環状化合物が包接錯体を形成する際の分子認識能の解明・・・・・・・・4 4
全文
(2) 目次. 序章 研究の背景 1. スピンプローブ法の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2. 高圧 ESR セルの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 3. 環状化合物が包接錯体を形成する際の分子認識能の解明・・・・・・・・4 4. 巨大分子内の微視的性質の解明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 5. 各章の要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 6. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21. 第一章. ニトロキシドプローブを用いた p-スルホナトカリックスアレーンおよ. び種々の CD の 2 方向包接錯体形成に関する置換基効果及び圧力効果 1.1 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 1.2 実験 1.2.1. 試薬・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27. 1.2.2. ESR を用いた測定法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28. 1.3 結果と考察 1.3.1. 包接平衡定数の決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29. 1.3.2. 置換基包接錯体の構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36. 1.3.3. 置換基包接錯形成における置換基効果・・・・・・・・・・・・38. 1.3.4. 置換基包接錯形成における圧力効果・・・・・・・・・・・・・42. 1.3.5. 置換基包接錯形成における塩効果・・・・・・・・・・・・・・50.
(3) 1.4 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 1.5 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58. 第二章 高圧 ESR スピンプローブ法を用いたトリグリセリド及びフォスファチ ジルコリンから構成される二重層膜の微視的性質の解明 2.1 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 2.2 実験 2.2.1. 試薬・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62. 2.2.2. ESR を用いた測定法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63. 2.3 結果と考察 2.3.1. 水相とベシクル相との間におけるニトロキシドプローブの分配・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64. 2.3.2. 水相とベシクル相との間のニトロキシドプローブの分配に及ぼす圧 力効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68. 2.3.3. 二重膜内における回転相関時間と局所粘度の見積もり・・・・・70. 2.4 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 2.5 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78. 第三章 高圧 ESR スピンプローブ法を用いたデンドリマー内部の微視的性質の 解明 3.1 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80 3.2 実験.
(4) 3.2.1. 試薬・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81. 3.2.2. ESR を用いた測定法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83. 3.3 結果と考察 3.3.1. デンドリマーとプローブが形成する包接錯体の構造・・・・・・83. 3.3.2. デンドリマー(Dendritic box)内部の極性・・・・・・・・・・85. 3.3.3. デンドリマー(Dendritic box)内におけるプローブの回転相関時間・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88. 3.3.4. 回転運動に対する圧力効果・・・・・・・・・・・・・・・・・89. 3.4 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 3.5 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94. 終章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96.
(5) 序章 研究の背景. 1. スピンプローブ法の概要 反磁性物質に不対電子(スピン)をもった化合物をプローブとして共存させ, スピンの磁気的挙動を通して,もとの物質の構造,機能,物性などを知る方法 は,Electron Spin Resonance(ESR)スピンプローブ法として知られている。例 えば,強度,線幅,超微細結合定数からは,それぞれプローブの濃度,回転運 動,周囲の極性等を知ることができる。スピンプローブ法は,プローブラジカ ルの ESR スペクトル解析から周辺の環境及び運動状態を探ることができる有 用な方法として,広範囲の分野で活用されている。スピンプローブ法及びスピ ンラベル法は,1970 年代中頃までにその典型的な使用法は確立されたが,対 象が広がるにつれて測定法に種々の工夫がなされ,また,理論的にもより精度 の高いものに発展してきている。 プローブ剤として使われるラジカルの基本は,酸化窒素ラジカル(ニトロキ シド(NO・))である。ニトロキシドラジカルをプローブに用いる理由は,g 値や窒素の超微細結合定数(hfcc)の異方性が大きく,プローブの周囲の環境 が ESR スペクトルに対して比較的に影響を与えやすいためである。また,立 体的な効果からニトロキシドラジカルは光や熱に対して安定であり,化学反応 性も小さいためプローブ剤として有用である。ニトロキシドラジカルに対する 周囲の環境の影響は,窒素原子の hfcc(AN)の変化から読み取ることができる。 1.
(6) Scheme 1. Canonical structure of nitroxide probe.. Scheme 1 はニトロキシドラジカルの共鳴を示しており,極性溶媒中では右側 の構造に近くなるため,N 原子上のスピン密度が増加し,AN の値は大きくなる。 この現象が生じるのは,ニトロキシドプローブの存在する環境の極性が高く(よ り親水的に)なれば AN の値は相対的に大きくなり,極性が低く(より疎水的に) なれば AN の値は相対的に小さくなるためである。例えば溶媒中のニトロキシド プローブの AN を把握しておき,そこへ何らかの刺激(包接化合物のホスト分子 の添加など)を与えた際の AN を測定すれば,ニトロキシドプローブのおかれた 環境の情報を,相対的な極性の観点から得ることができる。スピンプローブ法 より得られる他の情報については,後述する。本論文では,スピンプローブ法 を用い,また,その圧力効果から,これまで観測されていない包接化合物の錯 形成における分子認識能,二重膜及びデンドリマーの空孔の包接能と内部の微 視的性質の解明を目的として研究をおこなった. 2. 高圧 ESR セルの概要 本研究で用いた高圧 ESR セルを Figure 1 に示す。本研究が対象とする溶液化 学においては,およそ 600 bar まで外圧力を加えれば十分有益な情報を取得でき 2.
(7) る。高圧環境における ESR スピンプローブ法には非常に精密かつ高度な技術が 必要とされるという実験的な困難さのため,ESR での圧力効果の研究は報告さ れていない。しかしながら,我々の高圧 ESR セルはキャピラリー技術を用いる ことで 600 bar までの加圧が可能であり,高精度の測定を行うことができる。. stop valve. pump system. copper-beryllium cell syringe sample. copper-beryllium screw. glass cell (6 mm o.d., 1 mm i.d.) 50 mm. Figure 1. High-pressure cell for use in a commercial ESR spectrometer. 3.
(8) 3. 環状化合物が包接錯体を形成する際の分子認識能の解明 1967 年に Pedersen が分子認識能を持つ人工的な化合物として,クラウンエー テルを発見した。[1, 2] Pedersen とならんでノーベル化学賞を受けた Cram はこ れを様々な分子システムに展開し,ホスト―ゲスト化学(host-guest chemistry) の分野を開拓した。[3] ホストとは,分子を受け入れる側の分子であり,ゲスト は認識される側の分子のことである。このホスト―ゲスト化学は,近年盛んに おこなわれている超分子化学(supermolecule chemistry)の研究の発端であり, 例えばシクロデキストリン,シクロファンなどのマクロ環状分子に有機分子が 包接される場合(包接化合物)や,環状分子とダンベル型の分子との組み合わ された構造を持つロタキサン,また化学的に結合していない 2 個以上の環状化 合物が互いに鎖状に連結しているカテナンなどがあげられる。 シクロデキストリン(cyclodextrin, CD)は-1,4 結合の環状オリゴ糖である。 一分子に含まれるグルコース単位の数により-(6 量体),-(7 量体),-(8 量体)CD と呼ばれている。CD は台形でふたのない筒状をしており,狭い口の 方(primary side)には一級水酸基があり,広い口の方(secondary side)には二 級水酸基が存在する。そのために,CD は高い水溶性を示す。一方,壁に相当す る部分には親水基がないため,筒の内側は疎水的空間となる。したがって,CD は水中に疎水的空間を分散させることとなり,その中にゲスト分子を取り込む ことができる。ゲスト分子を取り込む際の重要な因子は,その空孔の大きさで ある。例えば,-CD の空孔はベンゼン分子の大きさと適合する大きさである。 空孔の大きさ(径)は CD を構成する糖ユニットの数により異なり,これに応じ てゲスト分子に対する選択性が変わる。 4.
(9) CD は基礎的研究の発展に伴い,その包接現象を利用して,工業分野でも不安 定化合物の安定化や不溶性化合物の可溶化などの用途に幅広く利用されている。 [4-8] 世界各国で食品添加物や医薬品として認められており,化粧品分野におい ても,CD の利用が脚光を浴びている。CD をはじめとする包接化合物の動的, 静的な性質は分子認識化学(Molecular recognition chemistry)と呼ばれ,盛んに 研究されており,酵素の基質認識のモデルともなっている。分子認識とはゲス ト分子を選択的に受け入れることである。分子認識にはゲスト分子の大きさ以 外にも様々な要因が関係しており,水素結合,van der Waals 相互作用,電荷,双 極子モーメントなどが重なることで,より精密な分子認識が可能となる。 カリックスアレーン(calixarene)はクラウンエーテルやシクロデキストリン に次ぐ第 3 の包接錯体化合物として注目されており,その特異な形状により分 子認識やイオン認識の研究が盛んにおこなわれている。1944 年,A. Zinke らに よってフェノール樹脂の硬化についての研究報告がなされ,水に不溶で融点の 高い四員環の物質を発見した。当初の科学技術は構造の解明及び合成をおこな うには十分ではなかったが,1978 年には C. D. Gutsche らにより 1H NMR による 化合物の同定がおこなわれ,分子構造が盃の形に似ていることからギリシャ語 のカリックス(calix: 盃)の芳香族(arene)類という意味でカリックスアレーン (calixarene)と命名された。[9] その後 R. Ungaro,A. Pochini らによって X 線 構造解析がおこなわれ,p-tert-butylcalix[4] arene と toluene が 1 対 1 の安定なかご 型構造の包接化合物を形成することが確認された。[10] カリックスアレーンは 柔軟なメチレン鎖で結合されたフェノールユニットを有する環状オリゴマーで あり,その内側は疎水的環境である。合成条件を選択することで特定の環員数 5.
