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巻末資料 目次

【資料1】PISA2009年調査結果からみられた読解力における課題(1.1.4より)   ・1

【資料II】キー一一一・コンビチンシーとは(1.2より)       ・2

【資料皿】PISA調査とは(1.2より)       ・3

【資料IV】PISA型読解力の各側面の定義(2. 1.2より)       ・7

【資料V】PISA調査「熟考・評価」問題で求められる読解力の分析(2.1.4より)  ・11

【資料VI】PISA型読解力についての先行研究の分析(2.4.2より)         ・17

【資料町】教材分析項目の解説(3.6.2より) ・……・・…・…・…・・………・   ・20

【資料皿】読解力測定テスト問題用紙(4.1,4.4,5より)       ・26

【資料IX】プロジェクト実習「ばらの谷」教材分析(4.2より)      ・28

【資料X】プロジェクト実習「ばらの谷」で使用した主なワークシート      ・34

【資料XI】改善実習「海のいのち」教材分析(1)(5.1より)         ・36

【資料XH】改善実習「海のいのち」教材分析(2)(5.2より)        一…39

【資料X皿】改善実習「海のいのち」で使用した主なワークシート(5.1より)   ・48

【資料XIV】改善実習「注文の多い料理店」の単元計画  ………・・…・………・  ・53

【資料XV】改善実習「注文の多い料理店」の教材分析      …・・58

【資料XVI】改善実習「注文の多い料理店」で使用した主なワークシート     ・68

【資料XVII】改善実習「注文の多い料理店」における児童の成果物例        ・72

【資料xwn】教材分析用ワークシート(教師用)  ………・・…・………一・・…83

(2)

【資料1】PISA2009年調査結果からみられた読解力における課題(1.1.4より)

【資料1】PISA2009年調査結果からみられた読解力における課題(1.1.4より)

 「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2009)について[高木文部科学大臣コメント]」に よると,2009年忌おけるPISA調査の結果,「読解力は,必要な情報を見つけ出し取り出す ことは得意だが,それらの関係性を理解して解釈したり,自らの知識や経験と結び付けた

りすることがやや苦手であること」が明らかとなった1)。

 このことについて具体的に知るため,公表されている調査結果2)を分析し,読解力問題 の中で,日本における無答率が20%を越える問題を取りだし,その傾向を調べてみた。

  表{ PISA2009年調査読解カリテラシーにおける,無答率が20%以上の問い一覧

ユニットの名称 小問

ヤ号

テキスト

^イプ

テキスト

@形式 読解の側面

用途・状況

出題形式 Rホ

ヨ鍛滋ミ  窄

OECD ウ答率

日本

ウ答率 OECD ウ竺率

携帯電話の安全性 問3 解説 非連続 熟考・評価 公的 自由記述 獄嚇、1 24.4 61.1 549

芝居は最高 問3 物語 連続 統合・解釈 私的 自由記述 羅玉、繕 25.9 50.2 49.7

薬物を与えられたクモ 問2 解説 連続 熟考・評価 公的 自由記述 3些葉 18.5 49.3 47.6

薬物を与えられたクモ 問4 解説 連続 統合・解釈 公的 自由記述 22.3 9.7 58.1 73.2

イソツブ物語 問3 物語 連続 熟考・評価 私的 自由記述 2轟.嚇 11.3 66.5 67.6

わたしも交換留学生?※ 問2 解説 連続 熟考・評価 教育的 自由記述 1鳩.室 18.4 42.6 365

南極点 問1 解説 混成 ㎜へのアクセス・取りoし 数育的 短答 25? 272 49.5 40.3

メガネ技師 問3 記述 連続 熟考・評価 職業的 自由記述 27.4 21.7 62.6 55.4

二二 問4 解説 非連続 熟考・評価 公的 自由記述 烈12 19.6 509 43.3

三眠 問5 解説 非連続 熟考・評価 公的 自由記述 ?B9 21.2 47 377

こけし名人 問3 物語 運続 統合解釈 私的 自由記述 慧4§ 16.7 494 32.5

世界の言語 問3 解説 混成 統合・解釈 教育的 自由記述 34ノ 28.9 51 37.7

ナルキッソス 問2 物語 運続 統合解釈 私的 自由記述 3蒔窯 22.7 26.4 17

月リレオ 問3 議論 連続 熟考・評価 私的 自由記述 猶、5 16.7 3a3 353

ガリレオ 問4 議論 連続 熟考・評価 私的 自由記述 45i 4Q4 249 247

ニキビ 問3 指示 連続 熟考・評価 公的 自由記述 窯3.ア 旧,9 31.2 48.7

張下餓藥経年変化で、2◎0野2000が+11.7

 出題形式では,自由記述形式が約94%と圧倒的に多く,無回答率が高い問題はほとんど が自由記述形式であることが分かった。つまり,いかようにも解釈が可能な問いに対して 自分の考えを持ち,書くことを苦手とする傾向があることがうかがえる。また,読解の側 面では「熟考・評価」が約63%と最も多く,次で「統合・解釈」が約31%で続き,文部科 学大臣コメントを裏付ける結果となっている。

 以上の日本の子どもの読解力の実態から,

(1)情報の関係性を理解して解釈したり,自らの知識や経験と結び付けたりすること

(2)いかようにも解釈が可能な問いに対して自分の考えを持ち,発信すること を育むことが,現在の日本の教育において必要な視点と言える。

1)文部科学省「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2009)について[高木文部科学大臣コメント]」, http://ww  w.mext。 go. jp/b_menu/daijin/detai1/1299985,htm,2010年12月

2)国立教育政策研究所『生きるための知識と技能OECD生徒の学習到達度調査2009年調査国際結果報告書』,

 明石書店,2010年,pp.70−75

(3)

【資料H】キー・コンビチンシーとは(1,2より)

【資料E】キー・コンビチンシーとは(1.2より)

