平成19年度
研
究 成 果 発 表 会
と き 平成20年3月3日(月)午後1時30分~4時15分
ところ 富山県農業協同組合中央会
富山県農業総合研修所
2 階大研修室
富
山 県 農 業 技 術 セ ン タ ー
隠れた夏バテ牛を見つけ出せ 鋤床破砕処理と緑肥作物による排水性改善 チューリップサビダニによるチューリップ の被害症状 (上)球根の被害 (右)花の被害 新品種「富山酒69号」とその親品種目 次 プログラム 1.開会あいさつ 農業技術センター所長 下坪 訓次 13:30 2.研究発表 頁 13:35~13:55 ①酪農における夏季繁殖性低下牛の発見法・・・・・・・・・・ 2 ― 隠れた夏バテ牛を見つけ出せ! ― 酪農肉牛課 主任研究員 沖村 朋子 13:55~14:15 ②短葉性ネギ新品種 「越中なつ小町」、「越中ふゆ小町」 の育成 ・・・・・・・・・・ 6 ― 消費者と生産者ニーズの融合したネギ開発 ― 野 菜 課 主任研究員 藤井 均 14:15~14:35 ③水田転換畑への JM7 台リンゴ樹定植時の排水対策・・・・・・ 8 ― 一目瞭然、ほ場の排水対策は十分かな? ― 果樹試験場 副主幹研究員 松田 亨 14:35~14:45 ― 休 憩 ― 14:45~15:05 ④チューリップサビダニの効率的防除法・・・・・・・・・・12 ― 短時間球根浸漬と常温煙霧の特長 ― 病理昆虫課 主任研究員 青木 由美 15:05~15:25 ⑤田畑輪換による土壌肥沃度の低下要因の解明と対策・・・・16 ― 有機物施用こそダイズが生き残る道 ― 土壌肥料課 副主幹研究員 廣川 智子 15:25~15:45 ⑥水稲新品種「てんこもり」の高品質・良食味栽培法・・・・20 ― 期待の晩生品種を美味しく仕上げるためには ― 機械営農課 主任研究員 山口 琢也 15:45~16:05 ⑦晩生の酒造好適米「富山酒69号」の育成・・・・・・・・24 ― ライバルは「山田錦」 ― 作 物 課 主任研究員 蛯谷 武志 3.全体質疑応答 16:05~16:15 4.閉会 16:15
酪農における夏季繁殖性低下牛の発見法
―隠れた夏バテ牛を見つけ出せ!―
畜産試験場 酪農肉牛課 主任研究員 沖村 朋子 1.はじめに 1)乳牛の生産サイクル 乳牛は分娩(お産)をしないと泌乳しません。分娩後約 2 ヶ月くらいで乳量はピーク に達し、比較的乳量の多い期間が半年程度続きます。その後、乳量は徐々に減少し、 次の分娩の 2 ヶ月前になると搾乳をやめて乳房を休ませます(乾乳)。また、分娩後 2-3 ヶ月目くらいに人工授精で受胎させることによって、その約 9 ヶ月後に次の分娩をし ます。この間隔を「分娩間隔」、受胎するまでの期間を「空胎期間」と言います。 何らかの原因で受胎が遅れると、次の分娩までの間隔が長くなるため、乳量の少な い期間ばかりが長くなってしまいます。乳牛の経済的な寿命は決まっているので、分 娩間隔が短く、一生のうちに何度も分娩できた方が、生涯の乳量が多くなります。ま た、乳量がピークの半分になっても、食べるエサの量は半分になるわけではないので、 受胎が遅れた分娩間隔の長い牛ばかりになるとコスト高となり生産性が低下します。 次の分娩後の 乳量多い時期 乳牛における1乳期の泌乳曲線 0 10 20 乳量多い時期 30 40 6 7 8 9 10 11 12月 50 (kg/日) 0 1 2 3 4 5 乳 量 分娩 受胎 次の分娩 泌乳前期 泌乳中期 泌乳後期 乾乳期 分 娩 間 隔 子牛 頭数 生涯の乳量 空胎期間 少ない 時期 受胎が遅れると・・・ コスト↑ 生涯の乳量↓ 生産性↓ 経営に悪影響 分娩間隔が延長した場合の泌乳曲線 0 10 20 30 40 50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 月 (kg/日) 乳 量 泌乳前期 泌乳中期 泌乳後期 乾乳期 受胎 分娩 次の分娩 分 娩 間 隔 空胎期間 乳量少ない時期が 長くなる2)受胎が遅れる原因は? 近年、牛の受胎率は年々低下し、空胎期間や分娩間隔の長期化が問題となってい ます。富山県の牛群検定成績でも、平成 8 年(1996 年)の分娩間隔は 415 日(13.6 ヶ 月)でしたが、平成 18 年(2006 年)には 469 日(15.4 ヶ月)となり、10 年間で 50 日以 上も長くなっています。この受胎率低下の原因の一つとして、暑熱ストレスによる 繁殖性への悪影響が考えられています。 乳牛の平均体温は 38.5℃前後ですが、暑熱対策を行っていない場合には、夏の高 温時に体温が 40℃近くまで上がることが知られて います。しかし、そのような体温の上昇によって、 繁殖機能や受精卵の発生がどのような影響を受け ているかは明らかになっていません。 暑さ そこで、体温上昇と受胎率低下の関連性を探る ため、夏の高温が乳牛の発情徴候や体温に与える 影響や、熱ストレスがウシ卵子や受精卵の発生に 与える影響について検討しました。 にバテている乳牛 2.気温が乳牛の発情徴候や卵巣機能に与える影響 一般的に夏場は暑さのために牛の発情徴候が弱くなると言われています。そこで、 気温が乳牛の発情徴候や排卵、黄体形成などの卵巣機能に与える影響を調査しまし た。その結果、送風機と細霧装置による暑熱対策を行っている乳牛では、発情徴候 の強度、卵胞の大きさ、排卵時期などに発情日の牛舎内気温の影響は見られません でした(表1)。 3.気温と膣温の関係 排卵された卵子や受精卵は、卵管を 通り子宮へと運ばれます。その周囲の 温度として膣温を調べた結果、暑熱対 策を行っている牛舎では、膣温と舎内 気温の関連性は低く、気温が上がって も体温の恒常性は維持されていまし た。しかし、なかには夏の高温時に膣 温が 40℃になる牛がいました(図1)。 *当場搾乳牛 13 頭の測定値 気温 28℃以上で細霧装置稼働 表1 発情日の気温と発情徴候の強度、卵胞サイズおよび排卵時期の関係 最高気温 n(頭数) 30℃< 5 1.0 ± 0.7 10.0 ± 0.0 1.4 ± 0.5 20~30℃ 19 1.1 ± 0.7 11.9 ± 3.0 1.9 ± 1.4 <20℃ 25 1.2 ± 0.7 12.4 ± 3.7 1.3 ± 0.6 平均値±標準偏差 ※※※発情発見から排卵確認までに要した日数 ※※※スタンディングを確認したものを2,マウンティングのみ確認したものを1, AAA※何もなかったものを0として平均値を算出した ※※※気温28℃以上で細霧装置稼働 卵胞サイズ(mm) 排卵時期(日後) 発情徴候の強度※※ ※ 近似曲線はその他 10 頭分の測定値による 図1. 気温と膣温の関係 38.0 38.5 39.0 39.5 40.0 40.5 10.0 20.0 30.0 40.0 牛舎内気温(℃) 膣温 (℃ ) その他10頭 97号 104号 83号 R = 0.103
4.熱ストレスが卵子や受精卵の発生能力に与える影響 39℃で行いますが、暑熱対 策 5.膣温と直腸温の関係 いに消毒した特殊な として通常行 っ 通常、ウシ卵子や受精卵の体外培養は、体温に近い約 を行っていても、なかには膣温が 40℃になる牛がいたことから、この温度を体外 培養で再現しました。すると、培養温度が約 1℃上がっただけでも、卵子の成熟率 や体外受精後の発生率が顕著に低くなりました(図2)。 図2.40℃培養が卵子や受精卵の発生能力に及ぼす影響 0 20 40 60 80 100 6hr 12hr 18hr 12hr 24hr 体外成熟培養時間 成熟率( %) 0 10 20 30 40 胚盤胞発生率( %) 膣温を測るには、きれ 温度計が必要であり、一般の酪農家ではなか なか測ることができません。そこで、直腸温 と膣温との関連性を調べたところ、直腸温と 膣温の相関は高く、直腸温を測ると、子宮や 卵巣などの生殖器付近の温度が推定できるこ とが分かりました(図3)。 このことから、牛の体温測定 ている直腸温測定は、夏の高温時に膣温が 上がりやすく、繁殖性が低下するおそれのあ る牛を発見するのにも有効であると考えられ ました。 *当場搾乳牛 13 頭の測定値 気温 28℃以上で細霧装置稼働 図3. 直腸温と膣温との関係 38.0 38.5 39.0 39.5 40.0 38.0 38.5 39.0 39.5 40.0 直腸温(℃) 膣温 (℃) R = 0.877 対照区(39℃成熟培養) 試験区(40℃成熟培養) a vs b ; p<0.05, A vs B ; p<0.01 76.9 (30/39) 76.3 (29/38) 83.8 (62/74) 80.9 (72/89) 75.6 (59/78) 50.0 (43/86) 30.5 (18/59) 24.6 (14/57) 35.2 (31/88) 0.0 (0/32) B A a b 対照区(39℃発生培養) 試験区(40℃発生培養) 体外発生培養時間
