Ⅰ.条約から原則へ
近年の著しいデジタル情報ネットワークの 普及と発展は,国際知的財産紛争の数を増加 させ,性質を多様化させている。今や,先進 国か発展途上国かを問わず,国際知的財産紛 争に関する法整備は,国内の知的財産紛争と 同じく,社会および経済にとって重要な課題 のひとつである。1
国際知的財産紛争を解決するためには,法 選択規則および国際民事手続規則からなる牴 触法が実質法以上の役割を担うことになる。
これまでにも,国際知的財産紛争に関して,
牴触法の国際的調和と調整の必要性は指摘さ れてきた。2しかしながら,最近になって日本 でも国際シンポジウムが開催されるなど,国 際知的財産紛争に関する牴触法の国際的調和 と調整の実現にむけて,今まで以上に盛んな 議論が交わされるようになった直接の契機は,
「民事及び商事における裁判管轄権及び判決 の執行に関するハーグ条約」の準備草案をめ ぐる外交交渉が難航したことにある。
1.ハーグ条約
ハーグ国際私法会議での「民事及び商事に おける裁判管轄権及び判決の執行に関する条 約」そのものの起草作業は事実上失敗に終 わった。現在では,企業間の専属合意管轄に 対象を限定した「裁判所の専属選択合意に関 する条約」案に姿を変え検討作業が続けられ
ている。国際民事手続を包括的に規定する同 条約の起草作業が頓挫した原因のひとつは,
1999 年の準備草案の検討段階で,知的財産3 に関する訴訟の扱い4をめぐって各国の意見 が対立し,議論が紛糾したことにある。特に,
国家戦略として知的財産を重要視するアメリ カ合衆国は,1999 年の準備草案の内容に反 対し,知的財産に関する訴訟を適用範囲から 除外するよう求めた。
アメリカ合衆国の主張は,大きく三点にま とめられる。5まず,予見可能性や消費者保護 などの制度的配慮を優先しルールを重視する EUと,適正手続利益の保護を優先しアプ ローチによる規律を採用するアメリカ合衆国 との間に,内容および方法について大きな隔 たりのあることが挙げられている。しかも,
複数国に資産を有することの多い国際訴訟の 当事者にとって外国金銭賠償判決の承認執行 の必要性が減少していることを考えると,民 事訴訟全般につきミックス条約形式を採用し てまで無理に歩み寄る意義は少ないという。
次に,デジタル情報ネットワークの普及と 電子商取引の一般化によって,デジタル知的 財産に関しては特に,「場所」概念にもとづ く規則の恣意的運用の危険性が高まり,法廷 地法主義をかえって助長してしまうのではな いかという懸念が表明されている。紙などの 有体物に固定されないデジタル情報の「場所」
については,たとえば契約における意思と同 様に,擬制を避けられないからである。
最後に,国際知的財産紛争を解決する上で,
判決の効率性と実効性を確保するためには,
アメリカ法律協会の国際知的財産法 原則草案について
―デジタル情報ネットワークと国境―
伊藤敬也
** 早稲田大学研究員・比較法研究センター研 究員
無体財産の特質を十分に考慮し,従来の関連 条約や関連協定との整合性を維持できるよう な,単行条約が必要だということである。知 的財産訴訟の国際裁判管轄を確定する際に求 められる考慮すべき要素には特殊性が認めら れ,民事訴訟全般に関する包括条約の一部に 規定するのみでは運用の段階で支障を来しか ねない。
このようなハーグ国際私法会議におけるア メリカ合衆国の主張を承け,知的財産訴訟の 国際裁判管轄および外国判決の承認執行に関 する単行条約を独自に提案すべく検討作業に 着手したのが,アメリカ法律協会(ALI)で あ る 。ALIは , ド レ フ ュ ス (Rochelle C.
Dreyfuss) お よ び ギ ン ス バ ー グ (Jane C.
