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第3章 高密度MT法に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

3.2 MT 法の理論と方法 3.2.1 MT 法の理論 MT 法は平面電磁波を用いる代表的な電磁探査法である。MT 法の信号源(ソース)は、太 陽風の作用によって発生する地磁気脈動や遠方の雷放電によって発生する空電などの自然 電磁波(交流電磁場)である。電磁場が大地に入射して地下深部に浸透していくと、電磁誘 導の効果により磁場の変化に逆らうように誘導電流が生じる。この電流が有限の比抵抗を もつ大地中を流れることにより、ジュール熱が発生する。このようにして、電磁場のエネ ルギーは熱エネルギーに変換されていくので、電磁場の強度は大地へ浸透するとともに減 衰する。 均質大地における平面電磁場の減衰は、係数exp

[

(

πfμ/ρ

)

1/2z

]

で支配される。ここで、f は電磁場の周波数〔Hz〕、μは大地の透磁率(ふつうは真空の透磁率 7〔H/m〕)、 0 4 10 − × = π μ ρ は大地の比抵抗〔Ωm〕、z は浸透深度〔m〕である。このように電磁場の強度は電磁場 の周波数と大地の比抵抗に依存し、浸透深度とともに指数関数的に減衰する。したがって、 ある周波数の電磁場の大地における減衰の様子を知ることができれば、逆に大地の比抵抗 を求めることが可能となる。しかし、ふつう、自然電磁場の強度は予測できず、また地下 深部において電磁場の強度を測定することは困難である。そこで、MT 法では地表で互い に直交する水平電場と水平磁場を測定して、大地の比抵抗を推定する。大地が均質の場合、 水平電場 E〔μV/m〕、それと直交する方向の水平磁場 H〔nT〕から、大地の比抵抗ρ は次 のように求まる。 f H E / 2 . 0 ⋅ 2 = ρ (3.1) 実際の大地は不均質であるので、(3.1)式で求まる値は、電磁場の周波数に応じた探査深度 までの平均的な値であり、比抵抗法などと同様に見掛比抵抗ρaと呼ばれる。また、MT 法 では、電場と磁場の位相差である位相φが重要なパラメータとなる。

(

E /H

)

arg = φ (3.2) 見掛比抵抗や位相は、大地が1次元構造の場合には電場や磁場の方向に左右されないが、 2次元・3次元構造の場合には電場や磁場の方向で変化する。そのため、MT 法では第 1.2 図のように、水平電場 2 成分、水平磁場 2 成分のテンソル測定が行われる。また、大地の 不均質性を解釈するため、垂直磁場も同時に測定される。不均質大地の比抵抗分布(比抵抗 構造)は、複数の周波数の見掛比抵抗や位相を求めて、それを逆解析することで求められる。 MT 法の探査深度の目安としては、電磁場の表皮深度δ〔m〕があげられる。これは、大 地に入射した電磁場の強度が地表の強度の1/e (0.37 倍)になる距離であり

(2)

δ =503⋅

(

ρ f

)

