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1998. 地価の推計手法 kriging Cressie, 1993 kriging kriging 9kriging Kriging kriging 1 z = Xβ+ ε ε~ N(, C ) 1 z N 1X N K ε N 1 N 1 C N N β K 1 ε E[ ε ] = i Co

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Academic year: 2021

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GIS−理論と応用

Theory and Applications of GIS, 2014, Vol. 22, No.2, pp.1-11

【原著論文】

我が国の三大都市圏を対象とした住宅地価分布図の作成

堤 盛人*・村上大輔 **・嶋田 章 ***

Creation of Residential Land Price Maps for the Three Metropolitan Areas in Japan

Morito Tsutsumi*, Daisuke Murakami**, Akira Shimada***

Abstract: The spatial distribution of land price is indicative of the urban structure of a region.

How-ever, since most information on land price is in the form of point data and not surface data, a certain process must be established for the creation of a land price map. The final objective of the current study is to create accurate land price maps of three metropolitan areas in Japan: Tokyo, Nagoya and Kyoto-Osaka-Kobe metropolitan areas. This study uses the officially assessed land prices provided by the Japanese government and data from the land price surveys conducted by prefectural govern-ments. First, the study presents empirical analysis of land price function of each metropolitan area by employing trans-Gaussian kriging, which enables us to consider both spatial dependence and dif-ference of price elasticity by price ranges. Then, the study creates land price maps. Finally, we com-pare the created land price maps and discuss the nature of the differences in detail.

Keywords: 地価(land price),住宅地(residential land),大都市圏(metropolitan area),空間

統計学(spatial statistics),視覚化(visualization) 1.はじめに 地価は都市の人口や交通網など様々な要因と関係 があり,都市にまつわる研究では古くから注目され てきた指標である.我が国の戦前・戦後の都市計画 の第一線で活躍した石川栄耀は,都市を考察する上 での地価の重要性を説き,「地價は都市の言語であ る」(石川,1931)という言葉を残している.また, 地価の面的な様相を見ることは,都市構造の把握や 政策立案の資料になると考えられる.しかしなが ら,地価の面的な様相を示す資料は非常に限られて いる.例えば,代表的な地価指標である公示地価で は,評価対象地点である標準地については詳細な情 報が示されているものの,あくまで地点ごとの情報 であり,そこから面的な様相を把握するのは困難で ある. 我が国では,これまでに,民間の不動産会社が地 価(以後,本稿での『地価』は面積当たりの単価を 意味することとする)の面的な分布を示す資料を作 成している例があった.代表的なものの一つであ る東急不動産株式会社の『地価分布図』は,首都圏 を対象として東京駅から約50km圏の住宅地価を示 した図面であり,1962年から2007年まで毎年作成 されていた.同図では,標準地や基準地(都道府県 地価調査での評価対象地点)のデータに加えて取引 データ等も活用されていたが,作成には膨大な手間 と時間を要しており,「平成19年版」をもって発行 を終了している. 一方,学術的な研究で地価を面的に推計した例と して,国内の事例では,東京都区部の全用途を対象 とした井上ほか(2009)や東京都全域の公示地価を 対象とした増成(2007)がある.また海外の事例では, ウィスコンシン州ミルウォーキーの地価を対象と したLuo and Wei(2004)や,テキサス州ダラスの一 戸建て住宅の価格を対象としたBasu and Thibodeau * 正会員 筑波大学システム情報系(University of Tsukuba)

    〒 305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 E-mail:tsutsumi@sk.tsukuba.ac.jp ** 正会員 国立環境研究所地球環境研究センター(National Institute for Environmental Studies) *** 非会員 環境省総合環境政策局(Ministry of the Environment)

