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雑誌名 東京女子医科大学看護学会誌

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Academic year: 2022

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著者名 若林 留美

雑誌名 東京女子医科大学看護学会誌

巻 16

号 1

ページ 45‑48

発行年 2021‑03‑31

URL http://doi.org/10.20780/00032778

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東京女医大看会誌 Vol 16. No 1. 2021

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) がもたらした 看護実践・看護継続教育の変化

若林留美

(東京女子医科大学病院看護部 教育担当師長・慢性心不全看護認定看護師)

Ⅰ.新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的な流行による社会生活の変化

2019 年 12 月、中華人民共和国の湖北省武漢市で 肺炎患者の集団発生が報告され、武漢市の封鎖などの 強力な対策にも関わらず、新型コロナウイルス (SARS- CoV-2) の感染は世界に拡大し、世界保健機関は公衆衛 生上の緊急事態を 2020 年 1 月 30 日に宣言した(厚生 労働省,2020)。日本国内においては、2020 年 3 月 下旬から患者数が増加し、第 1 波が到来したことを契 機に、2020 年 4 月 7 日から 5 月 25 日まで緊急事態宣 言が発令された。緊急事態宣言下では、外出の自粛等、

社会活動が制限され、今までに経験したことのない状 況を強いられた。一旦は感染者数の発生が抑えられた が、緊急事態制限が解除された後は、再び、感染拡大 傾向となり、第 2 波、第 3 波が到来し、「3 密 ( 密閉 / 密集 / 密接 )」を避けた生活を継続し、感染防止対応と 社会生活とのバランスをどのようにとっていくかに苦 慮している状況にある。

医療機関においては、COVID-19 患者の診療や、感染 拡大防止への対応に全力を注ぎ、医療崩壊へつながら ないように、体制の整備を進めている。感染者数が増 加しはじめた当初は、医療材料が不足する事態に陥り、

また PCR 検査の体制も整わない状況や、医療施設等で のクラスター発生も多くみられた。医療者の多くは、

新たなウイルスとの見通しがたたない戦いに恐怖を抱 えながらも、COVID-19 対応と向き合い、医療者が果た すべき、社会的役割の遂行に奮闘している。

II.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

への当施設における対応

新型コロナウイルス感染症が、全国的に流行する緊 急事態の中、当施設においても、院内総力をあげての

未知なる感染症への戦いが始まった。国内で感染者数 が増加し始めた 2020 年 3 月からは、面会制限や入院 患者の PCR 陰性確認、外来でのトリアージ等で、院内 でクラスターが発生しないように感染予防対策の強化 に努めた。

2020 年 4 月からは、COVID-19 陽性患者専用病棟 ( 以 下、コロナ病棟 ) を開設するにあたり、病棟の再編成、

感染対策を考慮したゾーニングを実施し、医療スタッ フのローテーション体制を整えた。「COVID-19 陽性患 者」「COVID-19 疑い患者」は、通常診療患者とエリア を分けて、院内クラスターの発生予防に努めている。

このような状況で、医療体制を保持するためには、

医療スタッフに対する教育も重要である。COVID-19 の 理解を深め、医療者自身の安全を守りつつも必要なケ アが提供できるような知識・技術が必要となる。個人 防護具の着脱方法等の感染予防対策をはじめ、フィジ カルアセスメントの基本を押さえ、急変対応・気管挿 管の介助方法などを中心に、現場スタッフ、看護管理 者、スペシャリストが連携して、勉強会・オリエンテー ションを実施している。院内のスタッフが、COVID-19 に対して、正しい知識を持ち、個々人で感染予防対策 をしっかり行いながら、組織的に COVID-19 対応がで きるように取り組み続けている。

III.コロナ病棟(軽症・中等症対応病棟)

における、わたしの経験

私は、長年、循環器関連部署で勤務し、2012 年から は慢性心不全看護認定看護師としての活動を行ってき た。心血管疾患は、COVID-19 の重症化リスクの一つと しても挙げられており(厚生労働省,2020)、スペシャ リストとしては何ができるのか、自分の目で確かめ、

少しでも貢献したいという思いがあり、コロナ病棟で の勤務を希望した。

(3)

隔離された特殊な空間で過ごす患者に対して、全身 真っ白な防護服を装着した見慣れない医療者が、どの ように関われば、少しでも居心地よくいられるのか、

いつもに増して考える日々であった。中には、急速に 呼吸状態の悪化がみられた患者もおり、フィジカルア セスメントをしっかり実践しつつ、早めの対応も求め られた。

患者の思いをしっかり聞くには、ベッドサイドに腰 掛け、身体的つらさがある患者が会話による体力の消 耗を最小限にとどめることができるように、患者の口 元に自身の耳を近づけ、表情を見ながら患者の思いを 察するコミュニケーションが必要である。しかし、感 染リスクの観点からは、患者の唾液による飛沫感染を 回避できるように、会話時に距離をとる対応が望まし い。「患者と目線を合わせ、そばに寄り添う」という、

