• 検索結果がありません。

消防活動困難区域の有無に着目した道路網評価

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "消防活動困難区域の有無に着目した道路網評価"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

消防活動困難区域の有無に着目した道路網評価 薄井 宏行・浅見 泰司

Evaluation of Road Networks Focusing on Fire Inextinguishable Area Hiroyuki USUI and Yasushi ASAMI

Abstract: This paper proposes the method for judging whether formation of road networks is well-organized or not. In applying Section 42-3 in the Building Standards Law to narrow roads, we have to evaluate formation of road networks. The method for evaluating this, however, has not been explicitly defined in the law. By conducting a questionnaire to grasp how a local administrative office interprets the criteria related with formation of road networks, it is clarified that one of important criteria is whether fire inextinguishable areas exist or not. By using GIS, we clarify the areas where it is potentially possible to apply this section in Tokyo 23 wards.

Besides, we clarify the mathematical condition that fire inextinguishable areas do not exist in terms of spatial information.

Keywords: 道路網 (road networks) ,消防活動困難区域 (fire inextinguishable area) , 3 項道路 (the Building Standards Laws 42-3 roads) ,路地 (narrow roads)

1. はじめに

道路は,格子型や放射環状型などが四通八達した網 として構成されている

(1

.道路網の形態は都市構造の特 徴を反映する.古都京都のように格子型街路網が卓越 する都市もあれば,東京山の手のように尾根道と谷道 が放射状に展開し,尾根道と谷道が坂によって結ばれ ている道路網をもつ都市もある.一見すると無秩序な 様相を呈する道路網にも,地形に合わせて道路網を構 成する論理が存在する

(2

道路網の形態は,都市構造の特徴を反映するだけで なく,法律の規定を適用する際にも考慮しなければな らない.建築基準法第42条第3項で規定される通称「3 項道路規定」は,基準を満たせば幅員 4m 未満の道路の

存続を認める規定である. 2004年,国土交通省は3項道 路規定の運用通知を出し,歴史や美しい佇まいをもつ 路地の保全・再生を図る場合に3項道路規定を積極的に 適用することができるようになった

(3

.3項道路規定の 指定基準の一つに「街路が整った地区」という基準が ある

(3

.ところが,街路が整っているかどうかを評価す るための指標や水準は,当該規定で定められていない.

今後, 3 項道路規定が適用される路地は増加すると予 測される.当該規定を適切に運用するためには,街路 が整っているかどうかを評価するための定量的な指標 や水準を定める必要があると思われる.本稿では,ヒ アリング調査を実施することによって,自治体におけ る「街路が整った」という基準の解釈を把握し,街路 が整っているかどうかを評価するための定量的な指標 や水準を示す.以降,道路と街路は互いに同義語とし て用いることにする.

薄井:〒

113-8656

東京都文京区本郷

7-3-1

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 電話:

03-5841-6259

e-mail:[email protected]

(2)

2. 自治体における 「街路が整った」という基準の解釈 本節では,自治体における「街路が整った」という 基準の解釈を示す. 2004 年以降, 3 項道路規定が適用さ れた地域は,東京都中央区月島地区のみである.そこ で,東京都中央区役所にヒアリング調査の協力を依頼 し,東京都中央区における「街路が整った」という基 準の解釈を把握した.

ヒアリング調査の結果, 「月島地区の場合,街区を構 成する道路がしっかりしているので, 3 項道路規定を適 用することによる消火活動への支障はないと考えられ る」という回答が得られた.従って, 3 項道路規定の指 定基準の一つに街路が整っているかどうかという項目 が設けられた目的は,消火活動等の災害安全性を確保 するためであるといえる.

図 1 は月島地区の街路網を示したものである.赤色で 示したリンクは幅員4m未満の路地を表し,赤色で太く 示したリンクは 3 項道路規定が適用されている路地を 表す.図1から,月島地区において3項道路規定が適用 されている路地の両端は,幅員4m以上の道路に接続し ていることがわかる.幅員が 4m 以上ならば消防車は進 入可能であるため,幅員4m以上の道路から路地内に消 火ホースを伸ばすことによって消火活動は可能である.

1 :月島地区の街路網

3. 消防活動困難区域と「街路が整った地区」の把握 前節において, 3項道路規定の指定基準の一つに街路 が整っているかどうかという項目が設けられた目的は,

消火活動等の災害安全性を確保するためであることが わかった.本節では,消火活動への支障の有無を評価 するために,消防活動困難区域の有無を評価する.評 価対象地域は東京23区である.

