1.
はじめに
1990「事業用トラック」という)
自動車運送
競争を促し,運賃の低下とサービス水準の向上 より,
業者の利潤が減少したことから,一部の事業者は 安全運行に十分な費用をかけることができなくな り,過労運転や過積載等の違法行為を原因とする 事故が増加した.
このような背景から,
動車運送事業法の国会審議において,事業者の安 全性を評価するシステムを整備するという内容の 附帯決議がなされ,
運送適正化事業実施機関 本トラック協会
いう)による
(以下「
本稿では,
主が安全性の高い事業者を選びやすくする」
業者全体の安全性向上に対する意識を高める」と いった効果を持つのかについて,実証分析により 明らかにする.
2.
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
G マーク制度単位で
業所」という)
1 本稿は論文の要約であるため いては論文を参照されたい
はじめに
11990 年に始まった貨物自動車運送市場
「事業用トラック」という)
自動車運送事業者(以下「事業者」という)
競争を促し,運賃の低下とサービス水準の向上
,消費者余剰の増大
業者の利潤が減少したことから,一部の事業者は 安全運行に十分な費用をかけることができなくな り,過労運転や過積載等の違法行為を原因とする 事故が増加した.
このような背景から,
動車運送事業法の国会審議において,事業者の安 全性を評価するシステムを整備するという内容の 附帯決議がなされ,
運送適正化事業実施機関 本トラック協会(以下
いう)による貨物自動車運送事業安全性評価事業
(以下「G マーク制度」という
本稿では,G マーク制度が,政策目標である「荷 主が安全性の高い事業者を選びやすくする」
業者全体の安全性向上に対する意識を高める」と いった効果を持つのかについて,実証分析により 明らかにする.
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
マーク制度は,安全性単位で安全性優良事業所
業所」という)として認定する制度である
本稿は論文の要約であるため いては論文を参照されたい
貨物自動車運送事業安全性評価事業(
荷主の事業者選択と事故に与える影響
年に始まった貨物自動車運送市場
「事業用トラック」という)の規制緩和は,
(以下「事業者」という)
競争を促し,運賃の低下とサービス水準の向上 消費者余剰の増大をもたらした.一方,事 業者の利潤が減少したことから,一部の事業者は 安全運行に十分な費用をかけることができなくな り,過労運転や過積載等の違法行為を原因とする
このような背景から,2003 年施行の改正貨物自 動車運送事業法の国会審議において,事業者の安 全性を評価するシステムを整備するという内容の 附帯決議がなされ,2003 年 7 月に全国貨物自動車 運送適正化事業実施機関である公益社団法人全日
(以下「全日本トラック協会」と 貨物自動車運送事業安全性評価事業 マーク制度」という)
マーク制度が,政策目標である「荷 主が安全性の高い事業者を選びやすくする」
業者全体の安全性向上に対する意識を高める」と いった効果を持つのかについて,実証分析により
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
は,安全性の高い安全性優良事業所(以下「
として認定する制度である
本稿は論文の要約であるため,
いては論文を参照されたい.
貨物自動車運送事業安全性評価事業(
荷主の事業者選択と事故に与える影響
年に始まった貨物自動車運送市場(以下 の規制緩和は,貨物
(以下「事業者」という)間の 競争を促し,運賃の低下とサービス水準の向上
をもたらした.一方,事 業者の利潤が減少したことから,一部の事業者は 安全運行に十分な費用をかけることができなくな り,過労運転や過積載等の違法行為を原因とする
年施行の改正貨物自 動車運送事業法の国会審議において,事業者の安 全性を評価するシステムを整備するという内容の 月に全国貨物自動車 公益社団法人全日
「全日本トラック協会」と 貨物自動車運送事業安全性評価事業
)が開始された マーク制度が,政策目標である「荷 主が安全性の高い事業者を選びやすくする」,「事 業者全体の安全性向上に対する意識を高める」と いった効果を持つのかについて,実証分析により
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
の高い事業者を事業所(以下「G マーク取得事 として認定する制度である(表 1
,参考文献等につ
1
貨物自動車運送事業安全性評価事業(
荷主の事業者選択と事故に与える影響
政策研究大学院大学
(以下 貨物 間の 競争を促し,運賃の低下とサービス水準の向上に をもたらした.一方,事 業者の利潤が減少したことから,一部の事業者は 安全運行に十分な費用をかけることができなくな り,過労運転や過積載等の違法行為を原因とする
年施行の改正貨物自 動車運送事業法の国会審議において,事業者の安 全性を評価するシステムを整備するという内容の 月に全国貨物自動車 公益社団法人全日
「全日本トラック協会」と 貨物自動車運送事業安全性評価事業 が開始された.
