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1)修理用資材の調査

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Academic year: 2021

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2)修理用資材の調査 A.資料 a)国宝重要文化財補助事業実績報告書 現在、我が国では文化財保護法により約 3,600 棟の建物が重要文化財に指定され、保存の 措置が講じられている。指定物件の約9割は木造で、その保存のためには適切な管理、修理 が必要となる。修理は屋根葺替、塗装、壁塗替など 20〜50 年周期で実施されるものから、100 〜200 年周期で実施される建物を一旦解体し、破損部を補修後ふたたび組み立てる本格的な 修理(解体修理、半解体修理)までさまざまな種類がある。これら修理の大半は多額の経費 を要するため、国・県・市町村から補助金が交付されるケースがほとんどである。年間約 100 件の補助事業による修理が実施され、平均事業期間が3年前後なので毎年度 30 件ほどの事業 が完了する。 補助金の交付をうける場合はいろいろな書類が必要で、このうち事業が完了した時点で 国・県・市町村に提出されるのが、実績報告書である。この書類には当該事業の内容が詳細 に記されており、そのなかに修理で購入した木材の内訳書があり、これによって消費した木 材の樹種、品等、材積などを知ることができる。 今回の調査研究では、文化庁文化財保護部建造物課が所蔵する昭和51年度から昭和61 年度までの 12 ヶ年、264 件の実績報告書を資料とし(内訳は下表のとおり)、文化財建造物 の保存修理に使用された木材の品等、材積等について集計、分析をおこなった。但し、単純 な屋根葺替工事などの木材消費量のごくわずかなものは除外した。 年度 社寺 民家 洋風 他 計 主 な 物 件 51 5 15 1 0 21 高良大社、山中家(愛媛)、仁風閣 52 3 14 0 1 18 衡梅院本堂、旧滝沢本陣(福島) 53 14 16 3 0 33 金剛輪寺三重塔、東福寺三門、箱木家(兵庫) 54 7 20 3 3 33 東大寺大仏殿、豊島家(愛媛)、伊達郡役所 55 9 20 3 0 32 定光寺本堂、菊屋家(山口)、旧福島県尋常中学校 56 10 15 0 1 26 万福寺東方丈、松苧神社本殿、田中家(徳島) 57 7 6 2 1 16 南禅寺三門、鈴木家(和歌山)、天鏡閣 58 6 19 0 0 25 清水寺観音堂、福永家(徳島)、荒井家住宅(栃木) 59 10 8 0 0 18 観心寺金堂、真禅院三重塔、中島家(福岡) 60 7 10 2 0 19 桑実寺本堂、三森家(栃木)、旧群馬県衛生所 61 10 12 1 0 23 燈明寺本堂、安藤家(山梨)。豊平館

