学校での「合理的配慮」
ハンドブック
合 理 的 配 慮 っ て 何 ?
... 1
誰 も が 学 び や す い 学 校 に 向 け て合 理 的 配 慮 の 具 体 例
... 2
自 分 に 合 っ た 学 び 方 を 見 つ け る ま でこ ん な 時 ど う す る ?
... 4
合 理 的 配 慮 Q & A合 理 的 配 慮 相 談 ガ イ ド
... 6
合 理 的 配 慮 相 談 シ ー ト
◆ そ の 子 に あ っ た 、い ち ば ん の 学 び を 。 ◆ 補 足 資 料 : 合 理 的 配 慮 と 障 害 者 差 別 解 消 法... 9
も く じ
合理的配慮って何?
合理的配慮とは?
子どもたち一人ひとり、誰もが違った個性を持っています。得意なことも苦手なこともある
ので、中には、みんなと同じ方法、同じペースでは、学ぶのが難しい場合もあります。
そ ん な と き、視 力 が 悪 い 人 が メ ガ ネ を か け る よ う に、そ の 子 に ピ ッ タ リ の 方 法 が 見 つ か
れば、きっと学びやすくなるはずです。
子どもたちが学校で学びやすくなるための工夫。それが、
「合理的配慮」
です。
合理的配慮の進め方
❶
お子さまご本人や保護者さまから、配慮の相談を学校側へすること
❷
学校の先生方と、学校でどんな配慮ができるか、お互いに無理のない方法を
話し合うこと
❸
どんな配慮を実施するか、ご家庭と学校で合意した上で実施すること
❹
配慮を実施した後も、定期的に見直しや改善をすること
誰もが学びやすい学校に向けて
読み書きが 困難な お子さまに 集中が 困難な お子さまに 指示理解が 困難な お子さまに 移動が 困難な お子さまに タブレットや拡大教科書、 音声読み上げソフトの使用 など テストの別室受験、担任や 加配職員の近くの座席に 座るなど 指示を一つずつ出す、 順番がわかるカードの 指示など スロープやエレベーターの 設置、体育の内容調整など例えば学校では、こんな「合理的配慮」があります
4 つの大切なポイント1
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3
4
ご本人または 保護者さまからの相談
ご本人側と 学校・地域との話し合い
お互いに 合意した配慮の実施
配慮について見直し・改善
※2016 年4 月1 日に施行される「障害者差別解消法」により、学校などに合理的配慮の提供が義務づけられます(詳細は巻末p.9 にて)。合理的配慮の具体例
指示の理解や見通しを立てることが難しいA さんの場合
自分に合った学び方を見つけるまで
幼 稚 園 年 長 児 のA さ ん。掃 除 や 片 づ け の 時 間 に な る と、み ん な と 同 じペースで動けなかったり、園や家での生活で、普段と違う予定や 順序になるとかんしゃくを起こすことがしばしばありました。 お 父 さ ん・お 母 さ ん は 就 学 相 談 を す る こ と に。在 籍 は 普 通 級 と 決 定しましたが、心配事は学校側に理解してもらい、こまめに相談を しながら様子を見ていくことになりました。 入 学 後、 し ば ら く は 安 定 し て い た も の の、や は り 行 事 や 集 団 行 動 の 際 に か ん し ゃ く が 見 ら れ る よ う に な り、2 学 期 が 始 ま る 前 に 教育相談を実施しました。 担 任 の 先 生 と の 相 談 の 上、担 任 の 先 生 と 加 配 の 職 員・支 援 員 さ ん が、伝 え 方 や 予 定 変 更 の 伝 達 に つ い て 配 慮 を し て く だ さ る こ と に な り ま し た。そ の 結 果、A さんもかんしゃくを起こさずに落ち着い て行動できる頻度が増えていきました。ー 特徴 ー
見通しや
指示理解が困難
困 難 さ「指示理解」の困難
・複数の指示を一度で 理解できない 合 理 的 配 慮「指示理解」への配慮
・指示は一つずつ伝える ・作業手順を図や数字で示す「見通し」への配慮
・予定変更の際には個別で声かけ ・一日の予定を紙で書いて机に置くA
さんSTEP
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STEP
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STEP
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「見通し」に対しての困難
