総 説
マウスモデルを用いた乳幼児突然死症候群の 原因解析のアプローチ
荒田 悟
昭和大学共同施設遺伝子組換え実験室
要 旨
乳幼児突然死症候群(SIDS)や先天性低換気障害などの呼吸疾患は,その中枢機能をもつ脳幹の 障害によるものも少なくなく,また遺伝的要因の存在も示唆されてきた.しかし,ヒト脳幹機能の 解析は困難であり,リスク遺伝子をはじめ,疾患メカニズムなど多くは不明のままであった.1990 年代後半から遺伝子欠損マウス(KO マウス)を用いた解析がこの分野にも導入され,呼吸中枢の神 経回路形成やその機能調節に関与する遺伝子における KO マウスの出現は呼吸機能解析において強 力なツールとなってきている.一方,呼吸リズム形成のネットワーク機構は,マウスおよびラット の摘出脳幹-脊髄標本を用いたin vitro解析により明らかになりつつある.ここでは,マウスモデル を用いたin vivoおよびin vitroの解析により,徐々に明らかになってきた中枢性の呼吸異常と遺伝子 の関連について述べる.特に呼吸中枢の神経回路形成とその機能調節に関わるリスク遺伝子,さら に高二酸化炭素,および低酸素に応答する中枢化学受容器の知見を紹介し,ヒト疾患との関連性に ついて考察したい.
キーワード : SIDS (Sudden infant death syndrome),呼吸中枢異常,マウスモデル,PACAP
(Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)
はじめに
乳幼児突然死症候群(SIDS)は,元気だった赤 ちゃんがある日突然に亡くなってしまう原因不明 の症候群であり,本国では1,000人中0.4人の発症 が報告されている1).1 ~ 4歳の乳幼児の死亡率 は1,000人中1.2人であることから,高い割合であ る.SIDSはおもに生後2 ~ 6 ヶ月に発症するが,
その危険因子はうつぶせ寝,喫煙,温度などの物 理的・環境的因子とともに遺伝的要因も考えられ ている.しかしながら,病因の解析は死亡状況調 査や解剖検査等に依存せざる得ないため,病気の 機序やリスク遺伝子についてはほとんど明らかに なっていない.我々は,遺伝子欠損マウス(KOマ ウス)やトランスジェニックマウス(Tgマウス)の
解析を通じて,出生前後に呼吸異常を示して死亡 するマウスに複数遭遇していた.そこで,呼吸異 常を示すKOマウスやTgマウス,特に中枢性呼吸 異常を示すものについて解析を行うことで,先天 性呼吸疾患における遺伝的なアプローチが可能で はないかと考えて検討を始めた.なお,KOマウ スを導入した呼吸中枢の遺伝子レベルで機能解析 は,フランスのグループが先駆的に始めている2).
1.中枢性呼吸異常を示すKOマウス
我々の研究は,T細胞性の白血病との関連のあ るオーファンホメオボックス遺伝子であるHox11 familyのHox11L2 (Rnx; respiratory neuron ho- meobox, Tlx3;T cell leukemia 3) 遺伝子を欠損 させたKOマウスとの出会いが発端であった3).
クリンやピクロトキシンを加えることで,呼吸 リズム(C4の発火パターン)が正常に戻ることを 見出した.この結果は,Rnx KOマウスの呼吸中 枢神経回路は形成されているが,その機能異常 にあることを示している6).また免疫組織学的解 析により,1) 野生型マウス延髄のカテコラミン ニューロンにRnx が発現すること,2) 胎生後期 のKOマウスではグルタミン酸ニューロンに比べ てGABAニューロンが多く認められることが明 らかとなり,RnxはGABAニューロンからグルタ ミンニューロンへ移行するセレクター遺伝子とし て働くことが分かった6).
その他,中枢性呼吸異常を示すマウスモデルと して,カテコラミンニューロン異常を示すpaired
-like homeobox genesのPhox2a, お よ びPhox2b 遺伝子のKOマウス7) 8),ヒスタミンニューロン異 常を示すLIM-homeodomain familyのLmx1b 遺 伝子のKOマウス9),延髄の発育不全に関わるkrox
-20遺伝子のKOマウス2) が報告されている.Rnx 遺伝子をはじめ,多くの候補遺伝子の中でヒトの 遺伝子変異が見つかっている例はまだ少ないが10)
11),Phox2b遺伝子の異常がCCHSの患者で29例中 18例に認められ,その原因遺伝子であることが同 このマウスは,生後24時間以内にチアノーゼを
起こして死亡してしまうため,目的の遺伝子機能 解析は困難であった.しかし,Rnx KOマウスは チアノーゼを起した時にピンセットで軽くシッ ポを摘むなどして刺激を与えると呼吸を再開す るという特徴があり,不随意的呼吸障害の“オン ディーヌの呪い”のような表現型を示していた.
