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社会主義投資効率論-香川大学学術情報リポジトリ

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社会主義投資効率論 石 津 英 雄 Ⅰ“まえがき,Ⅱ・ノ\ソガリ・−の投資効率決定法,Ⅱ.チエ.コスロバキアの 投資効率決定法,Ⅳり投資効率の国際比較の方法,Ⅴ・投資の国際的評価甲 方法 Ⅰ 投資効率の決定問題は,社会主義諸国匿おける最も重要な問題のひとつとさ れている。それだけに各国の経済学老ともこの問題には重大な関心を寄せてこお り,各国の研究も近年ではますます深化してせている。いうまでもなく,経済 の成長は基本的に・は投資盈とそのテンポによって決定される。しかし同時に創 設される固定フォ・ンドがいか紅効率的であるか,またそれが技術進歩の要請に よくこたえて.−いるか,といった問題に.も多くの点で依存している。こうした理 由だけをとって−みても,投資効率の向上が社会主義諸国の最も重要な,最も積 極的な問題のひとつとされるのもけだし当然のことである。こと紅近年では社 会主義国擦分業が各国の重要な課題となっており,それに応じて投資効率論の 研究もその対象領域を拡大し,その国際比較という新しい問題の解決へと進ま ざるをえなくなっている。 すでに現在ではソ連はもちろんのこと,ハンガリー,ポーランド,チ.ェコス ロバキア,ブルガリア等の各国でも投資効率の決走法がそれぞれ作成されてお り,現実にこれを基準として投資バリアソトの優劣可否が決定されている。国 によって多少の相異はあっても,社会主義諸国の経済学者は今日までに投資効 率決定に関する複雑な諸問題の理論的検討において豊富な経験を蓄積してい る。もっとも投資効率決定をめぐるアプローチほ必ずしも一・様ではなく,標準 効率指標の把握紅おいては2つのグル−プが現紅形成されている。しかしかれ らが依拠する理論的ならび紅方法論的立場は基本的には−・致している。周知の

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香川大学経済学部 研究年報 6 ー 2 − ヱ966 ように,最小の支出をもって最大の成果をあげるという社会主義建設の不変の 法則を達成する点紅投資効率論研究の出発点がある。 この数年来筆者は,社会主義諸国把.おける投資効率論研究に.大きい関心をも

ち,その現状を把捉すると同時紅,あわせて方法論上の特徴や問題点を明らか

にしようと努めてきた。もちろん筆者ほ,各国の現状をあますところなく把握 しその問題点を正しく理解しえ.たとほいえないかもしれない。公式に認められ た各国の投資効率の決定法把かなりの差があるうえに,同じ国のなかでも経済 学者の間で相当な見解の開きがある。それにイ可といっても言語の制約があるた め,各国の状況をつぶさに.検討することができないでいる。従来の研究対象は 主に・ソ連の投資効率論研究であって,時に.東独やポーーランドの文献紅触れる機 会をもった紅すぎない。筆者の乏しい研究によって.明らか粧なった点のひとつ は,ソ連とポーランドの研究方法に著しい相異があること,特紅ポ−ランドの 投資効率論は独創的な方法のもとに.構成されており,社会主義諸国のなかでも ユニークな地位を占めている。ポーランドの代表的文献のひとつ,ラコフスキ 編集の論文集『社会主義経済に.おける投資効率1)』が最近英文で出版垂れるに 至ったので,今日ではわが国の研究者もポーランドの研究状況の一・端を詳細に 知ることができる。しかし他の束欧社会主義国の状況に.ついてはわが国ではは とんど知られていないままである。社会主義諸国でも近年では相互にイ由国の投 資効率論研究を進めており,われわれもとうした数多くの文献を通じて広く東 欧社会主義諸国の現状を知る機会を与えられている。筆者が接した文献のうち で最も広汎紅東欧の研究状況を伝えるものほ,B・テレホフ『社会主義諸国紅 おける投資の経済効率決定2)』(1966年)であり,本論文はこれに依拠して二番か れた。それ以外紅もT・ノ、チャトクロフ『投資の経済効率』(1964年),0・ポゴ モロフ編『社会主義国際分業の経済効率』(1965年),Z・クエジアークとW・ヅ ゾブスキ共著『工業投資の経済と企画$)』(1964年)等があり,これらの著書も

1)EfficiencyofInvestmentin aSocialistEconomy.ed by M.・Rakowski,1966・ 2)B・q)”TepexoB,0IIPeAeJIeHⅢe∋KOHOh4HtZeCI(0的¢中eIくTHBHOCTHKarI払TaJIbHbIX

B∬0〉KefI甚葺8CO工岬a.汀正CT拷qeCK〟ⅩCでpafIaX,19絡

3)T.,C.XaqaTypOB,9KOHOMHtIeCKa兄坤中eKTt4BHOCTbKarImJIbrrblXBJIO元eH励 1964・9KOHOMHqeCZ(a兄∋¢ゆeKTHBHOCTb Me)だDyfrapOEfrOrOCO岬aJr打CT椚eCKOrO pa3且eJZeHH5ITPyZLa,rIOEpeE・0・T・BoroMOJIOBa,1965・

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社会主義投資効率論 †・3 − 筆者の研究には大いに.役立った。 筆者はここではまず初め紅ハンガリーとチふコスロバキア両国における投資 効率の決定方法を紹介し,ついで投資効率の国際比較の問題を論じたい。ハン ガリL一における投資効率論ほ,ポーランドとともに溜虫自の方法のもと紅構成さ れており,社会主義諸国のなかでもその研究ほ注目してよい。他方チ・,エコスロ バキアは基本的に.はソ連の研究方法と異るところがない。しかし標準効率係数 の算定方法紅は独自性があるので,これを中心に同国の現状を紹介する。最後 に取りあげる投資効率の国際比較は,近年における社会主義国際分業の進展に 呼応してその重要性をましている問題である。この問題を処理する紅ほ,社会 主義諸国における経済学者の研究方法を統一するこ.とが重要な課題となる。そ して周に・この問題は・,セア(経済相互援助会議)の経済問題常設委員会把‥おい て検討され,「’セフ加盟国における投資の経済効率比較の臨時法」(以下臨時法と 略称)として総括され発表されている。今日ではこれは各国の長期国民経済発 展計画を調整したり,生産の国家間の専門化と協同化の企画案を検討・したり, 経済対象の建設紅おける協力の問題を処理するさいの基本的な指針とされてい る。このような重要な意義と役割を有するだけ紅,臨時法紅もられた投資効率 の国際比較の方法を検討↓,それ紅含まれている問題点を明らかにして率くこ とが必要不可欠である。この論文は;筆者がさきに.発表した論文,「ポ−ランド 紅おける投資効率論研究の現状」および「社会主義国際分業と経済効率の問題」 と一・体をなすものであるから,両者をあわせて参考紅してはしい。前記の論文 で述べられた論点ほはとんどこの論文では割愛されている。 Ⅱ 投資効率問題がノ、ソガリー4)で検討され始めたのほ1950年代といわれてい Z.KnyziakiW”Lissowski,Ez(OZIOMiKaiprogramowanieinwestycjiprzemyslow− ycb,1964 4)ハンガリーにおける投資効率の決定方法に関しては,前記テレホフおよぴハチャト クロフの著書を参照してまとめた。なかでもテレホフの著書(52∼72ぺ・−ジ)はかな り詳しくハンガリ・一法を説明しており,またハチャトクロフは批判的な立場から簡単 な要約を試みて−いる。