とめ 暑熱対策を行っている牛舎では、夏の高温時でも卵巣機能は正常に働い 2)卵 すると発生能力が低下します。 想 3)膣温が高い時には、直腸温も高くなります。 ストレス度合いが予測できるの …など .おわりに おいて、暑熱対策は乳生産性だけでなく繁殖性にも効果があることが とができればと願っ 6.ま 1)適切な ていますが、それでも、なかには暑熱ストレスに対して感受性の高い牛がいます。 →暑熱対策は卵巣機能の恒常性を保ち、夏の受胎率低下防止に有効ですが その効果には個体差があります。 子や受精卵は、40℃で 18 時間以上培養 →子宮や卵巣付近の温度が 40℃以上になると、受胎率が低下することが予 されます。 →直腸温を測ると、子宮や卵巣付近への暑熱 で、暑さに弱く繁殖性が低下する牛を早く発見して、より積極的な対策を 個別に行うことが重要です。 ・牛舎の中でも涼しい場所に牛 を繋ぎかえる 間帯に行う ・個別の送風機を設置する ・人工授精は夜間の涼しい時 6 酪農経営に わかりました。ただし、「うちの牛舎は送風機も細霧装置もつけているから大丈夫」 と安心するのは危険です。なかにはひっそりと赤信号を出している牛がいるかもし れません。そんな隠れた夏バテ牛を、日常の直腸温測定で見つけ出して対応するこ とで、繁殖性への悪影響を未然に防ぐことができるのです。 今後、この技術によって少しでも乳牛の受胎率低下を防ぐこ ております。
短葉性ネギ新品種
「越中なつ小町」、「越中ふゆ小町」 の育成
-消費者と生産者ニーズの融合したネギ開発-
野菜花き試験場 野菜課 主任研究員 藤井 均 1.はじめに 富山県ではネギが野菜の推進品目に指定されており、畑地だけでなく水田転換畑への導入 が進んでいます。葉鞘の太さを確保しやすく軟白作業等栽培管理の省力化が可能で、買い物 袋に入るコンパクトなサイズに仕上がる良食味な短葉性のネギ生産が望まれています。現在、 比較的短葉性を示す根深ネギ品種「ホワイトツリー」を用い、全長 40cm の荷姿に調製して 出荷しています。そこで、さらに消費者ニーズに近い「短葉性」で「良食味」のネギを育成 しました。 2.育成経過 「越中なつ小町」及び「越中ふゆ小町」は、根深ネギ品種の千住群黒柄系5品種から なる集団と千住群、加賀群、越津系を含む5品種からなる集団をそれぞれ基本集団と する循環選抜を2回行い、その後集団選抜を繰り返して育成した固定品種です。 3.特性の概要 1)生育特性は、短葉性を示す市販品種「ホワイトツリー」と比較して、両品種と もに、草丈及び葉身長は短く、葉鞘径がやや太いので1本重が大きく、分けつ が少ないです(表1)。「越中なつ小町」は「越中ふゆ小町」と比較して、葉鞘 径はやや細いが、葉鞘長がやや長いので同一作型で栽培した場合には早期収穫が可能 です。 2)品質特性は「越中なつ小町」、「越中ふゆ小町」ともに対照の「ホワイトツリー」と 比較して、ピルビン酸生成量が少なく辛みが少ないです。また、葉鞘硬度及び葉身 硬度が小さくやわらかいことから良食味です(表2)。 3)夏どり及び秋どり作型において現地適応性を調べたところ、「越中なつ小町」、「越中 ふゆ小町」ともに対照の「ホワイトツリー」と比較して、草丈が短く、1本重、調 製重ともに大きく、収量性が高いです(表3)。 4.成果の活用面・留意点 1)通常の根深ネギ品種と比較して短い葉鞘長で収穫することから、平床植えができます。 2)「越中なつ小町」、「越中ふゆ小町」は富山県と野菜茶業研究所との共同研究による育成 品種で品種登録出願中です。 3)本県では短葉性ネギを商品生産しており「ねぎたん♩♩」の商標で流通しています。4)耕種概要は排水対策のために明渠を施した平床に条間 90cm、株間 2.5cm で定植し、基肥 は N、P2O5、K2O 各 5kg/10a、追肥及び培土は 2 回行い追肥量合計が N、P2O5、K2O 各 9kg/10a を 基本とします。 越中なつ小町 越中ふゆ小町 図1 「越中なつ小町」及び「越中ふゆ小町」の草姿 表1 収穫時の生育特性(2006年) 草丈 葉身長 葉鞘長 葉鞘径 1本重 生葉数 分けつ率 (cm) (cm) (cm) (mm) (g) (枚) (%) 越中なつ小町 77.1 (97) 51.3 (92) 25.8 (107) 19.7 (104) 184 (110) 5.3 (92) 6.0 (53) 越中ふゆ小町 75.9 (95) 51.6 (93) 24.3 (101) 20.4 (108) 184 (110) 4.9 (86) 6.7 (59) (対照)ホワイトツリー 79.8 (100) 55.7 (100) 24.1 (100) 18.9 (100) 168 (100) 5.7 (100) 11.3 (100) 注:8月、10月、11月調査の平均値、( )は対照比 播種・定植日はそれぞれ2月3日・4月7日、3月24日・5月30日、6月15日・8月5日 品種 表2 収穫時の品質特性(2006年) ピルビン酸 葉鞘硬度 葉身硬度 (μmol/g) (N) (N) 越中なつ小町 5.42 (89) 1.52 (75) 1.51 (72) 越中ふゆ小町 5.36 (88) 1.63 (80) 1.68 (80) (対照)ホワイトツリー 6.09 (100) 2.03 (100) 2.11 (100) 注:8月、10月、11月調査の平均値、( )は対照比 品種 表3 夏どり及び秋どり作型における適応性(2005年、2007年) 調製重 収量 (cm) (g) (g) (kg/a) 75.7 (93) 173 (107) 111 (110) 361 (117) 夏どり 79.4 (98) 176 (109) 114 (113) 353 (115) (対照)ホワイトツリー 81.1 (100) 161 (100) 101 (100) 308 (100) 80.6 (97) 221 (121) 118 (110) 444 (110) 秋どり 79.7 (96) 215 (118) 129 (121) 461 (115) (対照)ホワイトツリー 82.9 (100) 182 (100) 107 (100) 402 (100) 越中なつ小町 越中ふゆ小町 注:現地試験(黒部市、射水市新湊)及び野菜花き試の平均値、( )は対照比 夏どり作型は、播種2007年1月29日、収穫7月19日~26日 秋どり作型は、播種2005年4月13日、収穫9月13日~10月12日 調製重は全長40cm、葉数4枚に調製した重量 1本重 作型 越中なつ小町 越中ふゆ小町 品種 草丈 5.おわりに 富山県初のオリジナルネギ品種「越中なつ小町」、「越中ふゆ小町」が多くの消費者、生 産者の皆さんから愛されて「富山ブランド」として定着することを願っております。
水田転換畑への JM7 台リンゴ樹定植時の排水対策
-一目瞭然、ほ場の排水対策は十分かな?-
