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美術 フ ァ ン の た め に

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Academic year: 2021

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Newsletter of the National Museum of Modern Art, Tokyo [Jun.-Jul. 2013]

  東京国立近代美術館開館二周年を記念して昭和二十九年十二月に創刊された美術

館ニ

ュー

ス﹃現代の眼﹄は本号をもって節目の第六〇〇号の発行となった︒

  広告集めに走り回ったり原稿料の安さに驚かれたりした編集担当者の涙ぐましい努

力に支えられた時代から数えて六〇〇号︒これまで継続できたのは本誌の意義や使命

を自覚した歴代担当者の献身的な努力もさることながら︑何より︑読者の支持や理解

があったからに他ならない︒心からお礼申し上げたい︒

  この機会にこれまでの成果を整理しつつ︑今後の役割について考えてみたい︒

  ﹃現代の眼﹄は当初より︑単なる広報誌という位置付けではなく︑美術館としての使

命や責任を意識して︑展覧会図録の補完的論考と商業誌では扱えない時事性のある美

術関係記事を中心に編集されてきた︒作品研究や文献解説など資料的価値のある記事︑

美術館の基本的な考え方に関するもののほか︑特徴のある連載物も取り上げてきた︒そ

の代表格は

︑ ﹃ 日本における近代美術館設立運動史﹄や﹃大正期の新興美術運動をめぐっ

て﹄であろう︒また

  ︑ ﹃ 随筆私の好きな一枚の絵﹄というシリーズも好評を得た︒

  その後︑平成八年四月︵四九七号︶には当初の白黒八頁の月刊誌から︑カラー版十六

頁の

隔月誌

となって︑読みごたえのある論

考誌としての性格を維持してきている︒

  また︑四〇〇号記念号に富山秀男次長︵

︶が語っておられた

単行本

の夢は

開館 六

〇周年記念のアンソロジー﹃美術家たちの証

言﹄を上梓できて現実のものとなった︒還暦

年という節目のことではあったが︑本誌の長 い積み重ね﹃老舗の貫録﹄があったればこそといえるであろう︒その目次を通覧するだけ

でも本誌が多様なアプローチで様々な課題に迫ろうとしてきたことが理解できる︒

  美術館の諸活動の基礎が日常的な調査研究にあることは多言を要しない︒優れた調

査研究の成果があってこそ質の高い展覧会の開催やコレクションの充実を図ることがで

きる︒本来︑調査研究の成果は展覧会図録や研究紀要などの場で公にされるが︑本誌

がミニ紀要の性格を持つことになるのもやむを得ない︒これに加えて教育普及のための

解説誌という性格を併せ持つことでその役割は一層高まることになる︒

  例えば︑新聞各紙の科学部は︑一般読者に科学技術の専門的な事項をできるだけ分

かりやすく解説し︑理解者や支援者を増やすことに大いに役立っている︒ノーベル賞で

有名になった山中伸弥教授のIPS細胞についても再生医療や新薬開発に役立つ程度

のことは国民的な常識

レベ

ルに

なっ

た︑これはこのような翻訳者のお陰にほかならない︒

  美術評論についても同じような努力がますます必要になっている︒さすがにオペラや

クラシック音楽の高邁なそれに比べると一般読者に配意しているものの︑理解を広げよ

うとする科学部の丁寧な解説は大いに参考になる︒

  かつての博物館などのように研究成果の副産物を楽しませていただく︑分かる者だけ

が足を運べばよい美術館では最早ありえない︒一人でも多くの国民が美術を楽しめる

機会を提供し︑広く国民の文化的教養を高めることに資するという責任は決して小さ

くない︒その意味では社会教育は調査研究と並ぶ美術館機能の双璧と位置付けられる︒

  ﹃現代の眼﹄にはこの観点から大きな役割を期待できる︒ミニ紀要から初級者向きの

解説まで︑幅広い読者に対し工夫を凝らした記事を提供できるのは本誌をおいてほか

にないであろう︒

  もちろん︑情報量やスピードはICT技術に到底敵わない︒しかし︑画像の権利処理

に加えて︑紙媒体の特性︑

ペー

ジを

繰ったときの手触りや︑息づかい︑匂いや気配といっ

たメリットを生かしながら︑より分かりやすく親しみやすい解説記事や読み物は﹃現代

の眼﹄誌にこそ可能と思われる

︒ ﹃ 美術家たちの証言﹄では読み物としても魅力的な記事

が多

かっ

たこ

とに

改めて気づかされ︑これからの方向性を示唆されたように思う︒

  論考誌の性格と同時に︑機関誌として教育普及の意識を強める︒たとえ二兎を追う

ことになっても︑多様な美術

ファ

ンを

受け入れる美術館としては様々な方法を駆使して

期待される役割を少しでも十全に果たしていくしかない︒そのための努力を今後とも

続けたい︒︵東京国立近代美術館長︶

多様

美術 フ ァ ン の た め に

加 茂 川 幸

『美術家たちの証言─東京国立近代

美術館ニュース『現代の眼』選集』

参照

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