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香川大学経済学部 研究年報 6 ⊥966 ー 4 − る。この間にハンガリーの経済学者5)は幾多の重要な研究を発表してきた。そ して57年紅はその成果が最初の公式訓令として採択された。その後61年に投資 と大修繕の実施紅関する法令45号が公布され,ついで62年に・は『投資基準』が作 成され発表されている。 投資の経済性を決定する紅あたってノ\ンガリーの経済学者はまず次のような 3つの前提を設けている。まずこの点から検討を始めよう。 第1に.,すべての投資ほ2つのグル−プに・分けられる。第1のグループ咋.そ の比重は小さいが,現存の生産過程から労働カを解放するため紅行われる投資 である。もちろんこのばあいには生産患は変化しない。いいかえると,第lグ ル嶋プの投資は単純再生産の目的を追うのであって,国民所得の増加にほ影響 を及ぼさないのである。労働力資源が制約されている国において投資をこ.うし た特別のグループに分割することは必ずしも不当とはいえない。第2のグルー プの疲資ほ偲大帝生産のため紅向けられる投資である。社会主義経済における 投資の圧倒的部分がこれに属することはいうまでもない。 第2に,労働支出の計算(それを労働時間で計算することは不可能であるた め)ほ,いわゆる「実質原価」にもとづく価格紅よって行われるのであって, そのほあいには価格ほ支出された労働嵐に比例するかもしくはそれ紅等しい。 第3に.,投資の経済性の決定紅あたってハンガヅ−の経済学者は輸入された 原料,燃料および資材の価値を計算から排除する。 投資の経済性を決定するばあい,ハンガリーではこれらの問題に関連のある すべての課題が前もって検討されて:いる。そしてハンガリーーの経済学者は,ノ投 資の経済性の決定を2つのレベルに分つことが必要であるとみなしている。そ のひとつは個別企業紅おけるそれであり,もうひとつほ国民経済全体のレベル におけるものである。 労働力の解放という目的でなされる投資の経済性は,企業レベルでは原理上 は次の算式によって決定される。 支出 鶉=塵星−=些二些 β

5)Turanszky Mik16s,Gerle Gy6rgy,Beruha2:aSOk gazdasagi hat色konysゑga, 伽dapest,1959,(テレホフおよびノ、チャトクロフの指摘による。)

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社会主義投資効率論 ー・5・− ここでノ吼は投資がなされる以前の年間賃金額,几忽は投資後の年間賃金額, βは投資をそれぞれあらわす。 このように,第1グループの投資の経済性を示す尺度ほ投資1フォ・リント (ハンガリーの通貨単位)あたりの賃金節約額である。第1グループの投資の 物理的表現は解放される労働者数であり,それは新しい企業紅向けられる。こ の計算式に.もとづいて\賃金額1フォリントを年々節約するの紅社会的紅必要な 投資の大きさを計算することができる。国民経済に.おける労働力の解放のため 紅賃金1フォ・リソト節約あたりの比投資を‰で示すことにする。 いまそのような定義を与えると,企業レベルでの第2グル−プの投資の経済 性を決定するには次の算式が用いられる。すなわち, = n免 _ 結果_ P・−A P・−A ∋′  ̄ ̄ 支訂抽宮山路 こ.の式におけるPは年間の総生産物価値の増加,Aは生産物の増加のため消 費される原料,燃料および資材の価値,したがってP・−Aは年間の純生産物価 値の増加を示す。さらに.βほ拡大再生産のための投資,β偽は労働力の解放の ための投資,〟ほ生産物の増加のため紅必要な年間の総賃金額,Ⅹ仇は労働力 解放のための比投資である。 企業レベルでの2つの投資グル−プの経済性を決定するにあたってノ\ンガリ −の経済学者が.おこなった基礎的な方法論的アブローーチはこのようなものであ る。 2つのグル・−プの投資の経済性を国民経済的観点から決定するばあいにほ, この企業の建設と活動紅直接関連する支出だけでは.なく,国民経済の他の部門 で必然的に生ずる支出をも考慮しなくてはならない。国民経済レベルでの欝1 グループの投資の結果は,個々の企業に∴掩いて節約される労働力の合計であ る。この指標は生産物原価の低下である。いま投資が行われる以前ゐ年間生産 物の原価をCl,投資が行われたあとのそれをC2であらわせば,それはG−Gで もって示される。国民経済の他の部門での支出,つまり関連投資はこの生産に とって主要で固有な流動フォンドの諸要素(原料,燃料,電力等)を供給する 部門の範囲紅ついて考慮される。ハンガリ−では関連投資の大きさを決定する ために多くの実際資料が利用されており,年間1フォリソトの価値の生産物を

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香川大学経済学部 研究年報 6 エ966 − 6 − 生産するため紅必要な労働手段への平均投資需要を求めると,この大きさは &=3.7となる。これより関連投資は次の算式で計算される。すなわち βた=A・& いま指摘された点を考慮紅いれると,国民経済レベルでの欝iグループの投 資の経済性は次の算式で与えられる。

.こ′ミ・∴、‥ ‥

Cl−C已 、′れ 支出  ̄ β±A・& 投資が原料や資材の節約をともなうのであれば,この算式の分母第2項(A・j㍍) は負となる。 さらに国民経済レベルでの第2グループの投資の経済性を決定するばあいに は.,労働力の解放を行い,そのかわりに.関連部門での新た虹彩成される能力を 稼動するために利用される投資が考慮される。この投資を計算するにあたって ハンガリーの経済学者ほ,関連部門にとってのこの種の必要投資額は生産能力 の稼動のさいに支払われる賃金額紅比例するとみなしている。賃金額紅比例せ る価格体系のもとでは,関連部門での原料と資材の価値は基本的紅は賃金支出 からなる。したがって労働力を解放する投資の大きさは,労働力の解放のため の比投資を原料と資材の価値に.乗じた積に.等しい。すなわちA・私である。以 上の考察から国民経済レベルでの欝2グル十ブの投資の鐘済性は次の算式に よって決定される。すなわち, 結 果 _ P ご}ミ・・ 支 出 β・しA・&十〟・‰十A・‰ こ.こでPほ年間総生産物価億の増加,βほ.直接投資,A・&は拡大再生産のため の関連投資,〃・‰ほ労働力を確保するための投資,A・‰ほ関連部門で形成 される生産能力の稼動紅労働力を確保するための投資を示す。 いま示した算式ほ−・般的性格を有するが,これは投資の経済性問題の理解を 助けるだけであって,実際の計算には利用することができない。なぜなら,労 働力の解放のための投資を拡大再生産への投資から区別することが実際には困 難であることからみて,このことは.きわめて当然といえよう。にもかかわら ず,ハンガリーーの経済学者が前述のような考慮を払い算式を提示しているのほ, 投資の経済性を実際に決定しようとすると,当然こうした方法論的基礎に立っ