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(1998)がある.しかしながら,郊外部も含めた大 都市圏全体を対象として面的な地価分布図を作成し た研究は筆者らの知る限り見あたらない. そこで,本研究では郊外部も含めた大都市圏全体 の住宅地価を面的に示す分布図を精度良く作成した 上で,結果を考察する. 2.地価の推計手法 2.1.地価の推計モデル 地価分布図の作成にあたっては,地価の面的な推 計が必要となる.面的な推計(空間内挿)のための 代表的な手法にkriging(例えば,Cressie, 1993)があ る.krigingは,共分散をモデル化することで空間 データの基本的な性質である空間的な依存性を考慮 する,空間統計学の推計手法である.krigingの精 度の高さを指摘した研究は多く,地価推計への有用 性を示した研究も少なくない(例えば,井上ほか, 2009).従って,本研究ではkrigingを地価推計に適 用する. 2.1.1.空間統計学の推計手法:Kriging krigingは(1)式を基本式とする.      =z Xβ ε    ~ ( , )+ ε N 0 C (1) zはN×1の被説明変数ベクトル,XはN×Kの説明 変数行列,εはN×1攪乱項ベクトル,0はゼロを要 素に持つN×1のベクトル,CはN×Nの共分散行列, βはK×1のパラメータベクトルである. 攪乱項ベクトルεの各要素には,期待値と分散が 移動不変,かつ共分散が距離のみに依存するという 弱定常性が仮定される.         E[ ]ε = 0i (2)       Cov( , )ε εi i′ =c d( i i,′) (3) iとi'は地点,εiεi'は両地点の撹乱,di,i'は両地点間 の直線距離である.c(di,i')は共分散関数と呼ばれる 距離の関数である.本研究では,その代表的なモデ ルである指数モデル(4)式でc(di,i')を与える.   c d d r if d otherwise i i i i i i ( , ) exp , , ′ ′ ′ = −       ≠ +      τ σ τ 2 2 2 0 (4) σ2τ2rは,それぞれナゲット,パーシャル・シル, レンジと呼ばれるパラメータである.ここで,指数 モデルの場合,空間的な依存性の及ぶ範囲は,空間 的な依存性により説明される分散のうちの95%が消 失する距離であるr×3(有効レンジ:effective range) で定義されることが多い(Cressie, 1993). krigingは,地点0の被説明変数z0が(5)式に従う と仮定することで,その予測量ˆz を与える.0         z0=x β0t +ε0 (5) 「 t 」は転置の演算子,x 0は地点0の説明変数から成 るK×1のベクトル,ε0は同地点の攪乱項(スカラー) である.予測量ˆz は,不偏性(7)と線形性(8)式の0 制約の下で地点0の予測誤差分散(6)式を最小化す ることで求める.          2 0 ˆ0 [( ) ] E zz (6)         E z[ ]0 =E z[ ]ˆ0 (7)          z = a z ˆ0 t (8) aは各観測データの未知の重みを要素に持つN×1 のベクトルである.aは,上述の最小化を行うこと で(9)式で与えられる.    1 1 1 1 1 0 ˆ=+ − ( t − ) (− t − ) a C c C X X C X x X C c (9) cは各観測地点と地点0の攪乱項の共分散を表す N×1のベクトルであり,各要素は共分散関数に基 づいて与えられる. ˆaを(8)式に代入することで, 地点0の最良線形不偏予測量(10)式が得られる.        1 0 0ˆ ˆ ˆ t t ( ) z =x β c C z Xβ + (10) 1 1 1 ˆ (= t − )− tβ X C X X C z krigingの地価推計への適用に際しては,zの要素 を対数変換した地価で与えられることが多い.これ は,対数変換が撹乱項の分散均一化に有用なためで ある.krigingについてはCressie(1993)に詳しい. 2.1.2.Trans-Gaussian Kriging 一般に,地価関数は非線形であり(Rosen, 1974; Ekeland et al., 2004),その原因の一つに地価の価格 帯毎の異質性がある(Kostov, 2009).従って,あら ゆる価格帯の地価が混在する大都市圏の地価関数の 推定にあたっては,非線形性を考慮することも重要 となる.そこで本研究では,被説明変数を変換する ことでパラメータに関する非線形性を考慮する推計 手 法 で あ るtrans-Gaussian kriging(Cressie, 1993)を

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用いることとする. trans-Gaussian krigingの概略は次の通りである. いま,関数φ( )を用いて各被説明変数yiziに変換し, 次にziにkrigingを適用することで地点0の予測量ˆz0 を求め,最後にˆz0を逆変換することでyiの予測量ˆy0 を得るという操作を考える.これにより得られるˆy0 の期待値E[ˆy ]は,テイラー展開を用いて(11)式0 で表現できる.    ≈ 1 + 1 0 − 2 0 0 ( ) 0 0 ˆ ˆ [ ] ( ) [( ) ] 2 E y φ µ− φ−″ µ E z µ (11) μ0は地点0のトレンド(例えば(5)式であればx0tβ), 「 '' 」は2階微分の演算子,φ( ) –1φ( )の逆関数であ る.一方で,y0の期待値は(12)式で与えられる.   E y[ ]0 1( )0 ( ) [(E z ) ] 1 0 0 0 2 2 ≈φ µ− +φ−″ µ −µ (12) (11)式と(12)式が異なるため,(11)式で与えられ る予測量が不偏性を満足するためには,両式の差分 (13)式を用いて(11)式を補正する必要がある. ( , , , )2 2 r = 1 0

{

E z[( − ) ]2 − [( − ) ]2

}

0 0 0 0 ( ) ˆ 2 t μ φβ τ σ φ−″ μ E z μ (13) trans-Gaussian krigingは,φ( )に様々な非線形変換 を仮定できる.例えば,下式に示すBox-Cox変換 (Box and Cox, 1964)はtrans-Gaussian krigingで用い

られることの多い変換の一つである.     z y if y otherwise i i i = −     λ λ λ 1 0 log( ) (14) λは関数形を決定するパラメータである.Box-Cox 変換を用いる場合のtrans-Gaussian krigingの基本式 は(15)式となる.      ( )z λ =Xβ ε    ~ (0, )+ ε N C (15) ここで,z(λ)はzi (λ)を要素に持つN×1の被説明変 数ベクトルである.次に,地点0における実スケー ルでの被説明変数y0の予測量は以下で与えられる.

