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音声計 算練習 の 特徴と その効 果 につい て

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Academic year: 2021

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(1)

第 45回 数 学 教 育 論 文 発 表 会 論 文 集 論 文 発 表 の 部

音声計 算練習 の 特徴と その効 果 につい て

志 水 廣 愛 知 教 育 大 学

要 約

本 研 究 は , 計 算 の 習 熟 に つ い て , 筆 者 ら が 開 発 し た 音 声 計 算 練 習 に つ い て の 特 徴 と 意 義 と そ の 効 果 に つ い て 述 べ た も の で あ る 。 特 徴 と 意 義 に つ い て は , 短 時 間 で の 練 習 , 継 続 的 な 練 習 , 即 時 の フ ィ ー ド バ ッ ク , ペ ア 学 習 な ど が あ げ ら れ る 。ま た ,理 論 的 な 基 盤 と し て は ,川 島 隆 太 の ブ レ イ ン イ メ ー ジ ー ン グ 研 究 , ミ ス を 防 ぐ 外 化 , 流 暢 性 な ど に 着 目 し て 述 べ た 。 そ の 効 果 に つ い て は , 実 際 に 音 声 計 算 練 習 を 小 学 校 全 学 年 で 実 施 し て 実 施 回 数 と 解 答 数 の 変 化 を 調 査 を し て , 数 値 化 , グ ラ フ 化 し て , 分 析 し た 。 そ の 結 果 , 全 学 年 と も 実 施 回 数 と 解 答 数 の 平 均 値 は 右 肩 上 が り に 伸 び て い く こ と が わ か っ た 。

キ ー ワ ー ド : 音 声 計 算 練 習 , 流 暢 性 , 短 時 間 で の 練 習,川 島 理 論

1.はじめに

(1) 計算練習の意義について

平成23年実施の小学校学習指導要領にお いて,目指すべき計算技能の習得について,

「第4学年A数と計算(3) 整数の計算の 能力を定着させ,それを用いる能力を伸ば す。」と明記された。「定着」の言葉が用い

られたのは,今回の指導要領が初めてである。

つまり,計算の能力の定着は活用力の育成の 基として現在でも大切な内容である。計算

の能力の定着のためには,計算練習が不可 欠である。ただし,いたずらに多くの時間 をドリルに費やすのは効率的ではない。

そこで,本論文では,計算練習の新しい 方法として,音声計算練習について提案し,

その意義と共に実際の実験調査にもとづき 音声計算練習による計算能力の伸びの様子 について報告する。

2.これまでの計算練習について

(2)

小学校算数の場合においては,計算練習は,

主に計算ドリル(市販教材または手作り教材)

をもとに行われる。これは単元の指導内容に 即して計算練習する場合もあるし,また,特 別に計算教材だけに特化して計算ドリルとし たものもある。いずれにせよ,答えをノート 又はワークシートに書く。つまり,紙に答え を書いているのが特徴である。

中でも簡単な計算に特化して練習する百ま す計算は有名である。百ます計算は,岸本裕 史が開発した方法で,近年,陰山英男によっ て追試されブームとなった。百ます計算とは,

縦 10×横10 のますの左と上にそれぞれ0 か ら9の数字をランダムに並べそれぞれ交差す る和,差,積を記入する計算練習である。短 時間で基本的な計算に特化したものである。

3.音声計算練習について (1)音声計算練習とは何か

計算をランダムに並べた一覧表を見て1分 間に計算の答えを次々と唱えていくことを音 声計算練習と呼ぶ。具体的に説明しよう。下 の計算問題の一覧表を見てほしい。

図1(岡谷小学校作 1年 たしざん)

図1 たしざんの計算問題一覧表

計算一覧表は,式だけの表と式と答えが書 かれた一覧表がある。

まず,あひるコースから出発して,縦1列 の計算の答えだけを声に出していく。例えば,

「11,13,11,15,…」と声に出す。

1列が終われば右の列に移動していく。形式 としては,計算式を目で見て答えを言うので 視暗算で計算を行っている。そして,1分間 でどれだけ言えるかを記録する方法である。

目標は,1分間で40問題程度である。慣 れてくると,速い児童は1分間で60問の計 算を処理できるようになる。

(2)音声計算練習の実際の方法

志水式の音声計算練習は,単に声に出す計 算だけではない。一つの練習形態がある。こ れについて説明しよう。

(3)音声計算練習の特徴と意義 特徴と意義を述べよう。

① 計算の答えを口頭で言っていくだけなの で,たくさんの練習量をこなすことができる。

つまり,紙に書くよりもスピードが速いので ある。

② 声に出した答えが正しいかどうかはわか らないので,2人組で練習させることによっ

実際の方法

① 1人で,40問の答えを言ってみ る。…1分間

② 2人組となる。Aさんが言って みる。Bさんは式と答えが書かれ ている一覧表をみて,もし間違えて いれば,再度計算を促し,それでも だめな場合は教えてあげる。…1分 間。