Ginsburg)の共同研究を公式プロジェクト
として採択し,独自の条約草案を公表した。
2.アメリカ法律協会の条約提案
ALIの「知的財産問題における裁判管轄及 び判決の承認に関する条約」草案(ALI条約 草案)6は,TRIPs協定に無条件で合意した WTO加盟国かつニューヨーク条約締約国で あることという加盟要件を課すことによって,
従来の国際知的財産法制との整合性確保を 図っている。また,特許訴訟および知的財産 に関する請求が先決問題としてのみ争われる 訴訟ならびにニューヨーク条約の対象になる 仲裁判断の執行は,適用範囲から除外される。
さらに,有効な裁判管轄権を認められた国の 裁判所による判決が他の加盟国でも当然に承 認執行されるべきことを前提に,規定の大部 分が裁判管轄規則に充てられている。本条約 では細分化された類型ごとに複数の管轄原因 が認められるため,訴訟併合の重要性が強調 されていることも特徴のひとつである。
ALI条約草案は,国際知的財産訴訟の手続 問題に特化した初の単行条約提案として重要 な価値を有する。しかし,現在,ALIのプロ ジェクトは,条約という当初の形式から,
UNCITRALやUNIDROITと同様に,原則と いう形式の採用へと方針を変えている。ALI
が条約アプローチを離れ原則アプローチの採 用に至った過程からは,小異を捨て大同をと ることで合意を形成しようとする条約アプ ローチ自体の限界も垣間みえる。
そもそもALIが単行条約を提案した背景に は,対象を限定することで知的財産訴訟の特 殊性を十分に考慮できるという利点のほか,
ボトムアップ方式の採用によって合意形成を 容易にしようとする意図があった。また,単 行条約によって初めて可能になるのが,法選 択規則を含めることである。知的財産の属地 性を考えれば条約に法選択規則も含めるべき だということは以前から指摘されていた。し かし,法選択規則を追加すれば,各国の立場 の相違がより大きくなり,条約の成立もより 困難になると予想される。そこで,ALIは,
条約という形式を捨て,原則の提案にプロ ジェクト内容を変更した。
3.国際知的財産法原則7
ALIにとって,直接の法的拘束力をもたな い原則という形式は,決してなじみのないも のではない。ALIは,アメリカ合衆国国内の 法統一を促進するためにさまざまな法分野の リステイトメントを公表しており,その多く が連邦および各州の裁判所によって採用され てきた。
ALIが原則という形式を採用した大きな理 由のひとつは,ハーグ国際私法会議での交渉 過程において再認識された,国際知的財産法 の条約による統一にともなう解消しがたい不 安と困難である。8原則は,条約と異なり,提 案主体および内容の事実上の影響力によって 間接的に法統一を促進するにすぎない。また,
原則の提案内容が実現されるためには,アメ リカ合衆国国内においてすら新たな立法を要 する。それにもかかわらず,原則という形式 を選択したのは,検討のための素材を提供し 議論を具体化することで,国際知的財産法の 国際的調和を少しでも前進させるためであ る。9
ALI原則は,プロジェクトの報告責任者で
あるドレフュスおよびギンスバーグ,デスモ ント(François Dessemontet)の三名が条 文草案と註釈を作成し,内外 24 名の諮問委 員(日本からは河野俊行が参加)との応答に もとづいて改訂が重ねられている。これまで に二回(2003 年・ 2004 年)の諮問委員会が 開催され,今後は,2005 年春の同会合を経 て,2006 年に正式採択される予定である。10 したがって,現在の草案はあくまでも暫定案 でしかなく,正式採択後の活用方法も現時点 では明らかにされていない。
しかし,暫定案の段階とはいえ,ALI原則 は,将来において日本を含めた東アジアから 世界にむけ国際知的財産法を共同提案する上 で無視することのできない基礎資料として,
重要な価値を有している。また,ALI原則を 素材に検討することは,議論の具体化を願う ALIプロジェクト報告責任者の期待にも適う ものと思われる。さらに,改訂の経緯を分析 すれば,2006 年に予定されている正式案を より正確に理解できよう。
本稿は,以上の理由から,日本でも一般に 入手可能なALI原則の第二次準備草案(2004 年1月 20 日)11を,偶然に入手できた 2003 年 草案(2003 年1月 13 日)12と比較することで,
これまでの議論動向の把握を試みたものであ る。
すでに 2003 年草案から第二次準備草案へ の改訂段階で,条文の構成および順序に変更 がみられる。2003 年草案が全 31 箇条13であ るのに対して,第二次準備草案は全 34 箇条14 からなる。原則の適用範囲についても,当事 者の国籍または常居所にもとづく差別待遇を 禁止した規定(2003 年草案1条3項)が削 除され,法廷地選択が法選択を含意しない旨 の規定(第二次準備草案 102 条)が追加され た。また,全体として,助動詞の変更または 削除により,原則の任意規定性が明確にされ ている。以下では,国際裁判管轄および外国 判決の承認執行の部分と法選択の部分のふた つに分け,第二次準備草案の条文の順序に
そって改訂内容を確認していく。15
Ⅱ.国際裁判管轄および外国判決の承認 執行
国際裁判管轄および外国判決の承認執行の 部分に関して,司法管轄と立法管轄の区別に 関する規定の追加および条文の順序の変更を 除けば,条文構成そのものに大きな改訂はな い。本章では,まず国際裁判管轄,次いで外 国判決の承認執行について,個々の条文ごと に改訂内容を検討していく。
1.国際裁判管轄
まず,被告法廷地の規定(第二次準備草案 201 条・ 2003 年草案2条)に変更はない。