{

}

{ }

ˆ 1/ 2 2 0 0 2 2 0 ˆ ˆ( ) 1 ( , , , , )ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ 0 ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ exp ( ) ( , , , , ) λ t t λz λ φ τ σ r λ if λ y z λ φ τ σ r λ otherwise+ +  =  +  β β (16) 0 ˆ ˆ ( ) z λ はz0( )λ の予測量である.また,φ( , , , , )βˆt τ σ r λˆ ˆ2 2 ˆ ˆ はz0をz0(λ)に置き換えた補正項(13)式を表す. Box-Cox変 換 を 活 用 し たkriging予 測 の 有 用 性 は,例えば土壌中の鉛濃度を予測したMcGrath et al. (2004)や交通量を予測したEom et al. (2006)など で確認されている.またBox-Cox変換を仮定した trans-Gaussian krigingは,近年,フリーの統計ソフ ト「R」の空間統計パッケージであるgstatやgeoRな どに実装されており,その適用は活発化している (例えばZhang et al., 2008; Pebesma et al., 2011).

非線形性と空間的依存性の両方を考慮するtrans- Gaussian krigingは,大都市圏の地価推計に対しても 有用と考えられる.しかしながら,筆者らの知る限 り,本手法の地価推計への適用事例は見られない. 以降では,被説明変数の変換にBox-Cox変換を 仮定したtrans-Gaussian krigingを用いて地価分布図 を作成する.計算には,上述の統計ソフト「R(ver. 3.0.1)」を用いる.また,分布図の描画には「ArcGIS (ver. 10.2)」を用いる.なお,ベイズ理論や接合分 布関数(コピュラ)の理論を応用したtrans-Gaussian krigingの拡張がこれまでに議論されているものの (De Oliveira et al.1997; Kazianka and Pilz, 2011), 計 算負荷等の観点から,それらの応用については今後 の課題としたい. 2.2.推計に使用する変数の概要 本研究では,東京,中京,京阪神の各大都市圏の 地価分布図を作成する.ここで,(i)東急不動産株 式会社作成の地価分布図と(ii)本研究の地価分布 図の作成結果を比較するために(3.1.2節参照),東 京大都市圏の範囲は,(i)の範囲を包含する茨城県 南部と埼玉・千葉・東京・神奈川の各都県全域とし た(図1).一方,(i)を持たない京阪神・中京大都 市圏の範囲は,本研究では,総務省統計局が平成 17年国勢調査の結果をもとに作成した『日本統計地 図』の一つである「市区町村別昼間・夜間人口密度」 に示されている地域とした(図1・表1). 地価のデータとしては公示地価及び都道府県地価 調査の価格(以下,調査地価と表記)のうちの,用 途が「住宅地」「宅地見込地」「市街化調整区域内の 現況宅地」となっているデータを用いる.対象年次 は2006年とする.なお,公示地価は毎年1月1日現 在の単価であるのに対し,調査地価は 7月1日現在

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の単価であり,評価の時点が半年ずれているため, 調査地価については,2005年と2006年での単純平 均により時点修正を行った.ただし,地価公示の標 準地と重複している地点及び2006年から新たに都 道府県地価調査の基準地となった地点のデータは除 外している.各大都市圏の地価の基本統計量は表2 に示すとおりである. 説明変数は表3に示すとおりである.各変数は, 誰もが容易に入手可能であり,なおかつ対象範囲を ほぼ同一精度でカバーするという条件の下で選ん だ. ここで,説明変数の一つである都心鉄道距離は, 最寄り駅から主要駅(東京大都市圏では東京,新宿, 池袋,渋谷,品川の各駅,中京大都市圏では名古屋, 栄の両駅,京阪神大都市圏では大阪,京都,三ノ宮, 梅田の各駅で定義する)までの鉄道ネットワーク距 離の最小値で定義する.一方,都心鉄道時間は,最 寄り駅から同様の主要駅までの所要時間(Yahoo!路 線情報より算出)の最小値で定義する.都心鉄道時 間は快速列車や乗り換えの待ち時間等を反映する. 都心鉄道時間データの作成には,膨大な作業時間が 必要となるため,時間に代えてデータの作成が容易 な直線距離を用いることの妥当性も関心事である. 以降,都心への交通利便性を表わす変数として都心 東京大都市圏 中京大都市圏 京阪神大都市圏 図 1 三大都市圏の地価データの空間分布 表 1 対象地域の面積と人口 東京 中京 京阪神 面積 [km2 16,265 6,909 11,704 人口 [千人] 36,295 8,923 18,768 表 2 地価[円 / m2]の基本統計量 東京 中京 京阪神 平均値 176,063 84,070 122,995 中央値 149,000 80,900 108,000 標準偏差 155,839 41,020 72,263 最大値 2,500,000 320,000 533,000 最小値 3,600 3,020 3,155 評価地点数 9,245 2,555 5,136  うち公示地価 6,530 1,806 3,517  うち都道府県地価調査(1) 3,116 811 1,864 (1)公示地価標準地との重複により分析では除外した地点を含む総地点数 表 3 本研究で使用する説明変数 変数名 データ元と作成方法 最寄駅 距離[m] 最寄りの鉄道駅(出典:国土数値情報)までの直線距離 各土地利用 の面積 [m2/km2 国土数値情報の土地利用3次メッシュ データの11の土地利用種別(田,その他農 用地,森林,荒地,建物用地,幹線交通用 地,その他の用地,河川及び湖沼,海浜, 海水域,ゴルフ場)のうち,建物用地以外 の種別の1km2メッシュあたりの面積 用途地域 ダミー 国土数値情報の用途地域データの11用途 地域ダミー(第1種住居地域,第1種中高 層住居専用地域,第1種低層住居専用地 域,第2種住居地域,第2種中高層住居専 用地域,準住居地域,商業地域,近隣商 業地域,工業地域,準工業地域) 市街化区域 ダミー 国土数値情報の都市地域データをもとに 市街化区域内の地点には1,それ以外の地 点には0を付与 都心鉄道 距離[km] (1) 最寄り鉄道駅(出典:国土数値情報)か ら各大都市圏の主要駅までの鉄道ネット ワークに沿った距離 都心鉄道 時間[分] (1) Yahoo!路線情報により算出した,最寄り の鉄道駅から各大都市圏の主要駅までの 鉄道による所要距離 (1)各モデルでは都心鉄道距離または都心鉄道時間のいずれかを使用

