Sub Title
La traduction de Poe par Mallarmé (1)
Author
原山, 重信(Harayama, Shigenobu)
Publisher
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
Publication
year
2013
Jtitle
慶應義塾大学日吉紀要. フランス語フランス文学 (Revue de Hiyoshi.
Langue et littérature françaises). No.57 (2013. 10) ,p.33- 63
Abstract
Notes
Genre
Departmental Bulletin Paper
URL
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koar
a_id=AN10030184-20131031-0033
マラルメのポー翻訳(1)
1)
原 山 重 信
0.マラルメと英語
マラルメを読むことの魅力とは何であろうか? 例えば、ロバード・ブラ ウニングの詩「ポーフィリアの恋人2)」に倣うなら、自分が補足し得た女は もう殺してしまいたい、つまり捨ててしまいたいと思うのが、男の深層心理 に潜む謂わば男の性さがだとするなら、マラルメは何度読んでも納得がいかない 部分が何かしら残り、汲めども尽きないという点にあるのではなかろうか。 したがって、マラルメを問題にする際、このわかりにくい書き方を不問に 付すことはできない。マラルメがなぜこのようにわかりにくい書き方をする のかという問題に関しては、そのすべてを合理的に説明するたった一つの鍵 があるわけではないが、その一部、もっと正確に言えば、その始まりをおぼ ろげながら示すことは可能なのではないか。マラルメを読むに当たって、誰 もが味わう困難、これはどこから来るのか? この問いにいささかなりとも 解明の糸口を与える、もしくはその一部にアプローチしようというのが本論 の意図するところである。 その手続きを始めるに当たって、マラルメが英語教師であったという事実 は、無視することができない。マラルメの人生の半分を占める英語教師とし てのキャリアが、詩人としての活動にどう影響したか、を全く等閑視するこ とは片手落ちと言うべきであろう。たとえ、彼が無能な教師で、英語ができ なかったという評価が一般的であったとしても、30
年もの年月を彼はこの 職業に費やしたのだ。そして、その間、かなりの時間をこの職業のために割 いたはずなのだ。マラルメは、例えばジャック・シェレルが言うように、英語力が乏しくて、 英語が彼の中に十分浸透するというレベルではなかった3)と認められるにせ よ、英語教師を生業とし、日々教室で英語を教えていたキャリアが、全く創 作に影響を与えなかったという考えも容易に肯ずることができない。 私が問題にしたいのは、マラルメの英語力ではない。英語ができなかった から英語に影響されなかったのだという判断は全く適切ではないからだ。逆 に、できなかったからこそ、そこに誤訳が生まれ、これがマラルメのフラン ス語のわかりにくさを形成することにいささかなりとも寄与したのだと考え たい。 英語を母国語のようにあやつるバイリンガルのような人ではないからこそ、 英語を丁寧に翻訳して、そこからたどたどしく、英語的な要素を自らのテク ストの中に忍ばせていったというのが実態なのではなかろうか。ここには翻 訳というものがもつ本質が表れているように思われる。つまり、英語という 比較の項をもつことで、自身のフランス語が相対化され、伝統に則った模範 的な文体をつくる代わりに、もっと異質な要素を取り入れようという遊び心 というか、あまのじゃく的な精神が生まれたとも考えられるのだ。 ともあれ、マラルメは英語教師という職業を選ぶわけだが、それ以前から 読んでいたポーの翻訳に手を染める。これがマラルメ的な文体をつくるきっ かけの第一歩だったと考えたい。 彼が翻訳したのはポーの韻文詩である。これを散文に訳すことで、韻文で なくても「詩」が書けるのだというテーゼを彼は自分の中で確立していった ものと思われる。「哀れで神聖な我らのボードレールが終わったところから 始める4 4 4とは、私には全く恐ろしい気がします4)」と、ボードレールが没した
1867
年8
月から約1
箇月後にヴィリエ・ド・リラダンに宛てた書簡の中で、 マラルメはこれから待ち受ける創作活動の困難さを予感して述べている。こ の時期マラルメは、いろんな雑誌に投稿を試みながら実現しなかった、ポー の詩の翻訳を手掛けていた点から考えても、ここで問題になっているのは単 に『悪の華』の詩人としてのボードレールだけではなく、ポーの翻訳者とし てのボードレールとも考えられる。つまりここでは、独自の詩風をどう確立していくか、という最も肝心な点だけではなく、ポーの翻訳を世に出すに当 たって、ボードレールとの違いをどこで出していくかということも同時に問 題になっていたのではないか。マラルメが専ら韻文詩の翻訳を手掛けたのは、 短編及び詩論は既にボードレールによって完璧にフランス語に移されている という認識があったからであろうと思われる。自らの訳業は、これを補完す るものとして位置づけていたのだろう。 実際、ボードレールが訳した韻文詩は、『異常な物語
Histoires
extraordi-naires
』の冒頭に置かれた「我が母に」(À ma mère
)、短編「リジイアLigeia
」に組み込まれた「勝ち誇る蛆」(Le Ver Conquérant
)、「アッシャー家の崩壊
La Chute de la maison
」中の「幽霊宮殿」(Le Palais hanté
)、それに「構成の哲理」(
The Philosophy of composition,
ボードレール訳ではGenèse d’un poème
)がその創作の過程を語る「大鴉」(Le Corbeau
)の4
編にとどまる5)。これらの中で唯一、韻文詩を独立して訳して世に問うたも のは、
1853
年3
月1
日の『芸術家L’Artiste
』誌に発表された「大鴉」だけ であった。彼自身、1864
年の「翻訳者の意見Avis du traducteur
」と称する 短文のなかで次のように述べている。 もし私の仕事がフランスのような国で実りあるものとして続けられる としたら、私には詩人エドガー・ポーと文芸評論家エドガー・ポーを示 すことが残っているだろう。真の詩の愛好家なら誰でも、この二つの務 めのうち最初のものは果たすのが殆ど不可能であり、私の翻訳者として の極めて慎ましく、極めて献身的な能力をもってしては、リズムと脚韻 を欠いた逸楽を埋め合わせることができないことをおわかりいただける だろう6)。 マラルメがこれを読んだという確証はないが、まさにこの言葉をそのまま 文字通りに受け取り、先輩詩人が行った短編と評論の翻訳を繰り返すことな く、韻文詩の翻訳に敢えて挑んだのである。ボードレールがここで言うリズ ムと脚韻を思い切って捨象し、逐語訳に徹したのだ。彼の翻訳はこのポーの詩に始まって、『英単語』『古代の神々』、そして『インド説話集』といった 教科書類に至るまで、自ら
