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総称して多光子励起過程と呼ばれる 図 1 多光子励起過程は 量子力学の黎明期ともいえる1931 年 に 後にノーベル物理学賞を受賞するMaria Goepert-Mayer によって論理的に予言されていた Göppert-Mayer 1931 実際に多光子励起過程が存在することが実験的に示された の

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はじめに 生物用光学顕微鏡における空間分解の向上は,生物科学 における発見と強い関係を持っている.例えば,色収差を低 減した対物レンズの登場がミトコンドリアなどの細胞内小器 官の発見を促している.この 20 年数年間はレーザー共焦点 顕微鏡のような観察側の技術革新と,蛍光抗体染色法,GFP の登場の代表される観察される側の技術革新がめざましく, 細胞骨格や細胞内小器官,特定の生体分子の詳細な動態に ついて詳細な情報をもたらした.前者のレーザー共焦点顕 微鏡は,測定対象の空間分解能の向上,とりわけ「蛍光断層 イメージング」を実現することになった.さらに,加えて近赤 外超短光パルスレーザーを用いたレーザー顕微鏡(多光子 顕微鏡,もしくは2光子顕微鏡)を用いて,生組織,生細胞の 「ありのまま」の状態で,生化学的な方法論でしか測定ができ なかった生体分子の相互作用観察することが可能となって きている.本稿では,非線形光学過程による断層イメージング, 蛍光断層の特徴と可能性について概略すると共に,最新のレー ザー,光科学の技術導入により,どのような高性能化が見ら れるかについて,我々の最新のデータを例に述べたい. 多光子励起過程 蛍光分子は通常,特定波長の励起光により第一電子励起 状態へ遷移し,蛍光を発しながら基底状態に戻る.複数個の 光子の同時吸収により起こる多光子励起過程は,量子力学 的には実現する確率が極めて低い過程である.1 光子励起 の際と比較して,波長が約 2 倍,即ちエネルギーが 1/2 の光 子が2個,同時に吸収された場合を2光子励起過程,同様に エネルギーが1/3の光子3個の場合を3光子励起過程といい,

Plant Morphology vol. 26 pp 31-35 INVITED REVIEW

新規レーザー光学技術を用いた生体マウス脳深部イメージングの現状

根本知己1, 2,川上良介1, 2,日比輝正1, 2,飯島光一郎1,大友康平1, 2 1 北海道大学電子科学研究所 〒001-0020 北海道札幌市北区北 20 条西 10 丁目 2 JST CEST 要旨 : 2 光子励起レーザー顕微鏡(2光子顕微鏡) は,低侵襲性や深い組織到達性といった特徴のため,神経科学を中心に, 免疫,がんなどの他領域にもその使用が爆発的に広がっている.植物の研究領域においても,葉緑体の自家蛍光を回避する ことが可能であるため,2 光子顕微鏡の利用は増加している.我々は 2 光子顕微鏡の開発とその応用に取り組んで来ているが, 最近,生きたままでマウス生体深部を観察する“in vivo”2光子顕微鏡法の,新しいレーザー,光技術による高度化に取り組ん でいる.特に共同研究者の開発した長波長高出力の超短パルスレーザーを励起光源として導入することで,生体深部観察能 力を著しく向上させることに成功した.この新規“in vivo”2光子顕微鏡は,脳表から約1.4 mmという世界最深部の断層イメー ジング,すなわち,生きたマウスの脳中の大脳新皮質全層及び,海馬CA1領域のニューロンの微細な形態を観察することが可 能になった.一方で,我々は超解像イメージングの開発にも取り組み,細胞機能の分子基盤を明らかにするために,形態的な 意味での空間分解能の向上にも取り込んでいる.特に,我々は新しいレーザー光「ベクトルビーム」を用いることで,共焦点顕 微鏡や2光子顕微鏡の空間分解能の向上にも成功した本稿では,我々の最新の生体マウス脳のデータを紹介しつつ,2光子顕 微鏡の特性や植物組織への可能性について議論したい.

