Microflora in Patients Treated with Fixed Prosthetic Appliances Supragingival Plaque Formed on the Full Cast Crown - Fabricated with Platinum Gold Cas

全文

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歯 冠 補 綴 物 の 歯 垢 細 菌 叢

―特 に白金加金 で製作 された全部鋳造歯冠の歯肉縁上歯垢について―

妻鹿

純一 

村田

義純 

平沢

正知*池

正*

Microflora

in Patients

Treated

with

Fixed

Prosthetic

Appliances

-Supragingival

Plaque

Formed

on the Full Cast Crown

Fabricated

with Platinum

Gold Cast

Alloy-Junichi

Mega,

Yosizumi

Murata,

Masatomo

Hirasawa*

and Tadashi

Ikeda*

Abstract:

Culture method was used to survey the microflora in supragingival

marginal plaque

formed on the full cast crown fabricated with platinum gold cast alloy.

A band of plaque

approx-imately two millimeters coronal to marginal gingiva in buccal surface was collected from tooth

(control group) and full cast crown (experimental

group) fabricated with platinum gold cast alloy

in mandibular first molar in each subject.

The resuls indicated that there was no difference in the bacterial composition, but that there

was a difference in the bacterial proportion between two groups. Experimental group had a

signi-ficantly higher level of Streptococcus and a lower level of Actinomyces and Veillonella in the

micro-bial proportion than control group.

But experimental

group had not significantly higher level of

Streptococcus in the viable counts per wet weight of plaque than control group.

This study

sug-gested that physico-chemical properties had the influence upon the microbial ecology in the

pro-cess of the plaque formation.

Key words:

crown, supragingival

plaque, microflora

緒 言 細 菌 の 固有 の性 質 に基 づ く 口腔 内 の特 定 な 組織 に対 す る菌種 ごとの 選択 的 な親 和 性 か ら,口 腔 の 特 定 部位 にお い てそ の"局 在 性"1)が示 唆 され て い る.一 方,修 復 物 お よ び補 綴 物 は,損 傷 した 歯 の形 態 お よび機 能 を人 工 的 な 材料 を用 い 回復 す る もの で あ る.し た が って,歯 質 と物 理化 学 的 性状 が異 な る人 工的 な材 料 を 用 い る こ と に よ り,そ の局所 に対 す る 口腔 細 菌 の 親 和性 に変 化 を引 き起 こす こ とが 考 え られ る.宿 主側 の変化,す な わ ち人 工 的 な材 料 を 口腔 に 装着 す る こ とは,細 菌 に とって の環 境, い わ ゆ る細 菌 のmicrocosmosに 変 化 を 引 き起 こ し,天 然歯 とは異 な る宿主 一 寄 生 体 の相 互 関 係 を成 立 させ,結 果 と してそ の生 態系 に影響 を及 ぼ す こ とに な るか も しれ な い. 各 種 歯科 材料 に対 す る歯垢 形 成 や 口腔 細 菌 の吸 着,あ るい は付 着 に 関 す る多 くの実 験2∼5)がな され て い る.し か し,口 腔 に装 着 され た歯 冠 補綴 物 に形成 され た 歯垢 の 細 菌叢 に つ いて研 究 した もの は少 ない.歯 垢,特 に そ の 大部 分 を構 成 して い る細 菌 が,う 蝕 の み な らず 歯 周 疾患 に お いて も重 要 な病 原 因 子 で あ る こ とが証 明 され,歯 周 疾患 との関 連 性 に つ いて,い くつ か の 口腔 常在 菌 が 注 目 され て い る6).し た が って,口 腔 内の歯 冠 補 綴 物 上,特 に 日本大学松戸歯学部補綴学第二講座 *日本大学松戸歯学部細菌学教室