« calque »
(透き写し)と呼ぶ手法に貫かれてい る。 マラルメは、10
代の頃、『落穂集Glanes
』と名付けられたノートにポー の韻文詩の逐語訳を載せて以来、1888
年に単行本の『ポー詩集』を出版す るまで、その翻訳に断続的に関わった。それぞれの時代において、だんだん 進化を遂げていったようだが、恐らくリセの教室でも取り上げられたことが あったのではないだろうか。このように、彼が親しんだのは、普通の模範的 な リ セ の 教 師 が 教 え る べ き 英 語 で は な か っ た よ う だ。 そ れ は 視 学 官 (inspecteur
)の数々の証言が残されている7)から、マラルメ研究者は固より、 マラルメの伝記や基本的な研究書に目を通した経験のある者なら誰でもわか るはずである。 さらに、上記のような、80
年代以降、教科書として出版されたり、或い は生前活字にはならなかったものの、没後発見された英語関係の著作は、彼 が教室で行っていた授業そのものではないにせよ、これを色濃く反映してい るものであることは疑いの余地がない。何故なら、あまつさえ体力的にも弱 くて、教師の仕事のために詩を書く時間が足りなかったマラルメに、授業で 行ったこととは全く別のものを、さらに著述するほどの肉体的、精神的エネ ルギーがあったとは考えられないからである。 だとすれば、そこに当然、マラルメの裏の本業たる詩作へ、英語が反映さ れていないなどと考えることのほうが不自然だということが了解されよう。 ここではまず手始めに、ポーの翻訳をめぐる問題に焦点を当てて見ていき たい。1.ポー翻訳の経緯、特徴
マラルメは、ポーの詩のどういう点に惹かれたのだろうか? マラルメは、少年の頃、イギリスの家庭と付き合いがあり、その家の少女 に憧れるなどして、さらに当時、時代の最先端を誇っていたイギリスという国そのものにも興味をもったと推定される。それが英語学習への興味の第一 歩であったろう。 また、幼くして母を亡くし、さらに妹も相次いで失ったことで、代々の家 業であった平平凡凡たる官吏への道へとあっさり進むという安直な進路選択 への疑問が湧いてきたのだろう。そこで、ロマン主義の文学に触れ、ヴィク トル・ユゴーを読んでその圧倒的な影響の下に詩を書き、バンヴィルを手本 としてその巧みな作詩法を摂取し、ゴーチェ、ボードレールと読み進むなか で、恐らく、その翻訳者たるボードレールを通じてポーに出会うことになっ たのだろう。これは、当時の文学青年にはよくあったことで、何もここにマ ラルメの独自性があったわけではない。しかし、それからが違う。 ポーの詩には、喪のテーマが多く、母、妹を相次いで亡くして、詩人とい う道を選んだ青年期のマラルメの機微に触れるところがあったものと思われ
る。ポーの詩に出てくる
Lenore, Helene, Ulalume, Annabel Lee
といった死んだ女は、マラルメ自身の死んだ妹マリアを想起させる。 マラルメのポー翻訳は以下の経緯を辿る。
①少年期から、フランスの先輩詩人たちと共に、ポーにも関心をもち、『落 穂集
Glanes
』に直訳を載せている。ここに載せたのは、以下の詩である。1.
「ヘレナにÀ Hélène
」2.
「ユラリュームUlalume
」3.
「天国の ある人にÀ quelqu’un qui est dans le paradis
」4.
「アナベル・リーAnnabel Lee
」5.
「ユーラリー
Eulaly [sic]
8)」6.
「円形闘技場Le Colisée
」(断章)7.
「大鴉Le
Corbeau
」8.
「レオノアLénore
」の8
編と、「鐘のうたLes Cloches
」がこれらとは別に「鐘」のテーマでまとめられた中に置かれている。 ②次に、恐らく
62
年頃から、今度は出版する目的で、本格的に翻訳に着手 し、60
年代を通じて何回か雑誌発表の機会を探るが、実現しない。 ③70
年代に至って、2
度、都合15
篇の翻訳が雑誌に発表される。 ④88
年、89
年と立て続けに、それまでに雑誌発表してきた20
篇の詩に「註 釈Scolies
」を書き、さらに新訳を加えて、単行本『エドガー・ポー詩集』 に、都合36
篇の翻訳を発表。マボットの全集に収録されたポーの詩は、私の数え間違いでなければ
101
篇あるから、マラルメはその約3
分の1
を翻訳したことになる。2.語彙面での影響関係
パリ上京以前のマラルメは、ポー翻訳の成果を、主として韻文詩に適用さ せようと努めたように見える。それは、繰り返しの積極的な導入や、語彙の 借用に表れている。 ポーの構成の詩学を最も反映させて書かれた詩篇として1863
年に書かれ たと推定されている「窓」、「青空」などが既に指摘されており、「海の微 風」の書き換えに殊更繰り返しが用いられていることもシェレルなどによっ て指摘されている9)ので、ここでは別の詩篇を取り上げる。それは、破棄された詩篇「エロディアード古序曲
Ouverture ancienne d’Hérodiade
」である。この繰り返しの詩学の実践の最たるものが、「古序曲」、「イジテュール」 である。前者は、あまり従来の注釈者も触れていないが、テーマ、語彙にお いてかなり多くのポーからの借用が見られる。 まず、テクストを掲げる。
OUVERTURE D’HÉRODIADE
OUVERTURE ANCIENNE
État corrigé puis abandonné, 1866–1898
LA
NOURRICE
(Incantation)
Abolie, et son aile affreuse dans les larmes
Du bassin, aboli, qui mire les alarmes,
De l’or nu fustigeant l’espace cramoisi,
Une Aurore a, plumage héraldique, choisi
Notre tour cinéraire et sacrificatrice,
5
Lourde tombe qu’a fuie un bel oiseau, caprice
Solitaire d’aurore au vain plumage noir...
Ah! des pays déchus et triste le manoir!
Pas de clapotement! L’eau morne se résigne,
Que ne visite plus la plumage ni le cygne
10
Inoubliable : l’eau reflète l’abandon
De l’automne éteignant en elle son brandon :
Du cygne quand parmi le pâle mausolé
Ou la plume plongea la tête, désolée
Par le diamant pur de quelque étoile, mais
15
Antérieure, qui ne scintilla jamais.