Deep imaging of living mouse brain utilizing novel laser photonics technologies

Tomomi Nemoto1, 2, Ryosuke Kawakami1, 2, Terumasa Hibi1, 2, Koichiro Iijima1, 2, Kohei Otomo1, 2

1 Research Institute for Electronic Sciences, Hokkaido Univ., Kita 20, Nishi 10, Kita-ku, Sappro, Hokkaido, 001-0020, Japan 2 JST CREST

Author for correspondence: T. Nemoto, [email protected]

Summary: For the field of neuroscience, laser-scanning florescence microscopy utilizing two-(or multi-) photon excitation process

(two-(multi-)photon excitation laser scanning microscopy, two-(multi-)photon microscopy) has become widely used as an essential tool for biological and medical research including cancer, and immune researches. Especially, “in vivo” two-photon microscopy has revealed vital information on neural activity for brain function, even in light of its limitation in imaging events at depths greater than a several hundred micrometers from the brain surface. To break the limit of this penetration depth, we introduced a novel light source based on a semiconductor laser. The light source successfully visualized not only cortex layer V pyramidal neurons spreading to all cortex layers at a superior S/N ratio, but visualize hippocampal CA1 neurons in young adult mice. In addition, we developed liquid crystal devices to convert linearly polarized beams (LP) to vector beams. A liquid device generated a vector beam called higher-order radially polarized (HRP) beam, that enabled us to identify individual fluorescent beads of which diameter is 170 nm; smaller than classical PSF width. HRP beam also visualized finer structures of microtubules in fixed cells. Here, we will discuss these improvements and future application on the basis of our recent data.

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総称して多光子励起過程と呼ばれる(図1). 多光子励起過程は,量子力学の黎明期ともいえる1931 年 に,後にノーベル物理学賞を受賞するMaria Goepert-Mayer によって論理的に予言されていた (Göppert-Mayer 1931). 実際に多光子励起過程が存在することが実験的に示された のは 1961 年であり30 年間かかっている.それは通常の強度 の光の照射では,この多光子励起過程を起こさせることは不 可能であるためである.即ち,通常の数mWレーザーポイン ターの光のようなものを蛍光物質に当てた場合の2光子励起 過程の実現確率は,宇宙開闢以来一度も起きないことを示 す極めて微小な値になってしまう.この実験的な実証は,実 はレーザーが誕生して直ぐに実施されている.レーザー光の, 高強度,コヒーレンスという性質から,焦点位置の光子密度 を極めて高く上昇させることによって,実験室内でも容易に 実現されている(図2). 現在の2光子顕微鏡の爆発的な広がりは,その間いくつか の報告例はあったものの,1990 年の Webb のグループの報 告 (Denk et al. 1990) 以降生じており,さらに30年間の時間 がかかっていることになる.2 光子励起過程,多光子励起過 程の生物応用への問題点もやはり,その確率の異常な低さが 原因している.チタン・ サファイアレーザー(Ti:Al2O3レー ザー),Nd:YLFレーザーなどの,極めて高い密度の光子を 発生できるパルスレーザーの出現がキーとなっている.これ により,随伴して生じる1光子励起過程を抑えて,2光子励起, 多光子励起過程の発生確率を向上させることができている. より詳細に,この点を簡単な計算で示してみよう.まず図2 に示したように,単位時間当たりの2光子吸収量φ2を上げる ためには,2光子吸収断面積σ2は分子固有の物理量である ので,レーザー光の単位時間当たりの光子密度I/h ν,即ち 励起レーザーパワーIを上げる,かつ,スポット断面積Sを小 さくすることで,光子密度I/hνを高めることができる.しかし, これはφ1をも当然,増大させる.この結果,余りにもIを上げ すぎると,蛍光発生に結びつかない励起光の吸収過程が熱 的緩和に至り試料にダメージを,与えることが顕著になって しまう.この問題を回避するためには,I は押さえたまま,瞬 間的な強度を非常に上げる,即ち,非常に短いパルス幅のレー ザーを用いて一瞬だけ高密度な光子状態を出現させれば良 い.なぜなら2光子励起過程の非線形性から,パルス化によ りデゥーティー比の逆数(m) 分だけ,2光子吸収量φ2は倍増 されるためである.具体的に計算してみると,通常良く用い られている波長可変モードロックのチタン・ サファイアレー ザーの場合には70-130 fsのパルス幅を持ち,680-1000 nmま で発振波長が可変である.このパルス光は繰り返し周波数 が約 80MHz であるので,瞬間光子密度は CWと比して,比 の逆数分 m = 105倍だけ大きくなる.従って励起確率はパル スのON状態の時のみm2 = 1010倍励増大し,OFF状態では0光子数が0)となるので,結局,放出される蛍光パワーは105 倍大きくなる. 2光子顕微鏡の特徴 この 2 光子励起過程や多光子励起過程がレンズの焦点位 置に限局して起こるという性質は,2 光子顕微鏡,多光子顕 微鏡では,「対物レンズの焦点位置でのみ蛍光分子が励起さ れる」ことを意味する.この励起の局所性が最も重要な特徴 である「共焦点ピンホール無しの断層イメージング」という特 徴を生み出している.レーザー顕微鏡のレーザーポートに近 赤外超短光パルスレーザー光を導入すると,レーザー光は 対物レンズで絞られ,焦点面とほぼ等しい位置で焦点を結ぶ. 従って,前述の通り,この焦点スポット付近の瞬間の光子密 度は高くなるので,多光子過程は対物レンズの焦点におい てのみ生じ,焦点以外では蛍光は発生しない.従って,サン プルから出てくる蛍光は全てこの焦点にあるビームスポット で発生したものであることが自動的に保証されているのであ る(図 2).つまりこれは軸性方向で見れば,標本中の焦点面 のみを光らせてことに相当する. つまり,2光子顕微鏡では,空間的に非常に狭い領域に存 図1 分子のエネルギー準位と光子吸収・蛍光放出過程.通常の蛍 光発生の機構では,第一励起状態(S1)と基底状態(S0)の間のエネ ルギー差に等しいエネルギーを持つ光子を吸収する.S1で極めて短 い緩和過程を経た後,ある確率(量子効率)で光子を放出し,S0に戻っ ていく.S1における滞在時間は10-9秒のオーダーである. 図 2 励起確率,光の吸収量,励起領域の比較.1 光子励起過程の 場合,励起領域は光の通る円錐状の領域全体に及び,パルス化によっ て単位時間当たり光の吸収量は変わらない.図は根本(2005)より改変, 引用.

