日本家禽学会誌, 40: Eノ89J97, 2003
<解説・情報・資料>
鶏のサルモネラ症
中村政幸
北里大学獣医畜産学部, │和田市東23番町35‑1
キーワード :サルモネラ,食' │ 1 1If, CE法製品,生薬, ワクチン
2) サルモネラの分類と血清型(坂lll#・田村, 1992, 佐藤1998)
サルモネラの菌体表面の外膜には糖脂質(リポ多糖,
LPS)が存在し, この糖脂質が菌体抗原(O抗原)を構成 し,その組成の違いによって67種類が知られている。ま た,鞭毛を構成する易熱性蛋白抗原(H抗原) もその組 成の違いによって80種類が知られている。 このH抗原 は通常1個のサルモネラが2種類を有し第1相,第2相 と呼ばれているが,第1相,第2相の鞭毛が1個のサル モネラで│司時に発現することはない。
これらのO抗原, H抗原の組合せによりサルモネラ の血清型が決定されている。
ここでサルモネラ血清型の記載方法について簡単に述 べる。
現在│」量│際的に認知される傾向にある記載方法によれば 次のようになる。
SaI柳o"e〃αEnteritidis:Sα""o7zg〃αg戒e"C(z subsp.
e e7zcaserovarEnteritidis
しかし, 日常的な記載では長すぎて煩雑なので簡略化 されて, S 汎o犯"αserovarEnteritidisまたはS邸加o‐
"G"αEnteritidisとなる。なお, これらの簡略形も二度 目以降ではさらに簡略化されS.Enteritidisとなり, さ らにSEと便宜的に記載されることもある。 このような 簡略形を用いれば, SfzJ77zo"e"αTyphimuriumはST, Saj加o"g"αInfantisはSIとなる。 これらの血清型につ いては以後それぞれSE,ST,SIと記載する。
なお, このようなO抗原とH抗原の組合せにより,
現在約2,400種の血清型が知られており, この中で動物 や人に病気を起こす血清型は約150種といわれている。
3) サルモネラ食中毒
特定の動物種を宿主とするグループの血清型を除くす べてのサルモネラは, チフス性疾患は起こさず, 人の食 中毒の原因となる菌群で,伝播性も弱くその発生は散発 的であり,上述したように人に食中毒を起こして問題と なるのは約1501Ⅲ清型といわれている。
はじめに
サルモネラとは,人および広範│外│の動物(ほ乳類,鳥 類, は虫類など)に感染し, チフス症や急性胃││瑞炎(人 の場合は食中毒となる)などの原因となる細菌群であ る。この菌群の最初の発見は, 1880年のEberthによる チフス繭であるが, S(zZ"o"e"αの名称は, 1885年に豚 コレラにかかった病豚から, この菌群に属する新しい菌 を分離し, BQcj""Sc加陀γ"s"s (我が国では豚コレラ 菌といわれた)と命名した米国の獣医学者Salmonと SmithのうちのSalmonにちなんでつけられたもので ある(佐藤1998)。
わが│玉│における家禽・家畜のサルモネラ症は, かつて はひな白痢が獄威を奮った以外では子牛の下痢症および 敗IiⅡ症が日立った程度で, あまり重要な病気とは見なさ れなかった。 しかし, サルモネラに汚染した鶏卵を原因 とする食中毒がllt界的には1985年頃から, わが国では 1989年頃から州加し,家畜衛生のみならず公衆衛生上も 非常に注目を集めている。
(1) 鶏のサルモネラ症
1) サルモネラの形態と生化学的性状(佐藤, 1998)
サルモネラ属菌は大腸菌と同じ腸内細菌科に属し, グ ラム染色で赤色に染まるグラム陰性のやや細長い菌(04
〜06×l〜3"m)である。ごくわずかな例外[S.
