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京都駅ビルの価値

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Academic year: 2021

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京都駅ビルの経済価値と景観問題

毛利 拓斗

目 次

Ⅰ はじめに Ⅱ 京都の概要 1. 京都の歴史と現状 2. 京都の歴史的景観 3. 京都の都市的景観 Ⅲ 仮想トラベルコスト法 1. 環境評価手法 2. トラベルコスト法とは 3. 仮想トラベルコスト法とは 4. トラベルコスト法と仮想トラベルコスト法の問題点 Ⅳ アンケート調査の概要 Ⅴ アンケート調査の集計結果 1. 京都駅ビルに対する考えや利用 (1) 駅ビルの外観に対する評価 (2) 駅ビル内部の空間に対する評価 (3) 駅ビル周辺の開発に対する考え (4) 駅ビルの利用目的 2. 個人属性 (1) 性別 (2) 年齢 3. クロス集計結果 (1) 個人属性と駅ビルの外観に対する評価の関係 (2) 個人属性と駅ビル内部の空間に対する評価の関係 (3) 個人属性と駅ビル周辺の開発に対する考えの関係 Ⅵ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価 1. 旅行費用と訪問回数の算出 2. 現在の京都駅ビル周辺に対するレクリエーション需要関数の推定 3. 現在の京都駅ビル周辺の価値 4. 京都駅ビルがなかった場合のレクリエーション需要関数の推定 5. 京都駅ビルの価値 Ⅶ 結論と今後の課題 注、引用・参考文献、謝辞 付録 要 旨 本研究では、仮想トラベルコスト法を用いて京都駅ビルの経済価値を算出すると共に、 歴史的な町並みと都市的な町並みとを併せ持つ京都が抱える景観問題を考える。分析の結 果、京都駅ビルの価値は約 215 億円と推定された。この結果は京都周辺だけでなく、開発 が話題となっている大阪駅周辺など別の地域の開発問題を考える際に有益な情報となるだ ろう。

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Ⅰ はじめに

1997 年 7 月、京都駅に巨大な新京都駅ビルが完成した。同ビルは、1984 年に平安建都 1200 年記念事業として指定されて以来、旧国鉄、京都商工会議所、京都市、京都府からなる京 都駅改築協議会が構想をかため、具体化してきたものである。この間、国鉄が解体され JR となり、さらにバブル景気のもとで第 3 セクター方式による巨大都市再開発ブームがおと ずれる。新京都駅ビルの建設もこのような環境変化と深く結びついたものであった。 歴史的な街並みを残す京都は、都市的な面も持ち合わせるという非常に特徴的な都市に なっている。それゆえこの京都駅ビルについては、建設当初、主として景観の視点からそ の建物の高さやデザインが問題となり、その是非をめぐって京都市民だけではなく、国民 的な規模での論争がなされてきた。しかし、現在ではその論争もなくなり、京都の一つの シンボルになっているようにみえる。この現状は、景観を損なうように思われる大きな建 物であっても、その町にあったデザインを施すことで、その町の景観に調和した建物とな る可能性があることを示すものである。そこで本研究では、アンケート調査により人々の 京都駅ビルのデザインに対する考えを明らかにすると共に、京都駅ビルが建設されたこと による便益を経済学的に評価する。評価手法としては、仮想トラベルコスト法を用いる。 これは、仮想的な状態変化によるレクリエーション需要曲線の変化から、その状態変化を 金銭的に評価するものである。なお、アンケート調査は、京都駅前の一般道を通行する人々 を対象に行った。 本論文の構成は次のようである。第2 章では京都の景観の特徴について述べる。第 3 章 では評価手法として採用する仮想トラベルコスト法の概要について述べる。第 4 章ではア ンケート調査の概要について述べる。第 5 章ではアンケート調査の集計結果を述べ、考察 を与える。第 6 章では仮想トラベルコスト法を用いた京都駅ビルの評価結果を紹介する。 第7 章では結論と今後の課題を述べる。

Ⅱ 京都の概要

1. 京都の歴史と現状 日本列島のほぼ中央に位置する京都府は、面積4,612 平方キロメートル、人口 2,644,334 人の都道府県である(注1)。面積は国土の 1.2%を占め、47 都道府県中 31 番目の大きさで ある。北は日本海と福井県、南は大阪府、奈良県、東は三重県、滋賀県、西は兵庫県と接 し、南北に細長い形の京都府は、そのほぼ中央に位置する丹波山地を境にして、気候が日 本海型と内陸型に分かれている。古くから歴史の中心として栄え、現在でも数多くの歴史 建造物や重要文化財が残されている。 その一方で都市としての開発も盛んに行われている。京都府は現在、大阪、神戸に次ぐ

