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浦安市人権施策指針(理念)の骨子案

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(1)

浦安市人権施策指針

理念

【 骨子案 】

平成 20(2008)年 1 月

(2)

1

目次

はじめに

1章 「浦安市人権施策指針」策定にあたって

1. 「浦安市人権施策指針」の目的 ・・・・・・・・・・・ 2 2. 「浦安市人権施策指針」の性格 ・・・・・・・・・・・ 2 3. 「浦安市人権施策指針」の構成 ・・・・・・・・・・・ 3 4. 「浦安市人権施策指針」の期間 ・・・・・・・・・・・ 3 5. 「浦安市人権施策指針」の基礎資料 ・・・・・・・・・ 3

2章 指針策定の背景

1. 人権をめぐる世界・国の動き ・・・・・・・・・・・・ 4 2. 浦安市の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3. 浦安市の主要課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

3章 基本理念と5つの基本方針

(3)

■ はじめに

「浦安市人権施策指針」は、基本理念と基本方針からなる「理念」と、施策・事業からなる「行

動計画」で構成されており、2007年(平成19年)度と2008年(平成20年)度の2ヵ年で策

定を進めます。2007年(平成19年)度は、その「理念」を取りまとめます。2008年(平成20

年)度において「行動計画」を定め、「浦安市人権施策指針」全体を策定します。

本案は、「浦安市人権施策指針」の「理念」にあたるものです。「理念」の検討にあたって、4

回の検討委員会及び2回の中学生分科会を開催したほか、人権と関わりのある個人および団体を

対象とした計12回のヒアリングを実施しました。本案は、そこで出された意見や課題、さらに

は、2007年(平成19年)3月にまとめられた「人権尊重のまちづくりに向けた市民意識調査報

告書(以下、人権意識調査)」の結果をもとに、人権に関する浦安市の現状を整理し、基本理念

(4)

3

浦安市人権施策指針」

策定にあたっ

1.

「浦安市人権施策指針」の目的

1948年(昭和23年)、国連で採択された世界人権宣言において、「すべての人間は、生れなが

らにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」という、人権の基本的な考え方 が示されてから、半世紀が経過しました。その間、日本においても、基本的人権を保障する日本 国憲法に基づいて、さまざまな人権に関する法律や制度の整備が行われてきました。

しかし、21世紀を迎えた今もなお、差別や偏見による人権問題が大きな課題として残っていま

す。また、IT社会(情報社会)や少子・高齢化など、社会の変化によって、人権問題はより複雑

化・多様化するとともに、新しい人権課題も発生してきました。そのため、これまでは高齢者や

女性、障がいのある人、子どもなど、個別に対応がなされてきた人権課題について、より包括的・

総合的に取り組む必要が生じています。

浦安市では、市政運営の基本的な指針として、「浦安市基本構想」を策定し、「人間尊重のまち

づくり」を基本理念の一つに掲げました。これは、市民一人ひとりがお互いの個性や価値観を尊 重し、心のふれあいとやさしさを育む人間尊重の精神に基づくまちづくりをめざすものであり、 浦安市が全事業を推進していく上での基本となる考え方となっています。

「人間尊重のまちづくり」に基づいて、誰もが互いの人権を尊重するまちづくりをより一層推 進していかなければなりません。そこで、人権課題に対する全庁的な取り組みを進め、その包括

的な解決をめざすことを目的として、「浦安市人権施策指針」を策定します。

2.

「浦安市人権施策指針」の性格

「浦安市人権施策指針」は、次の性格を有しています。

① 「浦安市基本構想」における「人間尊重のまちづくり」に基づく施策や事業について、基

本的な考え方などを示し、総合的・効果的に推進するものです。

② 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づく、国の「人権教育・啓発に関する

基本計画」や千葉県の「千葉県人権施策基本指針」との整合性を保ちつつ、浦安市の現状

から見られる特性を考慮に入れたものです。

(5)

市民・団体などに協力と参画を求め、浦安市全体で人権課題に対応していくものです。

④ 浦安市ですでに策定されているほかの指針や個別計画に対して、本指針の理念を踏まえる

よう求めていくものです。

⑤ 複雑化かつ多様化する人権課題に対応するために、包括的・総合的に取り組むものです。

⑥ 施策や事業の推進にあたっては、人権尊重の視点から、市職員をはじめ、福祉や教育など

の関係者が、人権感覚を身につけ、人権意識を高めていくよう求めるものです。

3.