(10) のものを選択的に得ることができ,現在ではフェノール数が 20 の Calix[20]arene の単離まで報告されている。[11] カリックスアレーンは,様々な目的に応じて 空孔サイズの制御が可能であるとともに,基本骨格がフェノールであるため化 学修飾が容易である。 1984 年に R. Ungaro らは lower rim へカルボキシル基を導入することによって, 初めて水溶性カリックスアレーンの合成に成功した。[12] 同年,新海らはフェ ノールユニットの p-位(upper rim)にスルホン酸基を導入した水溶性カリック スアレーン(Calix-S6 及びその誘導体)の合成を報告しており[13],水酸基の導 入によってイオノホア(親イオン性の化合物)としての機能を持つようになっ た。その後,様々な水溶性カリックスアレーンが合成され[14],フェノールユニ ットの水酸基部分の修飾による金属イオン捕集についても種々の報告がなされ ている。[15] 近年,ホスト―ゲスト化学における研究対象として脚光を浴びる とともに,キレート効果による抽出能の向上,高性能触媒,超高感度センサー, 超精密分離材料などの先端機能材料として実用面からも注目されている。しか しながら,カリックスアレーンの包接における分子認識能の解明は未だ十分で はなく,今後のさらなる研究が期待されている。[16] 本研究では,シクロデキストリン及びカリックスアレーンの包接挙動を置換 基効果や圧力効果等の観点から調べるため,その分子認識能についての検討を ESR 分光法によりおこなった。ゲスト分子の最大径がホストの空孔の開口径と 同程度の場合にはそのゲストは空孔内で自由回転が制御されるという現象が起 こる。Scheme 2 に示したように,①方向の回転は包接後も保持されるが②方向 の回転は制御される。その結果,分子の取り込み方にいくつかの様式が生じる 6.
(11) 場合あり,ゲストがどのような方向から空孔に包接されるかにより異性体錯体 が生成するものと思われるが,NMR 法を用いた研究では包接方向の違いによる 異性体の存在は示唆されるものの,分離・定量はなされていない。. ① ②. Scheme 2. Restricted rotational motion of guest molecules by the host molecules.. 1988 年に E. G. Janzen らによって合成された一つの分子内にフェニル基と tertブチル基をもつ新規ニトロキシドラジカル水溶液中に CD を加えると,溶液中の ラジカルの信号が消え,新たに 2 種類の ESR スペクトルが現れることが報告さ れた。[17-19] その超微細結合定数(hfcc)と g 値は錯形成により特徴的な変化 を示しており,得られた ESR スペクトルはフェニル基及び tret-ブチル基がそれ ぞれ CD 空洞に包接された 2 種類の置換基包接錯体(group-in)による異性体で あ る と 同 定さ れ た 。 [20, 21] こ の現 象 は 双 方 向 包 接( Bimodal inclusion or Bidirectional inclusion)と名づけられており,ESR 法で初めて検出されたことで ある(Scheme 3)。 7.
(12) H 3C O O H N CH3 H 3C CH3 C CH3 O O H 3C R. H 3C O H N CH3 CH3 C O CH3 H 3C O R. O H 3C. R-in. tert-butyl-in. Scheme 3. Bimodal inclusion complexation with calixarene.. ESR 法による検出は,ESR 分光法独特の時定数によるものであるといえる。 分光法にはそれぞれ得意とする時定数の守備範囲があり,たとえば可視紫外吸 収法ではナノ秒より速い現象も捉えることができる。しかし,NMR 法では概ね ミリ秒単位でしか追随できない。可視紫外吸収法で双方向包接錯体が検出でき なかったのは錯体異性体間のエネルギー差が分解能(線幅)よりはるかに小さ いためである。一方,NMR 法は十分な分解能はもっているが,異性体間の化学 平衡速度が速く,平均値しか見えない。[22] ESR 法の時定数はマイクロ秒付近 であり,錯体の寿命より十分短いうえに双方向異性体を分離するために十分な 分解能を持っており,ESR と新規ニトロキシドプローブを組み合わせて用いた カリックスアレーンの包接挙動の解明の研究に期待が寄せられる。実際,水溶 性カリックスアレーンにかさの高いニトロキシドプローブを包接させたところ, 2 種類の新規錯体の ESR スペクトルを観測できた。そのスペクトルの解析によ り phenyl-in 錯体と tert-butyl-in 錯体の形成が示された。本研究ではカリックスア レーンの分子認識能に関する新たな情報を得るために,比較的大きなフェニル 8.
(13) 置換体を有する数種の-Substituted 2,4,6-trimethoxybenzyl(tert-butyl)nitroxide を合 成し,それらのプローブを用いて Calix-S8 の双方向包接錯体を形成させ,カリ ックスアレーンの包接挙動を置換基効果や圧力効果の観点から調べると同時に, その分子認識能についての検討を ESR 分光法によりおこなった。また,ホスト 分子として種々の CD(-CD,-CD,G--CD)を用い,Calix-S8 の包接挙動(分 子認識能)との比較検討をおこなった。. 4. 巨大分子内の微視的性質の解明 生体膜の主要構成成分であるリン脂質は,分子内に親水性と疎水性のグルー プをもつ両親媒性物質である。水の中におけるリン脂質は,温度,水分量,種 類に依存してさまざまな分子集合をとる。例えば,親水性の強さに応じて,球 状ミセル,ヘキサゴナル構造,ラメラ構造を形成する。一般的には,親水性と 疎水性のバランスのとれた物質は水の中でラメラ構造を形成し,その物質の濃 度が比較的低い場合には,閉鎖小胞すなわちリポソーム(liposome)となる。[23] リポソームは脂質二重膜で構成される球形の自己閉鎖型の構造であり,1964 年,イギリスの Bangham らによって発見された。[24] リポソームのサイズは 20 nm~数 μm であり,4 nm の厚さのひとつまたは複数の同心膜から構成され,多 重膜リポソーム(multilamellar vesicle: MLV)と一枚膜リポソーム(unilamellar vesicle)に分けられる。リポソームは主に MLV を指し,一枚膜リポソームは phospholipid vesicle と呼ばれることが多い。一枚膜リポソームは大きさに基づい て,小さな一枚膜リポソーム(small unilamellar vesicle: SUV),大きな一枚膜リ 9.
(14) ポソーム(large unilamellar vesicle: LUV),巨大リポソーム(giant unilamellar vesicle: GUV)に分類でき,その大きさは,SUV が直径 10 nm 以下,LUV は 100-1000 nm,GUV は 1000 nm 以上とされている。大きさはリポソームの生成方 法によりコントロールでき,今日では低分子及び高分子物質をリポソーム内に 封入あるいはリポソーム膜内に導入することも可能である。 リポソームの利用は,基礎的研究面及び実用面への応用の二つに大別される。 [25] 基礎的研究面では,リポソームは生体系モデルとして物理化学的性質の検 討がなされてきた。例えば,相転移や膜の流動性,膜への分配などの様々な性 質が検討された。更に,種々の細胞機能の解析モデルや生体膜が関与する生物 機能の再構成にもリポソームが用いられている。実用面では,病気の診断,治 療,予防などに応用されている。例えば,リポソームを用いて細胞内へ遺伝物 質を導入する遺伝子治療が試みられている。[26, 27] また,癌治療や免疫反応に よる病気診断の検討もなされている。特に drug delivery system(DDS)のマイク ロカプセルとしての役割は有用である。リポソームが DDS に用いられる主な理 由は,生体系から取りだした細胞膜から作られているため無毒かつ生物分解性 であるためである。リポソームは親水性と疎水性の両方の分子を内部に取り込 むことができるため,様々な薬を体内の患部に届けることに適していると言え る。本研究では,両親媒性の膜として DLPC リポソームを用いた。リン脂質と して DLPC を用いた理由は,相転移による膜の違いを考慮したためである。典 型的なリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)と水との系では副転移,前 転移,主転移の三つの相転移点が存在し,これらの相転移点を挟んで低温側か ら順に LC 相(結晶相),L'相(ゲル相),P'相(リップル相),L相(液晶相) 10.