③ 今度は交代してBさんが答え を言い,Aさんは聞き役になる。

…1分間

④ 本日の進度を記録する。

(3)

て,チェックさせている。このチェックは即 時に指摘される。つまり,即時にフィードバ ックされて正しい答えを求めさせることにな る。これは認知心理学でいう即時強化にあた る。

③ 2人組で聞き合うことで,聞くことと話 すことの練習にもなる。このとき友達どうし で励ますことによって頑張る気持ちも生まれ る。2人組の練習を取り入れることによって,

2人の協働作業となる。友達からの励ましは 学習意欲を高めることになる。

④ 即時にフィードバックされるので,答え 合わせの時間が必要なくなる。つまり,1分 間終わった時点で,答え合わせは終了してい る。この点は百ます計算よりも合理的である。

百ます計算だと答え合わせに数分間の時間が 必要である。

⑤ 紙に残らないことによって,できなかっ た残りの問題に対して心残りがない。

⑥ 1分間という短い時間だからこそ集中で きる。この1分間という時間は短いようであ るが,実際には長く感じられる。

⑦ 計算プリントを印刷し,クリアファイル に保存して活用することで,教師が印刷が1 回で済む。百ます計算は何回も印刷する必要 がある。教師の労力の節約とともに紙資源を 節約できる。

⑧ すべての問題を何分間でやるのではなく,

1分間に何問できたかに挑戦させる。記録を つけることで,前回よりもどれだけ答えるこ とができたか,自分の計算力の伸びを意識さ せることができる。

⑨ 筆者(2005,2006,2008)らが開発した音 声計算練習は,紙に答えを書くのではなくて,

音声だけで練習する方法である。即ち,視暗 算の強化である。しかも,一桁どうしの計算 はもとより小数の計算,約分・通分など教材 は広範囲にわたっている。

なお,この計算を暗唱しているという意見 があるが,この意見は妥当ではない。児童は

計算を見て,答えを言おうとしている。つま り,計算を見た段階で,何らかの念頭処理が 働いている。後述する横田の報告によると,

A子は「答えを言いながら,目は次の問題を 見て計算している」と述べていたという。し たがって,スピードが速いからと言って暗唱 しているわけではなく,計算しているのであ る。また,記憶のチャンク容量から言っても 音声計算の32問をすべて暗記して言えるわ けではない。

4.音声計算練習の理論的背景

音声計算練習の理論的な背景として4つ挙 げよう。第一に川島隆太理論との関連,第二 に触媒としての働き,第三に外化の働きとの 関連,第四に計算の流暢性との関連である。

まず,東北大学の川島隆太(2002)は,ブレ イン・イメージング研究によれば,「難しい ことを考えているときよりも,単純な計算や 音読をしているときのほうが,はるかに活発 に脳がはたらいているのです。それももっと も大切な前頭前野が,右脳も左脳も活発には たらいていました」と述べている。しかも,

「黙読よりも音読のほうがより脳が活性化し ます」と述べている。この理由について,文 字的言語と音声的言語という2つの側面から 考えている。川島(2002)は,「音読は,目 で見たものを口から出し,さらに出した音を 自分の耳で聞くということですから,文字的 言語のシステムと音声的言語のシステムの両 方を同時に使うことになります。そのため,

音読は文字的言語だけを使う黙読よりも脳を 活性化すると考えられます。」と述べている。

志水は,口に出して言うことで,計算脳の 認知作用に働きかけるのではないかと推測し ている。つまり,目だけからの情報では働き にくい部分も口に出すことで計算処理を促す と考えている。より具体的な音声が触媒のよ うな働きをもつと考えている。(もちろん推 測の域はでないが仮説として提起したい)。

(4)

第三に,口に出すことでエラー防止になる。

これは,認知科学における外化(海保,1996)

は,補完・焦点化・確認に役立つからである。

再び,川島(2001)は,彼の著書『自分の 脳を自分で育てる』において,志水の計算練 習法と同じ挿絵,即ち,計算一覧表を見て1 つずつ計算している場面があった。この挿絵 でこの音声計算練習を認知するものと解釈で きた。

第四に,計算の流暢性に関してである。

なぜ,志水は音声計算のようにすらすらと 計算することが重要だと考えているのか。

算数は問題解決の連続であり,個人の思考 のストレスにならない程度に計算のスピード は暗算程度でできることが望ましいと考えて いる。1問を1秒から2秒程度でできる能力 である。

この計算の流暢性について,島宗理(2010)

は,算数のかけ算における国際比較研究とし て,小学生において一桁のかけ算(下位行動)

と二桁のかけ算(下位行動を含む上位行動)

と流暢性(正反応速度)の相関関係を検討し たところ,流暢性の重要性を示している。

5.音声計算練習の検証

(1)I小学校全体での音声計算練習の検証 今回,2012年6月から7月にかけて小学校 全体で音声計算を実施して多くのデータが得 られたので,ここに発表する。

① 対象 愛知県I市K小学校 1年生か ら6年生185名(2年生は除く)

