Green
多項式の1のベキ根における挙動と対称群の次数加群
森田英章 小山工業高等専門学校 e-mail:[email protected] 概 要 Hall-Littlewood 多項式や Macdonald 多項式のパラメーターに, 1 のベキ根を代入した場合の 挙動について紹介する. それをもとにして(1変数および2変数の) Green 多項式の 1 のベキ根 での再帰的な関係式を紹介する. また, その関係式を表現論の言葉で捉え直すと, ある次数加群の 組合せ論的な性質が, 誘導表現を用いて理解されることに触れる. 話はすべて対称群に対して行わ れる.1
概要
Green多項式は 1955年に出版された Greenの論文 [Gr] で導入された多項式で,有限一般線形群 GLn(Fq) の既約指標の決定に用いられた. これらはサイズを同じくする分割二つでパラメトライズ された整数係数の1変数多項式である. 今回の講演では, このGreen 多項式の変数に 1 のベキ根を 代入した場合に生じる再帰的な関係式を紹介し,その表現論的・組合せ論的な意味付けを解説したい. 同時に, 2変数の Green多項式に対しても,全く同様な再帰的な関係式が成立することを紹介し,そ の表現論的・組合せ論的な意味付けと合わせて, それを支えるMacdonald 多項式の「分解公式」と 「plethystic 公式」についても解説を加える予定である. なお本講演は,中島達洋氏(明海大学)との 共同研究,および J.-Y. Thibon, F. Descouens (Univ. de Marne-la-Vall´ee)との共同研究に基づく内 容を含む. Green 多項式の1のベキ根での挙動に関する最初の記述は, Morris-Sultana [MS]のなかに見える. 彼らは「長方形」とよばれる分割に対するGreen多項式を考え,その変数に分割の深さと等しい位数 をもつ1 のベキ根を代入した場合に,それが満たすべき式を予想している. このMorris-Sultanaの予 想は,のちにLascoux-Leclerc-Thibon [LLT2]によって解決された. その際,彼らの議論の基盤となっ たのが, modified Hall-Littlewood多項式のパラメーターに 1 のベキ根を代入した際に現れる「分解 公式」と「plethystic 公式」である [LLT1]. Green多項式に関する LLTの結果は,長方形に対してのみ得られたものであるが,その議論の基盤 となっている分解公式と plethystic 公式は, 一般の分割に対して得られている. とすれば,一般の分 割に対してもGreen 多項式の 1 のベキ根での挙動を調べることが出来るのではないか,と想像する のは自然なことと思う. そして [Mt2] では一般の分割に対してGreen 多項式のベキ根での挙動の記 述が得られており,それは分割から定まる組合せ論的な量を係数とする漸化式として表される. また, Green 多項式が Springer 加群の次数指標であることを考えれば, Springer 加群を用いてこの漸化式 の意味を問いたくなる. それは,考えている分割に応じたある範囲に属する正整数l をとると, lを法 として互いに合同な次数をもつ Springer加群の斉次空間の直和の次元がすべて一致することとして 解釈される. 関連する話題としては[BLM, KW, MN1, MN2, Mt1, RSW, Sh, Sp1, St]が挙げられる.さて, [Mt2]では一般の分割に対して Green 多項式のベキ根での挙動を,表現論的意味付けを込め て理解したのであるが, その基盤となっているのは依然LLT によるmodified Hall-Littlewood 多項
式の理論である. この枠組みを一歩踏み出す試みとして, Macdonald 多項式のベキ根での挙動を調 べるのは自然なことであろう. よく知られているように, Macdonald 多項式は二つのパラメター q, t をもつ対称関数で, q = 0 のとき Hall-Littlewood 多項式となる. そしてある種のmodificationとベ キ和関数との通常内積をとると2変数の Green 多項式とよぶべきものが得られる. ここではその二 つの変数の一方にベキ根を代入することを考えよう. これは (modified) Macdonald 多項式の一方の パラメーターにベキ根を代入することに相当する. 