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社会主義投資効率論 − 7− て問題を処理する必要性があるからである。 こ・の算式は現実に・は適用できないとしても,投資の経済性の算定において現 実紅利用されるような算:式作成の基礎となりうること,またそれは投資の経済 性の標準係数の計算にとって欠ぐぺからざるものである。投資の経済性をめぐ る問題の解決にさいしてきわめて重要な意義を有する次の3つの問題に詳しく 触れなくて−はならない。それらの問題とは,(1)経済性の標準係数,(2)時間要素 の計算,(3)関連投資の決定である。 ハンガリ−の経済学老は,(‰十&)フォ・リントの投資をもって:1年間紅1 フォリントの純生産物価値を増加させることが可儲であると主張する。いいか えると,1フォリントの投資の結果として だけの国民所得が生みだ 払ヰ・& されるのである。この大きさ(&)が周知の投資の絶対的な効率係数である。 ハンガリ一における実際の計算では国民経済全体について‰は1.0,また&は 3.7だとされている。したがって昆あ= =0.21となる。こうした計算 1.0+3.7 に依拠してノ\ンガリTのゴスプランは1957年にすでに投資の絶対的効率係数を 0.2と規定している。 時間要素の計算においてハンガリーの経済学者ほ次のような立場紅立ってい る。投資というのは経常生産から資金を転用することであり,したがって1年 以上紅わたって継続する基本建設は,資金の漁結を招き,国民所得の損失を生 ずる。この損失は毎年の投資に係数(lヰg・昆a)を乗じて計算:する。この式のg はある年から建設終了までに残っている年数をあらわし,思ぃはさきにあげた絶 対的な効率係数をあらわす。 また関連投資の大きさは個々の対象ごとの計算にもとづいて決定きれる。こ のような計算が行いえないときに・ほ,関連投資の大きさほ経験的な算式(Aゎ+エ) 2い6に.よって計算される。Aゎはその年に建設される対象について必要とされる 国内の原料と資材の価値,エは年間の償却額をあらわす。ノ、ンガリL−の経済学 者が投資の経済性を決定するさいの理論的・方法論的前提は以上に.みたごとく である。 ところで実際に用いられる指標はどんなものであろうか,以下これについて 説明しよう。

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香川大学経済学部 研究年報 6 Jタββ − β −一 (1)企業レベルでの投資の経済性は, r・−A盛・−・Aむ−エ (1) 射−= 〟十β九十j㌔ (2)国民経済レベルでの投資の経済性ほリ ア (2) 曾殉= 〃+A‘+Aゎ十工十& (3)投下資金1フォリントあたりの利潤指標は, r−−〟−・Ai・−・Aむ【エ (3) 釦= β (4)生産物原価の低下のみを求める投資のばあいには次の算式が用いられ る。 Oe−・0祝 し4) 〃0= β±βた±ダ この式に.おける0♂と0αは投資が行われる前後における年間総生産物の原価を それぞれあらわす。指棲恥ほ原価の引きさげを目標とするばあいに用いられる。 しかしこの目的が他の目的と併行して行われるのであれば,指標恥の計算は余 計なものとなる。 (1)式から(4)式までの記号は次のように定義される。 rは国際価格での年間生産鼠の価値; Afは輸入される原料,資材,燃料およびエネルギーへの外貨支出と外貨運 賃支出; Abほ国内原料,資材,燃料および・エネルギ−への支出と国内での運賃支計; エほ減価償却; 〟は賃金(税を含む); βは直接投資; ダほ流動フォンド; βたほ関連投資; 晶はあらゆる資金の凍結によって生ずる国民所得の損失額。この大きさは すべての資金紅0.2を乗じた額紅等しい。ただし資本建設が多年に・わたるば あいに.は,直接投資と関連投資に修正係数を乗じたものとして計算される。 βゐは直接投資の凍結に.よる国民所得の損失額。この大きさほ直接投資に¢・2

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社会主義投資効率論 −∴9 − を乗じた額に等しい。ただし建設が多年紅及ぶときに.ほ,直接投資に.修正係 数を乗じてえられる。 j㌔は.流動フオ・ンドの凍結に.よる国民所得の損失額。この大きさは流動フォ ンドに0.2を乗じたものである。 βほ固定投資と関連投資に.流動フォンドを加え.た総額であり,それほβ=β 十ダ十βたであらわされる。基本建設が多年払わたるときに」は,βとβぉは資 金の凍結期間を考慮して修正される。これは∴次の例示に.示されるごとぐであ る。 算1表 (注)すは資金凍結による所得損失を含む投資額 周知のように,ハンガリー経済もまた対外経済関係に大きく依存している。 そのため基本建設が他国からの信用供与によって行われるこ.とが稀では.ない。 したがってこのような事情を考慮して投資の経済性計算を行わなぐてはならな い。海外からの借入れ資金ほ,それが返済されるよりも前に.一・走の経済効果を あげなくてはならない。いま仮設例を用いてこの関係を説明しよう。投資額は 800(百万)フォリントであり ,その建設は2年間で行われるとする。外国か らの借款に.よる設備価値は480(百万)フォリントで,その利率ほ年5%,クレ デットほ.2年間紅わたって供与される。つまり年々240(百万)フォ・リント,信 用の返済期間は5年,信用獲得後1年をおいて−最初の返済が開始されるものと する。このばあい経済性計算に含まれる投資額は次の第2表のよう紅修正され る。

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香川大学経済学部 研究年報 6 J966 ー∫〃 − (注)1.単位百万フォリント。 2.修正係数は次の算式によって計算される。すなわち ただしダ′は操菜開始後の経済年数を示す。 1 1+ダ/×0.20 ハンガリ−ではさきに示された算式(1)∼(4)を用いて投資の経済性が具体的に 決定されているようである。 企業レベルで決定される投資の経済性の算式(1)は次のような形であらわされ る。すなわち, ¢′=一一二言 純生産額 〝 +ナナJ YI - 東金十資金の転用による国民所得の損失 び十(β十ダ)昆あ このように,算式の分子には建設される企業において1年間に生みだされる国 民所得の大きさ,もしくぼ純生産額が示され,分母紅はこの純生産額を生みだ す生労働の支出と資金の凍結による国民経済の扱失とが示される。ここで算式 の分母の経済的意味を検討しておこう。実際にほ〝十(βヰ・ダ)居ねの総額は,所 与の投資と流動フォ・ンドを利用するさいに当該■企業の労働者の労働紅よってつ くりだされるところの年間の国民所得の大きさ紅外ならない。(β十ダ)月内は, 所与の投資と流動フォンドを生産的に利用するさいに国民経済で平均的紅え.ら れる剰余生産物(桝)である。したがってハンガリL一経済学者の見解紅よると,

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社会主義投資効率論 ーJユ ー この算式に・よって当該企業の純生産額創設の活動成果と,この資金の助けをか りて国民経済で平均的にえられる成果とが比較される。実証分析の示すところ では射・の指標は平均1・20に二等しいといわれ,投資の大きさで加重すると,その 大きさは0.94紅なるとされている。 さきに示された(2)式,つまり国民経済レベルでの投資の経済性ほ次のような 形であらわされる。 原価十純所得 ¢殉= 原価十資金の転用による国 民所得の扱失 この式の経済的意味は次の点にある。すなわちそれは,所与の企業における投 資と流動フォ・ンドとの助けに・よってえ.られる成果と,この資金を国民経済で平 均的紅利用したさいに・えられる成果との比較である。しかしこの式では(1)式と 異なり,所与の企業の活動成果だけではなく,生産の先行段階の活動成果をも 含んでいる。ハンガリ一における指標ヴねの平均値ほ0.92に等しいとされそし、る が,個々の対象についてみると,その値はかなり大きい幅をもっている。最も 経済的な対象でほこの指標はノ2.0ないしそれ以上であるのに・,最も非経済的な 対象では0・30∼0・40とされている。エ業部門ごとの指標触は次の欝3表紅 示さ れるごとぐである。 第3表 算式(3)の経済的内容は投資の収益率の決定である。そして指標彿の逆数が投 資の償還期間に相当する。個々の工業部門紅ついてみると,この指標の大きさ ははなは.だ異っている。たとえば,器具製作工業部門ではそれは3.25年である