(15) の四つの相の存在が知られている。結晶相とゲル相は流動性が低く硬い相であ るため,リポソーム内部に物質を含むことには向いているが,膜内における分 配については議論が行いにくい。そこで流動性が高く柔らかい相である液晶相 で実験を行うことにした。しかし,相転移温度はリン脂質によって変化するた め,室温での実験を行いやすいジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC,相 転移温度:0℃)を用いて,リポソームの二重膜内部の微視的性質について検討 をおこなった。 イオン性を持つリン脂質由来のリポソームに対し,非イオン性(ノニオン性) の二重膜を形成する硬化ヒマシ油系非イオン界面活性剤は,低刺激,低毒性で 安全性が高い。また,分子設計による機能付与が比較的容易であるため,古く から香粧品や医薬品の分野で広く知られている。[28] その中でもトリグリセリ ドの誘導体である HCO は三つの脂質部分が同様な構造で,極めてユニークな分 子構造を持つ両親媒性の物質である。本研究ではオキシエチレン鎖が 10 の HCO を用いて,二重膜のダイナミクスについて詳細に検討をおこなった。 デンドリマーは,規則正しい枝分かれ構造を持つ樹木状多分岐高分子であり, 生体内のナノスケール領域の現象を理解するために重要な物質である。その化 学構造は,中心核,枝分かれ官能基,反復単位,末端官能基という四つの異な る部位を持つ。枝分かれ官能基はデンドリマーの成長における分岐点であり, 反復単位はいわゆる「世代(generation)」を構成する。 デンドリマーの歴史は 1984 年に始まる。第 1 回国際高分子会議において,ト ポロジー的に新しい構造高分子として Tomalia らによって発表され,その原著論 文は 1985 年に Polymer Journal 誌に掲載された。[29] これまでのデンドリマーに 11.
(16) 関する研究の多くは新規デンドリマーの開発に重点がおかれていたが, 1990 年 代に入ると,次第にデンドリマーの機能の解明に注目が集まり,また,機能の 解明に関する研究が盛んにおこなわれている。 規則的な分岐構造からなるデンドリマーは,化学構造,分子量のみならず, 分子形状や分子サイズが抑制された新しいタイプの精密高分子として位置づけ ることができる。現在では,学術的研究だけでなく,一般的な高分子材料とし てナノカプセル,遺伝子ベクター,またエレクトロニクス材料,及び光学材料 などへの応用も試みられている。デンドリマーは,次世代を担う新素材として 極めて有望な高分子である。 最近では,「樹木状ボックス(dendritic box)」の概念[30, 31] に基づいて,デ ンドリマー内部の空隙にゲスト分子を取り込む現象に関する研究が進んでいる。 [32] Naylor らは,アスピリンのような有機分子がデンドリマーの内部に導入さ れることを NMR 法によって示した。[33] Fréchet らは,蛍光プローブ分子であ るピレンのデンドリマー内部への包接について報告した。[34, 35] デンドリマー 内部へのゲスト分子の物理的内包は,ゲスト分子を保持するようなデンドリマ ーの化学構造,内部の空隙の大きさ,そして浸透した溶媒分子の存在によって 影響される。Murat と Grest,Imae らは小角中性子散乱及び分子動力学シミュレ ーションを用いた定量的な解析により,デンドリマーが剛体球ではなく,分子 内部に小さな分子が出入りできる空隙を持つスポンジ状の分子であることを示 した。[36, 37] デンドリマーは世代数を変化させることにより,その分子サイズ をナノメートルスケールで比較的精度良く制御することが可能である。コア部 から一層ずつ外側に広がるにつれて分子鎖密度が増加するため,最外殻の密度 12.
(17) は高く,デンドリマー内部の密度は疎となる。そのため,デンドリマーは分子 内空孔を持つナノカプセルとしての利用が試みられている。 上記の脂質二重膜及びデンドリマーは,内部に物質を取り込むことができる 特徴を活かして様々な利用が試みられているものの,その内部の微視的性質に ついての解明は未だに十分にはおこなわれていない。本研究ではこれら巨大分 子について,スピンプローブ法を用いてそれらの内部の微視的性質を観測した。 なお,巨大分子には反磁性体を用いたため,観測に適した常磁性プローブをド ープする必要がある。今回はスピンプローブとして,安定なニトロキシドラジ カルを使用した。. 5. 各章の要旨 本論文は大きく分けて次の三つの研究内容より構成されている。. 第一章: ニトロキシドプローブを用いた p-スルホナトカリックスアレーン及び 種々の CD の双方向包接錯体形成に関する置換基効果及び圧力効果 第二章: 高圧 ESR スピンプローブ法を用いたトリグリセリド及びフォスファチ ジルコリンから構成される二重層膜の微視的性質の解明 第三章: 高圧 ESR スピンプローブ法を用いたデンドリマー内部の微視的性質の 解明. 各章の要旨は下記の通りである。 13.
(18) 第一章: ひとつの分子内に比較的大きな置換基を 2 つ以上有する特徴的な構 造を持つニトロキシドプローブ(-substituted phenyl-2,4,6-trimethoxybenzyl tert-butyl nitroxides)を数種合成した。そのプローブを用い,水溶性カリック スアレーン(p-sulfonatocalix[8]arene (Calix-S8))及びシクロデキストリン類 (cyclodextrin (CD))による置換基包接錯体の形成を調べたところ,置換基包 接平衡は,Scheme 1 に示したように,-位のフェニル基包接錯体(phenyl-in (R-in))と tert-ブチル基を包接した包接錯体(tert-butyl-in)との置換基包接平 衡が成立することがわかった。それらの包接平衡定数を決定し,また,包接 平 衡 に 及 ぼ す 圧 力 の 効 果 を 調 べ , 種 々 の ホ ス ト 分 子 が R-in 錯 体 及 び tert-butyl-in 錯体を形成する際の体積差である反応体積(V)を見積もった。 また,置換基包接錯体の形成に及ぼす置換基の影響について詳細に考察し, 種々のホスト分子の分子認識能の比較をおこなった。その結果,Calix-S8 及び 種々の CD がニトロキシドプローブと形成する双方向包接錯体においては, 包接される置換基のかさ高さや包接時の分子間相互作用が置換基の認識能に 重要な役割を果たしており,特に-位の置換フェニル基の寄与が大きいこと がわかった。更に,シクロデキストリンの縁に,かさ高いグルコシル基を有 する G--CD の場合,グルコシル基の立体障害が包接平衡に特異的な影響を与 えることがわかった。置換基包接平衡に及ぼす圧力効果から見積もった反応 体積に基づいた体積の観点からの考察では,同じ 8 員環の Calix-S8 と-CD の 双方向包接錯形成から,-CD の分子認識能が,自由度のより高い環状分子で ある Calix-S8 の分子認識能と比べて優れていることがわかった。また,7 員環 の-CD と G--CD の双方向包接錯形成においては,G--CD の双方向包接錯 14.
(19) 体は,大きな置換基であるグルコシル基の影響を受けるため,-CD に比べて 分子認識能が低下することがわかった。更に,CD による包接平衡の圧力効果 においては,CD の空孔内から排出される水分子の数が,包接能に大きな役割 を担っていることも明らかにした。 第二章: Ttriglyceride(HCO-10)及び phosphatidylcholine(DLPC)から構成さ れる二重膜の膜内の微視的性質について,高圧 ESR スピンプローブ法を用い て検討した。ベシクル溶液にニトロキシドプローブを添加すると,プローブ は,水相とベシクル相に分配されており,その分配係数をプローブの ESR ス ペクトルの解析から決定できることを示した。外圧力を変化させて,水相と ベシクル相の間の分配平衡定数への影響を調べると,プローブの分子サイズ と HCO-10 及び DLPC 二重膜の組織間の空隙が分配平衡定数の大きさに影響 していることがわかった。ここでの研究で用いたニトロキシドプローブの多 くにおいては,圧力を高くするにつれて HCO-10 二重膜に対する分配平衡は 水相側へシフトした。しかしながら,DLPC 二重膜に対する di-tert-butyl nitroxide(DTBN)の分配平衡は,圧力を高めるにつれてベシクル相側へシフ トした。更に,膜中に存在するプローブの ESR シグナルの異方性から,HCO-10 及び DLPC ベシクルの内部におけるプローブの回転運動の情報を得た。その 結果,ベシクル相の内部での種々のプローブの回転相関時間(R)は,圧力を高 くするにつれて増加することがわかった。また,回転相関時間の圧力依存か ら,回転運動に対する活性化体積(V‡)を見積もることができ,その大きさ は TEMPO ( 2,2,6,6-tetramethyl-piperidine-1-oxyl ) > DTBN > DMDEN (2,2-dimethyl-5,5-diethylpyrroline N-oxide)の順であった。この順は,ニトロ 15.