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在する分子のみを励起し,そこから発生する蛍光を検出して いる.あたかも懐中電灯やサーチライトを動かしながら物を 探す時のように,この励起スポットを標本内で動かし,逐次, どこを照らしていたかという情報とその時のサンプルから出 てきた蛍光強度を用いて画像をコンピューターで構築する. 通常用いられているレーザースキャン型の 2 光子顕微鏡の 場合,励起スポットの位置はコンピューターからスキャンミラー を通じて制御されているので,ある線分にそった蛍光強度の 時間変化を取得するラインスキャンといったような特殊なデー タ取得法も可能である.しかし,このタイプの場合,動作原 理的に高速の画像取得に限界があるため,近年では,スキャ ンミラーの替わりに,マイクロレンズアレイディスクを用いた 2光子顕微鏡も実用化されつつある(Shimozawa et al. 2013). 加えて,2 光子顕微鏡は,ケージド試薬と呼ばれる,紫外 線の吸収によりある特定の物質を放出する試薬を,生体組 織中で活性化することが可能である (Matsuzaki et al. 2004). このように,2 光子顕微鏡は,細胞機能の in vivoアッセイの 現実的な解であると言えよう.その他にも2 光子顕微鏡には 様々な特徴があるが,他の文献を参照にされたい(根本ら, 2011). 生きたマウス脳の深部イメージング マウス生体脳は光学的な特性が比較的均一であると考え られており,動物組織の中でも深部到達性に優れている.そ の深部断層イメージングについては,まず Denk のグルー プが 2003 年に再生増幅器を用いることで1 mmを越えた in

