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TV-CM ソウキ ヲ タカメル ヒョウゲン シュホウ ノヨウイン

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

TV-CM ソウキ ヲ タカメル ヒョウゲン シュホウ ノ ヨウイン

吉田, 博則

九州大学芸術工学府デザインストラテジー専攻博士後期課程

https://doi.org/10.15017/20278

出版情報:Kyushu University, 2010, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第 5 章  商品想起か商品好感度か 

   

 

1. TV-CM におけるストーリー要素の研究   

1-1. TV-CM のストーリー要素 

  生活者は、テレビのスイッチを入れた後、日常生活の他の行為と平行して TV-CM と接 している。TV-CM の表現内容に好感を持てば大きな注意を払うし、そうでなければいつ でも TV-CM から目を離すことができる。 

  一方、企業はマーケティングの一環で自社の商品を購入する可能性が高い生活者の層、

つまり購買層を特定している1。そこで TV-CM の制作者は、購買層の興味の対象を把握 した上で、商品を紹介するにあたり、どのようなストーリー要素がふさわしいか検討を 重ねている。その後 TV-CM の登場人物、状況設定、ドラマ展開などが決められる。単に 商品映像を提示して、その特性をアピールするだけの TV-CM では、生活者が情報として 処理しないで見過ごしてしまう可能性が高い。 

  ストーリー要素の役割は、まず TV-CM に好感を持ってもらうことにあり、商品の想起 を促すものではないような印象を受ける。しかし、商品を覚えるきっかけを与えている ようにも思われる。そこで、TV-CM におけるストーリー要素の役割は、商品想起を促す ことにあるのか、商品好感度を高めることにあるのかを検証する必要がある。 

1-2.  ストーリー要素の役割

  TV-CM においては、15 秒や 30 秒の短時間提示の中で、登場人物の背景、状況設定、

そしてストーリー性を効果的に表現することが求められる。そこで、映画やテレビドラ マなどの長い時間軸を持つ映像コンテンツのストーリー性とは異なり、TV-CM の制作者 は、生活者が瞬時に理解できるようなストーリー要素の表現を心掛けている。短時間提

1 フィリップ・コトラー(2002)は、消費者市場の細分化基準を示している。①地理的変数「地域」「都市」

「人口密度」「気候」等。②人口統計学的変数 「年齢」「世帯規模」「家族のライフサイクル」「性別」「所 得」「職業」「教育水準」「世代」等。③サイコグラフィックス(心理的)変数「ライフスタイル」「パーソナ リティ」④行動・態度変数 「オケージョン」「ベネフィット」「使用頻度」「購買準備段階」等。引用文献:

フィリップ・コトラー著,恩蔵直人監修,月谷真紀訳『コトラーのマーケティングマネジメント』ピアソン・エ デュケーション, 2002, p.182

(3)

示の中で、生活者の興味や生活実感を描いて商品への共感を高めることをねらっている。 

TV-CM の制作過程において、制作者が意図したストーリー要素の表現が、どのように商 品関連要素に影響を与えているのだろうか。 

  本章では、TV-CM の商品に先行するストーリー要素が、商品想起や商品好感度 ( favorable rating )2に与える影響について明らかにする。 

  まず、既存の TV-CM におけるストーリー要素の構成要素を分類して、それぞれの特性 を検討する。次に、簡略化したストーリー要素と商品外観映像を連携した映像を制作し、

心理実験(  再認テスト、嗜好テスト  )を実施する。 

  本章の実験で被験者は、一回の視聴体験をした後に、再認テストと嗜好テストをおこ なう。これは、商品想起と商品好感度との関係性を明らかにすることにつながる。この ような認知実験を組み立てた理由は、TV-CM の制作過程において、TV-CM の目的が商 品想起なのか、商品好感度を高めることにあるか議論されることが多いからである。本 実験は、この問題について一定の指針を示すという意義をもっている。 

  また、TV-CM は企業の商品・サービス内容によって表現手法が違っており、TV-CM 全般に共通する因子を抽出して研究対象とすることは難しいこととされてきた。本章は、

ストーリー要素は商品に関連する映像に帰着するという今までの研究にない視点で、

TV-CM 研究の新たな可能性を示すという意義を合わせもっている。 

 

1-3.  好感度に関する研究の例 

CM 総合研究所の代表、関根建男は、2001 年 1 月から東京キー5 局でオンエアされる 全ての TV-CM の出稿状況を 24 時間 365 日データ構築した。このデータを基に CM ミ ート率の算出、テレビ視聴パターンの特定、「CM 評価」と「ブランド評価」の定点観測 調査を行なっている。この中でも CM 評価の一環としての CM 好感度調査では、その TV-CM は生活者に受け入れられたのか否か、どの程度どんな理由で好きにさせたのか、

商品を欲しくさせたのかなど、それぞれのデータを集計して広告主に提供している。生 活者 3,000 人を対象に毎月行なわれる質問紙法による調査である。対象となる生活者か ら、毎月好感の要因を採取することで、好感度を割り出している。 