Pullorum(ひな白痢菌), S.Gallinarum(家禽チフス 菌)を除き,図1, 2の電子顕微鏡写真に示すような周毛 性の鞭毛を有.し, この鞭毛を使って活発な運動をする。
なお, この電子顕微鏡写真でははっきりしないが,菌体 表面に多数の微細な線毛がみられる。
サルモネラは腰素の存在に関係なく発育する通性嫌気 性菌に属し,通常の寒天培地(普通寒天培地など)で好 気的によく発育し,直径約l〜2mmのやや除起した│'1 形で,辺縁が平滑,光沢のある集落を形成する。
20()2年11月29日受付2002年12月16日受理
日本家禽会誌
簿
40巻J2号(2003)
突出してしまう。たとえば, 1996年の大││易歯O157の事 例, 2000年の牛乳を原因とするブドウ球菌食中毒などで ある。そこで,患苫数ではなく,主なりijj原体別にみた食
! │ !毒件数の年次推移をIX14に示す。 1985年から1991年 までは,腸炎ビブリオが第一位を占め,その後は1989年 岨から増ノjl l傾│可を示したサルモネラと第一位を争い,
1999年, 2000年はサルモネラが第一位を占め,サルモネ ラは重要な食中毒原│大│病原体となっている。
この食! ' '毒由来サルモネラの年次ⅡllltMIⅡ清」'i'lを表1 に示す。 1996年から2002年までSEが他の血淌型を圧 fIlして第一位を「Liめている。 これはSEの鶏卵オノj染が原
|ノjであり, このようなSE汚染鶏卵による食中毒は世界 的な傾向であり,世界的には1985年頃から増加してい
る。
一方, 2位以下のST,SIなどはそのほとんどにおいて ブロイラー肉が原│火│食品と考えられている。STはSE の鶏卵汚染による食' │ }毒が流イ」するまでは,代表III(jなサ ルモネラ食巾毒の原因菌であったが,最近ではSIがST と激しく2位争いをするに至っている。この原│大│として ブロイラーのSI感染の増加が指摘されている。
表2に厚生労働省主催による食烏肉衛生技術研修会衛
生発表会の講演要胃集から抜粋したブロイラーのSI汚 染状況を示す。山梨蝶では1997年から2001年にかけて ブロイラー盲腸便の2642%からサルモネラが分離さ れ, その1 1 1でSIの, liめる聾ll合は82.3%から96. 1%へと増加している。新潟県では2001年にブロイラーから分 離されたサルモネラの92.9%がSIであったo 2001年の
大阪府, 2002年の新潟県,鹿児島県では分離されたサル モネラすべてがSIであった。特に2002年の新潟県では ブロイラーの盲腸内奔260検体LI」 118検体(45.4%)が サルモネラ陽性で, このすべてがSIとなっている。このような全国的なブロイラーのSI汚染の増加には
│' 'Iか理山があると思われる。一般に,鮒におけるサルモ ネラ汚染源は汚染した橦鶏からの介卵感染,飼料,環境 と考えられている。SIの介卵感染はほとんど報告がない ことから,飼料あるいは環境が汚染源と考えられる。
このように盲腸内容が汚染されたブロイラーが食烏処 理場に搬入され, '1抜き解体法を実施すれば脱>l>1, 中抜 き, |ノ1臓除去の各]源で鶏肉の汚染を生じやすい。ブロ イラー市販肉の30‑50%がサルモネラ陽性と報告されて いることもこれらを裏付けるものと考えられる。
4) ブロイラーにおけるSIの病原性(中村ら, 2002 a)
上述のように, 最近, ブロイラーのSI汚染がh!II苫に なってきたので, SIの病原性をブロイラーひなおよび採 卵育成鶏を用いて検討した。なお,実験に当たり, SIの J90
鍵鍾蚤
鍾毒鱸
〆
r 認麹溌 蕊蕊灘霧
罐繍 蕊
!
