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Table 2 DENSO Port Injection Fuel Injectors Fig.1 Port Fuel Injection System and Module 1996 CO ポート噴射システム 1 ( 1) HC 2 UC [2] (

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Academic year: 2021

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1. 緒言

 自動車を含む運輸部門からの CO2 排出量は,全排出量の 約 2 割を占めることから,CO2 排出量の削減に向けて燃料 消費を減らすことが地球温暖化防止や地球資源保護の観点 から必要である.また,自動車の排ガスに起因すると考え られる大気汚染も,酸性雨や人体への影響が取りざたされ, その対応が大きな課題となっている.今後は,エンジンの 高効率化やハイブリッド車等の電動化による燃費性能の向 上がさらに進むと考えられる.同時に,自動車市場が急速 な成長している中国を初めとする新興国への対応も考慮し ないといけない.  このような状況において,燃料噴射系製品は,エンジン への直接的なエネルギー供給源であることから,燃焼性能 を左右する重要製品であり,なかでも燃費性能の向上,排 気改善に果たす役割は少なくない.燃料噴射系製品は,こ れまで排気規制や燃費規制の強化とともに,進化してきた (表 1).本報では,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジ ン両者の燃料噴射系製品に関し,これまでの変遷と,今後 の展望について述べる[1].

2. 燃料噴射系製品のこれまでの歩み

2.1. ガソリン噴射システム  ガソリンエンジンの燃料噴射技術は,排気規制の強化, 低燃費化ニーズの高まりとともに進化してきた.キャブレ ターから電子制御式の吸気ポート噴射に進化することで, 精密な燃料量制御と各気筒への燃料分配が可能となり,飛 躍的な排気性能の改善を実現してきた.さらに燃料の供給 * Corresponding author. E-mail: yasuhide_tani@denso.co.jp

■特集/FEATURE■

―エンジン燃焼を支える要素・周辺技術の進化/Evolution of Element and Peripheral Technologies in Engine Combustion ―

燃料噴射系製品のこれまでの歩みと将来の展望

History and Future Trends on Fuel Injection System Products

宮木 正彦・中島 樹志・竹内 克彦・谷 泰臣*

MIYAKI, Masahiko, NAKASHIMA, Tatsushi, TAKEUCHI, Katsuhiko, and TANI, Yasuhide* 株式会社デンソー 〒448-8661 愛知県刈谷市昭和町 1-1

DENSO CORPORATION, 1-1 Showa-cho, Kariya, Aichi 448-8661, Japan

Abstract : Fuel injection system products are key parts of internal combustion engines in order to reduce exhaust emission and fuel consumption, which affect global environmental problems such as global warming and energy resources exhaustion. In this paper, we describe history and future trends on fuel injection system products for gasoline and diesel engines which were mainly developed and have been mainly developing by DENSO CORPORATON. We have many subjects to be solved for the global environmental problems, and need further evolution of the fuel injection system products with continuous developments.