果樹試験場 副主幹研究員 松田亨 1.はじめに 近年、果実品質が良く早期成園化が図れるわい性台木を利用したリンゴ栽培への 取り組みが増え、特に従来のわい性台より耐水性に優るJM 台リンゴ樹を用いた水 田転換畑への導入がすすめられています。しかし今まで、定植時の排水条件が明ら かになっていなかったことから、JM7台リンゴ樹の主要根域を調査するとともに、 ほ場の排水条件と JM7 台利用樹の生育との関係を調べ、水田転換畑における開園 時の排水対策開発に取り組んでいます。 2.幼木の根域 場内ほ場および現地ほ場の生育良好な JM7 台リンゴ樹の根域を調査したところ、 幼木の時期(1,2,4 年生)では深さ 30cm までに 98%以上が分布し、深さ 0cm~30cm が主要根域であることがわかりました(表1)。また、結実期の 7 年生では深さ 40cm までに99%以上が分布し、深さ 0cm~40cm が主要根域でした。 3.排水速度 水田は、もともと水をためる構造になっています。そこで、その排水性を表すた めに、ほ場が湛水状態になった後、その水が縦浸透や横浸透により低下していく「排 水速度」(単位cm/日)を用いることにしました。 排水速度は、図1の様な簡易水位計で、降雨後で水位が地表面に達した状態から 水位が地表面下30cm まで低下する時間を計り算出します。水位が地表面に達して いない場合は、その位置から水位が、地表面下30cm まで低下する時間を計り、換 算します。 4.排水性の苗木生育への影響 ポット植え苗木で、排水速度による生育の影響を調べたところ、植付け当年の梅 雨時期の湛水は黄変落葉を招く事が分かりました。黄変落葉は排水速度15cm/日以 下では多く、30cm/日ではあまり発生しません。春期(植付け時)と梅雨時期の湛水 は、新梢生育や翌年春までの細根の生育には影響がみられませんでした。梅雨時期 と秋雨時期の湛水は、新梢生育への影響はみられませんが、排水速度10cm/日以下 では翌年春の細根重が小さくなることが分りました(表2)。 5.まとめ これらの調査の結果、JM7 台リンゴの開園時において樹体生育が良好となる排 水基準は、「主要根域である深さ0~30cm の排水速度 30cm/日以上」であることが 分かりました。なお、この成果は植えつけ一年後までの生育への影響を調査して、開園時にどの 程度の排水対策が必要であるかの参考としたものです。その後の生育を良好に保ち、 高品質の果実を生産するためには、さらに排水性を高めることが必要と考えられま す。 表1 JM7台リンゴ‘ふじ’の根の深さ別分布(2007) 根重 (g) 0~10cm 10~20cm 20~30cm 30~40cm 40cm~ 1年生樹 174 40.4 33.0 26.2 0.4 - 2年生樹 252 43.2 29.6 25.4 1.8 - 4年生樹 1821 49.7 30.0 18.6 1.7 - 7年生樹 2173 32.4 41.8 18.3 6.7 0.9 深さ別根重比率(%) ※場内および現地ほ場(いずれも沖積壌質土、排水速度>40cm/ 日)植栽樹の生根重を調査。 ※4,7年生樹は主幹中心より半径90cmの範囲内にある直径20mm 以下の生根重を調査。 長さ60cm内径43mmの塩ビ管 の側面四方向に25mm 間隔で径 5mmの穴を開け、寒冷紗等を巻き つけて土が入らないようにする。 これを地表から30cm 埋めて、中 に竹ひごを取り付けた釣用ウキを 入れる。水位の変化は竹ひごの上 下で観察する。 排水速度 (cm/日) 41日(7/26) 50日(8/4) 30 0.4 2.2 215 125 121 145 15 1.2 6.2 203 170 120 153 10 2.7 6.8 212 149 129 111 5 3.2 6.5 189 166 113 91 2.5 4.7 7.3 224 138 118 96 春期+梅 雨時期 (2006年) 春期+梅 雨時期 (2007年) 梅雨時期+ 秋雨時期 (2005年) 梅雨時期+ 秋雨時期 (2006年) ※ポット(口径23cm×深さ29cm、用土 山砂:堆肥 3:1)に植えた1年生苗木を地際部まで水 没させてから、排水速度に応じて毎日段階的に水面から引き上げ、2.5cm/日を引き上げき るまでを1サイクルの処理とした。 ※湛水期間 : 春期は3月下旬から2サイクル、梅雨時期は6月中旬から3サイクル、秋雨時 期は9月上旬から2サイクル実施。 ※総新梢長は、「春期」+「梅雨時期」は9月末、「梅雨時期」+「秋雨時期」は11月調査。また 「梅雨時期」+「秋雨時期」は6月からの総伸長量 梅雨時期湛水開始後日数 表2 排水速度がJM7台リンゴ‘ふじ’苗木の生育に及ぼす影響(2005~2007) 黄変落葉率(%)(2006年) 総新梢長(cm) 細根重(g)
写真 鋤床破砕処理の様子 前年秋に、植え付け位置の鋤 床破砕(深さ80cm)を行うこ とにより、排水速度が 20cm/ 日から 40cm 以上/日に改善さ れました。 写真 緑肥作物による排水性 改善 鋤床破砕に加えてイタリア ンライグラスを利用すること による園地全体の排水性改善 効果を検討中です。
チューリップサビダニの効率的防除法
-短時間球根浸漬と常温煙霧の特長-
農業試験場 病理昆虫課 主任研究員 青木 由美 1.はじめに チューリップサビダニ(以下、サビダニ)は植物寄生性のダニで、食害によって 球根は赤紫色や黄褐色となり、また開花時の花びらはかすり状に色が抜けます(図 1) 。これらの被害は球根の商品性や花の観賞価値を著しく低下させるため、産地の イメージダウンに繋がります。 本県におけるサビダニの防除は、現在、掘取り後に水洗いした球根をすぐにアク テリック乳剤 500 倍液に 15 分間浸漬する方法が採用されています。しかし、掘り 取り当日の作業労力が大きい上、薬液を繰り返し使用することによって防除効果が 低下したり、球根腐敗病の発生を助長したりすることが問題となっています。そこ で、これらの課題を解決するサビダニの効率的な防除法として、短時間球根浸漬と 常温煙霧の効果について検討しました。 2.チューリップサビダニの発生生態 サビダニは成虫の体長が約 0.25mm のうじ虫形、淡黄色のダニで、肉眼ではほと んど確認できません(図 2)。サビダニは増殖速度が速く、25~30℃では 8~10 日で 卵から成虫になります。また、移動性が高いので、サビダニが発生している球根が 少しでもあると貯蔵中や輸送中のコンテナ内で拡がります。 サビダニが寄生している球根を植えてその後の発生消長を調べたところ、サビダ ニは積雪下の土壌中の球根にも生息していますが、その数は植付け後から 6 月頃の 掘取り期まで徐々に減っていきます。その後、掘取り期から貯蔵初期まではサビダ ニの生息密度が極端に低下しますが、8 月中旬頃から再び球根での増殖が認められ ました。このことから、球根におけるサビダニ数が少なくなる掘取り後から貯蔵初 期までがサビダニの防除適期と考えられます。 図2 チューリップサビダニ(成虫および若虫)と その卵の走査型電子顕微鏡像 図1 チューリップサビダニ によるチューリップの被害症状 (上)球根の被害 (右)花の被害3.チューリップサビダニに対する短時間球根浸漬の防除効果 表 1 のように掘取り後の球根の調整手順を変えてアクテリック乳剤への浸漬処理 を行いました。その結果、除根調整後の乾燥した球根を 2~3 分間浸漬する処理法 (以下、短時間浸漬)は、掘取り当日に水洗いした除根調整前(古皮・根付き)の 球根を 15 分間浸漬する処理法(以下、慣行浸漬)よりサビダニの発生を抑えまし た(表 2)。 また、薬液を繰り返し使用した場合、慣行浸漬では球根に付着している水で薬液 濃度がやや低くなりますが、短時間浸漬では球根が乾燥しているので、薬液濃度は ほぼ一定で、球根表面の薬剤付着量も安定していました(図 3) 。 表1 チューリップ球根のアクテ リック乳剤への浸漬処理手順 浸漬法 球根調整および薬剤浸漬処理手順 慣行浸漬 掘取→水洗→浸漬処理(15分)→乾燥→除根調整→選別→貯蔵 短時間浸漬 掘取→水洗→乾燥→除根調整→選別→浸漬処理(2~3分)→乾燥→貯蔵 注)アクテリック 乳剤500倍液 に球根 を各 時間浸漬 した。 表2 アクテリック乳剤への球根浸漬のチュ ーリ ップサビダニに対する防除効果(2004年、2005年) 虫数 寄生 虫数 寄生 虫数 寄生 虫数 寄生 虫数 寄生 試験区 /球 2 ) 球率(%) /球 球率(%) /球 2) 球率(%) /球 球率(%) /球 球率(%) 除根調整後瞬時浸漬 除根調整 /乾燥 1.8 5.6 0.1 3.3 0 0 0.3 3.3 10.6 23.3 短時間(2~3分間)浸漬 除根調整 /乾燥 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 慣行(15分間)浸漬 古皮・根付 /水洗後 0 0 2.7 7.8 0 0 0 0 0.5 6.7 無処理 70.5 43.3 59.9 53.3 0.0 3.3 60.3 56.7 201.8 76.7 1) 品種はランバダ。