期待するのは Hall-Littlewood の場合と同様な分 解公式と plethystic 公式が成立することであるが,その期待通りの結果が成立していることがJ.-Y. Thibon, F. Descouensおよび筆者の共同研究で明らかになった. これに関してはまだ正式な論文は準 備中であるが, 2006 年のFPSACのアブストラクト [DM]にその概要が記されている. 上で得られた分解公式とplethystic公式を2変数のGreen多項式に用いると,1変数の場合と同様な 再帰的な関係式が得られるはずであり,同時にその表現論的な解釈にも興味が持たれる. 2変数のGreen 多項式を次数指標にもつ対称群の加群は, Garsia-Haiman 加群である. これは, Macdonaldの正値予 想の解決のため, Garsiaと Haimanによって導入された対称群の2重次数付き加群 Dµ= ⊕ r,sD r,s µ (µは分割) で,各斉次空間 Dµr,s における既約加群の重複度が, Kostka-Macdonald係数K˜λµ(q, t)の qstr の係数を与えている. また, 斉次空間 Dr,0µ すべての直和をとると, µ に付随する Springer 加群 Rµ が現れるので, Garsia-Haiman 加群は Springer 加群の一般化とも思える. ここで我々は, Dµ の 次数を1重化した部分加群Dµr,∗ =⊕sDr,sµ を考える. すると, 我々の2変数Green 多項式のベキ根 における再帰的な関係式は,これらDr,sµ の次元の一致,およびその表現論的解釈を与えることが予想 される. これは最近, µが hookの場合に正しいことが示された[Mt3]. 以下の節では,ここでの話の流れに沿いつつ,若干の解説を施していく予定である.
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Green
多項式と
Springer
加群
nは正整数とし, µ, ρ はnの分割とする. 今後,正整数 nの分割を表すのに,通例どおりµ` nと いう記号を用いることにする. このとき, Green多項式はサイズが等しい二つ分割でパラメトライズ される整数係数の多項式 Xρµ(t)で, Hall-Littlewood多項式Qµ(x; t) ベキ和関数pρ(x)で展開した際 の係数 Qµ(x; t) = ∑ ρ`n zρ(t)−1Xρµ(t)pρ(x) (2.1) として定義される次数が n(µ) のmonic多項式である1. ただし,分割 µ = (µ1, µ2, . . . , µd) に対して n(µ) =∑di=1(i− 1)µi とおいている. また, ˜ Xρµ(t) = tn(µ)Xρµ(t−1) とおき,こちらもあわせてGreen 多項式とよぶことにする.Green多項式はSpringer加群[Sp2, Sp3]の次数指標を与える. 分割µ` nに対して, Jordan blocks
のサイズがµ で与えらえるupper uni-triangular な行列A を考え, n次元線形空間Cn の旗多様体 Xn のA の作用に関する固定点全体を Xµ で表す. このとき, Xµ は代数多様体の構造をもち,その
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Greenが導入した文脈[Gr]では, tは考えている有限体Fq の元の個数qを表していたが,ここではそれを忘れて単
cohomology 環H∗(Xµ) にはn 次対称群 Sn が自然に作用し,対称群 Sn の次数加群になる. Xµ の cohomology環は奇数次パートが 0なので,次数を圧縮したものを Rµ= ⊕ d Rdµ, Rdµ= H2d(Xµ) とおき,これを Springer加群とよぶことにする. Rµ の最高次数は n(µ) で与えられることに注意す る. さて,一般にSn-加群 M に対して,その指標をcharM で表しことにする. そして不定元tに対し chartRµ:= n(µ)∑ d=0 tdcharRdµ
をSpringer加群 Rµ の次数指標をよぶことにする. すると, cycle type ρ をもつ Snの共役類 c上で
の値は, Green多項式 X˜ρµ(t)と一致することが示される[HS]: ˜ Xρµ(t) = chartRµ(ρ) = ∑ d tdcharRdµ(ρ). ただし, charRdµ(ρ) は指標charRdµ のc 上での値を表す.
