2 3 ─僕、オープンスタジオとかで遊びに 来てたからなんとなく知った気になって ましたけど、ここはどういう場所なんで すか? ここは……トーキョーワンダー サイトです。私もよくわかってないかも だけど、クリエイターを成長させるみた いな場所で。青山と本郷と渋谷にあるん だけど。 ─ここ、実際に住んでるんですよね? そう、その状況を無視しないよ うにしたいなってすごい思ってる。 ─ここにレジデンスするにあたって、 企画書とか書いたんですか? うん、出したと思う。快快に入っ てから10年間、自分の制作をしてこな かったんだよね。ちょっと前にツアーが 続いたときとかはタスクに追われちゃっ て、それでちょっとヤバいなと思って。 快快も、もともと続けるためにやってる わけじゃなくて、辞めるのが目標みたい な感じだったから。 感じたことのない面白さだったし、その 「現場で完成する」っていうのが面白かっ たんだよね。その音楽祭に行ったあと、 「最後に」と思ってアニメを作って上映 してみたんだけど、そこですごい虚しさ を感じて。 ─ああ、もう興味が別の領域に移って たから? いや、そのアニメは一生懸命 作ったし、自分の作品ってことを突き詰 めて考えなきゃと思って作ったんだよ。 でも、すごい虚しくって。アニメを皆に 見せたところで、そこで観てもらってる のはもう過去のことだから。それで方向 転換しなくちゃなと思ってたとき、快快 の人たちがキラキラしてたから「よし、 そっちに入ってみよう」って。 ─そういう経緯だったんですね。でも、 何で舞台美術に? 快快の人たちを見たとき、舞台 美術っぽい人がいなかったから(笑)。 あと、もともとうちの実家が建築系だっ たっていうのもあるんだけど。 ─この前、ドリフターズ・サマースクー ルでは「スペースデザイナー」という肩 書きになってましたよね。「舞台美術」 じゃなくて「スペースデザイナー」なん ですか? そう、あの時期は「スペースデ ザイナー」にしてたんだけど、最近ま た「舞台美術」にしようって決めた。そ ういう肩書きも含めて、最近、自分のこ れからをすごい考えてて。今日わかった のは、自分が考えたいのは劇場の中の客 席の舞台の客席の関係性だってこと。劇 場の中には客席っていう超リアルな世界 と地続きな空間と、嘘ついてもいいって 決められた空間とが両立してるけど、そ れをもっと突き詰めて考えたら面白いの かもしれない。それで、お客さんを作品 のどこに位置づけるかってことをずっと 探っていて、オープンスタジオの2回目 で逆さまの部屋をやって。 ─ありましたね。お客さんが皆勝手に 写真を撮って楽しんでましたね。 お客さんが写真を撮ることで作 品が広がるっていうのは、「相談芸術音 楽」で感じた感覚に近かったんだよね。 それが自分的に嬉しくて。そうやってお ─辞めるのが目標っていうと。 いや、別に「このチームが嫌だ から辞めたい」とかじゃなくて、独り立 ちするためにやるみたいなところがあっ たんだよね。 ─ちなみに、チームとして活動する前 はどんな作品を作ってたんですか? ドキュメンタリーとアニメを 作ってて。1個ずつしか作ってないんだ けど、ドキュメンタリーは─私は自分 の父親と母親のことを「パパ」と「ママ」 と呼んで、ママのお父さんとお母さんを 「じいちゃん」と「お母さん」って呼ん で、パパのお父さんとお母さんを「おじ いちゃん」と「おばあちゃん」って呼ん でるのね。それで、うちの家族に「お父 さん」がいないっていうことで、それで 新潟の親不知ってとこに行って、オレオ レ詐欺的な感じで「お父さんですか」っ て電話をかけて、「はい」って言った人 をお父さんにするってドキュメンタリー だったんだけど……。電話をかけても、 客さんを役者として振る舞わせる場を作 るってことは今後すごいやりたいと思っ ていて、それで今日、「舞台美術って言 おう」って思った。 ─オープンスタジオでは、「部屋を砂 浜を作る」ってこともやりましたよね。 やったね。あのときは7月って 季節柄もあって、皆海に行きたいと思っ てるだろうなと思って。それで、絶対的 に「部屋」っていう状況の中でも、砂さ え入れたらそこが砂浜になるってことを やりたくて。そのときオープンスタジオ に来てくれた危口(統之)さんに「私、 ナチュラリストなんだー」って言った ら、「いや、単純にワイルドなだけじゃ ない?」って言われたけど。 ─今回の新作、稽古もここでやってる んですよね。 うん、ここでやってる。でも、 稽古って言ってもまだ話し合いみたいな 感じだけど。 ─去年の10月にやった「りんご」が 普遍的な何かを感じさせるタイトルだっ たのに対して、今度の新作が「6畳間」 というすごく身近なフレーズが入ってる のはなぜだと思ってますか? 多 分、 制 作 過 程 が こ う い う ちょっと色付けられた環境だっていうの が大いにあると思ってる。あと、今まで は大人数だったのが、大人数じゃなく なったっていうのもあると思う。 ─今でもメンバーはいっぱいいますよ ね? でも、意見の言い合いとかをす るときに、やっぱり意見の数が圧倒的に 少ないから、ちょっと個人的になってる ところはあるのかもしれない。 ─前作の「りんご」も未来の話で、今 回の「6畳間ソーキュート社会」も未来 の話が出てきますよね。 佐々木 「りんご」までの未来観は未来 に対するあこがれだったと思うんだけ ど、今回はもっと自分の身に降り掛かる ものとして未来を捉えようとしてるか ら、その未来観の規模は小さくなってる と思うし、たぶん快快が提示する未来 観って一回所帯じみるんだろうなとは 思ってる。でも、だからこそ未来を作る ことに対するリアルな姿勢は示せるのか 話に乗ってくれる人がいなかった。 ─それ、面白いですね(笑)。でも、 何で映像をやってたのに舞台美術をやる ことになったんですか? それは、映像をやめたきっか けってこと? ─それも聞きたいんですけど、最近は 快快の外で個人名義で制作に関わる機会 もありますよね。今、文美さん個人とし ての制作はどういう領域にあると思って るんですか? 私が大学1年のときに初めて観 た作品って、小沢剛さんの「相談芸術音 楽」って展覧会で。その展覧会に行くと、 まず「どういう音楽が欲しいですか」っ て質問があって、観にきた人がそれに答 えるんですよ。作家の人が「僕たちはあ なたたちの言いなりです」みたいなこと を言って、皆が希望するものを実現する ために、作品がその音楽会の中で作られ ていって。それがすごい楽しくって、面 白くって。その面白さは田舎にいたとき もしれない。 ─文美さん自身は、未来をどう思い描 いてますか? あのね、『ムー』とか読んでて も「もうアセンションポイントは過ぎた」 とか言ってるのね。アセンション、来る じゃないですか。 ─……? もう、アセンションって言葉を 出すとすべての人が引いちゃうんだけ ど、アセンションっていうのはようする に、今は3次元の世界が4次元になるっ てことで。 ─そうすると何が変わるんですか? 私が予想するに、現実の3次元 空間よりもインターネットの世界のほう が重要になって、現実世界のモノの重要 度がなくなってくると思うのね。その空 間っていうものの大切さがなくなってき て、演劇とかも、ユーストする人も出て きてるし。 ─「りんご」もやってましたね。 そうそう。そうするとユースト 見れば作品を観れるってことになって、 3次元空間がただのめんどくさいものに なっちゃうと思うのね。でも、そこで3 次元空間がヴィンテージになるのを待つ んじゃなくて、3次元が作りうる可能性 を提示していきたい。たとえば茶室と かって、扉がすごく小っちゃくて、それ は「へりくだって入らせよう」って、空 間がすごく暴力的に人間の動作を決めて るわけ。そういうパワーっていうのは空 間ならではだなと思っていて。今までは 3次元しかないから皆3次元だったけど、 そこに4次元が加わることで、3次元っ て空間がセレクトされる一つの分野にな れたらいいと思ってる。だからまず、来 年暴力団を作ってみようと思ってます。