「浦安市人権施策指針」の構成

① 「浦安市人権施策指針」は、「理念」と「行

動計画」とで構成されています。

② 「理念」は、浦安市が進めるすべての施

策・事業について、人権に関する基本的な

考え方や方向性を示すものです。

③ 「行動計画」については、人権と関連の深

い施策・事業を体系化したものです。

4.

「浦安市人権施策指針」の期間

「浦安市人権施策指針」の期間は、指針策定後、2009年(平成21年)度から2018年(平成

30年)度までの10年間とします。ただし、国内外の動きや市の取り巻く社会経済状況、社会構

造の変化に伴い、必要に応じて見直しを行います。

5.

「浦安市人権施策指針」の基礎資料

① 「人権尊重のまちづくりに向けた市民意識調査報告書」(2006 年度実施)および関係団

体・個人へのヒアリングの結果を参考としています。

② 「浦安市人権施策指針策定検討委員会」(計6回:2回の中学生分科会含む)の討議内容

を反映させたものです。

③ 「浦安市人権施策庁内推進会議」の討議内容を反映させたものです。

■「浦安市人権施策指針」の構成

理念

行動計画

施策・事業

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5

指針策定の背景

1.人権をめぐる世界・国の動き

「浦安市人権施策指針」は、世界や国の動きと密接に関わっています。そこで、人権について、

世界と国の動きを確認し、その潮流に基づいて浦安市の現状を整理していくことが大切になりま

す。

(1)世界の動き

1945年(昭和20年)、2つの世界大戦の教訓から、人類共通の課題としての世界平和を実現

するため、国際連合が創設されました。1948年(昭和23年)に開かれた第3回国連総会で、「世

界人権宣言」が採択されました。

この「世界人権宣言」の精神を実現するために、「国際人権規約」をはじめ、「あらゆる形態の

人種差別の撤廃に関する国際条約」、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、

「児童の権利に関する条約」など、人権に関する数多くの条約や宣言が採択されてきました。 その一方で、人種や民族、宗教などのちがいや政治的・経済的対立による紛争は、世界各地で あとを絶ちません。飢餓や貧困、難民問題、テロなど、深刻な人権侵害もいまだに続いているの が現状です。また、環境問題の深刻化に伴う食料や水・資源の不足など、人権を脅かす新たな危 機が発生してきました。

このような事態を受け、1993年(平成5年)、ウィーンにおいて「世界人権会議」が開催され、

「世界人権宣言」の理念である人権尊重の実現に向けて、社会的弱者に対する人権の強化や人権

教育の必要性が確認されました。翌1994年(平成6年)には、第49回国連総会にて、「人権教

育のための国連10 年」が採択され、各国政府が人権教育に取り組むための「人権教育のための

国連10年行動計画」が提示されました。

また、2004年(平成16年)4月、「人権教育のための国連10年(1995−2004年)」の終了を

うけ、第59 回国連人権委員会にて、「人権教育のための世界計画(以下、世界計画)」が採択さ

れました。

この「世界計画」は終了時限を設けず、3年ごとのフェーズ(段階)を設置し、各フェーズに

おいて行動計画を策定するものです。第一フェーズ(2005−2007年)では、初等中等教育に焦点

(7)

(2)日本の動き

日本において、人権の基礎となっているのが、日本国憲法です。日本国憲法では、第十一条で

「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、

侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」、第十二条で「この

憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければなら ない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用

する責任を負ふ」と定めています。また、第十四条第一項では、「すべて国民は、法の下に平等

であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係にお いて、差別されない」と定めています。

憲法の精神と国際的な流れを受け、国は、国際社会の一員として諸条約の批准を進める一方、 国内においては、同和問題や社会的に弱い立場の人への取り組みなど、差別撤廃に向けた取り組 みを進めてきました。