裁判所選択に関する合意についての規定
(第二次準備草案 202 条・ 2003 年草案3条)
では,交渉によらない契約における合意内容 の合理性要件として,弱い当事者の所在地
(2003 年草案3条4項_)および資産(同a), 専門知識(同b)と別々に規定されていた考 慮要素が,当事者利益(第二次準備草案 202 条4項_)に一括されている。16また,選択 された法廷地と当事者または紛争との実質的 関連性(第二次準備草案 202 条4項`・ 2003 年草案3条4項c)の具体例に弱い当事者の 所属国の政策が追加され,考慮の対象は国家 利益である旨が明記された。さらに,裁判所 の専門性の考慮(第二次準備草案 202 条4項 c)において,登録を要する権利への限定
(2003 年草案3条4項e)が削除されている。
交渉によらない契約において合意内容が合理 性を欠くと判断された場合には,第二次準備 草案で新しく追加された規定(202 条5項)
により,管轄合意条項を無効として,他の規 定にもとづいて管轄を決定することになる。
被告による応訴に関する規定(第二次準備 草案 203 条)については,確認判決への限定
(2003 年草案4条)が削除された。
侵害訴訟(第二次準備草案 204 条・ 2003 年 草案5条)では,被告が実質的な侵害行為を
した国に加えて,侵害行為をなそうとしてい た国の管轄が新たに認められた。17また,仕 向地管轄(第二次準備草案 204 条1項`およ び2項)に関して,2003 年草案の故意要件
(5条1項`および2項)が削除された。な お , 予 見 可 能 な 侵 害 の 発 生 に 関 す る 規 定
(2003 年草案5条1項aおよび3項)も削除 されている。
知的財産に関する契約をめぐる訴訟につい て,管轄の認められる国の範囲が,合意の対 象となる知的財産権の所属国(2003 年草案 6条1項)という広い定義から,紛争の実質 的争点となっている知的財産権の所属国(第 二次準備草案 205 条1項)に限定された。
管轄禁止事由(第二次準備草案 206 条・
2003 年草案 14 条)ならびに反訴および追加 請求の規定(第二次準備草案 220 条・ 2003 年 草案8条)に大きな変更はない。
複数被告(第二次準備草案 221 条・ 2003 年 草案9条)の場合に,それぞれの被告の常居 所国のうち紛争全体と最も密接な関連のある 法廷地に認められる被告全員についての管轄
(第二次準備草案 221 条1項`)が,専属管 轄(2003 年草案9条1項a)から競合管轄 に変更された。
第三者に対する請求の規定(第二次準備草 案 222 条・ 2003 年草案 10 条)に変更はない。
確認判決(第二次準備草案 223 条・ 2003 年 草案7条)について,登録有効性確認請求手 続で想定される対象が,特許権(2003 年草 案7条2項)から登録を要する権利(第二次 準備草案 223 条2項および3項)に変更され,
一国における登録の有効性確認(第二次準備 草案 223 条2項_)と複数国における場合
(同`)が区別された。
訴訟係属中の抗弁(第二次準備草案 224 条・ 2003 年草案 11 条)に関する規定では,
第二訴訟係属裁判所での手続の継続が認めら れる条件(第二次準備草案 224 条4項・ 2003 年草案 11 条4項)として,第一訴訟係属裁 判所による合理的期間内の本案判決を期待で
きない場合が加えられた。また,本条に服さ ないとき,ひとつの手続で判決が下されても 別の手続における判決を認める規定(第二次 準備草案 224 条7項)が新たに追加された。
属地的請求の併合(第二次準備草案 225 条・ 2003 年草案 12 条)において,2003 年草 案ではともに認められていた裁判所の職権に よるものと関連訴訟の当事者に対する勧告に よるもの(12 条1項)のうち,後者が削除 され,裁判所の職権による訴訟併合(第二次 準備草案 225 条1項)のみが義務づけられる ようになった。
なお,訴訟併合の必要性を裁判所が認定し た場合には,訴訟手続を継続するか中止する かを決定しなければならない。その際に,
2003 年草案では第一訴訟係属裁判所が管轄 権を有する当事者の数(12 条4項_)およ び事物管轄権(同`)に関する規定の但書の みで挙げられていた紛争の重心が単独で考慮 される(第二次準備草案 225 条4項_)こと になり,事実問題を判断する上で第一訴訟係 属裁判所所在国にない手続が要求されるかど うか(同c)も考慮要素に加えられた。
さらに,契約上の権利をめぐる紛争におい ては,第一訴訟係属裁判所と契約との最密接 関連性の有無(第二次準備草案 225 条4項 d・ 2003 年草案 12 条4項a)も考慮される。
最密接関連性の具体例として,契約中の法廷 地選択条項の存在(第二次準備草案 225 条4 項dg)が追加され,また,知的財産権の本 源国(the country of origin)(2003 年草案 12 条4項a¹)が原始取得国(the country of initial title)(第二次準備草案 225 条4項d½Î) に変更された。
管轄権行使を放棄すべき特段の事情(第二 次準備草案 226 条・ 2003 年草案 13 条)には,
原則に従い請求が他の裁判所に併合される場 合(第二次準備草案 226 条2項_)が新たに 加えられた。また,最密接関連性および特許 事件での専門性を特段の事情として考慮され る対象も,訴訟係属裁判所の所在する原則の
締約国(2003 年草案 13 条2項cおよびd) から訴訟係属裁判所所在国(第二次準備草案 226 条2項dおよびe)に変更された。
