スポーツ分野への理学療法士の将来性
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(2) 778. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 定資格の取得は義務づけられている)。さらに競技ができる身. ポーツ現場ではテーピング,ストレッチング,救急法など,一. 体環境への介入が求められるためテーピング,足底板,スト. 般的な PT 教育では取り扱いが少ない。また物理療法などは独. レッチング,徒手療法などの手段が用いられる。しかしなが. 自に発展してトップ選手は外国での専門施設などでの体験もあ. ら PT には開業権がないため業として行うには問題があり,前. り,日本の一般的な医療機関内にある機器を凌駕するかのよう. 述した AT の資格を取るなどしておいた方が得策であろう。ち. な機器も誕生してきている。現状のスポーツ界で使われている. なみに筆者はトレーナーを目指してきたこともありあん摩マッ. 手法や機器についての学習が必要で,そこからさらに PT がも. サージ指圧師,はり師・きゅう師,AT の資格を有している。. つ専門知識と技術展開ができるかということになる。. 現行の医療の教育ではスポーツ現場での対応ができないため,. 理学療法への評価は選手の判断で決まり,症状の改善に働け. 筆者はより身体機能的な展開が要求されていることからファン. ばよいが,効果がなければ信頼も得られない。その意味では試. クショナルの形容をつけたテーピング,足底板,エクササイズ,. されるような状況も少なくない。病院で資格社会に守られてい. 徒手療法を考案してきた。これらの手法の開発にあたってダイ. る PT にとってはなにができるかを問われ厳しい感じもするだ. ナミック・アライメントという動的な骨の配列の変化に注目. ろう。しかし反対に評価されれば絶大なる信頼に結びつく。そ. してきた。下肢における 1980 年代に発表した Knee-in & toe-. れでは選手の評価について考えてみる。主に外傷後のリハビリ. out,Knee-out & toe-in や腰痛分類の屈曲型,伸展型,回旋型,. テーション,後遺症対策のリコンディショニング,競技動作へ. 混合型などの概念はまさしく機能的な動きを見ていく視点から. のパフォーマンス向上,疲労回復へのコンディショニングの場. 生まれたものである。. 面が想定される。具体的内容として症状がある場合の改善はお. 理学療法展開の中で PT が関与していくためにはファンダメ. もに痛みと疲労であり,発生状態を分析して必要な理学療法を. ンタルテスト(運動の場合にはエクササイズ)の概念が必要と. 行う。予防面も含め必要があればテーピングなどを行う。次に. なろう。これは単なる ROM や MMT などの構造的な変移評. 選手自身が感じることとして動きやすさ,力の入り具合,筋出. 価や歩行解析のレベルを発展させて,より必要とされる運動機. 力,動作の円滑さが挙げられ,自身がもつ競技動作での優良な. 能を評価する方法である。従来の ROM や MMT だけでは複. フォームへの展開のしやすさで確認される。PT は理学療法の. 数関節の統合的能力の評価ができず,競技動作に必要な動作へ. 展開のうえで外傷および症状発生のメカニズム,治癒過程への. の能力検定も難しいであろう。たとえば,投動作の上肢に注目. 好的環境の設定,競技動作へ続くファンダメンタルなエクササ. すれば体幹の姿勢,肩甲骨の動き,肩甲上腕関節の動きをより. イズの施行,競技復帰時の再発予防という一連の流れを理解. スムーズに行えるための基礎的な動きの確保ができているかが. し,施行できる的確な理学療法サービスをイメージしておくこ. 大切である。もちろん実際の投球では下肢からの連動も必要な. とが大切である。. のは当然である。ここで我々が行っている上肢帯の運動を紹介. 最後に苦言になりますがスポーツの分野ではすでに多くの理. する。通称,ウィンギング・エクササイズと呼んでおり,①開. 学療法が展開されている。我々が基礎として受けてきた国家試. 始肢位は座位または立位で肘屈曲 90°位,前腕中間位で肩関節. 験内容や医療機関内での業務内容で対応するには不十分といわ. 屈曲 90 度とし,②水平外転位まで胸開き運動を行い,脊柱で. ざるを得ない。また文献や様々な講習会などがあるが,これら. は円背を防止し,肩甲骨内転の運動を意識させる。肘を下げな. の事実を鵜呑みにするだけではなく,常に追試して検証してい. いように気をつけさせる。これは肩関節屈曲時に三角筋前部線. く心構えが必要である。臨床とは常に検証の場であり,必要で. 維から中部線維の筋機能交代とともに棘上筋による筋緊張が上. あれば仮説を立てて目の前にある現象への分析の正否をあらゆ. 腕骨頭の取りこみ作用として要求される。この運動の際に上か. る角度から検証せねばならない。そしてなんらかの理学療法手. らの負荷をかけると棘上筋機能の低下がある者は 2 kg の負荷. 段を講じるときにはできうる限り自分の身体で確認し,その感. でも肘下がりを起こすことがある。なお正常者でも重い負荷で. 覚を基に選手との相互理解に結びつけていく。また多くの動作. は肘下がりが起こる。③前腕を回内しながら肘を伸ばして最大. への解析や,合理的な身体運動については身近な動作から効率. 外転位までもって行く。この運動は多くの投動作に要求される. について考え,さらに強い運動となる際の身体条件について必. 肩甲骨の上方回旋が求められている。その運動から②の状態に. 要な要素を把握しておくべきである。. ゆっくり戻し,さらに①の開始肢位に戻していく。両者とも. 筆者等は機能的見方を勉強する会(エフテックス・インス. ゆっくり下ろすことで各筋の遠心性収縮を行うことができ肩甲. ティチュート)を全国的に開催しており,興味のある方は参加. 骨,肩甲上腕関節への動きを意識させられる。このウィンギン. してみていただきたい。. グ・エクササイズは円背矯正,上腕骨頭前方偏位の矯正ととも. 最後になりますが,このような機会をいただいた学会長およ. に肩甲骨内転筋群の強化にもつながり翼状肩甲への対策に有効. びスポーツ分科学会の皆様に心より感謝いたします。. である。. スポーツにおける理学療法の可能性を実現するために スポーツ選手への理学療法展開における PT の専門性を考え てみよう。基礎医学的な理解や障害学,さらに物理療法機器の 利用,運動療法の展開など挙げられるが,前述したようにス. 文 献 1) 川野哲英:ファンクショナル・エクササイズ.ブックハウス・エ イチディ,東京,2004. 2) 川野哲英:ファンクショナル・テーピング.ブックハウス・エイ チディ,東京,1988..
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