「人権教育のための国連10年」について、1995年(平成7年)12月には「人権教育のため

の国連10年推進本部」を設置。1997年(平成9年)に「『人権教育のための国連10年』に関す

る国内行動計画」を取りまとめました。2000年(平成12年)には、「人権教育及び人権啓発の

推進に関する法律」を制定。さらに、「人権教育・啓発に関する基本計画」を策定し、人権教育

と人権啓発に関する施策を総合的かつ計画的に進めています。

(3)社会の動き

世界や国の動きを受け、各地域においても人権問題の解決に向けたより一層の取り組みが求め

られています。しかし、地域によって、直面する人権課題はさまざまであり、すべての地域に当 てはまる万能の解決策はありません。

そうした中で近年、広まってきたのが、「新しい公共」という考え方です。これは、行政と市

民、NPO・NGO・企業などの団体が協働して公共サービスを創造し、ともに担っていくという

考え方であり、地方財政が厳しい状況下にあることと市民などの地域参画の高まりが呼応して生

まれたものです。3者の協働により、その地域を自由に創造できる点、つまり、地域に即した公 共サービスを提供できる点で、地方分権時代の幕開けを象徴するものと言えます。

現在、私たちの生活は大きく変わりつつあります。パーソナルコンピュータや携帯電話、それ

らを用いたインターネットの普及に伴うIT 社会(情報社会)の進展、少子・高齢化の進行、家

族形態や就業形態の多様化、国際化などによって、地域の様相は変化してきました。そうした中、

(8)

7

活格差などが指摘されるようになってきました。

それは同時に、従来より取り組みがなされてきた各地域特有の人権課題に加え、家庭や職場内 など、今まで見過ごされてきた人権問題が、深刻な問題として顕在化する可能性を示唆していま

す。また、さまざまな年代層における雇用の問題や、それによって起こる生活格差の拡大などが 新たな差別や偏見につながることも予想されます。さらに、ストーカーやインターネットによる

誹謗・中傷など、人格権の侵害と言われる新たな問題も発生しており、人権問題はますます複雑

化・多様化してきました。

そうした暮らしを取り巻く変化に対応するためにも、「新しい公共」に象徴される、地域の特

性を考慮したより幅広い考え方が求められているのです。

2.浦安市の現状

(1)浦安市の現状

浦安市は、1981年(昭和56年)4月の市制施行から27年を経過し、2007年(平成19年)

4月1日時点で、約15万4,500人が居住しています。2005年(平成17年)に行われた国勢調

査では、5年間の人口増加率が全国一になるなど、めざましい発展を続けています。一方、家族

構成は、三世代同居世帯が4.5%と少なく、核家族世帯が56.5%、単独世帯が38.4%と多くなっ

ています。また、外国人登録をしている人は、2007年(平成19年)3月末現在で、3,311人で、

外国人市民率も全国や千葉県と比べて高くなっています。

年齢階層別人口では、2006年以降、65歳以上の高齢人口が上昇し、高齢化率が2015年には

14.7%、2035年には26.7%になると予想されています。また、転入による子ども人口の増加(社

会増)は多いものの、子どもが生まれることによる人口増加(自然増)は横ばいの状態で、今後、

確実に少子・高齢化が進むことが予想されます。

こうした特徴をもつ浦安市において、子ども・高齢者・女性への虐待やDV(ドメスティック・

バイオレンス)、セクシュアル・ハラスメントなど、さまざまな人権問題が発生しています。た

とえば、児童虐待では、身体的虐待や心理的虐待、ネグレクトなどの対応件数は年々増加傾向に

あり、2006年(平成18年)度は、55世帯73人の児童が対象となりました。また、DVについ

ても、女性相談におけるDV相談者数は増加しており、2006年(平成18年)度は106人の相談

に対応しました。相談者の中には、身体的暴力や精神的暴力、経済的暴力など、深刻なケースも

見られます。また、2006年(平成18年)度における警察や民間シェルターと連携して解決を図

(9)

このような問題は、社会の変化に象徴される潮流が、浦安市においても顕在化し始めたことを 示唆するものです。それぞれの問題は、対応件数の観点では個別(子ども・高齢者・女性など)