暫定処分および保全処分(第二次準備草案 227 条・ 2003 年草案 15 条)につき管轄を認め られるためには,裁判所が前提として原則の 他の諸規定にもとづく管轄を有していなけれ ばならない。第二次準備草案は,その前提条 件が被告に対する管轄(227 条1項)である ことを明示している。
2.外国判決の承認執行
承認または執行される判決(第二次準備草 案 401 条・ 2003 年草案 27 条)および管轄確 認(第二次準備草案 402 条・ 2003 年草案 29 条 ), 損 害 賠 償 ( 第 二 次 準 備 草 案 410 条 ・ 2003 年草案 30 条),差止(第二次準備草案 411 条・ 2003 年草案 31 条)の規定に大きな変 更はない。
若干の変更点として挙げられるのは,承認 または執行されない判決に関する規定(第二 次準備草案 403 条・ 2003 年草案 28 条)にお いて,準拠法の適用違背を理由とする承認執 行の拒絶(第二次準備草案 403 条1項・ 2003 年草案 28 条1項)が適用の矛盾の明らかな ときに限定され,準拠法決定のための事実認 定について判決裁判所の判断を優先する旨の 規定(第二次準備草案 403 条1項_)が追加 されたことのみである。
なお,外国判決の承認執行については,
ALIで別個のプロジェクトが進行しているた め,今後,大幅な改訂の可能性がある。2005 年春に開催される諮問委員会では,外国判決 の承認執行に関する規定の検討が議題の中心 になる予定であるという。18
Ⅲ.法選択
法選択規則の章は,既述のように,原則形 式が採用されてから初めて追加された部分で ある。ベルヌ条約など,先行する関連条約中 に法選択規則が散見されるとはいえ,いわゆ
る産業財産を含めた知的財産全体を包括的に 対象とする法選択規則の条文化は,世界でも 極めて珍しい試みである。そのためか,第二 次準備草案においてなお,起草作業の最終段 階には至っていないように思われる。
第二次準備草案の法選択規則の章は,大き く三部に分かれている。ひとつめは権利その ものにかかわる諸規定(301 条および 302 条)
で,権利の成立,有効性,範囲,救済などが 対象となる。次が権利の帰属先に関する諸規 定(311 〜 316 条)であり,権利の原始取得,
移転などを対象にしている。そして最後に,
法選択規則の一般原則(321 〜 325 条)が規 定されている。
これに対して,2003 年草案では,先に総 則規定(16 〜 22 条)があり,次に各論の諸 規定(23 〜 26 条)がくる。各論の部分には,
まず,作品(work)(23 条1項)および制作 者(creator)(同3項)ならびに本源国(同 2項および4項)の定義があり,次いで,権 利の成立および範囲(24 条),権利の原始取 得(25 条),権利の移転(26 条)という法律 関係19ごとの規定がある。
このように,2003 年草案と第二次準備草 案とでは,規定の基本方針そのものに違いが みられる。また,条文構成も大きく変更され ているため,ここでは,第二次準備草案の法 選択規則を概観しつつ,必要に応じて 2003 年草案に言及していく。
まず,権利の成立および有効性,範囲,侵 害に対する救済について,第二次準備草案は,
属地性(territoriality)の章で規定している。
これらの法律関係は,さらに,問題となる権 利の性質によって,登録を要する権利の場合,
それ以外の権利の場合,人格権の場合に細分 化される。
第一の登録を要する権利については,登録 国法(301 条1項)による。それ以外の権利 は,侵害行為により重大な影響を受け,ある いは影響の発生が予見される市場地の法(同 2項)による。人格権については,損害発生
地法(同3項)によるものとされている。
以上のように法律関係を権利の性質ごとに 細分化する第二次準備草案とは異なり,2003 年草案は,権利の性質にかかわらず,権利の 範囲および救済に関して,侵害行動地(24 条A案1項)または損害発生地(同B案1項)
の法によると定めていた。
実際には,AB両案のいずれによっても,
結果として適用される準拠法に大きな違いは なく,侵害とされる行為により重大な影響を 受ける市場地のことを,A案では侵害行動地 といい,B案では損害発生地という(同A案 1項後段およびB案1項)にすぎない。
ただし,行動地を不法行為地とするA案に よれば,侵害行動地が複数あるとき,すべて の領域の法を適用すると不当に過重負担とな るような場合には,TRIPs協定その他の知的 財産に関する多国間条約に規定された国際実 質規範(同A案2項)が適用される。また,
結果発生地を不法行為地とするB案によれば,
不法行為者が市場地での損害発生を予見でき ない場合,侵害行為を決定した地の法(同B 案2項)が適用される。
ところで,第二次準備草案は,権利の範囲 および救済について,登録された権利の有効 性に関する請求の場合を除き,属地性原則の 一部または全部を適用しない特段の事情を定 めている。特段の事情とされるのは,事案の 全事情から判断してより密接に関係する法が あるとき(302 条1項_),判決が潜在的に 影響を及ぼす管轄域外の領域すべての法にも とづき裁判をすることが不当に過重負担であ ると裁判所が判断したとき(同`),当事者 間の既存関係が請求と密接に関係していると き(同a),準拠法の内容が確定できないと き(同b)である。特段の事情がある場合に は,侵害者の営業の客観的重心または権利保 有者の活動および投資の程度から判断される 最 密 接 関 係 国 法 ( 302 条 2 項_) ま た は
TRIPs協定および後続の国際法からみて望ま
しい法(同`)の適用が考慮される。これら