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対称関数の
modification
と
Green
多項式
Λ はx = (x1, x2, . . . , xi, . . .)を変数とする対称関数環とする. Λは次数付きZ-代数で,その斉次空 間分解を Λ = ⊕nΛn としておく. 以下では Λ の係数を適宜拡大して考える. その際, ΛQ, Λt, Λq,t は,係数をそれぞれ有理数体 Q,有理関数体Q(t), Q(q, t)に拡大したものを表すとする(q, t は不定 元). さて,対称関数環ΛQ はベキ和関数p1(x), p2(x), . . . , pi(x), . . .により生成されているので[M, I, (2.12)], f ∈ ΛQ に対して Q-係数多項式F (x1, x2, . . .) でf (x) = F (p1(x), p2(x), . . . , pi(x), . . .)を満 たすものがとれる. このとき, f ( x 1− t ) := F ( p1(x) 1− t, p2(x) 1− t2, . . . , pi(x) 1− ti, . . . ) とおき, 以下これを f (x)˜ で表す2 . 変数のレベルで考えれば, この変換は変数 x = (xi|i ≥ 1) を (xitj|i ≥ 1, j ≥ 0) に置き換えることを意味している. {pi(x)} も{pi(x)/1− ti}も共に代数独立であ るから,この変換f 7→ f(x/(1 − t)) は対称関数環(係数は適宜拡大)自己同形を与えており,その逆 変換は f ((1− t)x) := F ((1 − t)p1(x), (1− t2)p2(x), . . . , (1− ti)pi(x), . . .) であることは明らかであろう. ここで,対称関数の直交性について簡単に復習しておきたい. まず,分割λ = (imi) = (1m12m2· · · nmn) に対して, zλ = 1m1m1!2m2m2!· · · nmnmn!と定義する. また,不定元t に対して zλ(t) = zλ l(λ) ∏ i=1 1 1− tλi (3.1) 2 係数を拡大している場合でも, ˜f (x)は同様に定義できることに注意する.とおく. 対称関数環Λ は次で定義される内積をもつ: hpλ(x), pµ(x)i = δλzλ, λ, µ :分割. ただし, δλµ はKronecker のデルタを表す. これをΛ の通常内積という. また, Λt に hpλ(x), pµ(x)it= δλzλ(t), λ, µ :分割. で内積を定義する. 次が知られている. 命題 1 ([M, I, 4]) x = (x1, x2, . . .), y = (y1, y2, . . .) は変数とする. {uλ}λ`n, {vλ}λ`n はともにΛn の基底とするとき,次は同値である: 1.huλ, vµi = δλµ, 2.∑ λ`n uλ(x)vλ(y) = ∏ i,j 1 1− xiyj . 命題 2 ([M, III]) {uλ}λ`n, {vλ}λ`n はともに Λnt の基底とするとき, 次は同値である: 1. huλ, vµit= δλµ, 2. ∑ λ`n uλ(x)vλ(y) = ∏ i,j 1− txiyj 1− xiyj . 以下, Π(x, y) =∏ i,j 1 1− xiyj , Π(x, y; t) :=∏ i,j 1− txiyj 1− xiyj とおく. このとき Π ( x, 1 1− ty; q, t ) = Π(x, y) (3.2) となることが直接計算で得られる. さて, Hall-Littlewood多項式Pλ(x; t) はΛt の斉次直交基底であ る. そこで, Qλ(x; t) =hPλ(x; t), Pλ(x; t)i−1t Pλ(x; t) とおけば,あきらかにhPλ(x; t), Qλ(x; t)it = δλµ が成り立つ. これと (3.2) を合わせると次の命題が 得られる: 命題 3 hPλ(x; t), ˜Qµ(x; t)i = δλµ. また (2.1)より 命題 4 λ` n, ρ ` n に対して, Xρµ(t) =h ˜Qµ(x; t), pρ(x)i.