となっていますが、その背景には、人に対する意識や人とのつながり、家庭問題、経済問題など、

より複雑かつ多様な要素が重なり合っています。そのため、根本的な解決のためには、相談者や

被害者への対応はもちろん、その背景にまで行き届く横断的な対策が必要になると考えられます。

言い換えれば、これらの点は、従来個別に対応してきた指針や計画に加えて、問題の根本に迫 る包括的・総合的な指針や計画が求められるにようになったことを意味しているのです。

(2)人権意識調査の結果から見た浦安市

浦安市の現状を市民の側面から見るために実施されたのが、「人権意識調査」です。以下は、「人

権意識調査」の結果から読み取れる浦安市の現状です。

■ 人権侵害の有無

「人権意識調査」によると、人権が尊重されていると感じる市民が全体で53.3%と、半数程度

であることがわかりました。また、人権侵害を受けたことのある人も全体で31.9%となっており、

これは内閣府が2007年(平成19年)に行った「人権擁護に関する世論調査(以下、世論調査)」

の結果(16.3%)よりも高いものになっています。

「最も強く感じた人権侵害への対応」(複数回答)として、全体では「家族や友人、上司に相

談した」が最も多く36.5%、次いで「相手に抗議した」が31.6%と続いています。しかし、その

一方で、「何もしなかった」が全体で28.0%あり、第3位となっています。

■ 人権問題に対する意識

「関心の高い人権問題」(複数回答)としては、1位が「子どもの人権問題」(47.5%)、次い

で「犯罪被害者などの人権問題」(44.6%)、「女性の人権問題」(43.8%)、「インターネット上で

の人権問題」(42.7%)となっています。一方、内閣府の「世論調査」では、1位が「障害者」(44.1%)、 次いで「高齢者」(40.5%)、「子ども」(35.0%)、「インターネットによる人権侵害」(32.7%)と

なっており、「世論調査」と比べ、市民が関心のある人権問題は異なることがうかがえます。

また、「人権尊重に向けて必要な心がけや行動」(複数回答)という設問において、「人権に対

する正しい知識を身につける」が全体で66%程度と最も高く、次いで「自分の権利ばかりでなく

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9

■ 人権問題の解決に向けて必要なこと

「人権尊重の社会に向けて必要な取組み」(複数回答)として最も高いのが、「教員、公務員や

福祉・医療関係者の人権意識を向上する研修を行う」で、全体で5割を超えています。次いで、

「人権が侵害された被害者への救済策を充実する」とする回答が全体で 41.3%、「学校や公民館

等において人権教育を充実する」が全体で 39.7%、「人権問題に関する相談のための機関・施設

を充実する」が全体で38.4%となっています。また、同設問では、「市民グループや民間団体が

行う啓発活動に対する支援を充実する」という回答が全体で約24%あり、市民からも民間団体の

役割への期待とそれに対する行政の協力を求める声が挙がっています。

また、「地域でのふれあいや助けあいが進んでいる」という設問について、「どちらともいえな

い」が5割を超え、「進んでいる」と肯定する意見は2割強となっています。「浦安市が『人にや

さしいまち』と感じる程度」も、地域によって異なり、元町地域では44.4%、中町地域では53.5%、

新町地域では63.8%となっています。

一方、中学3年生を対象とした意識調査の「人権尊重のために必要なこと」(複数回答)では、

「いじめや差別を受けたときに安心して相談する相手・場所があること」が全体で66.2%と、最

も多くなっています。

3.浦安市の主要課題

これまで述べてきた浦安市の現状や「人権意識調査」などに基づいて、課題を整理していくと、

以下の①〜⑤に集約することができます。「浦安市人権施策指針」では、これら①〜⑤を浦安市

における主要課題と位置付けます。

① 人権意識の高揚を図る上での課題

「人権意識調査」では、個々の人権問題に対する関心が国の「世論調査」よりも高い一方で、

人権に対する認識では、「一人ひとりの人権は、何よりも尊重されなければならない」とするも

のが若年層で低く、20代で4割程度であることがわかりました。

また、「人権に関する知識・情報を得た手段」として、約60%の市民が「新聞・雑誌・本」や

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アが発信する情報を読み解くための鋭敏さを養っていくことが大切です。