Nihon University, School of Dentistry at Matsudo/Crown and Bridge Prosthodontics

*Nihon University , School of Dentistry at Matsudo, Microbiology

昭和62年12月21日 受 付

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240―500 補 綴 誌  32巻2号(1988) そ の歯 頸 部 辺縁 に形 成 され た 歯垢 の細 菌 叢 を検 索 す る こ とは,単 に そ の実 態 を明 らか にす る とい うだ け で は な く,修 復 され た歯 の予 後 との 関連 性 にお い て も重要 と考 え られ る. 本 研 究 は,天 然歯 と歯 冠 補 綴 物,特 に 白金 加 金 に よ る 全 部 鋳 造 冠 の歯 頸 部 辺 縁 に お け る歯 肉 縁 上歯 垢 細 菌 叢 を 培 養 法 に よ り検 索 し,そ の両者 を比 較 検 討 した もの で あ る.そ の結 果,興 味 あ る知 見 が得 られ た の で報 告 す る. 材 料 お よ び 方 法 1.  被 験 者 日本 大 学 松戸 歯 学 部 付 属 歯科 病 院 に所 属す る院 内生 か ら被 験者(男 性6名,女 性4名,年 齢23∼24歳)を 以 下 の基 準 で 選 出 した.す な わ ち,下 顎 第1大 臼歯 には金 合 金 によ る全 部 鋳 造 冠 が装 着 され て い る が,そ の反 対側 の 下 顎 第1大 臼歯 は 健 全歯 で あ る もの を本 研 究 の被 験者 と した.さ らに,当 該 歯 に は いず れ も肉眼 的 に う蝕 が認 め られ ず,そ の歯 周 組 織 も臨床 的 に正 常 な もの と した. ま た,い ず れ の被 験 者 も問 診 に よ り全 身 疾 患 の既 往 歴 が な く,過 去6ヵ 月 間 は歯 科 治 療 お よび 抗 生 物 質 の投 薬 を 受 け て い ない こ とを確 認 した. 2.  可 検 試 料 お よ び採 取 方 法 可 検 試 料 は,両 側 の下 顎 第1大 臼歯 の頬 側 歯 肉縁 上 歯 垢(以 下,天 然 歯 の も のを対 照群,全 部鋳 造 冠 の もの を 実 験 群 とす る)と した.な お,前 日よ り24時 間,歯 ブ ラ シ に よ る 口腔 清 掃 を中止 させ,試 料 採 取 は 昼 食4∼5 時 間 経 過 後 に行 った. ま ず,被 験 者 に0.05M Tris-HCl Buffer (pH7.0)で 含 嗽 させ た後,コ ッ トン ロール で 簡 易防 湿 を行 い,キ ャ ピラー ル を用 いN290%,CO210%の 混 合 ガ スで被 験 歯 の試 料採 取 部 位 を可 及的 に乾 燥 させ た.つ ぎに,滅 菌 し たGracyの キ ュ レ ッ トに よ り歯 肉縁 か ら歯冠 方 向約2 mmの 間 に存 在 す る歯 肉縁 上 歯 垢 を採 取 し,あ らか じめ Torsion Balance(太 陽 機 器製)に よ り重 量 を測 定 した 滅 菌 ポ リス ト リップ ス上 に採 り,す みや か にanaerobic

glove box (Forma Scientific: Anaerobic System

Model 1024)内 に移 した.

3.  培 養 法

anaerobic glove box内 でTorsion Balanceを 用 い試

料 の 湿 重量 を測 定 した後,3ml Tris-HCl Buffer中 に混 和 し,Handy Sonic(Tomy社 製)を 用 い,基 礎実 験 で総 菌 数 の最 も多 か った音 響 出 力20W,作 用 時 間20秒 で音 波 処理 に よ る歯 垢 分 散 を行 った.こ れ をTris-HCl buffer で倍 数 希 釈 を行 い,各 平 板 培 地 にて 分 離 培 養 後,一 定 の 集 落 数(50∼500)が 発 育 した もの に つ い て集 落 形 成 単位

(Colony Forming Unit,以 下,CFUと す る)を 算 定 した.