消防活動困難区域とは,幅員 6m 以上の道路から 140m 以遠にある領域のことである

(4

.本稿では,幅員 6m 以 上の道路網を「広幅員道路網」と定義し,幅員6m以上 の道路網を周囲にもつ閉領域を「広幅員道路網で囲ま れた領域」と定義する.

広幅員道路網で囲まれた領域を考える利点は二つあ る.第一に,任意の広幅員道路網で囲まれた領域につ いて消防活動困難区域の有無を詳細に把握できること である.街路が整っているかどうかを評価するための 空間単位として広幅員道路網で囲まれた領域に着目し,

当該領域において消防活動困難区域が存在しないなら ば,災害安全性の観点から街路が整った地区であると 判断できる.第二に,広幅員道路網で囲まれた領域の 形状と道路網形態は表裏一体であり,領域形状から道 路網形態を評価することができることである.広幅員 道路網で囲まれた領域の形状が整っていれば,道路網 形態は整っていると評価することができる.

図 2 は,東京 23 区における消防活動困難区域の分布と 3 項道路規定適用候補

(1)

となる路地が存在する広幅員道 路網で囲まれた領域を消防活動困難区域の有無で色分 けして示したものである.図 2 において濃い灰色で示し た領域には消防活動困難区域が存在する.東京 23 区内 には,このような領域が371箇所存在する.特に,中野 区,杉並区南東部,世田谷区北部において消防活動困 難区域の面積が大きい領域が連担して分布している様 子がわかる.一方で,薄い灰色ドットで示した領域に は,消防活動困難区域が存在しない.東京 23 区内には,

このような領域が 1646 箇所存在する.従って,消防活 動可能性の観点から,これらの領域は「街路が整った 地区」であると判断することができる.よって,歴史 や美しい佇まいをもつ路地が図2の薄い灰色ドットで 示した領域に存在する場合, 3 項道路規定を積極的に適 用しても構わないと考えられる.

月島地区

(3)

図2:東京23区における消防活動困難区域 (黒色で示した領域)と街路が整った地区(灰色ストライプで示した領域)

4. 消防活動困難区域が存在しない道路網形態

前節では,広幅員道路網で囲まれた領域における消 防活動困難区域の有無に着目して街路が整った地区を 把握した.図 2 からわかるように,広幅員街路網で囲ま れた領域に消防活動困難区域が存在するかどうかは,

広幅員道路網の形態に依存する.消防活動困難区域が 生じないような街路網形態に関する知見は,今後の道 路網整備を合理的に行うために欠かせない.本節では,

消防活動困難区域が存在しない道路網形態について論 じる.以降,広幅員道路網で囲まれた領域を「領域」

と略記することにする.

領域形状が長辺 a ,短辺 b の矩形の場合,領域内に消

防活動困難区域が存在しないための必要十分条件は:

 280

a m または b  280 m (1) である.このように,領域形状が矩形の場合の議論は 容易である.ところが,実際の市街地における領域形 状は矩形ではなく多角形である.領域形状が一般的な 多角形の場合における領域内に消防活動困難区域が存 在しないための条件を考えてみよう.

図 3 は,頂点を P

i

(i=1,…,n) とする凸 5 角形 (n=5) を広幅 員街路網で囲まれた領域とみなして消防活動困難区域 を描いたものである.頂点P

i

と対応する消防活動困難 区域の頂点 Q

i

から辺 P

i-1

P

i

と辺 P

i

P

i+1

に垂線を下ろし ( 図

:消防活動困難区域

:3項道路規定適用候補を含む領域(消防活動困難区域を含む)

:3項道路規定適用候補を含む領域(消防活動困難区域を含まない)

:広幅員道路網で囲まれた領域

(4)

中の破線),垂線の足をH

ik

(k=1,2)とする.この場合,任 意の辺P

i

P

i+1

(i=nのとき,P

n

P

1

とする)に対して,

1 , 1 1 2

1  

i i

i i

i

i

P P H P H

P (2)

が成立するならば,領域内に消防活動困難区域は存在 しない.いま,任意の頂点 P

i

における内角の大きさ∠

P

i-1

P

i

P

i+1

をθ

i

と記す.点P

i

と点Q

i

を線分で結ぶと(図中の 一点鎖線 ) ,互いに合同な直角三角形 P

i

Q

i

H

i1

と直角三角 形 P

i

Q

i

H

i2

ができるので, 線分 P

i

Q

i

はθ

i

の二等分線である.

このとき,辺P

i

H

ik

(k=1,2)の長さは:

 

 

 140 tan 2 2

i

ik

i

H

P   . (3)

従って,領域内に消防活動困難区域が存在しないため の条件は,任意の辺 P

i

P

i+1

に対して次式が成立すること である:

 

 

 

 

  

 

 

  

tan 2 2

2 tan 2

140

1

1 i i

i i

P

P     (4)

1

 2

i

i

 のとき,(4)式は(1)の不等式と一致する.