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b)構成部材調書 構成部材調書は、柱、梁、垂木など建物を構成する各部材の材種、寸法、員数などを一覧 表形式にまとめた調書である。さらにそれぞれの部材について、修理にあたり再用した材・ 補足した材の員数、補足材の材種、寸法、員数の情報ももりこんである。 この調書は前述の補助事業による修理のうち、解体修理や半解体修理など本格的な修理事 業において、現場の文化財修理技術者によって作成される。但し、先述の実績報告書にかな らず掲載されるというものではなく、すべての建物についてこれを入手することはできない。 今回の調査研究では、表計算ソフトで入力してあるものについては(財)文化財建造物保 存技術協会の好意で提供していただき、手書きの調書については時間の許す限りデータ入力 を行い、下表のとおり 65 件を研究資料として用意した。 入力にあたっては 3,600 棟ある指定物件の建物の種類(本殿、本堂、民家など)の割合に できるだけ近づけるようにつとめた。 構成部材調書データ入力一覧 単位;㎡ 建物種類 規 模 番号 県 別 名 称 区分1 区分2 区分3 平面積 軒面積 1 新潟 多多神社本殿 神社 本殿 一間社流造 3.830 12.385 2 長野 若宮八幡社本殿 神社 本殿 一間社流造 3.484 9.662 3 長野 八幡神社本殿 神社 本殿 一間社流造 4.221 13.812 4 長野 佐野神社本殿 神社 本殿 一間社流造 5.198 17.875 5 滋賀 布施神社本殿 神社 本殿 一間社流造 1.790 6.130 6 大阪 厳島神社末社春日神社本殿 神社 本殿 一間社流造 5.358 15.695 7 新潟 小比叡神社本殿 神社 本殿 三間社流造 17.092 41.312 8 福井 春日神社本殿 神社 本殿 三間社流造 15.888 15.888 9 兵庫 八幡神社本殿 神社 本殿 三間社流造 43.220 89.340 10 広島 桂濱神社本殿 神社 本殿 三間社流造 28.041 61.077 11 宮崎 巨田神社本殿 神社 本殿 三間社流造 16.647 37.680 12 和歌山 金剛峯寺山王院本殿丹生明神社 神社 本殿 一間社春日造 18.685 61.532 13 和歌山 金剛峰寺山王院本殿高野明神社 神社 本殿 一間社春日造 18.528 61.667 14 和歌山 広八幡神社摂社甲良社本殿 神社 本殿 一間社春日造 3.940 12.400 15 和歌山 金剛峰寺山王院本殿総社 神社 本殿 三間社春日造 7.289 20.419 16 福島 飯野八幡宮本殿 神社 本殿 入母屋造 39.527 127.131 17 茨城 八幡宮本殿 神社 本殿 入母屋造 28.370 81.507 18 茨城 鹿島神宮仮殿 神社 本殿 入母屋造 32.504 94.809 19 岡山 吉川八幡宮本殿 神社 本殿 入母屋造 77.025 184.980 20 福井 大塩八幡宮拝殿 神社 拝殿 割拝殿 140.000 198.000 21 長野 真田信之霊屋表門 神社 門 四脚門 6.014 19.941 22 岐阜 薬師堂 寺院 仏堂 三間堂 44.436 87.310 23 山形 旧松応寺観音堂 寺院 仏堂 三間堂 117.442 157.725

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24 三重 庫蔵寺本堂 寺院 仏堂 三間堂 52.387 116.192 25 滋賀 長命寺護摩堂 寺院 仏堂 三間堂 23.650 38.780 26 和歌山 地蔵峰寺本堂 寺院 仏堂 三間堂 60.504 141.218 27 静岡 寶林寺仏殿 寺院 仏堂 五間堂 293.120 412.308 28 兵庫 長遠寺本堂 寺院 仏堂 五間堂 213.528 379.782 29 熊本 青蓮寺阿弥陀堂 寺院 仏堂 五間堂 98.168 191.739 30 三重 金剛証寺本堂 仏堂 仏堂 七間堂 448.802 742.681 31 大阪 観心寺金堂 寺院 仏堂 七間堂 379.065 616.414 32 和歌山 道成寺本堂 寺院 仏堂 七間堂 357.490 586.000 33 島根 清水寺本堂 寺院 仏堂 七間堂 405.397 693.696 34 栃木 専修寺如来堂 寺院 仏堂 二重仏堂 100.000 222.614 35 茨城 小山寺三重塔 寺院 塔婆 三重塔 17.106 70.291 36 兵庫 如意寺三重塔 寺院 塔婆 三重塔 14.623 80.103 37 岡山 備中国分寺五重塔 寺院 塔婆 五重塔 35.140 133.500 38 静岡 寶林寺方丈 寺院 方丈 236.618 351.389 39 大阪 大安寺本堂 寺院 方丈 179.393 223.818 40 奈良 興福院客殿 寺院 方丈 133.351 193.719 41 和歌山 金剛峰寺大門 寺院 門 二重門=五間一戸 168.730 567.620 42 神奈川 建長寺山門 寺院 門 107.855 280.781 43 秋田 天徳寺山門 寺院 門 楼門=三間 77.568 154.250 44 愛知 財賀寺仁王門 寺院 門 楼門(欠二階) 47.796 147.897 45 広島 浄土寺山門 寺院 門 四脚門 16.947 50.715 46 山口 洞春寺山門 寺院 門 四脚門 13.707 33.603 47 栃木 専修寺総門 寺院 門 薬医門=一間 6.940 18.231 48 山梨 慈眼寺庫裏 寺院 庫裏 49 滋賀 膳所神社表門 城郭 表門 薬医門 9.709 32.300 50 滋賀 大通寺含山軒及び蘭亭 住宅 書院 65.621 105.817 51 兵庫 篠山城大書院 住宅 書院 52 秋田 草なぎ家住宅主屋 民家 主屋 農家 284.708 335.600 53 福島 五十嵐家住宅 民家 主屋 農家 108.790 120.44 0 54 群馬 彦部家住宅 民家 主屋 農家 360.570 412.620 55 埼玉 吉田家住宅 民家 主屋 農家 202.450 256.600 56 山梨 高野家住宅主屋 民家 主屋 農家 57 山口 菊屋家住宅主屋 民家 主屋 町屋 297.200 335.400 58 長野 旧横田家住宅隠居屋 民家 離屋 58.525 71.626 59 山口 熊谷家住宅離れ座敷 民家 離屋 69.117 86.024 60 山口 菊屋家住宅米蔵 民家 倉 土蔵 72.200 98.000 61 山口 熊谷家住宅本蔵 民家 倉 土蔵二階建て 77.616 106.456 62 山口 熊谷家住宅宝蔵 民家 倉 土蔵二階建て 23.285 33.781 63 山梨 高野家住宅座敷門 民家 門 64 群馬 旧群馬県衛生所 洋風 公共 255.743 319.779 65 千葉 旧学習院初等科正堂 洋風 学校 647.737 730.330

