ワークショップ 〈助産婦 による 「いのちの誕生」教育〉 ワ ー ク シ ョ ッ プ 〈助 産 婦 に よ る 「い の ち の 誕 生 」 教 育 〉
助 産 婦 によ る 「いの ちの 誕 生 」 教 育
フ ァ シ リ テ ー タ ー 日本助産婦会東京都支部 金 子 美 紀 生命 誕 生 に関 わ る 専 門職 と して 、命 の大 切 さ を地 域社 会 に伝 え る伝 道 師 と して 、今 助 産 婦 に注 目が集 ま って い ます 。 学 校 の性 教 育 の カ リキ ュ ラム は ライ フ サイ クル に合 わせ 、例 え ば 第 二次 性 徴 、月 経 の ケ アや 性 病 を予 防 す るた め の避 妊 具 の使 用 方 法 な どの伝 達 が 多 くの 教 育 の 現 場 で 行 わ れ て い ます 。具 体 的 な方 法 に関 す る知 識 も必 要 です が 、それ と同時 に 「性 」-「 生 」-「 命 」の誕 生 につ なが る行為 に 関わ る基 本 的 な考 え方 を伝 え て い く こ とが 必 要 と され るで しょ う。い の ち の誕 生教 育 に 、い の ち の誕 生 に 関 わ る専 門 家 で あ る助 産 婦 が 、学校 の教 員 や 家 庭 とは 違 った 視 点 で 取 り組 み 、命 の 大 切 さ を語 り伝 えて い くこ との意 義 は大 き いの で す。なぜ な らばそ れ は、活 字 か ら得 た 知 識 で は な く生 身 の 手 で 耳 で 目で 直 接 感 じて きた 者 だ か ら こそ伝 え る こ とので き る何 か が 存 在 す る か らな の で す。また助 産 婦 に よ る いの ちの誕 生授 業 が 、助 産 婦 が い の ちに 寄 り添 う仕 事 を して い る こ と を広 く社 会 に ア ピー ル す る こ とに も役 立 っ で こ とで しょ う。 話題 提 供 して くだ さ るお 二人 は地 域 で 活 動す る開 業助 産 婦 です 、出産 育児 の援 助 を 通 して命 の 尊 さや 重 み を深 く感 じて お られ る方 々で す。助 産 婦 と して の多 く の経 験 を も とに 、ど う して命 は 誕 生す るの か,精子 と卵 子 の 出 会 い か ら命 が 生 まれ る まで の 不 思 議,お母 さんや 家 族 、 周 囲 の人 々 に,生 き る喜 び と幸 せ の 中 で 誕 生 す る こ とを 伝 え よ うと取 り組 ん で い らっ しゃ い ま す.それ ぞ れ に 工夫 され た 教 材 を使 い,その 人柄 を感 じ させ る柔 らか な語 り 口、 そ して 存 在 す る だ け で か も し だす 雰 囲 気 が あ ります 。 お 母 さん の お な か の 中 で 自分 は どの よ うに は ぐ くまれ,ど の よ うに生 ま れ て く るの か 、そ して い の ちが なぜ 大 切 な の か を、多 くの 子 ど もた ちは 教 科 書 か らで は け して得 られ な い迫 力 と暖 か さで 感 じ取 っ て い る こ とで し ょ う。勿 論 ワー ク シ ョップ に参 加 され た 皆様 も お 二 人 の 世 界 に 引 き込 まれ 魅 了 され る こ と とな るで し ょ う。ワークショップ 〈助産婦 による 「いのちの誕生」教育〉 ワ ー ク シ ョ ッ プ 〈助 産 婦 に よ る 「い の ち の 誕 生 」 教 育 〉
助産婦 が伝えるいのちの教育
話題提供者 杉山助産院 杉 山 道 子 は じめ に 子 ど もた ちの性 的 な成 熟 の 早 期化 傾 向,性 に関 す る情 報 の氾 濫,そ して親 の世 代 の性 を語 る困 惑 さな ど,性 に関 す る多 くの課 題 が表 面 化 して い る。 助 産婦 は この よ うな現 実 の 中,な に を伝 え な けれ ば い け な いの か 。 そ して,助 産 婦 だ か らこ そ 出来 る 「性 」 の伝 え 方 は な いか 。 ゲ ス トテ ィチ ャー の経 験 か ら あ る小 学 校 か らゲ ス トテ ィチ ャー依 頼 が あ った 。 学 校 は性教 育 につ い て も命 の学 習 に つ い て も,学 習 内容 が深 ま る につ れ て,よ り高 度 な知 識 と専 門 的 な指 導 資料 な どの準 備 が必 要 に な り,子 供 達 の追 及 の 状 況 に よ って は,教 職 員 に よる教 材 研 究 だ けで は 限界 が生 じて い る。 そ の よ うな局 面 に対 して 命 を 多 角 的 な視 野 か ら学 ぶ総 合 的 な 学習 活動 に助 産 婦 の協 力 が是 非必 要 で あ る とい う積 極 的 依 頼 が あ った。 