実験 に使 用 した非 選 択 培 地 の 組成,調 整 方 法 お よ び培 養 条 件 は,前 報7)の とお りで ある.ま た,確 認 用 の選 択

培地 と して, Streptococcus 属 用 に はMitis Salivarius

Agar(Difco),

S.mutans 用 にMSBmedium8),Veil-lonella

属用 に Veillonella Agar (Difco),Lactobacillus

属 用 にRogosa SL Agar(Difco), Actinomyces

属用に

CNAC209), Fusobacterium 属 用 に変 法FM培 地(日 水), Candida属 用 にGS培 地(栄 研)を 用 い た. 4.  同 定 第 一 次検 査 と してGram染 色 性,菌 の形 態,好 気 条 件 下 で の 発 育 お よび 嫌 気条 件 下 で の発 育 につ い て行 った. 第 一 次検 査 に基 づ き分 類 した菌 群 ご とに,以 下 の検 査 を行 った.す な わ ち,Gram陽 性 通 性 嫌 気 性球 菌 には20 項 目,Gram陽 性 通性 嫌 気 性 桿 菌 には19項 目,Gram陽 性 偏 性 嫌 気 性桿 菌 には14項 目,Gram陰 性 偏 性 嫌 気性 球 菌 に は9項 目,Gram陰 性 通性 嫌 気 性 桿 菌 には6項 目, Gram陰 性 偏性 嫌 気 性 桿 菌 に は24項 目 の表1に 示 す 各 検 査 を行 った. 以 上 の 実験 結 果 か ら,Bergey's manual10)お よ び Cowan's manual11)に 従 い,分 離 菌 株 の 同 定 を行 った. 5.  細 菌 学 的 デ ー タ処 理 の 統 計 得 られ た デー タの特 性12)を考 慮 し,対 応 二 試 料 無作 為 化検 定 法13)によ り,対 照 群 と実 験 群 の有 意差 検 定 を行 っ た. 結 果 1.  全 部 鋳 造冠 被 験 者 の下 顎 第1大 臼歯 に装 着 され て い た金 合 金 に よ る全 部 鋳造 冠 は,す べ て 白金 加 金(徳 力PC-1:白 金2.5 %,金73.0%,パ ラ ジ ュ ウム1.5%,銀6.0%,銅15.0 %,そ の他2.0%)で 製 作 され,装 着 後3∼4年 経 過 し た もの で あ っ た. 2.  Gram染 色 性 と歯 の形 態 に よ る菌 群構 成 比 率 対 照 群 お よ び実 験 群 のGram染 色 性 と菌 の形 態 に よ る 菌群 の構成 比率 を表2に 示 した.

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歯冠補綴物の歯垢細菌叢 241―501

Table 1 Test for identification

対 照 群 で はGram陽 性 球 菌30.1%,Gram陽 性 桿 菌 37.1%,Gram陰 性 球 菌28.3%,Gram陰 性 桿 菌4.5% で あ っ た.こ れ に 対 し,実 験 群 で はGram陽 性 球 菌59.8

%,Gram陽 性 桿 菌22.9%,Gram陰 性 球 菌13.8%,Gram 陰 性 桿 菌3.5%で あ っ た.す な わ ち 実 験 群 は 対 照 群 に 比 較 し て,Gram陽 性 桿 菌 お よ びGram陰 性 球 菌 は い ず れ も 低 い 値 で あ っ た が,Gram陽 性 球 菌 は 顕 著 に 高 い 値 を 示 し た.

Table 2 Prevalence of microorganisms in supragingival marginal plaque by Gram stain and morpho-logy (%)

Mean•}S.E.