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鉄道距離を用いたモデルを「都心距離モデル」,都 心鉄道時間を用いたモデルを「都心時間モデル」と 表記する. なお,変数間の完全な多重共線性を回避するた め,各土地利用の面積[m2/ km2]については土地利 用3次メッシュデータに収録されている11の土地利 用種別のうちの建物用地を除外している. 地価は,町丁目の幾何的重心毎に推計する.町丁 目を推定の対象としたのは,町丁目の境界が,価格 水準の境界となりうる道路や河川などと重なってい ることが多いためである.実際,図2においても, 東急不動産『平成18年 地価分布図』の価格水準の 境界と町丁目の境界が重なっている箇所が多いこと がわかる. 3.三大都市圏の地価分布図 3.1.東京大都市圏の地価分布図 3.1.1.地価分布を決定する要因の分析 都心距離モデルと都心時間モデルのパラメータ 推定結果を表4に示す.なお,説明変数間に深刻 な多重共線性が存在しないことは,VIF(Variance Inflation Factor;例えば蓑谷,1997)診断により確認 している. 両モデルについて1%水準で有意となった変数は 最寄駅距離(負),田(負),その他農用地(負),森 林(負),河川・湖沼(負),各第1・2種住居地域ダミー (全て正),商業地域ダミー(正),近隣商業地域ダ ミー(正),工業地域ダミー(正),準工業地域ダミー (正),市街化区域ダミー(正)であり,また都心鉄 道距離(負)と都心鉄道時間(負)のいずれも1%水 準で有意であった.工場は交通利便性の高い場所に 立地する傾向があることから,工業地域ダミーと準 工業地域ダミーの正の有意性は交通利便性の影響に よるものである可能性がある.それ以外の各変数の 符号は直観と整合する. レンジの推定値は,空間的な依存性の及ぶ範囲が 51 (=17×3) km程度であること示している. 3.1.2.地価分布図の作成 都心距離モデルの推計結果を図3に,都心時間モ デルの推計結果を図4にそれぞれ示す.両図より, 推計地価の空間分布は,全体としては類似した傾向 を持つ一方で,郊外部においては,都心距離モデル の推計地価が都心時間モデルに比べて小さいという 傾向が見られる. 両モデルの推計地価と東急不動産作成の『平成18 年 地価分布図』(図5)を比較すると,東京都区部及 び郊外部の鉄道沿線の地域については推計地価が同 図に示された水準に近いものの,郊外部の鉄道から 離れた地域については本研究の推計地価の方が高い という傾向が伺える.これは,郊外部では標準地・ 基準地の分布が都区部に比べて粗であることや,実 際には山林など開発されていない地域も含めて,本 研究では住宅地として一括して推計していることが 影響していると考えられる.但し,都心時間モデル の推定地価は郊外部においても地価分布図の水準に 比較的近く,郊外部の地価推計における都心時間モ 表 4 パラメータ推定結果(東京大都市圏) 都心距離モデル 都心時間モデル 推定値 t値 推定値 t値 定数項 最寄駅距離 [m] 田 [m2/km2 その他農用地 [m2/km2 森林 [m2/km2 荒地 [m2/km2 幹線交通用地 [m2/km2 その他の用地 [m2/km2 河川・湖沼 [m2/km2 海浜 [m2/km2 海水域 [m2/km2 ゴルフ場 [m2/km2 第1種住居地域 第1種中高層住居地域 第1種低層住居地域 第2種住居地域 第2種中高層住居地域 準住居地域 商業地域 近隣商業地域 工業地域 準工業地域 市街化区域ダミー 都心鉄道距離 [km] 都心鉄道時間 [分] –39.7 –1.02×10–3 –1.24×10–6 –9.92×10–7 –9.81×10–7 –2.00×10–7 –9.13×10–7 –6.77×10–8 –1.45×10–6 –1.97×10–6 –4.82×10–7 –7.98×10–7 –1.44 –1.39 –1.23 –1.93 –1.84 –8.52×10–1 –1.33 –9.14×10–1 –1.95 –1.60 –3.11 –4.20×10–2 –21.8*** –29.2*** –7.79*** –5.65*** –5.76*** –0.38 –1.40 –0.37 –7.14*** –0.60 –1.43 –2.07** –14.3*** –13.8*** –12.5*** –13.9*** –16.0*** –1.67* –3.09*** –2.98*** –2.91*** –3.09*** –29.4*** –4.78*** –3.99 –1.02×10–3 –1.22×10–6 –9.95×10–7 –9.84×10–7 –1.88×10–7 –9.37×10–7 –7.40×10–8 –1.43×10–6 –1.85×10–6 –4.87×10–7 –7.53×10–7 –1.42 –1.38 –1.23 –1.93 –1.83 –8.56×10–1 –1.31 –9.20×10–1 –1.95 –1.62 –3.12 –3.09×10–2 –22.8*** –29.4*** –7.63*** –5.65*** –5.75*** –0.36 –1.43* –0.41 –7.04*** –0.56 –1.25 –1.90* –14.1*** –13.7*** –12.5*** –13.9*** –15.9*** –1.67* –3.04*** –2.99*** –2.90*** –3.11*** –29.4*** –8.93*** λ ナゲット パーシャル・シル レンジ –1.87×10–1 –2.31 –15.5 –17.5 –1.88×10–1 –2.09 –9.41 –16.9 AIC –207,534 –207,479 1)***, **, *はそれぞれ 1%, 5%, 10% 水準で有意であることを表す