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関西で第 3 番目の経済規模を持つ都市である。中京区や南区には多数のビルが立ち並び、 京都に本社を置く大手企業も数多い。現在の京都はこのような現代的な景観と歴史的な景 観を併せ持った独特の都市空間を形成している。 2. 京都の歴史的景観 794 年の平安京遷都以後、京都には様々な歴史的建造物が建てられ、現在まで保護されて きた。京都に残る歴史的建造物を一目見ようと、全世界から観光客が訪れ、観光業は京都 の主要産業の一つとなっている。行政も景観を守るため、歴史的風土特別保存地域を指定 し、歴史上意義を有する建造物、遺跡等が周囲の自然的環境と一体をなして古都における 伝統と文化を具現し形成している区域における開発を、異種の用途や形態の建築物が無秩 序に混在することのないように配慮している。 3. 京都の都市的景観 関西第 3 の経済規模を持つ京都は、歴史的な一面だけでなく、都市的な一面を見せる。 特に中京区、南区は技術革新や経済産業の発展を遂げ、ものの豊かさと便利な社会をもた らしている。本論文で焦点を当てる京都駅ビルも南区に属し、周辺には多数のビルが立ち 並ぶ。行政も京都駅の南口地区を高度利用地域と称し、都市空間を友好的に利用し、土地 の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、建築物の建築面積の最低限度、 建蔽率の最高限度及び容積率の最高・最低限度等を規制する地域地区としている。

Ⅲ 仮想トラベルコスト法

1. 環境評価手法 環境評価手法とは、市場がなく、価格が付いていない非市場財を貨幣的に評価するため の手法である。環境評価手法には、顕示選好法(Revealed Preference)と表明選好法(Stated Preference)、そして選好独立型の代替法や回避費用アプローチがある。顕示選好法は、人々 が実際に行う経済行動の結果から、環境の価値を評価する手法である。一方で表明選好法 は、市場で取引されていない財についての仮想的なマーケットを作り、受益者に対するア ンケート調査やインタビューによって、その価値を明らかにする手法である(注2)。 顕示選好法には、ヘドニック法やトラベルコスト法等が含まれる。ヘドニック法とは、 環境サービスがその地域の住宅価格に影響を及ぼすという仮定に基づいて、そこから環境 サービスの寄与する部分を取り出す手法である。具体的には、地価関数の推定から環境と 地価との関係を明らかにし、環境の変化に伴う地価の上昇分により、その価値を求める方 法である。現実の市場と直結した価値尺度を基本としているため、客観的で信頼性が高く、 異なる環境質、社会資本などの評価を統一的に行うことができる。しかし、仮説が十分に

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満たされないケースが多く、評価対象が地域限定的な環境アメニティに限定されるといっ た問題もある(注 3)。一方トラベルコスト法は、レクリエーション地までの旅行費用をそ の価格とみなして、それとレクリエーション地への訪問回数との関係から、レクリエーシ ョン需要曲線を推定する手法である。本研究では、評価手法としてこのトラベルコスト法 を発展させた仮想トラベルコスト法を用いる。この手法について後で詳しく述べる。 表明選好法には、CVM やコンジョイント分析等が含まれる。CVM とは、アンケート調 査によって環境の経済的価値を評価する方法である。例えば、調査対象者に「ゴルフ場開 発によって森林が伐採される予定があるとします。そこで開発を中止して生態系を守るた めにあなたはいくら支払ってもよいと思いますか?」といった質問をし、その回答から生 態系の価値を計測する手法である。ここで得られる金額は「支払意志額」と呼ばれる。CVM はあらゆる環境の価値を計測できるという長所があるが、その欠点として、複数の属性を 持つ評価対象を属性単位で評価することが難しいことに加えて、支払意志額のバイアスの 問題が常に指摘されている。一方コンジョイント分析は、CVM と同様にアンケート調査な どを用いて環境の価値を評価する手法であるが、CVM が単一の環境政策を提示して、その 便益を総合的に評価するのに対して、コンジョイント分析は環境政策に対する複数の代替 案を提示して、属性別に環境の価値を評価することができるという強みがある。コンジョ イント分析は環境評価の分野では1990 年代に入ってから研究が開始された最新の手法であ るが、質問が複雑で、それによるバイアス問題が指摘されている(注4)。 2. トラベルコスト法とは

トラベルコスト法(Travel Cost Method)は、レクリエーション地(例えば、海辺、湖、 河川、森林などの自然環境、京都駅ビルのような商業施設も含む)の価値を測るのに適し た環境評価手法である。レクリエーション地を訪れるには様々な費用がかかる。それは、 その場所までの交通費と、レクリエーション地を訪れるのにかかる時間(時間の機会費用) である。この時間費用は、レクリエーション地を訪れる代わりにもし働いたとしたときに 得られたであろう賃金で計られる。トラベルコスト法は「人々がこれらの出費や時間の消 費以上の価値をそのレクリエーション地に見いだしているからこそ、その地を訪れるのだ」 という考え方に基づいているのである。 レクリエーション地までの距離が近ければ、旅行費用が低くなるので、訪れる回数が多 くなり、逆に遠ければ旅行費用が高くなるので、訪れる回数も少なくなる。従って、レク リエーション地が人々に提供しているサービスに対する価格を旅行費用とみなせば、レク リエーションサービスの需要曲線(縦軸に旅行費用、横軸に訪問率・訪問回数をとる)が 描けると考えられる。例えば、自宅から湖までの距離が30km(ガソリン代が往復 600 円) であるA さんが、その湖に年間 6 回訪れ、60km(ガソリン代が往復 1200 円)である B さ んは、2 回しか訪れないとする。これは、A さんは、湖というサービスに 600 円という価格 で直面し、それを6 つ購入した状況を、B さんは 1200 円という価格で直面し、それを 2 つ