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香川大学経済学部 研究年報 6 ーーJ2 − J966 のに.,ラ汐オ製作部門に設備を供給する部門では1年,工作機械では.4.75年, 輸送機械では2年,冶金については18.7年にもなっている。 前述の4つの指標は,基本建設の各対象紅ついて計算され,すで紅建設され ている同じ対象についての平均指標およぴよりよき指標と対比される。したが って,この計算指標ほ部門ごとに.分化される。同時紅ハンガリーの経済学者ほ, かれらに.よって採用された時間要素と資金凍結の計算方法,投資の経済性の単 一ヰ旨標と国際価格が国民経済のさまざまの部門での投資の経済性を比較するこ とを可能ならしめるとみる。 時間要素の計算と基本建設における資金の凍結にたいするハンガリー経済学 者のアプローチはきわめて・ユニーー クである。基本建設は,それが棟準期間内紅 実現されようといなとに.かかわらず,資金の凍結を意味し国民経済的損失をも たらすことは−・見して明らかである。この扱失の大きさが投資の経済性計算催 おいて考慮される。ノ、ンガリ−で用いられて−いる時間要素の計算方法は,計昇 技術という観点からきわめて便利である。それは検討される投資バリアソトを 全く同じ条件におくことを可能紅するからである。もっともこのような時間要 素の計算を投資の経済性計算紅おいて行うとしても,それは標準建設期間の必 要性を無視すること紅はならない。ハンガリ−でほこの指標が作成されてい る。それほ国民経済の種々の部門にとって単一ノであり,ただ投資の大きさのい かんによって差別されている。たとえば,500万フォリントまでの価値の建設 については最大建設期間は12カ月,40−50(百万)フォリントの価値について は24カ月,100−120(百万)フォ・ジントの価値紅ついては30カ月とされてい る。 ところで,前述の算式でほ国際価格が用いられていた。確か紅これは現存の 卸売価格体系の人為的なゆがみ.を除くためのものである。しかし国際価格を用 いてもこ.の目的が達成されるかどうかは疑わしい。ハンガリ−で用いられるル ーブルもしくはドル表示の国際価格は,公定レ一卜によって国内フォ・リント把 換算され,そしてハンガリ−・ゴスプランの認める特殊な係数によって修正さ れる。こうした試みにもかかわらず,現存価格体系の人為的なゆがみの影響を 完全には取り除きえ.ない。国際価格そのものがもともと世界市場紅おける景気 変動や独占体の政策やそれ.以外の要因の作用めもとにある。それ紅また国で生

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社会主義投資効率論 一一」憶 − 産されるすべての商品について国際価格が見出されるともかぎらない。だから 実際の計算に.国際価格をそのまま用いるこ.とは必ずしも妥当とはいえない。 またハンガリ−では投資の経済性決定においてこ投資のグル−プわけが規定さ れている。 (1)−・般の工業投資 (2)食品工業での投資 (3)運輸通信への投資 (4)生産意図をもつ農業投資 (5)住宅,医療,文化・社会および行政建設への投資 (6)共同運営物への投資 (7)倉庫への投資 これらの各グループにおける投資の経済性計算はっ 基本的に.は前述の算式に ょって行われるが,多くの特殊性も有する。たとえ.ば,住宅建設への投資の経 済性評価紅おいて∴用いられる基本指標は1住宅またほ1人あたりの比投資であ る。それ以外に.も1住宅の平均面積,住宅の平均部屋数,集中曖房施設,戸 棚,浴室,シャワの有無等の多くの現物指標が用いられる。 ハンガリーの投資の経済性決定紅関する訓令の一・般的特徴は以上のようであ る。ハンガリーーで用いられている方法ほきわめて独創的であるといえる。しか しその反面,この方法がきわめて複雑であるという事情も強調しないわけには ゆかない。たとえば,G・ゲルレは種々の算式に.よる具体的計算においてえら れる結果の矛盾紅ついて言及し,このような結果を総合的に評価する何らの方 法もないことを指摘している。6)また別の経済学者P・コズムチャは,勧告さ れた方法でほ投資の個々の項目の大きさを決定するうえで複雑さがつきまとう ので,投資の大きさがさはど大きくないばあいでも算式を適用するのが困難で あると指摘している。7)

6)Gerle Gy8rgy,Okozhat−e helytelen d6nt6seket a beruhえzAsok hat畠konysagまnak mainormaja?≪Ipargazdas急g>>,NS,1961.

7)Kozmutza Pal,Beruh急z負sok hat蝕onys為ganak normaja,≪Ipargazdasag>>, Nl,1962.

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香川大学経済学部 研究年報 6 1966 一J4 −− 現在のところ,ハンガリーでほ月lきつづき投資の経済性の決定方法の改善紅 関する作業がなされている。ハンガリーの経済学者に.よって検討されている新 しい方法の基本目標ほ,同一・課題を達成するさいのさまざまな投資バリアソト の経済性比較の方法匿おかれている。現在検討されている経済性の決定方法も 基本的には前述の訓令の方向に沿ったものである。しかし多様な指標を用いる かわりに,計算でほ単一・の基準を利用すべきだとしている。ソ連やルー・マニアや チェココスロバキアなどの国ですでに用いられて:いる周知の「計算」支出の算 式(C十昆∬)がこれである。 (1)同一・生産能力のバリアソト比較紅ついては, β・』十0=鯛飯 (2)異なった生産能力のバリアソト比較紅ついてほ., β・」+O T =:邦別働 をそれぞれ用いて計算を行う。この式でほβは投資および流動フォ・ンド,∠ほ 標準効率係数,0は経常支出(原価と運賃),rは生産の成果をそれぞれ意味す る。算式の全構成要素は前に述べたと同じように正確に.決定される。要する に,投資βは,直接および関連投資(時間要素を考慮せる),直接および関連流 動フォ・ンドからなる。直接投資と関連投資ほその開発期間を考慮して修正され る。建設が5年以内であれば,前述の方法紅よって修正が行われる。しかしそ れが5年以上に及ぶようになると,年々の投資額の修正にさいしてほ標準効率 係数だけではなしに国居所得に占める投資の割合も考慮される。 さらに新しい方法で興味のあるのは,投資も原価もすべての計算は8つの方 法に.よって行われる。 (1)国内の経常価格 (2)生産の全段階紅おける純所得の要素を除いた計算価格(その基礎は経常 価格である)。 (3)同じ計算価格(その基礎は将来10年間の期待原価である)。 計算に用いられる価格のいかん紅よって標準効率係数(国民経済にとって単一 の)の大きさは異なる。すなわち第1の方法では0・20,欝2q方法では0・25,第 ∂の方法では0.18と決定される。もし8つの方法による計算結果が矛盾すると

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社会主義投資効率論 ーJ∂− すれば,欝3の方法による計算に.もとづいて生産鼠,生産費軋ついての最終的 な結論が引きだされる。ともあれ,ハンガリーにおける投資効率の決定方法は こ1ニークな方法のもとに構成されてほいるが,現実にはそのうち紅矛盾もはら んでおり,結局はソ連方式に接近する可能性がある。 Ⅲ チ.ェコスロバキア8)で投資と新技術の効率決定に.関する全国家的な訓令が採 択されたのほ1961年である。この訓令にみられる基本的な方法論的立場はソヴ ュトのそれとほとんど同じである。一・般的な投資効率基準は,投資の実現の結 果としての社会主義社会の現在および将来の欲望充足の度合である。もちろん この一・般的基準の数量的な表現は国民所得の物的な大きさである。 国民経済の部門および工業間への投資配分は,バランス法にもとづいて膚奴 的紅規定される社会の欲望に・従って実現される。もちろん,部門のレベルでの 投資バリアソトの選択はその経済効率の比較計算に・もとづいて決定される。し かも経済効率計算は,物財バランス,労働力バランス,対外貿易バランスの 可能性と,具体的年譜資源の可能性という観点からの総合的な分析紅よって補 足される。投資の経済効率評価にさいしては8つの指標の検討が必要である。 すなわち,(1)創設される対象の生産物原価,(2)投資星,(3)基本建設の長さがこ れである。 基本建設バリアソトの比較において原価と投資の指標が正反対のものであれ ば,バリアソトの優劣可否の決定ほ,周知の追加投資の相対的な効率評価紅従 う。 Vl−γコ ∬= .長一.ム ここで∬は追加投資の経済効率係数,坑,2は当該バリアソトについての年生産 物原価,ム,公は当該バリアソトの投資をそれぞれあらわす。 また再建への投資のばあいに・はその効率は次式紅よって決定される。 8)チ・ェコスロバキアにおける現状はテレホフの著書に詳しく書かれており,筆者はこ れを中心にまとめた。なお昇一ランドの経済学者クエジアークとリブフスキの共著に・ も簡単な説明がある。