  この研究は好感度に関する精度の高い情報を提供しているが、TV-CM において、どの ような表現手法がこれらの好感を生み出しているかという因果関係までは言及していな

2   好感度( favorable rating )とは、消費者の意識調査のなかで、その会社の商品・サービス、あるいはその会 社の活動そのものに、どの程度好感を持っているかどうかを調べたもの。

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い。 

  この他に、TV-CM の好感度調査には、タレント好感度、ブランド好感度、商品好感度 などがある。これらの求め方は、全体の有効回答者の中で、好きと答えた人の割合を表 しており、好感を引き起こす要因に対する分析はなされていないのが現状である。 

 

2.  ストーリー要素の分類   

  本研究では、2009 年 1 月から 2010 年 9 月までの間、関東 30 キロ圏でオンエアされ た TV-CM  328 本3、並びに 2009 年第 48 回 ACC グランプリ 103 本、2010 年第 49 回 ACC グランプリ 75 本4の分析を試みた。その結果、TV-CM のストーリー要素は、次の ように分類できることがわかった。 

 

①ストーリー要素の主役が人物の場合 

②ストーリー要素の主役が食べ物の場合 

③ストーリー要素の主役が動物の場合 

④ストーリー要素の主役が架空のキャラクターの場合 

⑤ストーリー要素が無い場合  (  商品が主役の場合  ) 

これらの分類を具体的な TV-CM の例で確認してみたい。 

 

2-1. ストーリー要素の主役が人物の場合 

    例として、2007年から全国オンエアされたTV-CM「ダイハツ・タント・子育て満開シリ ーズ」を取りあげる。タント(Tanto)は、ダイハツ工業が販売しているワゴンタイプの軽自 動車である。子育てする夫婦にとって便利な工夫が随所に施されている。車内空間が広々 としており、荷物を持ったままでも乗り降りがスムーズにいくように、センターピラー5が 付いていない。パパ役にユースケ・サンタマリア、ママ役に小池栄子が抜擢された。いず れも購買層に人気が高いタレントである。この商品のコンセプトは、「子育てを手伝うパ パ」である。購買層の生活実感をストーリー要素に取り込んで高い好感を得た。 

3 CM データバンク制作 TV 番組『CM インデックス』CS 放送オンエア, 2009.1〜2010.11

4   財団法人全日本シーエム放送連盟編集『ACC 2008 48th CM festival 入賞作品』『ACC 2009 49, th CM festival 入賞作品』

5 自動車の屋根を支えるための柱のことである。

(5)

    公園でママとパパは、息子のオムツの異臭に気づく(図.5-1のショット 1)。パパは紙オ ムツをすぐに取り出し、自分がオムツ交換をすると張り切っている(図.5-1ショット2)。

これらは商品に先行するストーリー要素である。その後にセンターピラーのない広々と した車内空間で、パパはオムツを交換する(図.5-1ショット 3)。これは商品関連要素であ る。 

  この商品の TV オンエアは週末の提供番組を中心に投入された。子育てしている夫婦や、

これから出産を控えた夫婦が、このようなストーリー要素に接すると、この商品に対す る好感度をあげて、後に商品を想起する可能性が高まる。 

2-2.  ストーリー要素の主役が食べ物の場合

  例として、2007 年から全国オンエアされた「霧島酒造・黒霧島・九州の味とともに」

を取りあげる。本格芋焼酎伝来の地、南薩摩の霧島酒造が製造した「黒霧島」は、有機 栽培のさつまいもと自然水から作られている。また、焼酎は、食前酒であり、食中酒で あり、食後酒でもある6。この特性を活かして「九州の味とともに」シリーズが生まれた。

博多の「あぶってかも(スズメダイの塩焼き)」、有田の「呉豆腐(ニガリを使わない豆腐)」、 大分県佐賀関の「関アジ(速い潮流で育ったアジ)」、そしてここで紹介する鹿児島の「黒 豚しゃぶしゃぶ」である。 

6 薩摩酒造公式サイト「焼酎を知る」を参照した。引用サイト:http://www.satsuma.co.jp/con-index-shiru.html ショット

ナンバー 構成要素 映像

1

ストーリー要素:

  ママとパパ、 

  息子のオムツの異変に    気づく。 

2

ストーリー要素:

  替えのオムツを出して    パパは、交換は自分が    すると張り切っている。 

3

商品関連要素: 

  タントの 

  ピラーレスで広々とした    空間を紹介する。 

図.5-1    TV-CM  「ダイハツ・タント・パパ上達篇」 

(6)

  茹でた後の黒豚をポン酢につける様子(図.5-2 ショット 1)と、黒豚の食材が食卓の大 皿に盛りつけられている様子  (図.5-2 ショット 2)は、ストーリー要素である。その後に グラスに注がれる焼酎の液体の流れ(図.5-2 ショット 3)と商品ディスプレイショット (図.5-2 ショット 4)は、商品関連要素である。このように、ストーリー要素から商品関 連要素へと生活者の視点を誘導している。 

