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ほか 2016 年 6 月には米ボーイング社がイラン航空と民間航空機 100 機の売却契約を締結した また 核合意の履行の一環として 米国はイランから重水 32 トンを 860 万ドルで購入することを決定している さらに オバマ政権は 米国による対イラン制裁が第三国とイランとの取引を妨害することはな

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1 中東調査会は個人及び法人会員の賛助会費により運営されている非営利の公益財団法人です 【会員限定】

中東分析レポート

2015 年 7 月に P5+1 とイランとの核合意が成立したことは、イランと欧米諸国 の関係改善の嚆矢になるとみられました。その後、2016 年 1 月から核合意の履行 が開始され、今日に至るまで大きな障害もなく履行が継続しているものの、その 他の分野におけるイラン・欧米関係は抜本的な改善には至っていません。むしろ、 地域情勢を巡り米国との関係は悪化に向かいつつあり、その一方でイランはロシ アとの関係を強化しつつあります。 以下は、核合意後のイランの対米関係、対ロ関係の変化について、村上研究員 が分析したレポートです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イラン:悪化する対米関係とロシアへの接近

研究員 村上 拓哉 1. 核合意の成立とイランへの期待 2015 年 7 月 14 日に P5+1 とイランとの核合意が成立したことは、イランの核 開発計画を国際的な監視の下に置くことに成功しただけでなく、イランと欧米諸国 との関係を大きく変化させるものになりうると期待された。欧米諸国による対イラ ン制裁が解除されることにより、イランとの貿易、そしてイランへの投資が自由に なる。合意成立後、欧米諸国の政府高官が相次いでイランを訪問したのはイランと の経済関係の拡大を目指すためであったが、こうした経済関係の結びつきが強化さ れることは、イランとの関係が「正常化」することを意味しており、イランと様々 な問題で対話することがタブーとみなされなくなったことを如実に反映している。 イランとの関係改善の波は、引き続き一部の対イラン制裁を残したままである米 国にも到来した。米国は凍結していたイランの資産のうち一部の引渡しを開始した

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2 ほか、2016 年 6 月には米ボーイング社がイラン航空と民間航空機 100 機の売却契 約を締結した。また、核合意の履行の一環として、米国はイランから重水32 トン を 860 万ドルで購入することを決定している。さらに、オバマ政権は、米国によ る対イラン制裁が第三国とイランとの取引を妨害することはないと繰り返し主張 しており、ケリー米国務長官は外国の金融機関がイランに進出することを促す発言 までしている。 こうした米国政府の行動の背景には、核合意を維持することはもちろんのこと、 地域の問題においてイランの協力を取り付けたいという思惑が存在する。長期化す るシリア紛争の平和的解決、イラク・アフガニスタン情勢の安定化、そして「イス ラーム国」の掃討といった中東の主要な課題に関し、イランはいずれにおいても深 く関与している。そのため、核合意の成立は、これまで不可能だったイランとの本 格的な対話を開始するための先鞭となることを、米国政府は強く期待していた。 2. 悪化するイラン・米国関係 ところが、こうした期待とは裏腹に、核合意成立後のイラン・米国関係は良好と は程遠い状況にある。シリア紛争ではイランの革命防衛隊が直接的な介入を継続し ており、アサド政権とともに現地で攻勢を続けている。紛争の平和的解決に向けた 交渉は、双方が原則論に固執しており、進展を見せる気配はない。イラクにおいて は、「イスラーム国」掃討のためにイランの強い影響下にあるシーア派民兵と米軍 が事実上の共同作戦を各地で実施しているが、これは核合意成立前から行われてい たものである。しかし、こうした状況下においても、シーア派民兵が「イスラーム 国」から解放した土地でスンナ派住民に報復を行うなど、イラクの更なる不安定化 につながりかねない行動に出ている。米国はこうしたシーア派民兵の行動を制御す ることができておらず、米・イラン間で十分な協力体制が構築されているとは言い 難い。 そして、核合意の履行に関しても、双方の間で不満が高まっている。イラン側は、 欧州をはじめとする諸外国がイランとの経済関係の強化に及び腰であるのは、米国 が経済制裁解除の義務を十分に果たしていないからだと指摘する。他方、米国側は、 イランによる弾道ミサイル発射実験などが合意の精神に反するとして問題視して いる。 (1)経済制裁解除を巡る米・イラン間の対立 経済制裁の解除に関して二国間でもっとも大きな問題になっているのは、合意の 対象外として残されることになった米国による対イラン制裁が、第三国に適用され るか否かという点である。オバマ政権からは再三にわたって米国政府が第三国に対