当たり前の看護も、時には制限を要する状況に苦悩し た。そのような状況の中でも、患者自身が大切にして いる家族や、退院後に望む日常に対する会話を意識す るように心がけた。 

また、ローテーションで配属される多くのスタッフ は、慣れない環境・対象へのケアに不安を抱いていた。

心電図モニタや、呼吸状態の変化を見慣れていないス タッフに対しては、スペシャリストとして一緒に患者

をみて、不安が軽減できるように努めた。

第 1 波直後の比較的落ち着いていた 2 週間という短 い期間であったが、日頃、自分自身が大切にしている 看護に気が付き意識化できたよい機会となった。また、

各部署からローテーションで配属されたメンバーの チームであっても、お互いを認め合い、学び合う機会 が持てたことは、とても貴重な経験となった。

IV.スペシャリスト会「COVID-19 関連対応 プロジェクト」での新たな取り組み

感染拡大防止の観点から、すべての患者・家族が行 動制限を強いられており、様々な困難感を抱えている 状況に、スペシャリストが連携することで何かできる のではないかと思い、「COVID-19 関連対応プロジェク ト」を立ち上げた。

「COVID-19 関連対応プロジェクト」は、スペシャ リストが領域を超え、コロナ関連部署や看護部との協 働により、COVID-19 に対応しつつ、質の高い看護の提 供を目指すために活動している。感染看護・リエゾン 看護・救急看護・集中ケア・がん看護・糖尿病看護・

脳卒中リハ看護・老年看護・心不全看護と、様々な領 域から 15 名のプロジェクトメンバーが中心となり、

緊急事態宣言

令和2年4月7日~ 月 日

厚生労働省 閲覧

初期対応 受け入れ開始 状況に合わせ対応

原則面会禁止

東京女子医 科大学病院

の対応 本院

入院: 陰性確認後 外来トリアージ

患者の受け入れ 新宿モデル

東京ルールにおける役割分担

クラスターを発生させない‼ゾーニングの徹底‼

通常診療 疑い症状なし陰性確認

疑い患者 ☑疑い症状あり 陰性確認未 確定患者 ☑陽性患者

感染症 の動向

一旦中止へ

● PCR 陽性者数  

厚生労働省 HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html(2020/12/15 閲覧 ) 図 1:新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に対する当施設の対応状況

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東京女医大看会誌 Vol 16. No 1. 2021

COVID-19 対応における問題点を抽出し、コロナ病棟へ の支援体制・勉強会の検討、面会制限下における患者・

家族ケア ( 面会や看取り、感染対策に関する情報提供な ど ) の検討を実施している。

その活動の一つとして、スペシャリスト・看護管理 者にアンケート調査を実施し、面会制限などの感染防 止対策により、臨床の場にどのような影響が出ている かを調査した ( 表 1)。その結果、意思決定や家族支援 等の場面で、COVID-19 対策による不利益が生じてお り、感染拡大防止と、患者の生活や生きがいにつなが るケアとのバランスを考え、状況に合わせた対応が求 められている状況が明らかになった。

患者・家族個々の不利益を最小限にとどめつつ、か つ、医療体制の崩壊を防ぎ社会活動全体が守られる体 制を目指していく必要がある。そのためにまずは、従 来通りの方法で解決できない状況に対面した際、どの ような工夫をすれば乗り越えられるか検討し、日々の ケアを見直すことが重要である。例えば、治療選択の

意思決定は、入院後に家族とともに IC を受け決定して いくことが従来は可能であったが、コロナ禍では難し い状況もでてくる。そのため、本人の意思を家族とと もに早めに共有できるように、治療の選択肢を情報提 供していくタイミングを早めるなど、合意形成の進め 方や Advance Care Planning に対する意識変化が、医療 者、患者・家族双方に必要となる。また、家族に対し て退院支援が十分にできない状況も発生しうるが、地 域や外来と密接に連携し、地域包括ケアがさらに進め ていけるような働きかけが必要になる。それらに加え て、遠隔診療や Web コミュニケーションツールの整備 を進め、面会制限下でも家族や地域とつながる方法を 充実させていくなどの新たな取り組みも必要となる。

このように、COVID-19 は、日常化している何気ない ケアの見直しや、新たなケア方法導入の契機となり、

それらがよりよい医療体制の整備につながる可能性も 秘めている。

意思決定支援への影響

・治療選択の意思決定を行う際、本人の状況によっては(高齢、認知機能等)決定までのプロセ スを本人ができないことがある。本人の意思確認ができない場合、キーパーソン等の考えを確 認するが、対面でないためお互いの真意が伝わりにくい。

・治療に対する家族の思いをきく機会がない。

退院支援への影響

・ストーマ造設等、医療処置の継続に家族のサポートが必要な場合、実際の患者をみての実技 指導が家族にできないため、退院後に心配な部分と家族の不安についての介入も難しい。