(20) キシドプローブとベシクルとの間の相互作用の大きさが反映されており,ベ シクル内部の空孔の大きさが明らかにされた研究結果である。 第三章: デンドリマーは樹木状多分岐高分子化合物であり,内部には多数の空 孔(dendritic box)を有している。本研究では高圧 ESR スピンプローブ法によ り,デンドリマーの空孔内にあるプローブの ESR スペクトルから空孔内の性 質,及びその圧力効果に関する知見を初めて得た。ニトロキシドプローブに過 剰のデンドリマーを添加し,すべてのプローブをデンドリマー内部に包接させ た。プローブの ESR スペクトルを観測し,その線幅からプローブのデンドリ マー内での回転相関時間を見積もった。プローブには,大きさの異なる数種の ニトロキシドプローブを選定し,そのプローブサイズと回転相関時間との関係 から,プローブとデンドリマーとの間の相互作用について考察した。また,回 転運動に対する活性化体積を求め,デンドリマー内部の性質について,体積の 観点から考察した。その結果,デンドリマー内の空孔サイズだけでなく,プロ ーブとデンドリマーの内壁との相互作用が回転相関時間及び活性化体積の大 きさに密接に関係していることがわかった。更に,2 種類のデンドリマー (ethylenediamine core polyamidoamine dendrimer G4 (PAMAM)及び cyclotriphosphazene-phenoxymethyl-(methylhydrazono) dendrimer G4.5 (PMMH))内部のプロー ブの運動に及ぼす圧力効果を調べ,デンドリマー内部の局所粘度(微視的性質) の圧力変化(P bar/1 bar (=R(P bar)/R(1 bar)))を評価した。その結果,PAMAM と PMMH では,外圧の変化に伴い,内部の微視的性質の変化の様相が異なり, 疎水性のフェニル基を多く有する PMMH の空孔内では,PAMAM に比べ,外 圧力により性質(粘性)が変化しやすいことを明らかにした。 16.
(21) General introduction. The electron spin resonance (ESR) spin probe method is an excellent technique for learning about the property and structure of biological membranes and micelles. We can get a lot of information from ESR spectra. For example, intensity, line width and hyperfine coupling constant (hfcc) give the useful informations on the concentration of nitroxide probe, rotational motion, and environmental polarity. Using the nitroxides spin probe method, we have examined the molecular recognition ability of cyclodextrin and calixarene through the group-inclusion complexation and further discussed on microscopic environmental characteristics inside of vesicles and dendrimers. Details about our study will be described later. Chapter 1: Characteristic effects of substituent and external pressure on group-inclusion complexation with p-sulfonatocalix[8]arene and several cyclodextrins.. p-Sulfonatocalix[8]arene (Calix-S8) and cyclodextrins (CDs) are cyclic oligomers that possess hydrophobic cavities capable of forming inclusion complexes with a variety of organic molecules in aqueous solution. By using unique nitroxide probes which have more than one bulky group, Kotake et al. have suggested that CD can recognize a functional group of a guest molecule. In this study, to obtain the further information, using various -Substituted 2,4,6-trimethoxybenzyl(tert-butyl)nitroxide as 17.
(22) spin probes, we examined the pressure effects on the group-inclusion complexation with Calix-S8 and the ability to recognize various functional groups by Calix-S8 is characterized, compared with the group-recognition by CDs (-CD, -CD, G--CD). With a large excess of Calix-S8 over nitroxide probes, two inclusion complexes have been shown to be spectroscopically discriminated by ESR spectroscopy. The two distinct inclusion complexes are assigned to R-in and tert-butyl-in complexes.. H 3C O O H N CH3 H 3C CH3 C CH3 O O H 3C R. K, V. R-in. H 3C O H N CH3 CH3 C CH3 O O H 3C R. O H 3C. tert-butyl-in. From the ESR spectral simulation of group-in inclusion complexes, we found that Calix-S8 forms 1:1 inclusion complex with nitroxide probe, and evaluated the association constants (K) for group-in inclusion of Calix-S8. The K values for nitroxide probes with Calix-S8 and CDs and their pressure dependences (reaction volumes: V) for group-in inclusion were estimated. The V values for Calix-S8 inclusion showed positive values (V = 1.9-6.3 cm3 mol1). Further, we compared the inclusion behavior of Calix-S8 of group-recognition with those of CD inclusion. Based the results, we have discussed the difference in the group-in inclusion behaviors of Calix-S8 and CDs in detail. 18.
(23) Chapter 2: Macroscopic characterization of bilayer membranes composed of triglyceride and phosphatidylcholine investigated using high-pressure ESR spin probe technique.. The effect of high static pressure on the microscopic properties of triglyceride (HCO-10) and phosphatidylcholine (DLPC) membranes was investigated by ESR spectroscopy. The external pressure was varied to ascertain the distribution equilibrium constant between the aqueous and vesicle phases, depending on the molecular sizes of various nitroxide probes relative to that of the interstitial space of the HCO-10 and DLPC membranes. The distribution equilibrium of any probe for the HCO-10 membrane was shifted to the aqueous phase side with increasing the external pressure. However, the distribution equilibrium of di-tert-butyl nitroxide (DTBN) for the DLPC membrane was shifted to the vesicle phase side with increasing external pressure. Furthermore, information on the rotational motion of the nitroxide probes in the HCO-10 and DLPC vesicle was obtained from the anisotropic ESR signals. Rotational correlation times (R) of the nitroxide probes in the vesicle phases increased with increasing external pressure. The magnitude of the activation volume (V‡) obtained using R in both vesicles is TEMPO (2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl) > DTBN > DMDEN (2,2-dimethyl-5,5-diethylpyrroline N-oxide), which might be attributed to the interaction between the probes and the membrane chains.. 19.
(24) Chapter 3: Micro-environment inside the dendritic box and the effect of high static pressure as studied with ESR spin probe technique.. Dendrimers are a new class of porymeric materials. They are highly and regularly branched, monodisperse macromolecules. It is known that dendrimers are able to encapsulate the guest molecules into the dendritic boxes as a nanocapsule. However, the microscopic properties inside dendrimer have not been well established yet. This study is aimed at examining how external pressures alter the microscopic properties inside dendrimers. Using the spin probe method at high pressure, we conducted a volumetric study concerning the microscopic properties inside the cavity of dendrimers. This is the first time that the effect of pressure on the microscopic properties inside dendrimers has been elucidated. High static pressure was applied to the inclusion complexes of nitroxide probes with Ethylenediamine core polyamidoamine dendrimer G4 (PAMAM) and cyclotriphosphazene-phenoxymethy-(methylhydrazono) dendrimer G4.5 (PMMH) and the influence of pressure on the rotational motion of 3 kinds of nitroxide probes was investigated. The rotational correlation times (R) of probes inside dendrimers, determined from ESR line broadening, are obviously large in comparison with those in pure CH2Cl2 solution, and increase with increasing external pressures. We found the distinctive pressure effects on the rotational motions inside PAMAM and PMMH dendrimers: V ‡ = 2.7-7.6 cm3 mol1 for PAMAM and 16.3-22.8 cm3 mol1 for PMMH. The pressure results show that local viscosity inside the PMMH dendritic box is sensitive for external pressure, 20.
(25) compared with that inside PAMAM dendrimer.. 6. 参考文献 [1] C. J. Pedersen, J. Am. Chem. Soc., 89, 7017-7036 (1967). [2] C. J. Pedersen, Angew. Chem., 100, 1053-1059 (1988). [3] D. J. Cram, M. Cram, Science, 183, 803-809 (1974). [4] T. kuwabara, A. Nakayama, A. Ueno, F. Toda, J. Phys. Chem., 98, 6297-6303 (1994). [5] E. Iglesias, A. Fernandez, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 1691-1700 (1998). [6] K. Redman, B. L. May, S. D. Kean, P. Clements, C. J. Easton, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 1711-1718 (1999). [7] I. Fernández, L. García-Río, P. Hervés, J. C. Mejuto, J. Pérez-Juste, P. RodríguezDafonote, J. Phys. Org. Chem., 13, 664-669 (2000). [8] G. Grabner, K. Rechthaler, B. Mayer, G. Kohler, J. Phys. Chem. A, 104, 1365-1376 (2000). [9] C. D. Gutsche, R. Muthukrishnan, J. Org. Chem., 43, 4905-4906 (1978). [10] a) G. D. Andreetti, R. Ungaro, A. Pochini, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1005-1007 (1979). b) G. D. Andreetti, R. Ungaro, A. Pochini, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 533-534 (1981). [11] D. R. Stewart, C. D. Gutsche, J. Am. Chem. Soc., 121, 4136-4146 (1999). [12] A. Arduini, A. Pochini, S. Reverberi, R. Ungaro, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 21.