  本来食材や料理は、生活者にとって共通する興味の対象である。このように、食べ物 を主役としたストーリー要素は、特上の美味しさを求める本商品の購買層の関心を促す ことを担っている。 

2-3.  ストーリー要素の主役が動物の場合 

  例として、2007 年から全国オンエアされた「ソフトバンクモバイル・ホワイト家族 24・白戸家シリーズ」を取りあげる。ホワイト家族 24 とは、日本国内における家族間の 通話がソフトバンク同士の場合 24 時間無料になるサービスである。ドラマの中でこの機 能を伝えるために登場人物は家族のメンバーになっている。娘役に幅広い層に人気が高 い上戸彩、母役に樋口可南子、兄はなぜが外国人、そして父は、白い犬で北大路欣也が 声のみを演じている。 

  ここに紹介するのは、さらにソフトバンク同士であれば家族に加え、友達にも 24 時間 無料サービスが可能な「ただともプラン」である。 

ショット

ナンバー 構成要素 映像

1 ストーリー要素: 茹でた後の黒豚をポン酢 につける様子。 

2 ストーリー要素: しゃぶしゃぶ用に切った 黒豚の鮮やかな質感。 

3 商品関連要素: グラスの氷に、焼酎が注 がれる。 

4

商品関連要素: 

黒豚の隣にロックとその後 ろに黒霧島の一升瓶がディ スプレイされている。

    図.5-2    TV-CM  「薩摩酒造・黒霧島・黒豚しゃぶしゃぶ篇」 

(7)

  日常ありふれた家族の団らんの風景であるが、何故か父は白い犬である(図.5-3 ショッ ト 1)。父の友達の話題から、父が昔の仲間と今も「ただとも」を続けていることをつい 告白してしまう(図.5-3 ショット 2)。白い犬の父はさっそうとサーフィンをしている (図.5-3 ショット 3)。これらはストーリー要素である。これらの後に提示される「ただ とも・ソフトバンク」の企業ロゴ(図.5-3 ショット 4)は、商品関連要素である。 

  家族同士の会話の中で商品を紹介するだけでは、生活者の好感を引き出すことは難し い。よって、この TV-CM においては、お父さんをホワイト家族のシンボルである白い犬 に置き換えることによって、商品の機能をユーモラスに紹介する新しい表現手法が生ま れた。動物を主役にしたストーリー要素が幅広い購買層の商品好感度を高めて、商品想 起につながった好例である。 

2-4.  ストーリー要素の主役が架空のキャラクターの場合 

  例として、2010 年 5 月から全国オンエアされた「花王・クリアクリーン・家族のクリ アクリーン」を取りあげる(図.5-4)。 

  小中学生の 4 割が、又大人の 5 割が歯肉炎という事実を、頭が歯になっている家族の キャラクターが告知して、クリアクリーンの使用を奨励している。歯の機能を解説する

ショット ナンバー

構成要素 映像

1

ストーリー要素: 

家族の団らん、 

父は白い犬。 

 

2

ストーリー要素: 

父が友達について語る。 

 

3

ストーリー要素: 

ハワイでサーフィンした  頃を回想する。 

 

4 商品関連要素: サービス商品としての 

ただともプランの紹介。 

 

図.5-3    TV-CM「ソフトバンク・ただとも・ハワイ篇」 

(8)

だけでは、購買層の好感や商品想起が得られないと考え、新しいキャラクターを生み出 した。 

2-5.  ストーリー要素が無い場合 

  例として、2009 年 10 月から全国オンエアされた「ペンタックス・K-x・100color」

を取りあげる  (図.5-5)。 

  ペンタックス K-x は、動画撮影可能なデジタル一眼レフカメラで、100 種類のカラー

ショット

ナンバー 構成要素 映像

1

ストーリー要素:

  日常空間に、 

  歯のキャラクター家族。 

2

ストーリー要素:

  歯並びの抽象空間で、 

  歯のキャラクター家族    が解説する。 

3

商品関連要素: 

  商品ロゴと 

  歯のキャラクター家族。 

図.5-4    TV-CM  「花王・薬用クリアクリーン・家族のクリアクリーン篇」 

ショット

ナンバー 構成要素 映像

1

商品関連要素:

  白の商品の後ろから、 

  いろんな色の商品が    見えてくる。 

2

商品関連要素:

  同一商品の 

  カラーバリエーションが    紹介される。 

3

商品関連要素: 

  カラーバリエーションは    さらに増えていく。 

図.5-5    TV-CM  「ペンタックス・K-x・100color 篇」 

(9)

バリエーションから自分好みの配色を選ぶことができる。白の商品が 1 台登場した後、

その後ろに赤、ピンク、緑、青、黄色の商品が次々と現れる。さらにカラーバリエーシ ョンが増殖していく様子を映像化している。ここには、ストーリー要素は存在せず、抽 象空間の中で商品そのものが主役である。商品コンセプトをそのまま表現することで、