の基準によっても準拠法を決定できないとき には,法廷地法が補充的に連結されることに なる(302 条3項)。
権利の範囲および救済に関する属地性原則 の例外については,2003 年草案にも規定が ある。前述の 24 条A案3項は,侵害行動地 または侵害行動地法と事案との関係が不明確 な場合に,最密接関係国法の適用を認めてい た。同様に,同B案3項は,損害発生地また は侵害行為決定地を基準にして準拠法が決定 できない場合,被侵害当事者の常居所または 主たる営業所のある国の法によるものとして いた。
なお,準拠法の内容不明の場合に関して,
第二次準備草案および 2003 年草案はともに,
外国法の内容証明責任を当事者に課している
(第二次準備草案 321 条・ 2003 年草案 18 条)。
しかし,結果として準拠外国法の内容を確定 できないとき,権利の範囲および救済につい て属地性原則を適用しない特段の事情のひと つとして処理する第二次準備草案に対して,
2003 年 草 案 は , 法 律 関 係 に か か わ ら ず , TRIPs協定その他の超国家的実質規範(18 条 2項_)または法廷地法(同`)を適用する と規定していた。
次に,第二次準備草案の権利の帰属先に関 する諸規定は,原始取得について定めたもの
(311 〜 313 条)と移転について定めたもの
(314 〜 316 条)に分かれている。前者の権利 の原始取得という法律関係は,権利の範囲お よび救済と同じく,権利の性質によって,登 録により成立する権利の場合,非登録商標お よび商取引用装飾(trade dress)の場合,
その他の権利の場合に細分化される。
これらのうち,登録により成立する権利は,
原則として登録国法(311 条1項)により,
それが契約関係から派生したものであれば契 約準拠法(同2項)による。非登録商標およ び商取引用装飾については,その商標または 商取引用装飾によって商品または役務の出所 が特定または識別される各国の法(312 条1
項)により,請求者間に契約など既存の関係 があればその準拠法(同2項)による。著作 権など登録なしに成立する権利については,
著作者性のある作品であれば,最初の作品公 開国法(313 条1項_)による。著作者性の ない場合または最初の作品公開国が作品の制 作と十分な関係を欠く場合には,作品制作時 の制作者の居所または営業の本拠のある国の 法(同`)による。作品が委託契約または雇 用契約から生じるものであれば,契約準拠法
(同a)によることになる。
また,2003 年草案で独立に規定されてい た制作者の定義も,第二次準備草案では,登 録なしに成立する権利の原始取得に関する規 定の一部(313 条2項)としてのみ示されて いる。2003 年草案と比較すると,第二次準 備草案における制作者の定義は,非登録商標 および商取引用装飾以外の登録なしに成立す る権利の場合のみを対象にしているから,登 録商標および非登録商標,商取引用装飾に関 する定義が削除されている。さらに,ドメイ ンネームの制作者の定義が削除され,パブリ シティ権およびオリジナルでないデータベー スに関する権利についての制作者の定義が新 たに追加された。
制作者が複数の場合には,共同制作者間の 契約によって指定された一制作者の居所地法 により,そのような合意のないときには作品 の制作および最初の利用と最も密接な関係を 有する国の法(同3項)による。これは,
2003 年草案 23 条4項において,一制作者を 指定する合意のないときに作品の制作と併せ て考慮されていた最初の公開という要素が利 用に変更されたものである。なお,第二次準 備草案 313 条1項から3項により決定される いずれの準拠法によっても問題が解決されな ければ,最初の権利利用地法(同4項)によ ることになる。
権利の原始取得に関していえば,2003 年 草案の時点から非登録商標とそれ以外の権利 には分類されていた。非登録商標以外の権利
について,原則として本源国法(25 条1項)
により,委託契約または雇用契約から生じる 権利のときは契約準拠法(同2項)による。
非登録商標については,最初の利用国法によ る案(25 条3項A案)と最初に利用する各 国の法による案(同B案)が並記されていた。
ところで,実際には非登録商標以外の権利 の原始取得の規定にのみ登場する本源国とい う概念を,独立に定義していることが,2003 年草案の特徴のひとつである。2003 年草案 の定義規定(23 条)によれば,本源国とは,
原則として,最初の作品公開国(同2項_) のことをいい,最初の作品公開国と作品の制 作との間に十分な関係のない場合には,作品 制作時の制作者の居所地国(同`)が本源国 とされていた。
権利の帰属先に関する第二次準備草案の諸 規定のうち後半の移転については,移転可能 性,契約上の移転,法律上の移転という法律 関係ごとの規定がある。まず,移転可能性に 関して,権利の性質を問わず権利移転先の各 国の法(314 条A案)による案と,登録を要 する権利は登録国それぞれの法(同B案1項)
により,登録を要しない権利は原始取得国の 法(同2項)によるとの案が並記されてい る。20
契約による権利の移転については,原則と して,契約当事者の指定した法(315 条1項)
により,契約中に法選択条項のない場合であ れば,譲渡人またはライセンス許諾者の常居 所または主たる営業所のある国の法を内容と する契約の最密接関係国法(同2項)が適用 される。さらに,法律上の移転に関して,登 録される権利は登録国法(316 条1項)によ り,登録されない権利は保護が求められる国 の法(同2項)によることになる。
2003 年草案は,第二次準備草案と異なり,