Crime! bûcher! aurore ancienne! supplice!
Pourpre d’un ciel! Etang de la pourpre complice!
Et sur les incarnats, grand ouvert, ce vitrail.
La chambre, singulière en un cadre, attirail
20
De siècles belliqueux, orfèvrerie éteinte,
A le neigeux jadis pour ancienne teinte,
Et la tapisserie, au lustre nacré, plis
Inutiles avec les yeux ensevelis
De sibylles, offrant leur ongle vieil aux Mages.
25
Une d’elles, avec un passé de ramages
Sur sa robe blanchie en l’ivoire fermé
Au ciel d’oiseaux parmi l’argent noir parsemé,
Semble, de vols partis costumée et fantôme,
Un arôme qui porte, ô roses! un arôme
30
Loin du lit vide qu’un cierge soufflé cachait,
Un arôme d’os froids rôdant sur le sachet,
Une touffe de fleurs parjures à la lune,
(À la cire expirée, encor s’effeuille l’une,)
De qui le long regret et les tiges de qui
35
Trempent en unseul verre à l’éclat alangui...
Une Aurore traînait ses ailes dans les larmes!
Ombre magicienne aux symboliques charmes!
Cette voix, du passé longue évocation,
Est-ce la mienne prête à l’incantation? 40
Encore dans les plis jaunes de la pensée
Traînant, antique, ainsi qu’une toile encensée
Sur un confus amas d’encensoirs refroidis,
Par les trous anciens et par les plis roidis
Percés selon le rythme et les dentelles pures
45
Du suaire laissant par ses belles guipures
Désespéré monter le vieil éclat voilé
S’élève, (ô quel lointain en ces appels celé!)
Le vieil éclat voilé du vermeil insolite,
De la voix languissant, nulle, sans acolyte,
50
Jettera-t-il son or par dernières splendeurs,
Elle, encore, l’antienne aux versets demandeurs,
À l’heure d’agonie et de luttes funèbres!
Et, force du silence et des noires ténèbres,
Tout rentre également en l’ancien passé,
55
Fatidique, vaincu, monotone, laissé,
Elle a chanté, parfois incohérente, signe
Lamentable!
le lit aux pages de vélin,
60
Tel, inutile et si claustral, n’est pas le lin!
Qui des rêves par plis n’a plus le cher grimoire,
Ni le dais sépulcral à la déserte moire,
Le parfum des cheveux endormis. L’avait-il?
Froide enfant, de garder en son plaisir subtil
65
Au matin grelottant de fleurs,ses promenades,
Et quand le soir méchant a coupé les grenades!
Le croissant, oui le seul est au cadran de fer
De l’horloge, pour poids suspendant Lucifer,
Toujours blesse, toujours une nouvelle heurée,
70
Par la clepsydre à la goutte obscure pleurée,
Que, délaissée, elle erre, et, sur son ombre, pas
Un ange accompagnant son indicible pas!
Il ne sait pas cela, le roi qui salarie
Depuis longtemps la gorge ancienne et tarie.
75
Son père ne sait pas cela, ni le glacier
Farouche reflétant de ses armes l’acier,
Quand, sur un tas gisant de cadavres sans coffre
Odorant de résine, énigmatique, il offre
Ses trompettes d’argent obscur aux vieux sapins!
Reviendra-t-il un jour des pays cisalpins!
80
Assez tôt? car tout est presage et mauvais rêve!
À l’ongle qui parmi le vitrage s’élève
Selon le souvenir des trompettes, le vieux
Ciel brûle, et change un doigt en un cierge envieux.
Pénétrera du corps la cire qui recule!
De crépuscule, non, mais de rouge lever,
Lever du jour dernier qui vient tout achever,
Si triste se débat, que l’on ne sait plus l’heure
La rougeur de ce temps prophétique qui pleure
90
Sur l’enfant, exilée en son cœur précieux
Comme un cygne cachant en sa plume ses yeux,
Comme les mit le vieux cygne en sa plume, allée
De la plume détresse, en l’éternelle allée
De ses espoirs, pour voir les diamants élus
95
D’une étoile, mourante, et qui ne brille plus!
Et...
10)この詩の冒頭は、ポーの詩「幽霊宮殿
The Hauted Palace
」に似たおどろおどろしさに満ちている。参考までに、英語原文をはじめに、次にマラルメ による仏訳を掲げておく。
THE HAUNTED PALACE In the greenest of our valleys By good angels tenanted, Once a fair and stately palace — Radiant palace — reared its head. In the monarch Thought’s dominion — It stood there!
Never seraph spread a pinion Over fabric half so fair!
Le Palais Hanté
Dans la plus verte de nos vallées par de bons anges occupée, jadis un beau palais majestueux, rayon-nant palais ! dressait le front. — Dans les domaines du monarque Pensée — c’était là, son site : jamais Séraphin ne déploya de plumes sur une construction à moitié aussi belle. //
Banners yellow, glorious, golden, On its roof did float and flow, (This — all this — was in the olden Time long ago,)
And every gentle air that dallied, In that sweet day,
Along the ramparts plumed and pallid, A wingéd odour went away. Wanderers in that happy valley, Through two luminous windows, saw Spirits moving musically,
To a lute’s well-tunéd law, Round about a throne where, sitting (Porphyrogene!)
In state his glory well befitting, The ruler of the realm was seen.
And all with pearl and ruby glowing Was the fair palace door,
Through which came flowing, flowing, flowing, And sparkling evermore,
A troop of Echoes, whose sweet duty Was but to sing,
In voices of surpassing beauty, The wit and wisdom of their king.
Les bannières, claires, glorieuses, d’or, sur son toit, se versaient et flottaient ( ceci — tout ceci — dans un vieux temps d’autrefois ) ; et, tout vent aimable qui badinait dans la douce journée le long des remparts empanachés et blanchissants : ailée, une odeur s’en venait.
// //
Les étrangers à cette heureuse vallée, à travers deux fenêtres lumineuses, regardaient des esprits musi-calement se mouvoir, aux lois d’un luth bien accordé, tout autour d’un trône : où siégeant ( Porphyrogénète ! ) dans un apparat à sa gloire adapté, le maître du royaume se voyait.
// //
Et tout de perle et de rubis éclatante était la porte du beau palais, à travers laquelle venait par flots, par flots, par flots et étincelant toujours, une troupe d’Echos dont le doux devoir n’était que de chanter, avec des voix d’une beauté insurpassable, l’esprit et la sagesse de leur roi.