 PISAが提起した読解力リテラシーとは,その上位概念であるコンビチンシーの一環と して主張されたものである。その「上位概念」とは,OECDが, DeSeCoプロジェクトを 通じて,「変化」「複雑i性」「相互依存」に特徴付けられる世界へ対応できる能力とし て整理した「キー・コンビチンシー(key competency)」である。 DeSeCoが示すキー

・コンビチンシーの概念枠組みは以下の通りである。

①社会・文化的,技術的ツールを相互作用的に活用するカ

②社会的に異質な集団で交流する力

③自立的に行動する能力

 DeSeCoは,「キー・コンビチンシーに必要なのは,認知的で実践的な技能,創造的な能 力に加え,態度や動機付け,価値観といった他の心理社会的な資源の動員」であるとし,

「キー・コンビチンシーは,単なる能力や技能ではない」と位置付けている。

つまり,キー・コンビチンシーとは知識基盤社会における社会生活に必要な能力の概念を 示したものと言え,「学校の中だけでしか通用しない学力」とは異質なものと位置付けら れる。こうして定義されたコンビチンシーは,「すべての個人」にとって「幅広い文脈」

において「重要で複雑な要求や課題に答えるために有用」であり,「個人の人生の成功と 社会の機能」に貢献できるとしている。

 このうち,「相互作用的に道具を用いる」のカテゴリーは,

○言語,シンボル,テクストを相互作用的に用いる

○知識や情報を相互作用的に用いる

○技術を相互作用的に用いる

の3つで構成されており,PISA型読解力は,この「言語,シンボル,テクストを相互作用 的に用いる」ことを成立させるための「道具(tool)」として位置付けられている。つま

り,PISA型読解力とは,キー・コンビチンシーで示された社会生活に必要な能力の概念に おける教育内容としてのリテラシーとして定義されたものである。

本項の記述は,ドミニク・S・ライチェン ローラ・H・サルガニク編著 立田慶裕監訳『キー・コ ンビチンシー 国際標準の学力を目指して』,明石書店,2006年,を参考にした。

(4)

【資料皿1PISA調査とは(1.2より)

【資料皿】PISA調査とは(1.2より)

 PISA調査とは, Programme for International Student Assessment(生徒の学習到達度 調査)の略で,OECD(Organization for Economic Cooperation and Development)によ る国際的な学力調査である。2000年,2003年,2006年に続き,2009年に第4回目の調査が 行われた。

 PISA調査の目的は,義務教育終了段階の15歳児が持っている知識や技能を,実生活の様 々な場面でどれだけ活用できるかを測ることを目的としたものである3)。つまり,特定の 学校カリキュラムをどれだけ習得したかをみるものではなく,知識や技能を使って実生活 で遭遇するような課題を解決することのできる能力に焦点を当てたものである4)。調査は 読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシー・…の3分野について実施され,2009年の第4 回調査では,日本を含む65力国・地域,約47万人に生徒を対象に調査が実施された。

 調査結果は,OECD加盟国の生徒の平均得点が500点,約3分の2の生徒が400点から600点 の間に入るように換算されて算出される。また,調査問題の難易度をもとに得点をスケー ル化したものを習熟度(proficiency)あるいは習熟度レベル(proficiency leve1)と 呼び,読解力では2009年調査より8段階(レベル6〜レベル2,レベル1a,レベル1b,

レベル1b未満)に分けている。日本の読解力の結果は表2,3の通りである5)。

表2 PISA調査における読解力の結果の推移(1)

レベル Pb未満

レベル@1b レベル@1a レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 レベル6

2009年調査 1.3% 3.4% 8.9% 18.0% 28.0% 27.0% 11.5% 1.9%

OECD平均 ■ 1」% 4.6% 13.1% 24.0% 28.9% 20.7% 6.8% 0.8%

レベル葉未満 レベル書 レベル盆 レベル3 レベル4 レベル5 2006年調査 6.7% 11.7% 22.0% 28.7% 21.5% 9.4% 一一

OECD平均 7.4% 12.7% 22.7% 27.8% 20.7% 8.6% 2003年調査 1    7.4% 11.6% 20.9% 27.2% 23.2% 9.7% 一 OECD平均 6.7% 12.4% 22.8% 28.7% 21.3% 8.3% 2000年調査 2.7% 7.3% 18.0% 33.3% 28.8% 9.9%

OECD平均

1

6.0% 1t9% 2t7% 28.7% 22.3% 9.5%

3)経済協力開発機構(OECD)編著 国立教育政策研究所監訳『PISAの問題できるかな? OECD生徒の学習到達  度調査』,明石書店,2010年,p,14

4)同上書3),p.15 5)前掲書2),p. xx

(5)

1資料皿lPISA調査とは(1.2より)

      6)

衰3PISA調査における読解力の結果の推移(2)

      2000年調査    2003年調査    2006年調査    2009年■査   日本の得点       498点

  OECD平均     500点      494点      492点      493点 OECD加盟国口位  8位(28か国)   12位(30か国)  12位(30か国)   5位(34か薗)

      10〜18位      9〜16位      3・》6位 全参加国中順位  8位(32か国)   14位(41か国)  15位(57か国)   8位(65か国)

       3〜10位     12〜22位     11〜21位      5・》9位

  ※平均得点には丁丁が含まれるため,続計的に考えられる上位及び下位の順位をOECD加盟国/全参加国の中で示したもの

 表2,表3の結果から分かるように,日本は2003年調査結果が明らかになってから「PISA ショック」と呼ばれる読解力低下が広く報道された。しかし,総合読解力では2009年調査 ではかなり2000年調査時にもどってきたことが分かる。

eレベル1b9レベル1bOレベル1●0レベル2eレベル3●レベル4●レベル50レベル6

㎜臓田川鵬瓢鞘蹴蹴鵬

      日本       上潅      フィンランド     韓国

図1PISA2009年調査における総合続解力の結果の三島国別比較n

 また,図1は総合読解力の主要国別比較である。

側面別に比較してみる(次頁表4,表5,表6)。

アメリカ OECD平均

これだけではやや分かりにくいので,

6)前掲書2),p. xx 7)前掲書2),p.42

(6)