権利移転について,移転可能性と移転,移転 原因が契約か法律かなどを区別せずに一括し て規定していた。その内容は契約上の移転に 関する第二次準備草案の規定に類似しており,
原則として,契約当事者により指定された法
(26 条1項)が適用され,契約中に法選択条 項のない場合,契約の特徴的給付の債務者の 居所または主たる営業地のある国の法(同2 項)によるものとしていた。
第二次準備草案における法選択規則の章の 最後が,法選択の一般原則に関する諸規定で ある。第二次準備草案では,地域的不統一法 国の条文が削除されたほか,反致排除の規定
(第二次準備草案 322 条・ 2003 年草案 19 条)
を除くすべての規定に,2003 年草案から多 少の変更がある。
まず,削除された地域的不統一法国の規定
(2003 年草案 22 条)は,契約債務および契約 外債務に関する独自の法を有する法域を原則 適用上ひとつの国とみなす(同1項)ことを 定めており,さらに,アメリカ合衆国におけ る州際事件のように国内の異法地域間でのみ 生じる紛争の場合であれば,ALI原則の適用 を義務づけられない(同2項)と定めていた。
第二次準備草案も 2003 年草案も同じく,
準拠外国法の内容について当事者に証明責任 を課しているのは前述の通りである。ただし,
第二次準備草案では,法廷地法に反しない限 り,裁判所は自らの判断で外国法を適用でき るとの一文(321 条後段)が追加されている。
第二次準備草案には,法性決定ならびに証 拠およびディスカバリについて,法廷地法の 適用(323 条1項)が明記されている。また,
契約準拠法が消滅時効にも適用されるとの規 定(同2項)がある。2003 年草案の関連条 文(16 条1項)が,法性決定の必要性を指 摘するのみで意義の不明な注意規定であった のとは大きく異なる。
公序の規定(第二次準備草案 324 条)では,
2003 年草案の,TRIPs協定の基準および他の 超国家的実質規範を公序の範囲として考慮す べきであるとの一文(20 条後段)が削除さ れている。また,法廷地または第三国の強行 規定の適用可能性(第二次準備草案 325 条)
について,2003 年草案 21 条に明記されてい
た「渉外事件における」強行規定という限定 がなくなっている。
Ⅳ.デジタル情報ネットワークと国境
これまでみてきたように,ALI原則は,ア メリカ法の発想を基礎にしてはいるけれども,
改訂履歴を確認してみると,他法系諸国への 配慮が一定程度うかがえるものである。国際 知的財産法の国際的調和を前進させようとい う努力の貴重な成果として,あるいは,現段 階の国際的な議論水準を示す資料として,
ALI原則は高く評価されよう。しかし,同時 に,ドイツのマックス・プランク研究所にお いて世界にむけた国際知的財産法の提案のた めの準備作業21が着々と進められ,それ以外 の国でも関心が高まっている現在,国際知的 財産法の国際的調和を実現するためには,未 だ準備草案の段階にあるとはいえ,個々の規 定内容をさまざまな角度から検討し批判もし ていかなければならない。本稿では,紙幅の 都合から,ALI原則の報告責任者も強調する デジタル情報ネットワークへの対応可能性に つき,法選択の問題に限定して検討する。
デジタル情報ネットワークへの対応は,こ れからの国際知的財産法制にとって無視する ことのできない課題のひとつである。デジタ ル情報ネットワークという要素の含まれる知 的財産紛争が増加し,現実に問題解決を求め られているという理由があるだけでなく,理 論的にも難解な問題を提起するからである。
しかしながら,国際知的財産法の実定規則の 中でどのように対応を図るべきかについては,
立場が分かれる。
2004 年 11 月に早稲田大学で開催された国 際シンポジウム22において,マックス・プラ ンク案についてのクアー(Annette Kur)報 告に対する質疑応答の中で,いわゆるユビキ タス知的財産あるいはユビキタス侵害という ものを現段階では適用対象から除外すべきで はないかという意見が参加者のひとりから出
された。その背景には,デジタル情報ネット ワークという要素が加わることによって生じ る固有の問題とは何であり,それがどの程度 まで従来と異なる考慮を要求するのか,必ず しも明らかになっていないという現状認識が あるように思われる。
デジタル情報ネットワークは,確かに新し い技術であり,新しい現象である。これから しばらくの間は,社会,文化,経済を変化さ せていく要因のひとつであり続けることが予 想される。しかし,法律上も従来と異なる考 慮の必要な新しい要素であるというためには,
法律問題としての特徴を明らかにしなければ ならない。そのためには,まず,問題を最小 単位に分解し,可能な限り曖昧さを排除する 必要がある。
たとえば,ひとつには,ネットワークの構 造を,物理層,コード層,コンテンツ層とい う三層に分け,各層が成立するために必要な 資源の性質によって,街頭演説,電話,放送,
インターネット等を区別し,デジタル情報 ネットワークに固有の法律問題を明らかにす ること23などが考えられる。この分類方法は,
情報をめぐる自由と規制の問題などを考察す るのに有効であるけれども,国際知的財産法 の規律対象としての特徴を明らかにするとい う目的にとってより相応しいのは,伝達手段
(conduit)と伝達内容(content)という区 分24である。これによれば,実際の紛争にお ける問題は,伝達手段の特徴から生じるもの,
伝達内容の特徴から生じるもの,特定の伝達 手段と特定の伝達内容の相互依存によって生 じるものに三分類される。
このうち,本稿で扱っている国際裁判管轄 および法選択の問題に直接影響するのは,デ ジタル情報ネットワークという伝達手段であ る。つまり,オンラインショッピングサイト の仕組がビジネスモデル特許にあたるか,
