プラズモンの基礎
佐藤勝昭 東京農工大学名誉教授 (独)科学技術振興機構(JST)さきがけ 「革新的次世代デバイスを目指す材料とプロセス」 研究総括 アモルファス・ナノ材料第147委員会 第118回研究会 「プラズモンが拓く機能と応用」 極地研のHPよりCONTENTS
1. はじめに 2. 電子分極の古典電子論 2.1 自由電子の運動 2.2 バンド間遷移の束縛電子 モデル 2.3 自由電子プラズマ振動と バンド間遷移のハイブ リッド 2.4 縦モードの固有振動:プラ ズモン 3. プラズモンと光波の結合 3.1 プラズモン・ポラリトン 3.2 表面波モードとの結合 3.3 表面プラズモン・ポラリト ンの分散式 3.4 ナノ粒子のプラズモン 3.5 ナノ粒子分散系のプラズ モン 4. おわりに1. はじめに
• この講演は、本研究会「プラズモンが拓く機能と応 用」の導入として、プラズモンの基礎概念をつかんで いただくことを目的としています。 • プラズモンは固体中での自由電子の集団励起の量 子です。金属表面に存在する光と電荷粗密波の混 成状態(表面プラズモン・ポラリトン)がよく利用され ます。 • ここでは、古典的な運動方程式とマクスウェルの電 磁方程式を用いて、プラズモンの基礎を解説します。プラズマとは
• 蛍光灯が灯っているとき、電極間には放電が起き ています。このとき、蛍光灯の中の気体はプラズ マ状態になっています。プラズマとは正電荷と負 電荷が分離した状態です。 点灯した蛍光灯の中ではアルゴンのイオンと電子 が自由に飛び回っています。つまりプラズマ状態 になっています。 蛍光灯のプラズマの温度は1万度に達しますオーロラもプラズマ
• オーロラは、太陽から吹き出す極めて高温で電離 したプラズマ(太陽風)が地球の磁界と相互作用 し、大気圏の気体と衝突する際に気体を励起し発 光する状態です。 http://polaris.nipr.ac.jp/~aurora/aboutAurora/abo utAurora_frame.htmlプラズマ周波数とは
• プラズマが振動する電界を受けると、正電荷(陽 イオン)は質量が大きいためほとんど動かず、負 電荷(電子)のみが振動(往復運動)します。電子 の振動は、電界の角振動数
が、角振動数
p=(ne/0m)1/2以上になるとついて行けなくなりま す。この角振動数
pのことをプラズマ周波数とい います。ここに、nは電子密度、eは電荷、mは質 量、
0は真空の誘電率です。固体中の
プラズマ
• プラズマは固体の中においても存在します。例えば 金属においては、伝導電子が原子核の正電荷から のクーロンポテンシャルを遮蔽するため自由電子の ように振る舞いますが、伝導電子が振動電界を受け ると、あたかも気体プラズマの中の電子のように、固 体のなかを往復運動することができます。 • 気体プラズマと異なるのは、電子の密度nが非常に 大きいこと、電子の質量mの代わりに有効質量m*を 用いなければならないこと、誘電率として0ではなく、 バンド間遷移を考慮した誘電率を用いなければな らないこと、散乱によるダンピング(散乱緩和時間) があることです。プラズマ振動は縦波の電荷粗密波
• プラズマ振動のもう一つの特徴は、この振動が電荷 密度の粗密なので縦波だということです。 • このために反電界が働き、これが電気分極の復元力 となって自由振動モードをもちます。つまり、 外部電界による強制振動がなくても固有振動の波が 存在するのです。 • この角振動数がちょうど上に述べたプラズマ周波数 に相当するのです。 • この振動は量子化されており、pというエネルギー をもつ素励起であると解釈されます。これがプラズモ ンなのです。金属の反射とプラズマ
• プラズマ振動は縦波です。一方、光は横波ですから、その ままでは両者がカップルすることはありません。 • 両者を結びつけているのは誘電率です。プラズマ角振動数 pにおいては,縦誘電率=0でなければなりません。光の波 長では、縦誘電率は横誘電率にほぼ等しいので、横波であ る電磁波に対しても=0が成立します。 • 光の角振動数がpより小さいときには<0となります。誘 電率の実数部が負だと、屈折率に虚数部が現れ、電界は すぐに減衰して光は入り込めないということを意味します。 これが金属の高い反射率の原因です。がpより高くなる と光は金属に入り込み、反射率は低下します。2.電子分極の古典電子論