(26) 981-982 (1984). [13] S. Shinkai, S. Mori, T. Tsubaki, T. Sone, O. Manabe, Tetrahedron Lett., 25, 5315-5318 (1984). [14] a) S. Shinkai, K. Araki, T. Tsubaki, T. Sone, O. Manabe, Tetrahedron Lett., 26, 3343-3344 (1985). b) S. Shinkai, K. Araki, O. Manabe, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 187-188 (1998). c) M. Dudic, A. Colombo, F. Sansone, A. Casnati, G. Donofrio, R. Ungaro, Tetrahedron, 60, 11613-11618 (2004). [15] a) R. M. Izatt, J. D. Lamb, R. T. Hawkins, P. R. Brown, S. R. Izatt, J. J. Christensen, J. Am. Chem. Soc., 105, 1782-1785 (1983). b) S. R. Izatt, R. T. Hawkins, J. J. Christensen, R. M. Izatt, J. Am. Chem. Soc., 107, 63-66 (1985). c) S. Shinkai, Tetrahedron, 49, 8933-8968 (1993). d) V. Böhmer, Angew. Chem. Int. Ed., 34, 713-745 (1995). e) A. Ikeda, S. Shinkai, Chem. Rev., 97, 1713-1734 (1997). [16] a) S. Shinkai, T. Arimura, H. Satoh, O. Manabe, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1495-1496 (1987). b) A. W. Colemen, S. G. Bott, S. D. Morley, C. M. Means, K. D. Robinson, H. Zhang, J. L. Atwood, Angew. Chem. Int. Ed., 27, 1361-1362 (1988). c) K. Goto, Y. Yano, E. Okada, C.-W. Liu, K. Yamamoto, R. Ueoka, J. Org. Chem., 68, 865-870 (2003). d) H.-J. Buschmann, L. Mutihac, E. Schollmeyer, J. Incl. Phenom. Macrocycl. Chem., 46, 133-137 (2003). e) N. Kon, N. Iki, S. Miyano, Org. Biomol. Chem., 1, 751-755 (2003). [17] Y. Kotake, E. G. Janzen, Chem. Express, 3, 715-718 (1988). [18] a) E. G. Janzen, Y. Kotake, J. Org. Chem., 54, 5421-5422 (1989). b) Y. Kotake, E. G. Janzen, Free Rad. Res. Comms., 10, 103-108 (1990). 22.
(27) [19] Y. Kotake, E. G. Janzen, J. Am. Chem. Soc., 110, 3699-3701 (1988). [20] Y. Kotake, E. G. Janzen, Chem. Phys. Lett., 150, 199-203 (1988). [21] Y. Kotake, E. G. Janzen, J. Am. Chem. Soc., 111, 5138-5140 (1989). [22] a) S. Shinkai, K. Araki, T. Matsuda, O. Manabe, Bull. Chem. Soc. Jpn., 62, 3856-3862 (1989). b) M. Nishida, D. Ishii, I. Yoshida, S. Shinkai, Bull. Chem. Soc. Jpn., 70, 2131-2140 (1997). [23] A. D. Bangham, M. M. Standish, J. C. Watkins, J. Mol. Biol., 13, 238-252 (1965). [24] A. D. Bangham, R. W. Horne, J. Mol. Biol., 8, 660-668 (1964). [25] 寺田弘, 吉村哲郎 著, 「ライフサイエンスにおけるリポソーム―実験マニ ュアル―」, シュプリンガー・フェアラーク東京 (1992). [26] I. Eggens, B. Fenderson, T. Toyokuni, B. Dean, M. Stroud, S. Hakomori, J. Mol. Biol., 264, 9476-9484 (1989). [27] R. Pytela, M. D. Pierschbacher, E. Ruoslahti, Cell, 40, 191-198 (1985). [28] R. Handjiani-Vila, A. Ribier, B. Rondot, C Vanlerberghie, Int. J. Cosmet. Sci., 1, 303-314 (1979). [29] D. A. Tomalia, H. Baker, J. Dewald, M. Hall, G. Kallos, S. Martin, J. Roeck, J. Ryder, P. Smith, Polym. J., 17, 117-132 (1985). [30] J. F. G. A. Jansen, E. M. M. de Brabander-van den Berg, E. W. Meijer, Science, 266, 1226-1229 (1994). [31] J. F. G. A. Jansen, E. W. Meijer, E. M. M. de Brabander-van den Berg, J. Am. Chem. Soc., 117, 4417-4418 (1995). [32] G. R. Newkome, C. N. Moorefield, F. Vögtle, Dendritic Molecules. Concept, 23.
(28) Synthesis, Perspectives, Wiley-VCN, Weinheim (1996). [33] A. M. Naylor, W. A. Goddaed, G. E. Kiefer, D. A. Tomalia, J. Am. Chem. Soc., 111, 2339-2341 (1989). [34] J. M. J. Fréchet, Science, 263, 1710-1715 (1994). [35] C. J. Hawker, K. L. Wooley, J. M. J. Fréchet, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1287-1297 (1993). [36] M. Murat, G. S. Grest, Macromolecules, 26, 3108-3117 (1993). [37] T. Imae, K. Funayama, K. Aoi, K. Tsutsumiuchi, M. Okada, M. Furusaka, Langmuir, 15, 4076-4084 (1999).. 24.
(29) 第一章 ニトロキシドプローブを用いた p-スルホナトカリックスアレーン 及び種々の CD の双方向包接錯体形成に関する 置換基効果及び圧力効果. 1.1 序論 カリックスアレーン及びシクロデキストリン(CD)は疎水的空孔を持つ環状 オリゴマーであり,その空孔内に様々な有機分子を取り込み,包接化合物を形 成することが良く知られている。[1.1, 1.2] シクロデキストリンは、製薬や食品 の分野でも広く使われており,包接錯体の構造や動力学に関する多くの研究が おこなわれている。[1.3] カリックスアレーンの包接では,フェノールユニット の p-位(upper rim)にスルホン酸基を持つ水溶性の p-sulfonatocalixarenes が様々 な有機分子と包接化合物を形成することが報告されており,更に薬学や産業用 途にも利用されている。[1.4] NMR分光法は,シクロデキストリンやカリックスアレーンの包接化合物の形 成を確認するための一般的な手法として用いられている。しかしながら,NMR では速くてミリ秒単位の変化にしか追随できないため,フリーのプローブと包 接錯体のシグナルを分離することができない。[1. 5] 一方,電子スピン共鳴(ESR) 分光法はマイクロ秒近辺まで追随可能であるため,ESRを用いれば,フリーのプ ローブと包接錯体のスペクトルを分光学的に区別して捉えることができる。実 際にKotake及びJansenらは,一つの分子内に比較的大きな置換基をいくつか有す 25.
(30) る特徴的なニトロキシドプローブが,2種類の包接錯体を形成することを示した。 [1.6] また我々は,2,4,6-trimethoxybenzyl(tert-butyl)nitroxidesをゲスト分子として 用いて,p-sulfonatocalixareneや種々のシクロデキストリンとの双方向包接錯体 (Bidirectional inclusion or Bimodal inclusion)の形成を確認した(Scheme 1.1)。 [1.7, 1.8]. H 3C O H N CH3 CH3 C CH3 O O H 3C R. H 3C O H N CH3 CH3 C O CH3 H 3C O R. O H 3C. O H 3C. R-in. tert-butyl-in. Scheme 1.1. Bimodal inclusion complexation with calixarene.. 本研究では,特徴的な構造を持つ数種類の-substituted phenyl-2,4,6-trimethoxybenzyl (tert-butyl) nitroxidesをゲスト分子として用い,p-sulfonatocalix[8]arene (Calix-S8)や種々のシクロデキストリン(-CD,-CD,G--CD)との双方向 包接錯体の形成や,置換基認識能力の特徴及びその圧力効果について高圧ESR 法により検討をおこなった。高圧下における包接錯体の形成は,カリックスア レーン及びシクロデキストリンの包接挙動を特徴づけるための手法として有用 であり[1.7, 1.8],体積変化の観点から,それぞれのホスト分子の分子認識能の違 いについて,詳細に考察をおこなった。 26.
(31) 1.2 実験 1.2.1. 試薬. -CD,-CD 及び G--CD(Mono-glucosyl--CD)は東京化成工業株式会社(東 京)より購入した。Calix-S8 は同仁化学研究所(熊本)より購入した(Figure 1.1)。 Figure 1.1 に示した-Substituted 2,4,6-trimethoxybenzyl-(tert-butyl)nitroxide は, N-tert-butyl-2,4,6-trimethoxyaniline N-oxide(Aldrich Chemical Co.)及びグリニヤー ル試薬を用い, Kotake 及び Janzen らの報告に従い合成した。[1.9] 測定溶媒に は蒸留水を使用した。. 27.
(32) Guest molecules. Host molecules. Figure 1.1. Structures of nitroxide probes and host molecules (Calix-S8 and CDs).. 1.2.2. ESR を用いた測定法. リン酸緩衝液(pH =6.9,イオン強度 = 0.05)はリン酸二水素カリウム及びリ ン酸二水素ナトリウムを用いて作製し、溶媒として使用した。ニトロキシドプ ローブの濃度は,ニトロキシドプローブ間のスピン交換の影響を無視できるよ 28.
(33) うに低濃度(2×104 mol dm3)に設定した。高圧 ESR 法による観測は我々が所 有する装置と技術を用いておこなった。[1.10] サンプル溶液は高圧セルの石英管 (外径 6 mm,内径 1 mm)に導入し、加圧後,298 K において ESR 分光器(JEOL JES-FE3XG)にて測定をおこなった。ESR スペクトルのシミュレーションには, WIN-RAD(Radical Research Inc., Hino, Japan)を使用した。観測された ESR スペ クトルは 3 種のラジカル種の相対的な強度比を表している。このスペクトルの 関数を WIN-RAD システムを使用して二階積分し,free のニトロキシドプローブ と 2 種の包接錯体の濃度比を算出し,それら 3 種のラジカル種の間の包接平衡 定数を見積もった。. 1.3 結果と考察 1.3.1. 包接平衡定数の決定. Figure 1.2a にニトロキシドローブ 3 の ESR スペクトルを示した。ESR スペク トルは Calix-S8 の添加量を増やすにつれて,Figure 1.2a から Figure 1.2c のように ピークの分裂が生じた。また,Calix-S8 の濃度を高めるにつれて,ESR スペクト ルのピーク強度は,group-in 錯体の強度が大きくなった。一方,free のニトロキ シドプローブのピーク強度は減少した。これは,Calix-S8 の添加につれ,平衡が group-in 錯体を形成する方向へシフトしたためである。ニトロキシドプローブ 3 に対して種々の CD を添加した際も,ESR スペクトルは Calix-S8 を添加した場 合と同様の変化を示した。Figure 1.2d は-CD を添加した際の ESR スペクトルで ある。Figure 1.2c 及び Figure 1.2d に示したように,観測から得られた ESR スペ 29.
