台湾大学附属図書館で従事した業務について
著者 顏 淑娟
雑誌名 同志社大学図書館学年報
号 34
ページ 143‑156
発行年 2008‑07‑31
権利 同志社大学図書館司書課程
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011801
台湾大学附属図書館で従事した業務について
顏 淑 娟
はじめに
筆者は大学に6年間在学し、2つの学位を取得しました。一つは外国文学 で、もう一つは図書館情報学です。大学5年生の頃、ほとんどの必修単位を とったので、1997年夏に、台湾の国家公務員普通試験(高卒が必要な条件で、
日本の国家公務員採用Ⅲ種試験に相当する)の図書管理区分という職種に合 格し、翌年1月に台北県五股郷立図書館に配属され、公務員キャリアを始め ました。以下、台湾における図書館司書の職務とキャリア形成の一例として、
私の経験を時系列に紹介させていただきます。文章末には、特に、台湾での 日本語コレクションに関わる仕事に関心をもっていただく読者の方が多いの ではないかと考え、台湾大学図書館についての概要説明を付録とし付けます ので、それも併せてご参照いただければと思います。
1998年1月7日~12月22日
大学での最後の学生生活を続けながら、私は、図書館職場の実務経験を積 み始めました。当時、筆者に与えられた職級名称は図書館幹事でした。幹事 という職級は台湾の公務員人事制度において委任3~5格付に当てます。五 股郷立図書館は小規模の公立図書館で、サービス対象人口は5万人しかいま せんでした。職員の正式の定員構成は、館長1人(職級名称は図書館管理員 であり、委任5あるいは薦任6~7格付に当てる)および幹事1人でした。
つまり正式の職員は2人しかいなかったのですが、実際には6人もの臨時職 員(公務員資格を持たない者)がいました。こんなに人手のある図書館は、
台湾の公共図書館ではかなり珍しかったと思います。
〈特集:台湾の図書館〉
6人の臨時職員はシフト交替制の勤務形態で、3人1組で日勤と夜勤で仕 事(主に貸出カウンター、視聴覚資料管理、館内外の環境維持に分ける)を 交替していました。月曜と祝日は定休日で、平日の開館時間は火曜から金曜 までは朝8時から夜9時まで、土日は朝8時から午後5時まででした。
館長は図書館運営の包括的責任を負い、経営的職務に携わり、幹事は館長 の補助員としての事務職員であり、事務的・技術的な職務に携わるはずでし たが、当時の館長は役所で社会教育に関する職務も兼任していたため、図書 館の業務にはあまり関心を向けていませんでした。 図書館学の専門知識を 持っているのはただ筆者1人だけで、筆者が管理職的な職務に携わっていま した。しかし、社会人の新人で一番若かったので、時々監督し難い感じがし ました。
大学で学んだ図書館学に関する専門知識・技術を公共図書館の現場で活か す機会があまりありませんでした。図書館現場の経験と大学の授業で学んだ 理論の間には大きな相違があるとしみじみと感じました。特に、目録作成や 分類などの手間のかかる業務はほとんどアウトソーシングされてしまってい ました。従って、筆者が担当した業務内容は大抵、公文書作成のようなつま らないことでした。
公共図書館は社会教育施設の一つとして、様々なイベントを行う必要があ ります。 例えば、 夏休みには小学生のための「図書館ツアー」(図書館利用 指導というイベント)を開催しています。平日には小学生に情報を探す能力 を身につけるために、週ごとに「博士ちゃんのポスト」というクイズのよう なイベントを行っています。もちろん、祝日に合わせる催しもあります。例 えば、旧暦のお正月の前には、書道コンテストが開催されます。
実際に図書館員の仕事をしてから、資料より、人とのコミュニケーション の方が重要だという感じがしています。
1998年12月23日~2000年3月31日
1998年6月に国立台湾大学を卒業し、同年の夏に国家公務員高級試験1級
(大卒・専門学校卒が必要な条件で、日本の国家公務員採用Ⅱ種試験に相当 する)の図書管理区分という職種に合格し、12月23日に母校の総合図書館に