// //
But evil things, in robes of sorrow, Assailed the monarch’s high estate. (Ah, let us mourn! — for never sorrow [[morrow]]
Shall dawn upon him desolate!) And round about his home the glory That blushed and bloomed, Is but a dim-remembered story Of the old time entombed. And travellers, now, within that valley, Through the red-litten windows see Vast forms, that move fantastically To a discordant melody, While, like a ghastly rapid river, Through the pale door A hideous throng rush out forever And laugh — but smile no more11).
Mais des êtres de malheur aux robes chagrines assaillirent la haute condition du monarque ( ah ! notre deuil : car jamais lendemain ne fera luire d’aube sur ce désolé ! ) et, tout autour de sa maison, la gloire qui s’empourprait et fleurissait n’est qu’une histoire obscu-rément rappelée des vieux temps ensevelis.
// //
Et les voyageurs, maintenant, dans la vallée, voient par les rougeâtres fenêtres de vastes formes qui s’agitent, fantastiquement, sur une mélodie discordante, tandis qu’à travers la porte, pâle, une hideuse foule se rue à tout jamais, qui rit — mais ne sourit plus12). 次に、「古序曲」はとりわけ「ユラリューム」から多くの語彙を借りてい るように思われる。下線部を参照のこと。真ん中で反転する書き方は、「た めいき
Soupir
」と「古序曲」で用いられる。二重下線部を比べてみれば、 歴然である13)。Soupir
Mon âme vers ton front où rêve, ô calme sœur,
Un automne jonché de taches de rousseur,
Et vers le ciel errant de ton œil angélique,
Monte, comme dans un jardin mélancolique,
Fidèle, un blanc jet d’eau soupire vers l’Azur! 5
-- Vers l’Azur attendri d’octobre pâle et pur
Qui mire aux grands bassins sa langueur infinie,
Et laisse, sur l’eau morte où la fauve agonie
Des feuilles erre au vent et creuse un froid sillon,
Se traîner le soleil jaune d’un long rayon
14). 10
前述のように「イジテュール」における繰り返しもかなり顕著であり、こ の作品を、繰り返しの詩学の頂点にして、且つ最後の作品とみなすことがで きるだろう。 ここには、ポーの最もラディカルな繰り返しの詩「鐘のうた」の影響も見 てとれる。 The Bells I
Hear the sledges with the bells — Silver bells!
What a world of merriment their melody foretells!
How they tinkle, tinkle, tinkle, In the icy air of night! While the stars that oversprinkle All the Heavens, seem to twinkle
With a crystalline delight; Keeping time, time, time, In a sort of Runic rhyme,
To the tintinnabulation that so musically wells
Les Cloches
Entendez les traîneaux à cloches — cloches d’argent ! Quel monde d’amusement annonce leur mélodie ! Comme elle tinte, tinte, tinte, dans le glacial air de nuit ! tandis que les astres qui étincellent sur tout le ciel semblent cligner, avec cristalline délice, de l’œil : allant, elle, d’accord ( d’accord, d’accord ) en une sorte de rythme runique, avec la « tintinnabulisation » qui surgit si musicalement des cloches
From the bells, bells, bells, bells, Bells, bells, bells —
From the jingling and the tinkling of the bells. II
Hear the mellow wedding bells — Golden bells!
What a world of happiness their harmony foretells!
Through the balmy air of night How they ring out their delight! —
From the molten-golden notes, And all in tune, What a liquid ditty floats
To the turtle-dove that listens, while she gloats On the moon!
Oh, from out the sounding cells,
What a gush of euphony voluminously wells!
How it swells! How it dwells On the future! — how it tells
Of the rapture that impels To the swinging and the ringing
Of the bells, bells, bells — Of the bells, bells, bells, bells,
Bells, bells, bells —
To the rhyming and the chiming of the bells! III
(des cloches, cloches, cloches, cloches, cloches, cloches) : du cliquetis et du tintement des cloches.
// //
Entendez les mûres cloches nuptiales, cloches d’or ! Quel monde de bonheur annonce leur harmonie ! â travers l’air de nuit embaumé, comme elles sonnent partout leur délice ! Hors des notes d’or fondues, toutes ensemble, quelle liquide chanson flotte pour la tourte- relle, qui écoute tandis qu’elle couve de son amour la lune ! Oh ! des sonores cellules quel jaillissement d’euphonie sourd volumineusement ! qu’il s’enfle, qu’il demeure parmi le Futur ! qu’il dit le ravissement qui porte au branle et à la sonnerie des cloches (cloches, cloches — des cloches, cloches, cloches, cloches), au rythme et au carillon des cloches ! //
Hear the loud alarum bells — Brazen bells!
What a tale of terror, now, their turbulency tells!
In the startled ear of Night How they scream out their affright!
Too much horrified to speak, They can only shriek, shriek,
Out of tune,
In a clamorous appealing to the mercy of the fire, In a mad expostulation with the deaf and frantic fire
Leaping higher, higher, higher, With a desperate desire, And a resolute endeavour Now — now to sit, or never, By the side of the pale-faced moon.
Oh, the bells, bells, bells! What a tale their terror tells
Of despair!
How they clang, and clash, and roar! What a horror they outpour On the bosom of the palpitating air!
Yet the ear, it fully knows, By the twanging And the clanging, How the danger ebbs and flows;
Yes, the ear distinctly tells, In the jangling And the wrangling, How the danger sinks and swells,
Entendez les bruyantes cloches d’alarme — cloches de bronze ! Quelle histoire de terreur dit maintenant leur turbulence ! Dans l’oreille saisie de la nuit comme elles crient leur effroi ! Trop terrifiées pour parler, elles peuvent seulement s’écrier hors de ton, dans une clameur d’appel à merci du feu, dans une remontrance au feu sourd et frénétique bondissant plus haut (plus haut, plus haut), avec un désespéré désir ou une recherche résolue, maintenant, de maintenant siéger, ou jamais, aux côtés de la lune à la face pâle. Oh ! les cloches (cloches, cloches), quelle histoire dit leur terreur — de Désespoir ! Qu’elles frappent et choquent, et rugissent ! Quelle horreur elles versent sur le sein de l’air palpitant ! encore l’ouïe sait-elle, pleinement, par le tintouin et le vacarme, comment tourbillonne et s’épanche le danger ; encore l’ouïe dit-elle, distinctement, dans le vacarme et la querelle, comment s’abat ou s’enfle le danger, à l’abattement ou à l’enflure dans la colère des cloches, dans la clameur et l’éclat des cloches !