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購入した状況を表していると考えることができる。 こうした旅行費用で表される価格と訪問回数で表される数量との関係を図式すると、そ のレクリエーションサービスに対する需要曲線が得られることになる。もし、そのレクリ エーション提供サービスを生み出している環境資源がなくなれば、その減少した価値は、 消費者余剰の減少分で表されることになる。つまり、この需要曲線から計算される各人の 消費者余剰が、その人のレクリエーションサービスに対する評価額になる(注5)。 図3.1 レクリエーション需要曲線

トラベルコスト法には、ゾーントラベルコスト法(Zonal Travel Cost Method:ZTCM) と、個人トラベルコスト法(Individual Travel Cost Method:ITCM)の 2 種類がある。ゾ ーントラベルコスト法は、レクリエーション地を中心に、旅行費用が等しくなるゾーンを 特定し、旅行費用と訪問率との関係からレクリエーション需要関数を推定するものである。 個人トラベルコスト法は、ある地域へ訪問した個人について旅行需要関数を推定し、その 結果をもとに、消費者余剰を推定するものである。日本におけるこれまでのトラベルコス ト法による先行研究を以下の表3.1 に示す。 6 2 旅行費用 1200 600 B さんの消費者余剰 A さんの消費者余剰 訪問回数

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表3.1 トラベルコスト法の先行研究 著者 評価方法 評価対象 年間訪問 者数 一人当たり評価額 総評価額 宮崎・本崎 (1989) - 滋賀県新旭町 79,200 325 円 2574 万円 親水公園 佐藤・藤田 (1992) ITCM 神奈川県横浜市 184,000 1457 円 2 億 6800 万円 寺家ふる里村 藤本 (1995) ZTCM 奈良県西吉野村 28,000 1011-1531 円 2830-4286 万円 梅園 ZTCM 奈良県斑鳩町 3,494 356-457 円 124-160 万円 景観形成作物 安田 (1999) ZTCM 茨城県牛久町 230-983 万円 自然公園 吉田・宮本・出村 (1997) ZTCM 北海道鹿追町 15,000 647-1989 円 970-2983 万円 観光農園 中谷・出村 (1997) ITCM 北海道北見市 日帰18565 2633 円 日帰4888 豊里湖森林公園 宿泊5249 3233 円 宿泊1697 注:田中(2000)を一部省略して転載。 3. 仮想トラベルコスト法とは

仮想トラベルコスト法(Hypothetical Travel Cost Method)とは、環境質の変化を考慮し たトラベルコスト法である。従来までのトラベルコスト法の枠組みに、表明選好データを 組み合わせて、環境質の変化に伴う便益の計測を行う手法である。仮想トラベルコスト法 では、公共事業などによってもたらされる景観の損失や水質の悪化といった仮想的な環境 質を回答者に提示し、そしてその仮想的な状況下でのレクリエーションサイトの訪問回数 を尋ねる。この仮想状況における訪問回数は、現実の訪問回数や旅行費用について質問さ れた後に質問される。回答者は現実における意思決定を覚えているため、仮想状況下にお ける訪問行動は、回答者にとってそれほど想像することが難しくないだろう。このような、 アンケート質問における認知上の負担があまり大きくないことは、仮想トラベルコスト法 の特徴であるといえる。 トラベルコスト法と同様に、仮想状況下でのレクリエーション需要曲線を推定すれば、 もとの需要曲線からの変化をみることができる。例えば、仮にあるレクリエーション施設 がなくなったとしよう。このとき、需要曲線は左下にシフトすることが予想され、訪問回 数は減少するはずである(図 3.2)。この施設の評価額は、それがなくなった場合の需要曲 線から得られる消費者余剰と、現状での需要曲線から得られる消費者余剰の差で表される と考えられる(注6)。

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図3.2 仮想トラベルコスト法 近年では、日本においても仮想トラベルコスト法を適用した研究が多く進められている。 しかし、仮想トラベルコスト法はアメリカで発展したものであるので、アメリカの事例に は及ばない。以下の表3.2 に仮想トラベルコスト法における研究事例を示す。 表3.2 仮想トラベルコスト法の先行研究 著者 評価対象

Riboud and Epp (1984) 水質変化 Layman et al. (1996) 漁場の管理規制 高木・大野 (1999) 水質変化 Eiswerth et al. (2000) 湖の水位 Whitehead et al. (2000) 水質変化 児玉・新保 (2001) レクリエーション施設の整備事業 Grijalava et al. (2002) ロッククライミングのアクセス規制 注:大石・渡邉(2002)を一部省略して転載。 4. トラベルコスト法と仮想トラベルコスト法の問題点 トラベルコスト法と仮想トラベルコスト法の問題点は、多くの研究者によって指摘され ている。まとめると以下の5 点があげられる(注 7)。 (1) 目的地が複数である旅行者の旅費の分離が困難である (2) 長期滞在者の取り扱いが困難である 旅行費用 TCa 旅行費用が TCa円の人のレクリ エーション施設の価値 レクリエーション施設がなくなる ことによる需要曲線の変化 訪問回数