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3 イラン制裁を適用することはないと説明されているものの、米国議会からはイラン との貿易・投資を妨害するという意思が明確に表明されている。共和党が多数派を 形成する上下両院ではもともと核合意反対派が多数派であったが、オバマ大統領が 拒否権を行使する立場を表明したことから、これを覆す3 分の 2 以上の勢力を議 会内で形成することを余儀なくされた。そのため、議会内の反イラン派は核合意成 立の阻止にこそ失敗したものの、合意を骨抜きにするべく、今年に入ってからも新 たな対イラン制裁を様々な形で提案し、実際に法案も可決させている。 問題の焦点は、議会のこうした動きは、オバマ政権下では拒否権の行使にあって 葬り去られるとしても、2017 年 1 月に新たに誕生する大統領の下でどのように扱 われるかは不透明だという点にある。共和党のドナルド・トランプ、民主党のヒラ リー・クリントン両大統領候補のイラン政策には大きな違いがあるものの、いずれ の候補が大統領になったとしても、オバマほどイランに融和的であると期待するこ とはできない。米国の対イラン政策が一年以内に大きく変化する可能性があるなか、 イランとの経済関係を拡大することに諸外国が躊躇するのは、リスクを避けるとい う意味では当然の動きといえよう。 しかし、これはイラン側にとってみれば、米国が合意の履行を実現できていない に等しく、到底許容しがたい。核開発の大幅な制限を受け入れながら、その対価で ある経済制裁解除の恩恵を受けられないのであれば、イランとしては米国に「裏切 られた」と感じることになろう。事実、イラン国内では米国に対する批判の声が高 まっており、8 月上旬にはハーメネイー最高指導者、そしてロウハーニー大統領か らも、米国による合意義務の不履行を強く糾弾する発言が出てきている。そして、 ロウハーニー大統領は、こうした米国の対応によって「(米国は)他の分野におけ るイランとの協力の機会を失している」と指摘している。 (2)合意の精神に反するイランの軍事・地域外交政策 一方、米国の側からも、イランの複数の行動が核合意の精神(spirit)に反する ものとして問題視されている。合意の精神に反する行動とは、核合意において義務 として明確に規定されているものではないものの、合意の目的に鑑みれば自制する ことが望ましいと考えられている行動を意味する。具体的には、弾道ミサイルの発 射実験、イエメンの反政府勢力への武器の密輸、ソレイマーニー革命防衛隊ゴドゥ ス軍司令官の海外渡航などがこれにあたる。 弾道ミサイルについては、周知のとおり、通常の弾頭を搭載した場合の軍事的有 用性は低く、核弾頭を搭載することによって軍事的な効果を最大化することができ る。したがって、イランによる弾道ミサイル開発問題は核開発問題の一部を成すも のとして議論がなされてきた経緯があるが、7 月に成立した核合意では弾道ミサイ ルそのものの開発については、イラン側の強い反対により、制限の対象としないこ