謡
セ
擁
Rl 1. sα加切zg"αの電子顕微鏡写真
晶瀧、
#
噌涛蕊懲
鴫轄
識逮
#乳
図2. S"77zo"g"αの',世子顕微鏡写真
これらの│Ⅲ清型は家禽,家畜のサルモネラ症の原因と もなる。感染動物の多くは無脈状であるが,幼若1りlの動 物では, しばしば急性のみならず冑腸炎や下痢症をおこ す。また, これらのサルモネラ感染動物の一部は保菌動 物(腸管での保菌が多い) となり,食烏処理場,食肉検 査所の処理工程中で食肉を汚染し, これが食中毒の原因
となっている。このようなサルモネラ保菌家禽,家畜は数%から10
数%といわれているが,最近のブロイラーでは,食肉術 /│品検査所の洲査によると30‑50%がサルモネラ (特に
SI)に汚染されていると報告されている(ブロイラーのSI汚染は後述する)。また,採卵鶏では鶏群単位で約 15%の鶏群がSEに汚染されていると報告されている。
厚生労働省資料をまとめて図にした。 lxI3にわが国の
主な病原体別にみた食中毒患者の年次椛移を示す。 #if年
3‑4万人の食中毒患者が報告されている。 1985年から
2002年までを年単位でみるとサルモネラ食中毒忠昔が
第一位を,liめているイ│里が約半数あり, サルモネラは食中
毒の中では最大の注意が払われている。図3のように患
者数でみると, 1事│#l1の,患者数が多ければグラフ上では!''村:鶏のサルモネラ症 『191
■●■サルモネラ ll堺炎ビブリオ 畳・ブドウ球│巣1
−●瓶原大腸菌
÷カンビロパクタ ・ジェジュニ/コリ
20000
15000
00001
﹇く﹈無犯纈
5000
〜
0
198586 87 8889 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 002001 [年]
図3. 主な病原体別にみた食中毒患者数の年次推移(1985年〜2001年) (厚生労働省「食中毒統計」)
一サルモ不ラ
…"腸炎ビブリオ ー綴 ブト'ウ球菌 1000
今病原大腸菌
一カンピロバクタ ・ジェジュニ/コリ ー守一ゥエルシュ│¥i
・◆・小型球形ウイルス
総
800
600
M
﹇辻﹈無諏軍誹
二垂舞鑪
400
200
ー函降一一一マーーー
一
0
198586 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 002001 [年]
図4. 主な病原体別にみた食中毒患者数の年次推移(1985年〜2001年) (厚生労働省「食中毒統計」)
採卵育成鶏実験では7週時に109個を経口接種し, そ の後,各群10羽ずつについて5I1毎に30日後まで仙│体 別に盲││易便を採取し生菌数を測定した。また,別の実験 で7週齢時に経I]接種(108個)と静脈内接種(106m)を 行い,接種1週後に肝臓,脾臓,盲ll易内容の生菌数を測 定した。
区'5にSE,SI経口接稚ブロイラーひなの盲腸内容に おける生菌数を示す。全期間を通じてSI2株の盲腸内 生菌数の推移はSEHY‑lと比べてほとんど変わらな かった。
図6にSE,SI経口,腹腔内接種ブロイラーひなにお 病原性を正しく評価するために, これまで多くの検討が
加えられその病原性が明らかにされているSEHY‑1と の比較において実施した。
用いたSIはブロイラー, 採卵鶏由来SI6株で, SI2 株とSEHY‑l株とをセットにして感染実験を実施し た。ブロイラーひなを用いた実験では3日齢時に108個 を経口接種し, その後,各群5羽ずつ1 , 2, 3, 4週齢時 に解苫IIL,肝臓,脾臓,盲腸内容を採取し,生菌数を測 定した。また,別の実験でl週齢時に経口接種(108個)