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旅費が同じでも、日帰りでそのレクリエーションを消費する旅行者もいれば、長期に わたって滞在する旅行者もいる。それらを同じ1 回の消費とみなしてよいかという問 題がある。 (3) 時間の機会費用の推定が困難である 車で訪問した場合、ドライブの時間は時間費用になるのか。また、電車で訪問した場 合、乗り換えの時間は時間費用になるのかなど、どのような指標を用いて貨幣額に換 算するか確立されていない。 (4) 評価対象がレクリエーションサービスに限定されている トラベルコスト法が対象とするのは、利用価値のあるものに限定される。レクリエー ション地における遺贈価値(自然環境を将来世代に受け継いでいく価値)や、非利用 価値(良好な環境が存在するだけで満足を感じることから生じる存在価値など)の計 測には適用できない。 (5) 関数形の選択に慎重に対処する必要がある

Ⅳ アンケート調査の概要

アンケート調査は、2006 年 10 月 9 日(月)の 9:00~17:00 の時間帯で行った。方法は 一対一の面接方式である。有効回答部数は81 枚であった。 アンケート調査票の質問の流れとしては、内容をできるだけ簡略化し、答えやすいよう に工夫した。そして最後に個人属性についての内容を質問するようにした。質問内容は次 のとおりである。 問1:京都駅ビルの概観が、歴史的な町並み、都市的な町並みと調和しているか。 問2:京都駅ビルの空間が、京都の玄関口としてふさわしいか否か。 問3:京都駅ビルの空間が、京都の玄関口としてふさわしくない理由(問 2 でふさわしく ないと回答した人に質問)。 問4:今後の京都駅周辺の開発についてどう考えているか。 問5:京都駅ビルの利用目的。 問6:京都駅ビルに訪れる頻度。 問7:京都駅ビルが仮になくなった時、京都駅にどのくらいの頻度で訪れるか。 問8:回答者の個人属性。 問1~5 は、京都の景観の特徴である「歴史的景観と都市的景観の調和する街」について回 答者がどう考えているかを明らかにするために質問した。問 6~7 は、トラベルコスト法、 及び仮想トラベルコスト法を用いて京都駅ビルの価値を算出する際に必要となる情報であ

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る。質問内容の詳細は、本稿末に添付してある調査票を参照されたい(注8)。

Ⅴ アンケート調査の集計結果

1. 京都駅ビルに対する考えや利用 (1) 駅ビルの外観に対する評価 問 1 では、京都駅ビルの外観が、歴史的な町並み、都市的な町並みと調和しているか否 かを質問した。選択肢は、「京都駅ビルは歴史景観と都市景観の両方と調和している」、「京 都駅ビルは歴史景観と調和しているが、都市景観と調和していない」、「京都駅ビルは歴史 景観と調和していないが、都市景観と調和している」、「京都駅ビルは歴史景観と都市景観 の両方とも調和していない」の四つである。 単純集計の結果は表5.1、図 5.1 のとおりである。「京都駅ビルは歴史景観と調和していな いが、都市景観と調和している」と回答した人が最も多く、全体の約 60%を占めている。 この結果から、回答者が京都駅ビルは歴史景観にふさわしくないと考えているが、都市景 観にはふさわしいと考えていることがわかる。 表5.1 京都駅ビルの外観に対する評価 実数 % 歴史景観とも都市景観とも調和している 19 23.5% 歴史景観とは調和しているが、都市景観とは調和いていない 5 6.2% 歴史景観とは調和していないが、都市景観とは調和している 49 60.5% 歴史景観とも都市景観とも調和していない 8 9.9% 合計 81 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 歴史景観とも都市景観とも調和 している 歴史景観とは調和しているが、都市 景観とは調和いていない 歴史景観とは調和していないが、都 市景観とは調和している 歴史景観とも都市景観とも調和して いない 図5.1 京都駅ビルの外観に対する評価 (2) 駅ビル内部の空間に対する評価 京都駅ビルは、中央にコンコースを挟んで東側にあるホテルや劇場、西側の百貨店から

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構成されている。問 2 では、この駅ビル内部の空間が、京都の玄関口としてふさわしいか 否かを質問した。単純集計結果は、以下の表5.2、図 5.2 に示すとおりである。「ふさわしい」 と思っている人は、「どちらかと言えばふさわしい」に回答している人を含めて全体の約 82%におよび、全体として京都の玄関口としてふさわしいと思っている人が多いというこ とがわかる。 表5.2 京都駅ビル内部の空間に対する評価 実数 % 京都の玄関口としてふさわしいと思う 32 39.5% 京都の玄関口としてどちらかといえばふさわしいと思う 35 43.2% 京都の玄関口としてふさわしくないと思う 14 17.3% 合計 81 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 京都の玄関口としてふさわし いと思う 京都の玄関口としてどちらか といえばふさわしいと思う 京都の玄関口としてふさわし くないと思う 図5.2 京都駅ビル内部の空間に対する評価 問3 では、問 2 において「京都の玄関口としてふさわしくないと思う」と回答した人だ けに、京都駅ビルの空間が、京都の玄関口としてふさわしくないと考えている理由を質問 した。単純集計結果は、以下の表5.3、図 5.3 に示すとおりである。京都駅ビルのイメージ として、歴史景観と都市景観との調和というのが建設当初からのコンセプトであるが、「ふ さわしくない」に回答している人はこのどちらかのコンセプトとの食い違いがあるからふ さわしくないと考えているのであろう。問 3 はどちらと食い違いかあるのかを確かめるた めに設定した質問項目である。 「古都京都のイメージに合わないから」に回答している人が全体の約 78%を占め、歴史 景観との食い違いがあると考えられる。これは先程の問1 で、「京都駅ビルは歴史景観と調 和していないが、都市景観と調和している」と回答していた人が多かったこととも関連が あるだろう。なお、その他として、「京都駅は京都とは別物として考えている」という回答 が得られた。

