リスクマネジメントに必要な人材とは
~医薬品リスク管理計画の開始を踏まえて~
(独)医薬品医療機器総合機構
安全第二部 堀 明子
JAPhMed 2013
4th Annual Meeting
一般財団法人
日本製薬医学会
COI開示
発表者名:
堀 明子
演題発表に関連し、開示すべきCOI関係に
ある企業などはありません。
本日の内容
リスクマネジメント
平常状態でのリスクマネジメント
緊急対応でのリスクマネジメント
医薬品リスク管理計画
予測・予防型の安全対策をめざして
リスクマネジメント
•
全ての医薬品はリスク(副作用等)がある
–ベネフィット(有用性)とリスクのバランスを保ちながら使用することが必
要(ベネフィット>リスク)
–回避できるリスクについて避けるための方策を実施することで、リスク自
体が大きい場合にもベネフィット-リスクバランスを保つことが可能となる
–添付文書の改訂等もリスクマネジメントのひとつ
•
ベネフィット&リスクに関する情報を適切に収集し、そ
のバランスを保つための方策を実施する必要がある
リスクマネジメントに必要な情報を適切
に管理、評価することが重要
Periodic Benefit-Risk Evaluation Report 定期的ベネフィット・リスク評価報告(PBRER) 製品の全体的なベネフィット・リスクプロファイル評価を可能にするために医 薬品のリスクに関して、及び該当する場合には、承認された適応症に対する ベネフィットに関して、新しい情報又は明らかになりつつある情報の包括的か つ重要な分析を示すことにある
医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan) 医薬品の開発段階、承認審査時から製造販売後の全ての期間に おいて、 ベネフィットとリスクの評価・見直しが行われ、これまで以 上により明確な見通しを持った製造販売後の安全対策の実施が可
能となることを目的
Development Safety Update Report ICH(E2F) 治験薬に関して調査対象期間中に収集された関連する安 全性情報の包括的かつ十分に検討された年次レビューと評 価を提示する
リスクマネジメントに必要な情報を
適切に管理、評価するために
DSUR PBRER RMP ツール 時期 評価実施者 (PMDA内の場合) 治験時 承認時 製販後 審査チーム 審査チーム 審査チーム 安全部 リ ス ク マ ネ ー ジ ャ ー (RM ) 平成25年4 月から完全 実施 ICH step4 到達 国内に特化した 情報は安全性 定期報告開発・承認審査は新薬審査部が、市販後は安全部
がベネフィット・リスクバランスの評価を行う分担制
しかし、開発・承認審査・市販後にかけて、継続的な
ベネフィットリスクバランスの評価が必要であり、市
販前後で評価方法は変わるものではない
開発・承認審査・市販後の架け橋に・・・(現在は、12
チーム13名)
Risk Manager(RM)制度の導入
PMDA 製造販売 業者 企業ヒアリング 副作用等情報の受理 データ収集・分析・評価 安全対策の実行 整理・調査結果 検討内容 伝達 意見交換 専門家との協議 広く情報提供 添付文書の改訂指示・製品改善指導・ 回収指示等 医学的な意義等の 判断が困難な事例 副作用等情報の収集 ・自発報告 ・製造販売後調査、試験 ・文献情報 ・海外規制情報 等 分析・評価 安全対策の検討 海外規制情報・文献情報等 ヒアリング 必要に応じ 安全対策の 更なる検討 安全対策措置の実施 安全対策の企画・立案 国民に重大な被害を与える 可能性のある案件は即時対応 薬事・食品 衛生審議会 厚生労働省 全ての情報の共有 報告 データ ベース 随時、報告・打合せ 毎週、報告・打合せ 概ね5週毎にと りまとめ報告 インターネットを 介して広報 医薬関係者 報告 企業ヒアリング
PMDAにおける安全対策業務
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
PMDAにおける個別症例評価
(製販後)
副作用報告データの分析と安全対策要否の検討
ラインリスト分析 症例分析 副作用報告 DB 症例票 要詳細調査 医薬品・副作用 ラインリスト (週刊、日刊) 企業・専門家ヒアリング 対応の検討へ 分析業務 全ての医薬品・副作用 要対応 医薬品・副作用個々の副作用報告に対する医学・薬学的な観点からの評
価に当たっては、以下の内容を考慮
−
報告された有害事象名は適切か?