佐 々 木 文 美
舞 台 美 術 。 通 称 あ や み 。 上 京 し て1 2年 、 い ま だ 抜 け な い 鹿 児 島 弁 が 魅 力 。4 5 ─今、快快の中で空前の のろブーム が来てるらしいですね。 ははは(笑)。ブームっていうか ……自分のことを「うち」って言うじゃ ないですか。 ─ああ、のろさんの一人称が。 まず、一人称が「うち」っていう ことがある上で、驚いたときに声が高く なっちゃうらしくて。それで、文美さん の部屋にゴミが落ちてるとき、「うち! うち!」って言いながら拾うってオリ ジナルゲームをよんちゃんときぬちゃん が作り出して。それで、「うち」に似た 単語を見つけると「うち!」って言い方 でするっていう流行りがあって。ブー ムっていうか、それだけです(笑)。 ─なんか自然薯ばっか食べてるって聞 いたんですけど。 トーキョーワンダーサイト青山で オープンスタジオでやってるとき、国連 大学の前でいつもファーマーズマーケッ トをやっていて。せっかくマーケットが ─今の話を聞いてて思い出したんです けど、しばらく前にのろさんが何かの肉 をさばいてる写真をFacebookで見た 覚えがあるような……。 あれは、今付き合ってる人と話 してたとき、「ニワトリをさばきたいよ ね」って話になって。 ─「ニワトリ、さばきたいよね」って 会話をする状況が全然浮かばないんです けど、どうしてそんな話になったんです か? 付き合ってる人も食べ物に対して 結構こだわりがあって。「肉を食べて生 きてるから、ニワトリを生きてるところ からさばいて、生きてる状態→さばいた 肉→料理っていう流れを一回自分でやっ てみたい」って話になったんだと思う。 ─相手が「やってみたい」って言った ときに、のろさん的にもすんなり「じゃ あ行ってみよう」ってなったんですか? 「あ、行きたい」「いいよ」って。 それで、調べてみたらニワトリをさばけ る場所があって、そこで一回さばいて。 そのあと、ちょうど誕生日だったから「も う一回、今度は自分たちだけでニワトリ を絞めよう」って話になって。 ─うちの実家は農家なんですけど、僕 が生まれるくらいまではニワトリ小屋が あって、何か祝い事とかがあると絞めて 食べてたっていうんですよね。自分はそ ういう生活をまったく経験してないか ら、自分の母親の頃まではそれが普通に あったっていうのがすごく不思議な感じ がして。 うちの母ちゃんも、こどもの頃は 庭で飼ってたって言ってた。それで、付 き合ってる人が通ってる大学の周りには 養鶏場があって、その養鶏場に連絡して みたら「安く売ってあげる」って言われ て。そのニワトリは卵を産むためのニワ トリなんだけど、2年か3年経つと味が 落ちちゃうから、1羽200円ぐらいで売っ てくれて。 ─えっ、200円? ! そう、普通のニワトリで200円で、 良いのでも500円ぐらいだった。そこ で200円のと500円のを1羽ずつ買って きて、ベランダでさばいて。 ─でも、自分の手で絞めちゃうと食べ 出てるんだからってそこにごはんを買い に行くんだけど、うちは結局、一回りし ていつも自然薯を買うっていう。 ─自然薯、そんなうまかったんです か? 単純に、脂っこいものを食べると 残っちゃうから、そのあとすぐに「えい や」って行動できなくなっちゃうってい うのもある。だから、さらっと食べれて 美味しいものって考えると、いつも自然 薯になって。 ─そういえば、僕が最初に快快の作品 を観たのは「いわきの高校生インザ蚤の 市」でしたけど、そのとき、僕は運転手 としてついて行ったんですよね。で、帰 りに皆でごはんを食べに行くとき、店を 選んでたら皆が「ここならのろ先生のお 許し出ました」みたいに言ってたのが印 象に残っていて。自分がグルメじゃない ぶんそれを覚えてるんだと思うんですけ ど。 うちは普段、忙しいときとかだと れなくなるみたいなことはなかったんで すか? それは全然なかった。一回さばい て肉になっちゃうと、全然体が動く。ニ ワトリだけじゃなくて鹿をさばきに行っ たこともあるんだけど、それはもう駆除 のために撃たれて死んでいた鹿をさばい てたから、衝撃としてはニワトリを自分 の手で絞めたときのほうが大きかった けど。 ─「のろ」って呼ばれてるってことも 含めて、のろさんにはちょっとぽやぽや してる印象があるんですよね。でも、ぽ やぽやしてるからこそ「肉をさばいてみ たい」とか、そういうところに気がいく のかなと思って。 どうだろう。ぽやぽやしてるとは 思うんだけど、同時に「結構頑固だよ ね」って言われたりもする。ちょっと話 が飛ぶかもしれないけど、すごく小さい 頃に「自分は世界を良くできない」と思っ たことがあって。 ─小さい頃だと、戦隊モノとかの影響 で「自分は世界を変えられる!」って思 うほうが簡単な気がするんですよね。何 で「良くできない」って思ったんですか ね? 小さい頃に親とお風呂に入ってた んだけど、お父さんかお母さんのどっち かとしか入れなくて。そこで「どっちか としか入れない」ってことを覆せないん だ─とか、それはすごい小っちゃい話 ですけど、そういうことで泣いたりして た気がする(笑)。 ─なるほど(笑)。小さい頃は未来に 対して「変えられない」と思ってたとし て、今はどんな未来を思い描いてます か? うちは、第一にこどもが欲しいと 思ってる。 ─それはなぜ? なぜ? ……幸せの象徴ができ るから? ─それは昔から「こどもが欲しい」と 思ってたんですか? 理由は変化するかもしれないけ ど、高校生ぐらいのときから「こどもが 欲しい」と思ってたかもしれない。うち は、たとえば「出世したい」とか「お金 全然食べなくても平気だから、食べるっ てなったときは美味しいものを食べたい なと思ったりはするかも。 ─じゃあ結構、お店を探したりとかし ます? 誰かに聞くこともあるし、あとは 知り合いに農家の人がいて、「しづはら 農園」っていうんですけど、その人が作っ た野菜を通販で取ってる。その人の経歴 が面白くて、慶應の法学部を出たあとに 芸大の油絵科に入って、そこを出たあと 農業を始めたっていう人で。 ─すごい、紆余曲折がありますね。 でも、話を聞いてると一貫性が あって、「何かを作り出すことに携わっ て生きていきたい」っていう人で、その 中でも農業が一番性に合ってたみたい で。その野菜がすごく美味しくて、食べ ると、なんか元気になる。スーパーの野 菜と並べて食べ比べたらはっきりわかる ぐらい違いがあって。そこの野菜を通販 して食べてます。 持ちになりたい」とか「モテたい」と か、そういう強い欲望が自分の中にはな くて。それで─これを説明するために ちょっと前提から話をすると、ロラン・ バルトの『明るい部屋』って本があるん ですよね。そこでバルトは「なぜ私の母 親は特別に見えてしまうのか」ってこと をずっと書いていて。