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表5.3 京都駅ビル空間が京都の玄関口としてふさわしくない理由 実数 % 古都京都のイメージに合わないから 11 78.6% 現代京都をアピールするものとして不十分だから 2 14.3% その他 1 7.1% 合計 14 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 古都京都のイメージに合わ ないから 現代京都をアピールするも のとして不十分だから その他 図5.3 京都駅ビル空間が京都の玄関口としてふさわしくない理由 (3) 駅ビル周辺の開発に対する考え 問 4 では、今後の京都駅周辺の開発についてどう考えているかを質問した。その単純集 計結果は、以下の表5.4、図 5.4 に示すとおりである。「歴史景観を保全、あるいは創造する 方向に転換すべきだと思う」と回答した人が全体の約 44%と最も多く、次に「現在の都市 開発レベルを維持すべき」が約 32%、「さらに都市開発を進めるべき」が 21%であった。 この結果から、京都駅周辺には歴史景観が必要であると考える人が多いということがわか る。これは先述の問1 と問 3 とも関連性が高く、歴史景観が求められている現状がうかが える。また、その他としては、「歴史景観と都市景観の両方の調和を意識して開発をすすめ るべきである」、「わからない」があげられていた。 表5.4 京都駅駅ビル周辺の開発に対する考え 実数 % さらに都市開発を進めるべき 17 21.0% 現在の都市開発レベルを維持するべき 26 32.1% 歴史景観を保全、あるいは創造する方向に転換すべき 36 44.4% その他 2 2.5% 合計 81 100.0%

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0% 20% 40% 60% 80% 100% さらに都市開発を進めるべき 現在の都市開発レベルを維持 するべき 歴史景観を保全、あるいは創 造する方向に転換すべき その他 図5.4 京都駅駅ビル周辺の開発に対する考え (4) 駅ビルの利用目的 問5 では、京都駅ビルの利用目的について質問した。その単純集計結果は以下表 5.5、図 5.5 に示すとおりである。「通過するだけで利用しない」と回答した人が約29%で、次に「観 光」が約25%、「買い物」が約24%であった。その他としては、「友人と遊ぶ」、「仕事」、「食 事」があげられており、利用目的は様々であるといえる。 表5.5 京都駅ビルの利用目的 実数 % 買い物 20 24.7% 観光 21 25.9% 休憩 10 12.3% その他 6 7.4% 通過するだけで利用しない 24 29.6% 合計 81 100.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0%買い物 観光 休憩 その他 通過するだけで利用し ない 図5.5 京都駅ビルの利用目的 2. 個人属性 (1) 性別 性別に関する単純集計結果は、以下の表5.6、図 5.6 に示すとおりである。男女の割合は

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男性の方がやや多い。 表5.6 性別構成 実数 % 女性 35 43.2% 男性 46 56.8% 合計 81 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 女性 男性 図5.6 性別構成 (2) 年代 回答者の年代に関する単純集計結果は以下の表5.7、図 5.7 に示すとおりである。10 代が 全体の約55%と圧倒的に多い。次いで 30 代と 40 代が約 15%を占めている。60 代以上は全 体的に少ない。10 代も約 5%で少ない。これは JR 京都駅ビルとその周辺が若い世代に人気 が高いスポットであることを反映している。 表5.7 年代構成 実数 % 10 代 4 4.9% 20 代 45 55.6% 30 代 13 16.0% 40 代 10 12.3% 50 代 5 6.2% 60 代 3 3.7% 70 代 0 0.0% 80 代 1 1.2% 合計 81 100.0%

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0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 図5.7 年代構成 3. クロス集計結果 (1) 個人属性と駅ビル外観に対する評価との関係 以上の結果を踏まえて、問1、問 2、問 4 の回答について、それぞれ性別、年齢(20 代以 下、30 代以上)とのクロス集計を行った。まず、男女別にみた京都駅ビルの外観に対する 評価についてのクロス集計結果は、以下の表5.8、図 5.8 に示すとおりである。男女別にみ ても、両性別とも「歴史景観とは調和していないが、都市景観とは調和している」と考え ている人が多いことがわかる。しかしこの集計から、「歴史景観とも都市景観とも調和して いる」と考えている人が女性には比較的多いことが明らかとなった。 表5.8 男女別にみた京都駅ビルの外観に対する評価 女性 男性 全体 実数 % 実数 % 実数 % 歴史景観とも都市景観とも調和してい る 10 28.6% 9 19.6% 19 23.5% 歴史景観とは調和しているが、都市景観 とは調和いていない 3 8.6% 2 4.3% 5 6.2% 歴史景観とは調和していないが、都市景 観とは調和している 19 54.3% 30 65.2% 49 60.5% 歴史景観とも都市景観とも調和してい ない 3 8.6% 5 10.9% 8 9.9% 合計 35 100.0% 46 100.0% 81 100.0%