とI腹腔内接繩(106{li'il)を行い,接種1週後に同様に生菌 数を測定した。
l l本家禽会誌 40巻J2号(2003) J92
無藍求副胆目無蓋承副延目無蓋頓副延目無豈余副延自無蓋余副艇ヨ無鎧余副延目無蓋余副胆目
C l毎や= G1 曇 [〜 マっ [−
つの 0J G1 一= 弓言 c、1
寺 一
霞ト花如毛爵︲而如苫忌︲而如四恩市如﹇認手布如程忌澁如扇署左如 悼騨︑罵亟句叶g烏
叶容J つ
・
●】
二GW
シの﹃自呵﹈の幸prL
ジヨ国﹄呵国
・局口毎西
口○のQ︹眉○口﹃Ff
甸畠○動詞
一コ甸旦君ロ昌甸の
︒①宮﹄乙苣C三
日の
の 二 目 呵
﹃
﹇ 三
口のに仁 匡輌寺のめい
寺
③ 芽 α
︾ つ い 垣
⑭ 函 つ
︑︑
つ・﹁③函寺ざ
叶
胄 つ
‐ 画
二e岬筐○二Q揖吾
の二﹇甸戸衿○Jく
の①のの①ロロの﹃
〆IF閨
何口○即こ
△二梧の己戸己毎桾四宮
一
. 毎 Q 恥 一 屋
﹇ 面 の
巨○⑱Q︹僖○︹一畠
﹃刀ff
の二戸因一口胃
自の ずいや
毎mト
︾ 四 一 司 寸 m
﹃ や わ の い の
つ寺﹃つい一
﹃ぬトデー
叶 貧 ご
函
二GW
毎口○助罰
○のローシの一口○︷室
切肖二口角の﹇ロ呵消︒FD
〆 I 境
一三旬Q﹄口﹁旬の
︸●rL
彦○室Q揖シ
ロ○のQ︹眉○二﹃
Frトミ
毎崖○切呵z
の二口呵雫目自
邑切国の
副胆目迫判小偶中ミキ図匹舶各個高墨田・﹃網
寺ぶつccくL﹄D
tL
の唖
ト◎﹇
めゆ﹃
ぬや自
詞輻弓唖唾唾
暉匡唖ヨ
マ ト 画 毎 画
叶
争 の
雪 ﹇己甸Q﹈ロ昌甸の 甸口○切包 二GW
○のロ﹈ンの一口○︾芦
の二吋戸榿Oj
︒F〆i迅
消の一的①二︒
↑ の 冒○のQP5ニト
胡要口飼︾巨畠
切 渭
︒
△
﹇ ご 旨 気 門
○
国の
C、』 ‐− ごYつ 0コ −− Co o, C、J
t− ○コ t− くり 弓 [〜 くC l型つ 【。 ◎つ
つ胄 胃 昌 弓 ○コ
l汁
の
雪 で一の垣二Q言J 二G坪
oの宮堤5首○三
呵口○く夢○二Q︲唇シ
揖甸で国軍
宮○ぬQ﹇屋○二岳
望冨シ岩○○
的酒口毎︾口自
F の
国の
や
︑ 国
・ 一 言 唾 の い つ や め
@ m 国 一 寺勾冒胄 唾
﹃
﹃ の 一
ぬい函むめ︑彦因 糞樫写写吊I毎入や緊狸諜漣程熈崖諜趨伺圃昌コロコ巳三Q烏僧諏﹄のの弓二宮g白国哩国の
叶息雪
二G坪甸口○切罰﹃︒mロニロー甸の
○ の ロ
﹃ シ の 一 口
○ 弓 三
つ一①垣二○渭自
の二口毎﹈巨胃
消呵ロ甸壺
﹃〃
そく
巨○的Q戸目○二F
望弓戸消○Q
国の
○ ○つ 0つ CY3 ‐ [− 0コ [〜 Iの ご趣 こ、J
CYつ m r− [− <C O、 <P 胃
− 目 胃 目 足り
ぬ 胃
出
④
‐
雪 彦○二︒揖戸 p﹇①頃二○言昌 望司唇消OQ 二ew
○ の ご
− 号
① 一 口
○
﹈ 室
泊呵で甸壺
厘○のQ﹇恒○二号
切揖のp︷の己冒の琿
一 の
の室ロ毎﹈ロ胃
国の
巾村:鶏のサルモネラ症 J93 ける各臓器の生菌数の推移を示す。経口接種腹腔内接 められなかった。しかし,野外ではSIによる重度の心膜 種を問わず,すべてにおいてSEHY‑lの生菌数が多い 炎や脚弱と起立不能が報告されているので,野外ではス
伽│r'lを示した。 トレス零の発症誘因があるものと考えられる。
又'7にSE, SI経口接種採卵育成鶏の盲腸便における (2) 養鶏場におけるサルモネラ防除対策
生│渕数を示す。全期間を通じてSI2株の盲腸│ノ1生│對数の これまで述べたように腸管定着性に優れているSIが,