• 電子分極には、自由電子の電界による強制振動 によるものと、価電子の伝導帯へのバンド間遷移 によるものとがあります。 • これを古典的に扱ったのがDrude-Lorentzの式で す。電子分極Pは電子数と電子の変位に比例す るので、電界Eのもとでの電子の変位uについて の運動方程式を解くことによって計算できます。金属中の電子は
なぜ自由電子と見なせるのか
• 金属では、構成している原子が外殻電子を放出して 結晶全体に広がる電子の海を作っています。 • この電子の海による遮蔽効果で、原子核の正電荷か らのクーロンポテンシャルは非常に弱められています。 • このため、電子はあたかも自由電子のように振る舞う のです。実際、有効質量もほとんど自由電子質量と 一致すると言われています。 単一原子のクーロンポテンシャル 単一原子のクーロンポテンシャル 原子が集まるとクーロンポテンシャルが遮蔽される金属結合
• 金属においては、原子同士が接近していて、外殻のs電子は互い に重なり合い、各軌道は2個の電子しか収容できないので膨大な 数の分子軌道を形成しています。 • 電子は、それらの分子軌道を自由に行き来し、もとの電子軌道か ら離れて結晶全体に広がります。これを非局在化といいます。 • 正の原子核と負の非局在電子の間には強い引力が働き、金属の 凝集が起きます。 • この状態を指して、電子 の海に正の原子核が浮 かんでいると表現されま す。 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +自由電子とプラズマとの関係
• 金属には電子がたくさんありますが、全体としては中 性です。これは、電子による負電荷の分布の中心と 原子核の正電荷の中心が一致しているからです。 • 光の電界を受けて電子が+側に移動すると、-側に は正電荷が残されます。この結果電気分極が生じる のですが、このように正電荷と負電荷が空間的に分 離した状態をプラズマというのです。 + + - 電界 + - 電子の移動 -2.1 自由電子の運動
• 電界Eのもとにある自由電子の運動方程式は、電子の位置 をu、有効質量をm*、散乱の緩和時間をτとすると、
m*d2u/dt2+(m*/τ)du/dt=qE (1)
で与えられます。
• この運動方程式の左辺は、慣性項とダンピング項のみから なり、復元力が含まれていません。
• ここで、E、uにe-iωtの形を仮定し、自由電子による分極
P=-Nquの式に代入し、D=ε0εrE=ε0E+Pの式を使うことにより、
εr=1-Nq2/{m*ε0ω2(1+i/ωτ)}=1-ωp2/{ω(ω+i/τ)} (2)
を得ます。ここに、 ωp=(Nq2/m*ε0) 1/2は自由電子のプラズマ 角振動数です。
Drudeの分散式
(3)
•εr=ε’r+iε”rによって実数部、虚 数部にわけて書くと、 εr’=1-ωp2/(ω2+1/τ2) εr"=ωp2/ωτ(ω2+1/τ2) となります。 この式をDrudeの式といいます。 •自由電子による比誘電率の スペクトルを図1に示します。 •図のように、ω→0では比誘電 率の実数部は負で、-∞に向 かって発散し、虚数部は+∞に 向かいます。 図1 自由電子による複素比誘電率のス ペクトルp=2eV、/τ=0.3eVとして 作図 (3)負の誘電率と反射率
• 電磁気学によれば、反射率Rは で表されます。もし、比誘電率
rが負の実数ならば、 aを正の数として、
r=aと表されますから、上の式 に代入して • となります。すなわち100%反射するのです。 1 1 r r R 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 a a a i a i a a R r r 金属の高い反射率