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0% 20% 40% 60% 80% 100% 女性 男性 歴史景観とも都市景観とも調和 している 歴史景観とは調和しているが、 都市景観とは調和いていない 歴史景観とは調和していない が、都市景観とは調和している 歴史景観とも都市景観とも調和 していない 図5.8 男女別にみた京都駅ビルの外観に対する評価 年代別にみた京都駅ビルの外観に対する評価についてのクロス集計結果は、以下の表5.9、 図5.9 に示すとおりである。「歴史景観とも都市景観とも調和している」と考えている人は 20 代以下が 26.5%、30 代以下が 18.8%と 20 代の方が高い。「歴史景観とは調和していない が、都市景観とは調和している」と考えている人は、20 代以下が 57.1%、30 代以上が 65.6% で30 代に多いことがわかる。また、30 代以上では、「歴史景観と調和しているが、都市景 観とは調和していない」と考えている人が比較的多いといえる。 表5.9 年代別にみた京都駅ビルの外観に対する評価 20 代以下 30 代以上 全体 実数 % 実数 % 実数 % 歴史景観とも都市景観とも調和してい る 13 26.5% 6 18.8% 19 23.5% 歴史景観とは調和しているが、都市景 観とは調和いていない 1 2.0% 4 12.5% 5 6.2% 歴史景観とは調和していないが、都市 景観とは調和している 28 57.1% 21 65.6% 49 60.5% 歴史景観とも都市景観とも調和してい ない 7 14.3% 1 3.1% 8 9.9% 合計 49 100.0% 32 100.0% 81 100.0%

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0% 20% 40% 60% 80% 100% 20代以下 30代以上 歴史景観とも都市景観とも調和 している 歴史景観とは調和しているが、 都市景観とは調和いていない 歴史景観とは調和していない が、都市景観とは調和している 歴史景観とも都市景観とも調和 していない 図5.9 年代別にみた京都駅ビルの外観に対する評価 (2) 個人属性と駅ビル内部の空間に対する評価との関係 男女別にみた京都駅ビル内部の空間に対する評価についてのクロス集計結果は、以下の 表5.10、図 5.10 に示すとおりである。「ふさわしくない」と考えている人は、女性が22.9%、 男性が13.0%で、女性に多いという結果になった。 表5.10 男女別にみた京都駅ビル内部の空間に対する評価 女性 男性 全体 実数 % 実数 % 実数 % 京都の玄関口としてふさわし いと思う 12 34.3% 20 43.5% 32 39.5% 京都の玄関口としてどちらか といえばふさわしいと思う 15 42.9% 20 43.5% 35 43.2% 京都の玄関口としてふさわし くないと思う 8 22.9% 6 13.0% 14 17.3% 合計 35 100.0% 46 100.0% 81 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 女性 男性 京都の玄関口としてふさわし いと思う 京都の玄関口としてどちらか といえばふさわしいと思う 京都の玄関口としてふさわし くないと思う 図5.10 男女別にみた京都駅ビル内部の空間に対する評価

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年代別にみた京都駅ビル内部の空間に対する評価についてのクロス集計結果は、以下の 表5.11、図 5.11 に示すとおりである。両者とも「どちらかといえばふさわしい」を入れる と、80%以上の人がふさわしいと考えている人がわかる。しかし、20 代以下では「ふさわ しくない」と回答している人が 20%と高く、若年層には玄関口として受け入れられていな いということがわかる。 表5.11 年代別にみた京都駅ビル内部の空間に対する評価 20 代以下 30 代以上 全体 実数 % 実数 % 実数 % 京都の玄関口としてふさわしいと思う 20 40.8% 12 37.5% 32 39.5% 京都の玄関口としてどちらかといえば ふさわしいと思う 19 38.8% 16 50.0% 35 43.2% 京都の玄関口としてふさわしくないと 思う 10 20.4% 4 12.5% 14 17.3% 合計 49 100.0% 32 100.0% 81 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 20代以下 30代以上 京都の玄関口としてふさわし いと思う 京都の玄関口としてどちらか といえばふさわしいと思う 京都の玄関口としてふさわし くないと思う 図5.11 年代別にみた京都駅ビル内部の空間に対する評価 (3) 個人属性と駅ビル周辺の開発に対する考え 男女別にみた今後の京都駅周辺の開発に対する考えについてのクロス集計は、以下の表 5.12、図 5.12 に示すとおりである。「さらに都市開発を進めるべき」と回答している人は、 女性で 11.4%、男性で 28.3%と、男性に多いことがわかる。また、「歴史景観を保全、ある いは創造する方向に転換すべき」と回答している人は、女性で51.4%、男性で 39.1%と、女 性に多いことがわかる。この結果から、男性には比較的都市開発を望む人が多く、女性に は歴史景観の保全を求める人が多いという傾向が見出される。