帷移はSEHY‑lと比べてほとんど変わらなかった。 最近, 多くのブロイラーを汚染し, これが食烏処理工程 図8にSE, SI経口,静脈内接種採卵育成鶏における 中に交差汚染によって鶏肉を汚染し,その結果, SIを原 各I撒器の生I災i数の推移を示す。経口接種,静脈内接種を 因とする食巾毒に関連していると汚えられる。なお,鶴 問わず, ほとんと、同程度の生菌数を示した。 肉はノ川熱処理されるため,直接食中毒の原因になること 以上より, SIとSEの病原性(腸管定茜性,侵襲性, は少ないが,洲哩中に包」 .9 まな板などを通じて他の食 肝臓と脾臓における定着性)を比較すると,少なくとも 品(たとえば生で食べるサラダなど)が汚染され原因食 腸管定着性に関しては両者に大きな差はないものと考え となることが多いと考えられている。
られた。なお, SI,SE接種ひな,採卵育成鶏とも臨床症 SIを原因とする食中毒を減少させるためには,食烏処
状は認められなかった。 理場での交差汚染を減少させることが必須ではあるが,
このように, SIの│陽管定着性はサルモネラの111でも強 現在の食烏処I'│1工程では限度がある。 したがって,生産 毒といわれているSEと同程度であった。また, SIの接 段階でSI汚染を出来るだけ少なくし,食烏処理工程の 種経路を変えてもひなおよび採卵育成鶏に臨床症状は認 負担を減少させることは重要である。そこで, これまで
表2 わが│ I<│のブロイラーのサルモネラ汚染
(食烏肉衛生技術研修会衛生発表会)
実施県 年度 所見
盲11号内容118/260陽性(SI : 100%) 9農家10ロット, 8/10陽性(SI : 100%) 盲l1場便3>│>1分をl検休とし, 29/50陽│ │2 (SI) 胆汁1羽分をl検体とし, 4/55陽性(SI) クロアカスワブ3羽分をl検体とし, 17/219 (SI) 盲││易,翼,皮膚など156/6001場性
SI (92.9%), Newort (6.4%), Anatum(0.6%) H942/991場性(SI :82.3%)
HlO70/2831場性(SI : 92.3%) Hll83/3121場性(SI : 96.1%) 新潟
鹿児島
2200 0022
大│坂 新潟
ll OOO0 22
i ll梨 2001
IC lC
口皿自函︒
−40 1C−52 SI99−533 SITS−1 SEHY−1 SE
021乱も子CCHIIIIESSS
令令差
7︐65432
︵辺P自○普己無涯矧
76543210
団S臼Q智﹇︶燕個当
■■
糾
問
肝臓 脾臓, , i
10
2 3
歩
1 4
孵化後週数 肝臓 脾臓
絲1 1接種 腹腔内接種 図6. SE,SI接種ブロイラーひなにおける生菌数 図5. SE,SI経口接種ブロイラーひなの盲腸│ノ1容
における生菌数
J94 1│本家禽会誌 に主としてSEに対して排菌抑制効果を発揮した製品に ついて紹介する。 なお, SEの排菌を抑制する製品は同 様の排菌を示すSIにも効果があると考えて差し支えな い。実際に,後述するようにSEの排菌抑制に効果を発 揮するCE(競合排除)法製品はSTJPSI, さらに病原性 大腸菌O157の排菌にも有効であることは確かめられて いる。
a. CE法製品(中村ら, 2000)
競合排除(CompetitiveExclusion:CE)法は,成鶏 の盲腸'ノ1容の懸濁液あるいは嫌気培養物,すなわち正常 盲1号内細菌叢を,餌付け前のひなに投与してひなに正常 細菌叢を早期に形成させ,後から腸管内に侵入してきた サルモネラの定着・増殖を競合的に抑制する方法であ る。ふ化直後のひなは無菌的であり, 1個のサルモネラ でも腸管│ノ1で爆発│ │勺に増殖しひなを死亡させることから 考案された方法で, 1973年フィンランドのNurmiと Rantalaによって開発され,報告者の名前に因んでヌル