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香川大学経済学部 研究年報 6 坑−・鴨 エ966 −・・J6 …− ∬= nは再建までの生産物原価,陥は再建後の生産物原価,./ほ再建に.要する投資 である。 さらに投資バリアソトの数が多いときには,周知の「計算」支出の算式が用 いられる。 y十晶・′=研磨搾 以上紅みたごとく,チェコスロバキア紅おける投資効率決定にたいする方法 論は,本質的紅ほ.ソ連のそれとなんら異なるところはない。相対的効率の決定 においてもその標準効率指標ほ吾卵弓ごと紅差別して一決められている。ただこの 指標の決定に.あたっては,−・定期間に予定される投資の部門全体における生産 物原価への影響が考慮される。具体的にいえば,チ.ェコスロバキア国民経済発展 第3次5カ年計画の分析では効率係数の大きさは0.1・−0.8であるとされてい る。 いまチ∴ェコの化学工業を例として標準効率係数の決定に用いられている方 法9)をみること紅しよう。投資の部門全体の原価引きさげへの影響は次の式で 決定される。 ガ佑ち(伽−〝66) j㍍= 竿+d狐+・∠訊〇+∠狐+必4一十妻苧 ここで属訂は投資の標準効率係数,ガ佑5は1965年の総生産高,頑は1960年と1965

年における支出(嘉島),∠冴ほ・それぞれの年における固定フォ・ンドの増加

を意味する。もっとも効率計算においては生産される生産物の品目の変化とい った影響は除外される。同様に現存企業の近代化や再建に関する措置の影響も 排除される。それ以外紅も投資と関連のない多くの他の諸要因の影響もとり鹸 かなくてはならない。まず第1に.考えられる影響は労働者数の増加である。こ れほ計算された効率に指標亀を乗ずることによって除くことができる。その指 9)この方法は,R。Mゑslo,A.Rus畠丘k,Propoるetnormativnihokoeficientuekon・ 0mick色efektivnostidodatkovチchinvestic,≪Planovam色 hospodゑrstri>>,Nll, 1961.に説明されているといわれる。

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社会主義投資効率論 一 ヱ7− 標の計算は, 1960年の労働者数 瓜= 1965年の労働者数

第2紅ほ,労働時間の短縮紅よる生産物への影響が考えられる。こ.れは次のよ

うに規定される。

亀=Ⅶ=1,095

そして第8紅は,労働生産性の上昇と原価水準に.影響を及ぼすすぺての要因が

考えられるが,これらは固定フォンドの増加にほ依存しない。1961−65年紅おけ

るチェコの化学工業について−は,次のような要素が労働生産性の上昇に影響を

及ぼして−いる。すなわち(1)投資−70%,(2)生産組織の改善−2。5%,(3)労働の

熟練の向上−10.9%,(4)その他の要素−16.6%,つまり(2)から(4)までの諸要因

の影響を除くためには,計算された効率指標机叔.0‖7を乗ずることが必要とい

うのである。こうして計画期間全体についての標準効率係数が計算されると同

時紅,同じような計算が年ごとに行われる。こ.の計算は次の算式で示される。

ガ坑4(勒0一一物4)一−ガ惰8(物。−〝63) 脆4= 十 60年から64年までの個々の年紅ついて一計算された効率は次のよう紅なってい る。 すなわち,0・14,0・18,0.14,0.14,0.20である。年毎に.効率を計算する とその数値が変動するのは,要するに個々の化学工業の生産における固定フォ ンドの増加が不均等であるからだ。化学工業の個々の部門紅ついてえられる根 本的な係数の大きさは等しい。基礎化学については0.15,石油精製については 0・18,ダールの加エは0.01,ゴムとプラスチ・ックの生産は0.27,セルローズの 生産は0.10となっている。しかしこ.の係数はさらに修正される。チェコの経済

学者はこの点について次のような考え紅立っている。すなわち,追加投資によ

る原価の低下のうち,その躯賃金支出額の低下であり,残りの与ほ他の原価

項目の低下となっている。だから,化学工業紅おける追加投資ほ主に労働力の

節約紅たいして忠義をもつ。 いま効率の限界として前述の係数の大きさが採択されるとすると,化学工業 における労働力の相対的な代替可能性のもとでは,追加投資はゴムとプラスチ

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香川大学経済学部 研究年報 6 ∫966 ー∴柑−一一 ックの生産発展に有利紅働くととになる。そのためP・マスロとA・ルスエャ クの2人の経済学者は.,ゴムとプラスチックの生産紅おける標準効率係数を引 きさげ,逆にタールの加エでは・それを引きあげるぺきだと提案するのである。 こ.のような修正は次の3つの基本的な要因を考慮して行われる。すなわち(1)熟 練を考慮した労働力需要,(2)原料の不足,(3)新技術の開発がこれである。その 結果,化学工業については効率の下限とみなされる次のような標準効率係数が 採用される。参考のためにこれを示しておこう。 部門全体 0.16 基礎化学 0.13 石油精製 0.18 タール加工 0.10 ゴムとプラスチック 0.20 セルローズ 0.13 前述のような追加投資の効率計算に.疑問がないでほない。もしさまざまの生 産紅ついて分化せる標準効率係数が用いられるとすれば,追加投資の効率ほ同 一・種類の生産についてのみ比較するととができよう。しかしゴムとプラスチッ クの生産では追加投資は効率的に投下されるの紅,タールの加エでほそうでな いというのははたして正しいのであろうか。追加投資は,類似の生産物もしく は代替生産物の生産のために予定されたバリアソト紅おける資本支出の差であ る。しかしタールとゴム(プラスチック)は,風知のように,類似の生産物で もなければ代替生産物でもない。もしこのよう紅考えるとすれば,これらの生 産バリアソトの比較そのものは非現実的であり,したがって追加投資の効率比 較は意味を失うこと紅なる。 化学工業全体について:採用される標準効率係数の大きさが追加投資の効率の 下限をなすとの見解を認めることは正しいのであろうか。こ.のような承認のた めの基本的論拠は,追加投資の結果は同じ鼠の生産物を増大させるばあいの原 価の低下という点に求められる。マスロとルスニャクはこう述べている。「過加 投資は必然的に.生産費に.おける−・定の節約をもたらすが,総生産高の増加をも たらさない。したがって,えられた効率の大きさ(0・16)ほ追加投資の経済効率 係数の下限値である。」

