 塩基との間での四本、また は三本の水 素 結合 によ る 安定 な塩 基対 形 成と 同時 に、三環性化合 物による強いスタッキング 相互作用も 大 きく 寄与 し てい るこ とを 明 らに した 。またその効果 が塩基部の極性により異な ることが示 唆された 。

  最 後 に 三 環 性 化 合 物 を 導 入 し たDNAテ ン プ レ ート と3ZPラ ベル し たプ ライ マー を用 い て Klenow Fragmentにより鎖 伸長反応を行い、三環性化合 物がポリメラーゼの認識に 及ぼす影響 を 調べ 、先 に 示し た三 環性 化 合物 の水 素結合能と、ポ リメラーゼによる認識との 関係の考察 を 行っ た。 三 環性 化合 物を 含 むテ ンプ レートは、天然 のヌクレオシドのものと比 較して低効 率 な が ら 鎖 伸 長 が 起 こ るこ とが わか り 、N0体とO〜 体で は完 全鎖 長 の生 成も 確認 され た 。 dNrP取 り込 み 実験 では 、各 三 環性 化合 物の 相補 的 な部 位へ 取り 込ま れ るdNrPに 特異 性 が観 察 され た。 そ していくっか では水素結合能とKlenowFragmcntIこよる認識に相関関 係が見い出 さ れ、KIenowFragmcntが三 環 性化 合物 を認識する際に は、その水素結合能を認識 し対応する dNlPを取 り込んでいることが強く示 唆された。

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(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    松田    彰 副査    教授    大塚栄子 副査    助教授   周東   智 副査    助教授   井上英夫

     学位論文題名

四本の水素結合に基づく相補的塩基対を      含 む 新 規 核 酸 に 関 す る 研 究

一イミダゾピリドピリミジンヌクレオシドの合成,および      オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド 中 に おけ る 諸 性質 につ いて―

  著 者 は 、 天 然 核 酸 の 構 造 や 機 能 を 参 考 に し て 、 非 天 然 型 の 新 規 核 酸を 創 製 す る こ と を 計 画 し た 。 特 に 水 素 結 合 と 二 本 鎖 の 熱 的 安 定 性 と の 相 関 〔 天 然 DNAで は 、A:T( 二 本 の 水 素 結 合 ) 、GニC( 三 本 の 水 素 結 合 ) の 二 組 の 塩 基 対 に よ り 二 本 鎖 が 形 成 さ れ 、GCリ ッ チ な 配 列 ほ ど 安 定 な 二 本 鎖 を 形 成す る 〕 に 着 目 し 、 天 然 に は 存 在 し な い 四 本 の 水 素 結 合 に よ る 相 補 的 な 塩 基 対 を形 成 す る ヌ ク レ オ シ ド を 合 成 す れ ぱ 、 こ の 塩 基 対 を 組 み 込 ん だDNAで は 熱 的 に 非 常 に 安 定 な 二 本 鎖 が 形 成 さ れ る の で は な い か と 考 え た 。 そ し て こ の よう な 機 能 を 有 す る 新 規 塩 基 対 に よ る 非 天 然 型 核 酸 の 合 成 を 計 画 し 、 四 種 の 新規 三 環性化合物、イミダゾ[5.,4.:4,5]ピリド[2,3―d]ピリミジンヌクレオシド(NN, 00,No,ON)をデザインした。

  目 的 化 合 物 の う ち 、NN体 はAICA2. ― デ オ キ シ リ ボ シ ド よ り 誘 導 し た4ー シ ア ノー5− ヨー ド イ ミ ダゾ ー ー ルヌク レオシド と4‑アミ ノ−2−ク口 ルピリミ ジン の 有 機 ス ズ 化 合 物 と の 間 で の バ ラ ジ ウ ム 触 媒 を 用 い る ク 口 ス カ ッ プ リ ング 反 応 で 合 成 し た 。 他 の 化 合 物 も 同 様 に イ ミ ダ ゾ ー ル ヌ ク レ オ シ ド の ヨ ‐ ド体 と 2,4置 換 ピ リ ミ ジ ン の 有 機 ス ズ 化 合 物 を 用 い て 合 成 し た 。 ま ず 、NMR測 定 、 お よ びNOE実 験 に よ り 合 成 し た 化 合 物 の 立 体 構 造 解 析 を 行 っ た 。 四 種 の 化 合 物 は い ず れ も 糖 部 パ ッ カ リ ン グ 様 式 がC2.‑endo構 造 で あ り 、 グ リ コ シ ル 結 合 回 り の 配 向 がanti配 座 を と っ て い る こ と を 明 ら か に し た 。 こ の構 造 は 天 然 のDNA=本 鎖 内 に お け る デ オ キ シ ヌ ク レ オ シ ド の 構 造 に 類 似 し て お り 、 三 環 性 化 物 を 用 い て 合 成 し た 非 天 然 型 核 酸 も 天 然 型 に 類 似 し た 構 造 に より 二 本鎖を形成可能であることが示唆された。