・予期せぬ出来事が苦手 ・予定の把握が難しい読み書きが難しいB さんの場合
文字の見え方に特徴があり、 読み書きに困難があるB さん。板書 を写すのも、漢字を覚えるのにも非常に時間がかかり、その分授業 の理解も遅れてしまいます。ふりがなをふったり、家で特訓したり とがんばってきましたが、だんだんとついていけなくなりました。 3 年 生 の 頃 に「 読 み 書 き 障 害 」の 診 断 を 受 け、そ の 時 に 先 生 か ら 提 案 さ れ た の が タ ブ レ ッ ト の 活 用 で す。文 字 を 拡 大 し た り、音 声 読 み 上 げ ソ フ ト を 使 う こ と で、教 科 書 の 文 章 も 読 み や す く な り ま す。ま た、写 真 撮 影 や タ イ ピ ン グ 活 用 で、 板 書 も 写 し や す く な っ て、その分授業を聞くことに集中できます。 学 校 で は 他 の お 子 さ ま が 違 和 感 を 感 じ な い よ う に、B さ ん が タ ブ レ ッ ト を 使 う 理 由 を 先 生 か ら 説 明 し て く れ ま し た。練 習 を 重 ね、 タ ブ レ ッ ト を 使 い こ な せ る よ う に な っ たB さ ん。「 こ れ な ら 分 か る!」と、授業でも活発に発言できるようになりました。 進 級 時 に も 担 任 の 先 生 間 で 引 き 継 ぎ が 行 わ れ、4 年 生 以 降 も 教 室 で 継 続 し て 使 用 で き る こ と に。い ま で はB さ ん が 自 分 で、「 こ れ が 僕 に と っ て の ノ ー ト と 鉛 筆 だ よ 」と ク ラ ス メ イ ト に も 説 明 で き る ようになり、自信を持って授業に参加しています。ー 特徴 ー
読み書きの困難
「読む」の困難
・音読ができない ・テストの問題文が読めない「読む」への配慮
・ふりがなプリント ・音声読み上げソフト「書く」への配慮
・板書を写真に撮る ・タブレットやパソコンで 作文を書く「書く」の困難
・板書を写すことができない ・字のバランスがバラバラ ・作文が書けないB
さんSTEP
1
STEP
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STEP
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STEP
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困 難 さ 合 理 的 配 慮こんな時どうする?
合理的配慮Q&A
「誰に相談すればいいの?」
「どこまで配慮してもらえるの?」
そんな保護者さまの疑問やお悩みにお答えします。
誰に相談すればいいの?
学 級 担 任 の 先 生 や、特 別 支 援 教 育 コ ー デ ィ ネ ー タ ー の 先 生、ス ク ー ル カ ウ ン セ ラ ー さ ん な ど、お 子 さ ま の こ と で 気 軽 に 相 談 で き る 方 に ま ず は 相 談 し て み ま し ょ う。配 慮 の 内 容 や 方 法 が 難 し い 場 合 は、学年主任や教頭・校長先生など、管理職の先生方にも相談してみると良いでしょう。A 1
普段接している身近な先生にまずは相談してみましょう
Q 1
合理的配慮を受けるためには何が必要?
ど ん な 場 面 で ど ん な 配 慮 が 必 要 か、具 体 的 な 相 談 が 出 来 る と 先 生 方 も 検 討 し や す く な り ま す。 そ の 際、医 師 や 療 育 機 関 担 当 者 の 診 断 書・意 見 書 や、心 理 検 査・読 み 書 き テ ス ト 結 果 な ど、客 観 的 に お子さまのご様子、得意・不得意が判断できる情報があると、参考になるでしょう。A 2
客観的な判断材料があると相談を進めやすくなります
Q 2
合理的配慮の内容や方法はどうやって決めるの?
一 人 ひ と り、場 面 や 状 況 に 応 じ て 必 要 な 配 慮 は 異 な り ま す。お 子 さ ま に と っ て 何 が 一 番 必 要 か、 ご 家 庭 と 学 校 で 一 緒 に 相 談 し な が ら、必 要 な 配 慮 に つ い て 合 意 形 成 し ま し ょ う。実 施 す る 配 慮 が 決まったら、個別の指導計画に記載するなど、書面で確認できるようにすると良いでしょう。A 3
家庭と学校で一緒に相談しながら決めましょう
Q 3
どんな配慮でもお願いできるの?
