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国際航空分野における温室効果ガス削減に向けた取り組みの強化 調査・研究活動 : 交通経済研究所ホームページ

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88 運輸と経済 第77巻 第6号 ’17.6

海外トピックス

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.国際航空分野における温室効果ガス

削減状況

 1995 年より国連気候変動枠組条約のもとで温室 効果ガス削減に向けた取り組みが行われている。 2015 年にパリで開催された国連気候変動枠組条約 第 21 回締約国会議(COP21)では,2020 年以降 の取り組みが議論され,アメリカ,中国,インド など,これまで条約に批准していない国も含め 196 カ国が参加する「パリ協定」が採択された。  パリ協定では,世界の平均気温の上昇について 2℃を十分に下回る水準に抑制し,1.5℃以内へ抑 えるように努力することを世界共通の長期目標と すること,さらに,すべての加盟国が 5 年ごとに 削減目標を定め,目標達成のために共通かつ柔軟 な方法で実施することが義務化されるなど,各国 で温室効果ガス削減に向けた動きが加速している。  しかし,国際航空分野についてはパリ協定でも 削減の対象とされていない。なぜなら,国際航空 分野における温室効果ガスの削減手法の取り決め については,京都議定書で国際民間航空機関 (ICAO;International Civil Aviation Organization,以下,

ICAO と表記)で検討することとされていたからで

ある。国際線は各国の権限が及ばない領域上を運 航すること,コードシェアにより国籍の異なる航 空会社が共同運航することなどにより,国際航空 分野における温室効果ガス排出量をどのように各 国に配分すればよいのかについては,国際専門機

関が判断することが妥当であるとされた。そのため, 国際航空を利用することで排出される温室効果ガ スの削減手法についても,世界の民間航空機の運 航ルールなどを定める ICAO が検討し,どのよう に温室効果ガスを削減していくのかを決定するこ ととなっていた。

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ICAO

における温室効果ガス削減の

議論

 これまで ICAO は,2010 年に行われた総会で, 国際航空分野の温室効果ガス排出量の削減におい て「世界的な推進目標(Global Aspirational Goal)」 を設定した。その概要は下記のとおりである。 ⑴ 2050 年まで毎年,年平均2%燃費効率を改善

させる

⑵ 2020 年以降,温室効果ガス総排出量を増加さ せない(CNG2020:Carbon Neutral Growth 2020)  また,上記の目標を達成するための手段として, 下記の 4 つの手段を挙げた。

 ①新技術の導入(新型機材等)  ②運航方式の改善

 ③バイオ燃料等の代替航空燃料の活用  ④排出権取引など市場メカニズムの活用  しかし,今後も航空需要は伸びると予想される ことから,ICAO は,上述の①〜③の手段だけで は「2020 年以降,温室効果ガス総排出量を増加さ せない」という目標は達成できないとして,国際航

国際航空分野における温室効果ガス削減に向けた取り組みの強化

かわ

ぐち

ゆう

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89 海外トピックス

運輸調査局

空分野において④の市場メカニズムを活用するこ とが重要であると認識していた。そこで,ICAO で は市場メカニズムを国際航空分野にどのように取 り入れるのか,またどのように活用していくのかに ついて各国政府関係者とともに検討を進めてきた。  このような中,ICAO は,2020 年以降の取り組 みに関して,2016 年9月に開催された第 39 回総 会で市場メカニズムを活用した温室効果ガス削減 制度(GMBM; Global Market-Based Measures,以下

GMBM と表記)に合意したと発表した。

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ICAO

が合意した排出権取引制度

 GMBM は,今後,増加すると見込まれる国際 航空需要に起因する温室効果ガス発生に対して排 出権取引制度を適用することで,市場メカニズム を活用して温室効果ガスの削減を行うというもの である。

 具体的には,各国政府および ICAO は自発的に 参加を表明した国の国際線を運航する航空会社に 対して,温室効果ガスの排出量を割り当てる。航 空会社は国際線の運航によって発生する温室効果 ガスの排出量を外部機関の証明を受けた上で算出 し,仮に航空会社の CO2排出量が 2020 年の基準

を上回っているならば,基準を超過している部分 に相当するクレジットを航空会社が購入しなけれ ばならない(ただし,小規模排出国や後発開発途上

国などは義務付けられない)。

 GMBM は,2021 年から 2026 年の第1期間と 2027 年から 2035 年の第2期間に分けられ,第1期 間では,自発的に参加した国のみで運用すること になるが,第2期間では GMBM は参加国全体に 適用されることになり,この期間の温室効果ガス の割当量については,第1期間における個々の航空 会社の削減努力が段階的に反映されることとなる。  日本も GMBM に参加することを表明している

ものの,国土交通省は「我が国の航空会社の合計で, 制度開始当初年間十数億円程度から,2035 年には 年間数百億円程度に段階的に増加する見込み」と 試算していることから,温室効果ガスの削減は航 空会社にとっては負担となる可能性もある。

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.ルール化が待たれる

GMBM

 GMBMに自主的に参加する国は66カ国(2016 年

10月時点)であり,参加国の国際線の輸送量(有償

トン・キロ)の合計は世界全体の 86.5%を占めて

いる。GMBM が運用されることで,航空会社は 排出削減義務を負うことになるため,費用負担を なるべく最小限にするように国・航空会社が省エ ネ,バイオ燃料の実用化など温室効果ガスの削減 技術を発展させ,世界的に温室効果ガスが削減さ れることも期待される。

 GMBM は大枠で合意できているものの,細部 についてはまだ検討がされている。コードシェア 便の扱いについてはどのように取り扱うのか, GMBM におけるクレジットのダブルカウントをい かに防止するのかといった部分について未だ結論 に至っていない。クレジットのダブルカウントに ついては,たとえば,発展途上国において,先進 国の資金援助によってプロジェクトが実施され, 温室効果ガスが削減された場合,その削減量は, 投資した先進国とプロジェクトのホスト国である 発展途上国のどちらに帰属するのかという問題で ある。ダブルカウントされてしまえば,地球全体 でみると温室効果ガスの削減につながらない可能 性があり,こうしたケースを防ぐためには明確な ルールが求められる。

参照

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