配属されました。職級名称は図書館組員になりました。これは委任5あるい は薦任6~7格付に当たります。
新築の総合図書館が同年11月15日に開館し、そしてメーンキャンパスにあ る各部局図書館室と研究図書館は殆ど新総合図書館に統合されました。図書 館の構造が従来の分散的な構成から集中的な構成になったため、内部の部門 も再構成され、分散的な構成による非効率的な職員配置が解消されました。
これは台湾大学図書館における初めての組織の再編成でした。部門の合併、
新設、改名や人員整理により、図書館の構造改革が実行されたということで す。例えば、従来の分散した各部局図書館室を閲覧組の下に集中させて、学 術領域により、人文社会科学情報係と科学技術情報係を編成しました。研究 図書館は特蔵組(Special Collections Department)に改名され、元の参 考組は推広服務組(Reference & Extension Services Department)に改 名されました。また、紙媒体以外の視聴覚資料や電子媒体資料などが増える 時代の流れに順応するため、多媒体服務組(Multimedia Service Depart- ment)という新しい部門が設置されました。(付録参照)
筆者はテクニカル・サービスの採訪組(図書受入課;Acquisitions &
Exchange Department)の受入係に配置されました。この部門は図書資料 の購入、徴集、交換や寄贈などの業務に携わります。また、毎会計年度、図 書館に配分された図書購入予算や年末の決算報告書を作成します。筆者は図 書資料を購入したり登録したりする業務に携わりました。当時各部局図書館 室が総合図書館に統合されるに従い、資料も集中管理に移行したため、大量 な複本が深刻な問題になっていました。採訪組が図書資料の財産管理におい て責務を負っているため、大学の財産に登録された複本をどう処分すべきか ということに直面していました。“国立” 大学図書館である上に、 政府機関 の一員として、勝手に財産を廃棄してはなりません。財産廃棄の手続きの複 雑さにいろいろに勉強させられました。
受入係の業務に関する評価基準は図書購入のスピードです。台湾国内出版 物はあまり問題になっていませんでしたが、洋書購入が遅いということはよ く指摘されていました。当時、Amazonというネット書店と取引をしたかっ たのですが、大学図書館の名義ではクレジットカードを申請できないため(今
でもだめです)、図書館は直接Amazonに発注することができません。従って、
Amazon のホームページで必要な図書を検索してから、 在庫があれば、 洋
書の取扱業者に頼み、図書館の代わりに図書購入をしてもうらよう依頼する 方法を考え出しました。
新築の総合図書館の落成とともに、総合図書館のサービス時間が変わりま した。開館時間は、祝日は休館で、月~土曜は朝8時から夜10時まで、日曜 は朝8時から午後5時まででした。夏休みと冬休みの場合は、日曜は休館で、
月~土曜は朝8時から午後5時まででした(現在、開館時間は落成の時より もっと長くなりました。学期中では、月~土曜は朝8時から夜10時半まで、
日曜は朝8時から午後5時までです。そして、夏休みと冬休みの場合は、月
~金曜は朝8時から午後9時まで、土・日曜は朝8時から午後5時までです)。
大学図書館のサービス時間は公共図書館のそれより長いです。そのため、テ クニカル・サービスのスタッフ(編目組、採訪組、系統組、期刊組、館長室、
行政組に勤めている職員)は土、日曜にパブリック・サービス(閲覧組、特 蔵組、多媒体服務組)を支援するという制度が設けられました。支援とは、
つまりカウンターの当番をするということです。テクニカル・サービスのス タッフに利用者と接触するという経験を積んでもらえば、将来の職務ローテ ションに役に立つという発想から、この支援制度が発足したらしいです。
2000年4月1日~2003年3月31日
交流協会奨学金学生として、台湾大学図書館に席を置いたまま休職して、
3年間東京大学大学院教育学研究科に在学して修士学位を取得しました。
2003年4月1日~2007年11月15日