大きな費用がかかったり、人手や設備が不十分であるなど、その学校にとって負担が大きい配慮は、 実 施 が 難 し い 場 合 が あ り ま す。か か る 費 用 や 人 手 が 少 な い 方 法 で、同 様 の 困 り ご と を 解 消 で き る 工 夫がないか、学校と相談してみましょう。A 4
学校の状況や負担も考慮しながら、実現可能な配慮を検討しましょう
Q 4
周りから不公平と言われないか心配…
ど ん な 子 ど も に も 得 意 や 不 得 意 が あ り ま す。目 が 悪 い 人 が メ ガ ネ を か け る よ う に、苦 手 な こ と、 困 り ご と に 対 す る サ ポ ー ト は、一 人 ひ と り に と っ て 必 要 な こ と で す。配 慮 を 受 け れ ば み ん な と 同 じ よ う に 学 べ る こ と を 説 明 し た り、他 の 子 ど も が 困 っ て い る 時 に は 逆 に 支 え て あ げ る な ど、違 い を 尊重しながらお互いに出来ることを話しあいましょう。A 5
お互いに気持よく支え合えるように説明・相談しましょう
Q 5
子ども本人が配慮を嫌がらないか心配…
何 よ り も 大 切 な の は お 子 さ ま 自 身 の 気 持 ち で す。何 に 困 っ て い て、ど ん な 学 び 方 が 一 番 自 分 に 合 っ て い る の か、一 つ ひ と つ お 子 さ ま と 対 話 す る こ と が 大 切 で す。お 子 さ ま 自 身 が 自 分 の 得 意・ 不得意を理解し、必要な配慮を自ら説明・相談できるようになるまで応援していきましょう。A 6
お子さま本人の気持ちを尊重しながら進めましょう
Q 6
合理的配慮はいつまで必要なの?
お 子 さ ま の 成 長 に 合 わ せ て、そ の つ ど 必 要 な 配 慮 を 調 整 し て い く こ と が 大 切 で す。は じ め は 配 慮 を 受けていたけれど、お子さまが成長して配慮が不要になることもあれば、進級・進学に応じて新たな 困りごとが発生することも。柔軟に対応していきましょう。A 7
お子さまの成長に合わせてそのつど調整しましょう
Q 7
配慮を受けることで子どもが甘えてしまわないか心配…
合 理 的 配 慮 と は、過 剰 な 保 護 や 気 遣 い を す る こ と で は な く、お 子 さ ま が 自 分 の 力 を 発 揮 し や す く す る た め に 適 度 な サ ポ ー ト を 加 え る こ と で す。困 り ご と に 対 処 し つ つ も、お 子 さ ま 自 身 の 挑 戦 や 成功体験につながるような、適切な配慮方法を先生と相談しましょう。A 8
お子さまの成長・挑戦へとつながる、適度な配慮を決めましょう
Q 8
何より大切なのは、お子さまを中心として、学校と信頼関係を
作ることです。ご家庭と学校で丁寧に相談して決めましょう。
合理的配慮相談ガイド
本ガイドを参考に、学校と相談していきましょう。
次のページの「合理的配慮相談シート」もご活用ください。
どんな時に、どんな困りごとが起こるのか、どんな配慮をしてほしいのか、
まずはご家庭で書き出してみましょう。なるべく具体的に書き出すことが
大事なので、LITALICO ジュニアの指導員にもご相談ください。
お子さまの様子や困りごと、必要な配慮を整理
学校の先生と面談し、お子さまが通う学校・学級ではどんな配慮が
できそうか、一緒に書き出してみましょう。
学校で実現可能な配慮の検討・相談
学校と相談を重ね、最終的に実施する配慮の内容や方法が決まったら、
できることから始めてみましょう。また定期的に必要があれば
改善をしましょう。
※個別の指導計画がある方は、そちらにも配慮の内容を記載してもらいましょう。合理的配慮の実施
STEP
1
STEP
2
STEP
3
合 理 的 配 慮 相 談 シ ー ト
お子さまの様子や困りごと、必要な配慮を整理
ふ り が な お名前: 性別: 男 / 女 年齢: 学年: 在籍学級: 診断の有無: 有り / 無し 診断名(あれば): キ リ ト リ合意した配慮の内容
ど ん な 困 り ご と に 対 し て
ど ん な 配 慮 を
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実施する合理的配慮の内容や方法
※発達検査や心理検査の結果、医師・療法士など専門家の意見書があれば、 参考資料としてあわせて学校に提出してみましょう。先生のお名前: 学校の相談担当の お名前: 保護者さまの ご連絡先: 合意日: 年 月 日 配慮の振り返り・見直しの時期: ヶ月後 / または必要に応じて実施 キ リ ト リ