「新 しい命 と握 手 す る喜 び 」 ∼ 命 の学 習 へ助 産婦 か らの メ ッセ ー ジ と題 して,小 学 校5年 生220名 の こ ど もた ち と100名 近 い保 護 者 や 参 観 者 の 中 で行 った。 こ こち よ い香 り ・BGM・ 赤 ち ゃん 誕 生 の ス ライ ドシ ョー と した 。 「命 って あ った か い もの な ん だ よね 。」 の 締 め く く りの 言葉 に ・ ・子 供 達 ・保 護 者 ・参観 者(研 究 授 業 の た め他 校 か らの教 師)の ・ ・空 気 が ひ とつ に な った あ の調 和 感 は い まで も忘 れ な い。 いの ち が 生 まれ る場 に い る助 産 婦 は 「性 」 と 「生 」 が 融 合 した 「い の ち」 に関 わ って い る ・ ・だ か ら こそ 「い の ち」 につ い て語 り伝 え な けれ ば い け な い と実感 した。 職 能 団体 が 行 う,い の ちの 教育 社 団法 人 日本 助 産 婦 会 東 京都 支部 は,平 成12年 度社 会 福 祉 医 療 事 業 団 「子 育 て支 援 基 金 」 追 加 特 別 分4832000円 の 助 成 金 を 獲 得 し,助 産 婦 が 小 学 生 に 伝 え る命 の誕 生 モ デ ル 事 業 「AYAの 会 」 と称 す る プ ロジ ェク トを立 ち上 げ た。 この助 成 金 を獲 得 した経緯 は3人 の助 産 婦(助 成金 申 し込 み の新 聞 の 切 り抜 き を持 って き た勤 務 助 産 婦,個 人 的 に性 教育 を お こな って いた 開業 助 産 婦,大 学 で 教 鞭 を と って い る教 員 の助 産 婦)の 何 気 な い会 話 か ら始 ま った と記 憶 して い る。個 人 的 な 人 脈 で お こな う性 教 育 も 日本助産学会誌 第15巻第3号(20023)67ワークショップ 〈助産婦による 「いのちの誕生」教育〉 大事 だ が,職 能 団体 と して行 う社 会 的 責任 と意 義 が あ る の で は な い か ・ ・つ ま り,需 要 者 の 要 求 に あ った 提 供 者 側 の レベ ル ア ップ の研鑽 ま た充 実 した 備 品 と新 しい グ ッズ の 開 発 で あ る。 期 日が迫 って い る な か 「や ろ う!」 「や れ る」「や らな けれ ば」・ ・ひ と りの助 産 婦 は交 付 要 望 書 書 き に徹 夜 を した の で あ る。 それ ぞ れ活 躍 す る場 所 が ち が って いて も同 じ助 産 婦 と して の職 能 魂 は 「や ろ う!」 「や れ る」 「や らな け れ ば」 の ス ク ラ ムで助 成金 を獲 得 しプ ロ ジ ェク トを お こ した。 助 産 婦 の に な う性 教 育 助 産 婦 雑 誌2001,Vol55,No.8,医 学 書 院 に な い よ うは記 して あ る。
ワー ク シ ョップ 〈助 産 婦 に よ る 「い の ち の誕 生」 教 育 〉 ワー ク シ ョ ップ 〈助 産 婦 によ る「 い の ちの誕 生」 教 育 〉
助 産婦 に よ る 「
い の ちの誕 生 」教 育
話題提供者 あゆみ助産院 佐 古 か ず 子 I緒 言 性 と生殖の専 門家 である助産婦 は、生命 が大切に育まれ 、月満 ちて産み 出 され る瞬間 まで 常に女性 の傍 に寄 り添 い見守 り続 けます。 そんな助産婦 だか らこそ感 じている 「生命 の大切 さ、重み」 を伝 えていきたい、伝 えな ければ と思い続 けて機 会あるご とに 「いのちの誕生」 のお話 を実践 して きて23年 目を迎 えま した。 今 では、助産院 を訪れて下 さる妊婦 さんや そのパー トナーの 中に、「学生 時代 に赤 ちゃん誕 生のお話 を聞 かせ ても らい ま した」 と言 って下 さる方 も増 えてきま した。助産婦 として 「い のちの誕生」 の素晴 らしさを伝 えて きて本 当に良かった と実感で きる瞬間です。 国 の内外 を問 わず 「生命」が余 りに も軽 く扱 われ てい る最近ですが、「生命誕生 の現場」に いる助産婦 として よ り一層声 を大に して伝 えてい く必要が あると思 っています。 以下 に当院 の活動内容 につい て紹介 致 します。 II 活動 内容 1、 性 と生の学習会 「のびの会」について 2、 高校生 を助産院に招いて行 う 「いのちの誕生」のお話 3、 学校 に助 産婦が出向 して行 う 「いのちの誕 生」 のお話 4、 社会教育の場(公 民館な ど)に 出向 して行 う 「いの ちの誕生」のお話 III 結語 専 門家 として、社会 ・時 代の要請 に応 えられ るよ う常に努 力 していきたいもの と思 います。 そ して 「いの ちの誕生」教育は、助産婦でなければ … と言 って もらえ るよ う日々研鑽 を重ね なけれ ば思います。 日本助 産 学 会誌 第15巻 第3号(2002.3) 69ワー ク シ ョ ップ 〈性 暴 力 と助 産婦 の役 割 〉 ワー ク シ ョップ 〈性 暴 力 と助 産 婦 の役 割〉