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modified Hall-Littlewood
多項式のベキ根での挙動
この節では, modified Hall-Littlewood多項式 Qµ(x; t)˜ が,パラメーター tに適当な1 のベキ根を 代入したときに示す振る舞いに関するLascoux-Leclerc-Thibon の公式を紹介する. l は正整数とし, 分割 µ = (imi)` n は少なくとも一つのiに対して m i ≥ l を満たすとする. この とき, µ の Young 図形Yµ は長方形 (il) を含んでいることに注意し, µ\ (il) でYµ から(il) を取り 去ったものを Young 図形にもつ分割を表す. このとき次が成立する[LLT1].命題 5 (Lascoux-Leclerc-Thibon) ζ を 1 の原始 l 乗根とすると 1. ˜Qµ(x; ζ) = ˜Q(il)(x; ζ) ˜Qµ\(il)(x; ζ), 2. ˜Q(il)(x; ζ) = (−1)(i−1)l(pl◦ hi)(x). ここで, (pl◦ hr)(x) はベキ和関数pl(x) による完全対称関数 hi(x) の plethysm [M, I, 8] を表す. 特にこの場合は[M, I, (2.14’)] と[M, I, (8.4)] より ˜ Q(il)(x; ζ) = (−1)(i−1)l ∑ λ`i zλ−1plλ(x) が従うことに注意しておく. 以下では, 1 のタイプの公式を分解公式, 2 のタイプの公式をplethystic 公式とよぶ. では,これらの公式を命題4を用いてGreen多項式の言葉に翻訳することを考えてみよう. µの各 成分i の重複度mi = mi(µ)を, mi= qil + ri, 0≤ ri ≤ l − 1と表しておく. このとき, µ(l) = (iqil), ˆ µ = (iri) とおく. どちらも µの部分分割である. 分割 ρとその部分分割 ν に対して, ( ρ ν ) =∏ i≥1 ( mi(ρ) mi(ν) ) とおく. また,分割 ρ とlの約数 p に対し C(ρ, µ; p, l) = ∑ λ`µ(l)1/p pλ=ρ mλ とおく. ここで, µ(l)1/p はµ(l)の重複度をp で割ってえられる分割, λは「分割µ(l)の分割」, m λ は分割の分割に対して定義される組合せ論的な量である. これらの定義の詳細は[Mt2]をご参照いた だきたい. 定理 6 ([Mt2, Theorem 4]) ζ は 1 の原始 l 乗根, j は 1≤ j ≤ l − 1を満たす整数とする. ζj の 位数が p のとき 1. ˜Xρµ(ζj)6= 0 =⇒ ρ = pρ ∪ ˆρ, ρ ` µ(l)1/p, ˆρ` r. 2. ˜Xρµ(ζj) =∑ ν`r ν⊂ρ ( ρ ν ) C(ν, ρ; p, l)pl(ρ\ν)X˜νµˆ(ζj). つまり,変数t にベキ根ζj を代入した際の台ρ の形と,その台上での漸化式が完全に決定される. ただし,考えているベキ根はµ のもとに制限があることに注意しておく.