2003年4月に台湾大学総合図書館に復職して閲覧組の人文社会科学情報係 に配属されました。名の通り、人文社会科学に関する資料を収集して、レファ レンス・デスク・サービスをするのが、人文社会科学情報サービス係の主要 な職務です。普段、筆者が担当した業務は図書の整理整頓、蔵書構築、レファ レンス・デスク・サービスです。そして、日本で留学したことがあるので、
日本語が必要な仕事、例えば、日本語資料の選書や日本語での図書館・校史
館案内など、殆どは筆者に任されました。当時の職務内容を、以下の項目に 分けて説明させていただこうと思います。
■カウンターの当番
平日、2週間に合わせて9時間位(午前4時間、昼3時間、午後2時間)
2階のレファレンス・デスク(人文・社会科学資料が中心)を担当しました。
デスクには、所蔵調査や文献探索依頼などのあらゆる質問が寄せられてきま す。資料だけではなく、利用者と実際に接触できる大変良い機会でもありま す。レファレンス・デスクで自分自身もいろいろ勉強になり、これはかなり やりがいのある仕事だと思います。
レファレンス・デスクの当番の他に、3ヶ月間に2回位週末出勤(午前4 時間)で貸出カウンター支援業務を担当します。貸出カウンター支援と言っ ても、実際に貸出業務はアルバイト学生に任せて、週末出勤の正式職員は支 援業務を担当します。支援業務は返却延滞金の徴収、利用者個人情報(メー ルアドレスや在学期間など)の更新、図書弁償手続き、相互協力図書館への 図書貸出カードの手渡しなどです。
■館内の巡回
「館内の静粛」は学習環境を整える上での必須条件で、館内の騒音、飲食、
携帯使用は勉強の妨げになります。しかし、利用者のマナーの低下により、
カウンターへのクレームが増えています。そのため、館内巡回を強化し始め て職員の仕事が大幅に増えています。特に、期間試験や期末試験の場合、意 図的に席占めをする学生がたくさんいるので、カウンターまでのクレームが 一層多くなり、当番の職員の重荷になります。その他、館内の検索端末を使っ て掲示板の閲覧、チャット、オークションサイトなどの娯楽的な要素の高い ウェブページの閲覧を制限しているので、館内巡回の時、このような不正行 為を取締るのは大変な労力がかかります。
館内巡回は、筆者にとってはやりがいのない、最も嫌いな仕事でした。
■図書の整理整頓
この数年、図書購入予算が充足しているので蔵書量の成長がかなり速いで す。平均的には年に10数万冊以上の図書が購入します。そのため、空間不足 という問題に直面している。筆者が人文社会科学情報係に配属されている4 年間のうちに、書架増設に伴い、休館をせずに図書の書架整理・移動作業は 3回も行いました。書架増設により、ソファなどのくつろげる空間や机など の勉強できるスペースが少しずつ減少しています。この点に関してはよく利 用者に非難されています。
図書は殆ど開架式なので、常に図書の整理整頓を行います。職員が多忙で すから、書架整頓、資料配架、資料補修の雑務はアルバイトの学生に任せま す。筆者は中国図書分類法の600類(本国の地理・歴史)、700類(外国の地理・
歴史と伝記)の図書を管理していました。筆者の仕事に対して、アルバイト 雇用の労働時数は毎月延べ105時間が与えられていました。 図書の整理整頓 を行うのには、105時間で充分に足りました。 しかし問題もあり、 ひとつに は1998年新館開館以来、蔵書点検のための休館は一度もしていないこと。ま た、図書館員の個人的な対応により、整理整頓の仕方が異なっているという ことがありました。やはり図書館として全面的かつ定期的に蔵書点検をする 必要があると思っていました。
■購入図書推薦の処理
台湾大学図書館では、収書にあたり教員や学生との連携を保ち、学習・研 究環境としての図書館資料充実のため、年間を通じて学内外の利用者を問わ ず、ウェブで購入図書の推薦を受付けています(アクセスしてみてください。
http://suggestion.lib.ntu.edu.tw/Suggestion/sugg/SuggestionForm.jsp です)。購入の可否はすべてウェブで公開しています(http://suggestion.lib.