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表5.12 男女別にみた京都駅周辺の開発に対する考え 女性 男性 全体 実数 % 実数 % 実数 % さらに都市開発を進めるべき 4 11.4% 13 28.3% 17 21.0% 現在の都市開発レベルをいじするべき 11 31.4% 15 32.6% 26 32.1% 歴史景観を保全、あるいは創造する方向に 転換すべき 18 51.4% 18 39.1% 36 44.4% その他 2 5.7% 0 0.0% 2 2.5% 合計 35 100.0% 46 100.0% 81 100.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 女性 男性 さらに都市開発を進めるべ き 現在の都市開発レベルをい じするべき 歴史景観を保全、あるいは 創造する方向に転換すべき その他 図5.12 男女別にみた京都駅周辺の開発に対する考え 年代別にみた今後の京都駅周辺の開発に対する考えについてのクロス集計は、以下の表 5.13、図 5.13 に示すとおりである。「現在の都市開発レベルを維持するべき」と回答した人 は、20 代以下では 34.7%、30 代以上では 28.1%と 20 代に多いが、全体としてあまり差がな いことがわかる。この結果から、京都駅周辺の開発については年代間では意見の相違はな いといえる。 表5.13 年代別にみた京都駅周辺の開発に対する考え 20 以下 30 代以上 全体 実数 % 実数 % 実数 % さらに都市開発を進めるべき 10 20.4% 7 21.9% 17 21.0% 現在の都市開発レベルをいじするべき 17 34.7% 9 28.1% 26 32.1% 歴史景観を保全、あるいは創造する方向に 転換すべき 20 40.8% 16 50.0% 36 44.4% その他 2 4.1% 0 0.0% 2 2.5% 合計 49 100.0% 32 100.0% 81 100.0%

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0% 20% 40% 60% 80% 100% 20代以下 30代以上 さらに都市開発を進めるべき 現在の都市開発レベルをいじ するべき 歴史景観を保全、あるいは創 造する方向に転換すべき その他 図5.13 年代別にみた京都駅周辺の開発に対する考え

Ⅵ 仮想トラベルコスト法による京都駅ビルの経済評価

1. 旅行費用と訪問回数の算出 本分析では、個人の訪問回数の変化から京都駅ビルの価値を計算するため、ゾーントラ ベルコスト法ではなく、個人トラベルコスト法を用いる。個人トラベルコスト法において 必要な情報は、個人の旅行費用と訪問回数である。旅費については、回答者に居住地の最 寄 り 駅 を 質 問 し 、 そ こ か ら 京 都 駅 ま で く る の に か か る 費 用 を 「Yahoo! 路 線 情 報 (http://transit.yahoo.co.jp/)」を利用して計算した。訪問回数については、京都駅ビルを 何年、何ヶ月、あるいは何週間に何回訪れるかを質問し、その回答を年単位に換算して用 いた。得られた旅行費用と訪問回数の組み合わせを以下の表6.1 に示す。

(20)

表6.1 個人の訪問回数と旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 0.10 14940 1 380 1 20120 4 380 12 180 0.20 10790 1 760 2 740 4 380 12 180 0.33 13520 1 4090 2 970 4 740 12 230 1 9540 1 5900 2 6060 4 180 12 400 1 180 1 8380 2 6310 4 13120 12 950 1 180 1 13200 2 6310 4 13520 24 190 1 180 1 13200 3 250 5 320 26.07 230 1 210 1 13440 3 250 6 610 36 290 1 210 1 13520 3 570 6 610 52.14 280 1 320 1 13520 3 950 6 610 60 350 1 320 1 13680 3 13730 12 820 60 360 1 380 1 17800 4 380 12 1280 注:訪問回数が100 以上の回答者は除いた。 2. 現在の京都駅ビル周辺に対するレクリエーション需要関数の推定 表6.1 のデータをもとにレクリエーション需要関数を推定する。訪問回数を V、旅行費用TC とすると、レクリエーション需要関数は一般に次のように表される。 V = f(TC) (6.1) 本分析では、この関数を次の(6.2)式のように設定する。 lnV =α+βTC (6.2) α、β はパラメータである。α、β を(6.2)式のモデルの下で回帰分析により推定した。回 帰分析の結果は以下の表6.2 のとおりである。また、旅行費用、訪問回数の散布図は図 6.1 のようになる。 表6.2 レクリエーション需要関数の推定結果(現状) 係数 t 値 定数項 1.543394 8.038665 旅行費用 -0.00012 -4.53366 決定係数 0.252135052

(21)

0 5000 10000 15000 20000 25000 0 10 20 30 40 50 60 70 訪問回数 旅 行 費 用 図6.1 旅行費用と訪問回数の散布図 3. 現在の京都駅ビル周辺の価値 (6.2)式の下で、個人 i の訪問 1 回あたりの消費者余剰は次のようになることがわかっ ている。 β β α a i e CS =− + (6.3)

また、(6.2)式から、TC=a のとき、V=eα+βaとなる。これは、トラベルコストがa 円の人の 訪問回数を表している。したがって、個人 i の訪問 1 回あたりの消費者余剰は CSieα+βa で割ることによって次のように求められる。 β β α 1 − = + a i e CS (6.4) つまり、-1/βがすべての個人にとっての訪問 1 回あたりの消費者余剰となる。よって、消 費者余剰の総額は、-1/β×年間訪問者数で求められる。βの推定値が-0.00012、京都駅ビル 周辺の年間訪問者数は4700 万人(注 9)であることから、現在の京都駅ビル周辺の価値は 約3982 億円と推定される。 4. 京都駅ビルがなかった場合のレクリエーション需要関数の推定 アンケート調査では、京都駅ビルがなくなった場合に、回答者は京都駅周辺にどの程度 訪れるかを質問した。この京都駅ビルがなくなった場合の訪問回数と先の旅行費用との組 み合わせを以下の表6.2 に示す。なお、各セルの値は、表 6.1 のものと対応している。