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社会主義投資効率論 ーJ9− 追加投資は原価の低下を導くが生産物の増加をもたらさないとの事実ほ,・そ れだけではなにも説明するものではない。まして標準係数の計算方法とマスロ とルスニャクの説明に.従うかぎり,えられた標準係数の大きさは限界値でなし に平均値であることを証明している。 モスコクのレンポジコ.クムにおいてチェコの経済学者B・コマレクと刀・ル 汐ノ、は,工業部門紅ついての標準効率係数の決定について興味ある仮設例をと りあげて説明を行った。計算を行うための初めのデー・ターは次のようである。 基準期間紅おける単位生産豊あたりの原価は0.90,最終期間のそれは0.72,ま た基準期間の生産嵐は17(百万)タロン,最終期間には80(百万)クロンとする。 このよう紅して当該生産部門では計画期間中に生産物原価が54伯■万)クロ ン=(0.90・−0.72)・80(百万)クロンだけ低下する。さら紅かれらは次の仮設を おく。すなわち,当該部門における生産国定フォ・ンド価値を20(百万)クロンと し,計画期間にそれは15(百万)クロンだけ増加するものとみなす。このフォン ドの増加もまた生産物原価の低下を保障する。もしこの期間中紅4(百万)クロ ンだけ固定フォンドが遊離するとすれぼ,生産固定フォンドの純増加額は11 (百万)クロンになる。 以上に示されたデL−タL−をもとにして追加投資の標準効率係数を求めてみる 5.4

=0・5)となる。しかしこ牒数値ほ,すで紅みた

と,その大きさは0・5(

ように,一・定の方法で修正を加える必要がある。このばあい紅は修正は次のよ うに行なわれる。 (1)初めに部門紅おける従業者数の増加が考えられる。計画期間中に固定フ ォンド紅よって装備される人員の増加数が2万人だと仮定する。 (2)固定フォ・ンド利用の時間的な差異だけを考慮して修正を行うべきであ る。基準期間における当該部門の交替制は1・80であり,計画の最終期間にほ 2.05まで引きあげられるものとする。基準時における部門の労働者数は20万,労 働者1人あたりの固定フォンドの価値は10万クロン,したがって−労働者数の増 加ほ,2万人の新労働者紅総額2(百万)クロンの固定フォ・ンド価値を必要と する。しかし交替制が1.3から2.05まで上昇するので,労働者数の増加は20万 から82万となる。そのため生産過程に新たに吸収される2万人の労働者を除く

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香川大学経済学部 研究年報 6 J966 ー20− と,10万人のものが解放され,その価値は(2“05の交替制のもとでは)およそ 100,000 ・≒5)となる。この節約から遊離する固定フ 5(百万)クロン( 2.05×100、000 ォンド4(百万)クロンをさしひかなくてほならない。こうしてえ.られる現実の 節約は固定フォンド百万クロンである。これ紅15(百万)クロンが追加され,結 局のとこ.ろ,固定フォ・ンドの増加は16(百万)タロンである。 (3)原価の総節約額は,投資に.よってえられるだけではなく,生産組織の改 善等の捨置(’その割合は25%)に.よってもえられる。だから,生産物原価の投 資による節約はおよそ4(百万)クロン(6.4×0.閃)である。この大きさと固定 フォ・ンドの増加と軋よって標準効率係数の大きさが決定される。それは0・・25 4百万クロン ン )に等しい0 16百万クロ (4)しかしこの修正だけで決定された標準指標が最終的にきまるのでほな い。コマレクとレジノ\が述べているよう紅,「’こ.のようにして決定された係数 は,所与の部門での投資の平均的な(最小限でほない)効率を示すこと紅注意 すると,平均以下の最小許容効率,この部門ではよよそ0.20を選ぶことが必要 である。」しかしいかなる判断に.もとづいて計算された係数を引きさげるのか, その根拠は必ずしも明らかではない。 チ.ェコの訓令で注目をひく点は,投資の中紅土地の買収紅要する支出,つま り土地価格を含めていることである。チ.ェ.コの経済学者は,社会主義のもとで の「土地価格」というカテゴリーーの存在を否認しているに′もかかわらず,他方 でそのような考慮が払われているのは興味がある。制限された耕地面積しかも たない国のばあい紅は,このような土地価格の計算∵は妥当性を有するとも考え られる。農業生産から工業生産に.従事するために農業就業者を排除すれば,社 会はその土地において−農業生産物をかくとくする可能性を失うことになり,そ の部分は損失とみなされることになる。これに関連してチ.ェコの経済学者は, 現存の土地価格はあまりにも低きに失し,現実の社会的損失をあらわしえない から,それが可能にるような水準紅その価格を規定すべきであるとしている。 さらに投資資金の凍結紅よって失われる国民所得の増加をいかに.算定する か,チふコの経済学者の見解をみておこう。いまその計算式を示すと次のよう

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社会主義投資効率論 ー2ユー である。 8 ̄グー1 − ■ 11 ん r∑可 二 郎 ︵ l ・十 & ︶ ここで爪ほ資金の凍結に.よる欝グバリアソトの損失,.んは第オバリアソトの第ノ 年に.おける投資,&は時間要素計算の標準係数であり,その大きさほ1961− 1965年の期間では全国民経済について単一・で0.15に.等しいとされている。ブほ 建設年次を,gは建設期間,ガほ投資の均等配分を示す係数で,その大きさは &が0・15のとき1.071とされている。たとえば,50(百万)クロンの投資が2.5 年間に実現されるとし,その支出額が欝1年に80%,第2年に.60%,第各年に 10%としよう。そのときには各年紅おける扱失額は次のようになる。すなわち 2.6−1十1

第1年肝帽

第2年〃調

〔 ( ・−1〕 (1+0.15) =4.86(百万)クロン 1.071 公.6一旦+1 (1十0.15) 1 〕 =4.58(百万)タロン ・− 1.071 2.5−8+1 (1+0.15) ・−1〕 =0.18(百万)タロン

第8年 〃も=5

1.071 したがって−,資金の凍結による国民所得の損失額は4.86十4.63十0.18=ご9.57 (百万)タロンになる。 さらに投資効率の比較にさいして投資の異時性が問題となる。チェコではこ れが次のように計算されている。 .ア=./ (1+&)㌘ ハは割引された投資,.Jは投資,rほ投資の沈毅期間をそれぞれ示す。 ところで,チェコスロバキアの経済も他の束欧社会主義諸国と同じよう紅, 海外貿易が大きい役割をはたしている。そのため投資効率の評価においてほ国 際分業の優位性を利用する可能性を考慮にいれなぐではならない。当然製品紅 よっては国内で生産するよりも国外からそれを輸入することが有利となる。こ のばあい輸入品の決済のために輸出等価物を生産する効率計算が必要である。 もし輸入品の生産に.要する支出よりも輸出等価物の生産に要する支出が少なく

