【ケーススタディ・第 25 回抗菌薬適正使用生涯教育セミナー】
サイトメガロウイルス腸炎の治療後に真菌感染症を発症したステロイド治療中の 46 歳男性
発 表 者:加藤 果林
1)・高倉 俊二
1)コメンテーター:栁原 克紀
3)・青木 洋介
4)・森田 邦彦
5)司 会:笠原 敬
2)1)
京都大学附属病院感染制御部
*2)
奈良県立医科大学感染症センター
3)
長崎大学病院検査部
4)
佐賀大学医学部附属病院感染制御部
5)
同志社女子大学薬学部臨床薬剤学
(平成 24 年 11 月 5 日発表)
I . 主訴,現病歴,臨床検査,臨床経過 症例:46 歳,男性。
主訴:発熱,咳嗽。
現病歴:9 年前に結節性多発動脈炎と診断され,ステ ロイド治療を受けながら外来経過観察をされていた。1 年前より血液透析が導入された。2 カ月前より発熱と視 力低下(網脈絡膜炎)があり,精査加療目的で入院した。
既往歴:12 年前に強直性脊椎炎と診断された。
内服:プレドニン 10 mg 分 1,エナラプリル錠 5 mg 1T 分 1,ニフェジピン徐放錠 20 mg 2T 分 2,フロセミド 錠 20 mg 1T 分 1,レバミピド 100 mg 2T 分 2,沈降炭酸 カルシウム錠 500 mg 2T 分 2
家族歴:特記事項なし。
社会歴:職業:会社員(主にデスクワーク)。
その他:機会飲酒。喫煙 なし。アレルギー 造影剤で 皮疹出現歴あり。
入院時身体所見:身長 168 cm,体重 59 kg。意識 清明。
体温 37.3℃,心拍数 89 bpm (整),血圧 141! 87 mmHg,
呼吸回数 14 回! 分,SpO
297%(室内気),胸部 呼吸音正 常。腹部 異常所見なし。四肢 皮疹・紫斑なし。神経学 的所見 異常を認めず。
入院後の経過:血液培養,その他培養検査(含む抗酸 菌),画像検索,CMV 抗原血症の検査等で感染巣,有意 な微生物の検出を認めず。入院 7 日後に腹痛が出現した ため,結節性多発動脈炎の悪化を疑いプレドニンを増量
(10→30→60 mg ! 日)したところ改善し,発熱も消失,網 脈絡膜炎の所見も改善していた。入院 3 週目よりタール 便の出現と貧血(Hb 7.0)を認め,内視鏡検査を含む精査 にてサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)腸 炎による小腸出血と診断しガンシクロビルで治療した。
その 3 週後(入院 6 週目)より再び微熱が連日出現する
ようになった。
発熱時身体所見:意識 清明。体温 38.2℃,心拍数 104 bpm (整),血圧 146! 88 mmHg,呼吸回数 21 回! 分, SpO
296%(室内気),CVA 叩打痛なし,恥骨上圧痛なし。呼 吸音正常,腹部に圧痛を含めた異常所見なし。
検査所見:WBC 21,900! μ L (Neutrophil 93.0%,Lym- phocyte 6%),RBC 2.85×10
6! μ L,Hb 10.8 g! dL,Hct 24.2%,Plt 11.7×10
4! μ L,CRP 1.0 mg! dL,AST 39 IU!
L, ALT 60 IU ! L, LDH 252 IU ! L, ALP 1,056 IU ! L, BUN 49 mg! dL,Cre 3.7 mg! dL
尿 pH 6.5,蛋白±,糖−,潜血−,白血球−,培養陰 性。血液培養 2 セット陰性。
CMV 腸炎発症時の胸部レントゲンと CT(図 1):異 常所見認めず。
II. 質問と解答,解説 Question 1:鑑別診断と必要な検査は何か。
解答 1 および解説:
結節性多発動脈炎の悪化でステロイド増量(10→60 mg)時に CMV 腸炎を発症し,ガンシクロビルで治療後 に微熱が継続している症例である。入院中に発症した感 染症という側面と,免疫抑制下の日和見感染という側面 との両者をあわせて考える必要がある。
鑑別診断
・医療関連感染症:肺炎,尿路感染,血管カテーテル 感染
・CMV 腸炎の再発
・真菌感染症:カンジダ,アスペルギルス,接合菌,
ニューモシスチス肺炎
・他の日和見感染症:結核,ノカルジア症,トキソプ ラズマ他
・それ以外の原因:薬剤熱,原疾患の増悪
*京都府京都市左京区聖護院川原町