【資料皿】PISA調査とは(L2より)

表4 習熟度レベル別の生徒の割合(情報の取り出し)8)

国  名 レベル1b

@未満 レベル1b レベル1a レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 レベル6 Lv 1以下 Lv4以上

日本 1.9 3.2 8.0 16.2 25.4 27.0 14」 4.2 13」 45.3

上海 0.5 1.5 5.7 14.8 26.1 29.5 17.3 4.6 7.7 514

フィンランド 0.8 2.5 7.8 172 27.0 27.4 14.2 3.1 11.1 44.7

韓国 0.3 t2 5.5 15.9 30」 30.3 13.9 2.7 7.0 46.9

アメリカ 1.2 4.9 13.8 24.8 27.5 19.2 7.2 1.3 19.9 27.7

OECD平均 Il  2.01  5.O I 12.61 22.41 27.5  20、9   8.1   t4  19,6  30.41

l  l  l  l

表5 習熟度レベル別の生徒の割合(統合・解釈)9>

国  名 レベル1b

@未満 レベル1b レベル1a レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 レベル6 Lv 1以下 Lv4以上

日本 t2   R.4 9.3 18.9 27.1 26.2 11.3 2.6 13.9 40.1

上海 1   0.0 0.5 3.4 13.3 28.3 33.2 18.0 3」 3.9 54.3

フィンランド 1   0.2 1.3 6.3 16.8 297 30.0 で3.6 2.2 7.8 45.8

韓国 1   0.2 0.9 4.8 15.7 31.7 32.4 12.9 t4 5.9 46.7

アメリカ 1   0.7 4.7 14.5 24.9 26.0 19」 8.2 t8 19.9 29」

1 i

OECD平均 ll  1.11  4.6  13.6  24.21 28.1  20.21  7,21  1」  192  28.51

l  l

表6 習熟度レベル別の生徒の割合(熟考・評価)10)

国  名 レベル1b

@未満 レベル1b レベル1a レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 レベル6 Lv1以下 Lv4以上

日本 t9 3.9 9.1 17.8 25.9 25.0 12.7 3.6 14.9 4t3

上海 0.2 0.6 4.2 13.2 27.6 32.9 17.9 3.4 5.0 54.2

フィンランド 0.4 t3 6.3 16.9 3α5 3α0 12.8 1.8 8.0 44.6

韓国 0.3 1」 5.3 15.5 30.1 31.7 14.0 2.0 6.7 47.7

アメリカ 0.5 3.3 11.1 22.2 27.4 23.1 10.2 2.2 14.9 35.5

1

OECD平均 ll  1.61  4.9 i 12,8  23、O l 28.21 20.81  7.6!  1.21  1931 29.6

 習熟度レベル別割合を側面ごとに上位群の国々(上海・フィンランド・韓国)と比べて みると,特に統合・解釈と熟考・評価で,レベル1未満の割合が相対的に高く,レベル4以 上の割合が相対的に低いことが分かる。

8)前掲書2),p.45 9>前掲書2),p.49 10)前掲書2),P.50

(7)

【資料皿]PISA調査とは(1.2より)

読解力分野の調査問題は,次のような構成要素によって作成されている。

・テキストの形式…連続型,非連続型,混成型,複合型

・側面…情報へのアクセス・取り出し,統合・解釈,熟考・評価

・テキストが作成される用途・状況…私的,公共的,職業的,教育的

・テキストタイプ…解説,物語,議論,記述,指示

・問題形式…選択肢,複合的選択肢,求答,短答,自由記述

 全ての読解力の問題は,この「テキストの形式」「側面」「用途・状況」「テキストタイ プ」に表すことができる。下の表7は,PISA2009年調査の読解力設問全101問を分類したも のである。

表7 読解力問題の内容・出題形式別問題数11)

内容 全問瓠数 多肢還択 ス肢遇択複合的 求箸 自由記述 短箸

テキストの形式別

連続型 62 26 5 2 27 2

非連続型 27 7 3 6 7 4

混成型 7 4 1 0 1 1

複合型 5 2 0 2 1 0

101 39 9 10 35 7

側面別

情報の取り出し 23 4 3 7 3 6

統合・解釈 53 30 6 3 13 1

熟考・評価 25 5 0 0 20 0

101 39 9 10 7

テキスト・タイプ別

解説 36 16 2 3 12 3

物語 16 6 0 0 9 1

議論 19 5 3 4 7 0

記述 19 9 2 1 5 2

指示 11 3 2 2 3 1

101 39 9 10 36 7

用途・状況別

私的 33 9 2 4 16 2

公的 25 13 2 2 7 1

職業的 17 4 3 2 7 1

教育的 26 13 2 2 6 3

101 39 9 10 36 7

 形式別では「連続型」が約6割を,側面別では「統合・解釈」が半数を,テキストタイ プでは「解説」が約4割を,出題形式別では「自由記述」と「多肢選択」がそれぞれ約4割 を占めていることが分かった。

11)前掲書2),p.35

(8)

【資料IV】PISA型読解力の各側面の定義(2.1,2より)

【資料W】PISA型読解力の各側面の定義(2.1.2より)

 PISA型読解力の各側面は, OECDによって詳細に定義付けられ,その側面における行為や PISA調査における課題例が示されている。ここでは, PISA型読解力の各側面の定義につい てある程度整理した上で示しておく。