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Springer
加群の「次元の一致」
以下では定理6をSpringer加群の言葉に翻訳することを考える. 分割µ` nに対するSpringer加 群をRµで表した. また, µ(l), ˆµは前節と同じものを表し, r = ∑ i≥1iri とおくと, ˆµのサイズはr で あることに注意する. まず,次に注意する. 分割 µ` n に対して, Mµ はその成分の重複度の最大値を表す.定理 7 ([Mt1, Proposition 5]) 各分割 ρ = (1r12r2· · · nrn)` n に対して整数係数の多項式 Gµ ρ(t) が存在し ˜ Xρµ(t) = (1− t)(1 − t 2)· · · (1 − tMµ) (1− t)r1(1− t2)r2· · · (1 − tn)rnG µ ρ(t) が成立する. 従って, Rµ のHilbert多項式hRµ(t) = ˜X µ (1n)(t)は, [1]t, [2]t, . . . , [Mµ]t を因子にもつことに注意す る. ただしここで, [n]t= 1− tn 1− t とおいている 3. さて,正整数 l および非負整数k = 0, 1, . . . , l− 1に対して Rµ(k; l) = ⊕ d≡k mod l Rdµ と定義する. Rµ のHilbert多項式が[l]t を因子にもつことと, Rµ(k; l) の次元がk によらず一定にな ることは同値である([MN1, Lemma 3] 参照). 従って次を得る. 系 8 正整数 l はl≤ Mµ を満たすとする. このとき, Rµ(k; l) の次元は k によらず一定である4. この性質をRµ のlを法とする次元の一致とよぶことにする. 前節定理6は,このSpringer 加群の 次元の一致を,誘導表現をもちいて説明している式であると解釈できるので,以下ではそれを説明し たい. 分割 µの Young 図形のハコに 1 からnまでの数字を一つずつ書き込んだ tableau を考える. こ れをshapeがµのYoung tableauとよぶことにする. 定義から明らかであるが, µ(l)のYoung 図形 は深さが l の倍数の長方形を組み合わせて得られている. そこで,これらの長方形を深さが l の長方 形に分割していき,それら一つ一つに位数がlの巡回置換(の積)を対応させる. 詳しい定義は[Mt2] を参照していただくとして,ここでは簡単に例で説明するにとどめる. 例えば, l = 3 として, µ(l) の Young 図形のなかに 2 5 9 1 7 4 と書き込まれた部分が出てきたとする. このとき,この数字が書き込まれた長方形に対して ( 2 5 9 1 7 4 9 1 7 4 2 5 ) = (2, 9, 7)(5, 1, 4)
で定義される位数 3 の巡回置換(の積)を対応させる. 我々はまず shape µのYoung tableau に対 して, そのµ(l) に制限した部分を考え, これを上で述べたように深さが l の長方形に分割した上で, その一つ一つに例で説明したように位数がl の巡回置換(の積)を対応させ,さらにそれらの全ての 積を考える. このようにして得られる位数lの巡回置換の積を a = aµ(l) で表すことにする. このとき, Rµ および IndSSnµ(l)×SrRµˆ に対するCl=haiの作用を次のように定める: 3これでは一見分母にあまりがでそうであるが ,それらは多項式Gに吸収される. 4 この評価がbest possibleかはまだ分かっていない.
a.x = ζdx, x∈ Rdµ,
a.(σ⊗ x) = σa−1⊗ a.x, σ ∈ Sn/Sµ(l)× Sr, x∈ Rµˆ.
ただし, Sµ(l) はRµˆ には自明に作用させる. また, IndSSnµ(l)×SrRµˆ = ⊕ σ∈Sn/Sµ(l)×Srσ⊗ Rµˆ に注意. 定理6は次の Sn× Cl-同形と同値である. 定理 9 Rµ∼=Sn×Cl Ind Sn Sµ(l)×SrRµˆ. この Sn× Cl-同形において, a の作用の固有空間分解を考えると,以下のように「次元の一致」が
でる. shape がµ のYoung tableau T を一つ固定する. このとき, µ(l) に対応する部分 T|µ(l) から,