ミ法と呼ばれている。わが国でも輸入あるいは開発さ
れ,現在, 5社5製品が市販されている。巻J2号(2003)
ここではある製品(インテクリーン :伊藤忠飼料 (株))について紹介する。通常, CE製品は飲水投与され ることが多いが,本製品は成鶏盲腸内容の嫌気培養物を 寒天に封じ込めた製品である。
①投与方法の検討
嫌気培養物を寒天に封じ込めて投与した区(寒天区),
嫌気培養物を飲水投与した区(飲水区),嫌気培養物を散 霧した区(散霧区)を設けた。初生ひな(1区20羽)を 搬入し, その日にそれぞれの処置をし, 3日齢時にSE HY̲1 105{IIを経口接種した。接種1, 2週後に盲ll腓内容 の生菌数を測定した。
図9に示すように, いずれの投与区においても対照区 と比べて効果が認められたが,寒天区が最も優れてい た。
②Seederbird法を用いた投与方法の検討
①と同様寒天区,飲水区,散霧区を設けたが,攻撃に はSeederbird法を用い,盲腸内容の生菌数を測定し た。 Seederbird法とは, 1群のひなの10%程度にのみ 接種し, ゆるやかに群全体に同居感染を起こさせる方法 で, 口然状態における感染により近いと考えられてい る。
図10に示すように, いずれの投与区においても対照 区と比べて効果が認められたが, その促度は①に比べ てより顕著であった。
③投与場所の険討
嫌気培養物を封じ込めた寒天を用い,ふ化場でふ化し たひなの農場までの運搬に合わせて投与した。すなわ ち,ふ化場で投与した区(ふ化場区), トラック内で投与 したlX(トラック区),農場で投与した区(農場区)を設 け,①と同様盲腸内容の生菌数を旧ll定した。
40
021辿も¥CCH
SSS IIE
令令芸
7654の○210
as員︶智︷︶無羅對
1 5 10 15 20 25 30
接種後日数
SE,SI経口接種採卵育成鶏の盲腸便におけ る生菌数
図' 7
□1区(寒天区)
**:P<0.()1
ロ︑二画︒
IC−40
1C−52 霞2区(散瀧区)
□3区(飲水区)
□4区(対照区)
765432
︵響口国○智﹇︶無魍矧
***:P<0.001
****:P<0.0001
十
876543210
︵響ロ国○習己無魑對因め
’
而謬謬笏診蒻笏笏錫笏搦笏笏残塑臓
壬 一 一 一 一 一 三 一 一 一 一 一 一 一 巨
﹄ E 二
︐ 三 三 三 一 一 一 一 一 叩 T
−1
SI99−533 壬 SITS−1 SEHY−1
*斗
****
****
−−L
品錨
肝臓
10
瀞窮
2 攻撃後週数
投与方法の検討(盲腸内容SE生菌数)
経口接種 静脈内接極
図8. SE,SI接種採卵育成鶏における生菌数 区1 9
中村:鶏q 図1lに示すように, いずれの投与区においても対照 区と比べて効果が認められた。
以上のようにCE法製品は, ふ化後間もない時期のサ ルモネラ感染に対して有効であった。なお,本製品はい ずれの場所での投与も効果が認められた。 このことは,
CE製品使用上の選択肢を一つ増やしたことになり,野 外においてそれぞれのふ化場や農場の事情に合わせて使 用できることを意味している。
b. 飼料添加物としての生薬(中村ら, 2001) サルモネラの排菌を抑制する目的で, マンノース,生 菌斉ll, オリゴ糖などの飼料添加物が使用されている。 こ こでは,最近,排菌抑制作川が明らかにされた生薬(漢 方薬)について述べる。
生薬として,ガジュツ, ナンカシ,ケイヒを0.1%混合 した飼料を用いて排菌抑制作用を検討した。すなわち,
7週齢の採卵育成鶏(1区10>11)を1週間それぞれの添 加飼料で飼育し, SEHY̲1 107個を経口接種した。接種 1, 4, 7, 11, 14R後に盲腸便の生菌数, また14日後に