(減衰項なし)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0 1 2 3 4 R ω (eV) ωp ωp=2eV /τ=0金属の高い反射率
(減衰項あり)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 1 2 3 4 R ω (eV) ωp=2eV /τ=0.3eV 減衰項がある場合の反射率のスペクトルは、図に示すよう に反射率の変化が緩やかになっています。またp以下の反 射率も1よりかなり減少しています。金銀銅の反射スペクトル
•比誘電率の虚数部(r”)は一度極小値をとった後、高エネルギー領 域で再び増大しています。Drudeモデルは、低エネルギー領域をよく 説明できますが、可視光領域のスペクトルは説明できません。 •これを説明するためには、つぎに述べるバンド間遷移の効果を取り 入れなければならないのです。 図2 Agの複素比誘電率スペクトル の実験値2.2 バンド間遷移と束縛電子モデル
• 金銀銅のr”の可視・近紫外での増大はバ ンド間遷移が始まることを表しています。 • 金属において電子はエネルギー帯(バン ド)を作っていて、Fermi準位EF以下のバン ドは占有され、EF以上のバンドは空いてい ます。 • バンド間遷移とは、光のエネルギーを吸収 して、占有された電子状態から、満ちてい ない電子状態に電子励起が起きることで す。 • Cuを例に取ると、EFの下2eV付近にある3d 軌道からなる満ちたバンドから、4s4p軌道 からなるバンドのE>EFの空いた状態への バンド間遷移が始まるのです。 EF金属のバンド構造(1)
金属のバンド構造(2)
金属のバンド構造(3)
• Auのバンド構造は下図のとおりです。
束縛電子モデル
• バンド間遷移の比誘電率のスペクトルを正確に表すには、 量子力学による手続きが必要ですが、ここでは、古典論の 描像を使って説明しておきます。 • バンド間遷移の寄与を古典的に扱うには、バネによって原 子核に束縛されている電子のモデル(Lorentzの束縛電子 モデル)を考えます。電子の位置をu、有効質量をm*、緩 和時間τ0とすると、運動方程式は、m*d2u/dt2+(m*/τ0)du/dt+m*ω02u=qE (4)
• で与えられます。ここに、左辺第3項は、バネの復元力をあ らわしています。ω0は電界が加わらなかったときのバネの 固有角振動数を表しています。
Lorentzの分散式
•ここで、E、uにe-iωtの形を仮定し、この式を解いて束縛 電子の変位uを求め、束縛電子の密度Nbを考慮して電 気分極P=Nbqu、さらに比誘電率を求めると、 εr=1-ωb2/(ω2+iω/τ0-ω02) (5) が得られます。ここにωb2=N bq2/m*ε0 です。 この式の実数部と虚数部は、それぞれ εr'=1-ωb2(ω2-ω02)/{(ω2-ω02)2+(ω/τ0)2} (6) εr"=ωb2(ω/τ)/{(ω2-ω02)2+(ω/τ0)2} というLorentzの分散式で表されます。Lorentz型スペクトル
• 式(6)を図示したのが図3のス ペクトルです。 • 虚数部εr"には、共鳴型の ピークが、実数部εr'には分 散型のスペクトルが見られま す。 • 3dバンドのように狭いバンド の場合εr‘の変化が急峻にな ります。 図3. 束縛電子系による複素比誘電率 の ス ペ ク ト ル ( 0=1.5eV 、 0=0.1eVとして作図) 0=1.5eV2.3 自由電子プラズマ振動と
バンド間遷移のハイブリッド
• 図4は、式(3)と式(6)の両方を 考慮した場合の複素比誘電率 スペクトルです。 • 比誘電率の実数部εr'の立ち 上がり方は図1に比べて急峻 となり、εr'が0となる光子エネ ルギーは、pより低い0の 付近に現れます。これは、図2 のAgのスペクトルを定性的に 説明できます。 図4 自由電子と束縛電子を考慮した ス ペ ク ト ル ( p=2eV, /τ=0.3eV, 0=1.5eV, 0=0.1eVとして作図)Drude-Lorentzモデル