By the sinking or the swelling in the anger of the bells —
Of the bells — Of the bells, bells, bells, bells,
Bells, bells, bells —
In the clamor and the clangor of the bells! IV
Hear the tolling of the bells — Iron bells!
What a world of solemn thought their monody
compels! In the silence of the night, How we shiver with affright At the melancholy menace of their tone!
For every sound that floats From the rust within their throats
Is a groan.
And the people — ah, the people — They that dwell up in the steeple,
All alone,
And who, tolling, tolling, tolling, In that muffled monotone,
Feel a glory in so rolling On the human heart a stone — They are neither man nor woman — They are neither brute nor human —
They are Ghouls: —
//
Entendez le glas des cloches — cloches de fer ! Quel monde de pensée solennelle comporte leur monodie ! Dans le silence de la nuit que nous frémissons de l’effroi ! à la mélancolique menace de leur ton. Car chaque son qui flotte, hors la rouille en leur gorge — est un gémissement. Et le peuple — le peuple — ceux qui demeurent haut dans le clocher, tous seuls, qui sonnant ( sonnant, sonnant ) dans cette monotonie voilée, sent une gloire à ainsi rouler sur le cœur humain une pierre — ils ne sont ni homme ni femme — ils ne sont ni brute ni humain — ils sont des Goules : et leur roi, ce l’est, qui sonne ; et il roule, ( roule — roule ) roule un Péan hors des cloches ! Et son sein content se gonfle de ce Péan des cloches ! et il
And their king it is who tolls: — And he rolls, rolls, rolls,
Rolls A Pæan from the bells! And his merry bosom swells
With the Pæan of the bells! And he dances and he yells; Keeping time, time, time, In a sort of Runic rhyme, To the Pæan of the bells —
Of the bells: — Keeping time, time, time,
In a sort of Runic rhyme, To the throbbing of the bells —
Of the bells, bells, bells — To the sobbing of the bells: —
Keeping time, time, time, As he knells, knells, knells,
In a happy Runic rhyme, To the rolling of the bells —
Of the bells, bells, bells: — To the tolling of the bells — Of the bells, bells, bells, bells,
Bells, bells, bells —
To the moaning and the groaning of the bells15).
danse, et il danse, et il hurle : allant d’accord ( d’accord, d’accord ) en une sorte de rythme runique, avec le tressaut des cloches — ( des cloches, cloches, cloches ) avec le sanglot des cloches ; allant d’accord ( d’accord, d’accord ) dans le glas ( le glas, le glas ) en un heureux rythme runique, avec le roulis des cloches — ( des cloches, cloches, cloches ) , avec la sonnerie des cloches — ( des cloches, cloches, cloches, cloches, cloches — cloches, cloches, cloches ) — le geigne- ment et le gémissement des cloches16).
ところがマラルメは、いわゆる「精神的危機」を脱して上京した
70
年代初頭には、この詩学からきっぱり足を洗っていた。あの「危機」を告げる有
借用であるのも示唆的である。
Thank Heaven, the Crisis
Is over at last!
17)FOR ANNIE
Thank Heaven! the crisis
—The danger is past,
And the lingering illness
Is over at last
—18) しかしながら書簡集には、これを示す註が付いていない。日本語訳も同様 である。このように、ポーの詩は、マラルメ研究者、とりわけ日本の研究者 によって、原文で読まれることは少なかったのではないだろうか。ステンメ ッツの伝記では「ポーに倣って19)」と書いてあるので、ステンメッツはわか っていたのだろうが、翻訳にはそういう註はやはり付いていない20)。マルシ ャル編集の書簡集になって初めて、この情報は付け加えられているが、ポー を原文で読めば、もっと早く皆がこれに気が付いていたはずである。 しかし詩人は、ポーの翻訳と縁を切ったのではなかった。確かに繰り返し を用いた韻文詩は書かれなくなったが、今度は、この成果を主として散文に 生かし始めたのである。マラルメの散文作品に、ポーの韻文詩を散文に翻訳 した作業が反映されていくことになる。 ポーの詩は、謂わばVers libre
(自由詩)のようなもので、マラルメはこ れを韻文に生かそうとして断念し、ここで獲得された自由は、むしろ韻文の ような制約に縛られない散文へと、その精神が受け継がれたのではなかろう か。マラルメは散文を書くに当たって、高度の自由を獲得したのだと言えよ う。このように、危機を経たマラルメは、意識的か否かは別として、このポー翻訳の成果を、散文作品へと生かしていくように見受けられる。
そして、「レオン・ディエルクスの詩作品」という短文にも
« Ulalume »
の名は登場する。さらに、ポーの影響が如実に現われているのが、
« Prose »
という韻文詩のテーマ設定や語彙、そして、
« Notes sur le théâtre »
の中に出てくる“
with Psyche, my soul
”というポーの詩« Ulalume »
からの引用などがある。長い詩であるが、ここでも原文とマラルメによるフランス語訳 を続けて掲げておこう。
ULALUME
The skies they were ashen and sober; The leaves they were crisped and sere — The leaves they were withering and sere; It was night in the lonesome October
Of my most immemorial year; 5 It was hard by the dim lake of Auber,
In the misty mid region of Weir — It was down by the dank tarn of Auber, In the ghoul-haunted woodland of Weir.
Here once, through an alley Titanic, 10 Of cypress, I roamed with my Soul — Of cypress, with Psyche, my Soul. These were days when my heart was volcanic As the scoriac rivers that roll —
As the lavas that restlessly roll 15 Their sulphurous currents down Yaanek
Ulalume
Les cieux, ils étaient de cendre et graves ; les feuilles, elles étaient crispées et mornes – les feuilles, elles étaient périssables et mornes. C’était nuit en le solitaire Octobre de ma plus immémoriale année. C’était fort près de l’obscur lac d’Auber, dans la brumeuse moyenne région de Weir – c’était là près de l’humide marais d’Auber, dans le bois hanté par les goules de Weir. //
//
Ici, une fois, à travers une allée titanique de cyprès, j’errais avec mon âme ; – une allée de cyprès avec Psyché, mon âme. C’était aux jours où mon cœur était volcanique comme les rivières scoriaques qui roulent – comme les laves qui roulent instablement leurs
In the ultimate climes of the pole — That groan as they roll down Mount Yaanek In the realms of the boreal pole.