購買層の好感と商品想起を狙っている。 

  ここで紹介した 5 つのストーリー要素の表現手法の中で、今日の TV-CM で多く用い られているのは、次の 3 種類である。 

①ストーリー要素の主役が人物の場合 

②ストーリー要素の主役が食べ物の場合 

③ ストーリー要素の主役が動物の場合 

  また、これら3種類の主役は、比較対照するときにその差が明解であるため、本研究 の実験材料の基本的な表現要素として採用した。 

 

3.    ストーリー要素に後続する商品の想起及び好感に関する実験   

3-1.  ストーリー要素の表現手法 

  既存の TV-CM におけるストーリー要素の表現手法は多岐に渡り、その被写体の種類も 多様化している。既存の TV-CM を実験の材料として用いると、表現の「変数」が多すぎ るため、商品好感度に与える影響を特定することが難しい7。そこで表現手法を簡略化し たストーリー要素を 3 グループ作成した。ストーリー要素を構成するショットをストー リー関連ショットとよぶ。 

  まず実験用のストーリー関連ショットは、単独ショットの静止画とした。つまりカメ ラの画角や被写体が動かないフィックス8の状態である。さらに変数を最小限にするため に次の基準を設けた。①被写体の背景は白である。②被写体は TV-CM で一般的に見られ る素材である。③表現モチーフ9が明解で瞬時にストーリー性が理解できる。そして他グ

7 ここでの「変数」とは、TV-CM における状況設定、ドラマ展開、色彩計画、画面構成、対象物の動き、撮 影画角の変化、ショット導入技法、編集技法などである。

8 フィックス(fix)とは、映像の導入にエフェクトを用いず、静止している状態を指す。通常 TV-CM 制作過程

において用いる用語。映画の用語では、カット(cut)と呼ばれ、最も典型的な場面転換の一形態。ショットとシ ョットがパッと瞬時に切り替わること。引用文献:今泉蓉子著『映画の文法』株式会社渓流社, 2004, p.53 9 モチーフとは、構成要素となる事象である。引用文献:松村明編『大辞林  第三版』三省堂, 2006

(10)

ループとの違いが分かりやすい。TV-CM における表現モチーフとは、画面を構成する主 たる対象とその状況設定のことである。

  このような基準で次のようなグループを用意した。

(1)人物群  (現場監督・ビジネスマン・ジョガー) (2)食事群  (カレー・ハンバーガー・サラダ) (3)動物群  (犬・猫・アヒル) 

  これら 3 グループ各 3 タイプで合計 9 種類のストーリー関連ショットをそれぞれ後続 の商品ディスプレイショットとペアにした映像群を作成した。商品ディスプレイショッ トの作成基準は、商品の形態が TV-CM で一般的に見られるものとした第 3 章に準じて いる。

3-2.  実験目的 

  本実験は、ストーリー要素が、商品関連要素に影響を与えているという仮説に基づく。

ストーリー関連ショットが商品関連映像の想起を促しているのか、また、商品に対する 好感に影響を与えているのかを明らかにすることが、本実験の目的である。 

  被験者に視聴課題(  複数の刺激  )が提示された後に、第一段階として、商品想起を測定 するために再認テストをおこなった。第二段階として、商品好感度を測定するために嗜 好テストをおこなった。これら2つのテストにおいて、人物グループ、食事グループ、

動物グループの間にどのような違いがあるか。これら 3 グループの表現手法について、

商品想起における優位性、及び商品好感度における優位性を実験・検証した。 

  本実験は一つの実験材料に対する被験者の 2 つの判断なので、商品想起と商品好感度 の関係性について一定の指標を示すことも可能となる。 

3-3.  実験方法    (1)  実験の構成 

最初に被験者に視聴課題として複数の刺激が示された。次に視聴した刺激が記憶に鮮 明に残ることを回避するために妨害課題が示された。その後に実験者の指示に従って次 の2つのテストがおこなわれた。

① 第一段階・再認テスト 

商品想起の測定のために、再認テスト( recognition test )が行なわれた。視聴した項 目と視聴しなかった項目が混ぜて示され、被験者は視聴したか否かを判断した。 

(11)

② 第二段階・嗜好テスト 

引き続き商品好感度の測定のために、嗜好テストがおこなわれた。視聴した項目とさ らに新たな「視聴しなかった項目(  これは第一段階のものとは違う内容  )  」が混ぜて 示された。これらに対して被験者は好きか嫌いかの判断をした。

(2)  被験者 

  日本語を母国語とする 33 名(男性 20 名、女性 13 名)の大学生及び大学院生が、実 験に参加した。年齢は 20 歳から 27 歳であった。全ての被験者は正常な視力(矯正視を 含む)を有していた。11 名ずつ 3 グループに分かれた。それぞれ(a)グループ、(b)グルー プ、(c)グループと表わす。