1/2 (3.3) で表される。この式より、MT 法の探査深度は電磁場の周波数と大地の比抵抗に依存する ことがわかる。すなわち、電磁場の周波数が低いほど、大地の比抵抗が高いほど MT 法の 探査深度は大きくなる。MT 法ではふつう 300~0.001Hz 程度の周波数範囲の電磁場が測定 されるが、たとえば大地の比抵抗を 10Ωm とすると、その周波数範囲に対応する探査深度 (表皮深度)は約 290m~約 160 ㎞となる。このように MT 法の探査深度は非常に大きいので、 地殻構造探査などの学術調査や石油や地熱資源探査に適用される。比較的浅部を探査する ため、1~10000Hz 程度の範囲を対象とする測定も行われる。これは、AMT(audiofrequency MT)法と呼ばれている。 3.2.2 測定 MT法の測定では、地下構造の2次元あるいは3次元性を考慮して、第 1.2 図に示したよ うな測定レイアウトにより、互いに直交する水平電場 2 成分(Ex, Ey)と水平磁場 2 成分(Hx, Hy)および垂直磁場 1 成分(Hz)の計 5 成分のデータを取得する。電場センサーには両端を非 分極性電極で接地した長さ 50~200m程度のダイポール(アンテナ)が使用される。磁場セン サーにはインダクションコイルやフラックスゲートなどが利用される。各成分のデータは 時系列で取得され、測定器内で増幅・フィルタ処理・A/D変換され、データ処理装置およ び記録装置に送られる。 MT 法の測定はデータの品質を確保するため、ノイズレベルの低い夜間に数時間以上か けて実施されるのが一般的である。MT 法の信号である自然電磁場の強度は日々変化する ので、ノイズレベルの高い地域では、高品質のデータを取得するため 1 測点で数日以上測 定することもある。また、測定点から 0.1~20km 程度離れた場所に別の測定点(リファレン ス点)を置いて水平磁場成分を同時測定し、データ処理の段階で相関のない局所的ノイズを 除去するというリモートリファレンス法(Gamble et al.,1979)が適用され、データの品質向上 が図られている。この方法では測定点とリファレンス点で測定されるデータのシグナル成 分には相関があり、ノイズ成分には相関がないと仮定しているので、その2点で同一のノ イズが測定されないように2点間の距離を十分にとる必要がある。 3.2.3 データ処理 MT法のデータ処理では、まず、各測定成分の時系列データを周波数解析して、次式で定 義するインピーダンスZijとティッパーTiを周波数ごとに求める。

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⎟⎟ ⎠ ⎞ ⎜⎜ ⎝ ⎛ ⋅ ⎟ ⎟ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎜ ⎜ ⎝ ⎛ = ⎟ ⎟ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎜ ⎜ ⎝ ⎛ y x y x yy yx xy xx z y x H H T T Z Z Z Z H E E (3.4) ここで、周波数解析の方法には高速フーリエ変換(FFT)あるいはカスケードデシメーション 法(Wight and Bostick, 1980)によるフーリエ変換が適用されるのが一般的である。

インピーダンスはテンソル量であり、大地が2次元あるいは3次元であれば、(3.4)式を 座標回転することにより様々な方向の値が求められる。大地が1次元であれば、互いに直 交する2方向をxとyとすると、座標系の向きによらず、Zxx=Zyy=0 およびZxy=-Zyx( 0)となる。 また、大地が2次元の場合、大地の走向をxとし、それに直交する方向をyとすると、Zxx=Zyy=0、 Zxy≠ -Zyx(≠0)となる。このとき、ZxyをTEモード(E-polarization)のインピーダンスと呼び、 ZyxをTMモード(H-polarization)のインピーダンスと呼ぶ。すなわち、TEモードのZxyは走向に 沿った電場Exとそれに直交する磁場Hyから求まり、TMモードのZyxは走向に沿った磁場Hxそれに直交する電場Eyから求まる。大地が2次元とみなせない場合でも、大地の大局的な 走向にインピーダンスを回転し、TEモードとTMモードを定義することが多い。 インピーダンスとティッパーが求まれば、周波数ごとに地下の比抵抗情報を示す様々な MT パラメータを計算する。主な MT パラメータとして、前述した見掛比抵抗と位相、イ ンピーダンスの主軸、インダクションベクトルがあげられる。 見掛比抵抗は次式で計算される。 f Zij aij 0.2 / 2 ⋅ = ρ (3.5) 見掛比抵抗は比抵抗構造の解析に用いられる。ただし、地表付近に微小な3次元的不均質 構造があると、その構造の境界に生じた電荷の影響が電場の測定値に加わるため、全周波 数の見掛比抵抗がバイアスされるという現象が起こる。この現象はスタティックシフトと 呼ばれる(Andrieux and Wightman, 1984)。スタティックシフトを受けたデータをそのまま解 析すれば、実際の比抵抗構造とは異なる結果が求まる。一つの測点のデータからは、どの 程度のスタティックシフトを受けているかが評価できないので、1次元解析の結果は信用 できない場合が多い。スタティックシフトの補正法としては、1)スタティックシフトの原 因となる構造を2次元あるいは3次元モデリングに組込む方法と、2)浅部の局所的な影響 を受けにくい磁場だけを測定する電磁探査法を併用する方法などが考案されている(小 川・内田, 1987)。 位相は次式で計算される。