うちは学生のとき は絵を描いてたんだけど、そのときに考 えてたのは、世界的に評価されている絵 と、3歳ぐらいのこどもに「お父さんの 似顔絵だよ」って描いてもらった絵があ るとして、その2つからお父さんが受け る衝撃度ってそんなに変わらないと思っ ていて。ある意味ではこどもの描いてく れた絵のほうが絶対的にすごいかもしれ ない。そんなことを考えてたから、ロラ ン・バルトが「自分の母親の写真は特別 だ」って書いてるのを読んだときにハッ と感じるものがあった。そういう、個人 にとっての特別性みたいなことを自分の 中では考えて続けているから、自分のこ どもや家族っていうものに対して強い思 いがあるのかもしれない。だから、うち は常に結婚してこどもが欲しいと思う相 手と付き合ってる。 ─それ、「常に」っていうのはすごい 話ですね。 昔、美術の予備校に通ってるとき、 男の人数が少ないからごく一時的にモテ たことがあって。そのとき、結婚したい ほど好きじゃない人と付き合ってみたと きに、「やっぱり何か違う」って思ったっ ていうのが自分の中にあって。 ─その「違う」って、何に感じるんで しょうね? のろさんは今付き合って る相手の何がいいと思えたんですか? その人と一緒に、ごはんを食べな がらビールを飲んだときがあって。その 人はほんとにおいしそうにビールを飲ん でいて、「ここのごはん、おいしいんだ よ」って言ってるのを見たとき、うち普 段はそんなにビールを飲まないんだけ ど、その日はすごくビールがおいしかっ たんですよね。そのとき、「ああ、この 人いいな」って思った。それが結構大き かったのかもしれない。
加 藤 和 也
撮 影 、 ウ ェ ブ 、 そ の 他 も ろ も ろ 。 通 称 の ろ ( の ろ い か ら )。 し か し 彼 女 は 一 回 り 年 下 。6 7 ─藤谷さんが衣装としてかかわってる 仕事、結構ありますよね? 数で言うとそうでもないです。呼 んでくれるのは「キレなかった14才♥ りたーんず」界隈というか、主に柴(幸男) 君と(杉原)邦生君と白神ももこちゃん。 あとロロの三浦君か、それくらいです。 ─僕は自分が服にあんま注意を払わな いから余計に思うのかもしれないですけ ど、衣装がどうやって決まるのか、想像 もつかなくて。 えぇと、呼ばれて衣装をやるとき はまず演出家と話をして、抽象的な質問 攻めをします。「観たあとにどんな気持 ちになりたい?」とか、「この作品で一 番大事にしてることは何?」とか、衣 装のことはどうでもいいから、擬音語で もいいから雰囲気を教えてくれ、って。 快快以外でやるときはそうやって、実際 に作り始めるまでどんだけ想像できる かっていう作業をします。だからできる だけ役者とも話すし、できるだけ稽古に イメージを持ってるんですよね。だか ら「持ってるものを全部教えろ」って質 問攻めにするわけですけど、快快のとき はゼロから、もやもや、こねこね、もや もやっていうのがあるから、自分が考え てることをできるだけ言葉にして伝えよ うとしないと、自分自身がもっているイ メージにとらわれてしまう。 ─さっき、「昔は全然別だと思って た」って話がありましたけど、その考え が変わったのはいつ頃ですか? 「SHIBAHAMA」ぐらいだと思 います。私の中では毎回新しくて面白い んですけど、あのときは自分で思っても みなかったものを作ったから。まず、篠 田が「東京タワーとかあるといいと思 う」みたいなことを言ったとき、とても 気持ちがあがったんですね。さっきも言 いましたけど、衣装を考えるとき、個人 に寄り添う傾向があるんです。その人を 知った上で服を選びたい、って。でも、 「SHIBAHAMA」の衣装に関してはもう、 そっくりそのまま別の人が着てもいいわ けですよ。かぶりものだから、似合うも 似合わないもないですよ。だから、あの ときは誰が着るかとかじゃなくて、「見 た目で作品の雰囲気を伝えよう」ってこ とだけを考えていて。それだけを考えて 衣装を作ることって正直ないので、見た 目をこんなに純粋に作ることってあるの かなって思ってました。でも……ときど き、衣装なんかなくていいって思うこと もありますよ。 ─えっ、そうですか? それは別に裸でいいとかってこと ではなくて、仕事のポジションとしての 衣装ってことですけど。私服っていうの はその人が選んで購入して袖を通してい るものだから、その時点で選ばれてるわ けですよ。状況に応じて、たとえば結婚 式だとか、発表会とか、大事な人との食 事とか、デートをするとか、お葬式に行 くとか、基本的に自分が選んだ服を着て いくわけじゃないですか。それと同じで、 基本的には自分でできるって考えが自分 の中にあるんです。 というのも、小さい時からヴィジュア ルを構成するみたいなことに興味があっ て。学校にいるときの制服の着こなしを 行くようにはしてますね。知らない人だ と、この人がどういう人で、何が似合っ て、私服はどんなのかとか、やっぱり知 りたいし。 ─演出家の人に質問をぶつけたとき、 バシッと返ってくるものですか? バシッとではないかもしれないけ ど、皆真摯に答えてくれますよ。言葉に ならないことも無理やり言葉にしようと 頑張ってくれます。その作業が結構好き ですね。演出家とやりとりをして、足場 が固まれば固まるほど「足腰使って高く ジャンプできるぞ」みたいな感じはあり ます。私が自分の作業として関わるのは 衣装を作るってことだけですけど、音 きっかけみたいな感じで、衣装きっかけ とか、そういうコントロールもできちゃ うので。 ─その作業って、快快でやるときとそ れ以外とでは全然違いますか? ああでも、これは文美ちゃんと最 近話したことですけど、今回新作を作っ 見たり、学校じゃないとき─私、実家 が福岡なので、人が集まる繁華街がわか りやすく一ヵ所あるんですけど、地元に いるときと繁華街に出かけるときとで、 皆の服装とかまとってる雰囲気みたいな のが違うんですよね。まあ、気合いが入 るじゃないですか。そういうのを見るの が昔から好きだったんですよね。……話、 伝わってます? ─伝わってます、伝わってます。 会議とかでも、私がしゃべるとき は「伝わらなくてごめん」って気持ちに なる。抽象的だし、主語と述語もあんま りないし。最近気をつけるようになりま した。 ─僕の中では、藤谷さんはちょっとと らえどころがない印象があるんですよ ね。常にちょっと冷静というか。 冷静って、久しぶりに言われまし たね。冷静じゃなくて、ボーッとしてま すよ。30歳前ぐらいに「こんなにボーッ したままだと死ぬな」と思い始めて、そ こから直し始めて今に至るんですけど。 ─そんなにボーッとしてますかね? 普段の日常会話でも後からムカつ いたりするタイプですね。一人で生きて たらそれで問題ないんですけど、衣装と していろんなところに呼ばれるように なってやっと気づきましたわ。 ─快快は集団制作というスタイルです けど、メンバーが何人か抜けて、人数が 減ったことの影響ってありますか? 実際に日が過ぎていくスピードは 早いんですけど、作ってる時間はゆっく りな気がします。前に比べて、という話 ですけど。やっぱり人が多いと話の速度 も速いので、話を聞いて、消化して、思っ て、それを踏まえてまた別の話題が出 るっていう流れの中で、私とかは「言え るときに何か言う」みたいな感じでした けど、その頃に比べると回転数は2分の 1だと思うから。