そこで,このマウスの呼吸機能の解析を行うこと にした.In vivo 呼吸機能は横隔膜の活動を筋電 図(EMG)として測定し,in vitro呼吸解析は呼吸 中枢の存在する延髄を含む摘出脳幹-脊髄標本を 用いて行った(図1).この摘出脳幹-脊髄標本は 呼吸中枢に影響を及ぼす上位脳や末梢からの刺激 がないため,横隔膜を駆動する第4頸神経(C4)の 吸息性バーストを記録することで延髄腹外側部に 存在する呼吸中枢のみの機能解析が可能である
4)5).解析の結果,Rnx KOマウスは呼吸中枢のリ ズム形成異常により,無呼吸(apnea)を頻回に起 こす不規則な呼吸を示しことが明らかとなり,先 天性低換気症候群(Congenital Central Hypoven- tilation Syndrome, CCHS)のマウスモデルである ことを提唱した3).さらに,摘出脳幹-脊髄標本 にγ-アミノ酪酸(GABA)の受容体拮抗薬のビク
-/- +/-
図1.Rnx KOマウスの中枢性呼吸活動の解析結果
a
b
c
in vivo 呼吸活動 (腹部の筋電図)
Rnx KO マウス
延髄腹側部の呼吸中枢
野生型マウス
Rnx KO マウス
in vitro 呼吸活動 (C4の発火パターン)
野生型マウス
Rnx KO マウス
10 sec
20 sec 1.0 mV EMG
EMG
C4
C4 前吸息性ニューロン
吸息性ニューロン
吸息性活動 FM: Facial nucleus
pFRG: parafacial respiratory group preBötC: pre-Bötzinger complex
preBötC
して表れる現象は,呼吸馴化が遅いことと関連し ていることが強く考えられる.
3.化学受容器と呼吸異常
項目1で述べたCCHSの原因遺伝子として同定 されたPhox2b 遺伝子は,マウスでは末梢および 中枢化学受容器の統合に関わる神経系に発現して いる16).CCHS患者で同定されたPhox2b 遺伝子 変異を導入したマウスでは,呼吸中枢のPhox2b 発現ニューロンが欠損し,呼吸リズム形成の異常 とCO2に対する応答性の欠落が認められた17).死 亡に至らないヘテロマウスにおいても出生後5日 の時点で野生型マウスに比べて,睡眠時無呼吸の 回数は6倍に増加し,睡眠時換気量は2割程度減 少が見られている18).さらに,成体ラット,およ び新生ラットにおいてPhox2bニューロンがCO2の 中枢性化学受容器として働くことが明らかにさ
れた19)20).CCHSは,血中炭酸ガスに対する換気
応答の低下及び睡眠時の低換気を特徴とするが,
Phox2bの異常によるCCHSは,呼吸中枢のCO2化 学受容器の応答性の低下により必要な換気量が得 られないことが病因と考えられる.
一方,O2化学受容体は,末梢の頸動脈小体に存 在することが知られている.頸動脈小体のドーパ ミン神経に関与するNuclear receptor related 1 をコードするNurr1遺伝子の欠損マウスでは,低 酸素応答が無くなっていることが報告されている
21).また神経細胞死の保護など多様な生理活性を 持つPituitary adenylate cyclase-activating poly- peptide (PACAP) のKOマウス22)23)が低酸素応 答の低下に起因する呼吸異常を示すことが報告さ れていたが,詳細な機序は分かっていなかった
24).我々は,C57BL/6背景のPACAP KOマウス を繁殖している過程で,KOマウスのほとんどが 生後2週間以内,特に10日前後で突然死するSIDS と良く似た表現型を示すことを観察していた.そ こで,このKOマウスについて呼吸機能の解析を 行った結果,KOマウスは野生型マウスと比較し て無呼吸の多い不規則な呼吸を示し,7日目でも 野生型と比べて呼吸数,換気量ともに50%程度で あった(図3).また,高二酸化炭素濃度下,及び 定されている12).