Table 3 Prevalence of microorganisms in supragingival marginal plaque (%) N. D. : not detected 3.  各 菌 属 の 構 成 比 率 対 照 群 お よ び 実 験 群 の 菌 属 の 構 成 比 率 を 表3に 示 し た. 実 験 群 は 対 照 群 に 比 較 し て,Streptococcus属 菌 お よ び Staphylococcus属 菌 に お い て 高 い 値 を,Veillonella属 菌, Actinomyces属 菌 お よ びdiphtheroidに お い て 低 い 値 を 示 し た.Lactobacillus属 菌,Capnocytophaga属 菌,Bac-teroides属 菌 お よ びFusrobacterium属 菌 に お い て は,両 群 と も ほ ぼ 同 じ 傾 向 を 示 し た.ま た,Haemophilus属 菌 は 対 照 群 に の み 検 出 され た が,そ の 値 は き わ め て 低 い も の で あ っ た. な お,菌 種 同 定 不 能 株Unidentifiedは 対 照 群 で1.6% 実 験 群 で3.3%で あ り,継 代 不 能 株Isolates lostは 対 照 群 で3.7%,実 験 群 で5.0%で あ っ た. 4.  各 菌 属 の 歯 垢 湿 重 量(mg)あ た りの 菌 数 試 料 採 取 で 得 た 歯 垢 の 湿 重 量 は,対 照 群 で0.49mg, 実 験 群 で0.18mgで あ り,実 験 群 は 対 照 群 の 約1/3低 い 値 を 示 し た.な お,実 験 群 で 低 い 値 を と る 傾 向 が,す べ て の 被 験 者 に 共 通 し て 認 め ら れ た.

(4)

242―502 補 綴 誌32巻2号(1988)

Table 4 Viable counts of microorganisms per wet weight of supragingival marginal plaque (viable number/mg)

N.D.: not detected

Table 5 Statistically significant differences between two groups

培 養 可 能 で あ っ た 各 菌 属 お よ び 菌 種 の 歯 垢 湿 重 量 (mg)あ た り の 生 菌 数 を 表4に 示 し た.

streptococcus属 菌 お よ びLactobacillus属 菌 は,両 群 に お い て ほ ぼ 同 じ値 を 示 し た が,Actimomyces属 菌,Cap-nocytophaga属 菌,Bacteroides属 菌 お よ びFusobacte-rium属 菌 は 実 験 群 で 低 く,Staphlococcus属 菌 は 逆 に 実 験 群 で 高 い 傾 向 が 認 め られ た. な お,歯 垢 湿 重 量 あ た りの 総 生 菌 数 は 対 照 群 で1.1× 108個/mg,実 験 群 で8.3×107個/mgで あ っ た. 5.  両 群 間 の 有 意 差 検 定 対 応 二 試 料 無 作 為 化 検 定 法 に よ る 両 群 間 の 有 意 差 検 定 の 結 果 を 表5に 示 し た. Gram染 色 性 と菌 の 形 態 に よ る 菌 群 の 構 成 比 率 で は, Gram陽 性 球 菌,Gram陽 性 桿 菌 お よ びGram陰 性 球 菌