ntu.edu.tw/Suggestion/sugg/SuggestionResult.jsp)。
筆者が担当した業務の中で、購入図書推薦の処理が一番大変でした。月間 1,000件くらいの図書推薦があり、 中国語の図書があれば、 外国語の図書も あります。外国語図書の推薦では英語、日本語が中心で、時にはドイツ語や フランス語のものがあります。英語や日本語の選書は問題になっていないで すが、ドイツ語やフランス語などの外国語は、いつも日本語の翻訳サイトを
通じて図書の内容を日本語で把握してから、購入の可否を決定します。台湾 では多言語の翻訳サイトが見つからなかったので、やむを得ずに日本語の翻 訳サイトを使っていました。
図書推薦の処理手順では、教員のリクエストが一番優先的に取り扱わされ、
次は院生、学部生、そして学外者のリクエストです。選書方針・基準を踏ま えて、多様な資料要求とカリキュラムの編成に配慮しながら、バランスのと れた蔵書構築をつくるには本当に大変だと深く感じました。
■図書館での奉仕活動の指導
台湾大学は1998年から奉仕活動・体験活動の推進によって、学部生に豊か な心を育成してもらうために、奉仕活動を必修することを始めました。学科 や学年により学生が奉仕活動をする場所が異なります。人文社会科学情報係 は土木工学学科の学生を受け入れています。台湾では年間二学期制を採用し ていますので、学期ごとにほぼ40名の学生が当係で奉仕活動を行います。筆 者はその奉仕活動の指導を担当していました。奉仕活動の内容は、基本的に は図書の整理整頓、つまり書架整理や資料配架が中心です。学期開始の時、
分類法や図書の並び方を説明したり、個々の学生に奉仕活動の時間割りや担 当書架を割り当てたり、いろいろな工夫したりしていました。そして学生の 毎回の奉仕活動の表現に対して評価し、最後、学期終了の時、その日常表現 を加算・評価しました。多くの学生が、奉仕活動という科目を履修してから、
さらに頻繁に図書館を利用するようになているらしいです。
2007年11月16日~
キャリア・アップのため、国史館に転職しました。今は国史館采集処推広 科に配属されています。筆者に与えられた職級名称は専員で、薦任7~9格 付に当たります。担当業務は総統・副総統の文物展覧会の解説、そして展覧 会のためボランティアを応募したり、ボランティア解説員を養成するという ことです。展覧会の予定場所は工事中ですので、現在は展覧会の準備工作に 取り組んでいます。
付録:台湾大学附属図書館について
日本統治時代の1928年(昭和3)に台北帝国大学が創立された同時に、そ の附属図書館も設置された。 終戦後、 中華民国政府に接収され、「国立台湾 大学」と改名された。台湾大学は台湾で、最大かつ最も古い最高学府の大学 であり、11学部、98研究科等を有する総合大学。現在、約3万2千名の学生 と約4千名の専任教員が在籍している。戦前に作られた旧総合図書館では手 狭であったため、1982年(昭和57)より新総合図書館の建設が計画された。
1998年11月14日に落成し、正式に開放した。なお、この旧館の建物は、古跡 にも指定されている名建築である。
(現在の組織構成)
新総合図書館が竣工するのにあわせて、それまで分散していた図書館・室 のうち総計32の図書館及び図書室は新館に集結されました。現在、台湾大学 の中には、新総合図書館に加えて、法学部図書館と医学部図書館の2つの図 書館、また、物理学科、数学学科、化学学科、気象学科、海洋学科、生物工 学学科や図書館情報学科の7つの図書室があります。
各分館の図書や定期刊行物の受入、目録作成などの図書館に関する業務は、
一元的な管理体制のもとに、総合図書館により一括して運営されています。
学内図書館委員会には、各学科・研究科の代表者(図書委員)や学生代表2 名を主体とする図書館長の諮問委員会があります。
(所蔵コレクション)
■コレクション構成:
当館のコレクション構成は、学内教員の教育研究や学生の学習のためのも のである。人文科学、自然科学、法学、医学、工学、農学、経営学、公衆衛 生学、電気工学や生命科学に関する図書、定期刊行物、パンフレットや視聴 覚資料などが収集されている。 現在、 当館の蔵書量は438万冊を超えて、 雑 誌は33,000余タイトル、 新聞は100タイトル、 台湾では蔵書量が一番多い図 書館である。台湾の政府資料寄託図書館に指定され、各公務機関の政府刊行 物を無償で送付されている。現在、60の国・地域をこえる4,000以上の図書館・
図書資料(定期刊行物以外) の受入・ 寄贈・ 交 換や登録、及び図書購入経費の執行や管理など 定期刊行物や新聞の受入・ 登録、 及びそれらの 製本など
資料の分類・目録作成・装備及び書誌データベー スのメンテナンスなど