Our talk had been serious and sober, 20 But our thoughts they were palsied and sere — Our memories were treacherous and sere — For we knew not the month was October, And we marked not the night of the year — (Ah, night of all nights in the year!) 25 We noted not the dim lake of Auber —
(Though once we had journeyed down here) — Remembered not the dank tarn of Auber, Nor the ghoul-haunted woodland of Weir.
And now, as the night was senescent 30 And star-dials pointed to morn —
As the star-dials hinted of morn — At the end of our path a liquescent And nebulous lustre was born,
Out of which a miraculous crescent 35 Arose with a duplicate horn —
sulfureux courants en bas de l’Yanek, dans les climats extrêmes du pôle – qui gémissent tandis qu’elles roulent en bas du mont Yanek dans les régions du pôle boréal.
// //
Notre entretien avait été sérieux et grave : mais, nos pensées, elles étaient paralysées et mornes, nos souvenirs étaient traîtres et mornes – car nous ne savions pas que le mois était Octobre et nous ne remarquions pas la nuit de l’année ( ah ! nuit de toutes les nuits de l’année ! ) ; nous n’observions pas l’obscur lac d’Auber, – bien qu’une fois nous ayons voyagé par là, – nous ne nous rappelions pas l’humide marais d’Auber, ni le pays de bois hanté par les goules de Weir.
// //
Et maintenant, comme la nuit vieillissait et que le cadran des étoiles indiquait le matin, – à la fin de notre sentier un liquide et nébuleux éclat vint à naître, hors duquel un miraculeux croissant se leva avec une double corne – le croissant diamanté d’Astarté
Astarte’s bediamonded crescent Distinct with its duplicate horn. And I said — "She is warmer than Dian: She rolls through an ether of sighs — 40 She revels in a region of sighs:
She has seen that the tears are not dry on These cheeks, where the worm never dies, And has come past the stars of the Lion To point us the path to the skies — 45 To the Lethean peace of the skies — Come up, in despite of the Lion, To shine on us with her bright eyes — Come up through the lair of the Lion, With love in her luminous eyes." 50
But Psyche, uplifting her finger, Said — "Sadly this star I mistrust — Her pallor I strangely mistrust: — Oh, hasten! — oh, let us not linger!
Oh, fly! — let us fly! — for we must." 55 In terror she spoke, letting sink her
Wings until they trailed in the dust — In agony sobbed, letting sink her Plumes till they trailed in the dust — Till they sorrowfully trailed in the dust. 60
distinct avec sa double corne. //
//
Et je dis : " Elle est plus tiède que Diane ; elle roule à travers un éther de soupirs : elle jubile dans une région de soupirs, – elle a vu que les larmes ne sont pas sèches sur ces joues où le ver ne meurt jamais et elle est venue passé les étoiles du Lion pour nous désigner le sentier vers les cieux – vers la léthéenne paix des cieux ; – jusque-là venue en dépit du Lion, pour resplendir sur nous de ses yeux brillants – jusque-là venue à travers l’antre du Lion, avec l’amour dansses yeux lumineux. //
//
Mais Psyché, élevant son doigt, dit : " Tristement, de cette étoile je me défie, – de sa pâleur, étrangement, je me défie. Oh ! hâte-toi ! Oh ! ne nous attardons pas ! Oh ! fuis – et fuyons, il le faut. " Elle parla dans la terreur, laissant s’abattre ses plumes jusqu’à ce que ses ailes traînassent en la poussière – jusqu’à ce qu’elles traînèrent tristement dans la poussière.
I replied — "This is nothing but dreaming Let us on by this tremulous light! Let us bathe in this crystalline light! Its Sybilic splendor is beaming
With Hope and in Beauty to-night: — 65 See! — it flickers up the sky through the night! Ah, we safely may trust to its gleaming, And be sure it will lead us aright — We safely may trust to a gleaming
That cannot but guide us aright, 70 Since it flickers up to Heaven through the night."
Thus I pacified Psyche and kissed her, And tempted her out of her gloom — And conquered her scruples and gloom; And we passed to the end of the vista, 75 But were stopped by the door of a tomb — By the door of a legended tomb;
And I said — "What is written, sweet sister, On the door of this legended tomb?" She replied — "Ulalume — Ulalume — 80
‘Tis the vault of thy lost Ulalume!"
//