このようなことから、一人ひとりが人権の大切さや価値を理解し、人権が守られているかを直

感的に捉える感性と自他の言動に不当性や妥当性を感知する力を育むことが必要と言えます。ま

た、さまざまなメディアからの情報を一方的に捉えることなく、それらの情報を一度咀しゃくす ることも必要です。それを積み重ねていくことが、地域社会の中で、女性も男性も尊重されるべ

きだという価値観の醸成や障がいに対する理解の促進など、人権問題に対する認識の高揚につな

がります。

それと同時に、行政においても人権意識の高揚を推進していくことが大切です。このことは「人

権意識調査」からも、浦安市の職員などの人権意識の高まりを求める市民が多いことが示されて います。そこで、啓発・教育という点において、市民と職員が共に人権意識を高めていくことが 重要になります。

② 安心して相談できる場所の確保と人権侵害への対処の課題

■ 安心して相談できる場所の確保

前述したように、浦安市では、DV被害や子ども、高齢者の虐待などについて、市のそれぞれ

の相談機関への延べ相談件数は、年々増加傾向にあります。この傾向は、市の広報や知人、警察 からの紹介などを通じて、相談機関の存在が徐々に知られるようになってきたことで、相談窓口 が身近になってきたことが要因のひとつに挙げられます。

しかし、「人権意識調査」では、一般市民の「最も強く感じた人権侵害への対応」として、「市

の相談機関に相談した」は全体で4.9%、「弁護士に相談したり、訴えた」が全体で3.6%、「市以

外の相談機関や人権擁護委員に相談した」が全体で 2.6%であることがわかりました。一方、中

学3年生においても「悩みの相談相手」として、「スクールカウンセラーに相談した」が全体で

3.0%、「市役所などの公的機関に相談した」が全体で0.7%、「電話相談室などに相談した」は全

体で0.6%となっています。

これは、相談に訪れることができない市民が数多く存在している可能性を示唆するものです。

事実、一般市民を対象とした「最も強く感じた人権侵害への対応」では、「何もしなかった」が

全体で28.0%であることがわかりました。また、中学3年生のうち、「悩みの有無」という設問

で「ある」と回答した人を対象にした「悩みの相談相手」では、「誰にも相談できなかった・相

談していない」が全体で20.7%となっています。また、学校などでは、環境に馴染めず、居心地

の悪さを感じる、疎外感や孤独感などを抱いている子どもがいることも報告されています。

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11

とのできる環境の整備が欠かせません。そこで、市民の利便性を考え、人権に関するさまざまな 相談に対応できる窓口を充実させることが必要です。

■ 緊急時などの対処の仕組み

「人権意識調査」の結果から、浦安市では3人に1人が何らかの人権侵害を受けたこと、その

対応として、「何もしなかった」人が約3割いることがわかりました。市民の意識から、人権侵

害の被害者に対する救済が求められていることもわかりました。

暴力や虐待、ストーカーの被害を受けた人が一時的に避難できる場所は、人権と生命を守る上 で、欠かすことのできない大切なものです。そうした一時的避難場所を整備・充実させることが 必要になります。また、災害時などで起こる人権侵害に対しても、迅速に対処できる仕組みづく りが求められます。

こうした緊急事態に対応するためには、市と関係機関との連携が欠かせません。人権侵害とい う緊急事態の中で、適切かつ的確に対処するためには、状況に応じて、どの部署または機関がイ