に お い て 有 意 差 が 認 め られ た. 各 菌 属 お よび 菌 種 の 構成 比 率 で はStreptococcus属 菌, Veillonella属 菌 お よびActinomyces属 菌 に有 意 差 が認 め られ た が歯 垢 湿 重 量 あ た りの菌 数 で はVeillonella属 菌 お よびActinomyces属 菌 にお いて のみ 有 意 差 が認 め ら れ た. 考 察 治 療 され た歯 の予 後 は臨 床 的 な立 場 か ら最 も興 味 の持 たれ る と こ ろで あ り,処 置 後 の経過 に 関連 した 口腔 内 に お け る諸 現 象 を解 明 し,治 療 に フ ィー ドバ ックす る こ と は重 要 な課 題 で あ る。 以 前 の 報 告7)で は,歯 冠 補綴 物 辺 縁 のoverhangが 歯 肉 縁 下 に お け る細 菌 叢 遷 移 の原 因 と な り,歯 周 疾患 を誘 発 す る こ とを示 唆 し,歯 冠 補綴 物 の 装 着 時 に お いて 留 意 す べ き事 項 で あ る こ と を示 した.今 回 の報 告 は,白 金 加 金 に よ り製 作 され た歯 冠 補 綴物 上 の 歯 頸 部辺 縁 に形成 され た歯 垢 の細 菌 叢 を検 索 した もの で あ る.す な わ ち,補 綴 処 置 に よ る歯 周 組 織 に対 す る細菌 学的 な影 響 を追 求 す る一 環 と して,口 腔 内 に お いて歯 質 と白金 加 金 で製 作 され た全 部 鋳 造 冠 に形 成 され た歯垢 の 細 菌 叢 を追 及 し,そ の両 者 を比 較 検討 した もので あ る. 歯 垢 は 歯 周 疾患 の主 要 な病 原 因 子 で あ り,歯 垢 の歯 周 局 所 にお け る絶 対 量 の増 加 と歯 肉 炎 の程 度 の 増 強 に相 関 が あ る こ とが,L6eら14,15)の 研 究 に よ り示 され て い る. しか し,近 年 にお け る細 菌 培 養 の 技術 的 進 歩 に伴 った歯 垢 細 菌 叢 検 索 の結 果,歯 肉 炎 の 程 度 は歯 垢 の絶 対量 の増 加 よ りも,歯 垢 中 にお け る特 定 な細 菌 の構成 比率 の増加 との関 連 性 が よ り強 い こ とが示 唆16,17)され て お り,歯 垢 の量quantityよ り もそ の質qualityが 注 目され て い る. 歯 周 疾 患 の原 因菌 の1つ と して注 目 さ れ て い るB. gingivalisの 歯 肉溝 にお け る定 着性 に関 す るSlotsと Gibbons18)の 研 究 は,本 菌 に対 す る菌 体 間 の付 着 性 が Gram陽 性 菌 の菌 種 に よ り相 違 が あ る こ とを示 す と と も に,本 菌 が 口腔 内 に導 入 され た場 合,そ の付 着 や 集 落化 にはActinomyces属 菌 や他 のGram陽 性 菌 の存 在 が必 須 で ある こ とを示 唆 し て い る.こ の こ と は,歯 周 疾患 の病 原 菌 と考 え られ て い る本 菌,お よ び 歯周 病 原 性 を保 有 す る他 の細 菌 を歯 肉 溝局 所 に,よ り定 着 させ や す い歯 肉 縁 上歯 垢 細 菌 叢 が あ る こ と を示 す もの で あ る,し た が って,修 復 され た歯 の予 後 との関 連 性 に お い て,歯 冠補 綴 物 上 の歯 頸 部 辺縁 歯 垢 の細 菌 叢 を検 索す る こ とは重 要 と考 え られ る. 本 研 究 の 結 果 は,以 下 の とお りで あ る.す なわ ち,対 照群 と実 験 群 の細 菌 叢 を構成 して い る細 菌 は ほ ぼ 同 じ も

(5)

歯 冠補綴物の歯垢細菌叢 の で あ っ た が,そ の構 成 比 率 に つ いて は,菌 属 に よ り明 らか な相 違 を示 す も ので あ った.実 験 群 は,Gram染 色 性 と菌 の形 態 に よ る菌 群 構 成 比 率 に お い て,Gram陽 性 球 菌 の 増加 とGram陽 性桿 菌 お よ びGram陰 性 球 菌 の 減 少 が 認 め られ た.ま た,各 菌 属 の 構成 比率 で は,Stre-ptococcus

