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Artin-Whaples 理論

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(1)

Artin-Whaples 理論

@alg d 2013 年 9 月 7 日

複素関数 fz0 C の近傍でf(z) =

n=n0

an(z −z0)n (an0 ̸= 0) と書けるとき,

fz = z0 で有理型であるという.またこの時の n0fz = z0 での位数といい,

ordz0(f)で表す.n0 > 0のときfz =z0n0 位の零点を持つといい,n0 < 0のと きfz =z0|n0|位の極を持つという.

また f(1/w)w の関数と見てw = 0で有理型であるとき,f(z)はz = で有理 型であるという.位数ord(f) をf(1/w) のw = 0 での位数,即ちz = 1/w として f(z) =f(1/w) =

n=n0

anwn (an0 = 0)̸ と書けるときord(f) :=n0 と定める.

f がRiemann球面C:=C∪ {∞}上の任意の点で有理型のとき,f をC上の有理型関 数という.

命題. C上の有理型関数は有理関数(「多項式/多項式」と書ける関数)である.即ちC の有理型関数体はC(x)である.

定理. f をRiemann球面C =C∪ {∞}上の有理型関数とすればf の零点・極は有限個 で,位数の和は0である.即ち∑

z∈C

ordz(f) = 0.

定理. X をコンパクトRiemann面,fX 上の有理型関数とすればf の零点・極は有 限個で位数の和は0である.即ち ∑

z∈X

ordz(f) = 0.

この「位数の和が0」を一般化して整数論で使おう,というのが今回の話の内容である.

例えば,この一般化により代数体の特徴付けが得られるのである.一般化を行うため,ま ず「位数」という概念の言い換えを行う.

定義. K を体とする.以下を満たす写像| · |: K −→Rを絶対値(もしくは付値)という.

(2)

(1) x∈K について|x| ≥0であり,|x|= 0⇐⇒x = 0 (2) |xy|=|x||y|

(3) (三角不等式) |x+y| ≤ |x|+|y|. α ∈K に対して

|α|=

{ 0 (α = 0) 1 (α ̸= 0)

と定めればこれは明らかにK の絶対値を定める.これを自明な絶対値という.

定義.K の絶対値| · |0,| · |1 に対して二項関係

| · |0 ∼ | · |1 ⇐⇒ | · |0| · |1K に同一の位相を定める と定める.は同値関係である.

命題.K の自明でない絶対値| · |0,| · |1 に対して以下は同値.

(1) | · |0 ∼ | · |1

(2) 任意のα∈K に対して「|α|0 <1 =⇒ |α|1 <1」となる.

(3) ある実数s > 0が存在して,任意のα∈K に対して|α|0 =|α|s1 となる.

定義. | · |0,| · |1 を絶対値として| · |0 ∼ | · |1 とすればある実数s > 0が存在して| · |0 =

| · |s1となるが,絶対値| · |に対して| · |sが常に絶対値になるとは限らない.

例: Qの通常の絶対値| · |に対して|1 + 1|2 = 4>2 =|1|2+|1|2

そこで以下,ある絶対値| · |0s >0によって| · |=| · |s0と書ける写像| · |も絶対値と 呼ぶことにする.

定 義. 絶 対 値 | · | が 強 三 角 不 等 式 |x + y| ≤ max{|x|,|y|} を 満 た す と き ,| · | は 非 Archimedes的であるという.そうでないとき,Archimedes的であるという.

命題 1. 絶対値| · |が非Archimedes的⇐⇒ {|n| |n∈N} ⊂Rが有界 特に,Archimedes的絶対値を持つ体は標数0である.

定義. K の絶対値| · |discrete ⇐⇒(|K×|, ·)= (Z,+).

. C上の有理関数体C(x)を考える.実数c0 >1を一つ固定する.

f C(x)のp∈Cにおける位数をordp(f)とする.即ち f(x) =a

p∈C

(x−p)np (aC×, np Zは有限個のp∈Cを除いて0)

(3)

と一意に書いたときordp(f) :=np である.このとき,|f|p := 1 cord0 p(f)

と置けば| · |p は C(x)の絶対値である.

また,における位数をord(f)とする.即ち f(x) = g(x)

h(x), g, h∈C[x], (g, h) = 1

と書いたときord(f) := deg(h)deg(g)である.このとき,|f| := 1

cord0 (f) と置け| · |はC(x)の絶対値である.

これらの絶対値は非Archimedes的で,discreteである.

命題. {φ|φはC(x)の非自明絶対値,C上自明}/∼の完全代表系は{| · |p |p∈C} 定理. 任意のα∈C(x)× に対して,有限個のp∈Cを除いて|α|p = 1.