でも、それは別にネガ ティブなことではないですね。 ─ 日 田 バ ー ジ ョ ン の「6畳 間 ソ ー キュート社会」を観ていると、そうして 出てきた新作の未来観が、前作より少し 身近なものになってるのが興味深くて。 そういえば、「りんご」を作って るときはすごく遠い話をして、日田で「6 てるなかで、自分の中にある何らかのイ メージを言葉とかで外に出して共有す るってことをしないと、「おそらくこれ を共有しているであろう」みたいなぼん やりしたものにとらわれ過ぎちゃって、 足場がフニャフニャで飛びづらいという か。それこそただの擬音語でもいいから、 言葉にして「こう思ってる」ってことを 共有したほうがイメージしやすいんです よね。たぶんそれは、何を作る人であっ ても、人と何かを作る人はそうなんじゃ ないかと思いますけど。だから、快快と 快快以外とで作り方は全然変わらないで す。昔は全然別だと思ってたんですけど ね。ただ、違っているのは、快快のとき はゼロの状態から一緒にやるわけですけ ど、それ以外で頼まれたときはもう、誰 を呼ぶかとか、タイトルをどうするかと か、そういうことは決まった状態から参 加することが多いということですかね。 もちろん快快以外のときも一緒に考えま すけど、私を誘った時点で向こうはもう 畳間」を作ってるときはすごく身近な未 来の話をしてた気がします。そこに関し てはちょっとあまのじゃくなところが あって、「りんご」みたいに遠い未来の 話をすればするほど近い未来のことを考 えるし、近い未来のことを話せば話すほ ど孫の孫とかのことを考えるなーと思っ ていて。それで今、新作を作っているな かでも、「やっぱり未来の話がしたい」っ てなるわけです。ただ、前ほど漠然とし てない─漠然としてないぶんもっと飛 べるところもあるから、その意味では もっと漠然としてるかもしれないけど、 うん、前ほど遠い未来ではないです。 ─「6畳間」の未来観の身近さって、 今ある切実さみたいなものが反映されて るような気もするんですよね。 うちらがやりとりしてる掲示板が あるんだけど、結構初期の段階でよんが そこに「ほんと芽吹いてるから!」みた いなことを書いていて。「僕らはここに いて、明るくて前向いてますから!」み たいなことを言いたい、って。言い方は そんな言い方じゃなかったですけど、そ ういう切実さはあると思います。それを 誰に伝えたいかってもちろん今生きて生 活してる人だし、うちらがどこを見てる かって未来を見てるから、短絡的って言 われるかもしれないけど未来=こどもと いうとこに話が向かっているところはあ る。そこを真面目に考えて、そこに向かっ て作品を作ることはとても健全なことだ と思ってるし、意外とそこだけを意識し て作品をつくるのは初めてかもしれない ですね。
藤 谷 香 子
衣 装 、 ス タ イ リ ス ト 。 通 称 き ょ ん 。 極 太 ま ゆ げ 「 め ん た い さ ん 」 と い う 裏 キ ャ ラ 有 。8 9 ─僕は快快の中で最初に知ったのがあ なたで、快快どころか演劇を観たこと ない状態でインタビューしたのが3年前 で。そのとき、「最初に快快を観たとき、 『全部ある』と思った」って言ってたよね。 あのとき「全部ある」って思った のは、それまで私が演劇を観たことがな かったから、ファースト・インパクトだっ たっていうのもあると思うけどね。 ─じゃあ、今は全部あるとは思ってな いわけ? いや、そんなことはないけど。で も、新生快快に何があるのかは、私もま だそんなに見えてないよ。私はそんなに 稽古に参加できてるわけじゃないし、ま だ新作が着地してないからね。 ─でも、8月31日、9月1日に日田で「6 畳間ソーキュート社会」をやったでしょ。 あれを観ててどう思ったの? うーーん、これはブログにも書 いたけど、「つるっとしてんな」と思っ た。なんとなく、「りんご」も「アント ン」もゴツゴツしてたじゃん。もっとや ぶれかぶれなところがあったほうがいい なと思った。私もそう思ったし、たぶん 皆もそう思ったから、そのあと吉祥寺で Ongoing Fesに参加したときはもっと ネタをネタとして見せるっていうやぶれ かぶれな方向に一回振り切ってみたんだ と思うけど。 ─その話ってたぶん、快快の良さは何 なのかって話にも関わってくるんじゃな いかと思うんだよね。新生かどうかに限 らず、ね。だからあえて聞くけど、作品 がなめらかであることって、一般的に考 えると悪いことじゃないよね? でもさ、なめらかなものって何も 心を打たなくない? 極端になめらか だったら別だよ。何が快快の良さかって いうと─私は地方出身で、商業高校に 通ってたのになぜか美大に入ったわけ じゃん。それはたぶん、山口に住んでる と触れられない新しいものとか刺激的な ものが世の中にはあるんだと思ったから だと思うんだよ。そのことに私は、深夜 番組とかビジュアル系で気づいた。 ─何でそこでビジュアル系なの。 ビジュアル系だよ! だいたい ね、地方の人はビジュアル系で気づくん だよ。HIDEが「Mステ」で頭から墨汁 をかぶったりしてるのを見て、衝撃を受 けるわけ。それをテレビで見たらびっく りしちゃうっていうのはあるんだけど、 もっと違う驚きもあるわけじゃん。少な くとも私は、快快の「霊感少女ヒドミ」 を観たとき、それまで感じたことないタ イプの衝撃を受けたわけ。ああいう表現 を中学とか高校のときに観てたら、絶対 人生が違っただろうなと思う。私たちが いる小さな場所から、触手を伸ばすよう にどんどん面白いものを広げていって、 ガラガラと絡め取って自分たちのものに する─それが快快だと思うから。私は 田舎出身だから、それを田舎の若い人た ちに見せたいと思うし、それを観ること で人生が変わると思ってる。それで豊か
河 村 美 帆 香
になるのか貧しくなるのかはわからない けどね。 ─今「小さな場所」ってフレーズが出 てきたけど、タイトルにある「6畳間」っ ていうのもまた小さな場所だよね。あな たと僕はこの6畳間に暮らしてるわけだ けど、自分の未来についてはどう思い描 いてるの? この部屋のこと? ……うーん、 この部屋はいっつも汚いから、キレイに したいけど。もふは酔っ払うといつもア イスとかピルクルとかクソ甘いもんを 買って帰ってきて、そのゴミをソファの 下とかに散らかすじゃん。だからもっと キレイにしたいけど。 ─でも、散らかってるのはこの「6畳 間」ってサイズが2人で暮らすには狭過 ぎるって問題があるからじゃないの。だ から、未来ってことでいえば「ここから 引っ越したい」とか思わないわけ? だって引っ越すのにお金かかる じゃん。もふが出してくれるなら引っ越 すけど、お金かかるんならうまいもん食 べたいし、ゴロゴロしてたい。まあで も、寝るとこと仕事するとこは分けたい し、台所はもうちょっと広いほうがいい し、クローゼットがもう1個欲しいとは 思う。あと、ここだと犬が飼えない。私、 45歳になったら犬と暮らすけど。 ─でもさ、今日が誕生日で31歳になっ たわけだけど、小さい頃に自分の31歳 をどう想像してたの? 超おばちゃんだろうなと思ってた よ。でも、自分がどうなってるかって想 像はしてなかった。自分の母ちゃんみた いな姿形になってるだろうなとは思って たけど。まあ、それはあながち間違って なかった。 ─なんかこう、自分の未来がこうあっ たらいいなってイメージはないわけ? 別に、部屋にテレビがあればそれ でいい。