−
有害事象と関連のある因子はあるか?
時間的関連は?
患者背景との関連は?
(原病、合併症、既往歴 etc)
他の因子との関連は?
(併用薬剤、放射線療法、手術などの処置 etc)
−
薬理作用から推察が可能か?
(類薬では広く知られた副作用ではないか?)
副作用報告の評価におけるPMDAの視点
副作用報告 データベース 諸外国の 状況 使用実態 使用患者数 etc…
個々の副作用報告の評価
医学的・薬学的観点
・患者背景
・臨床症状
・医薬品の作用機序
・時間的な関連
等
文献情報データベースの評価
統計的観点
・集積件数
・シグナル指標値
安全性情報の種類と評価
製造販売後 臨床試験 製造販売後 調査 副作用報告 個別の副作用報告 その他の情報 (類薬の情報も含む)安全対策も分野毎の評価体制に
~審査チームに対応した医薬品の分野ごとのチーム編成とし、専門性の高い評価を実施~ チーム主任 医学 1名 薬学(臨床薬学) 2名 生物統計・疫学 1名 リスクマネージャー 毒性・代謝・薬理等 1名 チーム主任 薬学 6~7名 ×2
チーム 以前 21年度以降の目標体制→ 現在、12チーム体制は確立し たが、医学、統計などはまだ これから拡充が必要 ×12
チーム体制になった 各分野により構成される専門評価 体制をとっていなかった部長
↑↓
調査役
国内副作用・ 感染症報告 (約30,000件/ 年) 【副作用等情報】 研究報告 (約800件/年) 措置報告 (約1,300件/ 年) 評 価 副作用 データ ベース 1-2週 外国副作用・ 感染症報告 (約220,000件/ 年) 改訂のきっかけとなる情報 入手後からの期間(目安) 未 知 ・ 重 篤 等 を 直 ち に 精 査 D B か ら の シ グ ナ ル P M D A で 安 全 対 策 の 要 否 を 検 討 し 、 対 策 を 要 す る 可 能 性 が あ る 場 合 、 企 業 に 照 会 P M D A で 企 業 見 解 も 踏 ま え 措 置 の 要 否 と 措 置 内 容 を 検 討 添 付 文 書 改 訂 案 に つ き 専 門 協 議 厚 生 労 働 省 に 安 全 対 策 措 置 案 を 通 知 添 付 文 書 改 訂 指 示 通 知 2 日-2 週 目 緊急に対応すべきもの 迅速に対応すべきもの イエローレター ブルーレター (迅速な安全性情報) 添付文書改訂 (約200件/年) 6 -10 週 目 7 -11 週 目 8 -12 週 目 (数年に一度) (1~2件/年) 各種情報提供 ・ 医 薬 品 医 療 機 器 安 全 性 情 報 ( 毎 月 発 行 ) ・ P M D A の H P へ の 掲 載 ・ P M D A メ デ ィ ナ ビ に よ り 広 く 国 民 に 向 け メ ー ル 配 信 直 ち に 評 価 2 -6 週 目 注)情報入手後の期間は、典型 的な改訂例における目安期間で あり、これによらない場合もある
医薬品安全対策業務の流れ
(添付文書改訂ケースを中心に)
医薬品の安全対策業務の流れ
シグナルを いかに キャッチするか?