(34) クトルをシミュレーションにて再現することにより,free と 2 種のラジカル種の 相対強度を求めることができた。更に,超微細結合定数 AN(ニトロキシドプロ ーブの N-O・周りの極性の影響を受けるパラメータ)及び AH(ニトロキシドプロ ーブの H-C-N-O 二面角の角度の影響を受けるパラメータ)の値より,2 種のラ ジカル種が-Substituted phenyl-in(R-in)錯体及び tert-butyl-in 錯体であると帰属 した(Table 1.1)。[1.6, 1.7] なお,これらの錯体は,-置換フェニル基や tert-ブ チル基が Calix-S8 または種々の CD の空孔に取り込まれて形成されたものであ る。. Table 1.1. Hyperfine coupling constants for bimodal inclusion complexes with several hosts Probe 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4. Host Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 -CD -CD -CD -CD -CD -CD -CD -CD G--CD G--CD G--CD G--CD. Hfcc (mT) Free AN AH 1.683 1.030 1.650 0.920 1.700 1.090 1.667 0.812 1.683 1.030 1.650 0.920 1.700 1.090 1.667 0.812 1.683 1.030 1.650 0.920 1.700 1.090 1.667 0.812 1.683 1.030 1.650 0.920 1.700 1.090 1.667 0.812. R-in AN 1.659 1.640 1.670 1.651 1.627 1.589 1.638 1.617 1.641 1.621 1.659 1.643 1.636 1.600 1.633 1.632. 30. AH 0.619 0.520 0.680 0.491 0.612 0.521 0.680 0.525 0.607 0.542 0.675 0.624 0.605 0.542 0.652 0.608. tert-butyl-in AN AH 1.691 1.270 1.690 1.180 1.770 1.300 1.691 1.211 1.636 1.305 1.600 1.216 1.648 1.308 1.622 1.097 1.640 1.249 1.615 1.211 1.669 1.287 1.664 1.240 1.626 1.252 1.600 1.181 1.637 1.253 1.653 1.231.
(35) (a). (b). (c). Simulated. (d). Simulated. [3--CD] / [3]. (e). [-CD]0 (mol dm3). Figure 1.2. (colour online) ESR spectra of probe 3 (2 × 104 mol dm3) in the presence of Calix-S8 at 298 K: (○) free radical, (●) R-in, and (△) tert-butyl-in. [Calix-S8] = (a) 0, (b) 2.04 × 103 mol dm3, and (c) 7.86 × 103 mol dm3. (c) Simulated spectrum of (c) (red line): AN = 1.700, 1.670, 1.770 mT and AH = 1.090, 0.680, 1.300 mT for free probe, R-in and tret-butyl-in, respectively. (d) ESR spectra of probe 3 (2 ×104 mol dm3) in the presence of γ -CD (6.65 × 104 mol dm3) and simulated spectrum (red line) of (d): AN = 1.700, 1.638, 1.648 mT and AH = 1.090, 0.680, 1.308 mT for free probe, R-in and tert-butyl-in, respectively. (e) Determination of K1 and K2 according to Eq.(2.1-2.2) . 31.
(36) ニトロキシドプローブと Calix-S8 または種々の CD が形成する錯体の包接平 衡定数を決定するため,Scheme 1.2 のような化学平衡を考えた。. H 3C O H N CH3 CH3 C O CH3 H 3C O R. O H 3C. K1, V1. + host. H 3C O H N CH3 CH3 C CH3 O O H 3C R. O H 3C. K3, V3. K2, V2 H 3C O O H N CH3 H 3C CH3 C CH3 O O H 3C R. R-in. tert-butyl-in. Scheme 1.2. Equilibrium of three nitroxide species.. このとき[Host]>>[Probe](ホスト分子の濃度がプローブの濃度に対して大過剰) の条件下において,平衡定数 K は式 1.1-1.3 で表される。 K1 . K2 . R in R in ProbeHost ProbeHost0. tert butyl in tert butyl in ProbeHost ProbeHost0 K3 . tert butyl in R in 32. (1.1). (1.2). (1.3).
(37) 相対濃度[group-in]/[Probe]は free のニトロキシドプローブと 2 種の group-in 錯体 のスペクトルシミュレーションから得ることができる。式 1.1 及び式 1.2 を用い て,[Host]0 に対して[group-in]/[Probe]をプロットすると,包接平衡定数 K を見積 もることができた。プローブ 1-4 に対する Calix-S8 及び種々の CD の包接平衡定 数を Table 1.2 及び Table 1.3 に示した。プローブ 1-4 の group-in 錯形成において, -CD との包接により形成される R-in 錯体の包接平衡定数(K1 = 189-328 dm3 mol1)及び tert-butyl-in 錯体の包接平衡定数(K2 = 127-308 dm3 mol1)は,Calix-S8 の包接平衡定数 K1(= 40.5-170 dm3 mol1)及び K2(= 79-131 dm3 mol1)と比べ て大きな値であった。この結果は,同じ 8 員環の環状化合物である-CD と Calix-S8 において,-CD が形成する包接錯体は疎水的な空孔の寄与により, Calix-S8 が形成する包接錯体よりも安定であることを示唆している。. 33.
(38) 34. Cited from Ref. [1.21].. Phenyl-in tert-butyl-in 3-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 4-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 3,5-CH 3 O-phenyl-in tert-butyl-in Phenyl-in tert-butyl-in 3-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 4-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 3,5-CH 3 O-phenyl-in tert-butyl-in. Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 Calix-S8 -CD -CD -CD -CD -CD -CD -CD -CD. 1 1 2 2 3 3 4 4 1 1 2 2 3 3 4 4. a. Assignment. Host. Probe. K1 and K 2 (dm3 mol 1 ) 345 148 55.6 48.7 1.0 148 135 3 49.6 44.6 0.2 128 120 1 215 193 5 118 108 3 73.9 69.4 2.2 87.6 84.1 1.4 150 168 2 158 184 4 198 206 1 88.4 107 1 136 159 1 214 252 1 324 326 4 113 136 1. 1 (bar) 44.6 131 40.5 111 170 102 64.2 78.7 189 209 213 127 195 308 328 163 . 543 60.9 156 53.8 141 227 123 84.9 96.2 131 132 189 66.5 109 170 321 91.4. V 1 and V 2 (cm3 mol 1 ) 16.3 2.0 10.0 1.5 15.3 0.2 13.0 0.2 15.6 1.9 11.1 0.8 12.5 0.8 10.6 0.5 17.3 0.5 23.0 0.4 4.9 0.2 31.4 0.8 27.5 0.2 28.2 0.4 0.1 0.1 27.8 0.5. 1.0 0.7 0.9 0.5 0.6. 5.7 26.5 0.7 27.9. 2.1. 4.5 1.9. 1.0. 2.3. V 3 (cm3 mol 1 ) 6.3 2.5. The association constants and reaction volumes for group-in complexes of 1-4 with Calix-S8 and -CD in water at 298 K. Table 1.2..
(39) 35. Cited from Ref. [1.21].. Phenyl-in tert-butyl-in 3-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 4-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 3,5-CH 3 O-phenyl-in tert-butyl-in Phenyl-in tert-butyl-in 3-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 4-CH3 O-phenyl-in tert-butyl-in 3,5-CH 3 O-phenyl-in tert-butyl-in. -CD -CD -CD -CD -CD -CD -CD -CD G--CD G--CD G--CD G--CD G--CD G--CD G--CD G--CD. 1 1 2 2 3 3 4 4 1 1 2 2 3 3 4 4. a. Assignment. Host. Probe 1 (bar) 173 636 153 159 178 220 76.2 131 192 670 81.2 166 202 242 39.2 134 . K1 and K 2 (dm3 148 165 6 648 22 174 2 193 2 178 3 234 1 56.9 1.4 131 3 182 3 680 8 82.8 1.2 174 3 193 1 249 3 38.6 0.8 133 1. mol 1 ) 345 154 676 192 227 179 243 45.1 130 172 711 84.4 182 183 256 38.1 133 543 142 698 226 281 179 258 37.3 129 160 736 86.4 194 174 267 37.3 132. V 1 and V 2 (cm3 mol 1 ) 8.1 0.3 6.0 0.3 20.4 0.5 29.3 0.6 1.3 0.1 8.7 0.3 34.3 2.8 0.1 0.1 8.1 0.1 6.1 0.5 4.2 0.1 9.0 0.1 6.5 0.2 5.9 0.1 1.4 0.1 0.4 0.1. 0.8 0.4 2.9 0.6 0.2 0.3 0.2. 8.9 7.4 34.3 14.0 4.8 12.4 1.8. V 3 (cm3 mol 1 ) 14.1 0.5. The association constants and reaction volumes for group-in complexes of 1-4 with -CD and G--CD in water at 298 K. Table 1.3..