マーク制度が,政策目標である「荷
「事 業者全体の安全性向上に対する意識を高める」と いった効果を持つのかについて,実証分析により
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
事業所 マーク取得事 1).参考文献等につ
表 表 表 表 開始時期 運営機関 運営財源 評価対象 単位 申請費用 有効期間
認定を希望する事業者の申請により,
ラック協会が
故や違反の状況,安全性に対する取組の積極性の 3 つの評価項目について評価基準に基づき点数化 した上で,安全性評価委員会への諮問および答申 を経て評価を決定する.認定された事業所は ーク取得事業所
を保有車両等に掲示できる 日本トラック協会等が設ける 優遇等
きる.
G ており,
事業所の
貨物自動車運送事業安全性評価事業(G マーク制度)が 荷主の事業者選択と事故に与える影響
政策研究大学院大学
表 表 表
表 1111 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 開始時期
運営機関 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関
(公益社団法人全日本トラック協会)
運営財源 評価対象
単位
一般貨物運送事業者及び特定貨物運送事業者
申請費用
有効期間 更新回数により
認定を希望する事業者の申請により,
ラック協会が安全性に対する法令の遵守状況,事 故や違反の状況,安全性に対する取組の積極性の つの評価項目について評価基準に基づき点数化 した上で,安全性評価委員会への諮問および答申 を経て評価を決定する.認定された事業所は ーク取得事業所であることを示す標章(
を保有車両等に掲示できる 日本トラック協会等が設ける
優遇等のインセンティブ制度を利用することがで きる.
G マーク取得事業所は制度開始以来増加を続け ており,2014 年
事業所の 25.3%となっている.(図
図 図図
図 1111 GGG マーク取得事業所数の推移Gマーク取得事業所数の推移マーク取得事業所数の推移マーク取得事業所数の推移
出典 公益社団法人全日本トラック協会「全日本トラッ
マーク制度)が 荷主の事業者選択と事故に与える影響
政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU14608
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
2003
全国貨物自動車運送適正化事業実施機関
(公益社団法人全日本トラック協会)
運輸事業振興助成交付金
一般貨物運送事業者及び特定貨物運送事業者 の事業所
無料(インターネット申請の場合)
更新回数により 2
認定を希望する事業者の申請により,
安全性に対する法令の遵守状況,事 故や違反の状況,安全性に対する取組の積極性の つの評価項目について評価基準に基づき点数化 した上で,安全性評価委員会への諮問および答申 を経て評価を決定する.認定された事業所は
であることを示す標章(
を保有車両等に掲示できるほか 日本トラック協会等が設ける
のインセンティブ制度を利用することがで
マーク取得事業所は制度開始以来増加を続け 年 12 月末現
在で
となっている.(図
マーク取得事業所数の推移 マーク取得事業所数の推移 マーク取得事業所数の推移 マーク取得事業所数の推移
公益社団法人全日本トラック協会「全日本トラッ
マーク制度)が
まちづくりプログラム MJU14608
砂田
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
2003 年 7 月
全国貨物自動車運送適正化事業実施機関
(公益社団法人全日本トラック協会)
運輸事業振興助成交付金 一般貨物運送事業者及び特定貨物運送事業者
の事業所
無料(インターネット申請の場合)
2 年,3 年または
認定を希望する事業者の申請により,全日本ト 安全性に対する法令の遵守状況,事 故や違反の状況,安全性に対する取組の積極性の つの評価項目について評価基準に基づき点数化 した上で,安全性評価委員会への諮問および答申 を経て評価を決定する.認定された事業所は
であることを示す標章(G マーク)
ほか,国土交通省,全 日本トラック協会等が設ける
IT
点呼,各種助成の