vivo イメージングに成功したという報告をした (Theer et al. 2003).この場合,2 光子確率に重要なレーザーパルス1 発 の高さ(ピークパワー,瞬間の光強度)をあげるために再生 増幅を用いている.これにより生体脳深部へ励起光レーザー が十分繰り返し周波数が著しく低下してしまい,レーザー走 査型の顕微鏡では走査時間を長く取る必要があり,時間分解 能が得られなかった.筆者等もこの問題にとり組み,多光子 顕微鏡で一般的に用いられているチタン・サファイアレーザー を用いた顕微鏡では,最も深い部位が観察できる脳組織の 場合でも,最大でも脳表面から0.8 mm 程度までの観察には 成功していたものの,さらに深部の海馬などの重要な観察す ることは困難であった.一方手,海馬領域を観察する際には, 細長い針状の特殊な対物レンズや透明のチューブを脳の大 脳新皮質に直接挿入するなど破壊的な処理が行われており, 海馬の上に乗っている新皮質の部分に外的な障害を与える 可能性を回避することができなかった(Barretto et al. 2011). 最近,筆者等は新規近赤外超短光パルスレーザー用いた 多光子励起レーザー顕微鏡システムを開発し(図 3),世界 で初めて,生きたマウス脳で,脳表から約 1.4mmという世界 最深部まで観察することに世界で初めて成功した.これは, マウスが生きている「そのまま」の状態で,大脳新皮質全層と 海馬領域の神経細胞(海馬CA1ニューロン)を画像化するこ とができたという,知る限り,世界で初めての報告であると 思われる.(図4)(Kawakami et al. 2013).これにより海馬とい う記憶にとって欠くことのできない重要な脳部位である海馬 領域を,大脳新皮質などの他の部分を全く破壊することなく 図3 新しく開発した多光子励起レーザー顕微鏡システム.a)概略図, b) 臓器深部観察を可能とするための小動物保定具.図はKawakami ら(2013)より引用.

図 4 生きた H-line マウスの脳の in vivo イメージング.海馬 CA1 ニューロンも観察出来ている.図は根本ら(2013)より改変.