サビダニ寄生球を2003年10月15日に植付け、2004年6月18日に掘取。慣行浸漬は掘取当日に、短時間浸漬は 6月24日に球根をアクテリック乳剤500倍液(反復使用をしていない)に浸漬。数値は3反復の平均値。 2) 品種はレーンバンデルマーク。チューリッ プサビダニ寄生球を2004年11月8日にスポルタック乳剤 100倍液に15分間 浸漬し、11月9日に 圃場に植付け、2005年6月15日に掘取。慣行浸漬は掘取当日に、短時間浸漬は6月27日に1)と同様に浸漬 。数値は3反 復の平均値。 浸漬する 球根の状態 - 2004年 1 ) 2005年 2 ) 8月18日 9月21日 8月8日 9月1日 9月26日 図3 掘取り後の調整手順の違いがアクテリック乳剤の反復使用における薬液濃度および球根表面の薬剤付着量に 及ぼす影響 1) 薬液調製直後の濃度を1とした。慣行法では薬液(230L)を8回使用後にアクテリック乳剤原液を100ml補充。 2) 1、4、8、9(慣行浸漬のみ)、12、15回使用後に調査。 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 反復使用回数(回) 薬液 濃度 比 慣行浸漬 短時間浸漬 薬剤追加 0 50 100 150 200 250 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 反復使用回数(回) 球 根表 面の 薬 剤付 着量 ( n g/ 球根 重g ) 慣行浸漬 短時間浸漬 (A) 薬液濃度 1) (B) 球根表面の薬剤付着量 2)
4.チューリップサビダニに対する常温煙霧の防除効果 常温煙霧を行う場合には、常温煙霧機(図 4)と密閉性の高い場所が必要となりま す。 育苗ハウスでアクテリック乳剤 20 倍液を処理施設 100m 3 当たり 2 リットル用い て常温煙霧を行った結果、 煙霧 2 回処理のみ ではサビダニに対する防除効果は不十分で したが、球根植付け前のアクテリック乳剤 15 分間浸漬と組み合わせることで、サビダ ニの多発生条件でも慣行浸漬法と同程度の 効果が認められました(表 3)。 また、 常温煙霧機で微粒化した薬剤の付着 量は、煙霧機から離れるほど少なく、球根貯 蔵コンテナを積み重ねた場合には上位段で 少なくなりました(図 5) 。 表3 アクテリック乳剤の常温煙霧のチューリップサビダニに対する防除効果(2005年) 虫数 寄生 虫数 寄生 虫数 寄生 虫数 寄生 試験区 1) /球 4) 球率(% ) /球 球率(%) /球 球率(%) /球 球率(%) 常温煙霧2回 2 ) 0 0 1.2 3.3 2.5 16.7 7.7 16.7 植付前15分間浸漬 3) +常温煙霧2回 2) 0 0 0 0 0 0 1.4 10.0 慣行浸漬 3 ) 0 0 0 0 0 0 0.5 6.7 無処理 0 0 0.0 3.3 60.3 56.7 201.8 76.7 1) 品種はレーンバンデルマーク。サビダニ寄生球を2004年11月8日にスポルタック乳剤100倍液に15分間浸漬し、11月 9日に圃場に植付け、2005年6月15日に掘取。 数値は3反復の平均値。 2) 球根の入ったコンテナを煙霧機噴頭の前方5m地点に置き、2005年7月19日および8月10日の16時に処理し、翌日9時に 処理施設の出入口を開放した。 3) 植付前浸漬は2004年11月8日、慣行浸漬は掘取当日に球根をアクテリック乳剤500倍液(反復使用をしていない)に浸漬。 9月26日 7月 19日 8月8日 9月1日 図4 常温煙霧機 0 5 10 15 20 1段目(高さ28cm) 2段目(高さ56cm) 3段目(高さ84cm) 薬剤付着量(μg/cm 2 ) 煙霧機からの水平距離 0 5 10 15 20 25 5m 10m 15m 薬剤付 着量( μ g /c m 2 ) 図5 常温煙霧による水平および垂直方向への薬剤分布 1) 各地点にコンテナを1段(高さ28cm)設置し、その上に置いたスライドグラスへの薬剤付着 量。 2) 煙 霧機噴頭(高さ50cm)の前方5mの地点にコンテナを3段重ね、それぞれのコンテナ上に置いた スライドグラスへの薬 剤付着量。 (A) 煙霧機からの距離と薬剤付着量 1) (B) コンテナ設置高と薬剤付着量 2)
5.チューリップサビダニ防除法の選択と留意点 サビダニの防除法を選択する際には、サビダニに対する防除効果のほか、作業性 や球根腐敗病対策についても考慮する必要があります。それぞれの防除法の特徴や 留意点を十分理解し、適切な防除法を選ぶことが大切です(表 4、図 6)。 表4 チューリ ップサビダニ の各 種防 除法の特徴(慣 行浸 漬法 との 比較 1) ) 項目 ・発生量 が多いとやや 劣る ※植 付け前浸漬 や処理むら対 策が 必要 ・浸 漬時間が 短い ・省力的 ・掘 取り 当日の薬 剤処理が不 要で ・掘取り 当日の 薬剤 処理 が不 要で 作 業量が軽 減できる 作業量 が軽減できる ・薬 液の多数 回使用で感 染が増え る おそ れが ある ※浸漬 時に殺菌 剤の 混用が必 要 1) 慣行 浸漬と比較して、◎:良い、 ○:同程度、△:やや劣 る。 2) アクテリック乳剤 500倍液は、現在、15分 間球根浸 漬で農薬登 録があり、3分 間球根浸 漬での登 録はない。 作業労力 ◎ ◎ 短時間浸漬 2) 常温煙霧 サビダニ に対 する防除効果 ◎ ・高 い ○~△ ○ 球根腐 敗病発生 への影 響 ◎ ・なし ・球根の水をよく切る ・薬液の補充、更新 チューリップサビダニ防除法の選び方フローチャート(参考) Q. 植付ける球根でサビダニの発生が気になり ますか? ・出荷した球根でサビダニが問題になりましたか? Q. 過去にサビダニが発生したことがありますか? ・被害がでたことはないけど不安がありますか? 植付前浸漬 +常温煙霧2回 常温煙霧2~3回 短時間浸漬 Q. 掘取り後の作業手順を変えられますか? ・除根調整作業を速やかに行うことができますか? サビダニ発生量 ・処理コンテナの設置場所 ・薬液の均一な拡散 とやまのチューリップ 高品質な球根生産 はい いいえ はい いいえ いいえ はい いいえ はい 慣行浸漬 ・殺菌剤の混用 サビダニ くん 球根腐敗病対策 処理ムラ 対策 図6 チューリップサビダニ防除法の選択と留意点 少~無発生 多発生 ・翌年は浸漬処理が 望ましい ・適正な薬液濃度・処理時間を守る Q. 煙霧機および密閉性の高い処理施設の準備は でき ますか? 6.おわりに 本県は全国一のチューリップ球根生産量を誇り、バラエティーに富んだ品種や良 品質で高い評価を得ています。ご紹介したサビダニの防除法を含め、病害虫対策が 球根の品質と生産性を向上させ、 「とやまのチューリップ」ブランドの維持・発展 に寄与することを願っています。
田畑輪換による土壌肥沃度の低下要因の解明と対策
―有機物施用こそダイズが生き残る道―