( )

ij ij =arg Z φ (3.6)

(4)

位相は地下の比抵抗変化を反映するパラメータであり、均質大地では 45 度となる。また、 低周波数になるにつれて見掛比抵抗が高くなる場合には 45 度より小さくなり、逆に見掛比 抵抗が低くなる場合には 45 度より大きくなる。位相はスタティックシフトの影響を受けに くいという特徴があり、見掛比抵抗とともに比抵抗構造の解析に利用されることが多い。 インピーダンスの主軸は、(3.4)式を座標回転した場合に 2 2 yy xx Z Z + が最小となる方向の ことであり、直交する2方向が定義される。大地が2次元であれば、片方の主軸方向と大 地の走向とが一致することから、インピーダンスの主軸は比抵抗構造の走向の推定に用い られる。 インダクションベクトルは、ティッパーの大きさとその位相から定義されるベクトルで ある。このベクトルの実数部分は低比抵抗体が存在する方を向き、比抵抗変化が急激なと ころで大きくなるという性質をもつ(Parkinson, 1962; Jones, 1986)。インダクションベクトル は磁場データだけを利用するので、スタティックシフトの原因となる地表付近の不均質構 造の影響を受けにくい。そのため、インダクションベクトルは比抵抗構造の走向の推定や 2次元・3次元性の評価に利用することができる。 3.2.4 解析 MT 法の解析方法には、大きく分けて、測定値の周波数変化から大地の比抵抗構造を求 める直接法と、測定値と比抵抗構造モデルからの計算値との差が小さくなるようにモデル の 修 正 を 繰 り 返 す 反 復 法 と が あ る 。 直 接 法 と し て は ボ ス テ ィ ッ ク イ ン バ ー ジ ョ ン (Bostick,1977)が有名である。反復法では第2章で説明した非線形最小二乗法によるインバ ージョンが適用されるのが一般的である。直接法は反復法より計算時間が短いという利点 はあるが、解析精度が劣るので、詳細な比抵抗構造を求める場合には反復法が利用される。 また、2次元および3次元解析では実用的な直接法はない。本研究では主に2次元探査を 対象としているので、解析には反復法である Uchida and Ogawa(1993)が開発した MT 法2次 元インバージョンプログラムを使用した。 このプログラムにおける解析の流れを第 3.1 図に示す。解析アルゴリズムは第2章で説 明した比抵抗法と同じである。2次元大地の MT 応答を求めるフォワード計算には有限要 素法を用いている。対象とする地下構造を第 3.2 図に示すように多数のアイソパラメトリ ックの矩形メッシュに分割するため、複雑な地形や地下構造を容易に扱えるという利点が ある。また、地下構造モデルの比抵抗を求めるインバージョンには非線形最小二乗法を用 いている。第 3.2 図に示したようにいくつかのメッシュをブロックにまとめ、各ブロック の比抵抗に適当な初期値を与えて初期モデルとし、モデルから計算される MT 応答と測定 値との残差の二乗和が小さくなるまで各ブロックの比抵抗を反復修正する。この際、平滑

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化制約を課して計算が破綻するのを回避しているので、ブロック数が多くなっても、比較 的安定に解を求めることができる。 入力データ(測点位置、周波数、 見掛比抵抗および位相)の作成 地下構造モデルの作成 解析条件と初期モデルの決定 モデルから計算される見掛比抵抗・位相と 測定値との残差とヤコビアンの算出 モデルの修正 モデルからの計算値と測定値との比較 収束判定 解析終了 有限要素法による フォワード計算 非線形最小二乗法による インバージョン計算 YES NO 反 復 計 算 有限要素法による フォワード計算 解析開始 第 3.1 図 MT 法2次元解析の流れ。