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B.文化財建造物修理事業で消費された木材の樹種と材積 a)年度当たりの樹種別消費量 昭和 51 年度から 61 年度までの実績報告書所収の購入木材内訳書を資料に年度ごと、樹種 ごとにその材積を集計したものが、次頁の表である。 この 12 年間の木材消費量は一定せず、年度によりかなりの増減がみられ、特に昭和 53、 54 年度はとびぬけて多い。これはこの時期に東大寺大仏殿や東福寺三門などの大規模建物の 修理が重なったためである。12 年間の年度あたり木材消費量の統計的な平均値は約 620m3 であるが、通常時は 500m3前後である。 樹種をみると檜の消費量が最も多く、全体の三分の一を占める(次項円グラフ参照)。年度 別のグラフを次項に示したが、東大寺大仏殿などの修理があった昭和 53〜54 年度は 400~500 m3と突出しているが、通常時の消費量は 100~200m3であることがわかる。 檜につづいて杉、松が多く、これら三種で全体の三分の二を占めている。その他の木材は 檜、杉、松と比べかなり少なく、台檜が 16.5 m3/年、栗が 14.1 m3/年、ヒバが 12.7 m3/年、 栂が 12.4 m3/年という順になる。 b)消費木材の品等 消費量の多い檜、杉、松について、消費した品等をみてみよう。年度ごとの品等別消費量 一覧とその右に昭和 51 年度から 61 年度までの 12 年間の平均の品等の割合を円グラフで示し た。 檜は無節が4%と他の材より比率が多く、上小節も 25%あり、高品位なものが求められて いることがわかる。年度ごとの消費量に着目すると東大寺大仏殿、東福寺三門などの大規模 な社寺建築が多い昭和 53~54 年度に小節以上の高い品等の材が特に多くなっている。 杉は無節材は1%と檜と比べれば少ないものの、品等の割合は檜と似ている。檜と同様、 大規模社寺建築の修理が重なった昭和 53~54 年度に小節材、上小節材の消費量が多くなって いる。 松は小節以上の高い品等のものが他の2種と比べ、かなり低く、そのかわり丸太材が全体 の三分の一近くを占める。これは松が小屋梁などに多くつかわれているからであろう。

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C.建物の構成材に占める取替材の率 建物を構成する部材の寸法、員数、材積と修理の際取り替えた材の寸法、員数、材積は構 成部材調書によって知ることができる。 下表に建物の種類ごとに建物の規模、構成材積と取替材積および取替材積の構成材積に対 する割合(取替率)を示した。取替率が 100%を上まわるものがあり、理屈にあわないもの となっているが、これはこの構成部材調書の構成材積が修理前の材積を示しているためで、 大きな復原が行われると、たとえば構造の多くが変更したり、規模が大きくなるような場合 このような現象が生じる。しかし、このような大規模な変更は稀で、この資料によっておお よその傾向は知ることが可能である。 取替率は建物の種類によって顕著な差はみることができない。全体の取替率は建物によっ てさまざまで三分の一から多いもので三分の二程度である。化粧材と野物材でわけてみると 化粧材の取替率が野物材より少ない傾向にある。 今回は時間の関係で分析することができなかったが、床廻り、軸部、軒廻り、小屋組など 部位による樹種の使い分けや取替率などについて検討することによってより詳細なデータを 得ることができると思われた。

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