(40) 1.3.2. 置換基包接錯体の構造. カリックスアレーンはベンゼン環が柔軟なメチレン鎖でつながっているため, フェノールユニットを回転させて様々な立体配座をとることが知られている。 [1.8] また,環サイズも自由に変えることができる。 種々の配座をもつカリックスアレーンは包接錯体形成時に様々な異性体を 形成すると考えられているが,実際に包接錯体を形成する場合は cone 型である と報告されている(Scheme 1.3)。[1.11] これはフェノールユニットについた同 じ種類の置換基どうしが揃った状態で安定な錯体が形成されるためであり,cone 型以外の立体配座で安定な包接化合物が形成されることは考えにくい。そのた め,今回観測された包接錯体も cone 型であると考えられる。なお,Calix-S8 の 空孔の直径はスルホン酸基側が 0.75-1.56 nm,ヒドロキシル基側が 0.64-0.80 nm である。[1.12]. -. O3S. -. O3S. SO3-. -. O3S. -. O3S. O3S. O O H H. SO3-. -. O. H. O H. O H. O H. SO3-. O. O H H. Scheme 1.3. The cone formation of Calix-S8.. 36.
(41) Calix-S8 の包接錯体形成の駆動力に関しては,様々な相互作用が提案されてい る。[1.13-1.16] ・ionic interaction ・hydrophobic interaction ・van der Waals interaction ・- interaction ・cation- interaction ・hydrogen bonding interaction Calix-S8 の分子認識における相互作用について検討することは非常に興味深い。 Table 1.1 に示した超微細結合定数(hfcc)について,Calix-S8 とプローブ 3 との 包接において,まずは水素原子の hfcc(AH)に着目する。AH はニトロキシドプ ローブの N-O・と水素(N-O・に隣接した炭素原子と隣接する水素)が形成する 二面角の角度に依存する。CPK モデルを用いた考察より,free のニトロキシド プローブに対する H-C-N-O・のねじれの程度より,AH が大きくなるものを tert-butyl-in 錯体,AH が小さくなるものを R-in 錯体と帰属した。[1.6, 1.7, 1.17, 1.18] 次 に N-O ・ の 周 り の 環 境 を 表 す 窒 素 原 子 の hfcc ( AN ) に 着 目 す る と , 4-methoxyphenyl-in 錯体は AN, R-in = 1.670 mT であった。プローブ 3 は AN, Free = 1.700 mT であるから,AN = AN, R-in AN, Free = 0.030 mT となる。これは,N-O・が Free の状態に比べてより疎水的な環境へ移動したことを示している。すなわち,プ ローブ 3 の R-基が Calix-S8 の疎水的空孔へ包接されたために N-O・の周りの環境 が変わり,AN の値が小さくなったといえる。一方,プローブ 3 の tert-butyl-in 錯体はAN = 0.070 mT であり,これは Free の状態よりも N-O・周りの極性が高く 37.
(42) なったことを示している。この観測結果からは,tert-butyl-in 錯体が形成する際, N-O・が Calix-S8 のスルホン酸基と近接した位置に存在していると推測でき, tert-butyl-in 錯体の安定化に大きく寄与しているものと考えることができる。 シクロデキストリンのすべてのグルコースユニットはほとんどひずみのない 椅子型の立体配座をとっている。空孔は疎水的空間となっており,そこへゲス ト分子を取り込むことができる。直径は-CD が 6.6 nm,-CD は 8.4 nm であり, 深さは両者とも 80 nm である。[1.19] G--CD は-CD の 6 位にグルコシル側鎖を 修飾したホスト分子であり,空孔の大きさや深さは-CD と変わらない。しかし, 水に難溶性であった-CD に比べ,水溶性は向上している。 シクロデキストリンとプローブ 1-4 包接に伴う窒素原子の Hfcc の差AN は, R-in 錯体及び tert-butyl-in 錯体ともにAN < 0 である。これは,プローブの N-O・ が水の中より疎水的な環境へ移動した,即ちシクロデキストリンの疎水性空孔 内へ包接されたことを示している。van der Waals 相互作用をはじめとする様々な 相互作用が働いて形成されるカリックスアレーンの包接錯体とは異なり,シク ロデキストリンとプローブの主な相互作用は疎水性相互作用である。疎水性相 互作用は,ホスト分子の空孔とゲスト分子の大きさが最も合致したときに強い 相互作用を生ずるものであり,それは K の値の大小に反映されていると言える。. 1.3.3. 置換基包接錯形成における置換基効果. Table 1.2 及び Table 1.3 に示した結果は,プローブ 1-4 と Calix-S8 及び種々の CD との包接錯体の形成に与える置換基効果を表している。まず,Calix-S8 と-CD について,我々は Table 1.2 より四つの興味深い結果を見出した。(1)Calix-S8 38.
(43) の R-in 錯体において,プローブ 3 及び 4 の平衡定数 K1 は,プローブ 1 及び 2 の K1 と比べて大きい値である。プローブ 4 において,この結果は 3,5-ジメトキシ フェニル基の大きさが,プローブ 1 及び 2 の R 基よりも Calix-S8 の空孔サイズ に合致することを示唆している。プローブ 3 と Calix-S8 の R-in 錯体においては, -フェニル基に付いた 4-メトキシ基による共鳴構造の寄与により-カチオンの ような相互作用が-フェニル基と Cakix-S8 の芳香環の間に生じ(Scheme 1.4), R-in 錯体の安定性が高まったためであると考察した。[1.2, 1.20] (2)Calix-S8 が形成する tert-butyl-in 錯体において,プローブ 4 の K2 の値は,他のプローブを 用いた場合に比べて小さい。これは,プローブ 4 の-フェニル基に付いた 3,5ジメトキシ基と Calix-S8 の環との立体障害の影響である。プローブ 4 と Calix-S8 が形成する tert-butyl-in 錯体の推定構造を Scheme 1.5 に示した。(3)-CD が形 成する R-in 錯体において,プローブ 4 の K1 の値は,他のプローブを用いた場合 に比べて大きい。これは,3,5-ジメトキシ基を有する-フェニル基のサイズが, -CD の空孔のサイズに合致するためである。(4)-CD が形成する tert-butyl-in 錯体において,プローブ 2 及び 4 の K2 の値は,プローブ 1 及び 3 の K2 の値より も小さい。この現象は Calix-S8 とプローブ 4 が形成する tert-butyl-in 錯体と同様 に考えることができ,プローブ 2 及び 4 の-フェニル基に付いたメトキシ基と -CD の剛直なリングの淵との立体障害により,-CD が形成する tert-butyl-in 錯 体の安定性が低下するためであると推測される。これら(1)から(4)の結果 は,Calix-S8 及び-CD がプローブ 1-4 と形成する双方向包接錯体において、包 接される部分のかさ高さや包接時の分子間相互作用が,置換基の認識能におい て重要な役割を果たしていることを示している。 39.
(44) Scheme 1.4. Canonical structure of probe 3.. 3,5-dimethoxy group. Scheme 1.5. Plausible structure of tert-butyl-in complex of probe 4 with Calix-S8.. Table 1.3 には,-CD 以外の CD(-CD,G--CD)の結果を記載した。我々は Table 1.3 より四つの興味深い結果を見出した。 (1)-CD が形成する tert-butyl-in 錯体について,プローブ 2 及び 4 の K2 の値は,プローブ 1 と比べて極端に小さ 40.
(45) い。この現象も,プローブ 2 及び 4 の-フェニル基に付いたメトキシ基の引き 起こす立体障害によって説明できる。Figure 1.3 に, プローブ 2 と-CD の tert-butyl-in 錯体の推定構造を示した(Corey-Pauling-Koltun の空間充填モデルを 用いて作図した)。 (2)-CD と各プローブが形成する tert-butyl-in 錯体の K2 の値 を G--CD の K2 と比較すると,ほぼ同程度の値であった。この結果は,G--CD のかさ高いグルコシル基が tert-butyl-in 錯体の形成に影響していないことを示し ている。. Figure 1.3. Schematic structures of the group-in complexes: tert-butyl-in complex of probe 2 with -CD.. (3)-CD の R-in 錯体において,K1 の値は 1 3 > 2 >> 4 の順で小さくなる。プ ローブ 4 の K1 の値は他のプローブを用いた場合に比べて小さい。この結果は, プローブ 4 内にあるかさ高い 3,5-メトキシフェニル基が-CD の空孔サイズより も大きいことによる立体障害の寄与であるといえる。 (4)G--CD の空孔のサイ 41.