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動物が生きている「そのまま」の状態で,観察できる方法が確 立できたものと考える.このことは,私たちの記憶のメカニ ズムの研究のみならず,深部のがんの観察・検査などといっ た医学応用の展開も期待できると考えている. この新たに構築した多光子顕微鏡は,我が国が得意とす る半導体レーザーの技術をベースにして構築した新しい近 赤外超短光パルスレーザーを用いたものであり,従来用いら れてきたレーザー光源と比較して,コンパクトでかつ動作が 極めて安定であるため,操作が容易であり,得られる断層画 像の画質も非常に高いという特徴がある. 空間分解能の向上 空間分解能は,理想的な共焦点顕微鏡が存在すると仮定 すれば,理論的には共焦点顕微鏡の方が2 光子顕微鏡の優 れている.これは励起波長が2光子顕微鏡の方が長い分,対 物レンズ後の励起レーザー光の焦点スポットサイズが大きく 成らざるを得ないためである.これは光の回折限界という性 質に由来している.とはいえ,実際の共焦点顕微鏡では分解 能を落として使わざるを得ないことが多い.なぜならば,共 焦点顕微鏡では,焦点面を標本の深い位置に移動させると 蛍光強度が著しく減退してしまうため,共焦点ピンホールを 開け蛍光信号強度を上げざるを得ない.共焦点ピンホール の大きさと空間分解能は逆に相関しているので,分解能は 悪化してしまうのである.また,励起レーザー光強度を上げ ると生きた細胞に対する傷害が激しくなる. このようにレーザー走査型の顕微鏡の空間分解能は,照 明系のレーザー光がどれだけ細く絞れるかということに大き く依存している.そこで筆者等は新しいレーザー光「ベクトル ビーム」を用いることで,焦点面内空間分解能の向上を試みた. ベクトルビームとは,位相,偏光,強度が空間分布を持って いるレーザーである.共同研究者の東北大学多元研の佐藤 俊一教授らは,ベクトルビームの発生とその性質を長年研究 しており,理論的な計算結果からある種のベクトルビームは 高 NA の対物レンズの後で,極めて細く絞れることが予想し ていた (Kozawa and Sato, 2007).先ず筆者等は直線偏光の ガウス型ビームを,高次径偏光ビーム(HRPビーム) へと変 換するコンバーターを構築した(図5) (Kozawa et al. 2011). これは,ホルダーを自作し,液晶素子を用いて径偏光化と6 重リング化(リングの一つおきに位相が反転している)を実現 した.まず 1 光子励起過程(ピンホールを開放した共焦点顕 微鏡)で,微小な蛍光ビーズ像を取得して照明用レーザーの 焦点近傍における強度分布を確認したところ,理論的な値と ほぼ一致した. そこで,HRPビームで共焦点観察を実施したところ,共焦 点ピンホールを,通常のエアリーディスクのサイズよりも小さ く絞ることが出来きた.即ち,焦点面内で古典的な回折限界 以下まで絞られた光を用いれば,通常の共焦点顕微鏡よりも 高い空間分解能で蛍光ビーズの像を取得することが可能であっ た.例えばカバーガラス上で凝集している直径170 μmの蛍 光ビーズは通常の共焦点顕微鏡では塊としてしか観察出来 ないが,1つ1つを明瞭に区別することができるようになった (図6).固定細胞標本への応用可能性を確認するために,培 養細胞 COS-7を固定し,蛍光抗体染色法を用い,細胞骨格 である微小管に帯する抗体を1次抗体とし蛍光色素Alexa488 で蛍光ラベルした 2 次抗体で染色したものを観察した.する と通常の直線偏光の共焦点顕微鏡では観察できない細かな 構造が観察することができた.欠点としては,理論的に予想 されていたが,サイドローブが出ること,軸性方向の分解能 の低下が見られた.また,通常の共焦点顕微鏡と比較して蛍 光強度が低いため,励起レーザー光強度を上げることが必 要になるので褪色の影響が出やすかった. 次に筆者等は HRPビームを2 光子顕微鏡の励起光源とし て用いることを試みた.まず微小な蛍光ビーズの蛍光像を観 察してPSFを求めたところ,焦点面内での分可能の向上が 確認された.実際に神経細胞初代培養の固定標本に対して, 上述等同様の染色法で,微小管の抗体染色を行い観察した ところ,同様の効果は確認され,細かな微小管の構造を解 像することができた.述べてきたように,2 光子顕微鏡には, 生細胞,生体組織への侵襲性の低さ,同時多重染色性の向 上と言った生細胞イメージングに適した性質も備わっている. 従って,この焦点面内の超解像化は生きている細胞のイメー ジングにも有効に働くことが期待される.実際,細胞骨格で あるアクチン線維を蛍光タンパク質を用いて可視化した細 胞において観察を行ったところ,空間分解能の向上に加え て,長期間にわたって褪色を押さえる事ができ,細胞の形態 変化を撮影することができていた.また,今回用いた液晶素 図5 ベクトルビーム(HRPビーム) に変換するための液晶光学素子. 図はKozawaら(2011)より引用. 図 6 直径 170nm の蛍光ビーズ像.直線偏光ビームで励起した場合(左)とHRPビームで励起した場合(右).図は根本ら(2013)より改変.

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子が広い領域の波長に対応することができるため,チタンサ ファイアレーザーの発振可能な波長域全域でベクトルビーム 化することが可能であった.これにより,紫外領域に近い波 長から赤色までの多様な蛍光波長の蛍光分子の用いた生物 サンプルでも使用することが可能であり,空間分解能の向上 が認められた(Ipponjima et al. 2014). 一方で,HRPビームを用いた場合,励起用のレーザーの 焦点位置の強度分布は,光の針のような形状になっている. 従って,軸性方向の光学分解能は伸びてしまうものの被写 界深度が非常に向上するため,全焦点画像を軸性方向にプ ロジェクションしたような画像となる.細胞の軸性方向の運 動のための焦点ズレや顕微鏡ステージの経時的な位置ずれ のための焦点ずれを低減させることが可能であった. 以上のように,HRPビームを用いた2光子顕微鏡は,特に 生細胞の観察で適用可能性が高いと考える.独マックスプラ ン研究所の Stefan Hellらのグループが開発し提案している STED顕微鏡法 (Testa et al. 2012) ほどの分解能は無いものの, 100 – 200 nmの空間分解能が期待でき,リアルタイム観察が 可能である.さらに対物レンズとレボルバーの間にデバイス を挿入するだけという手軽さは,実際の医学,生物学の現場 では,極めて有利であろう. 最後に このように2光子顕微鏡を用いた生体組織イメージグの有 用性は脳神経系の基礎研究において確かめられ,現在,多 様な生きた臓器への展開が試みられつつある.さらに,植物 細胞への適用例も報告されており(水多ら 2014),今後,そ の利用により植物組織期中ので,「生きたまま」の分子過程や 微細形態のダイナミクスの解明が進んでいくことが期待される. 植物細胞特有の光学的な特性,特に,細胞壁や葉緑体が励 起レーザー光を散乱させてしまう現象などを,新たなレーザー 光源や光技術等を活用して解消することができれば,爆発的 に利用は進むであろう.光科学研究者と植物のイメージング の研究者のとの共同研究が望まれるものと考える. 引用文献