国内副作用・ 感染症報告 研究報告 措置報告 副作用 データ ベース 外国副作用・ 感染症報告安
全
対
策
の
要
否
等
を
検
討
添 付 文 書 改 訂 指 示 通 知 厚 生 労 働 省 イエローレター (緊急安全性情報) 各種情報提供 ・医薬品医療機器安全性情報 ・PMDA情報提供HPへの掲載 ・メディナビ配信添付文書
改訂
情報提供 資材 etc ブルーレター (安全性速報)シグナルをキャッチしたら どうするか?
安全対策の “きっかけ”となる情報【シグナル】
Company Logo
現在の副作用報告の限界
その医薬品を投与されている人数を把握できない(分母が不明のため発生頻度が不明) 他剤との副作用発生頻度の比較、安全対策措置前後での副作用発生頻度の比較等をできない。 原疾患による症状と「副作用」の鑑別が難しい。 医薬関係者が報告しなければ、副作用の存在がわからない。
医療情報の活用により可能となる安全対策の例
症状の発生割合 (症状/正確な使用患者数) A薬治療群 A薬なしの治療 副作用の発生割合 (副作用/正確な使用患者数) 副作用発生割合(率)を 措置の前後で比較できる 他剤との比較 原疾患による 症状発現との比較 安全対策の効果の検証 例えば、投与後の異常な行動。 A薬なしでも発生する。 緊急安全情報前 緊急安全情報後 副作用発生割合 (副作用/正確な使用患者数) A薬治療群 B薬治療群 同種同効薬との発現頻度の 比較ができる。安全対策の守備範囲は広範です!
• 対象製品が広範にわたる
– 新薬、後発品、OTC、(一部の)医療機器
• 対象とするリスクが広範にわたる
– 副作用、様々なメディカルエラー、品質問題
• 収集対象とする情報が広範にわたる
– 先発品、他社の後発品、海外情報
• 通常の使用以外でのリスクも
– 適応外使用
想像力が必要!
医療現場とのコミュニュケーションが重要!
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リスクに臨む心がけ
• 安全対策の関係者は、
平時の安全対策
と
緊急時の安全対策
を区別して考えましょう!
• 人間苦手なのは
緊急時の安全対策
です
• 迅速な意志決定のために必要な要素は?
• 不完全な判断材料、不十分な対応準備時間
で対処しなければならないのが普通
• 特に、市販後まもない時(市販直後調査期間
中)は、何時でも平時と緊急時の切り替えが
起き得ます!!
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リスクに臨む心がけ
• 安全対策の関係者は、安全対策の体制が手
薄になる時期、状況をよく考えましょう!
• 週末の対応、
連休の対応
、年末年始の対応
は手薄になります(夜間も問題)!
• 危険情報の伝達が、現場が手薄な時期、状
況で行われるのでは、間に合いません!
• いかに早く&速く情報伝達を完了出来るかが
勝負!
ブルーレター
保健衛生上の危害発生・拡大の防止のため、緊急安全 性情報に準じ、医薬関係者に対して一般的な使用上の 注意の改訂情報よりも迅速な注意喚起や適正使用のた めの対応(注意の周知及び徹底、臨床検査の実施等の 対応)の注意喚起が必要な状況にある場合に、作成す る。朝日新聞(2013年5月18日朝刊) 毎日新聞(2012年9月12日朝刊)
メディアもすぐに
緊急時の例
海外死亡例の報告を受けて
添付文書改訂に先立ち情報提供
審査時には・・・
低カルシウム血症を「リスク」として捉えてはいた
治験時には重篤例が少なく、疾患特性をより考慮した
リスクマネジメント方法を添付文書に記載
市販後には・・・
海外で死亡例が報告され、国内でも市販後には重篤
例が多く報告された
リスクマネジメント方法を再検討し、添付文書を改訂
発現の特徴、具体的なリスクマネジメント方法の情報
提供により、十分に管理可能な副作用である
審査時と市販後の議論ポイント
医療関係者だけでなく患者・
家族にも注意喚起を実施し
た
2例の死亡例が報告され、
ブルーレターを配布
PMDA/企業のリスクコミュニケーション
RMPについて
策定指針 様式