(3)  装置

視聴課題、妨害課題、再認テスト、嗜好テストは、すべてプロジェクター(パナソニッ ク ET-MD77DV)で行なわれた。スクリーンのサイズは横 2.4m 縦 1.4mであった。スク リーンから被験者までの距離は 3.8m〜4.2m であった。被験者の視野にスクリーンの 4 隅が入るように椅子のレイアウトを調整した。 

(4)  実験材料 

①  視聴課題     

  視聴課題の材料は、連続して上映される 11 種類の「ストーリー関連ショットと商品外 観映像の組み合わせ」であった(Adobe  Illustrator  CS3  によるイラスト画をもとに構成 した Quicktime  movie  映像)。このように組み合わせた 2 つのショットを本研究では1 つの塊として扱うので、ストーリー関連ショット群とよぶことにする。商品外観映像に は、目印となるようにカタカナ 2 文字の商品名が表示されていた。これらに「ウミ」「ヤ マ」などの一般的な意味のある商品名を採用すると、被験者の個人的な興味の度合いに よって実験結果に影響が出ることが予測される。よって「ノナ」、「ヌハ」10などのカタカ ナ 2 文字の無意味綴りを採用した11。  本実験の視聴課題として使用した商品名は、「ヘヨ」

「ヌセ」「ワノ」「ロエ」「クト」「ネメ」「テユ」「ミヒ」「ルラ」の 9 種類であった。商品

10 カタカナ 2 文字の無意味綴りは、秋田清(1964)の日本語二字音節の無連想価分類表より選定した。引用文

献:秋田清「日本語二字音節の無連想価と有意味度」『人文學文化学科特集』74,  同志社大学人文学会, 1964,  pp.57-66

11 エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)は、1879〜1880 年と 1883〜1884 年に行った記憶に関する実験 で無意味綴りの手法を用いた。引用文献:ヘルマン・エビングハウス著,  宇津木保訳『記憶について:実験心 理学への貢献』誠信書房, pp.23-25

(12)

の提示順を後に解説するために、これらの商品名にアルファベットの記号を割りふった12  (表.5-1)。 

 

    ストーリー関連ショット( 0.5 秒  )と商品外観映像( 1 秒  )は、オーバーラップ13  ( 1 秒  ) によってつながっている。オーバーラップ(略称 O.L)とは、前者から後者へ画面が全体で 変化していく場面転換のことである。 

   

    ストーリー関連ショット               商品外観映像           (0.5 秒)      (1 秒)      (1 秒)   

  3 グループのストーリー関連ショット群の内容は次のようであった。   

  第 1 のグループは、人物群であった。「人物 1 タイプ(図.5-6)」は、作業服を着てヘル メットを装着した現場監督であった。「人物 2 タイプ(図.5-7)」は、スーツを着て携帯電  話をしながら荷物を引いているビジネスマンであった。「人物 3 タイプ(図.5-8)」は、ジ ョギングウエアに身を包んだジョガーであった。その後にカタカナ 2 文字の商品名が記 された商品外観映像がつながっていた。1 つの材料の長さは 2.5 秒であった。その内訳は、

人物がフィックスで 0.5 秒間見えた後に、1 秒のオーバーラップで商品ディスプレイショ ットになり、そのまま 1 秒間フィックスである。       

  第 2 のグループは、食事群であった。「食事 1 タイプ(図.5-9)」は、カレーライスであ った。「食事 2 タイプ(図.5-10)」は、ハンバーガーであった。「食事 3 タイプ(図.5-11)」

は、サラダであった。1 つの材料の長さは 2.5 秒であった。その内訳は、第 1 グループ と同様であった。 

  第 3 のグループは、動物群であった。「動物 1 タイプ(図.5-12)」は、犬であった。「動 物 2 タイプ(図.5-13)」は、猫であった。「動物 3 タイプ(図.5-14)」は、アヒルであった。

12 これら 9 商品の前後に y=リエ  z=ラホを提示したが、これはカウントしていない。このような実験におい て、最初と最後に提示する内容は記憶の有利に働くため、集計から除外している。

13 オーバーラップ(overlap)とは、テレビ・映画の技法の一つ。ある画面の上に他の画面が重なって浮かび出 し、次第に鮮明になるにつれて、もとの画面が消えるもの。引用文献:松村明編『大辞林  第三版』三省堂, 2006 

表.5-1 被験者の視聴課題内容

記号 y A B C D E F G H I z 商品名 リエ ヘヨ ヌセ ワノ ロエ クト ネメ テユ ミヒ ルラ ラホ

O.L 

(13)

O.L 

図.5-8 人物 3.(ジョガー)から商品へ

図.5-9 食事 1.(カレー)から商品へ

O.L 

図.5-10 食事 2.(ハンバーガー)から商品へ

O.L 

図.5-6 人物 1.(現場監督)から商品へ

O.L 

図.5-7 人物 2.(ビジネスマン)から商品へ

O.L  1 つの材料の長さは 2.5 秒であった。その内訳は、第 1 グループと同様であった。 

             