だからもふが怒ってテレビを壊 したらこの部屋出てく。 ─何でそんなにテレビが好きなの? テレビはさ、こうやってつけてた ら誰かが出ててさ、寝れながら観れる じゃん。楽しいじゃん。 ─寝るときもつけてるよね。起きたら ショップチャンネルがつけっぱだったっ てことがよくあるけど。 ショップチャンネル、面白いんだ よ。よくわかんないけど、宝石を微に入 り細に入り褒めたりするわけ。うなるほ ど褒めるのが上手だから参考になる。そ れを観て、うまいこというなー、はーっ て寝るのが楽しいんだよ。 ─この部屋でやってることって、テレ ビ観るかビール飲んでるか寝てるかだ よね。 うん、テレビ観てるとすげえ楽し いし刺激も受ける。ショップチャンネル も毎回感心するし。買い物したことない けど。 ─あんまり未来の話になってない気が するんだけど。 そんなことないよ。私はずっとテ レビを観て、腹が減らない程度に食っ て、ビール飲んで、ノラ犬飼って、「ああ、 今日もイケメン見たな」と思って死んで いくんだと思う。 ─昔からずっとそう考えてるわけ? うーーん。うちってほんとにお 金なくて、小学校2年生ぐらいから家計 のこと心配して生きてたりして。でも、 なぜか私立の美大なんかに入れてくれ ちゃって、そこで否応なしに格差とか感 じるわけ。お金がある子はバイトしなく ていいから、そのぶんずっと制作のこと 考えてられたり、機材も買えたりするん だよ。人生初の挫折ってあの時期だった なって思う。親にクソ迷惑かけて美大な んか通ってんのに「なにも作りたくない。 私がなに作っても面白いわけない」って 思ってた。それで、卒業制作もとことん 「ダメな自分」を収めて作品にしようと 思って、自分で話を書いて自分が出て映 像作品を作ったの。それもとんでもない クソみたいな作品だったけど、私のパー ソナリティって、常に太ってて、貧乏で、 モテなくて卑屈で……。 ─こーじさんがブログであなたのこと を「卑下する心を忘れない」って書いて たけど、卑下しかしてないじゃん。 そう、そのよじけた自分となんと か付き合っていくみたいなこと。未来っ て言ったときにさ、「給料を倍にせねば ならない」とか、そういうことを考えな きゃかもしれないんだけど、うちの父 ちゃんは「お前たちが大きくなったら、 お父さんは旅に出て山でのたれ死にす る」って豪語するタイプだからね。山頭 火がお手本だから。それもあって、別に いいじゃんって思う。完全に血筋だね。 ─でもさ、「別にいいじゃん」だと ソー キュート にならなくない? ソーキュートだよ! 学生の頃に 深夜のバイトをしてたんだけど、通勤の とき自転車のチェーンが外れてね、それ を明け方牽いて帰ってるとき、「何でこ んなもん連れて帰ってるんだろう」って 真剣にあきれて、でもなぜか置いてけぼ りにできなくて、眠いし、歩くの遠いし、 チェーンは錆びて食い込んでてずっとう るさいし、ばからしいし、デブだし、貧 乏だし、才能ないし、こんなことしか思 わないし、ああ今自分がこの世で一番最 低の人間だ、不幸一気にきたな、ああ死 ぬかも、とか思うんだけど、ぜんぜん置 き去りにして帰ろうって気にならない の。その自転車を。結局、私はこのパー ソナリティを捨てられないし、ああ死ぬ かもと思いながらも、でもこの時間、と んでもなく美しいな、世界のすべてが詰 まってる不幸だなって。チェーンの外れ た自転車からこういう音が出てて、こう いうくさくさした気持ちになってること も、世界の普遍に繋がる何かだなって 思った。快快の作品も─「アントン、猫、 クリ」とかもそうだけど、ああいう日常 生活の中に「全部ある」って思えるわけ。 そう意味で「全部ある」って感じは、ずっ と快快に対して持ってるよ。 制 作 。 通 称 あ に ー 。 関 ジ ャ ニ ∞ 丸 山 担 当 。 イ ン タ ビ ュ ア ー と 同 居 中 。10 11 今日はね、マイナスなことしか言 わないかもしれない。 ─大丈夫ですよ。でも、何でネガティ ブになってるんですか? 新作に向けてずっと進んできてる つもりで、日田でやって、OngoingFes に出てってやってきたんだけど、それが 今、一回全部なしになってて。今、集団 制作がほんとにしんどい。 ─それは前よりもしんどい? うん、しんどいと思う。皆感じて るとは思うけど、今回はほんとにしんど い。だからって一人で作品作れるとも思 えないし─それで最近、俺の中ですご い「児童演劇いいな」って思ってるんだ けど、その話しましたっけ? ─いや、初耳です。 今年の上半期は映画とかCMの オーディションにちゃんとトライしよう と思ってやってたんだけど、それがすご いしんどくて、自分でも嫌な気持ちに なって。それで下半期は自分のやりたい 普通は役者としての成功はテレビに出る とか映画に出るとかそういうことだか ら、「そういう役者にならないと」って いう意識はすごくあった。だけど俺が快 快でやってることって、ゴリラになった り、インコをやってみたり……。 ─まず人じゃないっていう。 そう、全然繋がんなくて。それで も自分で方法論を確立したら通用するん じゃなねえかと思ってオーディションと かも受けに行ってたけど、人間役でどう したらいいのか全然わかんないし、そも そもそれが楽しめないってことはどっか でわかっていて。でも俺、こんなだけど 地位と名誉欲がすっごい強くて、皆に 「こーじ、頑張ってんな」って思われる 姿をわかりやすい形で見せないとって考 えてたんだと思う。それが俺のプライド だと思うんだけど、どう考えてもかすっ てねえなっていう(笑)。 ─うーん、かすってないとは思わない ですけどね。 でも、今はもう、自分で意味さえ 感じられてれば世の中のアレとかいいか なって、スッキリした。つい先日も一緒 に部活やってた高校の同級生の披露宴と か行ったんだけど─去年くらいからそ ういう機会が多くなかったですか? ─僕の周りはそうでもなかったですけ ど、それはやっぱり、30過ぎたからっ てことなんですかね? うん、30きっかけにっていうの がすごい多かった。そうやって披露宴と かに呼ばれるたびに「こーじ、最近どう してんだよ」ってなってたんだけど、今 回は初めてはっきり「やりたいことを見 つけた」って言えて。それも「テレビに 出る」とかそういうことじゃないかもし れないけど、それでもいいって、すごい スッキリした。まあ、つらい道のりにな るとは思うんだけど。 ─でもたしかに、20代のうちはわり とぼんやり将来のことを考えてられます けど、30過ぎるとあんまりぼんやりし てられないなって気持ちになってきます よね。 俺、まだぼんやりしてるよ。快快 メンバーが抜けるまで、皆よりもう一個 下の段階でぼんやりしてたと思う。「こ ことをやろうって思って考えてたとき に、児童演劇だって思って。たしかア ニーが教えてくれたんだと思うんだけ ど、TACT/FESTってあったじゃない。 ─ああ、大阪でやってましたね。 そうそう。それは児童演劇のフェ スティバルなんだけど、そのトレイラー の映像観てたら面白くて。で、稽古場で それを皆に見せてたら、北川さんが「実 際に観にくるのは大人でも、こどもに見 せるって意識で作るだけでも違ってくる と思う」って言ってて。それを聞いたと き、初めて自分の将来のビジョンが見え た気がした。そうやっていろんなフェス をまわって見せられるように、どうにか 自分のやってることを作品にしたいって ことを篠田さんに相談したりして。