定理 (積公式). 任意のα C(x)× に対して ∏

p∈C

|α|p = 1

証明. |α|p = 1 cord0 p(α)

だから ∏

p∈C

|α|p =∏ 1 cord0 p(α)

= 1

c

ordp(α) 0

= 1

c00 = 1. 定義.K がPF体 (PF=Product Formula)

⇐⇒K の非自明絶対値のある集合M が存在して,以下を満たす.

(1) φ, ψ ∈Mφ̸=ψならばφ̸∼ψ

(2) α∈K×に対して,有限個のφ∈M を除いてφ(α) = 1 (3) α∈K×に対して ∏

φM

φ(α) = 1

このMK のPF集合と呼ぶことにする.

| · |Archimedes的とすれば|2|>1である.故にPF集合M はArchimedes的絶対 値を有限個しか含まない.

. 有理関数体C(x)はPF体である.M ={| · |p |p∈C}と取れる.同様にして,コン パクトRiemann面上の有理型関数体もPF体である.

(4)

C(x)と同様なことが有理数体Qでも考えられる.α Q× α =a

p:素数

pnp (a =±1, np Zは有限個のpを除いて0)

と一意に書ける.これを用いて,素数pに対してordp(α) :=npと書いて,Qの絶対値を

|α|p := 1

pordp(α) で定める.これをp進絶対値という.また通常の絶対値を| · | で表す.

X :={p∈N:素数} ∪ {∞}と置く.

命題. {φ|φはQの非自明絶対値}/∼の完全代表系は{| · |p |p∈X} 定理. 任意のα∈Q× に対して,有限個のp∈Xを除いて|α|p = 1. 定理 (積公式). 任意のα Q×に対して

pX

|α|p = 1.

証明. α = ±pe11· · ·pegg と書けば ∏

p∈X

|α|p = |α||α|p1· · · |α|pg = |α| 1

pe11 · · · 1 pegg

= 1.

. 有理数体QPF体である.M ={| · |p |p∈X}とすればよい.

. 一般に体kに対してk(x)はPF体である.それを示すため,Ak(x)の非自明な絶 対値でk上自明なもの全体,とする.| · | ∈Aを取る.命題1により| · |は非Archimedes 的である.

(1) |x| ≤1のとき

任意のf = anxn +· · ·+a0 k[x]に対して |f| ≤ max{|anxn|,· · · ,|a0|} ≤ 1である.

| · |は非自明だから,p k[x]|p| < 1となるものが存在する.そのような p のうち

degpが最小となるものを取る.pは既約多項式である.f ∈k[x]|f|< 1を満たすな らば,あるg∈k[x]が存在してf =pgと書ける.

...

) |f| < 1として,fpで割りf =pg+r (g, r k[x], degr <degp)と書く.

このとき|r|=|f−pg| ≤max{|f|,|pg|}<1だから,degpの最小性によりr= 0で ある.

任意のf ∈k(x)f =pn(p,f)g

h (g, h∈k[x], (g, h) = 1, (g, p) = 1, (h, p) = 1)

と一意に書ける.(g, p) = 1, (h, p) = 1より|g| = |h| = 1である.故に|f| = |p|n(p,f) となる.

(5)

逆に,p∈k[x]を既約多項式,c >1を実数として|f|p := 1

cn(p,f) と定めれば| · |p ∈A である.

(2) |x|>1のとき

y:=x1とすれば|y|<1だから(1)の議論が使える.この場合p=yと取れる.従って f = g

h, (g, h) = 1とすれば|f|=|y|deghdegg である.

さて,実数 c0 > 1を一つとる.既約多項式 p k[x]に対して |f|p := 1 cn(p,f)0

,また

|f| := 1

cdeg0 hdegg としてM := {| · |p |p k[x]は既約} ∪ {| · |}と定める.このとk(x)M をPF集合とするPF体である.

命題. PF体K の有限次拡大L/K もPF体である.

証明. 簡単のためL/K をGalois拡大としてG := Gal(L/K)とおく.K のPF集合を M とする.φ∈M に対してNφ :={Φ| ΦはLの絶対値,Φ|K =φ}とする.Φ0 ∈Nφ を一つ取れば,写像 a: G −→ Nφa(σ) := Φ0◦σ により定まる.Φ Nφ に対して n(Φ) := |a1(Φ)| と置き,N := ∪

φ∈M{Φn(Φ) | Φ Nφ} と定める.α Lに対して NL/Kα :=∏

σGασ とすればNL/Kα ∈K であり φ(NL/Kα) = Φ0(NL/Kα) = Φ0

( ∏

σG

ασ )

= ∏

σG

Φ0σ) = ∏

ΦNφ

Φ(α)n(Φ)

となる.故に

Φn(Φ)∈N

Φ(α)n(Φ) = ∏

φM

ΦNφ

Φ(α)n(Φ) = ∏

φM

φ(NL/Kα) = 1

であり,LN をPF集合とするPF体である.