   

(14)

図.5-13 動物 2.(猫)から商品へ

O.L 

図.5-14 動物 3.(アヒル)から商品へ

O.L 

図.5-12 動物 1.(犬)から商品へ

O.L 

図.5-11 食事 3.(サラダ)から商品へ

O.L 

  図.5-15    妨害課題の内容 

 

②  妨害課題

妨害課題の材料は、プロジェクターに投影された無意味カタカナ文字であった (図.5-15)。

(15)

③  再認テスト 

  再認テストの材料は、18 種類の商品外観の画像であった。Adobe Illustrator CS3 で作 成されたイラスト画像が、Microsoft  Powerpoint  2008 上に配列されて、プロジェクタ ーで投影されたものであった。視聴課題で示された 11 種類の商品から 9 種類と、視聴課 題で示されなかった新たな 9 種類の商品をミックスした合計 18 商品が、ランダムに並ん だものであった。新たな商品名は、「ホヌ」「ケヘ」「セテ」「ユソ」「ラト」「ムヌ」「ルケ」

「ニム」「メミ」であった(表.5-2)。 

       

 

④  嗜好テスト 

  嗜好判断の材料は、18 種類の商品外観の画像であった。Adobe Illustrator CS3 で作成 されたイラスト画像が、Microsoft  Powerpoint  2008 上に配列されて、プロジェクター で投影されたものであった。視聴課題で示された 11 種類の商品から 9 種類と、視聴課題 で示されなかった新たな 9 種類の商品をミックスした合計 18 商品が、ランダムに並んだ ものであった。新たな商品名は、「ムヘ」「ユチ」「リヘ」「ツセ」「ケヨ」「ツヌ」「ラウ」

「レヒ」「ワネ」であった(表.5-3)。 

 

3-4.  実験手続き 

  ストーリー関連ショット群の 3 グループが商品好感度に与える影響を測定するにあた って、次の点に留意した。11 種類の商品名が付いた商品映像に対して 3 グループの表現 モチーフを検討する場合、33 通りの組み合わせができる。一人の被験者で全ての組み合 わせを実験すると、視聴課題として難易度が高すぎて、実験として精度が低くなってし まう。一人の被験者が判断できる視聴課題の数は 9 種類から多くても 12 種類だと思われ

表.5-2 再認テストで加わった新たな商品名

商品名 ホヌ ケヘ セテ ユソ ラト ムヌ ルケ ニム メミ

表.5-3  嗜好テストで加わった新たな商品名 

商品名 ムヘ ユチ リヘ ツセ ケヨ ツヌ ラウ レヒ ワネ

(註:これらは、再認テストで加わった新たな項目と内容が違っている。) 

(16)

14。そこで、33 通りの試行を 3 つのグループに分割して、一人の負担は 11 種類の試行 とした(表.5-4)。 

①視聴課題 

  (a)(b)(c)3 つのグループ 33 名に対して、実験はグループ毎に 11 名同時に実施した。被 験者はプロジェクターで投影された映像に正対して座り、画面センターを見るように指 示された。 

  まず、(a)グループ 11 名に対し、視聴課題として(a)グループ用 11 種類のストーリー関 連ショット群が提示された[表.5-4(a)参照]。そこには 3 グループの表現モチーフが割 り振られている。人物群、食事群、動物群が含まれる(表.5-4)。これら 11 種類のストー リー関連ショット群を連続して上映した。各実験材料の間に 1 秒のグレー画面をインサ ートした。 

14 ジョージ・ミラー(George Miller)は 1956 年に、「不思議な 7 2」という論文を発表した。短期記憶で保

持できる要素をチャンク(chunk)というまとまりの単位で表した。引用文献:G.R.ロフタス, E.F.ロフタス 著,  大村彰道訳『人間の記憶〜認知心理学入門〜』東京大学出版, 1980, p.63  

表.5-4 グループ別視聴課題の内容

(a) 人物群 食事群 動物群 1 2 3 1 2 3 1 2 3 A D G

C F I

B E H

(b) 人物群 食事群 動物群 1 2 3 1 2 3 1 2 3

F I C

E H B

D G A

(c) 人物群 食事群 動物群 1 2 3 1 2 3 1 2 3

H B E

G A D

I C F

 

        (注 1)人物 1.現場監督, 人物 2.ビジネスマン, 人物 3.ジョガー,           食事 1.カレーライス, 食事 2.ハンバーガー, 食事 3.サラダ,            動物 1.犬, 動物 2.猫, 動物 3.アヒル. 