による反射スペクトル
• 図4の比誘電率ス ペクトルにもとづい て計算した反射ス ペクトル • 貴金属の反射スペ クトルの特徴をよく 表している。 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 1 2 3 4 R ω (eV)p=2eV,/τ=0.3eV, 0=1.5eV, 0=0.1eV
遮蔽されたプラズマ周波数
•実際の場合、もっと多くのバンド間電子遷移による比誘電率 スペクトルの重なりに寄与します。 式(2)において第1項の1の代わりに、誘電率の実数部の重 なりによるεを用いることで、よく説明できます。 このときεr'=0となるωをωp'とすると、 ωp‘=(ωp2/ε 1/τ2)1/2 (7) で表されます。これを遮蔽されたプラズマ周波数と呼びます。 固体中の伝導電子プラズモンのエネルギーはどの程度で しょうか。Agの場合、バンド間遷移を考えないとp=9.2eVで すが、バンド間遷移による誘電率を考慮すると’p=3.84eVと なります。2.4 縦モードの固有振動:プラズモン
•自由電子の運動方程式(1)には、復元力の項がないので、固有振動 数はありません。にもかかわらず、固有エネルギーをもつ素励起であ るプラズモンとして扱えるのはなぜでしょうか。 • 等方的で一様な媒質中では、 div D=0 (8) が成立します。電束密度の時間・空間変化をD(,k)=()E(,k) =()E0e-i(t-kr)とするとこの式は i()kE=0 (9) となりますが、これが成立するのは、kE=0、従ってkEすなわち横波 であるか、()=0でなければなりません。 • (L)=0が成立する振動数Lにおいては電界の縦モードの振動が 存在します。このモードは物質の分極と、その反電界が結合した モードであると考えられます。反電界が復元力
• 縦モードの電界による自由電子の振動は縦方向の電荷密度の粗 密をもたらし反電界が誘起されます。縦方向の反電界係数は1です から、反電界は-P/0となります。P=Nquを考慮すると、反電界を考 慮した運動方程式は、ダンピング項を無視すると m*d2u/dt2+Nqu/ 0=qE (10) となり、これより次式が得られます。 (m*2+Nq/0)u0=qE0 (11) • E0=0としたとき、=(Nq/m*0)1/2p ならば0でない解をもちます。つ まり反電界が復元力として働き、プラズマ周波数を固有振動数とす る自由振動が存在するのです。 • この周波数=Pにおいて(P)=0なので、縦波のプラズマ自由振動 が存在し、そのエネルギーは量子化されており、プラズモンという素 励起として扱われます。遮蔽されたプラズモン
• 実際には、束縛電子系(バンド間遷移)による分 極が反電界を部分的に遮蔽することによって、プ ラズモンの周波数は低下すると考えます。 • このため、式(7)のωp'を遮蔽されたプラズモン周 波数と呼ぶことがあります。 • 電子線は縦モードのプラズモンと相互作用するの で、EELS(電子線損失分光)にはプラズモン周波 数において損失のピークが見られます。3. プラズモンと光波の結合
• プラズモンは電子の粗密波の固有振動で縦波でし た。一方、自由空間の光は横波なので、通常、光 はプラズモン共鳴を直接見ることができません。 • 金属と空気の界面には、界面に沿って進むプラズ モンが存在し、光の入射方法を工夫すれば、光と プラズモンが結合します。 • また、金属のナノ粒子(直径が波長の1/10以下)で はナノ粒子内で働く反電界を受けて、SPR(表面プ ラズモン共鳴)が見られます。3.1 プラズモン・ポラリトン
自由電子の運動方程式 md2u/dt2=qE (12) において、 P=Nquを用いてPに関する方程式にすると d2P/dt2=(Nq2/m)E=p20E となりますから、Pにe-itの時間変化を仮定すれば、 -2P- p20E =0 (13) と書くことができます。 一方、光の場は、マクスウエルの方程式で与えられるので、E, Hに対してe-it+iKzの時間・空間変化を仮定するとrotH=D/t =-i(0E+P)