(22)

表6.3 京都駅ビルがなくなった場合の個人の訪問回数と旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 訪問回数 旅行費用 0.10 14940 1 380 1 20120 2 380 12 180 0.20 10790 1 760 1 740 2 380 12 180 0.33 13520 1 4090 1 970 2 740 12 230 0.25 9540 1 5900 1 6060 4 180 12 400 1 180 1 8380 2 6310 4 13120 12 950 1 180 1 13200 2 6310 4 13520 12 190 1 180 1 13200 1 250 5 320 26.07 230 1 210 1 13440 3 250 1 610 1 290 1 210 1 13520 3 570 6 610 52.14 280 1 320 1 13520 3 950 6 610 24 350 1 320 1 13680 3 13730 1 820 60 360 1 380 1 17800 2 380 1 1280 注:訪問回数が100 以上の回答者は除いた。 第2 節と同様に、(6.2)式のモデルの下で、回帰分析により、京都駅ビルがなくなった場 合のレクリエーション関数を推定した。その結果は表6.4 のとおりである。また、旅行費用、 訪問回数の散布図は図6.2 のようになる。 表6.4 レクリエーション需要関数の推定結果(京都駅ビルがなくなった状態) 係数 t 値 定数項 1.092079905 5.704714 旅行費用 -0.000089976351 -3.4662 決定係数 0.159597148

(23)

0 5000 10000 15000 20000 25000 0 10 20 30 40 50 60 70 訪問回数 旅 行 費 用 図6.2 仮想状態における旅行費用と訪問回数の散布図 5. 京都駅ビルの価値 第3 節で述べたように、すべての個人にとっての訪問 1 回あたりの消費者余剰は-1/βで 表されるため、表6.4 から、京都駅ビルがなくなった場合の京都駅周辺への訪問一回あたり の価値は、1114 円と計算される。一方、駅ビルがなくなった場合の訪問者数については、 平均旅行費用を持つ人の訪問回数の変化を用いて予測する。平均旅行費用を計算すると 4432 円となり、この平均旅行費用を持つ人の訪問回数は、eα+βaから現状では2.77 回、駅ビ ルがなくなった場合は 2.00 回と計算される。したがってこの結果から、駅ビルがなくなっ た場合の年間の京都駅周辺への訪問者数は、4700 万×2.00/2.77 より 33,891,917 人に減少す ることが予測される。それゆえ、駅ビルがなくなった場合の京都駅周辺の価値は、1114 円 に33,891,917 人をかけて、約 3767 億円と推定される。これらの結果から、京都駅ビルの価 値は、3982 億円-3767 億円=215 億円と推定される。

Ⅶ 結論と今後の課題

本論文では京都駅ビルの価値を金銭的に明らかにした。手法としては仮想トラベルコス ト法を用いて、現在の京都駅ビル周辺と、京都駅ビルがなくなった場合の京都駅周辺のレ クリエーション需要関数を推定し、両者の差から京都駅ビルの価値を推定した。その結果、 京都駅ビルの価値は年間約 215 億円であることが明らかになった。この結果は京都駅周辺 だけでなく、開発が話題となっている大阪駅前など様々な都市開発問題において有益な情 報となるだろう。 しかし、京都という都市を考えると、アンケートの単純集計結果が示すように歴史景観 の保全を求める声が多いのが現状である。建物デザインや周辺景色との調和を考え、住民

(24)

の意見を反映させながら政策を進めていかなければならない。 注 (1)面積と人口のデータは、「京都府統計データ(http://www.pref.kyoto.jp/tokei/)」か ら引用した。 (2)環境評価手法の分類は、「環境評価の実践テクニック(http://members.aol.com/ coken/)」を参考にした。 (3)「環境経済学@栗山研究室(http://kkuri.cache.waseda.ac.jp/~kkuri/mt/)から引用 した。 (4)森田(2003)から引用した。 (5)トラベルコスト法の説明は、「寺脇拓のホームページ(http://www.taku-t. com)」を 参考にした。 (6)仮想トラベルコスト法の説明は、大石・渡辺(2002)を参考にした。 (7)出村・吉田(1999)を参考にした。 (8)調査票において、京都駅ビルのデザインや空間の説明に、「朝日新聞朝刊(1997 年 10 月09 日)」を参考にした。 (9)京都駅ビル開発株式会社への聞き取りによる。なお、この訪問者数は、京都駅ビルで 訪問者が買い物をした(レジを通った)回数である。したがって、例えば同じ人が 2 回買い物をすれば、訪問者数は 2 人とカウントされ、買い物に来たにもかかわらず、 何も買わずに帰った人は1 人とカウントされない。 引用・参考文献 出村克彦・吉田謙太郎(1999)『農村アメニティの創造にむけて-農業・農村の公益的機 能評価-』大明堂。 森田学(2003)「非市場財の経済評価」『Best Value』Vol.4、pp.11~14。 大石卓史・渡邉正英(2002)「仮想トラベルコスト法~環境質の変化を考慮した公共事業 の事前評価のために~」『UFJ Institute REPORT』Vol.7、pp.51~56。

謝辞

今回の論文作成にあたり、京都駅ビル開発株式会社、アンケートに答えて下さった通行 人の方々に多大なご協力をいただきました。心からお礼を申し上げたいと思います。

参照

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