のインセンティブ制度を利用することがでマーク取得事業所は制度開始以来増加を続け 月末現在で 21,125 事業所,全 となっている.(図 1)
マーク取得事業所数の推移 マーク取得事業所数の推移 マーク取得事業所数の推移 マーク取得事業所数の推移
公益社団法人全日本トラック協会「全日本トラック協会ニュース」
まちづくりプログラム
将之
貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
全国貨物自動車運送適正化事業実施機関
(公益社団法人全日本トラック協会)
一般貨物運送事業者及び特定貨物運送事業者
無料(インターネット申請の場合)
年または 4 年
全日本ト 安全性に対する法令の遵守状況,事 故や違反の状況,安全性に対する取組の積極性の つの評価項目について評価基準に基づき点数化 した上で,安全性評価委員会への諮問および答申 を経て評価を決定する.認定された事業所は G マ マーク)
,国土交通省,全 点呼,
各種助成の
のインセンティブ制度を利用することがでマーク取得事業所は制度開始以来増加を続け 事業所,全
ク協会ニュース」
G マークの取得は
んでいる
G マーク取得事業所の 高く,
所の約半分となっている
図 図 図 図
3. G
G マーク制度 ける「情報の非対称」
ことであるが
いて仮説を設定する.
3.1
荷主の行動に与える影響
安全性に関する情報性を重視する荷主であっても,安全性の低い事業 者と取引を行い,事故に伴う貨物の損傷や遅延等
マークの取得は
んでいる(図 2)
.図図図
図 222 2 事業規模別事業規模別事業規模別事業規模別
マーク取得事業所の
高く,車両台数あたり事故発生件数は非取得事業 所の約半分となっている
図 図 図
図 3333 GGGG マーク取得状況別の事故発生件数マーク取得状況別の事故発生件数マーク取得状況別の事故発生件数マーク取得状況別の事故発生件数
G
マーク制度の効果に関する仮説
マーク制度の政策目標ける「情報の非対称」
ことであるが,G マーク制度が
仮説を設定する.
荷主の行動に与える影響
安全性に関する情報性を重視する荷主であっても,安全性の低い事業 者と取引を行い,事故に伴う貨物の損傷や遅延等
出典 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」
マークの取得は,規模の大きい事業者ほど
事業規模別 事業規模別事業規模別
事業規模別 GGGG マーク取得状況マーク取得状況マーク取得状況マーク取得状況
マーク取得事業所の輸送サービスは安全性 車両台数あたり事故発生件数は非取得事業 所の約半分となっている(図 3).
マーク取得状況別の事故発生件数 マーク取得状況別の事故発生件数マーク取得状況別の事故発生件数 マーク取得状況別の事故発生件数
マーク制度の効果に関する仮説
の政策目標は,トラック輸送 ける「情報の非対称」,「負の外部性マーク制度がもたらす
仮説を設定する.
荷主の行動に与える影響
安全性に関する情報の非対称がある場合 性を重視する荷主であっても,安全性の低い事業 者と取引を行い,事故に伴う貨物の損傷や遅延等
国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」
出典 国土交通省自動車局貨物課ウェブサイト」
規模の大きい事業者ほど
マーク取得状況 マーク取得状況マーク取得状況 マーク取得状況
輸送サービスは安全性
車両台数あたり事故発生件数は非取得事業.
マーク取得状況別の事故発生件数 マーク取得状況別の事故発生件数 マーク取得状況別の事故発生件数 マーク取得状況別の事故発生件数
マーク制度の効果に関する仮説
トラック輸送にお
負の外部性」を解消する
もたらす効果につの非対称がある場合,安全 性を重視する荷主であっても,安全性の低い事業 者と取引を行い,事故に伴う貨物の損傷や遅延等
国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」
国土交通省自動車局貨物課ウェブサイト」
2 規模の大きい事業者ほど進
輸送サービスは安全性が
車両台数あたり事故発生件数は非取得事業にお を解消する につ
,安全 性を重視する荷主であっても,安全性の低い事業 者と取引を行い,事故に伴う貨物の損傷や遅延等
のリスクを負う可能性がある れると
り,
得事業者の取引量は減少すると考えられる.