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測点

地表面

第 3.2 図 2次元大地の地下構造モデル。大地を地形に沿ってアイソパラメトリック四角形要素の集合 としてモデル化する。太線で囲まれた領域は解析ブロックで、その中では比抵抗は一定と定義している。 地表面に信号を与え、それによって誘導される電場あるいは磁場を求め、MT インピーダンスを計算す る。 MT 法の有限要素法と最小二乗法を用いた2次元解析法のアルゴリズムの詳細について は Rodi(1976)、Jupp and Vozoff(1977)、佐々木(1986)などに、平滑化制約の方法の詳細につ いては Constable et al.(1987)、Smith and Booker(1988)、Sasaki(1989)などに、平滑化制約付2 次元インバージョンの精度については deGroot-Hedlin and Constable(1990)、Uchida(1993)な どに述べられている。次節では、それらに基づいてフォワード計算について説明する。な お、インバージョン計算のアルゴリズムについては、第 2.2 節で説明した。

3.2.5 2次元大地に対する MT 法のフォワード計算

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ことができる。時間変動 の電磁場に対する Maxwell の方程式は、変位電流の項を無視す ると、次式のようになる。 t i eω E H H H E E σ ωμ = = − = = rot 0 div rot 0 div i (3.7) ここで、σは導電率、μは透磁率である。 大地が2次元の場合、電磁場を二つのモードに分離して Maxwell の方程式を記述するこ とができる。一つは電場が走向に沿って存在する TE モードであり、もう一つは磁場が走 向に沿って存在する TM モードである。 いま、x 方向に比抵抗および電磁場が変化しないと仮定する。 TEモードでは、電場はExだけが存在し、磁場はHyとHzが存在する。この場合、(3.7)式よ り 0 ) , ( ) ( ) ( + = ∂ ∂ + − ∂ ∂ z y H z H y z y σ (3.8) の関係式が求まる。ここで z E i Hy x ∂ ∂ − = ωμ 1 , y E i Hz x ∂ ∂ = ωμ 1 (3.9) である。(3.9)式を(3.8)式に代入すると 0 ) , ( 1 1 = + ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ ∂ ∂ ∂ ∂ + ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ ∂ ∂ ∂ ∂ z y y E i z z E i y x x σ ωμ ωμ (3.10) となり、電場Exに関する拡散方程式が得られる。2次元大地と大気を多数のメッシュに分 割し、適当な境界条件を与えて(3.10)式に有限要素法を適用すれば、各接点のExを求めるこ とができる。そして、(3.9)式よりHyを求め、Zxy= Ex / Hy を計算して、(3.5)式および(3.6)式 に代入すれば、TEモードの見掛比抵抗と位相が求まる。 一方、TMモードでは、電場はEyとEzが存在し、磁場はHxだけが存在する。この場合、(3.7) 式より ( ) ( )− =0 ∂ ∂ + − ∂ ∂ x y z E i H z E y ωμ (3.11) の関係式が求まる。ここで z H Ey x ∂ ∂ = σ 1 , y H Ez x ∂ ∂ − = σ 1 (3.12)

(8)

であるので、これを(3.11)式に代入すると 0 ) , ( 1 ) , ( 1 = − ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ ∂ ∂ ∂ ∂ + ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡ ∂ ∂ ∂ ∂ x x x i H y H z y z z H z y y σ σ ωμ (3.13) となり、磁場Hxに関する方程式が求まる。2次元大地を多数のメッシュに分割し、適当な 境界条件を与えて(3.13)式に有限要素法を適用すれば、各接点のHxを求めることができる。 そして、(3.12)式から電場Eyを求め、Zyx= Ey / Hxを計算すれば、(3.5)式および(3.6)式よりTM モードの見掛比抵抗と位相が求まる。 ※本文は、「高倉伸一(2004): 高密度電気・電磁探査法による比抵抗構造の調査と解釈に関 する研究, 博士論文, 京都大学工学部」の第 3.2 節から抜粋し、一部修正したものです。引 用される場合は、上記の文献の記入をお願いいたします。

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