Je répliquai : " Ce n’est rien que songe : conti-nuons par cette vacillante lumière ! baignons-nous dans cette cristalline lumière ! Sa splendeur sibylline rayonne d’espoir et de beauté, cette nuit : – vois, elle va, vibrante, au haut du ciel à travers la nuit ! Ah ! nous pouvons, saufs, nous fier à sa lueur et être sûrs qu’elle nous conduira bien, –nous pouvons, saufs, nous fier à une lueur qui ne sait que nous guider à bien, puisqu’elle va, vibrante, au haut des cieux à travers la nuit. "
// //
Ainsi je pacifiai Psyché et la baisai, et tentai de la ravir à cet assombrissement, et vainquis ses scrupules et son assombrissement ; et nous allâmes à la fin de l’allée, où nous fûmes arrêtés par la porte d’une tombe ; par la porte, avec sa légende, d’une tombe, et je dis : " Qu’y a-t-il d’écrit, douce sœur, sur la porte, avec une légende, de cette tombe ? " Elle répliqua : " Ulalume ! Ulalume ! C’est le caveau de ta morte Ulalume ! " //
Then my heart it grew ashen and sober As the leaves that were crisped and sere — As the leaves that were withering and sere, And I cried — "It was surely October 85 On this very night of last year
That I journeyed — I journeyed down here — That I brought a dread burden down here — On this night of all nights in the year, Ah, what demon has tempted me here? 90 Well I know, now, this dim lake of Auber — This misty mid region of Weir — Well I know, now, this dank tarn of Auber, This ghoul-haunted woodland of Weir." 21)
//
Alors mon cœur devint de cendre et grave, comme les feuilles qui étaient crispées et mornes, – comme les feuilles qui étaient périssables et mornes, et je m’écriai :" Ce fut sûrement en Octobre, dans cette même nuit de l’année dernière, que je voyageai – je voyageai par ici, – que j’apportai un fardeau redoutable jusqu’ici : – dans cette nuit entre toutes les nuits de l’année, ah ! quel démon m’a tenté vers ces lieux ? Je connais bien, maintenant, cet obscur lac d’Auber – cette brumeuse moyenne région de Weir : je connais bien, maintenant, cet obscur lac d’Auber – cette brumeuse moyenne région de Weir : je connais bien, maintenant, cet humide marais d’Auber, et ces pays de bois hantés par les goules de Weir ! "22) 翻訳はどのようにして行われているか、この「ユラリューム」の翻訳を具 体的にみていくことにしよう。
1
. まず、マラルメによる翻訳の大原則である直訳主義が貫かれているとい うことが言える。マラルメの翻訳は、前述のように、自身 «calque(s)
»(透 き写し)と呼ぶ特殊な手法、即ち、完全な直訳主義に基づいている。 その上で、以下の意識的改変を挙げることができる。2
. マラルメ独自の改変が見られる箇所を列挙してみよう。(
1
)v.1 ashen
形容詞→de cendre
(maquette
では複数になっていた)前置詞+名詞 ―形容詞を、そのまま形容詞で訳すことも可能なのに、わ
ざわざ変えている。
v. 30 was senescent
be
動詞+形容詞→vieillissait
自動詞v.66 it flickers up the sky
動詞→elle va, vibrante, au haut du ciel
動詞+形容詞
v.71
も同じ。v.78 What is written
→Qu’y a-t-il d’écrit
(
2
)英語とフランス語の語法の違いから、改変せざるを得ない(恐らく他の訳者でもそうするだろう)箇所もあるが、これはここでは重要ではないだろ う。
(
3
)v.11, 12 Soul
→âme
もとはÂme
と大文字のままだったが、決定稿で改変された。普通名詞にして、一般性をもたせる傾向がある。マラルメの散 文には、ほかにも状況性の消去、複数名詞を単数化するなど、同様の傾向が 見られる。
v.65 With Hope and in Beauty
→d’Espoir et avec Beauté
(La République
des Lettres
[以下RL
と略記],La Renaissance littéraire et artistique
[以下RLA
と略記])→d’espoir et de beauté
(決定稿)(
4
)マラルメの意図的改変→
qui roulent instablement leur sulfureux conrant (RL)
原文が複数なのに、単数化している。
→
qui roulent instablement leurs sulfureux conrants
(決定稿)ここで原文通り、複数に戻している。
v.29 in the ghoul-haunted woodland of Weir
→
dans le pays de bois hantés par les goules de Weir (RL, RLA)
→
dans le bois hanté par les goules de Weir
(決定稿)v.19 realms
(王国)→royaumes
(王国)(RL, RLA
)→régions
(地方)(決定稿)v.31 ~32 And star-dials pointed to morn
―As the star-dials hinted to morn
―→
étoiles désignait le matin,
―
comme le cadran des étoiles indiquait le matin,
―(RL, RLA
)→
le cadran des étoiles indiquait le matin,
―(決定稿)(前半がすっきりと、省略され、
2
行を1
行にまとめるという大胆な改変をしているが、これは繰り返しの放棄の表れと思われる。)
v.37~38 Astarte’s bediamonded crescent Distinct with its duplicate horn
→
d’Astarte le croissant diamanté distinct
(RL, RLA
)→
le croissant diamanté d
'Astarte distinct
(決定稿)ここで普通のフランス語になった。
v.50 with love
→avec l’amour
定冠詞の挿入v.56 In terror she spoke
→Elle parla dans la terreur
状況補語(副詞句)のv.91 Well I know
→Je connais bien
副詞の後置v.93
同上(
5
)フランス語の通常の語順に修正v.17 the ultimate climes
→les climats extrêmes
形容詞の後置v.19 boreal pole
→pôle boréal
同上(なお、このboréal
はマラルメの詩篇Prose
の冒頭に出てくるHyperbole
という語の語呂合わせに受け継がれるという説がある。)
v.50 her luminous eyes
→ses lumineux yeux
(RL, RLA
)→ses yeux
lumineux
(決定稿)同上cf. v.62 this tremulous light
→cette vacillante lumière
ここは英語の語順を踏襲(形容詞の前置)
v.63 in this crystalline light dans cette cristalline lumière
同上
v.91 this dim lake
→cet obscur lac
v.93 this dank tarn
→cet obscur lac
ここは、マラルメが異なる英語を、同じフランス語で意図的に繰り返していることにも注意。
v.88 a dread burden
→un fardeau redoutable
これらのやり方は、マラルメ自身の散文の文体へと受け継がれることになる だろう。
(
6
)マラルメの作品への影響(既出のもの以外)語彙において、多くの反映が見られる
l.35, 37 crescent