2.マウスの呼吸馴化と系統
脳の成熟過程において,マウスの生後4,7及び 10日は,それぞれヒト新生児の26,36,及び40 週に相当すると言われている13).SIDSの発症は 生後2 ~ 6 ヶ月に多いことから,マウスの発育過 程における呼吸機能の発達(ここでは「呼吸馴化
」とよぶ)について知っておく必要がある.また,
呼吸異常を起こすKOマウスにおいて,その表現 型が系統に依存する例が複数見られている.我々 は,ダウン症精神遅滞の発症にかかわる遺伝子の 候補として同定されたDSCAM遺伝子の欠損マウ ス(DSCAM KO)を解析した結果,中枢性呼吸障 害を示すことを報告した14).この報告において,
DSCAM KOマウスはC57BL/6背景ではほとんど のKOマウスが24時間以内に死亡したが,Balb/
c背景(C57BL/6との交雑の50%でも)に戻し交配 をすると離乳後も生き延びることを観察してい る.この場合,Balb/c背景のDSCAM KOマウス も新生期の呼吸異常を示していたが,C57BL/6 背景に比べてその程度が弱いため生存できたと考 えている.そこで,マウスの呼吸馴化の知見を得 るとともに,複数の系統における違いについて検 討を行った15).
全身性プレチスモグラフィを用いてin vivoの呼 吸機能を調べた結果を表1にまとめた.ICRマウ スは出生直後の呼吸数は100回/分以下の不規則 な呼吸であったが,生後2日で規則正しい呼吸と なり,4日以降は成体と同程度の呼吸数,換気量 となることが分かった.しかし,C57BL/6マウ スはICRに比べ呼吸馴化が遅く生後4日では50%
程度の呼吸数と換気量であり,7日目で成体と同 等となった.逆にBalb/cマウスでは呼吸馴化が早 いことが分かった.興味深いことに,C57BL/6 とBalb/cの交雑(F1)では,Balb/c純系よりも呼 吸馴化が早まる傾向があることが分かった.また,
この系統間における呼吸馴化の違いは,中枢の呼 吸リズム形成に依存するものであった(図2).こ れらの結果から,前述のようにC57BL/6系統の KOマウスにおいて呼吸異常がより強く表現型と
P0 P1 P2
ICR
体重 1.84±0.03 g (n=4) 2.09±0.29 g (n=4) 3.13±0.16 g (n=4)
呼吸回数 /min 88.6±21.0 68.4±18.9 171.5±22.6 一回換気量(μl) 39.2±9.4 48.8±14.0 37.1±5.6 分時換気量(μl/min/g) 1838±367 1558±496 2045±427
C57BL/6
体重 1.28±0.10 g (n=15) 1.55±0.11g (n=4) 1.99±0.08 g (n=4)
呼吸回数 /min 101.5±26.6 91.6±6.0 160.6±20.1
一回換気量(μl) 20.5±6.3 23.6±2.1 19.8±9.9 分時換気量(μl/min/g) 1587±481 1503±213 1352±167
BALB/c
体重 1.54±0.10 g (n=5) 2.39±0.53g (n=4) 3.12±0.03 g (n=2)
呼吸回数 /min 69.5±13.9 180.2±44.1 311.6±5.4 一回換気量(μl) 26.5±8.0 29.2±7.2 27.7±0.6 分時換気量(μl/min/g) 1209±477 2181±497 2765±12
C57BL/6-BALB/c
体重 1.28±0.10 g (n=4) 1.73±0.19g (n=5)
呼吸回数 /min 142.8±45.3 239.0±14.1 一回換気量(μl) 15.1±4.6 18.7±4.0 分時換気量(μl/min/g) 1656±474 2412±140
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
0.0 0.2 0.4
50 51 52 53 54 55 56 57 58 59
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.10 -0.05 -0.00 0.05 0.10 0.15 0.20
3:13.5 3:14 3:14.5 3:15 3:15.5 3:16 3:16.5 3:17 3:17.5
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3
2:03 2:04 2:05 2:06 2:07 2:08 2:09 2:10 2:11 2:12
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.05 -0.00 0.05 0.10 0.15 0.20
3:35 3:35.5 3:36 3:36.5 3:37 3:37.5 3:38 3:38.5 3:39 3:39.5
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.2 -0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3
50 50.5 51 51.5 52 52.5 53 53.5 54 54.5