性暴力 と助産婦 の役割
フ ァ シ リ テ ー タ ー クローバーの会 片 岡 弥 恵 子 レイ プ 、ス トー カ ー、夫 ・パ ー トナ ー か らの 暴力 、子 どもの性 虐 待 な どの性 暴 力 は、私 た ちの 生活 の 中で身 近 な 問題 と して起 こっ てい ま す。性 暴 力 は 、女 性 た ちの 生 き てい く力 を奪 い 、心身 社 会 的 な健 康 に大 きな ダ メー ジ を与 え ます 。 身 体 的 な外 傷 のみ で は な く、STDやHIVの 感 染 、妊娠 お よび 中絶 、 さ らに性 暴 力被 害 者 は高 率 でPTSDを 発 症 し、 うつや 自殺企 図 を引 き起 こ しま す 。 私 た ち助 産婦 は、臨床 実践 の 中で 、性 暴力 被 害 に あ った 女性 に接 す る機 会 を 多 く持 っ て いま す。 そ して 、 た とえ接 す る時 間 は短 くて も、助 産 婦 の ケ アは 、 肯 定 的 な意 味 で も否 定的 な意 味 で も女性 に対 し、非 常 に大 きな影 響 を及 ぼ す と いわ れ てい ます。被 害 に あ っ た女性 に とっ て 、よい ケ ア とは どの よ うな もの で し ょ うか。 私 た ち には 、性 暴 力被 害 に関す る正 確 な知 識や 技 術 が 必 要 で し ょ う。しか し、 も っ と重要 であ る と考 え られ る こ とが あ ります。それ は 、女 性 た ちの 一番 の味 方 に な る こ と。 時 に 傷つ いた 女性 た ちの擁 護 者 と して 、時 に言 葉 を持 た な い 女 性 た ちの代 弁 者 と して の役割 です 。 私 た ち は 、女性 た ち の生 き る力 を信 じ、 回復 へ の道 の りに 力 を添 え て い る こ とがで きる で しょ うか。 性 暴 力 の被 害 に あ っ た女性 へ のケ ア につ い て は 、これ か ら私 た ち が創 りあげ て いか な くて はな らない 領域 です 。この ワー クシ ョ ップ で は 、性 暴 力被 害 にあ っ た女 性 へ の ケア に つ いて 、実 際 の病 院 な らび に助 産 所 の 取 り組 み か ら、性 暴 力被 害 にあ っ た女性 へ の助 産 婦 の役割 につ い て、参 加者 全員 で 考 えて い き たい と思 います 。ワ ー ク ショ ップ 〈性 暴 力 と助 産婦 の役 割〉 ワー ク シ ョップ 〈性 暴力 と助 産 婦 の役割 〉
性暴力 と助産婦の役割
話題提供者 まつしま産婦人科小児科病院 小 竹 久 美 子 性 暴 力 は非 日常的 な出 来事 で 、 め った に起 こ らない こ と とされ て きた し、私 もそ う思 っ てい た。 ま た 、被 害 に会 った女 性 に とって は大 きな健 康 問題 で あ る こ との認 識 も非 常 に低 か っ た。 私 が勤 務 す る病 院 で は、 か な り前 か ら警 察 に被 害 届 が 出 され た人 の診 察 や犯 人 逮捕 の た め の証 拠採 取 を引 き受 け て いた。 被 害 に会 った女 性 の多 くは 、表 情 が硬 い とは感 じたが 冷静 で 落 ち着 い て見 え た。被 害 の重 大 さの 反応 で あ る な ど とは 思 って もみ なか っ た。警 察 に依頼 さ れ る まま に診療 の介助 を し、 そ の後 、彼 女 た ちが 必要 とす るサ ポー トにつ い て は心 配 に は な ったが警 察 が提供 、 紹介 して くれ る と思 って いた。 被 害 に あ った人 が 病院 を訪れ た 直 後 は、 私 にで き る こ とは他 に な か った のか とか、なぜ 被 害 が起 こるの か な ど振返 る こ とは あっ て も、 頻繁 では な い こ とも あ り、 そ の後 の行 動 に は結 び つ か なか った。 1996年 に女性 の 暴 力 に対す る問題 に取 り組 ん でい る人 か らの紹 介 で 、カナ ダ で性 暴 力 に あ っ た人 への 支援 や 支援 者 の教 育 に長年 取 り組 んで き た、 カ ウンセ ラー と産 婦 人科 医 師 に 出会 った。彼 女 た ちの活 動 内容 だ け でな く、取組 み の きっか けや 基本 姿 勢 な どに非 常 に触発 され た。 暴 力 は大 きな社 会 の 問題 で あ る と とも に、人 権 問題 で あ り、女 性 の健 康 問題 で あ る とい うこと も認 識 で きた 。 