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経済統計と日本経済 第1回:イントロダクション

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Academic year: 2021

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(1)

経済統計Ⅰ

10回:時系列データの分析(2)

2015年6月13日

元山斉

(2)
(3)

経済時系列データの「季節変動」(再掲)

• 多くの経済時系列データの変動には、「季節性」がある

— 「季節変動」: 月や四半期ごとに観測される、ある程度周期的な変動

— もっと周期の短い変動(例えば、日次データの週ごとの周期的な変

動)も「季節変動」と類似の性質がある。

• 「季節変動」が生ずる理由:

1. 月や四半期ごとの日数の違い

2. 支払い習慣(ボーナス等)

3. 税金の納期、国の予算執行上の制約(年度末など)

4. 消費生活上の習慣(新年度、中元・歳暮、クリスマス、等々)、等

• 季節変動を含んだデータから経済動向をみると、評価、判断等を

誤るおそれ

3

(4)

季節変動を除いて時系列データを分析する方法

• 完全に周期的な変動であれば、その周期分の総和を取れば消えるはずである

—季節性は、「周期1年」の周期変動なので、1年分の和を取れば消せる

—1年(12か月、4四半期)の「移動平均」を取ることで、季節性は除去できる

• ただし、

1年分のデータの個数は通常偶数なので、以下のような処理をする:

• 移動平均による季節性の除去の弱点

1. 約半年先までの観測値が必要 → 一番知りたい足元のことはわからない

2. 完全に周期的ではない一部の季節変動は除去できない

—月ごとの営業日数の違い、週末の数、一部の祝祭日、等

(5)

移動平均による季節変動の除去:個人消費

(6)

季節調整法

• 上記のような欠点もカバーして、経済時系列データから季節変動を除去するため

のプログラムが多数開発されている

—時系列データから季節性を除去することを「季節調整」、その手法は「季節調整

法」と呼ばれる

—季節調整法を適用した系列(「季節調整済」系列)を公表している経済統計も多

• 主な「季節調整法」

① センサス局法

—移動平均法をベースに、アメリカの統計作成部署である「センサス局」が開

—現在、多くの統計で用いられているバージョンは「センサス局法X-12」

② DECOMP法

—日本の統計数理研究所が開発(移動平均とは異なる考え方に基づく方法)

③ TRAMO-SEATS法

—欧州で開発された手法(移動平均とは異なる考え方に基づく方法)

(7)

「原系列」と「季節調整済系列」:個人消費

(8)

(参考) 「季節調整の適用に当たっての統計基準」

1. 季節調整法を適用する場合の手法

季節調整法を適用する場合は、手法の適切性について国際的に一般的な評価を受けて

いる手法を継続的に使用する(

X-12-ARIMA等)。

2. 季節調整法の適用に関する公表事項

I. 季節調整法の適用に当たっては、次に掲げる季節調整法の運用に関する情報を、

季節調整値と併せてインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものと

する。

① 手法の名称

② 推計に使用するデータ期間

③ オプション等の設定内容及び設定理由

④ オプション等の見直しの頻度及び時期

⑤ 季節調整値の改定の頻度及び時期並びに改定の対象とするデータ期間

⑥ その他参考となるべき事項

II. 前記 I. の場合において、オプション等の設定内容について重大な変更があるときは、

変更の影響(例えば変更前に公表された季節調整値と変更後の季節調整値の差異)

を併せて公表するものとする。

3. 手法を変更した場合の公表事項

適用している手法を変更するときは、あらかじめ、変更内容、変更理由及び変更の影響

(例えば旧手法による季節調整値と新手法による季節調整値の差異)を、インターネット

の利用その他の適切な方法により公表するものとする。

(9)

トレンド(直線の当てはめ)と季節変動を除去した後

の個人消費の変動

(10)

季節調整の難しさ

・ 季節調整法とは、原系列の変動を、①トレンド+意味のある循環変動、②季節

変動、③各期ごとの不規則変動に分解し、季節変動を取り出す作業

⇒ ある期に、原系列に「大きな変動」が変動が観察された時、それが①、②(正

確に言えば、季節変動の変化)、③のいずれであるのかを、データのみから

識別することは、原理的には困難

⇒ 既存の季節調整手法を機械的に適用すると、実際には③である変動の一部

が。季節変動要因の変化と認識されて、季節調整に反映されてしまうため、

季節調整済のデータに歪みが生ずることがある

・ 季節調整手法には、こうした事態を回避するために、「異常値」を取り除く(一時

的なショックは季節要因に反映させない)オプションも用意されているが、そう

したオプションを適用すべきか否かの客観的な判断はやはり難しい

・ いわゆる「リーマンショック」後の輸出や生産の極端な変動が、以後の輸出や生

産、およびそれらの数字を反映する

GDP等の季節調整済データに大きな変化

を与え、その解釈や基調判断を難しくするという問題が、現実に発生している

(11)

経済時系列データの分析の実際の例(1):