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デルの一定の有用性が示唆された. 東急不動産作成の「地価分布図」では,都心から 約60km離れた茨城県つくば市周辺は対象外であっ たが,2005年のつくばエクスプレス開業により秋 葉原とつくばが最速45分で結ばれ,同地域も東京 への通勤圏となった.ここで作成した地価分布図に は,この地域の住宅地価格が周囲と比べて孤立して 顕著に高いことが鮮明に現れている. 次に,5-fold cross-validationを用いて両モデルの 推 計 精 度 を 検 証 す る.5-fold cross-validationとは, データをランダムに5つに分割し,そのうちの4つ から残りの1つのデータの予測を行う操作を5回繰 り返すことで,モデルの精度を検証する方法であ る.ここでは誤差率(17)式を精度の指標に用いる.         ˆi i i y y y − = ㄗᕪ⋡ (17) 全9,245地点での誤差率の平均は都心距離モデルで 10.12%,都心時間モデルで10.10%となり,わずか ではあるが都心時間モデルの方が精度が高いことが 分かった.誤差率の分布を確認すると,東京駅から 半径10∼30km圏において比較的誤差率が小さい地 点が多く分布しているのに対し,地価が都心部の 100分の1以下の水準である郊外部では誤差率が大 きくなっており,単一のモデルで推計することの限 界を示す結果といえる. 3.2.中京大都市圏の地価分布図 3.2.1.地価分布を決定する要因の分析 中京大都市圏を対象に,前章と同様の分析を行 う.各説明変数が多重共線性を持たないことはVIF で確認した. パラメータ推定結果を表5に示す.両モデルにつ いて1%水準で有意となったのは,最寄駅距離(負), 田(負),その他農用地(負),森林(負),河川・湖 沼(負),各第1・2種住居地域ダミー(全て正),商 業地域ダミー(正),近隣商業地域ダミー(正),市 街化区域ダミー(正)であり,都心鉄道距離(負)と 都心鉄道時間(負)のいずれも1%水準で有意となっ た.それらの符号は直観と整合する.以上の結果は 東京大都市圏の推定結果と類似している. レンジの値は,空間的な依存性の及ぶ範囲(有効 レンジ)が東京大都市圏の約1/3の14 km程度であ ることを表している. 3.2.2.地価分布図の作成 次に,両モデルを用いた地価の推計結果を図6・ 7にそれぞれ示す.両図より,推計地価の空間分布 は,双方で大きな違いが見られないことがわかる. 東京大都市圏の都市部に70万円/m2以上の地域が存 在するのに対し,中京大都市圏の地価は最大でも 21万円/m2∼30万円/m2の価格帯であり,東京と名 古屋の地価の格差が大きいことが確認された.また, 鉄道路線に沿って高い価格帯を示すという東京大都 市圏に顕著に見られた分布傾向が,中京大都市圏で は見られないことがわかる. 誤差率の分布を確認すると,東京大都市圏と同様 表 5 パラメータ推定結果(中京大都市圏) 都心距離モデル 都心時間モデル 推定値 t値 推定値 t値 定数項 最寄駅距離[m] 田[m2/km2 その他農用地[m2/km2 森林[m2/km2 荒地[m2/km2 幹線交通用地[m2/km2 その他の用地[m2/km2 河川・湖沼[m2/km2 海浜 [m2/km2 海水域[m2/km2 ゴルフ場[m2/km2 第1種住居地域 第1種中高層住居地域 第1種低層住居地域 第2種住居地域 第2種中高層住居地域 準住居地域 商業地域 近隣商業地域 工業地域 準工業地域 市街化区域ダミー 都心鉄道距離[km] 都心鉄道時間[分] –9.19×10 2 –2.84×10–2 –1.35×10–4 –1.45×10–4 –1.36×10–4 –1.59×10–4 –2.65×10–5 –3.34×10–6 –1.13×10–4 –4.41×10–4 –9.35×10–5 –1.15×10–4 –94.6 –1.13×102 –1.14×102 –1.34×102 –1.02×102 –87.8 –1.48×102 –1.12×102 –71.4 –27.3 –54.4 –2.13 –15.2*** –8.92*** –9.98*** –5.36*** –7.37*** –1.77* –0.26 –0.10 –5.20*** –2.14** –2.22** –1.89* –9.68*** –11.1*** –11.1*** –10.2*** –8.83*** –2.69*** –4.96*** –3.71*** –1.58 –0.83 –5.77*** –3.25*** –8.94×102 –2.72×10–2 –1.28×10–4 –1.35×10–4 –1.28×10–4 –1.38×10–4 –1.73×10–5 –4.04×10–6 –1.12×10–4 –4.19×10–4 –8.60×10–5 –9.90×10–5 –89.6 –1.07×102 –1.09×102 –1.28×102 –96.8 –80.7 –1.42×102 –1.07×102 –74.3 –29.3 –53.0 –1.28 –17.2*** –9.07*** –9.90*** –5.24*** –7.29*** –1.62 –0.18 –0.12 –5.39*** –2.14** –2.15** –1.71* –9.61*** –11.0*** –11.1*** –10.3*** –8.74*** –2.58*** –4.98*** –3.70*** –1.72 –0.93 –5.91*** –5.42*** λ ナゲット パーシャル・シル レンジ –5.69×10–1 –1.55 –8.10×103 –4.81 –5.97×10–1 –55.0 –7.45×103 –4.63 AIC –54,810 –54,792 1)******はそれぞれ 1%,5%,10% 水準で有意であることを表す