二人 に院 内研 修 の講 師 を依 頼 し、 「被 害 に 会 うとい うこ と」 「医 療 の役 割 」 「被 害 の検査 ・診 察 の 手順 」 「医 療 サー ビスの 原則 」 「支援 の ネ ッ トワー ク」 な ど5回 に わ た っ て講 座 を 開催 した 。 1997年 か らは近 くの小 松川 警 察所 に協 力 を 申 し出 て、性暴 力 の被 害 に会 った 人 で産 婦 人科 の 医療対 応 を希 望す る人 に積極 的 にか かわ る努 力 を して い る。 性暴 力 の被 害 に会 った こ とを 主訴 と して 病 院 を訪 れ る人 は 、年 間25人 か ら30人 程度 で あ る。 また 、子 宮 筋腫 の治 療や 出 産 を 目的 と して 来院 され る人 の 中 に も、通 院 中 に被 害経 験 を開 示 し支 援 の情 報 を 求 め る人 も い る。 最 近 で は 、 出産 後 の夫 か らの 暴力 で 警察 へ 保護 の協 力 を依 頼す る とい うこ とも経 験 し た。 ス タ ッフ は、 看護 教 育 の 中で性 暴 力被 害 に会 った 人へ の 看護 の学習 経 験 は少 な く、被 害 者 へ の対応 は 「難 しい」 「大変 な こ と」 と感 じる とい う。1997年 か らの院 内研 修 を ま とめ た冊 子 を現 場 のマ ニ ュ アル と して利 用 し、看 護 部 門 だ けの研 修 も4回 開催 し、 被 害 の実 態 につ い て知 った り、 診療 や 検 査 の手順 につ い て学 習 した りしてい る。 被 害 に あ った 人 の診療 の場 面 では 、看 護 者 の かか わ りが時 間的 も密度 も高 い と実感 して い る。 夜 勤や 休 日な どで 対応 の必 要 性 が 生 じた 場合 で、 対応 が 「困難 」 と感 じた場 合 は オ ン コール で ス タ ッフへ の支 援 もで き 日本助 産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 71ワー ク シ ョップ 〈性 暴力 と助 産 婦 の 役割 〉 る よ うな体 制 の 準備 を すす め てい る。 今 まで は 、 レイ プの 被 害者 へ の 対応 が 主 で あっ た が 、2001年10月 に 「配 偶者 か らの 暴 力 の防 止 及 び被 害者 の保護 に 関す る法 律 」 が公 布 され た こ とを き っ か け に し、パ ー トナ ー か ら の暴 力 の被 害者 支援 や 支援 に関す る情 報提 供 も した い と考 え て い る。 現在 は院 内 独 自の シ ス テ ム作 りや研 修 の あ りか た に つ い て議 論 の 最 中 で あ る。 暴 力 の被 害 に会 った 人 が比 較 的 早 い時期 に医療 機 関 を訪れ るこ とも少 な くは ない。 初 期 の 対 応 の 良 し悪 しがそ の後 の回 復 に影 響 を与 え る といわ れ て い る。確 か に 「難 しくて」 「重 い 」 問題 で は あ るが 、心 身 の健 康 に大 き くかか わ る問題 だ とす る な らば 、看 護 の 果 たす 役 割 は 重 要 だ とい え る。 院 内研 修 の講 師 を務 め て くれ たセ ラ ピス トの リンダ ジ ンガ ロ さん は 「サ バ イ バ ー(性 暴力 の被 害 に あった 人)に とって よい 医療 は 、すべての人に とって よい医療である」 と伝 えて くれ た。 被 害 に あっ た人 に 人権 を尊重 した ケ アが で き る とい うこ とは 、 日常 の看 護 で も、意 志 や価 値観 を尊 重 した質 の 高 いケ ア が提 供 で き る こ とにつ なが っ て い く と考 えて い る。
ワ ー ク ショ ップ 〈性 暴 力 と助 産 婦 の役 割 〉 ワー ク シ ョップ 〈性 暴 力 と助 産 婦 の 役 割 〉
ドメ ス テ ィ ッ ク ・バ イ オ レ ンス の
実 情 か ら考 え る
話題提供者 清水マタニティ相談所 清 水 亮 I日常 に潜 む女 性 へ の暴 力 両性 の平 等 や マ イ ノ リテ ィの 人権,社 会 福 祉 な どに先 駆 的 な と り くみ を して い る ス ウ ェー デ ンにお い て も女性 に対 す る暴 力 の4件 に3件 は家 庭 内で起 きて お り,女 性 に対 す る虐 待 犯 罪 の78%は 親 しい知 り合 い に よ って な されて い る とい う(2001年2月17日,東 京 ウ ィメ ンズ プ ラザ にお け る国 際 シ ンポ 「安 全 な社 会 を め ざ して女 性 へ の 暴 力 防止 ・根 絶 を!!」 で の イ ンゲ ヤー ド ・サ ー ル ス トロム さん の講 演) 日本 にお い て は性差 別意 識 のな か で女 性 に対 して の暴 力 は 日常 生 活 の 中 に広 く,深 く潜 ん で い る こ とを実 感 して い る。 