・退院後の心配や気がかりに家族を交えて対応する時間が、不十分な状況にある。

・在宅退院が可能な症例でも、家族は患者を見ていないため受け入れができず転院調整と なってしまう。

家族支援への影響

・家族と直接話す機会が減少し、電話では表情がわからず心の内をみることができない。家族 のメンタルフォローが難しい。

・変化していく患者の様子をみて納得していく過程がふめない。

・患者家族を含めた対面のICができず病状理解が難しい。

・IC時に、表情を見て、家族関係を察しながらの対応ができないため、理解度や家族の受け入 れ状態を把握しにくい。

・患者の状態が悪くなっていく過程で、医師から電話説明だけでは患者の状態を把握すること が難しい(現実とのギャップ)。

患者の精神面についての心配

・闘病意欲向上、精神的安定や意思決定のための家族からの支援が受けられにくい。

・家族とコンタクトがとれなくなることで、認知症の進行や、見捨てられたなどの思いが高まる ケースがある。

患者や家族の「これから」について の懸念

・病状変化をみることなく、面会が看取り間際となり、会話もできない状態で家族にとって死の受 け入れがちゃんとできているのか心配になることがある(複雑性悲嘆)。

・家族が子どもに会えず、発達・虐待・受け入れができない等のリスクが高まる(愛着形成不全)。

COVID-19陽性または疑い患者へ の影響

・感染防護具をフル装備で安全に装着するには時間がかかるため、通常であれば、見守りとい う選択ができる方でも、身体拘束をするケースがある。

・看取りが近い患者に対し、接触回数や時間を最小限にせざる負えない状況から十分なケアが できていないのではないかと葛藤を抱いている。

表1 COVID-19対応による臨床の場への影響(アンケート調査からの一部抜粋)

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看護者の倫理綱領において、「常に、個人の責任と して継続学習による能力の維持・開発に努める ( 第 8 条 )」( 日本看護協会,2003) と示されており、生涯発 達していくことが専門職者として求められている。ま た、「より質の高い看護を行うために、看護者自身の 心身の健康の保持増進に努める ( 第 12 条 )」( 日本看護 協会,2003) ともあり、自己研鑽を積みつつ、体調管 理にも責任をもつ必要がある。このように、専門職者 としての継続学習を支援する目的で、当施設において も院内教育体制が組まれているが、コロナ禍において は受講者の感染予防の視点を重視した研修計画が必要 となる。

新人看護職員に対しては、現場教育 (OJT:On-the- Job Training、オン・ザ・ジョブ・トレーニング ) をベー スに、集合研修も併用し、効率化を図りつつ質の高い 教育が提供できるように体制を整えている。例年は、

入職時、1 か月、3 か月、8 か月、まとめ研修と 5 回の 集合教育をプログラムしていた。しかし、コロナ禍に おいては、感染予防の観点から、従来通りの集合研修 は困難であると考え、集合研修を 3 回に減らし、1 回 40 名程度に人数を制限した分散研修や部署への訪問研 修を取り入れた。

新人 1 カ月研修は、看護部の教育担当が各部署に出 向き、部署の支援者と共に看護実践を振り返り成長を 確認するという研修方法に変更した ( 受講者数:212 名、

34 部署で合計 46 回実施 )。感染予防対策のための代替 え案として実施した研修であったが、部署の皆が知っ ている症例に対する看護実践場面を振り返るため学び を深めやすく、また、新人を通じて、自部署の良さに あらためて気づく機会となるなど、双方の学び合いの 発展につながる反応がみられた。

このように、従来とおりの教育支援ができない状況 を補うための新たな方法の模索は、型にはまった教育 体制を見直す機会となっている。コロナ禍を契機に、

看護継続教育体制を模索することは、今までの良さは 残しつつ最大限の学びにつながる研修の在り方を、再 考する機会となっている。

VI.コロナ禍がもたらす変化と今後の展望

コロナ禍の状況は、日頃行っている大切な看護に気 付く機会となり、当たり前に無意識に実践している暗

討する機会となり、看護ケアの発展につながる機会と もなりえる。そして、今までの医療の在り方が通用し ないからこそ、医療者間、患者・家族間との対話がよ り重要となり、つながろうとする気持ちの向上から、

連携が推進されていく可能性もある。

見通しがつかない状況の中、そして、常識が常識で なくなり変化が求められる中、不安やストレスも多い が、このようなポジティブな面にも目を向け、更に看 護・医療が発展していけるように知の創造をすすめて いきたい。

引用文献

日本看護協会(2003).看護者の倫理綱領 . https://

www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/rinri/

code_of_ethics.pdf (2020 年 11 月 24 日閲覧)

厚 生 労 働 省(2020). 新 型 コ ロ ナ ウ イ ル ス 感 染 症

(COVID-19) 診 療 の 手 引 き・ 第 3 版 .https://

www.mhlw.go.jp/content/000668291.pdf(2020 年 11 月 15 日閲覧)

厚生労働省(2020).新型コロナウイルス感染症オー プンデータ PCR 検査陽性者数 , https://www.mhlw.

go.jp/stf/covid-19/open-data.html(2020 年 12 月 15 日閲覧)

参照

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