1.情報の取り出し く定義〉

 与えられた情報空間に順応し,その中を進んで,1つまたは複数の別個の情報を探し出 し,取り出すこと

〈課題例〉

 求人広告から雇用主が求めている詳細情報を探し出すこと,複数の識別番号の点いた電 話番号を見つけること,誰かが行った主張に賛成・反対するための特定の事実を見つける

ことなど く行為1>

 設問で与えられた情報と,テキストの中のそれと全く同じ表現か同じ意味の情報を一致 させ,これを利用して,求められている新たな情報を発見しなくてはならない。(文字通 り一致しているもの,または意味が一致しているものを探さなくてはならない。)

〈行為2>

 取り出しが,必要となる情報を選び出すプロセスを指すのに対し,アクセスは,必要な 情報が位置する場所一情報空間一にたどり着くプロセスを言う。

2.統合・解釈 く定義〉

 統合・解釈とは,テキストが内部的に意味をなすように読む素材を分析することである。

解釈とは,言及されていないものから意味を成立させるプロセスを意味する。明確でない 関係を認識したり特定したりする際に,解釈という行為が必要となる。従って,前述した ような統合のプロセスのどこかに,たいていの場合,ことによると常に,解釈というプロ セスが伴うこととなる。よって,統合プロセスと解釈プロセスの関係は密接で循環的なも のと見ることができる。統合のプロセスでは,まずテキスト内の関係を推論し(一種の解 釈),次に諸情報をまとめ上げることで,新たに統合された全体を形成するような解釈が 可能となる。

(9)

【資料IV】PISA型読解力の各側面の定義(2.1.2より)

 2.1 解釈

〈定義〉

 解釈とは,明言されていないものの意味を理解するプロセスをいう。解釈する際,読み 手はテキストの一部または全体の根底にある前提や含みを明らかにしている。このアプロ ーチには,多岐にわたる認知活動が含まれる。

〈行為〉

 テキストの一部分と別の部分の関連性を推測する,テキストを分析して主要な見解の要 約を取りまとめる,主要な要素と副次的な要素の区別を推測する,テキストで先に一般的 な言葉で記述されたことについての具体例を見つけ出す,といったことが,これに当たる。

2.2 統合

〈定義〉

 統合とは,テキストの統一性に対する理解を示すことである。

〈行為>

 2つの連続した文章の局部的な一貫性を認識することや,複数の節の間の関係を理解す ること,複数のテキストをつなぐ関連性を見抜くことなどが,これに当たる。いずれにし ても,統合には,意味をなすように様々な情報を結び付けることが必要となる。

2. 3 幅広い理解の形成 く定義〉

 読み手はテキストを全体として,あるいは幅広い視野から考察しなくてはならない。

〈課題例〉

 テキストのタイトルやテーマを選択させたり,つくらせたりする,単純な指示の順番を 説明させる,グラフや表の主な次元を特定させる,などがある。この他にも,物語の主人 公,背景,境遇を説明させたり,文学的テキストの主題を書かせたり,地図・挿絵の目的 や用途を説明させる課題が考えられる。

 この側面については,主題または主要な考えが明確に述べられている場合に,テキスト の該当する部分を特定するよう求める課題もある。他には,テキストの複数の部分に注目 する必要のある課題がある。例えば,読み手がある特定のカテゴリーの情報の反復からそ の主題を推論しなければならないような場合だ。主要な考えを選択することは,考えを階 層化し,最も一般的で包括的な考えを選ぶことを意味する。このような課題は,生徒が主 要な考えとあまり重要でない細部とを区別できるかどうか,あるいは,文章やタイトルか

ら主題の要点を認識できるかを問うものである。

2. 4 解釈の展開 く定義〉

(10)

【資料IVI PISA型読解力の各側面の定義(2.1.2より)

 解釈を展開する際,読み手は,最初の大まかな印象を拡大させて,読んだ内容に対する より深く,具体的,または完全な理解を展開させるよう求められる。理論的な理解が求め られ,読み手はテキストの情報の構成を分析しなくてはならない。そのためには,たとえ 結び付きとは何かを明白に述べることができなくても,結び付きを理解していることを示 す必要がある。局部的につながりを基に連続した2つの文章のみの分析を求める課題が考

えられ,「第一に」「第二に」などのつながりを表す目印で順序が示されれば,こうした 課題はさらに容易になろう。因果関係を示すなどのもっと難しい例では,明確な目印は置 かれていないかも知れない。

〈課題例〉

 情報の比較・対照,裏付け事実の特定・列挙といったことが含まれる。こうした課題で は,1つまたは複数の情報源にある明示的・暗示的情報を処理するために,意図された関 係やカテゴリーを推測しなくてはならないことも多い。また,著者の意図を推論する,そ の意図を推論するのに用いた証拠を特定する,といった課題もある。

3.熟考・評価

〈定義〉

 テキストで提供される情報と自分自身の概念的,経験的な基準の枠組とを関係付けるた めに,テキストに含まれない知識や考え,態度を活用する必要がある。

3.1熟考

く定義〉

 熟考に関する問題は,自らの経験や知識に照らしながら,比較,対照,仮説立てを行う よう求めるものと考えられる。評価に関わる問題は,テキストに含まれない基準に基づい て判断を下すよう求めるものである。

 批判的判断では,読み手が自分自身の経験に照らし合わせることが,ある程度は必要と なる。一方,熟考には評価が必要でない場合もある(個人的経験とテキストに述べられて いることを比較する場合など)。従って,評価は熟考の一部をなすものと見なすことがで

きよう。

3.2 内容の熟考・評価 く行為1>

 テキストの内容を熟考・評価するためには,読み手はテキスト内の情報と他の情報源か らの知識を結びつける必要がある。また,世界に関する自らの知識に照らし合わせてテキ ストで主張されている内容を評価しなくてはならない。

<行為2>

(11)

【資料IV】PISA型読解力の各側面の定義(2,1.2より)