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4 とになっている。もっとも、これを逆手にとり、革命防衛隊は弾道ミサイルの発射 実験を重ねている。2016 年 3 月の実験ではミサイル発射の映像を公開するととも に、革命防衛隊のハージーザーデ航空宇宙軍司令官が同ミサイルは射程が2000km あり、イスラエルを標的にすることができると述べたため、欧米諸国から大きな反 発を呼んだ。ちょうど同時期にはバイデン米副大統領がイスラエルを訪問中であり、 米国政府としてもこの件に反応せざるをえないものとなった。米国内でもイランへ の新たな制裁を課す声が高まり、次期大統領候補としてトランプよりイランに融和 的なヒラリーからも対イラン制裁を支持する見解が表明されることになった。 イエメンのフーシー派・サーリフ前大統領派への武器の密輸、ソレイマーニー革 命防衛隊ゴドゥス軍司令官のシリア・イラクでの活動については、核合意の中心的 事項との関連性は低いものの、いずれも過去の国連安保理決議においても禁じられ ている行為である。イランによる地域外交政策は一貫したものであり、核合意の前 後において何らかの変化があるわけではないが、こうした国際法秩序を軽視するイ ランの態度は、地域の問題においてイランと米国が更なる協力を進めることを難し くさせている。2016 年 7 月に国連安保理会合において核合意の履行状況について 協議が開かれたが、その場においてフェルトマン国連事務次官(米国の元近東担当 国務次官補)はこれらのイランの行動を列挙し、加盟国に問題の解決を図るよう要 請している。 3. 接近するイラン・ロシア関係 イランは20 世紀にロシア帝国軍、ソ連軍に占領された経験があり、歴史的には ロシアと親密な関係にあったわけではない。しかし、冷戦終結後、反米を貫くイラ ンとロシアの関係は徐々に接近していき、欧米諸国の制裁下にあったイランはロシ アと一定の関係を維持するようになる。革命前にドイツが着工したブーシェフル原 子力発電所は、1995 年以降ロシアの国営企業であるロスアトムが建設を請け負っ ていたほか、2005 年から上海協力機構のオブザーバー国としてイランは迎えられ ている。 こうしたイラン・ロシア関係の接近は、イランが心理的にロシアに親近感を覚え るから選択されているというよりも、欧米諸国との対抗上、必然的にロシアと協力 するしか道がなかったと説明されることが多かった。これはロシア側にとっても同 様であり、ロシアがイランに接近するのはイランが欧米諸国と対立していたからと 見ることができよう。従って、核合意の成立はイランと欧米諸国との関係改善の道 は開くものの、イラン・ロシア関係がこれまで以上に発展するという見通しはほと んど指摘されていなかった。