やっ ぱり日田のときもOngoingのときも、 俺がやってることってネタでしかないか ら、観たあとに何も残らなくて。 ─そうですか? 日田の「6畳間」は 残るものありましたよ。 れから将来どうしよう?」とかって考 えてる今の俺の状態が、今まで皆が快快 でやってたときの状態だと思っていて。 俺、ほんと将来のことを考えられなくて、 いつまでも「本当の自分探し」みたいな ことを言ってたからね。最近、彼女にマ ンガを渡されて、『すーちゃん』ってい うのを読んでんの。 ─ああ、益田ミリさんの。……あれを 彼女に渡されたんですか? 彼女がアゴの骨折っちゃって、入 院とかはしてないんだけど、「何か手 伝って欲しいことある?」って言った ら「ブックオフで『すーちゃんの恋』を 買ってきてくれ」って言われて。それで 買いに行って、昨日会いに行ったときに 全部読んじゃったんだけど、あのマンガ で主人公のすーちゃんが「本当の自分っ て何だろう」みたいなことを言ってるの を読んで、「あ、俺、最近言わなくなった」 と思ったんだよね。たぶんそれはつい最 近からで、メンバーが抜けてからじゃな いかと思うんだけど。「りんご」をやっ てるときとか、現実感がなくてほんとふ わふわしちゃってて。 ─現実感がない? ほんと俺、主食が菓子パンみたい な状態で、コンビニとかまで歩いて夕ご はんに菓子パン買いに行ってたりとかし て。この、「どうしちゃったの」みたい なふわっふわ感がおそろしくて。東京に いて菓子パン食って、何やってるんだろ うみたいな。やっと今そこから抜け出し たかもしれない。これまでは「快快で やってれば自分の方法論を見つけられる かも」みたいなのでやってたけど、将来 像についてはやっと地に足がついてきた 気がする。それでも皆よりふわふわして るけどね。 ─最近、酔っ払うとよく人に訊く話が あって。それは「何歳ぐらいまで生きた いか」って話なんですけど、こーじさん はどうですか? 俺、生きれて50代前半かなって 思ってた。っていうのは普通に家系の問 題で、父さんは49で死んでるし、それ は早いほうだったけど、皆ガンで死んで て。まだ生きてる人も一回ガンになった りしてるから、俺もガンで死ぬだろう ああ、日田はね。でもあれは、皆 で作って初めて作品になったから。ゆく ゆくは自分で作品を作れるようになりた いって考えたとき、もう役者云々ってこ とを言ったり、そういうプライドを捨て なきゃって思ってる。 ─プライドがあったから「俺は役者 じゃなくて作家」って言ってたんならわ かりやすいですけど、プライドがあって 役者と言ってたのって不思議ですね。 プライドっていうか、一番最初は 「役者になりたい」「映画俳優ってかっこ いいわ」みたいなところからスタートし てるから。それまでずっと「医者になる」 とか言ってたのに、「キッズ・リターン」 を観て、「安藤政信(新人)」ってエンド ロール、超かっこいいと思って。それで 多摩美の映像演劇に入ってきてるから、 作家なんて意識はまずないし、クリエイ ティブなことはできないとずっと思って て。それで自分のことを役者って言って たけど、地元の友達とかと話してると、 なって思ってたんだよね。だから老後と か全然考えてなかった。彼女のことを考 えると「生きないと」って思うぐらいで、 正直そんなに生きたいとは思わない。い や、生きたいと思わないってことはない んだけど、昔からずっとそう思ってたか ら。そんなこと言うと彼女に怒られてタ バコもやめろって言われるけど、欲求的 にはずっと枯渇していたい。 ─枯渇してたいって、どういうことで すか(笑)。 どう言えばいいんだろう。実家に いる母さんのこととか考えると、家にひ とりで住んでてまだこれから老後は長い よっていうなかでこんなこと言うのは無 責任かなと思うけど、「面白ければいい じゃない」って思ってるところがあるか ら、それで俺はあんまり未来を志向しな いのかもしれない。「このままやってっ て死にゃいいでしょ」ってつもりでいる から。60、70になってバイト生活って 考えるとキツいけど、50くらいまでだっ たらバイトしながらでも自分のやりたい ことを突き通す生活でいいと思っていた から、未来とか老後とかってことを考え ずに生きてんだと思う。でも、自分より 若い世代が売れてたりするのを見ると、 なんかほんと、自分が売れない芸人みた いだなって思うようになってきて。なん か、あるじゃん。売れてる芸人とかが、「皆 は理解できないかもしれないけど、僕は この人好きなんですよ」って言われてあ んま売れてない先輩芸人が出てくるみた いな。最近の俺、ああいうノリになって きたぞって(笑)。 ─いや、そんなことないですよ(笑)。 だから、ちょっとは見いだしたい とは思ってる。これは最近、北川さんが 言ってたことなんだけど、俺らぐらいの 年になるともう面白い/面白くないじゃ ないよねって話をしていて。これからの 快快にしても、どこに向かってるかって 過程を見せていくことが大事なのかなっ て最近考えてる。
山 崎 皓 司
役 者 。 通 称 こ ー じ 。 ま っ す ぐ 系 男 子 。 そ の 類 い 稀 な 感 性 はFA I FA I B l o g参 照 の こ と 。12 13 ─今年の6月、ワンダーサイトで皆と 飲んだとき、僕は実家のある広島から 帰ってきたところだったんですよね。そ のときに絹代さんが「牡蠣が好きだ」っ て言ってたから、今日は牡蠣を食べなが ら話を聞こうと思って。 もう、可愛くて仕方ない。こうい う生っぽくてとぅるとぅるしたものが大 好きだから。 ─牡蠣の話をしたとき、お葬式の話を してましたよね。 そうそう。うちの父親が死んだと き、葬式自体は家族葬にしたんだけど、 仕事仲間の人たちが伝えて聞いてうちに 来てくれて。その中に広島出身の人がい て、今は広島に帰って塾の先生かなにか をやってる人がいるんだけど、その人が わざわざ牡蠣を持ってきてくれて。家族 で嬉々としてバクバク食べて。「うめえ」 とか言って。 ─「りんご」にも父親のお葬式の話が 出てきましたよね。「女たちがモノマネ に「ママ、だっこ」とか言い出すから、 「もーー!」とか言いながらだっこして 帰って、YouTubeとか見せながらごは んの支度をして……。全部こう、こども をうまく動かすためにレールを敷いては 脱線されての生活だから、ごはんを作り 終える頃にはもうヘトヘトで、自分では おいしいんだかまずいんだかわからない けど、でもまあこどもが「おいしい」っ て言ってくれるからまーいっかみたい な。それから、一緒に風呂に入って、自 分はもう行水みたいな感じで、こどもと 一緒に寝る。 ─もう、その話を聞いてるだけでも大 変そうだなと思うわけですよ。僕なんか はもう、自分がこどもみたいな人間だか ら、自分が親になるイメージがまったく できなくて。 私もそういうイメージがまったく なくて。でも、初めて病院に行ってエ コーで見たとき、イクラみたいな形の丸 があって、その中にもう一個小っちゃい 丸があって、それがダン! ダン! っ て脈打ってて。それを見たとき、「これ、 ほんとに私の中で動いてるの?」って ときめいちゃって、それは今まで感じた ことのないときめきだった。理科の教科 書に載ってる皆既日食の写真、あのダイ ヤモンドリングみたいな感じに見えてき て、「ああ、私の中には宝石が眠ってる」 「それに会ったら、私、どうなるんだろ う」ってすごくワクワクしたし、怖くも あったけど、とにかくまず「会ってみた い」って気持ちが強くて、そのまま親に なっちゃった(笑)。