 多くの場合,読み手は自分自身の見解を明確に表現し,弁護するよう求められる。

〈行為3>

 そのためには,テキストで述べられ意図されている内容を理解し,次いで,すでに述べ られた情報か他のテキストにある情報に基づいた自分の知識や思考に照らして,心に思い 描いたことを吟味しなくてはならない。

<行為4>

 一般的知識と特定の知識の双方,及び抽象的な推測力を動員して,テキスト内にある裏 付けとなる事実を求め,それと他の情報源の情報とを対照させなくてはならないのである。

〈課題例〉

 テキストの内部にある事実や議論を提供する,特定の情報や事実の妥当性を評価する,

あるいは,道徳的または美的ルール(基準)と比較する,などが挙げられる。著者の主張 を補強する別の情報を提供・特定させたり,テキストで提供されている事実や情報が十分 かどうかを評価させたりする課題も考えられる。

3.3 形式の熟考・評価 く行為〉

 テキスト形式の熟考・評価においては,読み手は,テキストと距離を置き,それを客観 的に検討して,言葉遣いといった暗示的知識が重要な役割を果たす。著者の技能の基盤を なすこうした特徴は,このような性質の課題に内在する基準を理解する際に大きくものを いう。著者が何らかの特性を表現したり読者を説得したりすることにどの程度成功してい るかを評価することは,本質的な知識だけでなく,言語のニュアンスを感じ取る能カー形 容詞の選び方で解釈が変わってくることを理解する,など一にも左右される。

〈課題例〉

 テキストの形式の熟考・評価の典型的な課題例としては,ある目的のために特定のテキ ストがどの程度役立つかを判断すること,著者が一定の目標を達成するために特定のテキ ストの特徴をどう用いているかを評価すること,が挙げられる。著者の文体の用い方につ いて説明・コメントさせたり,著者の目的や姿勢を明らかにさせたりする課題も考えられ

よう。

本項のPISA型読解力の各側面の定義に関する記述は全てT経済協力開発機構(OECD)編著 国立教育 政策研究所監訳『PISA2009年調査 評価の枠組 OECD生徒の学習到達度調査』,明石書店,2010年,

pp. 51−58 より引用した

(12)

【資料V】PISA調査「熟考・評価」問題で求められる読解力の分析(2.1,4より)

【資料V】PISA調査「熟考・評価」問題で求められる読解力の分析(2.1。4より)

 「熟考・評価」の特性を理解するために,PISA調査における「熟考・評価」問題の採点 基準を調べ,その特徴を明らかにすることを試みた。公開済みのPISA調査問題のうち,テ キストタイプが「物語」で,予備問題も含め現在までに公開されているものは次の4つで

ある。

①PISA2000年調査問題「贈り物」 熟考・評価側面の問題は問3・問7の2つ。

②PISA調査予備悶題「正しい判事」 熟考・評価側面の問題は問3・問5の2つ。

③PISA2009年調査問題「芝居は最高」 熟考・評価側面の問題はない。

 よって,①と②のPISA調査問題について,その問いと採点基準,正答例を調べ,熟考・

評価の特徴の一端を明らかにした。なお,形式の熟考・評価問題「贈り物」問3について は,山本(2007)の先行研究を参考とした。

(1)PISA2000年調査問題「贈り物」問3(形式の熟考・評価)12)

 まず「贈り物」の問3である。「贈り物」のテキストは非常に長文である。ここでは,

問と関係があるためテキストの結末部分を引用し,続いて問題文を引用する。

…… i略)次に目覚めたとき,彼女はすべてが変わったことにすぐ気づいた。雨はやんでいた。家が揺れてい るかと注意してみたが,もう濁流の上で揺れてはいなかった。ドアを開けると,破られた網戸越しに,これま でと違う世界が見えた。家は以前と変わらず崖の上に静止していた。川はまだ,数フィート下を激流となって 流れていたが,家からカシの木までの数フィ・一・一トでは,もう水は引いていた。そしてヒョウは去っていった。

あしあとはボーーチからカシの木まで続いていて,その先は湿地帯の中へと続いているに違いないが,柔らかい 泥の中でぼやけて,もう消えかかっていた。ポーチの上には,かじられたハムが白い骨になってのこっていた だけだった。

問3.「贈り物」の最後の文が,このような文で終わるのは適切だと思いますか。最後の文が物語の内容とど   のように関連しているのかを示して,あなたの答えを説明して下さい。

この問3は,表8のような結果であった。

表8 「贈り物」問3の結果(単位:%)

反応率 正答率

調査対象 完全正答 部分正答2点 部分正答1点 誤答 無答 全体 日本 12.0 13.4 17.6 16.3 40.7 34.2

アメリカ 27.0 4.2 28.3 32.5 8.0 45.3

OECD平均

20.5 4.5 24.3 30.0 20.8 37.1

12)前掲書3),PP.40−45, PP.88−93

(13)

【資料V】PISA調査「熟考・評価」問題で求められる読解力の分析(2.1.4より)

日本の生徒で目立つのは,無答率の割合の高さである。問題文自体がかなり長文であり,

様々な要素(「ポーチ」や「天上から吊されたハム」,「骨付きのハム」など,日本の生活 文化に馴染みのないものがテキストに登場している。特にハムについては主題に直結して いるので,こうした文化の違いが無答率が高い一因になった可能性も否定できない。)が あろうとは思うが,このような「問われ方」に慣れていないのも無答率の高さの一因では ないだろうか。

問3の採点基準は次の通りである。

物語を文字通りに正確に理解し,その奥に示された意味を解釈している。最後の文を,物語の中心の関係,問 題,または比喩と結びつけることによって,主題の完結性の点から結末を評価しなくてはならない。ヒョウと 女性の関係,生き延びること,贈り物または感謝などについて答えてもよい。適切かどうかの意見は,明記して

も暗に示してもよい。

 問3を正解するためには,長文のテキストを理解し,物語の結末の適切さについて,批 判的に評価するカが求められる。また,テキストを理解するとは,表面的なものではなく,