(17)

   表.5-5  視聴課題から嗜好テストまで(被験者に提示された刺激内容) 

  この表.5-4 を縦に見ると、人物群のブロック、食事群のブロック、動物群のブロック になっている。それぞれ表現モチーフのブロックの中に、A から I までの商品名が一回ず つ含まれていることがわかる。また、被験者のグループ間で不公平があるといけないの で、視聴課題における提示順を表.5-4 のようにした。各群のブロックが上段、中段、下 段の 3 段になっているのは、前半、中盤、後半に振り分けて提示したことを示している。

なお、表.5-1で冒頭の y と最後の z は、再認テストや嗜好テストの判定に入れない項目 なので表.5-4に記入されていない。 

② 妨害課題 

  (a)グループに対して、妨害作業としてプロジェクターが映し出したカタカナ文字を音 読するように指示された。 

③再認テスト 

  (a)グループに、再認テストがおこなわれた。被験者は、提示された 18 種類の商品が、

最初の視聴課題にあったかなかったかを判断した。 

④嗜好テスト 

  (a)グループに、嗜好テストがおこなわれた。被験者は、提示された 18 種類の商品が好 きか嫌いか判断した。 

これが(a)グループに対しておこなわれた①視聴課題、②妨害課題、③再認テスト、④ 嗜好テストまでの手続きの流れであった。これと同様の手続きが、(b)グループ、(c)グル ープに対してもおこなわれた。 

  実験の手続きの流れとその内容を表にすると次のようになる15(表.5-5)。 

                 

15 嗜好テストにおける「新たな商品」は、再認テストでの「新たな商品」とは違う商品名であった。

妨害課題 

視聴課題 

ストーリー要素  

商品外観映像 

9タイプ 

ストーリー関連ショット群 

再認テスト 

  視聴した商品画像 

18タイプ 

新たな商品画像  商品外観映像 

嗜好テスト 

  視聴した商品画像 

18タイプ 

新たな商品画像  商品外観映像 

(18)

4.  実験結果 

4-1.  第一段階・再認テストの判定方法と結果 

  再認テストにおいて 4 種類の結果が予測される16。    

①学習した商品に対して「イエス」と判断したら正再認( hit )。 

②学習した商品に対して「ノー」と判断したら、誤再認。 

③学習しなかった商品に対して「イエス」と判断したら虚再認( false alarm )。    

④学習しなかった商品に対して「ノー」と判断したら正棄却。      

  この 4 種類の結果の中で、①の正再認率だけを用いて判断しようとすると、とても不 公平な結果となる。なぜなら、あて推量で全ての質問に「イエス」と答えたら、再認テ ストは全問正解の満点になってしまう。そこで③の虚再認を差し引く必要が生まれる。

通常、修正再認率は正再認率から虚再認率を引く17が、この実験においては 3 タイプの表 現モチーフ別に集計するので、虚再認率を三等分し、正再認率から引いた。本実験の修 正再認率を次のように定義する。  

修正再認率 = 正再認率 ー 虚再認率/表現モチーフの数

  ストーリー関連ショット群の表現モチーフ 3 グループについて修正再認率の平均値を 求めると、次のような結果になった。 

  人物群:食事群:動物群=0.61:0.55:0.58   

  ストーリー・ショット群 3 グループについて分散分析を行なった。その結果、修正再 認率の平均値において、有意差がみられなかった。 

 

4-2  第二段階・嗜好テストの判定方法と結果

  嗜好テストで被験者は、提示された商品が好きか嫌いかの二者択一の判断をした。そ の中で被験者が好きと答えた割合を、商品に先行する表現モチーフ別(  人物群、食事群、

動物群  )に集計した。本実験での商品好感度を次のように定義する。 

 

商品好感度(%)=( 好きと答えた人数/被験者数 ) 100

16 G.R.ロフタス, E.F.ロフタス著,  大村彰道訳『人間の記憶〜認知心理学入門〜』東京大学出版, 1980,  pp.138-140

17  太田信夫編『記憶の心理学』放送大学教育振興会, 2008、p.58

(19)

図.5-16 表現モチーフ群に後続する商品の好感度

人物群 人 物 群  

  ストーリー関連ショットに後続する商品の好感度において、平均値を求めると次のよ うな結果になった。 

人物群:食事群:動物群=44%:68%:58%であった(図.5-16)。 

 

   

         

  これらの表現モチーフ 3 グループについて分散分析を行なった。その結果、商品好感 度の平均値において、有意差があることが分かった[F(2, 64)=3.83, p<.05 (表.5-6)]。下 位検定の結果、食事群が人物群より有意であった  (p<.05)。その一方、食事群と動物群、

動物群と人物群に有意差はみられなかった(p>.05)。 

 

表.5-6 嗜好テストにおける分散分析の結果

source SS df MS F p

subject 1.29 32 0.04 表現モチーフ 0.90 2 0.45 3.83 0.03*

error(AS) 7.47 64 0.12 total 9.66 98

† p<.10, * p<.05, ** p<.01, *** p<.005, **** p<.001 

 

5.  考察   

本研究では、商品に先行するストーリー関連ショットが、商品想起や商品好感度に与 える影響を検証するために表現モチーフ 3 グループを作成した。いずれも、ストーリー・