会ってみたらまた ゴキゲンなやつで、面白くって。自分と 同じだなって面白さもあるし、予想だに しなかったことをぶちかましてくる面白 さもある。すごいムカついたりすること もあるけど、そのムカつきっていうのも 初めての経験だから。めんどくささもあ るし大変さもあるんだけど、どんどん面 白いことになっていくんだろうなってい うワクワクもある。 ─なるほど。日田で印象的だったのは、 お客さんが書いたアンケートを読んでた 絹代さんが「25か。まだ夢見れる年だ な」って言ってたことで。 ああ、それはたぶん、「日々のこ 見て爆笑してる傍らで死を迎えるなん て、私もそんな景色がみてみたいなーっ て思うよね」と。 そう。笑い話ができるぐらいのタ イミングだったから良かったなっていう のはある。 ─日田での「6畳間ソーキュート社会」 は、30歳前後の人間の現実がすごくに じんでる作品だったと思うんですね。そ こに「こども」というイメージも出てき ましたけど、絹代さんにはもう3歳にな る娘・三月がいますよね。そうすると、 そこでイメージするものがちょっと違う んじゃないかと思うんです。 そうだね。今回はずっと未来観の 話をずっとしてるんだけど、そういえば 私、こどもが生まれてから突飛な空想っ てしてないなってことに気がついたんだ よね。生まれてからはもう、空想ってよ り予定を立ててて、どうにかしてそれ通 りに進行する毎日で。だから、どうした ら未来って考えられるんだろうって思っ とを描いて、何なんすかね?」みたい なアンケートだったんだと思う(笑)。 でも、公演が終わったあとに娘連れて歩 いてたら、女性に声を掛けられることが 多くて。「すごい面白かったです」とか、 「私も今、1歳の息子を育ててるんです けど、私の生活そのままで笑えました」 とか言われて。 ─あれを観てると、笑っちゃう感じに なるんですね。 お母さんは笑っちゃうんだよね。 ギャグっていうより痛みの共有、戦争だ からさ。戦士だから、皆。 ─戦士のあるあるネタ? そう、戦場あるあるだから(笑)。 「やってらんないよねー」みたいなさ。 ─でも、そのやってらんなさが自分の 生活の中にあるとして、それを笑う方向 に向かえるか、それとも塞ぎ込んじゃう かって、結果としては大きな差ですけど、 すごく紙一重ですよね。 そうだねえ。笑えて泣けるみたい なのが一番良いんだろうけど。……何だ ろう、つらいのはつらいんだけどさ、本 人たちが一番気にしてないっていうのが お母さんの強みじゃない? ─ああ、気にしてらんない? そうそう、そんなの気にしてるヒ マがないっていう。私はもう、こどもが 明るく育てばそれでいいから。三月が「生 まれてきてよかった、しあわせだ!」っ て感じる瞬間が少しでも多くあれば、そ れでいいから。そう考えると、変な話、 別にいつ死んでもいいと思ってる。責任 とかの話になれば残せてないものはいっ ぱいあるけどね。 ─思い悩んだりはしない? もちろんするけど、何だろう、自 分の大変なこととかはもう小っちゃ過ぎ て、「え、生まれたってことだけでもう よくないですか?』みたいなところは ある。嫌なこともあるし、つまんないこ とで怒ったりもするけど、正直「どーで もいいな」っていう。「まあいっか」っ ていう。 ─絹代さん、昔からそういう性格でし た? いや、全然そんなことないと思う。 それはやっぱり、うちの母親の影響も たら、やっぱり「この子が大きくなった ら」ってことぐらいしか考えられない。 ─みつきが生まれるまでは空想する時 間って結構ありました? あったと思うよ。学生時代はけっ こうファンタジーとか書いたりしてたけ ど、今はもう、机に向かって空想するよ うな時間はない。 ─今、絹代さんの一日ってどんな感じ ですか。 ほんとに忙しいときは、日田で やったような感じかも。2人分の支度を しなきゃいけないから、まず自分が早起 きして何か食べて、それからこどものご はんを用意して起こして、自分の支度 をして、こどもの支度をしながら食べ させて、保育園に連れてって。で、迎 えに行って公園でトレーニングをさせ て、「夕飯は何にしよう」って悩みなが ら買い物をして、重たい物を持ちながら こどもと手を繋いで帰って。そこで歩い てくれればいいんだけど、そういうとき あって。うちの父が亡くなったとき、母 がすごく明るかったのね。「もうやりきっ たし、いいタイミングだったと思う!」 とか言ってて(笑)。葬式のとき、誰に も伝えてなかったんだけど、仕事関係の 人が来てくれたとき、うちの母親が「野 上正義、一世一代の大舞台、務めさせて いただきました!」みたいな挨拶を言っ てパーンと頭下げたとき、それでいいん だよなって思ったのはある。「うちの主 人は……」とかって泣き崩れるんじゃな くて、「もう終わったから!」「前向いて 行くぞ!」「打ち上がれー!」みたいな 感覚─それがきっと母親ってことなん だろうなって思った。いろんな人の話を 聞いても、お母さんってそういう存在み たいで。 ─みつきは今3歳ですけど、こんな大 人になって欲しいっていうのはあります か。 「三月」って名前をつけたとき、 他にもいろんな名前を考えてたんだよ ね。でも、「名前に思いを込める」み たいなのはうざったいなと思うように なって。「優しく美しく育つように」と かね。 だから、考えれば考えるほど「3 月に生まれたってだけでもうよくないで すか?」って気持ちになって。その事 実だけでもう、私は一生笑って暮らせる わって気持ちだったから。 ─じゃあ、意味のある名前も考えては みたんですね。 うん、考えてはみたね。春生まれ だから、お花の字が入ってるとか、そう いうイメージもあったんだけど……それ で超ブスに育ったら可哀想だなとか、な んかあるじゃん(笑)。 ─ああ、「名前負けしてる」って皆か ら思われちゃうパターン。 そうそう(笑)。そういうのは嫌 だったから、この子がここにいるって事 実だけで「よし!」って思える感じがい いなと思っていて、それで「三月」って つけたんだよね。そのときの思いは今で も変わってない。
野 上 絹 代
役 者 、 振 付 。 通 称 き ぬ よ 。 反 抗 期 真 っ 只 中3歳 児 み つ き の 母 。 牡 蠣 ラ ヴ ァ ー 。14 15 ─北川さん、結構ドラマ観てますよ ね? ドラマ、めっちゃ観てるよ。大好 きだもん。小学生の頃から大好き。全 然意味はわかんなかったけど「東京ラブ ストーリー」とかハマって観てた。あの あたりのトレンディドラマからずっとハ マってる。 ─朝ドラも、皆は「あまロス」とか言っ てますけど、北川さんはそんなことなさ そうですね。新しいのも観てます? 「ごちそうさん」は、第1話で杏 がごはん配ってるシーンを観てダメかも しれないと思った。でも、朝ドラは2週 間観てみないと面白いかの判断は出来な いけど。 ─まだ2週間経ってないですもんね。 僕、「あまちゃん」で初めて朝ドラ観た んですよ。 そうなの! ? なんてことだ。私 もそんなにちゃんと観てるわけじゃない けど、とりあえず「ちりとてちん」は観 品を作っていくなかで全員が良いと思う のはかなり難しいことだったの、正直。 だから、全然わかってない人がいたとし ても「大丈夫だから!」「やっていくう ちにわかるから!」って進められたけど、 人数が少なくなると黙ってる人のことと かも見えてきて。