属菌の有意 な増加および

Veillonella 属 菌 と Actinomyces

属菌 の有意な減少が認 め られたが,歯 垢 湿

重 量 あ た りの生 菌 数 で は Streptococcus

属菌に有意な増

加 は 認 め られ ず,Veillonella 属菌 とActinomyces

属菌の

有 意 な減 少 の み認 め られ た.こ れ らの結 果 を も た ら した 原 因 として,以 下 の こ とが考 え られ る.す な わ ち,歯 質 と白金 加 金 の物 理 化学 的 性 状 に基 づ く歯 垢形 成 過 程 に対 す る影 響 の相違 な らび に歯 質 と白金 加 金 に 形成 され た歯 垢 の構 造 の差 異 で あ る. 細 菌 の歯 面 に対 す る吸 着現 象 には,静 電 的 ある い は水 素 結 合 な どに よ る非 特 異 的相 互作 用 と とも に,各 種 細 菌 のペ リクル 中 の吸 着 部 位 に 関連 した特 異 的 相 互 作用 が, そ の界 面 に お いて 起 こ る と考 え られ て い る19).し た が っ って,人 工 的 な 材料 が保 有 す る物 理 化学 的 性 状 が 歯 質 と 異 なれ ば,非 特 異 的 お よび 特 異 的相 互作 用 に影 響 し,修 復 あ る いは 補 綴 され た局 所 に対 す る各 口腔 細 菌 の親 和性 に相違 を もた らす こ とが 考 え られ る.Gibbons1)は,ス トレプ トマイ シ ン耐性 の S.mutans,S.salivarius,S. sanguis,S.mitis,Veillonella,Lactobacillus を 口腔 内 に 接 種 し一 定 時 間 後,唾 液 お よび 歯 面,舌 背,頬 粘 膜 の各 部 位 の 固有 細 菌 叢 を検 索 した.そ の結 果,細 菌叢 にお け る上 記 細 菌 の構 成 比 率 と実験 的 な各 組 織 へ の 付着 能 が よ く一 致 す る こ とを示 した.こ れ は,口 腔 内 の 各組 織 に対 す る細 菌 の親 和性 が 同部 位 にお け る細 菌 叢 を決定 す る重 要 な因 子 とな る こ と を示 して い る.歯 垢 形 成 初期 にお け る各細 菌 の付 着 部位 に対 す る親 和性 の相 違 は,本 研 究 に お い て対 照 群 と実験群 にお け る菌 属 の 構成 比 率 に差 異 を もた ら した 原 因 の1つ で あ り,歯 垢 の成 熟 過 程 に 影響 を 与 え そ の細 菌 叢 に相 違 を も た らした もの と考 え られ る. 各菌 属 の構 成 比率 に おい て は, Streptococcus