ニシアティブを取るか、そのイニシアティブに基づいて、関係機関がどのように動くかなど、連 携体制を整えていくことが必要です。

③ 「自分らしい」暮らしを営む上での課題

社会的に弱い立場に置かれている人たちの人権を守るためには、その人たちが「自分らしく」

生きていくことを選択できるよう支援していく必要があります。自分らしく生きるという選択肢

は、安心・安全な場所に住むことや経済的自立をめざすこと、地域社会などへ参加することなど、

さまざまな方法が挙げられます。そのような選択肢を広げていくことが、個人が自らの尊厳を守 ることにつながると考えられます。

たとえば、「人権意識調査」において、「女性の人権を守るために必要なこと」では、「結婚、

出産、育児、介護が女性の労働の継続性の障害とならないような環境を整備する」が全体で72.3%

となっています。「高齢者の人権を守るために必要なこと」では「高齢者が生涯学習や社会活動

などに参加できるよう機会を増やす」が全体で60%を超えて最も多くなっており、「障がいのあ

る人の人権を守るために必要なこと」でも「障害のある人が自立して生活しやすい環境にする」

が全体で70%以上となっています。そうした環境や機会を提供していくことは、個人が尊厳ある

暮らしを営む上で、大切なことであると言えます。

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大切になります。

このようなことから、浦安市において、社会的に弱い立場に置かれている人たちが、自分らし く生きていくために、持続的な支援を行っていくことが重要になります。シェルターなどに一時

避難したあと、安心して身を置き社会復帰をめざせる場(ステップハウスなど)や、介護を必要 とする高齢者や障がいのある人が専門スタッフなどの援助を受けながら地域社会に溶け込んで 生活する場(グループホームなど)などへの支援は、大きな課題と言えます。また、経済的自立 を促すための就労支援や就労の受け皿である企業などへの働きかけも課題として挙げられます。

④ 人にやさしいまちをつくる上での課題

「人権意識調査」の結果から、地域でのふれあいや助けあいが進んでいると感じている市民は、

2割弱であることがわかりました。また、浦安市が「人にやさしい」と感じる程度も、地域によ って異なることがわかりました。

これらは、助けなどが必要な場合でも、市民が孤立してしまう可能性があることを示唆するも のです。たとえば、少子・高齢化、核家族化が進む現在、地域にサポートする仕組みがないと、

日常生活において、交流する機会が少なくなり、地域でお互いを支え合うことが難しくなります。

それによって、本来は防げるはずの人権問題の発見が遅れてしまうかもしれません。

また、災害時などで新たな課題が発生することも考えられます。たとえば、個人情報保護の観 点から、個人の所在地を特定しにくい状況にあるため、災害時における高齢者や障がいのある人 の緊急避難を行うことが難しいという声が挙がっています。

このようなことから、誰もが住みやすいと感じることができるまちづくりを進めていくことが

大切になります。その際、市民一人ひとりが、地域全体でともに暮らし、支え合う仲間と感じら れる環境を整えていく必要があります。

⑤ 推進体制における課題

「人権意識調査」の結果から、教員、公務員や福祉・医療関係者の人権意識の向上を求める意 見が多いことがわかりました。

その一方で、近年の社会状況の変化に伴う人権問題の複雑化・多様化により、従来の縦割り体

制では、今日の人権問題に対応することが難しくなっています。特にDVや高齢者、子どもへの

虐待など、複数の機関が連携を取らなければいけない事態においては、行政の連携の強化や情報 の共有化が求められます。

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基本理念と

つの基本方針

1.基本理念

浦安市の人権を取り巻く状況は、社会経済の急速な変化に伴い、ますます複雑化・多様化して

います。「人権意識調査」の結果においても、人権問題に対する意識や人権侵害への対処などに

ついての課題が示されました。こうした現状を踏まえ、市民一人ひとりがお互いの人権を尊重し、

安心で安全な暮らしを実現させるための道筋となるものが、「浦安市人権施策指針」の基本理念

です。

この基本理念は、市民一人ひとりが人権についての正しい理解と知識を身につけ、自らの権利 とともに、他人の権利についても等しく尊重していくことを大切にします。自他を認め合う環境

は、人間らしく生き、自分らしく生きることにつながります。そうした尊厳のある暮らしを誰も が営むとともに、地域の中でともに支え合うことは、共生を生み出します。

これらの点に基づき、「浦安市人権施策指針」の基本理念は、「市民一人ひとりが、互いの人権

を尊重し、人間としての尊厳をもって暮らすことができる共生のまちづくり」を掲げます。

基本理念

市民一人ひと

が、

互いの人権を

尊重し

人間と

ての尊厳を

(16)

15

2.