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香川大学経済学部 研究年報 6 エ966 −◆22− ですむのであれば,この生産物を他国から輸入することが有利である。輸出等 価物の生産に要する支出(のは次式で決定される。 C.∫ J=二 J‘ ここでCは輸入国の外貨による生産物価格,∫は輸入国とチ.ェコ間の公定為替 レ−ト,㌢恨輸入国へのヲ.ェ.コの輸出品の平均収益率指標をあらわす。 輸出生産のばあいに.も多くの指標の計算が必要である。これらの指標として あげられるものほ次のようになる。 (1)総外貨取得高。これは−・定期間にかくとくせる外貨総額である。 (2)輸出の見込収益率指標。この指標ほ.海外価格と国内卸売価格との比率と して計算される。輸出の見込収益率指標ほ商品の国内卸亮価格1クロンあたり の外貨取得高によって示される。 (3)前と類似の指標。ただし分母には卸売価格でほなく原価が考慮される。 (4)労働の外貨効率括凛。この指標は次の式によって与えられる。 かβ・−∫d エ)VP= ∫γ∫・−Aた・−・ふ+仇+皮p この式の玖祀貿易機関の外貨支出を控除した商品の貿易価格(チ.ェコの国境渡 し価格),島は輸入原材料価値,ただし分子では貿易価格,分母では国内卸売価 格とする。∫膵ほ輸出品の国内卸売価格,Aたほ輸出品の生産企業のうる利潤 (卸売価格に財政補助金が含まれるとき紅は,A忠はプラスとなる),0殉は商品 輸出にかかわる国内での雑費(国境までの輸送,商品の保管等の支出),点少は 国内の貿易機関の諸経費をあらわす−。この指標は現行卸売価格あたりの純外貨 獲得高の大きさを示す。 (5)外貨依存指標。これは輸出品に占める輸入原材料の外貨価値の輸出品の 総外貨価値にたいする比率に.よって決定される。 さらに.チ.ェ.コの訓令では輸出入に.おける生産効率の分析を深化するために・, 生きた労働の外貨効率指標をも算定すべきであるといわれている。上述の各指 標が本質的に.外国貿易の効率を特徴づける。しかしこれらの指標紅も欠陥があ る。なぜならば,チ.ェコの各指標にはもっばら経常支出が考慮されているだけ で投資を欠いでいるからである。たとえば,輸出等価物の生産に要する支出の 大きさを決定するばあい紅は,商品の外貨価格が輸出の平均収益率指標でわら

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社会主義投資効率論 −・23一・ れる。ひるがえって−後者の指標は,前述のように,国内卸売価格にたいする貿 易価格の比率として計算される。ところが,現在のチエ.コに.おける価格形成リ ステムでは卸売価格は原価紅もとづいて構成され,必要とされる生産物の資本

集約度を考慮していないのである。したがって,輸出生産物の生産調整に必要

な投資は研究領域外紅取り残されているのである。投資の計算が不足しておれ ば誤った結論が導かれる危険は大きい。チ.ェコの外国貿易効率研究はその点で 解決すべき問題を多くかかえているといわざるをいえないであろう。 これまでの簡単な現状調査からみてもわかるように.,東欧の社会主義諸国に おいて現在採択されて−いる投資の経済効率決定の方法は,基本的に」は同一・の方 向をめざしながらも,その間に−・定の方法論的差異をみせている。そしてその 基本的な差異は投資の標準効率係数の決定問題に.たいする態度に.あるようにみ られる。要する紅,この問題については2つのグループがある。第1.のグルー プ(ブルガリア,ルーマニア,ソ連,チ.ニコスロバキア)では,標準指標が部 門ごと紅分化して規定されるのに.,他方第2グループ(ハンガリー,ポ−ランド) では,国民経済紅ついての単一・な標準効率指標が用いられている。 標準効率指標の問題には投資の経済効率決定と結びつくあらゆる問題が集中 的にあらわれる。問題は,効率分析を部門のレベルでのみ行うか,あるいは部門 間比較のもとで行うかにある。いいかえると,標準効率指標の問題は国展経済部 門間への投資配分の最適計画を発見するという問題と密接につながっている。 第1グループの国ぐには,国民経済書卵弓に関する投資の方向づけが個別部門 の具体的な発展の要求と生産物の生産と分配の物財バランスから生ずるテンポ とによって決められるということに立脚している。エ業部門紅ついての投資配 分は本質的紅は事前紅行われる効率計算とは関連をもたない。同時紅部門レベ ルでほ提起された課題の最も効率的な解決方法の選択は,この部門のもろもろ の具体的な対象紅おける投資の経済効率計算紅もとづいて行われる。したがっ て,投資効率計算ほこの生産物を生産する必要があるかどうかの問題紅ほこた えない。それは,国民経済計画によってきめられた種々の代替生産物を最小の 支出をもっていか紅生産するかの問題に.のみ触れる紅すぎない。ここから類似 のないしほ相互代巷的な生産部門における建設バリアソト選択における追加投 資の相対的な効率決定の必然性が生ずる。この決定の経済的意味ほ,追加投資

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香川大学経済学部 研究年報 6 ヱ966 ・−24−− の薦果としてえられる生産物原価の低下という効果をその投資の大きさと比較 することにある。この種の計算の特徴は部門別紅分化せる標準効率係数が用い られ亭ことである。 第2のグループの国ぐにでもバランス法に照応して国民経済部門紅ついての 投資配分を行う。しかしハンガリーやポーランドの経済学者らはり 同時に投資 の経済効率計算がもろもろの生産物をいかに経済的に.生産するかの問題だけで はなく,なにを有利に.生産するかの問題についての解答を与える補助手段たり うると考えるのである。いいかえると,一国紅おいて生産されるすべての生産 物は代替生産物とみなされる。このようなアブロ−チをとるばあいには,国民 経済について1つの標準効率係数を採用するのが妥当とされる。そしてあれこ れの生産の優先的な発展についての具体的な解決がこの比較紅もとづいて採択 されないにしても,計画に対応して行われる措置に伴って二生じうる効果または 損失に.ついての明確な理解をうる。このような計算の経済的意味は−・走種類の 生産物の生産についての社会的労働の総支出を最小化ならしめることにある。 しかしハンガリーとポ−ランドの方法は,国民経済部門間での投資の最適配 分の問題を必ずしも解決して−はいない。ソ連ではすでに.この問題がB・ノポジ ロフによって取りあげられていることを念のためにいっておこう。ともあれ, 投資効率問題と密接な関連をもつ科学的な最適計画法の理論的および方法論的 検討ほその解決を将来に待たなくてはならない。そのためには部門間連関バラ ンスを封画計算紅いっそう広く利用することが考えられる。 投資の経済効率決定の問題は復姓である。その理論的検討は,ソ連を除くと 他の社会主義諸国ではさはど古くから始まったわけではない。この間題の多く の側面はまだ最終的に.は解明されておらず,その解決についてのアブロ−チも さまざま存在している。いずれのアプローチが正しいかは実生活によって検証 されざるをえない。時間がたっで十分な経験を積めば,さまざまな方法論的解 決の長所と短所がはっきりし,これを基礎として投資効率決定の科学的方法に. いっそうの改善を加えることができよう。その意味では各国に.おける投資効率 論研究はまだ十分なものではない。 ⅠⅤ 前節でみたように,個々の社会主義国で用いられている投資の経済効率決定