そこで,
「る」ことを仮説として設定する.
3.2 G 高い
業者の取引量が増加するのであれば,市場に占め る安全性の高い輸送サービスの割合が増加し,事 故が
そこで,
「所の割合が高くなるほど事故発生率は減少する ことを仮説として設定する.
4.
前章で設定した
ルを用いた実証分析を行う.
4.1 G
える
G るため
物運送事業者からランダムに抽出した 2006
ルにより分析する
れていないことから,代理変数として 数を用い
推定 ln(TR
TR GM
SC α ε 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」
国土交通省自動車局貨物課ウェブサイト」
のリスクを負う可能性がある れると, G マーク取得事業者を
り,G マーク取得事業者の取引量は増加し,
得事業者の取引量は減少すると考えられる.
そこで,
「G マーク取得事業者の取引量は増加す る」ことを仮説として設定する.
3.2
事故に与える影響
G マーク取得事業所いため,前項の仮説のとおり,
業者の取引量が増加するのであれば,市場に占め る安全性の高い輸送サービスの割合が増加し,事
が減少すると考えられる.
そこで,
「全事業所に占める所の割合が高くなるほど事故発生率は減少する ことを仮説として設定する.
G
マーク制度導入の効果に関する 前章で設定した
ルを用いた実証分析を行う.
4.1 G
マーク制度が荷主の行動に与える影響を捉
える推定モデル
G マーク制度が荷主の行動に与える影響 るため,2006 年時点で東京都に本社を 物運送事業者からランダムに抽出した
2006 年と 2014 年の保有車両台数を固定効果モデ
ルにより分析する
れていないことから,代理変数として 数を用いた.
推定モデル 1 ln(TR
it+1) =α+
+α
TR:車両台数 GM:G マークダミー
※1 事業所でも取得していれば SC:小規模事業者ダミー(
α1:定数項 β ε:誤差項 i
のリスクを負う可能性がある マーク取得事業者を
マーク取得事業者の取引量は増加し,
得事業者の取引量は減少すると考えられる.
マーク取得事業者の取引量は増加す る」ことを仮説として設定する.
事故に与える影響
マーク取得事業所の輸送サービスは安全性が
前項の仮説のとおり,
業者の取引量が増加するのであれば,市場に占め る安全性の高い輸送サービスの割合が増加し,事
減少すると考えられる.
全事業所に
占める
所の割合が高くなるほど事故発生率は減少する ことを仮説として設定する.
マーク制度導入の効果に関する
前章で設定した 2 つの仮説について,推定モデ ルを用いた実証分析を行う.
マーク制度が荷主の行動に与える影響を捉
マーク制度が荷主の行動に与える影響 年時点で東京都に本社を 物運送事業者からランダムに抽出した
年の保有車両台数を固定効果モデ
ルにより分析する.事業者ごとの輸送量は公表さ
れていないことから,代理変数として+1) =α+β
1GM
it+β +α
i+δ
t+ε
マークダミー(あり:1,なし:0) 事業所でも取得していれば
:小規模事業者ダミー(30 台以下 β1~β2:パラメータ
i:事業者
のリスクを負う可能性がある.G マークが マーク取得事業者を利用するようにな マーク取得事業者の取引量は増加し,
得事業者の取引量は減少すると考えられる.
マーク取得事業者の取引量は増加す る」ことを仮説として設定する.
輸送サービスは安全性が 前項の仮説のとおり,G マーク取得事
業者の取引量が増加するのであれば,市場に占め る安全性の高い輸送サービスの割合が増加し,事減少すると考えられる.
全事業所に占める G マーク取得事業 所の割合が高くなるほど事故発生率は減少する ことを仮説として設定する.
マーク制度導入の効果に関する実証分析
つの仮説について,推定モデルを用いた実証分析を行う.