「浦安市人権施策指針」体系図

上記で述べた基本理念と後述の5つの基本方針をまとめ、「浦安市人権施策指針」を体系的に

示した図が、下記になります。

3.

「浦安市人権施策指針」における5つの基本方針

複雑化・多様化する人権課題に対応するため、基本理念に基づき、さまざまな施策・事業に取 り組む必要があります。そこで、これらの施策・事業についての具体的な考え方や方向性をまと めたものが5つの基本方針です。

基本方針1から基本方針4までは、人権課題の解決に向けた一連の流れを構成するものです。

基本方針(案)基本方針

①互いを認め合う意識づくり

②人権を守る仕組みづくり

③自分らしく生きるための環境づくり

④人にやさしい共生のまちづくり 基本理念

⑤人間尊重のための体制づくり

※ 基本方針⑤は、基本方針①〜④を支えるものです。 市民一人ひとりが、互いの人権

を尊重し、人間としての尊厳を

もって暮らすことができる共生

(17)

具体的には、基本方針1では市民・市職員などの人権意識を高める啓発、基本方針2では相談や

緊急避難などの人権を守る仕組みの整備、基本方針3では人権を守るための持続的な支援の推進、

基本方針4では市民・団体・行政の連携を推進し、浦安市全体で人権課題について取り組んでい

くことをめざしていきます。これらの流れを受け、1から4の基本方針を推進するにあたっての 体制を示したものが、基本方針5となります。

基本方針1:互いの人権を認め合う意識づくり

「人権教育・啓発に関する基本計画」において、国は人権の普及・推進にあたり、「すべての

人々の人権が尊重され、相互に共存し得る平和で豊かな社会を実現するためには、国民一人一人

の人権尊重の精神の涵養を図ることが不可欠であり、そのために行われる人権教育・啓発の重要 性については、これをどんなに強調してもし過ぎることはない」と掲げています。

自らの権利についての知識を身につけ、それと同時に人々の多様性を知ることは、人間尊重に

向けた第一歩であると言えます。その一歩を踏み出すことで、「自分らしく」生きる力と他人を

思いやる気持ち、それぞれの個性を受け入れる心が育まれます。

しかし、人権を知る・学ぶことは、難しいこと、自分とは無縁なことと受け止められてしまう ことがあります。その際、日常的な言葉、身近な表現を用い、対話するような身近さで人権への

理解を深め合う、「対話型の人権感覚」が大切になります。「基本方針1:互いの人権を認め合う

意識づくり」では、あらゆるライフステージにある人が参加でき、人権課題についての理解を深 めることができる啓発活動を推進し、人権意識の高揚を図ることが大切です。

基本方針2:人権を守る仕組みづくり

市民一人ひとりが自分の人権を守り、たくましく生きるためには、自分の感じていることを他

人に伝える力も必要になります。これは、顕著な人権侵害が起こったときに、特に必要な力です

が、その力を発揮するためには、「自分の言葉で言える環境」があるかどうかが大切になります。

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17

において、相談に訪れる市民との信頼関係を築くことは、市民との継続的なつながりを維持し、 事態の深刻化を未然に防ぐ上で、何よりも大切なこととなります。

一方、DV被害や高齢者、子どもへの虐待、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメ

ントなどは、家庭や職場などの閉じられた空間で発生することが多いため、市と関係機関や団体 とのより密接な連携が重要になります。また、暴力や虐待、ストーカー被害などを受けた人が速 やかに避難できるよう、さまざまな状況に対して柔軟に対応できる避難場所の整備・充実が欠か せません。災害などの緊急時に起こる人権侵害についても、対処の仕組みを整備していく必要が あります。

このようなことから、自分の言葉で安心して相談することができる場所と、万が一、人権侵害

や災害が発生した際の避難場所を確保することが大切と言えます。そこで、「基本方針2:人権

を守る仕組みづくり」では、市民の誰もが気軽に自分の言葉で自分の気持ちを話すことができる、

初期の段階での対応と、暴力や虐待などが実際に起こったときの避難場所の確保など、緊急の段

階での対応という2段階で人権を守る仕組みを整備していくことが大切です。

基本方針3:自分らしく生きるための環境づくり

人権を考える上で、大切なことの一つは「私たち一人ひとりには、安心して安全に暮らす権利 がある」ということです。ここで欠かせないのが、市民一人ひとりが、日々の生活をどう過ごし たいかを自ら選び、決定し、生きていくことです。