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5 (1)軍事関係の拡大 しかしながら、核合意成立後、大方の想定に反してイランとロシアの関係はより 緊密になりつつある。象徴的な動きは、2007 年に契約が結ばれたものの米国・イ スラエルの反発により引渡しが延期されていた S-300 防空ミサイルシステムにつ いて、ロシアからイランへの搬入が開始されたことがある。S-300 は兵器の特性上、 防御的な兵器であり、過去の国連安保理決議においてもイランに移転することは明 確に禁止されていなかったものの、高性能な防空システムの導入は自国が先制攻撃 に踏み切った場合でも敵方の反撃を抑制する効果があることから、地域の不安定化 につながりうると指摘されていた。ミサイル本体の搬入はまだ行われていなかった とみられているものの、2016 年 4 月 17 日の軍事パレードにてイランは S-300 の 一部の公開に踏み切り、同兵器の保持を内外に喧伝した。当然ながらこれは米国政 府の反発を招き、カービー米国務省報道官は、米国は同兵器のイランへの移転に反 対してきたこと、米国の国内法に基づく対ロシア制裁の可能性を検討していること に言及した。 これに加えて、2016 年 2 月には、ロシアからイランに Su-30 戦闘機を売却する 契約が年内に結ばれる見通しであると報じられた。核合意成立後もイランへの通常 兵器の移転は国連安保理の事前承認が必要となる。シャノン米国務次官は、Su-30 の売却に米国は国連安保理で拒否権を行使すると明言しており、イラン・ロシア間 の軍事関係の拡大を警戒する姿勢をみせている。 (2)シリア紛争における連携 また、シリア紛争においても、イランは欧米諸国ではなくロシアとの協調を深化 させる方向に舵を切っている。2016 年 6 月 10 日、イランはシャムハーニー国家 安全保障最高評議会書記をシリア、ロシアとの政治・軍事・安全保障問題の調整役 に任命した。これまでシリア問題については、イラン国内でも外務省と革命防衛隊 の間で必ずしも方針が一致していないと見られる状況があったが、シャムハーニー の任命は交渉窓口を一本化し、シリア、ロシアとの連携を強化しようというイラン の意図を反映しているとみられる。 こうした調整の結果、2016 年 8 月 16 日、ロシアはイラン北西部に位置するハ マダーン基地からロシア空軍機のTu-22M3 長距離爆撃機と Su-34 戦術爆撃機を発 進させ、シリア領内の「イスラーム国」およびヌスラ戦線を空爆したと発表した。 イランが外国軍に基地の使用を認めたのは、革命以降初のことである。イランは過 去の占領経験から憲法上において国内に外国軍基地を設置することを禁じており、 外国による介入・干渉に殊更敏感な国家である。そのイランにおいて、一時的な駐 留とはいえ、ロシアに自国内の基地の軍事利用を認めたことは、イラン・ロシア関 係がかなりの程度進展している証左といえる。もっとも、イラン国内でも議会から

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6 憲法違反ではないかとの質問が出たように、これはイラン国内政治の文脈において 極めて機微な案件であった。イランのデフガーン国防相がロシアの対応を批判した ことにより、本件はイランの許可なしにロシアが基地使用の事実を公表したとみら れている。これが理由かどうかは不明であるが、ロシアによるイラン基地の利用は 18 日までの 3 日間のみであり、現在は利用を終了したと両国が発表している。 おわりに イラン・ロシア間の軍事関係の拡大、そしてシリア紛争における連携の強化は、 欧米諸国がイランとの関係改善に足踏みをするなかで急速に進展した。ロウハーニ ー政権は核合意成立後に欧米諸国との協調が実現することを期待していた節があ るものの、イラン国内、米国内の双方で関係改善を牽制する動きが顕在化し、現在 は完全にその機運が失われてしまっている。 他方、イランとロシアの接近は、長期にわたる不可逆的な動きというよりも、短 期的な動機に基づく変化と捉えるべきだろう。核合意成立以前と同様に、イランが ロシアに接近しているのは、他の選択肢が閉ざされているからに他ならない。対欧 米諸国を軸にしたイラン・ロシア間の協調体制は今後も一定の水準で継続していく だろうが、イランとロシアのイデオロギー的な乖離は大きく、両者が将来的に同盟 国となるような事態は、現時点では想像しがたい。ロシアによるイランの軍事基地 の利用は、イラン・ロシア間の関係がそのレベルまで深まっていることを如実に示 したが、その後の顛末は、両国間の連携が必ずしも円滑ではなく、イラン国内にも 反発があることの証左ともなった。 今後の焦点となるのは、2017 年 5 月にイランで予定されている大統領選挙にお いて、ロウハーニーが再選されるかどうかであろう。核合意の成立による経済制裁 の解除、欧米諸国との経済関係の拡大を主張してきたロウハーニー政権が継続する のであれば、イラン・米国関係の改善に新たな光明を見出す機会はこれからも生じ うるだろう。他方、2016 年 2 月の国会議員・専門家会議議員選挙にて敗北した保 守強硬派が大統領選までに復権することになれば、その可能性は限りなく小さいも のとなる。そして、2017 年 1 月に先立って就任する新たな米大統領が、こうした 可能性に留意できるか否かが、イラン大統領選の行方を大きく左右することにもな る。 (了)

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