マーク制度が荷主の行動に与える影響を捉
マーク制度が荷主の行動に与える影響 年時点で東京都に本社を置く一般貨 物運送事業者からランダムに抽出した 491
年の保有車両台数を固定効果モデ 事業者ごとの輸送量は公表さ れていないことから,代理変数として保有車両台
+β
2(GM
it*SC
i) +ε
it:0) 事業所でも取得していれば 1 とした.
台以下:1,31 台以上:0
:パラメータ t:年度
が導入さ ようにな マーク取得事業者の取引量は増加し,非取 得事業者の取引量は減少すると考えられる.
マーク取得事業者の取引量は増加す
輸送サービスは安全性が
マーク取得事 業者の取引量が増加するのであれば,市場に占め る安全性の高い輸送サービスの割合が増加し,事マーク取得事業 所の割合が高くなるほど事故発生率は減少する」
実証分析
つの仮説について,推定モデ
マーク制度が荷主の行動に与える影響を捉
マーク制度が荷主の行動に与える影響を捉え
置く一般貨
491 社の 年の保有車両台数を固定効果モデ 事業者ごとの輸送量は公表さ 保有車両台)
:0)
3 表表表
表 2222 推定モデル推定モデル推定モデル推定モデル 111 1 推定結果推定結果推定結果 推定結果
G マークは事業者の取引量を増加させる効果が あり,特に小規模事業者の場合にはその効果がよ り大きいことが有意に示された.
4.2 G
マークがトラック輸送市場の安全性に与え
る影響を捉える推定モデル
〔推定モデルの概要〕
G マークがトラック輸送市場の安全性に与える
影響を捉えるため,2010 年と 2012 年の各都道府 県
G マーク普及率と事故発生率を固定効果モデル により分析する.推定モデル 2
AR
it=α+β
1GR
it+β
2DH
it+β
3DO
it+β
4EA
it+β
5SA
it+α
i+δ
t+ε
itAR:トラック事故発生率(事故件数/登録台数)
GM:G マーク普及率 DH: 運転手平均労働時間,
DO:運転手平均年齢 EA: 他車種事故件数
SA:被災地ダミー(2012 年岩手・宮城・福島:1,その他:0)
α1:定数項 β1~β5:パラメータ ε:誤差項 i:都道府県 t:年度
表 表表
表 3333 推定モデル推定モデル推定モデル推定モデル 222 2 推定結果推定結果推定結果 推定結果
G マークは事故を減少させ,トラック輸送市場 の安全性を向上させることが有意に示された.
5.
考察
推定モデル
1 は,「G マーク取得事業者の取引量 は増加する」という仮説を実証した.G マーク制 度は,荷主と事業者の間の安全性に関する情報の非対称を解消する効果があることが明らかになっ
た.また,小規模事業者が G マークを取得する場合にはより強い効果を持つ.
モデル
2 は,「全事業所に占める G マーク取得 事業所の割合が高くなるほど事故発生率は減少す る」という仮説を実証した.G マークはトラック 運送市場の安全性向上に寄与することが明らかに なった.しかし,推定モデル2 の有意水準は 10%に止ま った.この一因として,安全な事業者による G マ ークの取得が進んでいないことが考えられる.推 定モデル1 で示したとおり G マークは小規模事業 者が取得する場合により取引量を増加させる効果 を持つが,現状では,大規模事業者による取得が
先行していることから,G マークの普及率が増加
しても,事故の減少に与える効果は小さいと考え られる.6. G
マーク取得の便益と費用の検証
G マーク制度の効果を高めるためには,安全性 の高い事業者,特に小規模事業者による G マーク 取得を促すことが重要である.
そこで,小規模事業者への ヒアリング結果に基
づいて,現行の G マーク制度が小規模事業者とい うだけで取得が困難になっていないか検証を行っ た(表 4).6.1 G
マーク取得により得られる便益
便益には,取引量の増加とインセンティブ制度
の活用がある.インセンティブ制度は,大規模事 業者ほど IT点呼活用の便益が大きいこと等から,大規模事業者の便益が大きい.