抽象的な理解まで求められていると言える。 問3を正答するためには,「物語の中心の関 係」が「ヒョウと女性の関係」であり,「問題」が「生き延びること」,「比喩」が「贈り 物または感謝」となることを読み取らねばならない。そして,結末の一文から「骨の暗喩

(メタファー)的な意味,あるいは,結末の主題的な完全さ」を読み取り,「一般的なテ ーマにどのように結び付いているか」を批評することが求められる。これらはどのように 解釈し,どのように評価すればよいのだろうか。山本(2007)は,問3の正答のために必要

とされる読みの過程を次の4つに整理している1:i)。

①中心人物の問題,中心人物と登場人物の関係,語り手の目的,態度などを読み取る。

②①をもとに,テキストの暗示的主題や意図を読み取る。

③メタファーなど,テキストの特定の部分(レトリック)と主題の関係性を読み取る。

④その効果について,内容と形式の両面において批判的に評価する。

 このうち従来型の指導でもよく見られるのが①と②である。ここで止まらずに,全体(主 題)と部分における叙述との関係性を明らかにする③と,その上でテキストを評価する④ まで求めるのがPISA型読解力の特徴であると言える。この③については,本研究でも指導 の手立てを講じ,実践にて取り組んだ。

 この問題は難易度が652点,習熟度レベルは6で,正答率は37%であった。

13)山本茂喜,「物語文におけるPISA型『読解力』とは」,全国大学国語教育学会発表要旨集113,2007年, p.

 204

(14)

【資料V】PISA調査「熟考・評価」問題で求められる読解力の分析(2. L 4より)

(2)PISA2000年調査問題「贈り物」問7(内容の熟考・評価1)]n)

同じく「贈り物」の問7である。問7の問題文,採点基準,解答例を示す。

【問いの文】

問1.下は,『贈り物』を読んだ二人の会話です。この二人が自分の意見を証明するには,それぞれどう言え    ばいいでしょうか。この物語からそれぞれの証拠を探して,次に示して下さい。

   話し手1:ぼくは物語の中の女性は冷たく残酷だと思う。

【採点基準】

正答:この女性は心が冷たく残酷だという考えを 付ける証拠を物語から提示している。女性がヒョウを撃と    うとしたことを,または実際に撃ったことを説明してもよい。引用または同じ意味に言い換えてもよ    い。

誤答:不十分な答えもしくは漠然とした答えをあげている/課題分の理解が不正確,または説得力のない答え,

   無関係な答えをあげている。

【解答例】

正答例:彼女はヒョウを撃とうとした。

正答例:彼女は食べているとき,ヒョウがターンと鳴いたことを笑った。

誤答例:彼女はヒョウに冷たかった。(不十分旨しくは漠然とした答え)

誤答例:彼女はヒョウを中に入れなかったので,残酷だ。(説得力がない)

話し手2:どうしてそう言えるの?私はとても思いやりのある人だと思うわ

【採点基準】

正答:この女性は思いやりがあるという考えを    をやったこと,

   または同じ意味で言い換えてもよい。

誤答=

   無関係な答えをあげている。

付けるための証拠を物語から提示している。ヒョウに食べ物 この女性のヒョウに対する,または一般的な,思いやりのある心を示してもよい。引用

不十分な答えもしくは漠然とした答えをあげている。課題分の理解が不正確,または説得力のない答え,

【解答例】

正答例:彼女はこのヒョウに自分の食事を与えているので,彼女は寛大である。

正答例:「彼女は泣きたいと思った。自分のこと,他の人達のこと,洪水にあった全てのもののことを思って。」

    と書いている。

誤答例:彼女は思いやりのある行動をした。(不十分もしくは漠然とした答え)

 問7は,一つの物語の中で逆の立場で読むことになる点で,テキストを理解するだけで はなく「熟考・評価」することが求められている設問である。また,テキストを読むだけ ではなく,テキストに基づいて自分の意見を論じることが求められている。

 また,対立する解釈について両方の根拠を考えなくてはならず,双方の根拠を考えると いう問われ方が特徴的で,日本の生徒にとっては戸惑わせるに十分な問い方と言える。

 採点では,自分の評価や判断を述べる際,それを裏付ける根拠を叙述または内容から提

14)前掲書3),pp.40−45, pp.88−93

(15)

【資料V】PISA調査「熟考・評価」問題で求められる読解力の分析(2、1.4より)

示することを求めている。誤答例に「彼女はヒョウに冷たかった」「彼女は思いやりのあ る行動をした」というものがある。これは,根拠が不明確なためである。つまり,解釈を 裏付ける根拠となる叙述を示すことが求められると言える。

 この問題は難易度が537点,習熟度レベルは3で,正答率は64%であった。

(3)PISA調査予備問題「正しい判事」問3(内容の熟考・評価2)L5)

続いて「正しい判事」問3である。問3の問題文,採点基準,解答例を示す。

【問いの文】

判事はすべての罪に対して同じ罰を下していますが,これを公平だったと思いますか。

物語の中に出てくる三つの事件について,それぞれの類似点または相違点をあげながら,説明してください。

【採点基準】

正答:それぞれの事件の罰を,犯罪の類似点または相違点といった観点から,公平さを評価している。罪に対   する正確な理解を示している。

誤答:罪あるいは罰について正確な理解を示しているが,公平さについての評価がない。/罪あるいは罰につ    いての不正確な理解を示している。/罪そのものについての公平さを評価している。/無関係で曖昧な    答え,説明がない,あるいは不適切な説明,課題分の物語と矛盾している。/課題を逸脱及び無回答。

【解答例】

正答例:公平ではない。人のお金や馬を盗むより,人の奥さんを盗もうとする方がより深刻な罪である。

正答例:農夫と油売り,物乞いは,何かを盗もうとしている点では同じだが,他方,彼らがそれぞれ盗もうと     しているものは,同じ価値ではない。

正答例:公平である。みんな嘘をついている。

誤答例:判事は三つの罪に50回のむち打ちの刑にした。(公平さの評価がない)