夫 や 恋 人等 の 「親 密 な」 関 係 にあ る男 性 か ら女 性 へ の暴 力 で あ る ドメ ス テ ィ ック ・バ イ オ レンス(DV)が 女 性 の人 権 侵 害 と して 言 葉 を も ち定 義 づ け られ るよ う にな った の は この数 年 間 の こ とで あ るが,DVと い う言 葉 は あ っ とい う間 に 日本 中 に ひろ ま り医療 者 と して 相談 を受 け る機 会 も多 くな って い る。 相 談 を とお して 女 性 に対 す る暴 力 は 女性 の健 康 お よ び生 命 を危 険 に さ らす 問題 で あ る こ と の認 識 を ふ か めて い る。 II 性 の相 談 に お け るDV "女性 が 自分 の か らだ を知 り ,主 体 的 に生 き,納 得 して 自己 決 定 で き る よ うお互 い に支 え あえ る場"づ く りを 目指 す女 性 た ち と学習 を重 ね,1998年11月 よ り毎 月1回 「女 性 の か らだ と性 の相 談 」 電 話 相 談 を実 施 して い る。 そ こに寄 せ られ る相 談 内容 の3件 に1件 は 「避 妊 に 協 力 しな い」 「性 行 動 を強 制 す る」 な どの 性暴 力 と思 わ れ る性 行 為 につ いて の 悩 み相 談 で あ る。DVと い う概 念 に よ って,強 い られ る性 行 為 は暴 力 犯罪 で あ る ことの認 識 に も とつ い た 相 談 姿勢 に な って い る。 III DV被 害 者 サボ ー トに お け る助 産婦 の役 割 関 わ って い る民 間 シ ェル タ ー に お け る具 体 的 な活動 の紹 介 を とお して助 産 婦 の 役 割 を考 え た い。 日本 助 産学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 73ワー ク シ ョ ップ 〈性 暴 力 と助 産 婦 の 役割 〉 IV性教 育 に お け る女 性 の人 権教 育 性 に つ い て の話 題 を 口 にす る こ とは長 い間 日本 の社 会 の 中で は タ ブ ー に さ れ,特 に女 性 は 口を つ ぐま され て きた 。家 庭 の 中 で語 られ に くい性 教 育 の 実 践 者 と して10代 の若 者 の教 育 機 関 で 話 を す る機 会 が あ る。 そ の 際 に,「 親 しい男 性 か らの レイ プ(デ ー トレイ プ)」 に つ い て の 認 識 ア ンケ ー トを実 施 し,"対 等 な二 人 の 関係"に つ いて 考 え る 時 間 を もつ よ う に して い る。 ア ンケ ー ト調 査 で は若 者 の56.7%は 「状 況 に よ って は 男性 が女 性 に強 い た性 行 為 」 を容 認 す る と して い る。 少 年 ・少女 に対 して のDV教 育 が早 急 に必 要 で あ る。
ワー ク ショ ップ 〈助産 婦 と国 際 支援 〉 ワー ク シ ョップ 〈助 産 婦 と国 際支 援 〉
世界へ広がるその可能性
フ ァ シ リ テ ー タ ー 東京女子医科大学看護学部 李 節 子 21世 紀,世 界 は好 む と好 ま ざる と にか か わ らず,国 際社 会 の 中 で ま るで,生 き物 の よ うに 影 響 しあ い うごめ い て い る。 昨 今 の 国際 情 勢 は戦争 と憎 しみ,対 立 構 造 の渦 の 中,人 類 生 存 の危 機 を孕 ん で い るか の よ うであ る。 い ま こそ,相 互 に宗 教,文 化,人 種,国 籍 の違 い,異 な る こ とを認 め あ い,人 類 の平 和 的共 生 に何 か で き るの か,1人1人 の英 知 が試 され て い ると いえ る。 助 産業 務,そ の仕 事 の本 質 は 国境 を越 え る普 遍 的業 務 で あ る とい え る。 人 の 生命 誕 生 に か か わ る助 産 婦 の本 来 業 務 に 国境 は な い。助 産 婦 とは人 類 の も っ と も根 源 的 な業 に携 わ る者 で ある。 それ ゆ え に,そ の 倫 理 的 責務 もま た問 わ れ て い る。 この度,第16回 日本 助 産 婦 学 会 学 術 集 会 にお い て,「 助 産 婦 と国 際 支 援 」 を テ ー マ に ワー クチ ョ ップ が開 催 され る こ とは,非 常 に喜 ば しい こ とで あ る。 そ れ は もっ と も今 日的課 題 で あ り,時 代 の要 請 といえ るか らで あ る。 また,助 産 婦 の あ るべ き姿,原 点 を 問 う こ とで もあ る。 話 題 提 供 を三 砂 ちづ る さん(国 立 公 衆 衛 生 院)と 永 瀬 つ や子 さん(茨 城 県立 医療 大 学)に して いた だ く。 そ れ ぞれ の 方 か ら国際 社 会 に お ける豊 か な体験 を お 聞 かせ いた だ き,助 産 婦 が 国際保 健 に果 たす べ き役 割 につ い て学 ぶ 場 と した い。 ま た,参 加 者 の皆 様 と も経験 を分 ち あ い,世 界 へ広 が る助 産 婦 の可 能 性 につ いて も探 って い きた い と思 う。 日本 助 産 学会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 75ワー ク シ ョップ 〈助 産 婦 と国際 支援 〉 ワー ク シ ョ ップ 〈助 産婦 と国 際 支援 〉