上に述べた手続きで巡回置換の積 a = aµ(l)をつくり, aの巡回域に含まれない r 個の文字に関する 対称群を Sr で表す. また, Sµ(l) はT|µ(l) から定まるYoung 部分群 をあらわす. すなわちT|µ(l) の 各行に対して,その行に含まれる文字以外を固定する置換全体のなすSnの部分群を考え,それらの直 積をとったものを Sµ(l) とおく. ここで, Sn の部分群 Wµ(l)を Wµ(l) := (Sµ(l)o hai) × Sr により定義する. また,各整数j = 0, 1, . . . , l− 1に対して, ϕ(j)l はCl=hai の既約表現a7→ ζj を表すとする. ただ し, ζ は 1の原始 l 乗根. このとき, l 個のWµ(l)-加群 Zµ(k; l) := ⊕ d ϕ(kl −d)⊗ Rdµˆ, k = 0, 1, . . . , l− 1 を考えると,これらの次元は全て dim Rµˆ に等しいことに注意する. 定理 10 l は1≤ l ≤ Mµ を満たす整数とする. このとき: Rµ(k; l) ∼=Sn Ind Sn Wµ(l)Zµ(k; l), k = 0, 1, . . . , l− 1. すなわち, Rµ(k; l) の次元は k に依存しない. 次元の一致に関連する文献をいくつか挙げておく. 次元の一致は[KW]が初出. ここではA, B, D 型Weyl群の余不変式環の次元の一致を扱っている. ただし,法をとる数は Coxeter数に限定されて いる. ただ,話の力点は自由Lie環でのWeyl群の表現におかれており,次元の一致が主題とはなって いない. そしてこの結果は,すでに[Sp1] で暗示されていた. ここでの結果を利用すると,有限実鏡映 群の余不変式環は,「正則数」を法として次元が一致することがわかる5. 一般に,有限鏡映群の余不 変式環は,その基本次数を法とすれば次元が一致することが示される. [MN1] では対称群の場合に一 般の基本次数を法とする次元の一致を誘導表現を用いて説明している. これは [BLM] で有限複素鏡 映群の余不変式環に対して拡張されている. Lascoux-Leclerc-Thibon の公式[LLT1] の表現論的意味 については[MN2]. ここでは「l-分割」という特別な分割に対する対称群のSpringer表現の次元の一 致を論じている. hook とrectangle に付随する対称群の Springer 加群に関しては[Mt1]. 対称群の
Springer 加群に対する一般的解決は[Mt2]. Springer加群の次元の一致に関する最終形は [Sh].
5
6
Macdonald
多項式の
modification
この節の結果は, F. Descouens, J.-Y. Thibonとの共同研究に基づく. 論文は準備中であるが,基本 的な部分の解説は [DM]に掲載されている. Hall-Littlewood多項式 Pλ(x; t) の2パラメーター版が Macdonald多項式 Pλ(x; q, t) である. 詳しい情報は [M, VI] または [M1] に譲るとして,ここでは必 要な部分のみを要約しておきたい. まず, Macdonald 多項式全体 {Pλ(x; q, t)|λ :分割} は, 対称関数環 Λq,t の斉次直交基底をあたえ ることを確認しておく. ただし,その際の内積は hpλ(x), pµ(x)iq,t = δλzλ(q, t), λ, µ :分割. で定義される. ただし, zλ(q, t) = zλ l(λ) ∏ i=1 1− qλi 1− tλi である. 次を思い出す [M, VI, (2.7)]. 命題 11 {uλ}λ`n, {vλ}λ`n はともに Λnq,t の基底とするとき, 次は同値である: 1. huλ, vµiq,t= δλµ, 2. ∑ λ`n uλ(x)vλ(y) = ∏ i,j (txiyj; q)∞ (xiyj; q)∞ ,ただし(a; q)∞= ∞ ∏ r=0 (1− aqr). 以下では∏ i,j (txiyj; q)∞ (xiyj; q)∞ をΠ(x, y; q, t)で表す. さて,多項式 Pλ(x; q, t) はΛq,t の斉次直交基底で ある. そこで, Qλ(x; q, t) =hPλ(x; q, t), Pλ(x; q, t)i−1q,tPλ(x; q, t) とおけば,あきらかにhPλ(x; q, t), Qλ(x; q, t)iq,t= δλµ が成り立つ. 従って, ∑ λ Pλ(x; q, t)Qλ(y; q, t) = Π(x, y; q, t) となるが,ここで変数変換y7→ 1− q 1− tyをほどこすとΠ ( x,1− q 1− ty; q, t ) = Π(x, y)となることが直接 計算で得られる. 従って次が従う: f (x)∈ Λq,t に対して, f0(x) = f ( 1− q 1− tx ) とおく. 命題 12 hPλ(x; q, t), Q0µ(x; q, t)i = δλµ. ζ は 1 の原始 l 乗根とする. このとき, 命題8とP(rl)(1, ζ, ζ2, . . . , ζl−1; q, ζ) = ζn(λ) を用いると, 次の plethystic公式が得られる. 定理 13 Q0(rl)(x; q, ζ) = (−1)(r−1)l(pl◦ hr)(x).