ショット(0.5 秒)がオーバーラップ(1 秒)して商品ディスプレイショット(1 秒)になる合計 2.5 秒の映像であった。この映像を実験材料にして、再認テストと嗜好テストを行なった。 

 

(20)

5-1.  第一段階・再認テストの考察 

  ストーリー関連ショットの人物群、食事群、動物群の間で、後続する商品外観映像の 商品想起において有意差はみられなかった。つまり、ストーリー要素は、後続する商品 の想起に影響を与えていないという判断ができる。ストーリー関連ショットは僅か 0.5 秒である。そして、表現の「変数」を最小限にして実験したため、商品につながる物語 の文脈を感じ取れなかったと思われる。 

 

5-2.  第二段階・嗜好テストの考察   

  ストーリー関連ショットの人物群、食事群、動物群の間で、後続する商品の好感度に おいて有意差があることが分かった。食事群が人物群より有意であった。 

  判明したこと(1)。本研究で判明したのは、食事群に続く商品映像が、人物群に続く商 品映像よりも、商品好感度を高めていた。 

  これは、一般的な人物の映像と比べた場合、食事の映像のほうが、被験者の興味の対 象になりやすいと考えられる。今回の実験のように商品が飲料の場合、先行するストー リー要素に迷った場合は、人物より食事関係の映像にした方が効果的である。また、先 行するストーリーの文脈が、スムーズに商品映像につながった場合に商品好感度を高め たとも考えられる。つまり、実験で用いた商品が飲料であるため、「人物から商品」より、

「食事から商品」のほうが意識の中で流暢につながった。 

  判明したこと(2)。商品映像の前に現れた僅か 0.5 秒の映像が、商品に対する好感を高 めていた。 

  被験者に提示された映像は、ストーリー要素と商品外観映像のショット群が、11 タイ プ連続したものであった。これだけ連続するとストーリー要素と商品映像の組み合わせ を思い出すことすら難しい。そして、妨害課題で一度注意をそらした後に、被験者が見 せられたのは、無意味カタカナ 2 文字が商品名の商品映像のみである。しかも、その中 には最初に見せられていない商品映像が 9 種類混入されていた。被験者は、合計 18 種類 の商品映像に対して、直観的に好き嫌いを表明したことになる。商品映像の前にあるわ ずか 0.5 秒の映像が、後の商品に対する好感を高めていた。 

  ここで意義深いのは、同じ条件下で、商品想起と商品好感度の結果を得たことにある。

つまり、ストーリー要素の役割は、商品想起より、商品好感度に対して有効であること が明らかになった。 

(21)

6.  本章のまとめ   

  本研究では、TV-CM の商品に先行するストーリー要素に焦点をあてた。ストーリー要 素が、後続する商品の好感度に与える影響について再認テストと嗜好テストを行なった。

その結果、商品に先行する表現モチーフの違いによって、商品好感度に差が生まれるこ とが分かった。 

  極めて短いストーリー要素の映像が、後の商品好感度に影響を与えているということ は、TV-CM のストーリー要素の嗜好判断は、購買層によって一瞬にして行なわれるとい うことだ。つまり、TV-CM は、購買層の好感度を獲得しないと、視聴そのものを中断さ れることもあるし、もしストーリー要素に好感度が低いまま視聴を続けたとしても、肝 心の商品に好感を持つに至らない可能性が高い。TV-CM の制作過程においてこの点に留 意することが不可欠となる。そのためには、購買層の生活様式や、行動様式、嗜好傾向、

さらに潜在的なニーズ18を緻密に把握することが、今まで以上に重要な課題となるであろ う。また、本実験で、商品(  飲料  )に先行する表現モチーフとして、食事群が人物群より 有効であることが分かった。このことは、食と連携した飲料の TV-CM が頻繁にオンエア されている現場レベルの実感と一致している。 

  TV-CM の目的は、商品想起であるが、最初から最後まで商品のことだけを伝えるより、

ストーリー要素の登場人物や状況設定で、購買層の好感を得た上で商品のことを伝えた 方がより良いコミュニケーションが生まれる。TV-CM の目的は、商品想起なのか、商品 好感度を高めることにあるのか。この問いかけに答えを出すとすれば、購買層に対する 商品好感度は、必要条件19であり、商品想起は必要十分条件20である。つまり、商品好感 度が高いことは大前提で、それに加えて商品想起を高めることを目指すことが求められ ている。 

 

 

18 ニーズ(needs)とは、欠乏を感じている状態を指す。引用文献:フィリップ・コトラー,ゲイリー・アーム ストロング著,  月谷真紀訳『コトラーのマーケティング入門、第 4 版』(株)ピアソン・エディケーション, 2007,  p.7

19  必要条件とは、ある事柄が成り立つために、必ずなくてはならない条件のこと。引用文献:松村明編『大 辞林  第三版』三省堂, 2006

20    必要十分条件とは、それがありさえすればある事物が必ず成り立つような条件のこと。引用文献:松村明 編『大辞林  第三版』三省堂, 2006

参照

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