農業試験場 土壌肥料課 副主幹研究員 廣川 智子 1.はじめに 田畑輪換の長期化により、近年ダイズ収量が著しく低下しています。またダイズ後 水稲作では輪換初期に見られた過繁茂、倒伏が少なくなっています。これらの現象は 窒素を中心とした地力の減耗が関与していると考えられます。そこで、富山県で面積 率が高く、かつ土壌窒素肥沃度の減耗が顕在化しやすいと考えられる砂質の沖積乾田 で、輪換履歴の異なる圃場について、土壌窒素肥沃度の減耗の実態を調べました。ま た減耗の対策として緑肥・家畜ふん堆肥による肥沃度の変化を農試ほ場で調べたので その結果を紹介します。 2.ダイズの作付回数と土壌の変化 農事組合法人 S 農産が管理する庄川扇状地上の中粗粒灰色低地土の圃場で、平成 5 ~18 年までの 14 年間のダイズ作付回数が 0 回:5 筆、1 回:3 筆、2 回:6 筆、3 回:5 筆、 4 回:5 筆、5 回:3 筆の計 27 筆について、水稲収穫直後のほ場から作土を採取し、輪 換履歴と窒素肥沃度との関係をみました。 ダイズ作付は 1993~2006 年の 14 年間の履歴 1)土壌の全窒素と全炭素 ダイズの作付が増えても土壌の全窒素や全炭素(=腐植)は下がっていません。湿潤 土の湛水培養による窒素無機化量はダイズの作付回数が 2 回以上でやや低下気味です。 この値は水稲が吸収する地力窒素に近いため、ダイズの作付回数が増えたことの水稲 栽培への影響も徐々に出ると推察されます (表 1)。 2)風乾土の窒素無機化量が変化 土壌のアンモニア化成率は、ダイズ作付が増えるにつれて有意に低下しています (図 1)。ダイズの作付によって分解の早い有機物が消耗したようです。その結果、ダ イズの作付回数が増えるにつれ風乾土の湛水培養による窒素無機化量が減少する傾 向が認められます(図 2)。 表1 供試土壌の全窒素、全炭素、窒素無機化量 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 30℃4週値 標準偏差 30℃10週値 標準偏差 0 5 0.16 0.03 1.85 0.30 1.71 0.75 4.30 1.78 1 3 0.14 0.04 1.59 0.50 1.75 0.47 5.51 0.93 2 6 0.16 0.02 1.74 0.23 0.88 0.24 3.11 0.71 3 5 0.15 0.02 1.61 0.20 0.77 0.78 3.20 1.18 4 5 0.14 0.02 1.55 0.34 1.38 0.35 3.75 0.70 5 3 0.15 0.03 1.62 0.30 1.26 0.08 3.40 0.16 湿潤土湛水培養窒素無機化量(mg/100g) T-N(%) T-C(%) ダイズ作 付回数 ほ場数図2 大豆作付回数と風乾土の窒素無機化量2006) 10 15 20 25 30 35 0 1 2 3 4 5 大豆作付回数 土壌窒素無機化 量( m g/ 1 0 0 g 乾土) この風乾土の無機化量は潜在的な地力窒素です。この値がダイズの窒素吸収量(≒ ダイズ収量)と大変相関が高く(図 3) (写真)、ダイズの作付回数が増えるにつれ風乾 土湛水培養の無機化量が減少し収量も低下しています。ダイズは湿潤土から無機化し てくる地力窒素だけを吸収しているのではなく、土壌の潜在的な地力を積極的に吸収 しているようです。田畑輪換の長期化によるダイズの生産力低下要因はこの潜在的な 地力窒素の減少とみられ、有機物施用による回復が早急に必要です。 3、有機物の施用効果 1) 堆肥の施用効果 昨年、3 年間に 2 回、2t/10a の堆肥施用が 3 年に 1 回のダイズ作付に効果的であっ たことがこの場で報告されました。さらに、繰り返しダイズを栽培するとダイズ跡地 の湿潤土の土壌窒素無機化量は輪換初期の頃ほど高くならず堆肥を 3 年に 2 回 2t/10a 施用した区が輪換初期の値に近くなっています(図 4)。またダイズの窒素吸収量と密 接な関係のある風乾土の土壌窒素の無機化量を見ると、2t/10a の堆肥施用区が水稲連 作田並の地力を維持していることがわかります(図 5)。 注)アンモニア化成率=風乾土 30℃4W 窒素量/全窒素×100 注)30℃10 週間の湛水培養 異符号間に5%水準で有意差有り(Tukey-Kramer 法) 0 1 2 3 4 5 注) 1/5000a ポット栽培 ダイズ窒素吸収量は子実・茎・莢の合計 図中の数値はポット土壌のダイズ作付回数 R=-0.756*** 図3 土壌窒素と大豆の窒素吸収量(2007) 0 1 4 2 3 5 20 40 60 80 100 120 15 17 19 21 23 25 風乾土30℃10W値(mg/100g) 大豆窒素吸収量( m g /ポ ッ ト 乾 土 10 0g ) r=0.982*** 図1大豆の作付回数とアンモニア化成率(2006) a a.b c bc bc c 0 2 4 6 8 10 12 14 0 1 2 3 4 5 大豆作付回数 アン モニ ア化 成 率 (% )
図4 湿潤土の無機化窒素量(2006) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 水稲連作 輪作堆肥0 水稲連作 輪作堆肥0 輪作堆肥2t 輪作堆肥4t 土 壌 窒 素 無 機 化 量 (mg /100g 乾 土 ) 30℃4W 30℃10W 図5 風乾土の無機化窒素量(2006) 4 8 12 16 20 24 水稲連作 輪換堆肥0 輪換堆肥2t 輪換堆肥4t 土壌窒素無機化量( m g/100g 乾土) 30℃4W 30℃10W 2)緑肥の施用効果 ヘアリーベッチないしエンバクが 2~3 作すき込まれたほ場でダイズを一作栽培し た跡地土壌を調べると肥沃度が維持されていることが認められます。 ヘアリーベッチは、C/N 比が低くて、速効性肥料に近いと推測されていましたが、 維持効果が認められます。しかしすき込み量が少ない場合の 1 作のみではダイズを 1 回栽培することで対照区に近い地力に戻っています(図 6)。 緑肥を添加した土壌を畑状態でほ場に埋め込み、窒素の出方を見たところ、エンバ クのすき込みは、始めは窒素の取り込みがありますが生育後半は窒素無機化量が増え ていました(図 7)。そのためエンバクをすき込みダイズを栽培する場合は基肥窒素の 図6 跡地土壌の窒素無機化量(ほ場試験) 8 9 10 11 12 13 14 15 ヘアリ1 ヘアリ2 ヘアリ3 エンバク3 対照 風乾土3 0 ℃ 4 W (m g/ 1 0 0 g) 2004 2007 図7 土壌窒素無機化速度 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 6/1~7/2 7/2~8/1 8/1~8/30 8/30~10/1 期間 土 壌 窒 素 無 機 化 量 (m g/ 100g 乾土 /da y) ヘアリ2.3t/10a エンバク1.5t ヘアリ1.2t+エン0.75t 対照 注) 緑肥のすき込み量(図6) 年次 緑肥 乾物重(gm-2) N(%) N(gm-2)C/N比 ヘアリーベッチ 413 4.19 17.3 10.7 区の説明 ライ麦 742 1.17 8.7 39.0 ヘアリ1:2004年ヘアリーベッチすき込み ヘアリーベッチ 264 4.71 11.3 9.5 ヘアリ2:2003,2004年ヘアリーベッチすきこみ エンバク 730 1.00 6.3 42.3 ヘアリ3:2002~2004年ヘアリーベッチすき込み ヘアリーベッチ 198 4.18 9.5 エンバク3:2002年ライ麦,2003,2004年エンバクすき込み エンバク 208 1.45 3.0 2002 2003 2004 Ⅰ:標準偏差 Ⅰ:標準偏差 S60~H18 年にダイズ 11 作 参考 S60
施用が必要ですが、ダイズ生育は対照区と同程度かやや増となっています(図 8)。し かも土壌肥沃度は、すき込んだ年は低いものの、ダイズ1作を含む 3 年経過後はヘア リーベッチよりも高く維持しています(図 6)。 4.まとめ 繰り返しダイズを作付けることで 1) 土壌の全窒素や腐植含量はただちに低下はしていないが分解しやすい有機物が減 耗します。 2) そのため風乾土湛水培養による土壌窒素量はダイズの作付回数が増えるにつれ減 少します。また、この無機化量がダイズの窒素吸収量と密接な関係にあります。 3) 窒素肥沃度減耗の対策としては、 ・堆肥施用を継続する。 ・緑肥の場合は、ヘアリーベッチ・エンバクのいずれも肥沃度維持に効果があり、 2~3 回すき混むことで、ダイズ 2~3 回分の作付けによる地力の減耗を修復・維 持することが可能とみられます。 Ⅰ:標準偏差 2007 年:基肥 N4mg/150g 乾土施用 2006 年:施肥無し 図8 緑肥施用とダイズの窒素吸収量(ポット試験) 0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 ヘアリ ヘアリ+エン エンバク 対照 施用緑肥 全窒 素吸収 量( g/ ポ ッ ト ) 2007 2006