(1)式と(4)式を比較すると,領域形状が矩形でない場合,

消防活動困難区域の有無は広幅員街路のなす角θに依 存する.このため,領域形状が矩形の場合のように議 論は容易でない.

3 :広幅員街路網で囲まれた領域 (5 角形の場合 )

角θの大きさの平均は ( n  2 )  n である. nが増加す るに伴って角θの大きさの平均は増加し,(4)式の右辺 の値は減少する.これは, nが大きいほど,広幅員道路 の交差点間距離 P

i

P

i+1

を短くしなければ消防活動困難区

域が生じやすいことを意味する.逆に, nが小さいほど,

消防活動困難区域が生じないようにするための交差点 間距離 P

i

P

i+1

に関する制約は緩和される.確かに, n の最 小値は3で道路網形態は三角形となる.しかし,広幅員 街路の交角という観点では,三角形よりも四角形のほ うが交差点において右左折しやすい. (4) 式の条件と交 差点における右左折のしやすさを考慮すれば,格子型 道路網が最も優れているといえる.

ところで,領域内に消防活動困難区域が存在しない ためには,すべての辺P

i

P

i+1

に対して(4)式が成立する必 要はない.図 3 の領域の場合,任意の 3 本の辺について (4) 式が成立すれば,領域内に消防活動困難区域は生じ ない.たとえば,辺P

1

P

2

と辺P

3

P

4

において(4)式が成立 すれば,△ Q

1

Q

2

Q

j

(j=3,4,5) と△ Q

3

Q

4

Q

j

(j=1,2,5) の面積は 0 である.このとき,図中の桃色で示した部分に消防活 動困難区域が生じてしまう.桃色で示した消防活動困 難区域を解消するためには, (4) 式が成立していない残 り3本の辺のうち,任意の1本の辺において (4)式が成立 すればよい.

5. まとめと今後の課題

本稿では,幅員6m以上の街路網に囲まれた閉領域に おける消防活動困難区域の有無に着目し,街路が整っ ているかどうかを評価した.また,消防活動困難区域 が生じないための条件を定量的に示した.今後の課題 は,領域形状が凸でない場合における消防活動困難区 域が存在しないための条件を示すことである.

補注

(1).

つぎの二つの条件を満たす幅員4m未満の道路を「

3項道路規定適

用候補となる路地」と定義する. (a).通り抜けができるもの,

(b).

道路延長が60mをこえないもの.

謝辞

東京都中央区都市整備部地域整備課まちづくり推進主査の木部茂 様にはヒアリング調査に快く応じて頂いた.ここに記し謝意を表する.

参考文献

1.

新谷洋二編(2003),『都市交通計画(第2版)』,p.111,技報堂.

2.

陣内秀信(1992),『東京の空間人類学』,p.27,ちくま学芸文庫.

3.

柳沢厚・山島哲夫編(2005),『まちづくりのための建築基準法 集 団規定の運用と解釈』,pp.108-109,学芸出版社.

4.

浅見泰司(編)(2001),『住環境 評価方法と理論』,付録p.27,東京 大学出版会.

P

1

P

2

P

3

P

4

P

5 H11

H12

H21

H22

H31

H32

H41

H42

H51

H52

消防活動困難

140m Q

2

Q

1

Q

3

Q

4

Q

5

広幅員街路網

参照

関連したドキュメント

Theorem 4.8 shows that the addition of the nonlocal term to local diffusion pro- duces similar early pattern results when compared to the pure local case considered in [33].. Lemma

p-Laplacian operator, Neumann condition, principal eigen- value, indefinite weight, topological degree, bifurcation point, variational method.... [4] studied the existence

In [7], assuming the well- distributed points to be arranged as in a periodic sphere packing [10, pp.25], we have obtained the minimum energy condition in a one-dimensional case;

Global transformations of the kind (1) may serve for investigation of oscilatory behavior of solutions from certain classes of linear differential equations because each of

Some of the known oscillation criteria are established by making use of a technique introduced by Kartsatos [5] where it is assumed that there exists a second derivative function

7.1. Deconvolution in sequence spaces. Subsequently, we present some numerical results on the reconstruction of a function from convolution data. The example is taken from [38],

We will study the spreading of a charged microdroplet using the lubrication approximation which assumes that the fluid spreads over a solid surface and that the droplet is thin so

By weakening to a notion called polytopes with integral structure, one of the authors proved in [3] that one can construct a polytope with integral structure for any w ∈ W such that