→croissant (Ouverture ancienne)
l.59 Plumes till they trailes
→ses ailes traînassent (Ouverture ancienne)
l.75 vista
→allée (Ouverture ancienne)
下線部は、冒頭に掲げた「エロディアード古序曲」と共通する語彙である。 「古序曲」と「ユラリューム」は、語彙面の共通性だけでなく、構成も
prophétique
(予兆的)、incantatoire
(呪術的)に書かれており、前者が97
行、 後者が94
行と酷似している点からも、両者の親近性は否めない。 もともと、ポーの詩は繰り返しが多く、全く同じ、或いは類似の単語もし くはフレーズを繰り返し用いることでリズムを作っていく手法がふんだんに 用いられるが、とりわけ「ユラリューム」に特徴的なのは、同じ単語で韻を 踏むという手法で、これは英語の詩の正則にも反するものだが、ポーはこの 禁を冒して、特にこの詩では全編に亙って用いている。まさに音楽性に富ん だ詩なのである。 一方、「古序曲」は繰り返しを極端に嫌うフランスの詩なので、そこまで 過激なことはしていないが、これほど多くの語彙面での繰り返しは、他の詩 篇には見られない独自のものであり、これが遂に世に出なかったという点か らも、その実験性がうかがわれる。 こ の 詩 篇 は1866
年4
月 の カ ザ リ ス 宛 書 簡 の 中 で は 自 画 自 賛 さ れ、« Ouverture musicale »
と称されていた23)。この辺りにも、ポーの詩「ユラリ ューム」との類縁性を垣間見ることができる。 これを仮に「répétition
(繰り返し)の詩学」と名付けておくとすれば、 この手法が最も顕著に用いられたテクストに、「イジテュール」が挙げられ ることは先に述べた。 若い頃の「ユラリューム」翻訳には、繰り返しの詩学の残滓が見られるこ とも指摘しておこう。v.31 Et que l’étoile du jour annonçait le matin
―v.32 Et que l’étoile du jour révélait le matin
―3.文体上の影響関係
上述のように、マラルメの翻訳は自身« calque(s) »
と呼ぶ特殊な手法に 貫かれている。この言葉の使用を最初に確認できるのは、1864
年4
月11
日付の書簡においてであり、これはまさにポー翻訳に関してであった25)。マ ラルメは、ポーの韻文詩を散文訳することで、自身の散文詩、さらに批評詩 を書くきっかけを作っていったのではないだろうか。上で示唆したように、 少なくとも批評詩のもつ、余白を駆使した形態は、ポーの翻訳の延長線上に あるように思われる。 マラルメの作品群は、大きく分けて、韻文詩と、散文詩・批評詩の二つに 分類することができる。それぞれの到達点が、前者はエロディアード草稿群 であり、後者は« Un Coup de Dés »
であったと言えよう。« Divagations »
は、« Un Coup de Dés »
に結実する非韻文を準備するための探究の後を示すも のと言ってもいい。これが更に徹底されるのが「書物」の草稿群なのだろう が、結局、マラルメは« Un Coup de Dés »
において、詩作における偶然の 介入は認めざるを得ないという、或る意味では敗北宣言ともとれる結論に達 するのである。ならば、これを逆手にとって、テクストをカード化して、偶 然に委ねようというのだろうか。 その一方の核である散文を書くに当たって、ポー翻訳が果たした大きな役 割をここでは問題にしたい。 次回以降、以下の手続きで分析を進めていく。 ①『落穂集』と『ポー詩集』を比べる。 ②ボードレールの翻訳のある4
篇の詩については、ボードレール訳と比べる。 ③他の『ポー詩集』翻訳から原文と訳文との比較によって、明らかになる問 題点を探る。 『落穂集』にはなかった空白の問題。空白を取り入れることで、あたかも それぞれの段落がStrophe
のように見えるマラルメの散文詩は、ベルトラン、 ボードレールから着想を借りたものであったかもしれないが、マラルメの場 合、ポーの翻訳を介して、これらをさらにラディカルに推し進めたと言えよう。すなわち、
« Crise de vers »
で言っているような、散文の中におけるリ ズムの問題を意識し、また、ベルトランやボードレールが行わなかった余白 にヴァリエーションをつけることで、マラルメ独自の批評詩が形成され、さ らに散文のもつ線的性格の克服の極致があの« Un Coup de Dés »
だったと 推定される。 マラルメが、ポー以外にも英文学に少しばかり親しんだ形跡は、新プレイ ア ー ド 版 で、 漸 く そ の 全 貌 が 明 ら か に な っ た『 英 語 の 美Beauté de
l’anglais
』に見ることができる。 また文学だけでなく、言語学や、『英単語』、『英作文』に結実するような 諺やマザーグース集など、いろんなアングロ・サクソンの文物がマラルメの 中に入っている。 これらの探索を以後、順を追って進めていく。 注1
)本論は、2008
年月日、岩手大学に於いて開かれた日本フランス語フランス文 学会秋季大会にて行なった口頭発表「マラルメのポー翻訳」の原稿を基礎とし、 これに加筆、訂正を施したものである。2
)『対訳ブラウニング詩集』富士川義之編、岩波文庫、2005
年、p.10–17.
3
)SCHERER, Jacques, Grammaire de Mallarmé, Nizet, 1977, p.38.
4
)Lettre à Villiers de L’Isle-Adam du 24 septembre 1867, « j’ai bien peur de
commencer... par où notre pauvre et sacré Baudelaire a fini. », in Correspondance
(以下、Corr.
と略記), I, Gallimard, 1959, p.259.
5
)Léon Lemonnier, « Baudelaire, Mallarmé : traducteurs d’Edgar Poe », in
Langues Modernes, 43, 1949, p.53.
6
)« Si ma tâche pouvait être continuée avec fruit dans un pays tel que la France,
il me resterait à montrer Edgar Poe poëte et Edgar Poe critique littéraire. Tout
vrai amateur de poésie reconnaîtra que le premier de ces devoirs est presque
impossible à remplir, et que ma très-humble et très-dévouée faculté de traducteur
ne me permet pas de suppléer aux voluptés absentes du rhythme et de la rime »,
« Avis du traducteur (1864)», in Edgar Allan Poe, Œuvres complètes, traduites
par Charles Baudelaire, texte établi et annoté par Y.-G. Le Dantec, Bibliothèque
de la Pléiade, Gallimard, 1951, p.1063.
7
)例えば、SCHERER, Jacques, op.cit., pp.40–43.
この種の研究の最も詳細なも のは、言うまでもなく、GILL, Austin, « Mallarmé fonctionnaire
», Revue d’histoire
littéraire de la France, 1968, N
°.1, pp.2–25, No.2, pp.253–284.
8
)正しい綴りは‘Eulalie’
である。9
)SCHERER, Jacques, op.cit., p.26.
10
)MALLARMÉ, Stéphane, Œuvres complètes
(以下、OC
と略記), I, Édition
présentée, établie et annotée par Bertrand Marchal, Bibliothèque de la Pléiade,
Gallimard, 1998, pp.135–137.
下線部は後にみるポーの詩「ユラリューム」と 共通する語彙であり、二重下線部はこの詩の真ん中で反転する部分を指す。11
)The Works of the Late Edgar Allan Poe (The Griswold Edition) (1850–1856),
volume II: Poems and Miscellanies, NEW YORK: J. S. REDFIELD, CLINTON
HALL. 1850.) http://www.eapoe.org/works/
12
)OC., II, Édition présentée, établie et annotée par Bertrand Marchal,
Bibliothèque de la Pléiade, Gallimard, 2003, pp.735–736.
マラルメ訳に付した//
は、余白の行を示している。上記全集では一律1
行の余白になっているが、マラルメ訳の決定版たる
Les Poèmes d’Edgar Poe. Traduction de Stéphane
MALLARMÉ, avec portrait et fleuron par Edouart MANET, Edmond Deman,
1888, pp.31–35.
によれば、一律2
行の余白になっており、全集の編集は正確さ を欠く。後にマラルメにとって、余白が重要性を帯びてくるのは、広くマラル メ研究者の知るところである。これは後に述べるように、批評詩の形態を先取りしているとも言えよう。尚、便利な対訳本として、以下も参照。