プラズモン・ポラリトンの分散式
式(14)の2つの式からHを消去すると -2P+(c2K2-2) 0E=0 (15) (13)と(14)がP、Eの如何に関わらず成立する条件を求めると、 これより、 p2-(2-c2K2) =0 (17) 書き換えると ={p 2+c2K2}1/2 (18) が得られます。これが、プラズモン・ポラリトンの分散式です。 その固有状態は、プラズマ振動と光が混じり合った状態です。 (16)
0 0 2 2 2 2 0 2 2 K c p光によってプラズモンを
直接励起することはできない
• <pに対しては、式(17)よりc2K2<0となり ますから媒体内を進む光はありませんから 分散曲線もありません。式(18)において、 Kとすると、自由空間の光の分散つまり = cK (19) に漸近しますが交わることはありません。 • 光によってプラズモンを励起するには、エ ネルギーと運動量の保存則を満たさねばな りませんが、交点をもたないということは、光 によってプラズモンを直接励起することはで きないということを意味します。 図5 プラズモン・ポラリトン の分散曲線 = cK +3.2 表面波モードとの結合
• 表面プラズモンは、表面電荷密度の振動の量子 ですが、通常、金属表面における電子の集団的 な振動を表す言葉として用いられます。表面電荷 振動と電磁波とが結合した振動の量子が表面プ ラズモン・ポラリトンです。 誘電体 金属 E界面に沿って進む電磁波と
プラズモンの結合
• 図6に示すように比誘電率1の媒 質1から、比誘電率2の媒質2に 光が進むときに、両媒質の界面 に沿って進む波が存在するため にはどのような条件が必要かを 考えます。 • 媒質1,2を進む波の波数ベクトル をそれぞれk1, k2とすると、 k1x2+k1z2=k12=k21 (20) および k2x 2+k2z2=k22= k22 (21) 図6 媒体1と媒体2の界面 を通しての光の伝搬 ここにkは真空での波数で、k=2/=/cです。界面に沿った波数の連続性
界面に平行な成分の連続性からk1x= k2x=k//となります。 これを用いると式(20)および(21)は、 それぞれ、k//2+k 1z2= k21、および、 k//2+k2z2=k22、となります。2式の差お よび和から、 k1z2- k2z2= k2(1-2) (22) k//2={k2(1+2)-( k1z2+ k2z2)}/2 (23) が得られます。 k//界面に沿った波数成分界面に平行な
電界の連続性
と
界面に垂直な
電束密度の連続性
それぞれの媒体中ではdivD=0なので、 k//E1x+k1zE1z=0 (24) k//E2x+k2zE2z=0 (25) が成立します。 界面に平行な電界の連続性、界面に垂直な電束密度の連続性を用いると、 k1zとk2z の間には 2k1z=1k2z (26) の関係が得られるので、両媒体における界面に 垂直に進む波の波数成分として、 k1z2= k2 1 2/(1 +2) (27) k2z2= k2 2 2/(1 +2) (28) が得られ、式(23)、(27)、(28)から、 k//2=k2 12/(1 +2) (29) z Ez k1z2<0 k2z2<0 1 +2<0表面波モードが存在するには
• 両媒体の比誘電率は実数であるとすると、表面に局 在した光のモードが存在するには、両媒体中でk1zと k2zが虚数となり、界面でk//が実数という条件が満た されなければなりません。このためには 1 2<0, かつ、1 +2<0 (30) が成立しなければならないということになります。 • 実際、AuやAgなどの貴金属では、<’pにおいて比 誘電率の実数部が負の大きな値をもつことが知られ ておりますから、条件(30)が成立し表面波モードが存 在するのです。3.3 表面プラズモン・
ポラリトンの分散式