誤答例:他の二つは窃盗であり,違う事件だと思うから,農夫は馴せられるべきではない。(不正確な理解)

誤答例:50回目むち打ちは,この手の罰としては厳しすぎる。(罰についての公平性を言っている)

誤答例:はい,公平だと思う。(曖昧)

  「正しい判事」問3は,登場人物判事の「判決」という行動が公平であったかどうかの 是非を問う,内容の熟考・評価の問いである。解答にあたっては,物語の中に出てくる3 つの事件についての類似点や相違点を示すことを要求されている。これは,物語を正確に 理解する力が要求されている。

 特徴としては,登場人物である判事が物語の中で下した3つの判決についての公平さを

「評価」させているが,「犯罪の類似点または相違点」という評価の観点を示しているこ とが挙げられる。また,その観点を正しく照らし合わせるためには,物語を正確に読解で きていなければならないようになっていることも挙げられる。

15)前掲書3),PP. 60−64, PP. IOI−104

(16)

【資料V】PISA調査「熟考・評価]問題で求められる読解力の分析(2.1.4より)

(4)PISA調査予備問題「正しい判事」問5(内容の熟考・評価3)16)

【問いの文】

1)この問題について,あなたはあなたの国の法律や裁判とこの物語に出てくる法律や裁判と比べる必要が   あります。あなたの国の法律や裁判とこの物語に出てくるような法律や裁判で似ている点はありますか。

  説明して下さい。

2)あなたの国の法律や裁判とこの物語に出てくるような法律や裁判で違っている点はありますか。説明し   て下さい。

【採点基準】「似ている点」

正答:似ている点を一つ説明している。物語を正確に理解していることが分かる。自国の司法制度の特徴との   比較が明確に示されているか,あるいはすぐにそれと分かるようになっている。国の司法制度に関する   正確な知識はそれほど重要ではない。しかし,15歳の子が知っていてよい程度の,法律に関する知識を   考慮に入れる。

誤答=その他の答え。漠然とした答え。不正確な答え,無関係な答えを含む。

【解答例】「似ている点」

正答例:証拠に基づく判決。/当事者双方がそれぞれの言い分を主張できる。/彼らが結論を話し合うために,

   法廷に連れて行かれた。

誤答例:善悪が明確でない。/国の重要な支配者でも裁判にかけられる。/罰。/(課題の逸脱)

※「違っている点」については,「似ている点」と置き換えて考える。

 【解答例】「違っている点」

正答例:弁護士なし。/裁判官が独自に捜査する。/この物語では,正しい判事がいる。

誤答例:罰。/法定制度。/かつらをつけていない。(課題の逸脱)

  「正しい判事」問5は,作品中の設定を自分の実生活と比較することを求めている。つ まり,作品の内容の理解(判事は証拠に基づいて判決を下している,等)ができた上で,

自分自身の既有知識における社:会のしくみと対比・類比しなければならない。

 解答例の「違っている点」の正答例に「この国には正しい判事がいる」がある。これは,

暗に自国の司法制度に関する価値判断をした上での意見であるが,これは物語を正確に理 解できないと答えることはできない。一方で,誤答例の中に「かつらをつけていない」が ある。これは,物語の中で一切言及されていない事柄であり,逸脱した読みと見なされた ものと思われる。つまり,司法制度に関する知識や理解は年齢相応であれば問題はなく,

自分の知識や体験と結び付けて評価するような問題ではあるが,基本的に物語の内容との 関連が重要であることがうかがえる。

 以上の分析より,PISA調査における「物語」タイプの「形式の熟考・評価」及び「内容 の熟考・評価」型問題の採点基準分析から,熟考・評価の問題では次のような読解力が必 要とされることがあることが導き出された。

16)前掲書3),pp.60−64, pp.101−104

(17)

       【資料V】PISA調査「熟考・評価」問題で求められる読解力の分析(2.!.4より)

■形式の熟考・評価

・内容を読み取った上で,テキストの特定の部分(レトリック)と主題の関係性を読み取  ること。

・その効果について,内容と形式の両面において批判的に評価すること。

■内容の熟考・評価

・自分の評価や判断を述べる際,それを裏付ける根拠を叙述または内容から提示すること。

・解釈を裏付ける根拠となる叙述を示すこと。関連して,相反する解釈について,双方の  根拠を考え,示すこと。

・(観点に沿いながら)テキストの内容について,テキスト外の知識や経験と結び付けて  評価すること。

・基本的に,テキストの内容の理解を前提とする。

(18)

【資料VI】PISA型読解力についての先行研究の分析(2.4.2より)

【資料VI】PISA型読解力についての先行研究の分析 1.PISA型読解力の先行研究の指導内容の傾向分析

(2。4.2より)

  PISA型読解力の向上を目指した指導についての先行研究を集め, PISA型読解力の指導に ついて,そのねらいや内容,手立てについての傾向について分析したい。但しPISA型読解 力についての研究は数多くあり,全てを調べることは難しい。そこで今回は,CiNiiで「P ISA型読解力」で検索して入手できた論文や, PISA型読解力についての著名な文献などか

ら集めた24の先行研究の範囲内での分析を試みた。まず,収集した文献について,「指導 のねらい」「指導の手立て」「指導内容」を整理し,さらに指導内容の類型化を行った。