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に,郊外部に誤差率の高い地域が多いものの,誤差 率は東京大都市圏の郊外と比べれば小さい.また, 東京大都市圏とは異なり,都心部である名古屋駅周 辺での推計精度の低下はあまり見られなかった. 3.3.京阪神大都市圏の地価分布図 3.3.1.地価分布を決定する要因の分析 第1種住宅地域ダミーのVIFが10を上回り,多重 共線性があると診断されたため,本節ではそれ以外 の説明変数を用いて分析を行う. パラメータ推定結果を表6に示す.両モデルにつ いて1%水準で有意となったのは,最寄駅距離(負), 田(負),森林(負),その他農用地(負),河川・湖 沼(負),海水域(負),ゴルフ場(負),各第1・2種 住居地域ダミー(全て正),準住居地域ダミー(正), 市街化区域ダミー(正)であり,都心鉄道距離(負) と都心鉄道時間(負)のいずれも1%水準で有意と なった.それらの符号は直観と整合する. レンジの推定値は,空間的な依存性の及ぶ範囲 (有効レンジ)が40km程度であること示している. 3.3.2.地価分布図の作成 次に,両モデルを用いた地価の推計結果を図8・ 9にそれぞれ示す.両図より,推計地価の空間分布 は,双方で大きな違いが見られないことがわかっ た.京阪神大都市圏は,京都,大阪,神戸の3都市 周辺の地価が高い値を示している点で他の大都市圏 とは異なる. 誤差率の分布を確認すると,郊外部における誤差 率は東京大都市圏と同等に大きく,一方で,都市部 は精度が比較的高いとの結果が得られた. 4.各大都市圏の分析結果の比較 4.1.地価分布を決定する要因の比較 パラメータ推定結果より,地価に影響する説明変 数は,各大都市圏で概ね同一であることが確認され た.ここで,都心鉄道距離と都心鉄道時間に着目す ると,いずれも,全ての都市圏において1%水準で 有意と推定された.また,都心鉄道距離を用いた地 価推計の精度は,都心鉄道時間を用いた推計の精度 と同等であった.単純な距離が,快速列車等をも考 慮する都心鉄道時間に匹敵しうる説明力を持つとい う結果は,本研究における興味深い知見の一つとい えよう. 都心鉄道距離(x1とする)の増加に伴う地価の逓 減を,都心鉄道距離による影響のみを(15)式から 抽出した式である(18)式を用いて視覚化する.         1 ˆ 0 1 1 1 ˆ ˆ ˆ λ x y β β x λ − = + (18) 具体的には,x1を0kmから150kmの範囲において 1km間隔で動かしながら,(18)式を満足するyx1を 逐次求め,それらを線で結ぶことで視覚化した(図 10).ˆβ は定数項の推定値,0 ˆβ は都心鉄道距離の係1 数の推定値である.ここで,大都市圏間の比較を行 いやすくするために,求められた yx1は,x1=0にお けるyx1の実現値で除すことで基準化した.また, 都心鉄道時間についても0分から150分の範囲で1 表 6 パラメータ推定結果(京阪神大都市圏) 都心距離モデル 都心時間モデル 推定値 t値 推定値 t値 定数項 最寄駅距離[m] 田[m2/km2 その他農用地[m2/km2 森林[m2/km2 荒地[m2/km2 幹線交通用地[m2/km2 その他の用地[m2/km2 河川・湖沼[m2/km2 海浜[m2/km2 海水域[m2/km2 ゴルフ場[m2/km2 第1種中高層住居地域 第1種低層住居地域 第2種住居地域 第2種中高層住居地域 準住居地域 商業地域 近隣商業地域 工業地域 準工業地域 市街化区域ダミー 都心鉄道距離[km] 都心鉄道時間[分] –3.03×102 –1.06×10–2 –4.05×10–5 –4.19×10–5 –3.32×10–5 –1.82×10–5 –7.30×10–6 –9.49×10–6 –2.62×10–5 –5.33×10–5 –2.29×10–5 –2.60×10–5 –7.32 –15.4 –12.3 –7.63 –11.0 –1.16 –10.3 –24.7 –48.1 –39.8 –6.55×10–1 –15.8*** –14.3*** –11.9*** –4.37*** –11.2*** –1.01 –0.76 –1.81* –5.37*** –0.59 –2.43*** –2.53*** –7.12*** –14.1*** –6.17*** –6.01*** –0.76 –0.09 –1.09 –1.10 –4.53*** –24.8*** –2.72*** –2.92×102 –1.07×10–2 –4.05×10–5 –4.16×10–5 –3.28×10–5 –1.76×10–5 –7.33×10–6 –9.05×10–6 –2.60×10–5 –4.84×10–5 –2.40×10–5 –2.64×10–5 –7.32 –15.4 –12.2 –7.59 –11.3 –2.74×10–1 –9.80 –24.8 –50.1 –39.8 –2.66×10–1 –16.5*** –14.4*** –11.9*** –4.35*** –11.1*** –0.98 –0.77 –1.73* –5.33*** –0.54 –2.55*** –2.57*** –7.14*** –14.1*** –6.15*** –5.99*** –0.78 –0.02 –1.04 –1.11 –4.72*** –24.9*** –4.25*** λ ナゲット パーシャル・シル レンジ 4.33×10–1 2.51×10 2 3.80×10 3 12.8 4.33×10–1 2.53×10 2 4.20×10 3 14.4 AIC 114,395 114,384 1)*****,*はそれぞれ 1%,5%,10% 水準で有意であることを表す