その際、常に自分のことを自分一人で解決することが大切とは限りません。自分らしく生きる ためには、ときには周囲の支援が必要になることもあります。そうした支援を受けながらも、自

分の意志で、自分らしい暮らしを営んでいくことは、尊厳のある自立した生活と言えるでしょう。

しかし、暴力や虐待などの被害を受けた人にとって、被害がおよぼす精神的苦痛などから立ち 直り、自分らしい生活を営むことは、容易なことではありません。その過程には、心のケアはも ちろん、住居や経済的自立など、さまざまなことを乗り越えていかなければならないからです。

また、社会的に弱い立場に置かれた人たちは、社会における力関係などで、自己決定権を十分 に発揮することができず、自己実現の機会が限られてくる可能性があります。そのような状況を いち早く脱し、安心して自己決定権を発揮することができるよう、支援していくことが大切にな ります。

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可欠です。そこで、自立した生活をめざす人たちをより一層支援するために、その人たちを支え る家族や団体などの負担を軽減することも必要になってくると考えられます。

これらの点を勘案すると、誰もが尊厳を持って暮らすためには、二つの側面があると言えます。

一つは個人が自分らしく生きることができるよう支援することであり、もう一つはそれをサポー

トする家族や団体などを支援することです。「基本方針3:自分らしく生きるための環境づくり」

では、浦安市全体として、市民一人ひとりが自分らしく生活できるよう、個人・団体の両面から、

持続的に支援していくことが大切です。

基本方針4:人にやさしい共生のまちづくり

お互いが人権を尊重し合うことは、「人にやさしいまち」をつくる「まちづくり」そのもので

あると言えます。そうした「人にやさしいまち」をより目に見える形で実現させるためには、市 民・団体・行政の3者による協働が欠かせません。

その際、まず検討しなければいけないことが、市民・団体・行政の3者が対等に、そして自由

に人権のまちづくりについて議論できる環境を整備することです。その議論をとおして決まった

ことを、3者がそれぞれの役割分担で実行できる仕組みづくりも大切と言えます。市民・団体・ 行政が協力することで、悩みや不安を抱えている人が、地域の中で孤立してしまう前に、支援の 手を差し伸べることができるようになります。

また、浦安市は、元町地域・中町地域・新町地域の三つの地域から構成されており、それぞれ の地域に地域性があるのも特徴です。これらの地域の特性を考慮に入れつつ、地域内および地域 を越えた全市的な連携を促進し、人権のまちづくりを進めていくことが必要になります。

そこで、「基本方針4:人にやさしい共生のまちづくり」では、誰にとっても住みやすいまち

をめざして、市民・団体・行政の連携による人権のまちづくりを進めていくことが大切です。

基本方針5:人間尊重のための体制づくり

人権擁護行政を担当するのは、法務省や人権擁護委員だけではなく、自治体の執行機関もその

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これまで、浦安市では、女性や子ども、高齢者、障がいのある人などの個別人権課題について は、担当部署ごとに施策を講じてきました。しかし、個別人権課題を横断的に関係する課題への

対応については、十分でない状況があります。たとえば、女性や子ども、高齢者のDVや虐待な

どに関する問題は、その背景に個人の人権意識や家族内の経済的・精神的力関係など、さまざま

な要因が絡み合い、発生していることがあります。また、インターネットによる誹謗・中傷など、

新たな対策が求められる問題も発生しています。

このように複合化・多様化する現在の人権問題を解決するには、包括的な視野を持って関係部 署が連携し、全庁的に取り組まなければなりません。また、その際は、担当する個別の人権課題

のみに注力するのではなく、ほかの人権課題も視野に入れた取り組みへと転換していく必要があ

ります。

そこで、「基本方針5:人間尊重のための体制づくり」では、基本方針1から4を支えるため、

浦安市の推進体制を整備し、すべての部署おいて、人権の視点を取り入れていく「人権の主流化」

参照

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