鶏のサ レモネラ症 J95
解剖し,肝臓脾臓,盲腸内容の生菌数を測定した。
図12, 図13に示すように, ガジュツ区では対照区に 比べて有意に盲腸便排菌数が減少し,肝臓脾臓盲腸 内容の生菌数を比鮫すると, ガジュツ区で盲腸内容の生 菌数が有意に低下した。なお,図には示さなかったが,
キキョウ, チョウジでも同様の排菌抑制効果が認められ た。
以上のように,生薬には排菌抑制効果が認められた。
生薬は数千年の歴史があり,安全性にはほとんど問題が ないので,今後有MIな飼料添加物となることが期待され る。
c, ワクチン(! │ '村ら, 2002b)
現在,我が国で市販されているサルモネラワクチンは いずれも採卵鶏用SE不活化ワクチンであり, 4社5製 品である。従って,直接ブロイラーとは関係ないが,概 要を紹介する。なお, 米匡│ではブロイラー川としてST 生ワクチンが3種類市販されている。このことは, ブロ イラーではSEではなくSTが重要で, しかも不活化ワ クチンではなく生ワクチンをブロイラーに接種している ことを意味している。
表3にlll界で使川されている生ワクチンを示す。表' │ '
1234 固鬮□□ jj7j 区区区区 天霧水照 寒散飲対 くlくく 区区区区 1234
876543210
︵響ロ国○ぎご無稲甜因め_L
k**:p<0.0011窪購
騨芦雪
(log/g)5
***
43210
︵ロ届︒︶無溜溜自切
域普唾L歯 g;鴫。韓議 瀞謡3"§;
量う唖輔 鴎韓竜輔f
、屯心強骨』
***
*** | ***
|…
**謝由̲L
]中由嗜]『紹号増、艶、晶噌品鹸譲噌
串 露
︑
4増尹宙
1 2
攻撃後週数
│Xl lO. Seederbirdを用いた攻撃に対する投与方
法の検討 4 7 11 攻撃後日数14
区 12. 4皇薬飼料添加試験の俳菌状況
1
m1区(孵化場区)
■2区( !、ラック区)
□3区(j拠場区)
****:P<0.0001
876543
︵辺p四○曽一︶凝壇(log/g) (*p<0.05)
一口4区(対照区)
§区区区シッヒカュxインジ旧ケナガ対口園■□
****
****
****
**** ︵ロ届○︶無魍睾目ぬ
2
.L│「L
[P琴□、[P鍔]晶口蕊鯵伊晋零嘩1口晋誤晋[ **** *│*** 1210
司国め
コピざ露鍔
…晶曾静も鶏盤
. !
1 2 ()
攻撃後週数
投与場所の検討(盲腸内容SE生菌数)
盲││淵勾容 肝臓 脾臓
図13 生薬飼料添加物試験の各臓器の生菌数 図11
J96 口本家禽会誌40巻J2号(2003)
の米国産生ワクチンはすべてST用であり,使用説明書 図15にST盲腸便排菌数を示す。ワクチン接種群で によるとSTだけではなく SE,S.Hadar,S.Kentucky は攻撃14口後にのみ有意に生菌数が減少した。
などにも効果があると記城されている。 図16にSI盲ll坊便排菌数を示す。 ワクチン接種群と対 日本ではサルモネラ生ワクチンは承認されていないの 照群の排菌数に差はなく, ワクチンの効果は認められな で, 日本で使川1されているサルモネラ不活化ワクチンに かつた。
ついて述べる。ワクチンとして, 「レイヤーミューン 以上のように,不活化ワクチンの場合は, |司‑O抗原
SE」 (シーエーエフ ラボラトリーズ)を川い攻撃菌と を有するIIII渭型には効果があり,一部O抗原を共有して して, SE,血清型の異なるSTとSIを用いた。 いるIⅢ清型には若干の効果,血清型が異なれば全く効果これらの31il[清型のO抗原構造は以下の皿りである。 がないことが明らかとなった。また,前述した生ワクチ