資料の貸出・整理・閲覧・レファレンス・及び 学科への全般協力
中洋文の貴重書、 線装本、 地域研究コーナー及 び各文庫資料の収集・整理・閲覧など マルチメディア資料の収集・ 閲覧、 及びその設 備の管理など
利用者教育、 レファレンス、 相互協力・ 相互利 用及び図書館ツアーなど
法学部図書館、 医学部図書館や物理学科、 数学 学科、化学学科、気象学科、海洋学科、生物工 学学科や図書館情報学科の図書室及び先住民族 資料センター
校史館ツアー、 展示会場の運営、 校史に関する 資料の収集・整理など
図書館オートメーション・ システムやネット ワーク・サポートの運営管理など
予算編成、財産と部品の管理、施設の整備・管理・
保全、公文書の送受など
人事管理、公文書の管理・保存、館内事務の連絡・
調整など
採 訪 組
( 図 書 受 入 課 )
期 刊 組
(定期刊行物受入課)
編 目 組
( 目 録 作 成 課 )
閲 覧 組
(リーダーズ・サービス課)
特 蔵 組
(スペシャル・コレクション課)
多 媒 体 服 務 組
(マルチメディア・サービス課)
推 広 服 務 組
(レファレンス&拡張サービス課)
系 館
(部局図書館(室))
校 史 館
( 校 史 館 ) 系 統 資 訊 組
(情報技術サービス課)
行 政 組
( 庶 務 課 )
館 長 室
( 館 長 室 ) 学内図書館委員諮 問 委 員
台湾大学附属図書館組織基本概念図
館 長
*( )内は日本語訳
学術研究所と出版物交換を結んでいる。
■スペシャル・コレクション
蔵書の中には、50,000冊以上の中和洋文の古書や珍本があり、台湾では珍 本のコレクションが一番多い図書館である。淡新 案(清朝の頃、淡水庁、
台北府及び新竹県における行政や司法に関する公文書)、 宋元明朝の線装本、
琉球歴代寶案、ヨーロッパの初期刊本など。台湾大学の前身は「台北帝国大 学」であり、開校初期には地域研究に取り組んでおり、ゼミナールや研究所 を設立し、華南、台湾や南洋地域に関する歴史・自然・産業・資源などの研 究や調査に力を入れていた。台湾研究資料が豊富に揃っていることから、国 立中央図書館台湾分館(前身は台湾総督府図書館)及び国史館台湾文献館と 並び、台湾大学図書館は台湾史研究における重要な所蔵機関である。
■デジタルコレクション
情報提供サービスの高度化を推進するために、当館は所蔵する資料を対象 にしたデジタル・コレクションの構築を取り組んでいる。1997年からは本学 の人類学科、 図書情報学科、 歴史学科や情報工学学科と連携し、「台湾大学 デジタル・ライブラリー&ミュージアム・プロジェクト」を行い、さらに国 家科学委員会が推進した「国家コレクションデジタル化事業」に積極的に参 加し、 本学が所蔵している“岸裡大社文書”、“淡新 案”、“伊能文庫”、 台 湾の古写真や古拓本、古碑文など、貴重な資料をデジタル化し、インターネッ トにより広く地域や時間に偏りなく情報を提供している。
■コレクション収集
2000年から、「台湾大学近代名家原稿」 という収集プロジェクトが始まり、
積極的に近代名家の原稿や真跡を収集し、特製の陳列ケースで展示すること にしている。現在は王文興、林文月、臺靜農、葉維廉、楊雲萍、王禎和など
(台湾大学の教授や卒業生の文壇の大家)の手稿が寄贈・所蔵されている。
さらに、2006年から「台大人文庫」という収集プロジェクトが始まり、台 湾大学にゆかりのある卒業者、教員や職員が書いた著書、翻訳や編集作品を
母校に寄贈するようと呼びかけ、全面的に収集している。
■台湾大学学術機関リポジトリ(NTUR)
台湾大学学術機関リポジトリ(NTU Repository)とは、台湾大学で生産 された様々な研究成果を電子的形態で集中的に蓄積・保存し、学内外に公開 することを目的としたインターネット上の発信拠点である。研究成果は、学 術雑誌論文をはじめ、学術会議論文、学位論文、デジタル教材、プレゼンテー ション・ファイル、プレプリントやポストプリントなどが発表・公開されて いる。
(広報・出版物)
■広報誌・ニュース類
当館では様々なサービスをはじめ、最新のコレクションやデータベースな どを紹介する月刊広報誌『国立台湾大学図書館ニュースレター』(メールマ ガジン)や『国立台湾大学医学部図書館ニュースレター』を発行している。
■学術ジャーナル
1997年1月、図書館学をはじめ、情報科学、目録学、アーカイブズ、博物 館学などの研究論文を掲載する『大学図書館』(University Library Jour- nal)という学術ジャーナルを創刊した。
■その他
台湾大学図書館所蔵資料の関連書籍が出版されている。例えば、『淡新 案』、
『田中文庫植物図譜』、『田中長三郎著作目録』、『田中文庫蔵書目録』などを 出版した。
(パブリック・サービス)