直播栽培(H17~19、19箇所) 出穂期 成熟期 一穂 ㎡当り 登熟 倒伏 整粒 精米 食味 味度 着粒数 着粒数 歩合 程度 歩合 蛋白 官能 (月日) (月日) (cm) (cm) (本/㎡) (粒/穂) (百粒) (%) (g) (kg/10a) (0-5) (%) (%) (総合) てんこもり 8/15 9/27 81.7 18.8 432 72 309 82 22.7 569 0.4 88 5.3 -0.06 90 コシヒカリ 8/11 9/19 86.9 17.6 365 70 257 87 22.5 491 1.8 73 5.1 -0.04 84 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 移植栽培(H16~18、10箇所) 出穂期 成熟期 一穂 ㎡当り 登熟 倒伏 整粒 精米 食味 味度 着粒数 着粒数 歩合 程度 歩合 蛋白 官能 (月日) (月日) (cm) (cm) (本/㎡) (粒/穂) (百粒) (%) (g) (kg/10a) (0-5) (%) (%) (総合) てんこもり 8/9 9/21 80.3 19.6 445 73 327 86 22.9 622 0.6 87 5.2 -0.06 88 コシヒカリ 8/4 9/12 87.4 18.0 385 77 295 89 22.7 567 2.0 62 5.2 -0.12 85 ** ** ** * ** * ** ** ** 品種名 品種名 精玄米重 稈長 穂長 穂数 千粒重 精玄米重 稈長 穂長 穂数 千粒重
水稲新品種「てんこもり」の高品質・良食味栽培法
- 期待の晩生品種を美味しく仕上げるためには - 農業試験場 機械営農課 主任研究員 山口 琢也 1.はじめに 本県の稲作は、中生品種である「コシヒカリ」に作付けが集中していますが、気象変動へ のリスク回避、作業分散や低コスト化を図る観点からは、成熟期の異なる早生・中生・晩生 のバランスのとれた作付けに改善していく必要があります。 「てんこもり」は、安定して品質が良く、「コシヒカリ」並に美味しく、直播に適するなどの 優れた特徴を持つ、期待の晩生品種であり、昨年 12 月に奨励品種に採用されました。特 に、直播での収量性が「コシヒカリ」より優れていることから、大規模経営体における作期 拡大での活用が期待されています。 しかし、今後、実需者からの高い評価を得ていくためには、安定して高品質・良食味と なる栽培法により、作付拡大を行っていく必要があります。ここでは、「てんこもり」の直播 における栽培特性を中心に紹介します。 2.「てんこもり」の品種特性 1) 出穂・成熟期 「コシヒカリ」より出穂期で5日、成熟期で7日程度遅い。注1) 2) 草型・収量性 稈長は「コシヒカリ」より短く、耐倒伏性は強。穂数が「コシヒカリ」よりも 多く、収量が直播でも安定して多い。 3) 品質・食味 高温登熟耐性が「コシヒカリ」より強く、品質が「コシヒカリ」より安定して 良い。また、食味が「コシヒカリ」と同程度で美味しい。 注 1) 農業試験場内の奨励品種決定調査圃における成績(平成 14 年~19)の平均値 表1.現地試験結果の概要(H16~19)注 2) 注2) 水稲品種開発加速化事業及び 21 世紀とやま稲作活性化推進事業における試験成績。 注3) 収量調査及び品質・食味調査は、1.90mm 以上で行った。 注4) 食味は、パネラー数 20 名程度で行い、農試基準コシヒカリを 0.00 とし、-2~+2 で評価。(数値が大きいほど美味しい)R2 = 0.63 200 250 300 350 400 300 350 400 450 500 550 穂数(本/m2) m 2当た り着粒数(百粒) 3.「てんこもり」の直播栽培における適正着粒数注 6) 高品質・良食味を維持しながら安定した目標収量(560kg/10a)を得るためには、m2 当 たり着粒数を、28,000~30,000 粒とする必要があります。 1) 「てんこもり」の直播栽培における収量は、m2当たり着粒数が 28,000~32,000 粒で 最も高まります(図 1)。 2) m2当たり着粒数が 30,000 粒を超えると、精米タンパク含量が 5.5%以上に高まり、食 味が低下します。また、m2当たり着粒数が増えると、乳心白・青米比率が高まり、外観 品質が低下します(図 2,3)。 3) 目標となる m2当たり着粒数を確保するための穂数のめやすは、430 本/m2、一穂着 粒数のめやすは 70 粒/穂程度と考えられます(図 4)。 注 6) 農試及び現地の砂壌土地帯において試験したものです。 注 7) 図 1~5 の凡例の●は H19(農試 6 区、現地1区),■は H18(農試 7 区、現地 4 区),△は H17(農試 7 区)の結果を示す。 R2 = 0.71 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 220 260 300 340 380 420 m2当たり着粒数(百粒 ) 精米タ ン パ ク 含量( %) R2 = 0.67 0 2 4 6 8 10 12 14 220 260 300 340 380 420 m2当たり着粒数(百粒 ) 乳心白・ 青米比率( %) 40 45 50 55 60 65 220 260 300 340 380 420 m2当たり着粒数(百粒 ) 精玄 米重( k g/a ) 図 1 収量と着粒数の関係(H17~19) 図 2 タンパク含量と着粒数の関係(H18~19) 図 3 玄米品質と着粒数の関係(H17~19) 図 4 穂数と着粒数の関係(H17~19)
草丈 (cm) 70~75 茎数 (本/m2) 550~650 群落葉色 4.0~4.3 草丈×茎数 ×群落葉色 (×1,000) 150~180 R2 = 0.42 200 250 300 350 400 100 150 200 250 300 幼形期の草丈×茎数×葉色(×1000) m 2 当たり着粒 数 (百粒 ) 450~550本/m2 270 ± 30 286 ± 26 330 ± 48 550~650本/m2 255 ± 11 305 ± 2 361 ± 4 650本/m2以上 331 ± 66 387 ± 10 幼穂形成期 の茎数 幼穂形成期の群落葉色 3.9以下 4.0~4.3 4.4以上 4.「てんこもり」の直播栽培における幼穂形成期の生育指標 1) m2当たり着粒数を 28,000~30,000 粒確保するための幼穂形成期の適正生育量(草丈 ×茎数×群落葉色)は 150,000~180,000 です(図 5)。また、生育量のめやすは、草丈 70~75cm、茎数 550~650 本/m2、群落葉色 4.0~4.3 です(表 2)。 2) 幼穂形成期における群落葉色を 4.0~4.3 とすることで、適正着粒数へと誘導する事が できますが、過繁茂(茎数 650 本/m2以上)の場合には、葉色が 4.0~4.3 であっても、 過剰着粒となる場合があります(表 3)。 ・ 幼穂形成期の時点で、葉色が 4.4 以上あるか、茎数が 650 本/m2以上ある場合には、 1回目の穂肥を減肥するなどの対応が必要です。 ・ 最高分げつ期前後の葉色が 4.0 を下回る場合には、つなぎ肥を窒素で 1.0~ 1.5kg/10a 程度施用する必要があります。 ・ 晩生専用の肥効調節型肥料を使用している場合は、LP70(つなぎ成分)の効果により 葉色が維持されることから、安易なつなぎ肥を施用して過剰生育とならないように注意 が必要です。 :不足 :適正 :過剰 図 5 幼形期生育量と着粒数の関係(H17~19) 表 2 幼穂形成期の生育量のめやす 表 3 幼穂形成期の茎数及び葉色とm2当たり着粒数の関係 (百粒/m2)
5.栽培上の留意点 1)「コシヒカリ」よりも茎数が取れやすいので、基肥量は基準を守り、適切な 中干しを行うなど、過剰分げつにならないよう注意してください。 2)耐倒伏性は強いですが、過剰な穂肥施用は玄米のタンパク含量を高め、食味 を低下させますので、避けてください。 3)紋枯病にやや弱いので、過繁茂にならないよう肥培管理に注意するとともに 的確な防除を行ってください。 6.おわりに 「てんこもり」の名称は、一般公募による 1,900 点以上の応募の中から、生産者 の情熱、富山のきれいな水や肥沃な大地などを詰め込んだお米をイメージさせるこ とや、美味しいご飯をたくさん食べたくなる、消費拡大や食育にもつながる名称と して選定されたものです。 また、「てんこ」には富山弁では、てっぺん、頂上という意味があります。この 品種を上手に活用することにより、各々の経営体での作期分散を推進し(図 6)、 より一層の高品質・良食味米の安定生産に取り組んでいただければ幸いに存じます。 図 6 「てんこもり」の大規模経営体における導入モデル 注8) コシヒカリについては、平成 11~19 年の富山市平均気温より出穂期及び成熟期を推定。 「てんたかく」及び「てんこもり」は生観及び現地試験のデータ等からの予測。
