塩﨑紀子/知って,話し合って,深めて,述べる
81 1.授業の目的
新聞を読んで,それぞれの主題に特徴的な話の組み立てや表現方法,語彙を学習すると ともに,背景知識を整理し,新聞メディアの解読をめざす。また,グループや全体討議を 通じて,多角的な視点を持つことで,自分の考えを深め,意見が述べられるようになる。
2.学生の傾向
毎学期,受講理由をたずね,授業に反映させるように努めているが,ここ数年は,日本 語力の向上やメディアリテラシーに加えて,他の学生の意見を知りたいという学生が増え ているように思う。実際の授業でも異なる見方に関心を深めていることがわかる。
3.授業の概要 3‑1.授業の進め方
日本語教師として学んでもらいたい事柄と学生の要望・知的関心を実現するという点か ら,授業を
3
つの作業タイプに分け実施している。1.
教師が選んだ記事を教師作成のワー クシートに沿って精緻に読んで,日本語の知識を得るとともに,新聞記事の読み方を学び,要約と意見述べの基本作業をする。適宜,意見をコースナビにアップする。2
.
ひとつの テーマについて,複数の新聞社の記事や主張を読み,伝え方や表現を比較・分析して,特 徴を知る。この作業はペアやグループで1
誌を担当し,レジュメを用意して分析結果を報表 1 2015 年度春学期 学生の受講理由
タイムリーな話題について知りたい。 日常会話以外の語彙,特に漢語を知りたい。
日本で今起こっている事件について知りたい。 読む力をつけたい。
他の人の意見を聞きたい。 記事を読みながら,単語を学びたい。
いまホットな話題について議論したい。 新聞の読み方を知りたい。
常識を身につけたい。内容を自力でまとめられ るようになりたい。
一人では読みにくい。基本的な読み方を知りた い。
辞書を使わずに読んで,分析できるようになり
たい。 新聞を楽しく読めるようになりたい。
先生とみんなの意見を知りたい。 新聞を読んでいなかったので,読みたい。
記事を読んで,解説を聞き,深く知りたい。 国で記者をしていたので,日本の新聞に興味が ある。
早稲田日本語教育実践研究 第 4 号 【実践紹介】
知って,話し合って,深めて,述べる
―「新聞を読む」の実践―
塩﨑 紀子
科目名:新聞を読む
レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7・8 履修者数:15 名〜 20 名(2012 年春〜 2015 年春)
早稲田日本語教育実践研究 第 4 号/ 2016 / 81―82
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告する形で実施。3
.
学生個々が関心のある記事を選び,内容のまとめと選んだ理由・意見 を発表し,質問に答える。発表について,「発表者への質問・意見」「発表のしかたについ ての感想」という2
点から他の学生のフィードバックを受ける。教師は,1に関してはク イズを実施し,3に関しては評価表に点数とコメントを付して,成績対象としている。3‑2.どのような記事を読むか
学生が紹介する記事が比較的身近な話題のものが多いことを考慮して,教師が選ぶ場合 は,政治・社会・文化などの分野で,多角的に議論ができるような記事を選んでいる。
4.学生の反応,取り組み方
自分の見方を持ち,意見をしっかり述べる者に学生たちも触発されるようで,グループ 討議でも異なる見方が出るグループほど活発な議論を行っている。よい意味での「教師無 視」が心地よく感じられるほどである。反面,自分の意見が持てない者はもどかしく感じ るようで,授業の後でどうしたらいいか尋ねてくる学生もいた。アンケート結果などから も学生たちはよく努力していることがうかがわれた。
5.課題
何を言っているのかわからない日本語になってしまう学生をどのように指導するか。教 室が複言語的になっているのはよい状況だと思うが,発言が理解できないほどだった場 合,どのように関わっていくか,模索していきたい。
(しおざき のりこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
表 2 2015 年度春学期に扱った記事と作業タイプ
記事の内容 新聞社名の略称 選択者 作業のタイプ
渋谷区同性パートナー条例成立 毎日,東京 教師 作業1
自民党,放送局を聴取 毎日,朝日 教師 作業1
沖縄問題 朝日,沖縄タイムス,フランス特
派員記事 教師 作業2
戦後70年
47ニュース,ドイツ特派員記事,
Japan Times,New York Timesの 日本語翻訳版
教師 作業2
安保法制,違憲判断 毎日,朝日,琉球新報 教師 作業2 私大生生活費1日897円,ブラッ
クバイト,労働者派遣法改正 朝日 教師 作業1
私の紹介したい記事 朝日,読売,産経,日経,毎日他 学生 作業3