■閲覧・貸出サービス
当館では開架式を採用しており、ほとんどの図書は貸出可能である。雑誌、
新聞、参考資料、スペシャル・コレクションは館内閲覧に限定されている。
2000年からメール通知サービスを開始し、返却期限のアラート、延滞資料の 返却催促や予約図書の取置きというメールがシステムにより自動的に送信さ れている。利用者により便利さを提供するため、オンラインで図書を予約す る場合、自分がどの図書館で貸出手続きをすることを選ぶことができる。ま た、本館・分館で借りた図書はどの図書館でも返却ができる。
■学内における図書及び文献複写の配達サービス
教職員や学生に当館の所蔵資料をよりよく利用してもらうため、2001年下 半期から教員の研究室までに、あるいは違うキャンパス間での配達サービス が導入された。なお、当サービスでは手数料が必要である。
■参考調査サービス
来館、電話、ファクスやメールによる様々な調査依頼に対し、蔵書の館内 利用や目録の利用など資料提供に関わる質問応答と文献探索のようなサービ スを行っている。なお、各研究科に対する専用担当の「学科館員」という業 務が設置されている。「学科館員」 とは、 研究科にとって図書館相談の窓口 であり、常に教員、大学院生の研究・学習を支援し、より専門的な選書、参 考調査や図書館利用指導などのサービスを提供している。
■図書館相互協力
図書館相互協力を通じて、国内や海外の図書館へ、現物貸借・文献複写を 申し込むというサービスを提供している。
国内の図書館相互協力は二つある。一つは、学術図書館相互協力協議会の 協定により、本学の利用者は当館の貸出カウンターで他館の貸出カードを申 し込んでから、自分で他館に取り寄せて図書を借りるができる。もう一つは、
オンラインで国家実験研究院が主導している NDDS(Nationwide Docu- ment Delivery Service)を通じて、自館で所蔵していない資料を他の図書 館から現物借用または複製という形で取り寄せて利用者に提供する有料サー ビスである。
国内で所蔵が見つからない場合、海外の図書館にILLを申し込むことがで
きる。英国の国立図書館(British Library)や OCLC(米国を中心とした 大学や研究.所約45,000機関が参加している図書館サービス組織)などが主 な依頼先である。コピー代と郵送料の実費が利用者の負担となる。その外、
北京大学、南京大学、香港中文大学、香港大学、廈門大学の図書館と協定を 結んでおり、中国や香港で出版されている資料の文献複写を原則無料で提供 する。
■指定図書サービス
授業を担当されている教員から図書館への申し込みに基づいて、授業の内 容に関係する図書を集中的に準備するサービスである。指定された図書は、
「指定図書コーナー」へ配架されており、館内閲覧のみであり、貸出できな い。なお。複本があり、一般書架にある場合は貸出できる。
■マルチメディア・サービス
マルチメディア時代の到来で、マルチメディア・センターが成立された。
当センターは研究・学習に関する視聴覚資料を収集し、「Information on Demand(IOD)」、音楽チャネル、ケーブルテレビ、視聴覚資料使用、討論 部屋などのサービスを提供している。
■インフォメーション・サービス
1993年から、INNOPACの図書館アートメーション・システムが導入され、
「Taiwan University Library Information Processing System,
TULIPS」が開始した。Webから蔵書検索、図書の貸出更新や予約ができる。
また、お知らせなどを受け取るメールサービスも行っている。
様々な領域のデータベース、電子ジャーナル、電子ブックを提供し、さら に、いくつの電子資源は学外でも利用可能である。
RSS(Really Simple Syndication)サービスを提供し、個人の興味やニー ズにより、RSSリーダーを使って当館ウェブサイトの最新ニュースの取得が できる。
■拡大サービス
新入生向けオリエンテーションをはじめ、蔵書検索、電子ジャーナル・デー タベース利用法などの講習会を行っている。さらに、より多くの使用者に図 書館利用を理解してもらうため、電子ジャーナル・データベース利用法など の講習会をオンラインで提供している。企画展示、講演会、ガイダンスなど の拡大サービスを行い、利用者に研究・学習能力を身につけてもらう。
■学習環境・設備の提供
全館合わせて2000席以上の閲覧・学習スペースを確保し、グループで学習 できるセミナー室3つ、博士・教員が利用できる65室の研究個室を用意して いる。なお、スキャナー、複写補助の設備などを提供し、利用者により効率 的に当館の資源を利用してもらう。
(いぇん すーちゅえん。國史館采集處推廣科専員)