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分間隔でyx1を求め,基準化することで地価の逓減 を示した(図11). 図10より,都心鉄道距離の増加に伴う逓減傾向 は各大都市圏で類似していることがわかる.一方で, 図11より,東京大都市圏の都心時間距離の増加に 伴う逓減は,他の大都市圏に比べて急激という傾向 がみられた.この結果は,東京大都市圏内の交通移 動では鉄道分担率が高いことと照らし合わせて考え ると直観と整合的であり,興味深い.都心鉄道時間 が60分であることは,東京大都市圏においては都 心鉄道距離が45kmであること,中京大都市圏にお いては都心鉄道距離が35kmであること,京阪神大 都市圏においては同距離が25kmであること,それ ぞれに概ね相当する結果となった. Box-Cox変換のパラメータλの推定値は,地価関 数の非線形性が東京大都市圏,京阪神大都市圏,中 京大都市圏の順に強いことを示している.この結果 は,価格帯が幅広い都市圏であるほど非線形性が強 いという結果となっており,直観と整合的である. 空間的な依存性の及ぶ範囲を表すレンジは,東京 大都市圏,京阪神大都市圏,中京大都市圏の順で大 きく,大都市圏の規模が大きい程,より広域的な依 存性が生じていることを確認した. 4.2.作成された地価分布図の比較 各都市圏の最高価格帯は,東京大都市圏が70万 円/m2以上,中京大都市圏が20~30万円/m2,京阪神 が45~60万円/m2であり,各都市圏の最高価格帯に 一定の差があることが確認された.また,京阪神大 都市圏については京都,大阪,神戸の3都市に高価 格帯の地価が存在するのに対して,東京大都市圏や 中京大都市圏には東京都区部や名古屋のみが際立っ て地価水準が高い.その他の特徴として,東京,京 阪神の両大都市圏では鉄道路線に沿った地価の高価 格帯が比較的明瞭であるのに対し,中京大都市圏で はそれが不明瞭であるとの差異がみられた.

(19)式 で 定 義 さ れ るRMSE(Root Mean Square Error)を用いて都市圏毎の推計精度を比較する.       2 1 ˆ ( ) / N i i i RMSE y y N = =

(19) こ こ で,yiは 地 価 の 実 測 値, ˆy は5-fold cross-i validationより得られた地価の推計値を表す. RMSEの算出結果を表7に示す.この表から,東 京のRMSEが最も大きいことが分かる.これは,単 一のモデルを用いて,都市部と郊外部の価格差が大 きい東京大都市圏の地価推計をすることの限界によ るもの,また,東京大都市圏のそもそもの地価水準 が高いことによるものと示唆される.次に,都心距 離モデルのRMSEと都心時間モデルのRMSEを都市 圏毎に比較すると,両者にはほとんど差異がみられ ないこと分かる.このことより,都心鉄道距離,あ るいはデータの作成に膨大な時間を要する都心鉄道 時間のどちらを考慮したとしても,得られる地価分 布図には大きな差異は生じないとの示唆を得た. 地価分布図の作成に用いたtrans-Gaussian kriging のRMSEと被説明変数を対数地価で与えた従来 のkrigingのRMSEを 比 較 し た 結 果( 表7),trans-Gaussian krigingのRMSEは, 従 来 のkrigingよ り も 小さく,trang-Gaussian krigingの地価分布図作成に 対する一定の有用性が確認された.ただし,trans-Gaussian krigingを適用することによるRMSEの減少 図 11 都心鉄道時間の増加に伴う地価の逓減 図 10 都心鉄道距離の増加に伴う地価の逓減 表 7 大都市圏毎の RMSE の比較(単位:円 /m2

trans-Gaussian kriging 参考:従来のkriging 都心距離 都心時間 都心距離 都心時間 東京 34,702 34,674 34,887 34,823 中京 10,345 10,346 10,661 10,650 京阪神 16,278 16,276 16,543 16536