. 代数体(Qの有限次拡大)と体k上の一変数代数関数体(k(x)の有限次拡大)はPF体 である.

K の非Archimeded的絶対値φに対してOφ := K | φ(α) 1}, pφ := K | φ(α) < 1} と定める.Oφ K は部分環,pφ ⊂ Oφ は極大イデアルである.

κφ :=Oφ/pφφの剰余体という.

K がPF体で,PF集合M がArchimedes的絶対値を含まないとする.

k0 := ∩

φM

Oφ

(6)

K の真の部分体である.

...

) 明らかに環である.α ∈k0\ {0}とすれば各φ∈M に対してφ(α)≤1であり,

積公式 ∏

φM

φ(α) = 1によりφ(α) = 1でなければならない.故にφ(α1) = 1とな りα1 ∈k0 である.

k0K の中で代数的に閉じている.またk0 ⊂κφ とみなせる.

PF体の絶対値φ∈M について,以下の条件を考える.

(R1) φはArchimedes的である.

(R2)φはdiscreteで,

{ κφは有限体 (M がArchimedes的絶対値を含むとき) [κφ :k0]<∞ (M がArchimedes的絶対値を含まないとき) (R) R1 またはR2

例えば R1 を満たす絶対値のことをR1 絶対値と呼ぶことにする.K をPF体で,PF 集合M がR絶対値を含むとする.部分体Q⊂K,部分環Z ⊂Qを次のように定める.

(1) M がR1絶対値を含むとき

命題1によりK の標数は0である.故にQ:=Q, Z :=Zとできる.また| · |Qの 通常の絶対値を表す.

(2) そうでないとき

x ∈K \k0 を一つ取りQ := k0(x), Z := k0[x]とする.(xはk0 上超越的であることに 注意する.) また| · |x1 に対応するQの絶対値を表す.

定理. K がPF体でM はR絶対値を含むとする.

(1) K/Qは有限次拡大である.

(2) 全ての| · | ∈M はR絶対値である.

定理.K について

K が代数体⇐⇒K がPF体で,M がR1絶対値を含む.

定理.K について

K が一変数代数関数体 ⇐⇒ K がPF 体で,M が R1 絶対値を含まずR2 絶対値を含 む.

※R絶対値を含まないPF体は存在する.

k を体,n > 1 として有理関数体 K := k(x1,· · · , xn) を考える.既約多項式 p k[x1,· · · , xn]から絶対値| · |p が定まり,多項式の次数から絶対値| · | が定ま

(7)

る.これら全体をM とすればK はPF体でM はR絶対値を含まない.

Qでは素因数分解ができる.| · |p の定義から,α Qの素因数分解をすることは全て の有限素数pについて|α|p を求めることと同じである.この考えを使えば,一般の代数 体について《素因数分解》を考えることができる.(これは,素イデアル分解を考えるこ とと本質的に同じである.)

. Q(

5) を考える.この代数体では《素因数分解》ができない事がよく知られてい る.6 = 2·3 = (1 +

5)(1−√

5) φをQ(

5)の絶対値で,φ|Q =| · |p (p̸=)とする.

= 2,3とすればφ(6) = 1である.故にφ(2) =φ(3) =φ(1 +√

5) =φ(1−√

5) = 1となる.

p= 2のとき φ(x+y√

5) =√

|x2+ 5y2|2 =

√ 1

2ord2(x2+5y2) = 1

2ord2(x

2+5y2)

となることが知られている.このφも同じ| · |2 で表す.

p= 3のとき.

5 = 1 + 2·3 + 0·32+ 2·33+· · · ∈Q3であることが知られている.

これにより|x+y√

5|3 が計算できる.φは以下の絶対値| · |3,1| · |3,2 のどちらかと なることが知られている.

|x+y√

5|3,1 :=|x+y√

5|3

|x+y√

5|3,2 :=|x−y√

5|3

(8)

よって

|2|2 = 1

21 = 1

22

, |2|3,1 =|2|3,2 = 1 30

|3|2 = 1

20 = 1

20

, |3|3,1 =|2|3,2 = 1 31

|1 +

5|2 = 1

2ord2(1+5)

= 1

21

|1 +

5|3,1 =|2 + 2·3 +· · ·|3 = 1 30

|1 +

5|3,2 =|1−√

5|3 =|−1 +

5|3 =|2·3 +· · ·|3 = 1 31

|1−√

5|2 = 1

2ord2(1+5)

= 1

21

|1−√

5|3,1 =|1−√

5|3 = 1 31

|1−√

5|3,2 =|1 +

5|3 = 1 30 だから2 = p22, 3 =p3,1p3,2, 1 +

5 = p2p3,2, 1−√

5 = p2p3,1, 6 = p22p3,1p3,2

《素因数分解》すると考えられる.