被説明変数:ln(トラック台数)
説明変数 係数 標準誤差
Gマークダミー 0.396 *** 0.110 0.353 *** 0.136 年次固定効果(2014年) -0.756 *** 0.056
事業者固定効果 (省略)
定数項 2.714 *** 0.024
観測数 982
決定係数 0.289
(注1) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す.
(注2) 標準誤差は事業者クラスター化不均一分散頑健標準誤差である.
Gマークダミー×
小規模事業者ダミー(交差項)
被説明変数:トラック事故発生率 (件/千台)
説明変数 係数 標準誤差
Gマーク普及率 (%) -0.345 * 0.202 運転手平均労働時間 (時間) -0.034 * 0.017 運転手平均年齢 (歳) 0.070 0.094 他車種事故件数 (千件) 0.389 ** 0.175 被災地ダミー -2.053 * 1.051 年次固定効果(2012年) 0.394 1.008
都道府県固定効果 (省略)
定数項 28.360 *** 6.733
観測数 94
決定係数 0.476
(注1) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す.
(注2) 標準誤差は都道府県クラスター化不均一分散頑健標準誤差である.
4 表表
表表 444 4 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要
項目 便益・費用の大きさ
大規模 小規模 便
益
取引量の増加 △ ○
インセンティブ制度 ○ ×
費 用
「安全性に対する法令の
順守状況」 ― ―
「事故や違反の状況」 ― ―
「安全性に対する取り組
みの積極性」 ○ ×
6.2 G
マーク取得に伴う費用
費用には,評価項目である「安全性に対する法 令の順守状況」,「事故や違反の状況」,「安全性に 対する取り組みの積極性」について,各項目の評 価点および合計の評価点が基準点数を上回るため のコストである.
このうち,「安全性に対する取り組みの積極性」
は付加的な取り組
みを評価する項目である. 各評
価項目について検証を行ったところ,小規模事業 者による適合難易度が高い項目があることが分か った.例えば,
「事業所内で安全対策会議を定期的 に実施している」という評価項目は実施頻度や参 加対象となる人数にも基準定められている.トラ ック輸送は,一般にドライバーごとに勤務時間が異なること等から,複数人で行う会議や研修の開 催が難しいが,小規模事業者にとっては特に負担
が大きい.一方,小規模事業者による適合難易度は低いが,
安全性が低い事業者でも適合が容易で安全性向上 効果も期待できない項目も見受けられた.
以上の検証から,現行の制度は,小規模事業者 ほど取得が困難であることが分かった.
7.
政策提言
考察および前章の検証結果に基づき,G マーク 制度をさらに効果的にするための方策について
提 言する.
(1)
「安全に対する取組の積極性」の評価項目お よび適合基準の見直し
独自の会議や研修の実施を評価基準とする項
目については,
同等の効果を持つ他の取り組み
(外 部機関が主催する研修や会議への出席,点呼時の危険予知訓練等)も加点対象とする.
安全性が低い事業者でも適合が容易で安全性 向上効果も期待できない項目は削除する.
これらにより,G マーク取得の費用が低減し,G マーク取得を促進できると考えられる.
(2)
小規模事業者にも活用可能なインセンティブ 制度の拡充
特定の運転者に対する適性診断費用の助成等
が考えられる.これにより,G マーク取得の便益が増加し,G マーク取得を促進できると考えられる.
また,一般消費者への G マーク制度の認知度を 向上させることで,荷主である企業に対して G マ ーク事業者を選択するよう社会的な要求が高まり.
結果的に事業者側も G マークを取得するインセン
ティブが高まると考えられる.8.
おわりに
本稿の結論は次のとおりである.G マーク制度 は,G マーク制度は,荷主と事業者の間の安全性 に関する情報の非対称を解消し,トラック運送市 場の安全性を向上させる効果があるが,後者につ いては有意水準が低い.この一因は安全性の高い 事業者による認定取得が進んでいないためと推察 される.そのため,安全な事業者による取得を促 すため,小規模事業者の障壁となっている評価項 目やインセンティブ制度の見直しが必要である.
また,荷主に G マーク事業者選択を促す方策を提