• 前節で導いた結果を使って、表面プラズモン・ポラリトン(SPP)につ いて考察しましょう。前節の最後では、比誘電率を実数として扱いま したが、実際の金属では、複素数で扱わなければなりません。媒体1 について、 1 =1’ +i1” (31) とします。ここに、1’ および1”は実数です。また2は、媒体2を誘電損 失のない誘電体であるとして、実数であるとします。 • このときSPPの波数の成分k//についても複素数k//= k//’ +i k// で扱 わねばなりません。実数部は界面に沿って伝搬するSPPの空間的な 波長を決め、虚数部はSPPのダンピングを表します。式(29)に代入す ると、|1’ | |1” |、k//’ k//”として、表面プラズモンポラリトンの分散
k//’ k{1’2/(1’+2)}1/2 (32) k//” k1’ -1/2 1”21/2 (1’+2)-1/2/2 (33) 式(32)から、SPP =2/k//’={(1’+2)/1’2}1/2 式(32)において、媒体1が単純な自由電子モデ ルの当てはまる金属とすると 1’=1-p2/2, 媒体2が真空とすると 2=1となり、 k// 2= k2{ 1’2/(1’+2)}=(/c)2(1-p2/2 )/(2-p2/2) この式を解析的に解くかわりに、k//0に対し てはk//cに漸近し、k//に対しはp/21/2に 漸近することを考慮してグラフにしたのが図7 です。 図7 表面プラズモン・ ポラリトンの分散式表面プラズモンも光で励起できない
• 図8は、SPPを構成する電荷の 粗密波と電界ベクトルを描い たものです。 • ダンピングのない単純な自由 電子モデルが成り立つ完全 導体を考えたので、表面の電 界は面に対して垂直になって います。SPPを励起するには、 エネルギー保存則と運動量 保存則を満たさねばなりませ ん。 • <p/21/2に対して 1’2<0、 1’+2=2-p2/2<0が成立する ので、 SPPモードが存在していますが、光 の分散関係=ck//と交点をもちませ ん。従って、真空中から光を照射し てもSPPは励起されません。 真空中では 誘電体 金属 図8 金属表面付近の電子の粗密と電界ベクトル表面プラズモンの
励起方法
• SPPの分散曲線は、図9(a)に示すよ うに、屈折率nの媒体中を進む光の分 散=ck///nとは交点をもちます。 • 図9(b)はこれを実現するために通 常用いられる実験配置です。Otto配 置では、誘電体/空気/金属の三層構 造において全反射角を調整すると、プ リズム表面にエバネセント場が生じ、 そのすそが空気/金属界面にとどいて SPPが励起されます。 • 一方、Kretschmann配置では、誘電 体/金属/空気の構造をとり、プリズム と金属層の境界に生じたエバネセント 場が薄い金属層を突き抜けて、金属/ 空気界面にSPPを励起します。SPPが 励起されると、プリズムからの全反射 光は急峻に減少します。 • SPPは媒質の屈折率に敏感なので、 空気層の代わりに液体やガスなどを 用いた計測によって高感度センサー に応用されます。 (a) (b) 図9 表面プラズモンの励起方法3.4 ナノ粒子のプラズモン
• プラズマ周波数より低い周波数で比誘電率が負の 値をとる領域における金属微粒子の光学応答は、粒 子のサイズ、形状、まわりの媒質によって大きく異な ります。 • この現象を理解するには、粒子形状や粒子の周りの 環境を考慮したモデルが必要です。 • 準静的近似が成立するとして、通常の静電磁気学で 応答を考えます。 (以下の解説は、東海大工学部の若木守教授が執筆された下記の書物を 参考にさせていただきました。)M.Wakaki and E.Yokoyama: “Optical Properties of Oxides Films Dispersed with Nanometric Particles” In “UV-VIS and Photoluminescence Spectroscopy for Nanomaterials Characterization”, ed. C.R.Kumar, Springer-Verlag GmbH (2012)