結果を表9に示す。

表9(1/2) 収集したPISA型読解力についての先行研究の概要

研究者 タ践者

研究タイトル

@著書名 対象 指導のね 轤「

主な指導の

@手立て 主な指導の内容 指導内容の特徴 備考 出典

足立宰子

PISA型読解力育成を目 wす読書指導教員硯修 vログラムの開発

物舗 読んだことを ヲすこと

読書へのアニ }シオン

饒んだことに対して自分の意見・評価批騨を

¥明する

根拠を示してテキストを評 ソ・枇評する

発問に拠 全国大学国語教育学会発表 v旨集112,14H44,2007−

O5}26

2有元秀文 中等教青段階におけるス薗的教育測定 物語

読んだことを ェ拠にして ゥ分の意見 竕 釈を表 サすること

フィンランドの

O日指導

①一問一答型から共同解決型へ②細部の レ細な読解から主題にかかわる大きな課題に ツいて考える綬桑へ③内審の理解からなぜ サう書かれたかを解釈する授粟へ④内容を ウ枇判に受け入れて感動する授業から真体 Iな根拠を挙げて文章の効果を吟味する授桑

ヨなど

根拠を示してテキストを評

ソ・批評する 理論研究

東京大学大学院教育学研究 ネ教宵測定・カリキュラム開 ュ講座2005,820

3有元秀文

ブッククラブで楽しく学 ヤクリティカル・リーディ 塔O入門

物語 クリティカル・

梶[ディング

14の「続みの Xトラテジー」

教師による戦略的な問い掛けによって作品を ]価・枇評するカを身に付ける

テキストの内容を自分の 謨iや経験・価値観など ニ結び付けて考える

有元秀文『ブッククラブで楽し ュ学ぶクリティカル・リーディン O入門』、20!0年,ナカニシ 竢o版

伊崎一夫

読解リテラシーの向上 めざす学習指導の工 vに関する研究

物語

テキストの内

eに基づいス理由を述べる 読みきかせ 多数の絵本の読みきかせを継続的に行い,お b相互の共通性に注目させて教科書教材に ツながる絵本を選ばせ,理由を書かせる

根拠を明確に提示し,自 ェの意見を述べる

低学年対 環太平洋大学研究紀要(4),

U5−71.2011

5伊嫡一夫

読解リテラシーの向上 めざす学習指導の工 vに関する研究(3)

物語 rさぐる思考」

主題を掘握し サのための仕

│けについて フ自分の考え 持たせる

物語を通読し,人物相互の関係をとらえた上 ナ作品の主題とその主題をささえるしかけにつ

「て自分の考えを持たせる

楕造や表現の特徴を墨描 ノ,テキストを評価・批評 キる

環太平洋大学研究紀要③,

S3−50.2010

6井上雅彦 「P1SA型読解力」青田 フための学習指導 説明文

P畜SA型読解 ヘの育成 ディベート

ディベートを通して①根拠を示して文章を評 ソ批評しながら読む②課題追求のために ヲ同して様々な文章や資親を読み比べる③ ヌみ比べた二とを活かして自分の考えをまと ゚,表現する

根拠を示してテキストを評 ソ・枇評する/複数のテ Lストを饒み比べ,自分 フ意見をまとめる

安田女子大掌紀要37,117−

P28.2009

7井上幸信

コミュニケーション能力 生かして読みや考え 交流する中でPISA型 ヌ解力を育む単元の提

物語文 PISA型読解 ヘを育む

アフターストー 梶[の創作

盛り込むべき内容を見出し,自分のアフタース gーリーの作晶に活かす

構造や表現の特微のよさ 理解し,書く活動に活か

わらぐつ

lフ中の神

    1  /ln n   r

¢・tLjnonakanokamisamaodf(

20i2/12/16アクセス},

8     国語科「読解力」の構造小森茂     について

枇解力の育

読み書きの一フ化

「読む能力」は重層的で,潜在的な一次の読 ン能力を中核に,その読みを顕在化する二次 フ書く能力と話す・聞く能力とに支えられてい 驕B読む能力は書く能力と話す・聞く能力とに

?ワされながら,その中で往復運動を繰り返 キことで機能するという重層的な能力観に発 ツ指導

読むことを書くこと,話す と・聞くこととの一体化

教育科学国語教青686

?D2007年

9

     思考の型を用いた読解佐藤かおり     指導

説明文 論理的な思

l・表現 不明 論理的文章の思考の型を理解し,同じ思考の

^を使った文章構成で論理的文章を書く。 不明

全国大学国語教育学会発表 v旨集112,33−34,2007−

O5−26

10 佐藤蔓紀子 拝価しながら読む能力

フ育成 物語

評価しながら ヌむカの転

アナザース gーリーを考 ヲる

もしわにのおじいさんがたから物のかくし場所 教えていたら,最後の場面はどうなるでしょ

、。

テキストの内容に基づい ト,(対象や条件(人物,

栫C等)が変化したときに ィける)仮説を立てる

わにのお カいさん フたから

新潟県立教育センター指導 ト&実践記録集小学校第 R学年

iH20教育フォーラムPISA型 ヌ解力分科会発表)

11滑水典子

諭理的な思考力・表現 ヘを高める学習方法の H夫

複数 論理的な思

l磯現 フィンランドメレ根拠を明確に提示し,自分の意見を述べる 根拠を明確に提示し,自

ェの意見を述べる 実践

全国大学国語教育学会発表 v旨集112,195−198,2007−

O5−26

12信夫京子 授桑改善のためのフ

戟[ムづくり 物語

スキルが自 ネ目的化す 驍アとのない セ語技術の K得

つけたいカの セ確化と年間 w導計画の

?ャ

問答ゲーム,物語の基本構造,視点を変え 驕D描写・撹明,絵の分析パラグラフ・ライ eィング

構造や表現の特徴を理解 キる/根拠を明確に提示 オ、自分の意見を述べる

^複数のテキストを読み 艪ラ,自分の意見をまと ゚る

年間を通 オた実践

、究

山形大学大学院教育実践研

?ネ年報;8ulb廿n of

№窒≠р浮≠狽潤@sohool of teac卜ler 狽窒≠奄獅?〟@Yama at8 Univorsity Q,178−185.2011−02−19

参照

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