GDP

── 内閣府「月例経済報告・主要経済指標」(平成27年5月)より

(12)

経済時系列データの分析の実際の例(2):個人消費

(13)

経済時系列データの分析の実際

• 景気の分析や判断等の場で行われる実際の経済時系列データ分析では、

「トレンド」(

T)、「循環変動」(C)、「季節変動」(S)、「不規則要因」(I)等の

概念は明示的には登場しない場合が多い

― 内閣府「月例経済報告」、日銀「金融経済月報」等を参照

• 代わりに、しばしば登場する概念

/分析道具:

前月比、前期比、前期比年率、前年同月比、前年同期比、等

・ 時系列の分解:

→ もしトレンドが直線ならば

→ 差を取ると

(トレンド部分は除去される)

13

(14)

前年同期比と前期比/前月比

① 暦年ないし年度のデータの場合:

前年比=(今年の値-昨年の値)/昨年の値

前年比

=(今年の値/昨年の値)-

1

(※通常は

100倍して%で表記)

② 四半期のデータの場合:

前期比=(今期の値/前期の値)-

1 (同)

前年同期比=(今期の値/昨年の同期の値)-

1 (同)

前期比年率=(

1+前期比)

4

1 (同)

③ 月次データの場合:

前月比=(今月の値/前月の値)-

1 (同)

前年同月比=(今月の値/昨年の同月の値)-

1 (同)

前月比年率=(

1+前月比)

12

1 (同)

(15)

個人消費(原計数)の前期比と前年同期比

15 民間最終消費支出 前期比(%) 前年同期比(%) 2005/ 1- 3. 71,634.80 4- 6. 71,126.60 7- 9. 73,402.90 10-12. 74,968.30 2006/ 1- 3. 73,080.70 -2.52 2.02 4- 6. 72,341.10 -1.01 1.71 7- 9. 73,298.20 1.32 -0.14 10-12. 75,624.10 3.17 0.87 2007/ 1- 3. 73,772.40 -2.45 0.95 4- 6. 72,994.40 -1.05 0.90 7- 9. 74,375.00 1.89 1.47 10-12. 75,921.60 2.08 0.39 2008/ 1- 3. 74,152.30 -2.33 0.51 4- 6. 72,115.90 -2.75 -1.20 7- 9. 73,751.10 2.27 -0.84 10-12. 74,293.50 0.74 -2.14 2009/ 1- 3. 71,285.30 -4.05 -3.87 4- 6. 71,599.90 0.44 -0.72 7- 9. 73,522.70 2.69 -0.31 10-12. 75,933.90 3.28 2.21 2010/ 1- 3. 73,976.20 -2.58 3.77 4- 6. 73,092.80 -1.19 2.09 7- 9. 76,130.70 4.16 3.55 10-12. 77,235.80 1.45 1.71 2011/ 1- 3. 73,264.70 -5.14 -0.96 4- 6. 73,287.30 0.03 0.27 7- 9. 76,444.00 4.31 0.41 10-12. 78,223.00 2.33 1.28 2012/ 1- 3. 75,956.00 -2.90 3.67 4- 6. 75,500.60 -0.60 3.02 7- 9. 77,097.30 2.11 0.85 10-12. 78,741.00 2.13 0.66 2013/ 1- 3. 77,110.40 -2.07 1.52 4- 6. 76,878.60 -0.30 1.83 7- 9. 78,921.60 2.66 2.37 10-12. 80,588.00 2.11 2.35 2014/ 1- 3. 79,840.70 -0.93 3.54

(16)

季節変動と前期(月)比、前年同期(月)比

季節変動を含んだ経済時系列データから、「前期(月)比」や「前期(月)比年率」を求

めると、実際の経済動向を見誤るおそれが大きい

── 個人消費の前期比は、毎年1-3月期に大幅なマイナスとなっているが、これは、

1-3月期に景気が落ち込んだことを示すものではない!!

・ 季節変動への対処法:

① 「季節調整済」の統計データを用いて、前期比を求める

② 「前年同期(月)比」をみる

⇒ 欠点は、判断が遅れること(足もとの変化が判らない)

── 「季節調整済」計数が公表されていない統計では、自分で季節調整を行うか、そ

れが困難な場合は「前年同期(月)比」を用いる

── 「季節調整済」計数が「信じられない」等の理由で、敢えて原計数の前年同期

(月)比を用いているケースも、時折みられる・・・

(17)