Barretto, R. P., Ko, T. H., Jung, J. C., Wang, T. J., Capps, G,. Waters, A. C., Ziv, Y., Attardo, A., Recht, L., and Schnitzer, M. J. (2011)

Time-lapse imaging of disease progression in deep brain areas using fluorescence microendoscopy. Nat Med. 17:223-228.

Denk, W., Strickler J. H., and Webb, W. W. (1990) Two-photon laser scanning fluorescence microscopy. Science 248: 73-76.

Göppert-Mayer, V. M. (1931) Über Elementarakte mit zwei Quantensprüngen. Ann Phys (Leipzig) 9: 273-294.

Ipponjima, S., Hibi, T., Kozawa, Y., Horanai, H., Yokoyama, H., Sato, S., and Nemoto, T. (2014) Improvement of lateral resolution and extension of depth of field in two-photon microscopy by a higher-order radially polarized beam. Microscopy 63:23-32.

Kawakami, R., Sawada, K., Sato, A., Hibi, T., Kozawa, Y., Sato, S., Yokoyama, H., and Nemoto, T. (2013) Visualizing hippocampal neurons with in vivo two-photon microscopy using a 1030 nm picosecond pulse laser. Sci Rep 3:1014.

Kozawa, Y., Hibi, T., Sato, A., Horanai, H., Kurihara, M., Hashimoto, N., Yokoyama, H., Nemoto T., and Sato, S. (2011) Lateral resolution enhancement of laser scanning microscopy by a higher-order radially polarized mode beam. Opt Express 19: 15947-15954.

Kozawa, Y., and Sato S. (2007) Sharper focal spot formed by higher-order radially polarized laser beams. J Opt Soc Am A 24: 1793-1798. Matsuzaki, M., Honkura, N., Ellis-Davies, G. C., and Kasai, H. (2004)

Structural basis of long-term potentiation in single dendritic spines.

Nature 429:761-766.

水多陽子,栗原大輔,東山哲也 (2014) 2光子顕微鏡による植物深部 のin vivoイメージング.Plant Morphol 26: 25-30.

根本知己 (2005) 分泌腺細胞の開口放出の分子機構 : 多光子励起過 程を用いた可視化解析によりみえてきたもの.蛋白質 核酸  酵素 50: 950-957. 根本知己, 川上良介, 日比輝正 (2011) 多光子励起レーザー顕微鏡を 用いた生理機能の非侵襲的生体深部イメージング . ファルマシ ア 47: 724-727. 根本知己,川上良介,日比輝正 (2013),超短光パルスレーザーによ る非線形光学過程を用いた超解像イメージング.光アライアン ス 24:10-14.

Shimozawa, T., Yamagata, K., Kondo, T., Hayashi, S., Shitamukai, A., Konno, D., Matsuzaki, F., Takayama, J., Onami, S., Nakayama, H., Kosugi, Y., Watanabe, T. M., Fujita, K., Mimori-Kiyosue, Y. (2013) Improving spinning disk confocal microscopy by preventing pinhole cross-talk for intravital imaging. Proc Natl Acad Sci USA 110: 3399-3404.

Testa, I., Urban, N. T., Jakobs, S., Eggeling, C., Willig, K. I., Hell, S. W. (2012) Nanoscopy of living brain slices with low light levels. Neuron 75:992-1000.

Theer, P., Hasan, M. T., and Denk, W. (2003) Two-photon imaging

to a depth of 1000 microm in living brains by use of a Ti:Al2O3 regenerative amplifier. Opt Lett 28:1022-1024.

図 4 生きた H-line マウスの脳の in vivo イメージング.海馬 CA1 ニューロンも観察出来ている.図は根本ら(2013)より改変.

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