(4)

   っぎに糖部保護体を用いて温度可変 NMR 測定を行い、予想した塩基対が 形成可能であるか検討した。その結果、 No 体、ON 体はそれぞれ単独で四本 の水素結合によるアンチバラレル型の二量体を形成していることを明らかに した。No 体とON 体の1 対 1 混合溶液ではこの二量体のシグナルに加えNo 体と ON 体の間での塩基対形成を示すシグナルが観察された。NN 体とOo 体につい ても塩基対が実際に形成されることを確認した。

   続いて、三環性化合物をオリゴヌクレオチド中に導入し、NN 体とOo 体、

No 体とON 体との塩基対がDNA 二本鎖内でも形成可能であるかを調べた。各 三環性化合物は塩基部を適切に保護した後アミダイト体へと変換し、 DNA 自動合成機によりoIigol ・lV を合成した。OIigol ,‖は17mer の中心に一残基 三環性化合物を導入した配列であり、oIigo 川,lV は中心に連続三残基の三環 性化合物を導入した配列である。この二組の二本鎖について熱変成法により 50 %融解温度、および自由工ネルギー変化を算出し、これらの結果を比較す ることによりDNA 二本鎖内における三環性化合物の水素結合能の評価を行っ た。

  OIigo 川|を用いた場合では二本鎖の融解温度の差が小さく、塩基特異性が ほとんど観察されなかったが、oligoIII ,IV の二本鎖では、いずれの化合物に も特徴的な塩基特異性が観察された。このうち最も安定な組み合わせはNo 体と〇〜体との組み合わせであり、このときの融解温度は天然型で最も安定 なG ニ c 塩基対よりも18 度高く、No 体とON 体の一組の塩基対あたりG :C 塩基対 と比較して 6 度以上の安定化効果が得られた。この結果よりDNA 鎖内でのN0 体と O 〜体の塩基対による四本の水素結合形成が強く示唆された。 NN 体とOo 体の組み合わせでもG :C 塩基対より高い融解温度が観察され、今回合成した 二組の新規塩基対による二本鎖の安定化効果が示された。各三環性化合物は 天然核酸塩基と組み合わせた場合でも塩基特異性を示し、同様に二本鎖の熱 的安定性と水素結合形成能との相関が観察された。

   さらに著者は三環性化合物によるスタッキング相互作用の評価を行ない、

二本鎖の安定化が三環性化合物同士、あるいは三環性化合物と天然型塩基と の問での四本、または三本の水素結合による安定な塩基対形成と同時に、三 環性化合物による強いスタッキング相互作用も大きく寄与していることを明 らかにした。またその効果が塩基部の極性により異なることが示唆された。

   最後に三環性化合物を導入した DNA テンプレートと 32P ラベルしたプライ マーを用いてK |enowFragment により鎖伸長反応を行い、三環性化合物がポ リメラーゼの認識に及ぽす影響を調ベ、先に示した三環性化合物の水素結合 能と、ポリメラーゼによる認識との関係の考察を行った。三環性化合物を含 むテンプレートは、天然のヌクレオシドのものと比較して低効率ながら鎖伸 長が起こることがわかり、 No 体と ON 体では完全鎖長の生成も確認された。

dNTP 取り込 み実験では 、各三環性化合物の相補的な部位へ取り込まれる

(5)

dNTP に 特異 性が観 察さ れた 。そ してい くっ かで は水 素結合 能とKlenow fragment による認識に相関関係が見い出され、Klenow fragment が三環性化 合物を認識する際には、その水素結合能を認識し対応する dNTP を取り込ん でいることが強く示唆された。

   以上のように本研究は、四本の水素結合に基づく相補的塩基対を用いた新

規核酸に関する知見を得たものであり、博士(薬学)の学位を授与するに足

る内容を持つものと認定した。

参照

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