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社会主義投資効率論 −25− の方法は,各国で最も経済的な基本建設バリアソトを発見し,国民経済紅存在 す・る追加資源を明らか紅し,国民生産の効率を引きあげるための前提をつくり だすうえで役立つ。 しかし各国での社会的生産の効率向上の可能性ほ,現在では国内資源の利用 の程度だけではなく,各国が国際分業の優位性と利益をいか軋利用するかにも 依存している。周知のよう紅,社会主義諸国は相互に邪立することなく,年々 深化する社会主義国際分業の枠内で自国の経済を発展させてこいる。社会主義国 家の経済関係を求めて■,セフ加盟諸国は,すでにこの10年間紅各国の国民経済 発展計画を調整し,重要なエ業部門での生産の専門化と協同化を行ってきた。 当然このような条件のもとで,社会主義諸国に.共通な利害をもち,したがって それを共同して解決しなくてはならない経済課題をいっそう増大せしめた。こ のよ.うな課題を首尾よく解決するに」は,現在の経済協力形態を組織的に改善し 新しい形態を発展させその効率を向上することが前提となる。社会主義諸国の 経済学者は,これらの問題に関する理論的・方法論的な研究を行っており,これ にもとづいて社会主義協力国払おける生産力の合理的配置に関する重要な決定 が採択されうるのである。こ.れらの問題の解決に.おいて今日大きい貢献をなし ているのはセフの経済問題常設委員会なのである。そのなかで社会主義諸国の 専門家たちは「セフ加盟国払おける投資の経済効率比較の臨時法10)」を作成し た。ここではこ.の問題を以下に.おいて一枚討しよう。 社会主義諸国で採択されでいる投資効率の決定方法にほ国によって若干の差 があることはすでにみたとおりである。しかしどの国も明確な問題,すなわち その国が国民経済の利益という観点からみていずれの具体的なケ−スにおいて 国際分業に参加するのが有利か不利かの問題に回答を与えているのである。 社会主義国際分業軋加わる国はいずれもまず第1に自国の社会的労働生産性 の最大限の向上を求め,資材と労働支出の最大限の節約を達成しようとする。 現実にほ.各国はみずからがその生産にとって最も有利な条件を有する商品を輸 出し,他方ではその国では生産が不利かないしぼ−・般に不可能な商品を輸入す る。このような条件のもとでの商品の国際的な交換は,その国での社会的労働 10)≪BpeMeHHO葺MeTOR拷KeCPaBHeHH5I9Z(OHOMlすtTeCIく0葺≡ゆ㊥ef(LrnBHOCT封:KarlHT− aJrZ)m)ⅠⅩBJrO)ⅨeHH葺BCTPaHaXqtZJ7eHaX C三)B>>。

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香川大学経済学部 研究年報 6 J966 −26−

支出を節約せしめ,その生産性水準を引きあげることを可能ならしめる0

このように.,各国に‥おける国際商品取引の構造を決定するば飢、紅ほ・,輸出

および競争輸入生産の発展紅おける投資効率の比較計算が必要とされる0すべ

ての計算紅外貨取得高もしくほ外貨支払高の指標が結びつけられる。投資効率

は,結局に‥おいて.国際交換を媒介する外貨取得高もしくは外貨の節約を通して

検討される。このばあい外貨取得高は,そ・の国が国際分業に参加した結果とし

て自国の社会的労働生産性を首尾よく向上したかどうかを判断せしめる試金石 なのである。

「セフ加盟国に.おける投資の経済効率比較の臨時法」ではセフ加盟国で採択

される外国貿易に.関連する投資効率の決走法を統一・する試みがなされている0

輸出生産の発展に.おける投資効率を算定するため紅,臨時法は次のような算式

で示される「計算支出」の指標を勧告している。

(C+昂,幻+・y 且ヲ= ββ ここで&は輸出生産に.おける投資の外貨効率指標,Cは.輸出生産物の年間原価 ∬ほ−・定畳の輸出生産物を生産する紅必要な直接および関連投資,&は各国の 国民経済に.とって単一・の標準効率指標,yは.生産物の輸出紅関連せる運賃およ び貿易費用,かeは輸出生産物の販売によってえられる外貨(本船渡しまたは陸 路国境渡し)をそれぞれあらわす。 前式の&は海外市場で外貨1単位をかくとくするために・必要な国内支出の 大きさを示している。もし具体的な輸出バリアソトに.ついてのこの指標が全輸 出について−の平均値よりも低いのであれば,この輸出生産は国にとって有利だ とみなされる。 これとはぼ同じ方法で競争輸入生産に.ついての投資効率計算:も行われる。こ∴・ の計算では輸入に.とってかわる生産の計算支出ほ,輸入の返済に・あてられる輸 出等価物を生産するために必要な計算支出と比較される。 ところ・で,前述の算式に.もう一度眼を向けると,そこでは単一・の標準効率指 標が勧告されていた。それではこのような勧告ほいったい何に根拠をおいてい るのであろうか。これについては筆者も別の機会に・触れたよう紅,国家に・よっ て輸出されるすべての生産物ほ完全に代替的である。というのは,その使用価

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社会主義投資効率論 一之7− 値は外貨取得高によって決定されるからである。実際に国は何を輸出するか紅 ついて:ほ無関心である。それが重要なのはただ一点だけである。すなわち,そ の商品がどの部門で生産されるといなとに.かかわらず,自国の社会的労働支出 の各単位が国民経済に.とって必要な輸入品の支払いにあてられるぺき外貨を最 大限にかくとくしなければならないことである。このような観点からすれば,さ まざまな部門に.おける労働の国民的支出ほ全く同一・水準にあるのである。した がって」工業部門ごとに分化せる標準効率指標を採用することば.全然根拠が ない。というのは,異なった水準に.ある異なった部門での投資によって行われる からである。このこ.とから単一・の標準効率指標を採択する必然性が生ずるので あらて,これによって∴輸出生産の特殊な発展水準を考慮することが可能となる。 これまでみた外国貿易に関連する基本的な,グローバルな投資の効率指標と 並んで,臨時法は経常支出と投資支出との効率を別々に特徴づけるような個々 の特殊指標を勧告している。たとえば,経常支出と外貨取得高の比率を分析す るためには次のような指標が用いられている。 (1)輸出収益性の−・般指標 P・・‥ (2)輸入原材料を控除した輸出収益性指標(労働の外貨収益率指標) C−C¢ β一一玖 P7′l= (3)輸入原材料および独立の輸出対象となる原材料を控除した収益性指標 旦:」旦±⊇ β−・(β£・−βe) ぞ7= 各記号は次のように定義される。 C一輪出生産物の原価(運賃並びに貿易経費を含む) G一輪入原材料の価値(国内価格表示) G一独立の輸出対象となりうる原材料の価値 β一輪出品の外貨価値(国境渡し価格または本船渡し価格) ∂感一輪入原材料の総外貨価値 かβ一独立の輸出対象である原材料の外貨価値(国境渡し価格または本船渡 し価格)

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香川大学経済学部 研究年報 6 J966 ーー2省一 前述の8つの算式は,具体的な生産条件と異なった分析段階での輸出収益性 の決定を可能にする。たとえば,消費される輸入原料の輸出利益の決定が必要な ばあいにほ,指標島を利用するのが目的にかなっている。また輸入される原材 料の加工効率が求められるばあいには,指標f㌦を用いるのがよい。さらに加 エの最終段階からみた生産物の輸出収益性の水準を分析するときには,指標ろ が利用されるといった具合である。 同じように,輸出生産物の外貨資本集約度も個々に.分析することができる。 提起される問題のいかんに.よって輸出の外貨資本集約度指標は∂つに.分けられ る。 (1)資本集約度の一・般指標

J/.__ 誓.「

瓜+戯十品一卜瓜  ̄ ̄> β 上) ここで∬=瓜十仔2十戯十だ4,これは輸出生産に.おける投資総額,瓜は輸出 生産物の最終生産面での投資,品ほその生産物が独立して輸出されない原料部 門での関連投資,脆は独立の輸出対象となる原料部門での閑適投資をそれぞれ 示し,瓜は輸出部門での関連投資であるが,世界市場でのその生産物の実現は 必要な原材料輸入の支払を可俄にする(輸入原材料の外貨価値を輸出の資本集 約度の平均指標に.乗じたもの)。かほ外貨取得高である、。 (2)輸入を考慮しない資本集約度指標 &十戯十晶 メゾナる= ∂−か名 (3)資本集約度の発達指標 瓜+戯 JJ′= β一(∂J十仇) 輸出の収益指標と輸出の資本集約度指標とから,輸出生産に・おける一・般的な それぞれの投資効率指標を導くこ.とができる。これらの指標は次のようになる。 C十&(&十戯+脆十風) ヱ) C−C‘十月。(&+戯十仔8) β一−・か£ C・−・(C£+G)+&(gl+打方) か一−(かi十かβ)

参照

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