※Q(

5)をPF体にするためには,これらの絶対値を適当に冪乗する必要がある.

ところで,α Q(

5)× に対して素因数分解(|α|2,|α|3,1,|α|3,2,· · ·)

R>0 を対 応させる群準同型写像は単射ではない.そこでこの核を調べることが重要な問題となる.

一般に,次のように定義する.

定義. K をPF体とし,そのPF集合M はR 絶対値を含むとする.空でない有限集合 S ⊂M は全てのR1絶対値を含むとする.このとき

ε∈KS 単数⇐⇒任意の| · | ∈M \S に対して|ε|= 1. S 単数全体は乗法により群をなす.これをES と書く.

. K = C(x) のとき.M は R1 絶対値を持たないから S = とすれば E = C (Liouvilleの定理)

即ち,S 単数とは関数体における定数のようなものとも思える.

定義. ΛRsm次元の格子

(9)

⇐⇒一次独立なv1,· · · , vmRsが存在してΛ =Zv1+· · ·+Zvmと書ける.

. Z[i]C=R2は格子である.

. Z[

2]Rは格子でない.

| · | ∈S に対してES ∋ε−→ |ε| ∈R>0 は群準同型だからS ={| · |1,· · · ,| · |s}として ES ε−→ (|ε|1,· · · ,|ε|s) Rs>0 は群準同型である.準同型log : R>0 −→Rとあわせ て準同型L: ES ε −→ (log|ε|1,· · · ,log|ε|s) Rs を得る.ES の定義と積公式により log|ε|1+· · ·+ log|ε|s= 0である.即ちImL⊂ {(x1,· · ·, xs)Rs |x1+· · ·+xs = 0}

WS := kerLと書く.WS =k0 またはWS = ∈K N = 1} (N N)である.

命題. ImL⊂Rsは高々s−1次元の格子である.よってES =WS×Zm(0≤m≤s−1) と書ける.

(R2+) φは非Archimedes的で,κφ は有限体 (R+) R1 またはR2+

とする.勿論R2+ 絶対値はR2絶対値である.

定理. K をPF体で M はR+ 絶対値を含むとする.このときImLs−1次元の格子 をなす.即ちES =WS ×Zs−1

証明. ε1, . . . , εs ∈ES を「i ̸=j に対してi|j >1」となるように取れることが分かる.

このとき積公式よりi|i < 1となる.L(ε1), . . . , L(εs−1)がR上一次独立であることを 示せばよい.その為にはL(εi) = (ai1, . . . , ais) としてdet(aij)1i,js1 ̸= 0を示せば よい.

det(aij) = 0と仮定する.t:=s−1と書く.少なくとも一つは0でないx1,· · · , xt R

が存在して 



a11 · · · a1t ... . .. ... at1 · · · att



 x1

... xt

= 0

とできる.また

aij = logi|j

{ >0 (i̸=j のとき)

<0 (i=j のとき) である.

(10)

|xi|= max{|x1|, . . . ,|xt|}なるiを取ると 0 =|ai1x1+· · ·+aitxt|

≥ |aiixi| − |ai1x1+· · ·+aii1xi1+aii+1xi+1+· · ·+aitxt|

≥ −aii|xi| −(|ai1x1|+· · ·+|aii1xi1|+|aii+1xi+1|+· · ·+|aitxt|)

≥ −aii|xi| −(ai1|xi|+· · ·+aii1|xi|+aii+1|xi|+· · ·+ait|xi|)

=−|xi|(ai1+· · ·+ait)

=−|xi|(logi|1+· · ·+ logi|s1)

=|xi|logi|s >0

となり矛盾する.

K を代数体とする.K はPF体で,M は有限個のR1 絶対値を含む.S ⊂M をR1 絶 対値全体とするとき,EK :=ESK の単数群という.WK :=WS と置く.

系 (Dirichletの単数定理). K を代数体とすればEK =WK ×Zs−1. K =QのときはEQ =1}, WK =1}, s−1 = 0.

. K = Q(

2) のときは WK = 1}, s−1 = 1.故に EK = (Z/2Z)×Z.実際 EK =(1 +

2)n |n∈Z}と書ける.

参考文献

[1] 彌永 昌吉編,『数論』,岩波書店, 1969年,附録1

[2] E. Artin and G. Whaples, Axiomatic Characterization of Fields by the Product Formula for Valuations, Bull. Amer. Math. Soc. 51(1945), 469–492, http://www.

ams.org/journals/bull/1945-51-07/S0002-9904-1945-08383-9/

参照

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