② 時期:1)1年~4年・6年

・6月26日(火)~7月3日(火)あひ るコース

・7月4日(水)~7月12日(水)いる かコース

2)5年

・6月26日(火)~7月5日(木)あひ るコース(野外教育で2日できないため)

・7月6日(金)~7月17日(火)いる

かコース

時間:朝8:30~放送を入れた後,各 教室で進行。

③ 実施した音声計算の教材(後述)

④ 1分間に答えを声に出した解答数の学 級平均値

表1 1分間に答えを声に出した解答 数 (2)表1のグラフと分析

①問題例 「2と□で10」の□の数を答

(5)

える問題

②1年生のグラフの分析

1年生は,1回目平均19問の解答数から 始まり,6回目まで右肩上がりで伸びてい る。7回目で少し落ちているが,これは,

あひるコースからいるかコースへと変わっ たためである。しかし,その後も順調に伸 びている。

③問題例

1回目から6回目 「2×□=8」の□の 数を言う

④3年生のグラフの分析

全般的に右肩上がりで伸びている。7回 目では問題が変わったためにいったん落ち ている。

⑤問題例 「40÷20」

⑥4年生のグラフの分析

全般的に右肩上がりで伸びている。7回

目からはあひるコースからいるかコースへと 問題配列の順序を変更したため,少し下がっ ている。しかし,その後は,再び右方上がり で伸びている。

⑦問題例 「0.2×2」

⑧5年生のグラフの分析

全般的に右肩上がりで伸びている。7回目 からはあひるコースからいるかコースへと問 題配列の順序を変更したため,少し下がって いる。しかし,その後は,再び右方上がりで 伸びている。あひるコースよりもいるかコー スの方が難易度が高い。それにもかかわらず,

7回目は問題順序の変更で解答数は落ちるが,

それ以降は右肩上がりに伸びている。

⑨問題例

1回目から5回目「等しい比」2:1=4:

□の□を言う

6回目から11回目「分数のわり算1/2

(6)

÷1/3」

⑩6年生のグラフの分析

6年生は,他の学年と教材が5回目までと 6回目からとで異なる。よって,5回目と6 回目の折れ線は意味をもたない。

それでも,1回目から5回目までの解答数 の変化,6回目から11回目までの解答数の 変化としては,それぞれ,右肩上がりで伸び ていることが分かる。

⑪グラフの全学年の傾向の分析

音声計算練習をすることによって,どの学 年も右肩上がり伸びの傾向を示している。

途中,落ちるときがあるが,それは,同じ 教材でもあひるコースからいるかコースへの 変更のために落ちている。ただし,コース変 更にもかかわらず,前回よりもさらに伸びて いく傾向にある。(ただし,6年の場合は,

教材を全く変更しているため落ちているよう に見える)

⑫ 学校からの報告

学校からは,「日々,記録が向上し児童の 達成感や充実感が見られた。」との報告があ った。

6.おわりに

音声計算練習は,1分間という短時間で計 算練習することができる。算数の授業時間に は考える時間をできるだけとりたいので,1

分間でできることはとても魅力的なことであ る。しかもペア学習なので励まし合うことが できる方法である。今後は,上位層,中間層,

下位層に応じた教材を検証して開発していき たい。

参考・引用文献

文部科学省(2008),小学校学習指導要領,p52 志水廣(1994),楽しい算数授業づくりのマニ ュアル,p54,明治図書

川島隆太(2002),高次機能のブレインイメー ジング,医学書院)pp138-146

海保博之,ヒューマンエラー,pp78-81,新曜社 陰山英男(2002),本当の学力をつける本,文 芸春秋社,pp25-27

陰山英男(2001)やっぱり「読み・書き・計算」

で学力再生,小学館,pp25-27

志水廣(2007),「志水式音読計算練習法」で 学力アップ,楽しい算数の授業276,pp4-7 川島隆太(2002),読み・書き・計算が子ども の脳を育てる,pp23,子どもの未来社

川島隆太(2001),『自分の脳を自分で育てる』

pp60-61

Fan-Yu Lin, Richard M. Kubina, Satoru Shimamune(2010),Examining Application Relationships: Differences in Mathematical Elements and Compound Performance between American,Japanese, and Taiwanese Students, International Journal of Applied

Educational Studies Vol. 9 No. 1 Pg. No.

19-32 IJAES

志水 廣・豊田市立高嶺小学校(2005),算数 大好きっ子に育てる-計算力を高める「高嶺っ 子計算」とわかる授業の実践,明治図書 志水廣・横田茂樹(2006),中学校数学科志水 式音声トレーニング法,明治図書

横田茂樹(2006), 日本数学教育学会誌. 臨時 増刊, 総会特集号 88, p288,

志水廣・長野県岡谷市立岡谷小学校(2008),

算数科学ぶ喜びを育む学習の創造,明治図書

参照

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