属菌に統

計 的 な有 意 差 が 認 め られ たが,湿 重 量 あ た りの生 菌数 で は認 め られ な か った.歯 垢 は,主 と して 細菌 に よ り構成 さ れ て い る が,他 に唾液 タ ンパ ク質,細 菌 由来 の多 糖 体 な ども存 在 す る.一 方,本 実 験 の結 果 は 歯垢 湿 重 量 あた り の生菌 数 が対 照 群 よ りも実 験 群 にお い て や や少 ない こ と を示 した.し た が って,同 じ量 の 歯 垢 が あ る場 合,培 養 可 能 な 細 菌 の歯 垢 中に 占め る割 合 が,実 験 群 よ りも対 照群 にお い て 多 い と考 え る こ とに よ り説 明 が つ くか も しれ な い.採 取 した歯 垢 の湿 重 量 は,す べ て の被 験者 に一 致 し て実 験 群 で低 く,対照 群 の約1/3低 い値 を示 した.川 島20) は,規 格 写 真撮 影 法 に よ り天 然 歯,金 合 金,陶 材 冠 の 歯 垢 沈着率 を比 較 した結 果,天 然歯 が最 も高 く以 下,金 合 金,陶 材 冠 の順 で あ っ た と報 告 して い る.歯 垢 沈 着 率 は 蓄 積 した歯 垢 を面 積 で と らえた もの で あ り,本 実 験 で 得 られ た歯 垢 の湿 重 量 と比 較 す るに は歯 垢 の 厚 さの 問題 も あ り,同 等 な もの と して比 較 す る こ とは で きな い.し か し,天 然歯 に比 較 して金 合 金 に は歯 垢 が蓄 積 しに くい こ とを同 様 に支 持 す る もの で あ り,そ の局 所 に 存 在す る細 菌 が産 生 す る酵 素 の 活性 や これ に基 づ く菌 体 外 物 質 が天 然 歯 上 の もの とは 異 な り,両 者 の歯 垢 の構 造 に 差異 を も た らして い る の か も しれ な い.こ の 点 につ い て は,さ ら に今 後 の詳 細 な検 討 が 必 要 と思 われ る. 本 研 究 の結 果 か ら,白 金加 金 の全 部鋳 造 冠 に 形成 され た歯 頸 部 歯 肉縁 上 歯 垢 の 歯周 組 織 に 対 す る影 響 は,天 然 歯 の それ よ りも少 ない こ とが示 唆 され る.し か し,生 菌 以 外 に も,死 菌 お よび 細 菌 由来 の産 生物 質 は 宿 主 に 対 し,刺 激 的 あ るい は破 壊 的 な 因子 と して作 用 す る こ とが 考 え られ,結 論 を くだす には これ らを も含 めて 検 討 す る 必 要 が あ る. さ らに補 綴 治 療 に お け る宿 主 側 の環 境 因子 の変 化 と細 菌 との 相 互作 用 につ い て詳 細 に検 討 す る必 要 が あ ろ う. 結 論 天 然 歯 と歯冠 補 綴 物,特 に 白金加 金 に よ り製 作 され た 全 部 鋳 造 冠 の歯 頸 部 辺縁 にお け る歯 垢 細 菌 叢 を培 養 法 に よ り検 索 し,そ の両 者 を比 較 検 討 し以 下 の結 果 を得 た. 1.  Gram染 色 性 と菌 の形 態 によ る菌 群 構 成 比 率 で は,実 験 群 は対 照群 に比較 して,Gram陽 性桿 菌 お よび Gram陰 性 球 菌 は いず れ も低 い値 で あっ た が,Gram陽 性球 菌 は顕 著 に 高 い値 を示 した. 2.  対 照 群 と実 験 群 の細 菌叢 を構成 す る細 菌 は ほ ぼ同 じ もの で あ った が,そ の構成 比率 につ い て は菌 属 に よ り 明 らか な相 違 を示 す ものが あ った.す な わ ち,実 験 群 に お い て Streptococcus

属菌の統計的 に有意な増加 と

Acti-nomyces

属菌および

Veillonella

属菌 の有意な減少が認

め られ た. 3.  各 菌 属 の歯 垢 湿重 量 あた りの生 菌 数 に お い て, Actinomyces 属 菌 お よび Veillonella

属菌 に統計的 に有

意 な減 少 が 認 め られ たが, Streptococcus

属菌に有 意な増

加 は 認 め られ なか った.

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244―504 補 綴誌  32巻2号(1988)

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Table  2  Prevalence  of  microorganisms  in  supragingival marginal  plaque  by  Gram  stain  and   morpho-logy  (%)

Table 2

Prevalence of microorganisms in supragingival marginal plaque by Gram stain and morpho-logy (%) p.3
Table  1  Test  for  identification

Table 1

Test for identification p.3
Table  5  Statistically  significant  differences between  two  groups

Table 5

Statistically significant differences between two groups p.4
Table  4  Viable  counts  of  microorganisms  per  wet weight  of  supragingival  marginal  plaque (viable  number/mg)

Table 4

Viable counts of microorganisms per wet weight of supragingival marginal plaque (viable number/mg) p.4

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