また, C-linear map
fr: Λq,t −→ Λq,t : Qµ0(x; q, ζ)7−→ Q0µ∪(rl)(x; q, ζ)
がΛq,t-linearであることが, Pieri formulaのベキ根での挙動を調べることにより示すことができる.
このことから,次の分解公式が従う.
定理 14 mr(µ)≥ l を満たす r が少なくとも一つ存在するとき
Q0µ(x; q, ζ) = Q0(rl)(x; q, ζ)Q0µ\(rl)(x; q, ζ).
以上のように, modified Macdonald多項式Q0µ(x; q, t)に対して, plethystic公式と分解公式を得る.
以下ではその他の様々な modificationの分解公式と plethystic 公式を考えたい. 考えるのは次の3 種類: ˜ Qµ(x; q, t) = Qµ ( x 1− t; q, t ) = Q0µ ( x 1− q; q, t ) , ˜ Jµ(x; q, t) = Jµ ( x 1− t; q, t ) , ˜ Hµ(x; q, t) = tn(µ)J˜µ(x; q, t−1). 命題 15 l を正整数とし, µ = (imi) は分割とする. ただし m r≥ l とする. このとき次が従う: 1. ˜Qµ, ˜Jµ, ˜Hµそれぞれに対し定理13と同じ分解公式が成り立つ. 2. ˜Q(rl)(x; q, ζ) = (−1)(r−1)l(pl◦ hr) ( x 1− q ) , 3. ˜J(rl)(x; q, ζ) = (−1)r(l−1) { r ∏ i=1 (1− qil) } (pl◦ hr) ( x 1− q ) , 4. ˜H(rl)(x; q, ζ) = { r ∏ i=1 (1− qil) } (pl◦ hr) ( x 1− q ) . 証明に関して少々コメントしておく. ˜Q に関しては変数変換 x7→ x/(1 − q)はΛq,t の自己同形を 与えることから, ˜J に関してはその Pieri formulaの冪根での挙動を直接みることから,また H˜ に関 してはこれも変数変換が対称関数環の自己同形であることから,それぞれの分解公式が Q0 と全く同 様の形で成立する. plethystic公式に関しては, これも変数変換が対称関数環の自己同形であること や,補正項の冪根での細かい挙動を調べる事により従う.
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2変数の
Green
多項式と
1
のベキ根
2変数のGreen多項式Xρµ(q, t)はMacdonaldの本[M, VI, 8]に登場する. そこではintegral form
Jµ(x; q, t) を冪和関数で展開したときの展開係数を補正したものとして定義されている:
Jµ(x; q, t) =
∑
ρ
この定義式に変数変換 x7→ x/1 − t を施すことにより次を示す事が出来る: Xρµ(q, t) =h ˜Jµ(x; q, t), pρ(x)i. ここでの内積は通常内積であることに注意する. また, ˜Xρµ(q, t) := tn(µ)Xρµ(q, t−1) とおけば, ˜ Xρµ(q, t) =h ˜Hµ(x; q, t), pρ(x)i (7.1) がすぐに従う. この X˜ρµ(q, t)もあわせて2変数の Green多項式とよぶことにする. Green多項式X˜ρµ(q, t)は, Garsia-Haiman加群Dµ[GH]の次数指標を与えることが知られている. いま分割ρ に対して charq,tDµ(ρ) := ∑ r,s qstrcharDµr,s(ρ) とおき,これをGarsia-Haiman 加群 Dµ の次数指標とよぶ. ただし, charDµr,s(ρ) はSn-加群 Dµr,s の 指標の cycle type ρをもつ共役類上での値である. すると ˜ Xρµ(q, t) = charq,tDµ(ρ) が従う [H2]. さて, µ = (h, 1m) を hook とすると, h > 1 を仮定すれば6, Mµ = m である. m = pl + k, 0≤ k ≤ l − 1, としたとき, r = h + k とおく. このとき, (7.1)を通じて,命題 15 をX˜ρµ(q, t)上に翻 訳すると次のようになる. 