助産婦 と国際支援
話題提供者 国立公衆衛生院疫学部 三 砂 ち づ る 「助 産 学 会 」 で の ワ ー ク シ ョ ッ プ で あ る の で 、 助 産 の パ ラ ダ イ ム が 医 療 や 看 護 の パ ラ ダ イ ム と は 異 な っ て い る 、 と い う認 識 は す で に 共 有 さ れ て い る こ と を 前 提 に 、 国 際 保 健 に 関 わ る3つ の 話 題 を 提 供 し 、 参 加 者 の 経 験 を 分 か ち あ う 場 と し た い 。 話 題1.出 産 の ヒ ュ ー マ ニ ゼ ー シ ョ ン は 進国 ・中 進国 の賢沢 か? 1996年 か ら2000年 ま で の5年 間 、 ブ ラ ジ ル 北 東 部 セ ア ラ 州 で お こ な わ れ た 、 国 際 協 力 事 業 団 ブ ラ ジ ル 家 族 計 画 母 子 保 健 プ ロ ジ ェ ク トは 、 現 地 の 人 か ら 、 お 産 を 示 唆 す る 「光 の プ ロ ジ ェ ク ト」 と よ ば れ 、 名 実 と も に 、 助 産 の 概 念 を 中 心 に す え 、 助 産 婦 と は な に か 、 を 正 面 か ら 取 り組 む プ ロ ジ ェ ク ト と な っ た 。 一 対 一 の ケ ア 、 女 性 と と も に あ る こ と 、 あ る が ま ま を 受 け 入 れ る こ と 、 自 ら の 変 革 に む き あ う こ と 、 な ど を 中 心 と し た 「出 産 の ヒ ュ ー マ ニ ゼ ー シ ョ ン 」 が キ ー ワ ー ドで あ り 、 ブ ラ ジ ル 国 内 外 に 発 信 を 続 け た 。 日 本 の 開 業 助 産 婦 の 姿 は そ の ロ ル モ デ ル と な り 、 多 く の 日 本 の 助 産 婦 が 関 わ っ た 。 ち な み に ブ ラ ジ ル は 、 い わ ゆ る 発 展 途 上 国 の 中 で は 、 中 進 国 、 と よ ば れ る 、 あ る 程 度 の 経 済 社 会 発 展 を す で に 遂 げ た 国 で あ る 。 お 産 の ヒ ュ ー マ ニ ゼ ー シ ョ ン に 関 す る レ タ ー を 国 際 雑 誌 に 発 表 す る と 、 さ っ そ く ア フ リ カ で は た ら い て い る 麻 酔 医 か ら 、 メ ー ル で 反 論 が き た 。 「人 間 的 な お 産 な ど 、中 進 国 の 贅 沢 で あ る 。 ア フ リ カ で は 、 女 性 た ち は 設 備 の 不 備 か ら 、 死 ん で い く の だ 。 も っ と 先 に や る こ と が あ る だ ろ う 」 国 際 政 治 に 翻 弄 さ れ 、 債 務 に 苦 し む ア フ リ カ の 政 治 経 済 状 況 に よ っ て 、 女 性 が よ り 苦 し い 立 場 に お か れ て い る こ と は 十 分 に 想 像 で き る 。 し か し 、 「人 間 的 な 出 産 」 が 贅 沢 で あ る 、 と は ど う い う こ と だ ろ う か? 80年 代 か ら の 自 然 な 出 産 、 ア ク テ ィ ブ バ ー ス 、 な ど の 一 連 の 動 き は 、 あ る 程 度 出 産 の イ ン フ ラ と 安 全 性 が 確 保 さ れ て か ら の 、 そ れ こ そ 「先 進 国 の 恵 ま れ た 知 的 な 女 性 」 の よ り "自 分 ら し さ"を 求 め て 、 の 活 動 の よ う に い わ れ て き て 、 途 上 国 の 出 産 の あ り よ う と 連 動ワ ー ク ショ ップ 〈助産 婦 と国 際支 援 〉 話 題2.TBA(伝 統 的 助 産 婦 ト レー ニ ン グ)は 有 効 か? 発 展 途 上 国 の 妊 産 婦 死 亡 率 低 下 を 目 的 と し て 、1987年 にWHO主 導 で 提 唱 さ れ たSafe Motherhood戦 略 で は 、 出 産 に 関 わ る 人 材 が 十 分 で は な い 地 域 に お け る 伝 統 的 助 産 婦 (Traditional Bhgth Attendant-TBA)の ト レ ー ニ ン グ 、 教 育 が 重 要 な ポ イ ン トの 一 つ と な っ て い た 。 