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は,最大でも,中京大都市圏の都心距離モデルで確 認された3.0%であり,必ずしも大きく精度が改善 されるというわけではないこともまた確認された. 5.おわりに 本研究では,まず,大都市圏の地価推計に trans-Gaussian krigingが有用であることを指摘した上で, これを用いて我が国の三大都市圏の地価関数を推定 し,地価分布図の作成を行った. 地価関数の推定を通じて,地価に影響を与える説 明変数が各大都市圏で極めて類似していること,地 価関数の非線形性が東京大都市圏,京阪神大都市 圏,中京大都市圏の順で大きいことなどを示した. 地価分布図を作成した結果,東京大都市圏におい ては筑波研究学園都市が周辺より地価の高い,ある 種の陸の孤島となっていることが明確に示された. さらに,三大都市圏いずれにおいても,説明変数と して都心鉄道距離と都心鉄道時間のいずれを適用す るかは作成される地価分布図そのものには大きな差 異を与えないこと,従って,少ない労力で地価分布 図を作成するためには都心鉄道距離の適用で十分で あることが確認された.一方で,東京大都市圏の郊 外部の地価推計においては都心鉄道時間を用いるこ との一定の優位性が示された. また,trans-Gaussian krigingを用いることで地価 を精度よく推計できることを確認した.一方で,郊 外部の推計誤差が大きいという結果もまた得られて いる.一つの地価関数で大都市圏全体を表現しよう という点がそもそもの問題である可能性があるた め,パラメータを予測地点毎に与える地理的加重回 帰(例えば,Fotheringham et al., 2002)を用いた推計 や,市街化区域とそれ以外を分けた推計についても 試みてみたものの,精度の改善には至らなかった. 郊外部における精度の低さは「郊外部における地 価調査地点の不足」という公的地価データ自体の限 界が影響している可能性がある.郊外部の地価を十 分に説明するような地価評価地点の配置を,予算制 約等も勘案しながら議論することは,地価分布図の 精度向上のみならず,地価情報を適正に提供すると いう観点からも重要である.なお,この点は,行政 コストの削減を背景に地価調査の予算削減措置が実 施されている中(平成24年国土交通省行政事業レ ビュー(事業番号:117 事業名:地価公示)),そ の重要性を増している(村上・堤,2012参照). 本研究では,地価分布図の作成を第一の目的にし たため,大都市圏全体の任意の地点を網羅したデー タのみを地価推計の説明変数に用いた.また,kriging に用いる共分散関数にはこれまでにもいくつかのも のが提案されているが,紙面の制約からそれらを実 証的に比較した結果を紹介することができなかった. 適切な共分散関数の選択や得られたパラメータの値 に関する考察を深めるためには,地価公示や地価調 査によって得られるデータを最大限活用し,本研究 で議論したような都市圏レベルでの広域の分析だけ でなく,地点毎あるいは地域毎の特性の把握といっ たより狭域の視点での分析も併せて行う必要がある と考える.さらに,市街化調整区域内の現況宅地の ように,市場で取引されにくいものを市街化区域内 の宅地と一緒に分析や地価分布図の作成に用いてい る点に関しても,十分な精査が必要である. 謝辞 本研究を行うにあたり,東急不動産株式会社から 同社作成の『地価分布図』のデータの提供を受けた. また,本稿,及びこれに先立つ原稿に対し,匿名の 査読者より示唆に富む多数のご指摘を頂いている. ここに記して感謝申し上げる.無論,本稿にあり得 べき誤りの責任は,全て筆者らに属する. なお,本研究は,科学研究費助成事業「地理情報 科学と都市工学の空間情報解析融合技術の戦略的活 用(研究課題番号:24241053;代表:筑波大学鈴木 勉教授)」の成果の一部である. 参考文献 石川栄耀(1931)一都市内の地價の研究 −聚落研 究の一節−.「都市問題」,13(1),31–41. 井上亮・清水英範・吉田雄太郎・李勇鶴(2009)時 空間クリギングによる東京23区・全用途地域を対 象とした公示地価の分布と変遷の視覚化.「GIS−理 論と応用」,17(1),13–24.

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図 9 都心時間モデルの推計結果(京阪神大都市圏) 図 8 都心距離モデルの推計結果(京阪神大都市圏) 図 7 都心時間モデルの推計結果(中京大都市圏) 図 6 都心距離モデルの推計結果(中京大都市圏) 図 5  『平成 18 年 地価分布図』(東急不動産作成)をもとに 筆者らが色づけしたもの 図 4 都心時間モデルの推計結果(東京大都市圏) 図 3 都心距離モデルの推計結果(東京大都市圏) 図 2 『平成 18 年 地価分布図』の地価水準と町丁目界

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図 9 都心時間モデルの推計結果(京阪神大都市圏)図 8 都心距離モデルの推計結果(京阪神大都市圏)図 7 都心時間モデルの推計結果(中京大都市圏)図 6 都心距離モデルの推計結果(中京大都市圏)図 5  『平成 18 年 地価分布図』(東急不動産作成)をもとに 筆者らが色づけしたもの 図 4 都心時間モデルの推計結果(東京大都市圏)図 3 都心距離モデルの推計結果(東京大都市圏) 図 2 『平成 18 年 地価分布図』の地価水準と町丁目界

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