(46) ズは-CD と同じであるものの,G--CD がプローブ 2 及び 4 と R-in 錯体を形成 する際の K1 の値は,-CD と比べて極端に小さい。この結果は,Figure 1.4 に示 した通り,かさ高いグルコシル側鎖の立体障害に起因するものと考えられる。 これらの結果は,-CD 及び G--CD がプローブ 1-4 と形成する双方向包接錯 体において、近接の置換基の立体障害が双方向包接錯体の分子認識能に重要な 役割を果たしていることを示している。. Figure 1.4. Schematic structures of the group-in complexes: R-in complex of probe 4 with G--CD.. 1.3.4. 置換基包接錯形成における圧力効果. Figure 1.5a は,プローブ 2 が存在する溶液に Calix-S8 を添加した際の ESR ス ペクトルである。490 bar に加圧した際,Figure 1.5c に示したように R-in 錯体の ESR スペクトルの強度が増加した。得られた ESR スペクトルのシミュレーショ ンを Figure 1.5b 及び Figure 1.5d に示した。高圧下における R-in 錯体及び 42.
(47) tert-butyl-in 錯体の包接平衡定数は Table 1.2 及び Table 1.3 に示した通りである。 Calix-S8 とプローブ 1-4 の包接において,加圧に伴い K1 及び K2 の値は増加した。 しかし,-CD とプローブ 1-4 の包接においては,加圧に伴い K1 及び K2 の値が 減少した。 高圧下における液相化学平衡を考える場合,化学平衡状態にある系の任意の 成分 i に対する分子化学ポテンシャルi は式 1.4 と表される。. i i RT ln ai. (1.4). i0 は標準状態における i の分子化学ポテンシャル,ai は成分 i の活量である。熱 力学的平衡の一般条件は,反応式中の成分 i の化学両論的係数 vi を用いて. i i 0. (1.5). と表記でき,式 1.4 及び式 1.5 より,. i i i ( i RT ln ai ) i i i RT ln a i i i RT ln( ai ) i. (1.6) i. i RT ln Π (a i ) i. 0 となるため,式 1.7 が導ける。. RT ln Π (ai ) i i i. (1.7). 式 1.7 は,式 1.8 及び式 1.9 を用いて,式 1.10 と書き換えることができる。. K Π (ai ) i. (1.8). GT i i. (1.9). RT ln K GT. (1.10). K は平衡定数, GT は標準状態における Gibbs の自由エネルギー変化である。 43.
(48) 更に,Gibbs エネルギーの全微分(式 1.11),. dG SdT VdP. (1.11). より,式 1.12 が得られ,式 1.13 及び式 1.10 より,式 1.14 を得ることができる。. G V P T. (1.12). G V P T. (1.13). ln K RT Vi P T. (1.14). ここで Vi は生成物と反応系の分子体積の差である。つまり式 1.14 は,平衡 定数 K に対する圧力効果により,対象とする系の反応体積差を求めることがで きることを表している。なお,式 1.14 の K がモル濃度表示の場合は,nRT T と いう項が右辺に付け加わる(n は化学反応式における係数の変化, T は溶媒の 等温圧縮率を表す)。ln K と P の間の関係式としては一次式や二次式以外にも 様々な実験式が提案されている Table 2.1 に示した K の値を用いると,式 1.15 及び式 1.16 より包接に伴う反応 体積V を見積もることができる(結果は Table 1.2 及び Table 1.3 に記載した)。 ln K aP b. (1.15). ln K V RT T RT P T. (1.16). T は溶媒である水の等温圧縮率を表しており, T = 4.43×105 bar1 である。. [1.21] ln K を圧力 P に対してプロットすると良い直線関係が得られ(Figure 1.5e), 44.
(49) その傾きからV を得た。これまでの我々の研究にて,カリックスアレーンが包 接錯体を形成する際の体積変化は,空孔内への包接に伴う体積減少であり,式 1.17 の形で表すことができる。[1.21] V Vinclu. (1.17). ここでVinclu はプローブ 1-4 の R(-置換フェニル基)側,または tert-ブチル基 側からの包接に伴う体積変化を意味しており,Vinclu < 0 となる。Table 1.2 に示 したように,プローブ 1-4 が Calix-S8 との tert-butly-in 錯体を形成する際のV は, 13.0-10.0 cm3 mol1 までの負の値であった。この結果は,Calix-S8 の空孔内に おけるプローブ 1-4 の tert-butly 基の配置はすべて同程度であることを示してい る。Calix-S8 と R 基側の包接においては,プローブ 4 のV に比べてプローブ 1-3 のV の値が大きい。この結果は,プローブ 1-3 の R 基が Calix-S8 の空孔内に深 く包接しているのに対し,プローブ 4 の R 基は 3,5-ジメトキシフェニル基が大 きいために深く包接できないことに起因している。一方,-CD とプローブ 1-4 が形成する包接錯体において,tert-butly-in 錯体のV は 23.0-31.4 cm3 mol1,R-in 錯体のV は0.1-27.5 cm3 mol1 という正の値であった。 -CD の空孔内には,平均して 12 個の水分子が存在していることが知られてい る。[1.22] これらの水分子は、ゲスト分子が-CD の空孔内に取り込まれて包接 錯体を形成する際に,その包接部位のサイズに応じて排出される数が変わる(す べての水分子が排出される場合もあれば,幾つかしか排出されない場合もある と考えられる)。-CD の包接錯体の形成に伴う体積変化V は,式 1.18 のように 表すことができる。[1.7]. V Vinclu Vrepel 45. (1.18).
(50) ここでVrepel は-CD の空孔内から排出された水分子の体積増加を表している。 -CD とプローブ 1-3 が形成する R-in 錯体の正のV は,R 基が-CD の空孔内に 包接されることによるVinclu(< 0)よりも,空孔内から排出される水分子の体積 Vrepel の方が大きいことを示している。-CD が形成する tert-butly-in 錯体のV(= 23-31 cm3 mol1)は-置換フェニル基のサイズの影響を受けている。-CD の空 孔内における tert-ブチル基の配置はすべて同様であり,このことは Calix-S8 の tert-butyl-in 錯体の特徴と類似している。. 46.
(51) (a) 1 bar. (b). Simulated. (c) 490 bar. (d). Simulated. ln K. (e). P (bar). Figure 1.5. ESR spectra of probe 2 (2 × 104 mol dm3) in the presence of Calix-S8 (1.20 × 102 mol dm3) at (a) 1 and (c) 490 bar: (○) free radical, (●) R-in, and (△) tert-butyl-in. (b) and (d) Simulated spectra (red lines) of (a) and (c), respectively: AN = 1.650, 1.640, and 1.690 mT and AH = 0.920, 0.520, and 1.180 mT for free probe, R-in and tert-butyl-in, respectively. (e) Plots of ln K against pressure for the group inclusion of probe 2 with Calix-S8 at 298 K: (●) R-in and (△) tert-butyl-in.. 47.
(52) Table 1.2 に記載した Calix-S8 及び-CD が形成する包接錯体のV を用いて,そ の体積変化を視覚的に Figure 1.6 に示す。注目すべきことは,-CD が形成する R-in 錯体において,包接されるニトロキシドプローブの置換基のサイズに応じ て圧力の効果に特徴が表れている点である。包接錯体形成時の反応体積V につ いて,R-in 錯体が形成する際の値をV1,tert-butyl-in 錯体が形成する際の値をV2 とすると,各包接錯体間の反応体積差V3 は式 1.19 の形で表すことができる。. V3 V2 V1. (1.19). Table 1.2 には,式 1.19 から求めたV3 の値を示した。Calix-S8 がプローブ 1-4 と 形成する包接錯体においてV3 の範囲は 1.9-6.3 cm3 mol1 であった。一方,-CD がプローブ 1-4 と包接錯体を形成する際のV3 の範囲は 0.7-27.9 cm3 mol1 であり, その範囲は Calix-S8 のV3 よりも広い。tert-butyl-in 錯体の反応体積V2 はいずれ のプローブにおいても同程度であることから,-置換フェニル基の立体的影響 が大きく反映されていると考えられる。即ち,-CD が形成する双方向包接錯体 の示す大きな圧力効果には,R-in 錯体の寄与が大きいといえる。. 48.
関連したドキュメント
BRAdmin Professional 4 を Microsoft Azure に接続するには、Microsoft Azure のサブスクリプションと Microsoft Azure Storage アカウントが必要です。.. BRAdmin Professional
輸入貨物の包装(当該貨物に含まれるものとされる包装材料(例えばダンボール紙、緩衝
Should Buyer purchase or use SCILLC products for any such unintended or unauthorized application, Buyer shall indemnify and hold SCILLC and its officers, employees,
接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式
接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式
Should Buyer purchase or use SCILLC products for any such unintended or unauthorized application, Buyer shall indemnify and hold SCILLC and its officers, employees,
とりわけ、プラスチック製容器包装については、国際的に危機意識が高まっている 海洋プラスチックの環境汚染問題を背景に、国の「プラスチック資源循環戦略」 (令和 元年
今後は、汚染されたプラスチック製型枠や砕石の撤去には