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.2 -0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3
40 40.5 41 41.5 42 42.5 43 43.5 44 44.5
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
35 35.5 36 36.5 37 37.5 38 38.5 39 39.5
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
1:05.5 1:06 1:06.5 1:07 1:07.5 1:08 1:08.5 1:09 1:09.5 Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.2 -0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
2:00.5 2:01 2:01.5 2:02 2:02.5 2:03 2:03.5 2:04 2:04.5
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
1:52 1:52.5 1:53 1:53.5 1:54 1:54.5 1:55 1:55.5 1:56 1:56.5
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.1 -0.0 0.1 0.2 0.3
2:55 2:55.5 2:56 2:56.5 2:57 2:57.5 2:58 2:58.5 2:59 2:59.5
表1.各種マウス系統における呼吸機能の発達の違い (全身性プレチスモグラフィで解析)
図2.BALB/cマウスとC57BL/6マウスの呼吸中枢機能の発達の違い(摘出脳幹標本で解析)
C4
C4
C4
C4
C4 C4
BALB/c C57BL/6
2 min 2 min
0.2 0.2 mV
mV
P0
P1 P1
P0
P2 P2
低酸素濃度下の全身性プレチスモグラフィの結果 では,KOマウスは高二酸化炭素に応答して規則 正しい呼吸パターンに戻ったが,低酸素に対して は応答性が見られなかった.さらに,生後7日目 のマウスでは低酸素により呼吸停止を起こすこと が分かった(図4).呼吸馴化が未熟で酸素消費量
が増える7日目頃に低酸素応答が機能しないため 呼吸停止に至ったと考えられるが,突然死の機序 を解析する上で興味深いと考えている.呼吸中枢 の解析では,KOマウスのC4吸息性バースト頻度 が明らかに少なく,中枢性の異常であることが分 かった.また,野生型マウスの摘出脳幹-脊髄標
P2 P7
0.1 mmH2O
0.1 mmH2O 1 sec
10 sec
1 sec 10 sec
ᅗ3䠊PACAP KO䝬䜴䝇䛾྾άື䛾in vivo ゎᯒ (㌟ᛶ䝥䝺䝏䝇䝰䜾䝷䝣䜱䛷ゎᯒ䠅
5 sec 0.1 mmH2O
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.1 -0.0 0.1 0.2
4:20 4:25 4:30 4:35 4:40 4:45
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.05 -0.00 0.05 0.10 0.15 0.20
2:45 2:50 2:55 3:00 3:05 3:10
Chart ウィンドウ
チャンネル 1 (mmH2O)
-0.2 -0.1 -0.0 0.1 0.2
2:05 2:10 2:15 2:20 2:25 2:30
大気中 低酸素下 (5%O2) 高二酸化炭素下 (8%CO2) P2
P7
Chart ウィンドウ
チャンネル1(mmH2O)
-0.4 -0.2 -0.0 0.2 0.4
15 15.5 16 16.5 17 17.5 18 18.5 19 19.5
Chart ウィンドウ
チャンネル1 (mmH2O)
-0.4 -0.2 -0.0 0.2
50 50.5 51 51.5 52 52.5 53 53.5 54 54.5
Chart ウィンドウ
チャンネル1(mmH2O)
-0.4 -0.2 -0.0 0.2 0.4
50 50.5 51 51.5 52 52.5 53 53.5 54 54.5
1 sec 0.1 mmH2
呼吸停止 O
+/+
-/-
-/-
5 sec 0.1 mmH2O
図4.PACAP KOマウスの高二酸化炭素環境および低酸素環境への応答性 (全身性プレチスモグラフィで解析)
本の灌流液を0% O2とするとバーストが一時抑制 され(2.5分後),その後もとの回数に回復する(7.5 分後).ヘテロマウス,KOマウスではバーストの 回復が遅く,0% O2とした12分後以降であった(図 5).以上の結果からPACAP KOマウスの呼吸異常 は呼吸中枢,特に低酸素応答性の低下に起因する ことが分かった.PACAP KOマウスの新生期呼吸 中枢ではカテコラミンニューロンの減少が見られ たため低酸素応答性との関連を検討しているが,
呼吸中枢における酸素化学受容器は少なくとも新
生期には存在することが示唆された25).