ウェブサイトのデザインやオンラインデータ ベースは法的保護の対象になるかなど,デジ タル知的財産という伝達内容の特徴から新た
に生じるのは,むしろ実質法にかかわる問題 であり,牴触法上は,複数法域から,同時か つ瞬時に,しかも質の劣化なくアクセスでき るという伝達手段としてのデジタル情報ネッ トワークの特徴こそが従来と異なる考慮を要 請するのである。
さらに,伝達手段の特徴は,国際裁判管轄 の問題よりも法選択の問題に大きく影響する。
デジタル情報ネットワークという伝達手段は,
紙,プラスチック,電波などに比べて,伝達 内容と特定の物理的地点との関係を極めて稀 薄化させる。しかしながら,国際裁判管轄の 問題を解決する上で,現実の移動をともなう 当事者という物理的要素が無視できないこと に変わりはないから,デジタル情報ネット ワークが関係することで生じる困難さも,国 際裁判管轄の問題については,従来の規則に よって対応可能な範囲内にとどまる。これに 対 し て , 裁 判 に お け る 法 適 用 が も と も と ヴァーチャルな行為であるため,伝達手段に よる伝達内容と場所との関係の稀薄化は直ち に法選択上の連結困難を生じさせることにな る。したがって,ALI原則のデジタル情報 ネットワークへの対応可能性は,法選択規則 の内容によってこそ評価すべきである。
そこで最後に,ALI原則第二次準備草案の 法選択規則の内容を改めて確認しておく。
まず,権利の範囲および救済の規定(301 条)は,特許権など登録を要する権利の場合 を除き,原則として,損害発生地を連結点と する不法行為地法主義を採用している。25し かし,デジタル情報ネットワーク上の知的財 産をめぐっては,複数の法域で同時に損害が 発生することも珍しくないため,損害発生地 の特定は困難となる。このときには,302 条 により最密接関係地法が適用されることにな る。最密接関係地法の確定にあたっては,た とえば,個人間ファイル交換ソフトウェアの ユーザによる著作権侵害にともなうソフト ウェアを配布した会社の責任について,ユー ザの侵害行動地法が適用される26など,よく
いえば柔軟な,悪くいえば当事者にとっての 予見可能性を損ないかねない実質的考慮が認 められている。
次に,313 条1項に規定された最初の作品 公開地という連結点も,デジタル情報ネット ワークとの関係では問題となる。デジタル情 報ネットワークでは,作品の最初の入力や アップロードあるいは最初のダウンロードや 出力が作品の市場地と無関係な場所からなさ れることも多い。その場合には,制作者の居 所または営業の中心地が補助的連結点として 用いられることになる。27
ここで興味深いのは,ALI原則が,デジタ ル情報ネットワークへの対応を,まったく異 なるふたつの方法で図ろうとしていることで ある。つまり,ひとつは,最密接関係地法と いう柔軟な概念によるものであり,もうひと つは,人という物理的要素を基準にするもの である。
結局のところ,デジタル情報ネットワーク という伝達手段から生じる連結困難を解消す るには,契約準拠法を可能な限り有効活用し つつ,柔軟な処理を行なうか,人など何らか の物理的要素を基準にするしかないように思 われる。いずれの対応方法がより望ましいか は,多くの事例分析を含めてさらに検討し,
慎重に判断しなければならない。ただ,少な くとも,ALI原則が,デジタル情報ネット ワークの関係する事例を,それぞれの法律関 係における例外の場合として扱っていること は,今後の国際知的財産法制を考える上で参 考にすべきであろう。
註
1 日本では,文化審議会著作権分科会国際小 委員会などにおいて,国際知的財産紛争をめ ぐる諸問題の重要性と早急なルール確立の必 要性が指摘されている。同委員会(第4回)
議事要旨〈http://www.mext.go.jp/b_menu/
shingi/bunka/gijiroku/009/030104.htm〉を参 照。なお,本文および註における人名につい ては,最近の慣例に従い,敬称・肩書を省略 した。
2 たとえば,木棚照一「知的財産法の統一と 国際私法」国際私法年報3号 173頁以下など を参照。
3 本稿では,特に必要のある場合を除いて,
知的財産と産業財産を一括して知的財産と総 称する。
4 石光現「1999年 10月ハーグ国際私法会議 特別委員会の草案における知的財産紛争の取 扱の問題点」季刊企業と法創造1巻3号 242 頁以下などを参照。
5 ロシェル・ドレフュス=ジェーン・ギンス バーグ(伊藤敬也訳)「国際知的財産紛争の 裁判管轄および法選択,判決に係る原則―
知的財産に関するアメリカ法律協会プロジェ クトの目的および射程,アプローチ―」青 山法学論集45巻4号100〜103頁を参照。
6 Rochelle C. Dreyfuss & Jane C. Ginsburg, Draft Convention on Jurisdiction and Recognition of Judgments in Intellectual Property Matters, 77 CHI.-KENT. L. REV. 1065(2002). アメリカ法律協会の条約草案に ついては,伊藤敬也「インターネットにおけ る知的財産権侵害とアメリカ法律協会による 条約提案」木棚照一編著『国際知的財産侵害 訴訟の基礎理論』391頁以下(経済産業調査 会,2003)および崔公雄「2002年アメリカ法 律協会のIPプロジェクト草案の特徴と問題 点」季刊企業と法創造1巻3号 254頁以下を 参照。