定理 16 l は 1 ≤ l ≤ Mµ を満たす整数, ζ を1 の原始 l 乗根とする. また, 整数 j, 1≤ j ≤ l − 1, に対して ζj の位数を p とする. このとき次が成立する: 1. ˜Xρµ(q, ζl)6= 0 =⇒ ρ = (pe)∪ ν, ν ` r, 2. 1のρに対してX˜ρµ(q, ζj) = pee! ( e + mp(ν) e ) ˜ Xνµˆ(q, ζj). この定理16は, Garsia-Haiman加群Dµに関するある事実と同値である. µはhook (h, 1m)とし, l, r, ˆµ, ζ は上と同様とする. 巡回置換 a = (1, 2, . . . , l) に対し a.x = ζrx, x∈ Dµr,s および
a.(σ⊗ x) = σa−1⊗ a.x, σ ∈ Sn/Sr, x∈ Dµˆ,
により, Cl=hai の Dµ およびIndSSnrDµˆ = ⊕ σ∈Sn/Srσ⊗ Dµˆ への作用を定める. これらの作用は両 者に対する Snの自然な作用と可換である. このとき次が成立する. 定理 17 Dµ∼=Sn×ClInd Sn SrDµˆ. 6 h = 1の場合はDµは余不変式環に一致しており,1変数の場合におちる.
この Sn× Cl-同形において, aの作用の固有空間分解を考えると次が従う. k = 0, 1, . . . , l− 1に対 して D∗,sµ (k; l) = ⊕ d≡k mod l Dr,sµ とおく. また, Sn の部分群 Wµ(l) = Cl× Sr を考える. そして l個の Wµ(l)-加群 Zµ∗,s(k; l) を Zµ∗,s(k; l) := ⊕ r≡k mod l ϕ(kl −r)⊗ Dr,sµˆ , k = 0, 1, . . . , l− 1 で定義する. ただし, ϕ(j)l はClの既約表現a7→ ζj であったことを思い出す. 従って, (s固定の下に) Zµ∗,s(k; l) の次元は全て dim Dµˆ に等しいことに注意する. 系 18 k = 0, 1, . . . , l− 1 に対して Dµ(k; l) = IndSWnµ(l)Zµ∗,s(k; l). よって, D∗,sµ (k; l) の次元は k によらず一定である7. Kostka-Macdonald係数 Kλµ(q, t)の性質Kλµ(q, t) = Kλµ0(t, q) [H1, Proposition 2.5]より次も成 立する. ただし l0 は1≤ l0 ≤ Mµ0 を満たす整数,また Dr,µ∗(k0, l0) := ⊕ s≡k0 mod l0 Dr,sµ , 0≤ k0 ≤ l0− 1 とおいている. 系 19 次元が互いに相等しい l0 個の Wµ0(l0)-加群 Zµr,0∗(k0; l0) が存在し, Sn-加群の同形 Dr,µ∗(k0; l0) ∼=Sn Ind Sn Wµ0(l0)Z r,∗ µ0 (k0, l0) が0≤ k0 ≤ l0− 1 に対して成立する. 従って, Dµr,∗(k0, l0) の次元は k0 によらない. 以上のことからDµ のHilbert 多項式hDµ(q, t) = ∑ r,sqstrdim D r,s µ (= ˜X(1µn)(q, t)) のある種の因 子が決定できる. ([MN1, Lemma 3] 参照) 系 20 hook µ = (h, 1m) に対して非負整形数の多項式 Gµ(q, t) が存在し, hDµ(q, t) = [1]t[2]t· · · [Mµ]t[1]q[2]q· · · [Mµ0]qG µ(q, t). 7 sには依存する.
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