と こ ろ が 、1997年 に ス リ ラ ン カ の コ ロ ン ボ に お い て お こ な わ れ たSafe Motherhoodの10年 の 評 価 会 議 に お い て 、 「TBAの ト レ ー ニ ン グ は 妊 産 婦 死 亡 率 低 下 に 役 立 っ て い な い 」 と い う コ メ ン トが 出 て き て し ま っ た 。 今 ま で 行 わ れ て き たTBAト レ ー ニ ン グ の マ ニ ュ ア ル を 見 る と 、 ほ と ん ど が 衛 生 観 念 の 普 及 と リ ス ク の 同 定 な ど 、 医 療 知 識 の 付 与 に ペ ー ジ を 割 か れ て い る こ と が 多 い 。TBAは 地 域 の 文 化 的 な 文 脈 の 中 で 出 産 を 担 っ て き た 人 材 で あ る が 、 こ の よ う な 人 た ち に 、 医 療 パ ラ ダ イ ム の 一 部 を 理 論 と し て 伝 授 す る こ と の 是 非 が 問 わ れ て い る の で は な い か?有 効 で あ り う るTBAト レ ー ニ ン グ は な い の だ ろ う か?い わ ゆ る 助 産 の 知 恵 、 は 、TBAト レ ー ニ ン グ に 生 か さ れ て き た の だ ろ う か?TBAト レ ー ニ ン グ に 実 際 に 携 わ っ た 方 の 経 験 は ど う だ ろ うか?日 本 の 歴 史 的 な 動 き を 振 り 返 っ て み て 学 ぶ こ と は な い だ ろ う か? 話 題3.国際協力 に携 わ る こ と を め ざす助 産 婦 に 必 要 な資質 と な 何 か? 国 際 協 力 に 携 わ る 人 材 と し て 必 要 と さ れ て い る の は 、 職 種 と し て の 専 門 能 力 と 、 コ ー デ ィ ネ ー ト能 力(企 画 、 段 取 り の 力 、 語 学 力 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力)で あ る と い わ れ て い る 。 助 産 婦 、 と い う職 業 は 、 世 界 最 古 の 職 業 の ひ と つ で は あ る が 、 実 際 に は 、 そ の 国 の 社 会 ・政 治 状 況 の 影 響 か ら 、 現 在 、 資 格 と し て 存 在 し て い な い 国 も 実 際 に は 多 い 。 助 産 婦 の 国 際 協 力 、 を 考 え る こ と は 、 そ の ま ま 、 助 産 婦 の 本 質 的 な 仕 事 と は 何 な の か 、 を 考 え る こ と に 直 面 す る こ と に も な る 。 助 産 婦 と し て 国 際 協 力 に 携 わ る こ と は 、 看 護 婦 と し て 携 わ る の と ど こ が 違 う の か?「 助 産 婦 は 、 お 産 だ け で な く 、 リ プ ロ ダ ク テ ク ブ ヘ ル ス ー 般 の 専 門 家 に 」、 と い う 議 論 に 、 国 際 的 な 普 遍 性 は あ る か?日 本 の 助 産 婦 が と く に 貢 献 で き る こ と と は な に か?コ ー デ ィ ネ ー ト 能 力 の 向 上 、 と い う面 か ら 、 助 産 婦 が 国 際 協 力 に 携 わ る 人 材 に 貢 献 で き る ス キ ル が あ る の で は な い だ ろ う か(タ ッ チ ン グ 、 受 容 能 力 の 開 発 、 レ ス ポ ン ス す る か ら だ を つ く る こ と 、 な ど)? 日本 助 産 学会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 77
ワー ク シ ョップ 〈助 産婦 と国 際 支援 〉 ワー ク シ ョップ 〈助 産 婦 と国際 支 援 〉
モルデ ィブ共和国の現状 か ら考 える
助産婦 と国際支援
話題提供者 茨城県立医療大学 永 瀬 つ や子 はじめに 青年海外 協力隊の助産婦隊員 として1987年 か ら1990年 までモルデ ィブ共和 国で活動 した。 その後1997年 、1999年 、2000年 と訪問 し、国の 目覚 ま しい発展を見る ことができた。同 時に、家庭出産か ら病院出産へ と変化 してい く様 子や リプ ロダクテ ィブ及びセ クシャル ・ヘ ルス ・ライ ツの課題 な どを垣間見 るこ とができた。モルデ ィブの現状を紹介 しなが ら、助産 婦 と国際支援 につ いて皆様 と考えてい きたい。 モル ディブの概要 モルデ ィブ共和国はイン ドの南 西、イ ン ド洋 に浮かぶ島国で、1190の 島 々で構成 され国で ある。201の 島に人が住み、国の総面積は淡路 島の約半分、人 口は約27万 人の小国であ る。 