個人消費(季節調整済計数)の前期比と前年同期比

17 民間最終消費支出(季調済)前期比(%) 前年同期比(%) 2005/ 1- 3. 72131 4- 6. 72614.85 7- 9. 73084.025 10-12. 73359.075 2006/ 1- 3. 73519.775 0.22 1.93 4- 6. 73755.05 0.32 1.57 7- 9. 73063.175 -0.94 -0.03 10-12. 73978.15 1.25 0.84 2007/ 1- 3. 74249.125 0.37 0.99 4- 6. 74427.425 0.24 0.91 7- 9. 74110 -0.43 1.43 10-12. 74215.85 0.14 0.32 2008/ 1- 3. 74687.225 0.64 0.59 4- 6. 73620.85 -1.43 -1.08 7- 9. 73452.325 -0.23 -0.89 10-12. 72543.85 -1.24 -2.25 2009/ 1- 3. 71919.775 -0.86 -3.71 4- 6. 73086.375 1.62 -0.73 7- 9. 73090.475 0.01 -0.49 10-12. 74129.775 1.42 2.19 2010/ 1- 3. 74658.95 0.71 3.81 4- 6. 74632.75 -0.04 2.12 7- 9. 75650.3 1.36 3.50 10-12. 75380.975 -0.36 1.69 2011/ 1- 3. 74035.525 -1.78 -0.84 4- 6. 74761.425 0.98 0.17 7- 9. 75958.8 1.60 0.41 10-12. 76418.9 0.61 1.38 2012/ 1- 3. 76708.775 0.38 3.61 4- 6. 77014.725 0.40 3.01 7- 9. 76650.7 -0.47 0.91 10-12. 77001.575 0.46 0.76 2013/ 1- 3. 77797.95 1.03 1.42 4- 6. 78356.2 0.72 1.74 7- 9. 78526.25 0.22 2.45 10-12. 78825.65 0.38 2.37 2014/ 1- 3. 80448.95 2.06 3.41

(18)
(19)

(参考) 前年比と前期比の使い分け (

GDPの例)

・ 前年比:

① 比較的滑らか(振れが

小さい)

② 計算方法による恣意性、

多様性がない

③ 足許の変化はわかりに

くい(変化に遅れる傾

向)

④ 前年の数字の影響を

受ける(いわゆる「前年

の裏」)

・前期比:

① 足もとの変化を反映

② 振れが大きい(∵毎期

の誤差、特殊要因等)

③ 「季節調整の難しさ」に

起因するノイズ

19

(20)

QUIZ(第10回講義関連)

GDP統計の民間最終消費支出(個人消費)の分析を行おうとしている。以

下の分析方法は、どの程度適切といえるか、それぞれ理由を付して述べよ。

① 最も変動が大きく、消費動向に関して様々な具体的分析ができそうな

ので、原計数の「前期比」を用いて分析することにした。

1-3月期は例年消費が減少するなど、周期的な変動がありそうなので、

「前年同期比」を用いて分析することにした。

1-3月期は例年消費が減少するなど、周期的な変動がありそうなので、

「季節調整済前期比」を用いることにした。

④ 前年同期比、前期比それぞれに長短があるので、「前年同期比」と「季

節調整済前期比」の数字を比べながら分析することにした。

⑤ 既製の季節調整済データは信頼できないので、「原計数前期比」の

データの移動平均を取って、自分で季節変動を均して用いることにした。

(21)

前年同期比や前期比の要因分析:「寄与度分解」

・ 「寄与度分解」の考え方: 幾つかの項目の合計値である経済指標が、そのうちどの要因に

よって増減したかを分析(要因分解)する

・ 仮設例:

今月の生活費:

25,000円

先月の生活費:

20,000円

うち

食費:

14,000円

うち

食費:

10,000円

光熱費:

8,000円

光熱費:

5,000円

教養娯楽費:

3,000円

教養娯楽費:

5,000円

・ 生活費合計の増加

=(25000/20000)×100-100=25%

食費の増加:

40%、光熱費の増加:60%、教養娯楽費の増加:-40%(減少)

・ 生活費の増加要因の分析

生活費の増加分(

5,000円)=食費の増加分(4,000円)+光熱費の増加分(3,000円)

+教養娯楽費の増加分(-2,000円)

⇒ これを、先月の生活費

20,000円で割ると:

生活費の増加率(

25%)=食費の寄与度(20%)+光熱費の寄与度(15%)

+教養娯楽費の寄与度(-10%)

── 生活費の増加は、食費の増加が主因であることがわかる

21

(22)

GDP成長率の寄与度分解

→ どの要因(支出項目/需要項目)によってYの成長率が実現したか

→ 景気を主導しているのは何か

・ 仮設例

と単純化

2012年 Y=500 C=300 I=100 CG=100 (兆円)

2013年 Y=550 C=330 I=130 CG=90 (兆円)

→2013年のGDP成長率 (550/500)*100-100=10%

個人消費

Cの成長率

(330/300)*100-100=10%

設備投資

Iの成長率

(130/100)*100-100=30%

政府消費

CGの成長率 (90/100)*100-100=-10%

→GDPの増加(50兆円)=個人消費の増加(30兆円)+設備投資の増加(30兆円)

+ 政府消費の増加(

-10兆円)

GDP成長率(10%)=Cの寄与度(6%)+Iの寄与度(6%)+CGの寄与度(-2%)

(23)

GDP成長率の寄与度分解(QE公表資料)

(24)

参照

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