無視する人が減ったみ たいな感じはあるかも。 ─その集団制作のなかで、北川さんは どういう関わりかたをしてるんですか? 私はまず、皆のやりたいことを並 べて、ああ、皆は今こういう感じなんだっ ていう、快快という小っちゃい社会の雰 囲気を見る。まずね。それで、自分たち の周りには演劇界があって、その周りに はもっと大きな世界があるけど、その中 でどうやっていくのがいいのかなってこ とを考えたり─だから、自分がやりた いこととかっていうより、そういうこと を考えることに自分は面白味を感じるか ら、作品の本当に言いたい部分を探す作 業をしてる。 ─北川さんが見てる「快快という小っ ちゃい社会の雰囲気」って、今どんな感 じですか? 何だろう、どういうふうに見えて るのかな。でも、実はそういうのを作 品として出してるつもりなんだけど。ひ と言では言えないんだけど、皆がそれぞ れ思ってることをなんとなく繋げていく と、未来を志向してる感じが見えてきた りとかする。だからまずそれを軸に考え るんだけど、別に快快なんて何でもない から。今の快快がどうかなんて、どうで もいいじゃん。 ─そうですか? うん、どうでもいいはずだよ。別 にそこはどうでもいいんだけど、そうい う小さいコミュニティの人たちでも思っ ているようなことから「リアリティはど こにあるか」を見つけてるだけだから、 そこにあまりテーマはないっていうか。 ─だとしたら、大事なものって何です か? たとえば今回、こーじはネタを考 えてきたりしてるんだけど、そうやって 皆が出してくるものにうっすら共通項み たいなものが出てきて。やっぱそういう のが気になるの。その共通項と大きなこ てほしいです。 ─でも、北川さんがテレビドラマ好 きって聞いたとき、ちょっと意外だった んですよね。快快の作品を観ていてもテ レビドラマ感ないですよね? なんかね、テレビドラマっぽいや つを稽古でやってもらうこともあるんだ けど、どうしてもしっくりこなくて。嘘っ ぽさがすごくなっちゃうから。そこを突 き詰めたとしても、皆すごい鬱になると 思う。テレビドラマの面白い話をやると しても、普通の戯曲をやるとしても、お 話を伝えるために動く人たちじゃないと いうか。ものすごい面白い戯曲だったら 違うのかもしれないけど。うーん、でも、 ほんとにちゃんとやろうとしたことはな いよ? 何だろう、それはうちらがや らなくてもいいだろうみたいなところも あるし。 ─そういうのは他にやる人がいるか ら? それもあるし、テレビドラマは別 とを繋げて考えたりすると、すごいリア リティを持って感じられたりすることが あって。そういうことかな。 ─僕は快快のことを2年半くらいしか 観てないですけど、いつもハッとするフ レーズが出てくるんですよね。バンコク でやった「SHIBAHAMA」だと、「もう やめよう、こんな物語は」とか。そうい うフレーズを誰が出したのかって聞いて みると、だいたい北川さんが最後に書い てるんですよね。そのフレーズにはいつ も普遍的なものがあるような気がして、 それが不思議なんです。僕はもう、その 日飲む酒のことしか考えられないので。 そんなことないだろ(笑)。 ─いや、でも、その広さというか普遍 性って何だろうなっていう。 何だろうね。うーん、わかんない なそれは(笑)。でもやっぱり、自分の 中だけで考えてたら出てこないから、何 かを考えるとき、どうしても自分からは 抜けなきゃいけなくて。 ─出てこないってことはないですよ ね、きっと。だって他の人が「これやり たい」って言うことがあるように、北川 さんにもやりたいことはありますよね? うん。でも、それはどうでもいい からね。私がやりたいことなんてどうで もいいから。 ─その感じって昔からですか? うん、昔から。それよりも、もっ と面白いことがあるから、そのために。 ─これは完全に偏見かもしれないです けど、表現にかかわる人って、少なくと も最初の一歩の段階では「自分の中にこ れを表現したいんだ!」と思って活動を 始めるんじゃないかと思うんです。だか ら「昔から」って言われると、ちょっと 怖いんですけど。 あはは(笑)。でも、快快を始め たときも「自分の中で考えてることなん てつまらない」と思ってた。自分の頭の 中を具現化したいって欲望より、もっと 面白いことに出会いたいって欲望のほう が強いんだと思う。自分の中にあること もちょっとは面白いだろうけどね。 ─オープンスタジオで逆さまの部屋を 作ったとき、最後の最後に北川さんが ずっと、指輪をどこに置いたらいいかっ なの。テレビドラマだと物語を観るし、 何の違和感もなく観れるんだけど、演劇 でそれをやろうとすると切り貼り感がす ごくなるというか。だから、映像を作る としたらむしろドラマ然としたものをや りたいと思うのかもしれないけど、それ はまた快快ではないだろうし。 ─新作の「6畳間ソーキュート社会」、 今から1ヵ月くらい前にまず日田でやっ たわけですけど、それとは結構バージョ ンが変わる感じですか? バージョンは、うん、変わると思 う。こーじ、すごい悩んでたでしょ。 ─悩んでましたね。 たぶん、もふがインタビューして る今の時期、皆がものすごいマイナス 思考になってる時期だから(笑)。まあ、 そういうときってあるじゃないですか。 ─でも、快快はずっと集団制作という スタイルでやってますけど、メンバーが 抜けて変わったところはありますか? 今までは人数が多かったから、作 て、あちこちにかざして考えてる姿が印 象的で。北川さんの作品に対する関わり かたもそういう感じなのかなっていう。 ああ、それはそうだと思う。出来 上がったもの全体を見て、「それは何な の」ってことが知りたいから、いつでも、 最後までこだわってしまう。 ─さっき「自分の中で考えてることな んてつまらない」って話がありましたけ ど、小さい頃からそういう考え方でした か? いや、小さい頃はそんなこと考え なくない?(笑)ああでも、一番最初 に作品めいたものを作ったのは中学生の ときで、ビデオカメラを買ってもらっ て、それでずっと映画を撮ってたの。ひ とりでね(笑)。自分で全部考えて、脚 本から監督から全部やって、同級生を無 理やり出させて。だれもやりたくなかっ たと思うんだけどね(笑)。でも、全然 暗い子じゃなかったから、そういうのを 無理やりやらせるみたいなタイプだった んだけど、それを作ってるとき、自分が 思い描いてるように皆を動かすのは全然 面白くなかったの。もっと皆の意見が欲 しかったし、「何でこの人たちは本気に なってくれないんだろう」って気持ちが すごく強く残って。美大に入れば皆がア イディアをいっぱい出していて、そうい う人たちとやれると思ってたから拍子抜 けして。 ─ああ、入ってみたらそんな感じじゃ なかったんですね。 うん。大学に入って初めて演劇作 品を作ったときも、皆があまりにやる気 がなくて照明とかまで私がやったんだけ ど、それって皆が私のいいなりになって る状態じゃん。私がやりたいのはそうい うことじゃないから。 ─自分の頭の中にあるものが現実に なったところで面白くない。 うん、それを作ったところで「私 はもう知ってるし」みたいな(笑)。だ からある意味、自分のために作ってる可 能性がある。 ─そうだ、今回こーじさんにインタ ビューしてるとき、北川さんが「面白く なくてもいい、くだらなければ」と言っ ていたと聞いたんです。その2つの違