宗教 は100%イ ス ラム教 、公用語 は英語 とデベ ヒ語(現 地 語)、人種 はモルデ ィブ人 とい う 単一人種 ・言語の 国である。 モル ディブの変化 1990年 以後のモルデ ィブの発展 は 目覚 しい。1990年 前後は、首都以外 の島 には電話はな く、殆 どの島で電気 も使用 できなかった。病院 は全国で5つ 、首都以外の病院では帝王切 開 等の手術 は不可能であった。1994年 以後に大幅 な保健 医療分野の改革が され、自国で正看護 婦の教育が開始 し、首都 には第3次 レベルまでの医療が対応で きる病院 が開設 された。 地域 開発 計画 が進み、殆 どの島が24時 間電気や 電話の利 用が可能 となった。地方病院 には産婦 人科 、外科、麻酔科 医が常勤 とな り、以前 は首都以外対応 できなか た帝王切開な どの緊急手術 が5ヶ 所 となった地方病院で可能 となった。保健指標 は1990年 か ら1998年 の間で、平均寿 命は65→70歳 、乳幼児死亡率は48→27(出 生千対)、妊産婦 死亡率 は500→200(出 生10万ワ ー ク シ ョ ップ 〈助 産 婦 と国 際支 援 〉 家庭でお こなわれていた。フールマ は妊娠 へのマ ッサ ージや健診、出産介助、産褥 ・新生児 のケアを行 う。デベ ヒメデ ィスンとい うイ ン ドのアユルベー ダーを起源 にもつ薬草を使用 し た施 術的なケア も行 ってい る。家庭での出産は、家 族や親戚が集 ま り大勢の人に囲まれ て行 われていた。 1997年 の訪 問時は、出産場所 が家庭か ら病院へ移行 し始 めていた。妊産婦や家族の中には フールマによる出産介助や ケア を遅れ た もの と考え、病院での医師 による処置が安全 とある と考 える ようになってきた。最南端 の地 域病院のデー ターに よる と、病院出産は1994年 で 南端地域全 出生662の うち264件(40%)、1997年 では全出生483の うち414件(86%)と 増 加 した。 帝王切開術は1994年 には33件(5%)、1997年 には67件(14%)と 増加 していた。 モルディブの特徽 国民が100%イ スラム教 であるが、中近東のよ うな厳 しさはない。男女 とも就学率は高い。 政府機関で働 く女性 も多い。大 きな特徴 は、高い離婚率 と多 くの男性が リゾー ト島や首都 、 海外に働 きにでてい るこ とだ。夫婦 が離れて暮 らしてい る家族が多い。2000年 に家族 計画 研究で南部の島で行 った調査で は、対象女性205名 中、1年 間 で夫の滞在が6ヶ 月以上 の 者 は63%、 離婚経験 者は52%。 離婚経験者 の平均離婚回数 は2.3で あった。特記すべき点 は、同 じ男性 と離婚再婚 を繰 り返 していることだ。離婚原因は調 査されていない。男女の浮 気や夫か らの虐待な どがその一因 となってい るようだ。また、80%以 上は夫 が避妊具使 用を 不快に思 ってい る。70%は 夫か ら性交渉 を強要 された ら断れない。41%は 夫が避妊具使用 を 希望 した くない と思っていた。近代的 避妊法使用 者は39%で あった。モルデ ィブ人研究 者か ら、夫が性交渉 を強要 し応 じなければ暴力や離婚にいた る高齢 者女性が多 く存在す ることを 教 えられ た。公式な報告はなされていないが、望まない妊娠に対 して、体を痛 めつけ流 産を 誘発 する者や外国で人工妊娠 中絶を行 う者 もいる。未婚妊娠 で罰せ られ るのは女性のみ等 リ プ ロダクテ ィブ及びセ クシャル ・ヘルス ・ライツが守 られていない現状がある。 助産婦と国際支援 モルデ ィブでの出産 ケアの変化や リプロダ クテ ィブ及びセ クシャル ・ヘル ス ・ライ ツの課 題 は多 くの国で も存在す る。先進国では 自然な出産 を求める女性や家族、助産婦 の働 きによ り自然で人間的なお産へ と変化 している。 リプ ロダクテ ィブ ・ヘルスを守るための活動 も盛 んになって きている。 しか し、世界 の中、特に発展 途上国 と呼 ばれ る国々には、モルデ ィブ のよ うに 自国の中で作 り上げた出産 文化 を否 定 され、医療 が介入す るお産へ と変わってきて いる。 リプ ロダクテ ィブ ・ヘ ルス ・ライ ツが侵害 されている人々も大勢 いる。助産婦 に求 め られ る国際支援 としては、①不必要 な医療介入 をな くした人間的 な自然 な出産 を、人々の手 にも どす手助けを行 うこと。② リプロダクテ ィブ及びセ クシャル ・ヘル ス ・ライ ツに関わる 課題 を科学的に明 らかに し、人々が性 と生殖に関す る安全が保障 され、 自らの意思で生殖に 関 する決定権 を享受で きるようにサポー トす るこ とが求め られ るのではないか㌔ 日本 助産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 79