晩生の酒造好適米「富山酒
69 号」の育成
―ライバルは「山田錦」―
農業試験場 作物課 主任研究員 蛯谷 武志 1. はじめに 県内の醸造用米の作付面積は、約930ha ですが、その大部分を新潟県育成の「五 百万石」が占めており、本県育成の早生品種「雄山錦」の作付けは8%程度と少な い状況にあります。 一方、本県の酒造メーカーでは一般酒醸造用米に本県産「五百万石」が、高級 酒醸造用米には兵庫県産「山田錦」が主に使用されています。これは、「山田錦」 を本県で栽培した場合、収穫時期が遅く収量、品質が不安定であるため、本県での 栽培は極一部に限られているからです。そこで、富山県酒造組合(以下、酒造組合) からの「山田錦相当の酒造適性と富山県に適する栽培特性とを兼ね備えた晩生品種 の開発」との要望を受けて品種開発に取り組み、「富山酒69 号」を育成しました。 2. 育成経過 1998 年夏に、「山田錦」を母、「富山酒 45 号(後の雄山錦)」を父として人工交 配を行いました。その後、個体や系統の選抜を繰り返すとともに、諸形質の固定化 を図り、2004 年から生産力検定試験を開始しました。2005 年の試験から「富山酒 69 号」の地方番号を付け、2006 年には現地圃場(1ha)での原料米生産および酒造 メーカー3 社での試験仕込みを行い、2007 年 6 月および 11 月の 2 度にわたり利き 酒を行いました。また、2007 年に現地実証試験において適応性を検討しました。 その結果、「山田錦」に比べ、収量性や耐倒伏性等の栽培適性に優れ、「山田錦」 並の酒造適性をもつことが明らかとなり、また、十分に固定していることも確認で きたため、2008 年 1 月 23 日に「富の香」の品種名で品種登録の出願をしました。 3. 品種特性 1) 出穂・成熟期 「山田錦」より出穂期で5日、成熟期で 6 日程度早い。 2) 草姿 稈長は「山田錦」より13cm 程度短く、穂数は、「山田錦」と同等 である。 3) 栽培特性 耐倒伏性は「山田錦」よりやや強く、穂発芽性は「山田錦」の「易」 に対し「中」、脱粒性は、「山田錦」の「易」に対し、「難」である。 4) 収量 「山田錦」より明らかに多く、「五百万石」と同程度である。千粒 重は、「雄山錦」よりやや軽く、「山田錦」より1g 程度重い。 5) 酒造適性 心白発現率は、「山田錦」より明らかに高く、また、吟醸酒の評価 は「山田錦」と同等である。(0無~5甚) (0強~5弱) (0強~5弱) (0極難~9極易) (0難~2易) 富山酒69号 8/12 9/20 97.8 19.2 398 52.5 5.9 27.9 2.0 0.0 0.0 6.5 0.0 72.3 (比)山田錦 8/20 9/25 111.1 20.5 421 44.9 14.8 26.1 2.0 0.0 0.0 7.5 2.0 47.5 (参)雄山錦 7/26 8/30 85.3 20.2 301 60.4 2.2 28.4 0.0 0.0 0.0 6.5 0.0 73.0 (参)五百万石 - - - - - - - - - - - - - - 富山酒69号 8/18 9/30 90.5 19.9 370 51.7 8.4 27.1 0.2 0.0 0.0 5.5 0.0 - (比)山田錦 8/22 10/4 105.3 19.4 381 43.9 13.1 26.9 0.5 0.0 0.0 7.5 2.0 - (参)雄山錦 7/28 8/31 76.1 18.8 259 47.6 4.0 28.4 0.5 0.0 0.0 3.5 0.0 - (参)五百万石 7/27 8/31 80.0 19.7 306 44.0 3.9 27.0 2.0 0.0 0.0 3.0 0.0 - 富山酒69号 8/18 9/26 84.1 19.6 316 44.5 5.3 27.1 3.0 0.0 0.0 5.0 0.0 70.0 (比)山田錦 8/23 10/4 95.6 20.9 318 37.9 9.7 26.2 4.0 0.0 0.0 6.0 2.0 42.0 (参)雄山錦 8/3 9/5 75.5 19.7 228 52.0 1.1 27.7 0.0 0.0 0.0 5.0 0.0 94.0 (参)五百万石 8/1 9/3 75.6 21.1 240 51.3 1.4 26.4 1.0 0.0 0.0 4.0 0.0 83.0 富山酒69号 8/16 9/25 90.8 19.6 361 49.6 6.5 27.4 1.7 0.0 0.0 5.7 0.0 71.2 (比)山田錦 8/21 10/1 104.0 20.3 373 42.2 12.5 26.4 2.2 0.0 0.0 7.0 2.0 44.8 (参)雄山錦 7/29 9/1 79.0 19.5 263 53.3 2.4 28.2 0.2 0.0 0.0 5.0 0.0 83.5 (参)五百万石 7/29 9/1 77.8 20.4 273 47.7 2.7 26.7 1.5 0.0 0.0 3.5 0.0 83.0 富山酒69号 8/13 9/20 82.4 20.2 281 43.2 6.0 28.4 0.5 0.0 0.0 4.5 0.0 - (比)山田錦 8/18 9/27 96.5 20.5 288 43.0 8.8 26.6 0.5 0.0 0.0 8.0 2.0 - (参)雄山錦 - - - - (参)五百万石 - - - -富山酒69号 8/17 9/26 93.7 21.3 333 52.9 10.4 26.6 3.0 0.0 0.0 6.0 0.0 75.3 (比)山田錦 8/21 10/4 105.5 20.3 359 46.1 14.3 25.6 4.0 0.0 0.0 7.0 2.0 39.7 (参)雄山錦 7/26 8/27 79.4 20.4 271 56.1 2.1 27.1 0.0 0.0 0.0 4.0 0.0 87.0 (参)五百万石 7/19 8/22 77.3 20.3 310 46.0 7.1 25.6 1.0 0.0 0.0 4.0 0.0 61.7 富山酒69号 8/15 9/23 88.0 20.8 307 48.0 8.2 27.5 1.8 0.0 0.0 5.3 0.0 75.3 (比)山田錦 8/19 9/30 101.0 20.4 324 44.6 11.6 26.1 2.3 0.0 0.0 7.5 2.0 39.7 (参)雄山錦 7/26 8/27 79.4 20.4 271 56.1 2.1 27.1 0.0 0.0 0.0 4.0 0.0 87.0 (参)五百万石 7/19 8/22 77.3 20.3 310 46.0 7.1 25.6 1.0 0.0 0.0 4.0 0.0 61.7 富山酒69号 8/15 9/24 89.4 20.2 334 48.8 7.4 27.4 1.7 0.0 0.0 5.5 0.0 73.2 (比)山田錦 8/20 9/30 102.5 20.3 348 43.4 12.0 26.3 2.2 0.0 0.0 7.3 2.0 42.2 (参)雄山錦 7/27 8/29 79.2 20.0 267 54.7 2.3 27.6 0.1 0.0 0.0 4.5 0.0 85.3 (参)五百万石 7/24 8/27 77.6 20.4 292 46.8 4.9 26.2 1.3 0.0 0.0 3.8 0.0 72.4 注1)標準栽培は5月中旬移植、早植栽培は4月下旬移植の値. 注2)2.1mmの篩を用いて選別した値. 