7 Intellectual Property: Principles Gov- erning Jurisdiction, Choice of Law, and Judgments in Transnational Disputes.以 下では,ALI原則という。
8 ドレフュス=ギンスバーグ・前掲論文(註 5)103頁。
9 同上104頁。
10 河野俊行「知的財産権をめぐる渉外的紛争 事件における国際裁判管轄権と抵触法に関す るアメリカ法律協会とマックス・プランク研 究所のプロジェクトについて」国際私法上の 知的財産権をめぐる諸問題に関する調査研究 委員会編『国際私法上の知的財産権をめぐる 諸問題に関する調査研究報告書(平成 15年 度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告 書)』57頁(知的財産研究所,2004)を参照。
11 同上報告書345〜429頁。
12 アメリカ合衆国の弁護士のウェブサイトで 公開されていた。現在は削除されている。
13 2003年草案の条文構成は以下の通り。
第1章 原則の適用範囲 第1条 適用事項
第2章 裁判管轄 第2条 被告法廷地
第3条 裁判所選択に関する合意 第4条 被告による応訴 第5条 侵害訴訟
第6条 知的財産権に関する契約 第7条 確認判決
第8条 反訴および追加請求 第9条 複数被告
第10条 第三者に対する請求 第11条 訴訟係属中の抗弁 第12条 属地的請求の併合
第13条 管轄権行使を放棄すべき特段の 事情
第14条 管轄禁止事由
第15条 暫定処分および保全処分 第3章 法選択
A.総論
第16条 法廷地法と本案準拠法の区別 第17条 準拠法の適用範囲
第18条 証明責任および補助準拠法 第19条 反致の排除
第20条 公序 第21条 強行規定 第22条 不統一法国 B.各論
第23条 定義
第24条 連結点:権利の成立および範囲 第25条 連結点:権利の原始取得 第26条 連結点:権利移転およびライセ
ンス許諾 第4章 承認および執行
第27条 承認または執行される判決 第28条 承認または執行されない判決 第29条 管轄確認
第30条 損害賠償 第31条 差止
14 第二次準備草案の条文構成は以下の通り。
第1部 原則の適用範囲 第101条 適用事項
第102条 司法管轄と立法管轄の区別 第2部 裁判管轄
第1章 管轄原因 第201条 被告法廷地
第202条 裁判所選択に関する合意 第203条 被告による応訴
第204条 侵害訴訟
第205条 知的財産権に関する契約 第206条 管轄禁止事由
第2章 複数領域に及ぶ訴訟の簡素化 第220条 反訴および追加請求
第221条 複数被告
第222条 第三者に対する請求 第223条 確認判決
第224条 訴訟係属中の抗弁 第225条 属地的請求の併合
第226条 管轄権行使を放棄すべき特段の 事情
第227条 暫定処分および保全処分 第3部 準拠法
第1章 属地性
第301条 権利の成立および範囲ならびに 救済
第302条 例外の場合における権利の範囲 および救済
第2章 権利の取得および移転
第311条 登録を要する権利の原始取得 第312条 非登録商標権の原始取得 第313条 その他の権利の原始取得 第314条 知的財産権の移転可能性 第315条 権原移転およびライセンス許諾 第316条 法律上の移転
第3章 法選択に関する一般原則 第321条 準拠法の証明 第322条 反致の排除
第323条 法廷地法の適用範囲 第324条 公序
第325条 強行規定
第4部 判決の承認および執行 第1章 一般
第401条 承認または執行される判決 第402条 管轄確認
第403条 承認または執行されない判決 第2章 救済
第410条 損害賠償 第411条 差止
15 原則が暫定案の段階にあることから,2003 年草案,第二次準備草案ともに,条文そのも のを掲載して詳解することはできない。また,
第二次準備草案の内容はすでに河野・前掲論 文(註10)で解説されているため,本稿では 主に改訂部分を検討する。
16 2003年草案では,文言上,強い当事者の側 の資産および専門知識が考慮される余地も あった。
17 2004年2月6日の諮問委員会を経た最新版 の草案では,侵害助長行為も管轄原因のひと つに加えられている。河野・前掲論文(註10)
61〜62頁を参照。
18 河野・前掲論文(註10)81頁。
19 ALI原則では「連結点(connecting factors)」 とされている。
20 諮問委員会での議論を経て,多数決により A案が採用されたという。最新版の草案によ れば,移転可能性は,権利が行使されるべき 各国の法による。河野・前掲論文(註10)77
〜78頁を参照。
21 渡辺惺之「Max Planck研究所の管轄ルー ル提案について」季刊企業と法創造1巻3号 265頁以下を参照。現在では,管轄規則に加 えて法選択規則も検討しているようである。
22 早稲田大学 21世紀COE《企業法制と法創 造》総合研究所「国際シンポジウム・知的財 産に関する国際私法原則の国際的調整―
Max Planck Institute提 案 お よ びAmerican
Law Institute提案を中心にして―」(早稲
田大学国際会議場,2004年 11月 27日)。本稿 も同シンポジウムでの報告を基にしたもので ある。
23 See generally LAURENCE LESSIG, THE
FUTURE OFIDEAS(2001).
24 林 紘 一 郎 『 情 報 メ デ ィ ア 法 』 15 〜 19 頁
(東京大学出版会,2005)を参照。
25 See§301cmt. f.
26 See §301cmt. f, illus. 4. 27 See§313cmt. b.