PACAP KOマウスは,遺伝的背景をICRに置き 換える,また高温で飼育するなどにより成体ま で生き残るマウスが多くなることが知られてい る.低酸素応答にPACAP遺伝子とともにそれ以外 の遺伝的要因や環境的要因が関与すると考えられ る.最近,SIDS とPACAP遺伝子多型の関連がア フリカ系アメリカ人の中で報告されている26).ア フリカ系アメリカ人のSIDSは頻度が高く,うつぶ せ寝の習慣との関連がとり立たされてきたが,遺
Bursts/min
-/- (n=6)
図5.PACAP KOマウスの低酸素環境への応答性 (摘出脳幹標本で解析)
A, 標本還流液を通常の95%O2から0%O2に置換した野生型、及びKOマウスのC4発火パターン。
B, C4発火パターンから1分毎の発火回数を求めプロットした。正常マウスは、0%O2にした後の発火
回数は抑制されたがすぐに回復した。しかし、KOマウス、ヘテロマウスでは回復が遅かった。
+/+
-/-
+/- (n=6) +/+ (n=6) A C4 吸息性活動
B C4 吸息性活動の継時的変化 発火回数/分
伝的なリスクも考慮に入れる必要性が示された.
おわりに
KOマウスを用いた呼吸異常の解析から中枢性 呼吸障害のリスク遺伝子が幾つか同定され,その 機序も延髄形成不全,呼吸中枢回路の調節異常,
また中枢化学受容器の異常など複数存在すること が明らかになってきた.マウスモデルの解析によ り,更に詳細なメカニズムが明らかになって行く と思われる.しかしながら,ヒト疾患とリスク遺 伝子の関係が明らかになったものはまだわずかで あり,今後,SIDSのリスク遺伝子が一つでも多 く明らかになっていくことを期待する.
中枢性呼吸疾患の多くは呼吸馴化過程にリスク が高いと考えられ,この時期を乗り越えることで 正常に生き延びる可能性が高い.SIDSの先制医 療においては,うつぶせ寝の禁止などの方策以外 の解決策はまだ少ないが,リスク遺伝子の多型な ど先天的・遺伝的因子の解明が発症の減少につな がるのではないかと考えている.
謝 辞
本研究は医学部第二生理学教室(現 生理学講座 成体調節機能学部門)の鬼丸洋博士と荒田晶子博 士(現兵庫医科大学)との共同研究であり,呼吸中 枢機能の解析は両博士により行われたものです.
この場を借りて心よりお礼申し上げます.また,
Rnx KOマウスは九州大学 白澤専二博士(現 国立 国際医療センター),DSCAM KOマウスは理化 学研究所 山川和弘博士,天野賢治博士,PACAP KOマウスは,大阪大学 橋本均博士,本学医学部 顕微解剖学部門 塩田清二教授との共同研究であ り,マウスの供与をはじめ多くのご支援をいただ きました.この場をお借りしてこころより感謝申 し上げます.また,本研究の遂行にあたり多大な ご協力いただいた遺伝子組換え実験室 中町智哉 博士,並びに動物実験施設の職員の皆様に深謝い たします.
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Studies of neuronal mechanism in sudden infant death syndrome (SIDS)
by genetic mouse models
Satoru Arata
Center for Biotechnology, Showa University
Abstract
Several human respiratory disorders, such as central hypoventilation, central sleep apnea and case of sudden infant death syndrome (SIDS), involve defects in central breathing control. However, the cellular and molecular mechanisms remain poorly understood. Recently, diverse ventilatory phenotype of mutant newborn mice with targeted deletions of genes involved in the development and modulation of respiratory-neuron network are reported.
Other hand, the mechanism and network of central rhythm generation is becoming clear by the electrophysiological studies using brainstem-spinal cord preparation of rodent newborn.
Then, the genetic mouse models constitute powerful tools for understanding the organization and development of respiratory control. Here, we introduce the several mouse model studies which provide the genetically factor involved in the development rhythmogenesis and /or chemosensitivity to oxygen and carbon dioxide. Studies in genetic model mice combined studies in human may provide a diagnostic perspective and new treatment for respiratory syndrome such as SIDS.
Key words : SIDS (Sudden infant death syndrome), respiratory-control disorder, genetic mouse models, PACAP (Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)
Received 7 Sep. 2013 ; accepted 22 Oct. 2013