SE:01, 9, 12, ST:01,4, [5], 12, SI :06, 7, 14 ンと比べると叩清型を超えて効果を発揮するにはある程30羽のSPF鶏を1群5羽の6脈に分け, 4, 8週齢時 度限界があることも分かった。
に3群にレイヤーミューンを接種し, 12迦齢時それぞれ
ま と め
SE,STあるいはSI 1091#│を経口接種し攻撃した。 │[1時
に残りの3群はそれぞれのワクチン非接祁対照群とし, 図17にSE防除対策をlXl示する。 このうち, ブロイ SE,STあるいはSIを経口接種した。接種1, 3, 7, 10お ラーでは渭淨ひなの導入, ヌルミ法の応用,各種飼料添 よび141 1後に盲ll易便の生菌数を測定し,攻撃14日後に 加物の使用,環境の清淨化・消毒またストレスはサル 解剖しIⅡ:臓脾I幟と盲腸内容の生菌数を測定した。 モネラ感染を助腱する(ブロイラーの高温での飼育で 図14にSE盲1号便排菌数を示す。ワクチン接種群で は,通常温度での飼育に比べてサルモネラの分離が高ま は多くのl l寺点で有意に生│渕数が低く,排菌抑制効果が認 ることは報告されている)ので, ストレスのないi,1育を
められた。 心がけるべきである、
表3. 鶏川サルモネラ生ワクチン
製造用株
ワクチン 開発国 接種方法
ZoosaloralH SalmonellavacT STMl
SalmonellavacE Meganvacl Salmune PoulvacST
STPul‑,His STKal,Rif,Rtt STAro,Ser SE変異株 STcya, crp ST変異株 STAro
水水水 川回飲飲飲
nd︑.j3
口ロ水水霧霧霧 経経飲飲散散散
ドイツ ドイツ オーストラリア
ドイツ 米国 米国 米国 瓢)発育鶏卵内,卵殼への噴霧も可。
543210
︵聟目○啓︷︶蕊佃当Sm
543210
︵辺口角乱︵︺ご無稲矧Sm 群0ン匪群チ*昭ヘク*
対ワ風
口号如p
*く
冊¥
1rt・
0.01) 01)
T︷u潤
み﹈TII
1
3
7 1 3 7 10 14
攻撃後日数 SEオイルワクチン2回接種におけるST 盲腸便排菌数
10 14
攻撃後' 1数 21ITI接種におけるSE IxI 14. SEオイルワクチ
盲腸便排菌数
図15
中村:鶏のサルモネラ症 ]97
54321
︵普畠○碑︶一︶無魍對声勗
今
人毒 潅
君許 堅凄詮
なゞ︽蕊︑ふ汀 の一一︑一考︽導ぷ
仙乙タデ室・︲・浄
雰蕊Ⅷ﹄&
﹃‐◇‑対照群
‐◆‑ワクチン群 (*p<0.05, **p<0.
ヌルミ法 同居感染
6
01)
登 、遊離酸
飼料添加咽炭水化物
#生菌剤
グ 薬剤のルM1接触感染
●
気道感
() ン
1 3 7 10 14
攻唯後日数
ン2回接種におけるSI ワ
クチンあ応川 |環境経由感染 | 季
環」蝿の清浄化、 jiIi毒│XI 16. SEオイルワクチ
盲腸便排菌数 図17. 鶏におけるSaj柳o"e"αE疵gγ"〃jsの伝搬 経路と対策(小島朋美原図)
すなわち, サルモネラ感染の対策として特効薬は無い ので,あらゆる段階で対応を考えるべきである。それ故,
「FarmtoTable」,言い換えれば農場食烏検査,流通,
"i費までのすべての段階での総合的な対策が必饗であ
る。中村政幸・西村肇・永旧知史・竹原一│リl. Sα航o"e"α Infantisのブロイラー初生ひなと採卵育成鶏における 排菌と侵襲性鶏病研究会報38, 9097 (2002a) 中村政幸・西村肇.永'丑I知史・竹原一明:S(zIww,07ze"α
Enteirtidis不活化ワクチンの09,04,07群サルモネ ラに対する排菌抑制効果.鶏病研究会報38, 149‑152 (2002b)