表1 生産力検定調査成績 2005 2006 2007 5/15 標 準 栽 培 平均 - 5/11 (kg/a) 2006 早 植 栽 培 2007 平均 全体平均 系統名 または 品種名 試験 年度 栽培 方法 稈長 月/日 月/日 脱粒 程度 心白 発現率 (%) (g) いもち病 紋枯病 穂発芽程度 - 田植日 5/10 穂長 4/25 4/25 注2) 屑米重 障害 倒伏 程度 注2) 千粒重 穂数 注2) 精玄米重 - (cm) (cm) 出穂期 成熟期 (kg/a) (本/㎡) 月/日 図1 玄米と籾の比較 「富山酒 69 号」は、「山田錦」に比べて粒 大が大きく、心白発現が良好で、これらの性 質は「雄山錦」から受け継いでいます。 1.7mm 1.7~ 1.8~ 1.9~ 2.0~ 2.1~ 2.2mm (g) (mm) (mm) 未満 1.8mm 1.9mm 2.0mm 2.1mm 2.2mm 以上 と系酒1282 26.9 - - 0.8 1.1 2.1 5.1 26.1 36.3 28.5 90.9 (比) 山田錦 25.3 - - 3.0 6.0 10.6 19.3 44.2 14.7 2.2 61.1 (参) 雄山錦 27.0 - - 1.0 1.3 1.8 3.0 14.3 28.7 49.8 92.8 富山酒69号 27.1 3.23 5.44 1.7 1.0 1.9 4.3 12.0 34.2 44.7 90.9 (比) 山田錦 26.2 3.26 5.38 1.4 1.3 3.6 10.4 26.7 42.7 13.9 83.3 (参) 雄山錦 27.7 3.27 5.38 0.2 0.3 0.4 0.8 2.4 8.4 87.5 98.3 (参)五百万石 26.4 3.24 5.20 0.3 0.1 0.4 1.4 6.5 25.5 65.8 97.8 富山酒69号 26.6 3.25 5.43 3.0 2.5 4.3 6.3 11.7 31.0 41.3 84.0 (比) 山田錦 25.6 3.25 5.37 1.8 1.8 4.3 11.2 27.1 41.5 12.4 81.0 (参) 雄山錦 27.1 3.24 5.46 0.6 0.4 0.7 1.7 4.4 16.7 75.5 96.6 (参)五百万石 25.6 3.24 5.22 4.7 1.6 2.4 4.9 18.6 42.6 25.1 86.3 富山酒69号 26.9 3.24 5.44 1.8 1.5 2.8 5.2 16.6 33.8 38.2 88.6 (比) 山田錦 25.7 3.26 5.38 2.1 3.0 6.2 13.6 32.7 33.0 9.5 75.1 (参) 雄山錦 27.3 3.26 5.42 0.6 0.7 1.0 1.8 7.0 17.9 70.9 95.9 (参)五百万石 26.4 3.24 5.29 2.2 0.9 1.6 3.5 12.4 34.1 45.2 91.7 注1) 千粒重は、2.0mm以上玄米の測定値. 注2) 粒長および粒幅は、各サンプルから抽出した2.0mm以上の粒(約1000粒)について、RN-300((株)ケット社製)で測定した. 注3) 粒厚分布の測定は、200gの玄米を用いた.下線は最も多くの粒が分布したことを示す. 表2 玄米の粒形および粒厚分布 平均 早 植 栽 培 標 準 栽 培 2007 系統名 または 品種名 試験 年度 2004 早 植 栽 培 2.0mm以上 比率 (重量%) 千粒重 粒幅 粒厚分布(重量%) 栽 培 方 法 粒長
4. 栽培上の留意点 過剰な施肥は精米蛋白質含量の増加に繋がり、酒造適性が低下します。また、「富 山酒 69 号」の「耐倒伏性がやや弱い」という特性の面からも、適正な基肥、穂肥 の施用および水管理の徹底が必要です。 5. おわりに 「富山酒69 号」の普及については、当面は県内酒造メーカーの需用を見極めな がら酒米産地での面積拡大を図る予定です。なお、2007 年産米の仕込みは、5 社で 行っており、2008 年の作付面積は 8ha を計画しています。 「富山酒69 号」を原料米とする大吟醸酒の新ブランドが、日本酒の消費回復の 一助になれば幸いです。 表 4 利き酒に用いた酒の成分分析結果(食品研究所) ①原料米 ②麹 名前 酵素活性 調整前 調整後(g) 調整前 調整後(g) 精米歩合見掛け 精米歩合真 砕米率 (%) (g) 13.8%換算 (%) (g) 13.5%換算 (%) (%) (%) A社 富山酒69号 14.0 28.8 28.7 7.5 15.2 16.3 50 52.9 9.4 - - - -対照(雄山錦) 13.2 29.0 29.2 7.6 15.6 16.7 50 53.4 9.9 2280 166 2291 7309 B社 富山酒69号 14.1 28.7 28.6 7.8 16.1 17.2 50 56.3 9.9 1319 181 1876 6503 対照(山田錦) 13.9 28.4 28.4 8.3 14.5 15.4 50 51.1 9.8 1073 130 2028 7251 C社 富山酒69号 13.8 28.9 28.9 8.1 15.8 16.8 50 54.7 9.9 1601 188 2143 6964 対照(山田錦) 13.6 27.8 27.9 8.6 14.9 15.8 50 53.5 9.8 1237 137 2239 7539 ③生成酒 酵素活性:単位/g麹 一般成分 香気成分 ※1:キッコーマン(株)製酵素測定キットを使用 名前 アルコール 酸度 アミノ酸度 日本酒度 n-プロピル i-ブチル i-アミル カプロン酸 酢酸イソ ※2:国税庁所定分析法による 分(%) (ml) (ml) アルコール アルコール アルコール エチル アミル αアミラーゼ、グルクアミラーゼ:デンプンを糖分に変える A社 富山酒69号 20.1 1.4 1.8 +2.8 62 18 188 2.8 1.0 働きをする糖化酵素。 対照(雄山錦) 19.1 1.4 1.6 +4.5 56 19 194 3.2 1.1 酸性プロテアーゼ: タンパク質をペプチド(2~20個くらいの アミノ酸がつながったもの)に分解する。 B社 富山酒69号 18.1 1.4 1.1 +4.0 71 53 146 0.9 3.2 ペプチドは清酒にゴク味を感じさせる。 対照(山田錦) 18.2 1.3 0.8 +4.0 64 54 144 2.8 3.7 酸性カルボキシペプチダーゼ:タンパク質やペプチドからアミ ノ酸を1つづつ端から切り離す。 C社 富山酒69号 16.5 1.2 1.1 +2.5 28 19 193 4.1 1.6 対照(山田錦) 17.3 1.2 1.1 +2.8 43 22 185 4.1 1.3 単位:ppm 酸度:清酒に含まれる全ての酸を、酸の種類を問わず一括して表す方法。概して、糖分が多く酸度が少ない酒は甘口で、逆に糖分が 少なく酸度が多いものは辛口の酒となる。 アミノ酸度:清酒中のアミノ酸の量を一括して表す指標。アミノ酸は旨味成分として捉えることも多いが、多すぎても雑味の原因になる ことがあり、糖分や酸度とのバランスが重要である。 日本酒度:清酒の比重を表したもの。「+-0」を基点として、プラスに上がるほど辛口タイプになり、逆にマイナスに下がるほど甘口 タイプのお酒となる。 カプロン酸エチル:清酒の吟醸香の成分の一つ。リンゴのような香。 酢酸イソアミル:清酒の吟醸香の成分の一つ。バナナのような香。 玄米千粒重 白米千粒重 玄米 水分 白米 水分 α-アミ ラーゼ※1 酸性カルボ キシペプチ ダーゼ※1 酸性プロテ アーゼ※2 グルコアミ ラーゼ※1 酒造関係者 一般 酒造関係者 試験区分 山田錦 雄山錦 富山酒69号 18 21 2 対照区分 山田錦 雄山錦 雄山錦 14 19 4 試験区分 山田錦 富山酒69号 富山酒69号 22 23 5 対照区分 山田錦 山田錦 山田錦 10 19 1 試験区分 富山酒69号 富山酒69号 富山酒69号 17 20 2 対照区分 山田錦 山田錦 山田錦 15 22 4 ※ 評価方法は、同一工場製造された試験区と対照区を比べて、良いと思われる方に1票加える方法で評価した. 表3 利き酒の結果 2007/6/28 (1回目) 製造場名 2007/11/26 (2回目) 掛け米 麹米 酒母米 区分 A社 C社 B社