Key Words : Fuel injection, Gasoline, Diesel, Fuel diversification

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位置を吸気ポートから筒内に移すことにより,吸気管壁へ の付着燃料の無い高応答な燃料供給,筒内冷却,筒内混合 気分布の空間的,時間的制御が可能になった.高負荷時の 均質混合気と,冷間始動時,ファストアイドル時の弱成層 混合気の形成を高次元に成立させ,エンジンの高効率化, 高出力化に加え,大幅遅角点火による排気改善,触媒貴金 属量の低減や排気システムの簡素化に貢献している.  現時点では,主に,安価なポート噴射システムが採用さ れているが,筒内噴射システムも 1996 年に日本市場に投 入されて以来,CO2 問題が深刻化している欧州で急速に普 及している. 2.1.2. ポート噴射システム  システムの構成は,所定の燃料圧力に昇圧・保持させる 燃料供給ラインと,エンジンに最適な燃料量を噴射するイ ンジェクタからなる.  燃料供給ラインは,構成の簡素化,低コスト化,フュー エルポンプの駆動エネルギー低減に向け,燃料圧力調整を フューエルタンク内で行い,1 系統のみのフューエルライ ンを有するリターンレス方式が主流となっている.また, フューエルポンプ,フィルタ,プレッシャレギュレータ等 をモジュール化した製品も採用が急増している (図 1).  インジェクタは,エンジンの排気規制対応,燃費向上ニー ズに向け,噴霧の微粒化,小型軽量化および高応答化など の高性能化への対応の変遷をたどってきている.特に,噴 霧の微粒化は燃料の蒸発性に直接影響することから,低温 時の未燃 HC 排出の抑制および始動性確保のために,日々 進化を遂げてきた.  デンソーにおけるインジェクタの変遷を表 2 に示す.燃 料噴霧の微粒化のため,ノズルの多孔化,ノズル内部の流 れ制御等を進めてきた.特に,最新の UC 型においては, テーパ形状のノズル噴孔を採用し,ノズル噴孔からの燃料 流出形態を液膜状としている[2] (図 2).燃料の分裂モード を,ストレート噴孔時の液柱分裂から液膜分裂にすること で,ポート噴射インジェクタとしては世界一の微粒化を達 成している.また,磁気回路の高効率化や可動部軽量化に よる高応答化,流量調整方法や構造の簡素化も合わせて実 現してきた. 2.1.2. 筒内噴射システム  筒内噴射エンジンのポテンシャルを最大限に引き出すた めには,燃料噴射系製品の高性能化と高度な制御システム 技術が必要である.このシステムでは,エンジン燃焼を高 精度にコントロールするために,高い圧力 (5∼15 MPa) で 燃料をエンジン筒内に噴射するインジェクタと,高圧供給 源となる高圧ポンプがコア製品となる.  筒内噴射用インジェクタの特徴をポート噴射と比較して 以下に示す. ・噴射可能な期間が限定されるため,単位時間に噴射され る燃料流量,すなわち噴射率が高い. ・燃料噴射から点火までの時間が短いため,燃料の気化と 空気との混合促進に向け,微粒化が良い. ・所定の筒内混合気分布の実現,燃焼室壁面への付着燃料 の抑制に向け,噴霧形状 (貫徹力,噴霧角) の自由度が高 い. ・燃焼ガスにノズル部が直接曝されるため,耐デポジット 性が高い.  デンソーでは,このような厳しい要求を満足すべく,ポー Fig.1 Port Fuel Injection System and Module

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ト噴射用インジェクタで培った技術をもとに,ノズルおよ びアクチュエータを進化させてきた[3] (図 3).現在量産中 のインジェクタの構成を図 4 に示す.燃料はインジェクタ 上部よりフィルタを介して導入され,ソレノイドコイルの 中央を通ってノズル部へ供給される.コイルに電流が流れ ていない場合,ノズルニードルは燃圧による荷重とスプリ ング荷重によりノズルボディシート部に押し付けられ,閉 弁状態となる.コイルに電流が流れるとアーマチャとコネ クタ間に吸引力が発生し,アーマチャはコネクタに衝突す るまで引き付けられ,アーマチャと一体をなすノズルニー ドルが開弁状態となり燃料を噴射する.  現在量産中のインジェクタの製造上の特徴を以下に示 す. 1) 複合磁性材の使用による,燃料シール構造の簡素化と磁 気回路最適化の両立. 2) 一方向組付けと,モジュール化したコイル・電気コネク タによる,組付生産性の向上. 3) 理想的な燃焼を実現する噴霧の品質を作り込むための, スリットノズルの精密放電加工と全数工程内噴霧検査. 4) 耐デポジット性向上に向けた,ノズル噴孔へのフッ素シ リコン系コーティング.  高圧ポンプは,エネルギー損失を最小に抑えながら搭載 性を確保するために,1 プランジャー式の圧送構造が基本 仕様として定着している.プランジャ摺動部の隙間からの 燃料リークを低減しポンプ効率を向上させるとともに,プ レストローク調量弁を採用することで,必要な分だけの燃 料を圧送して,エネルギー損失を最小に抑えながら,小型 化とを両立させている.  デンソーにおける高圧ポンプの変遷を図 5 に示す.基本 的には,ディーゼルコモンレールシステム用高圧ポンプと 技術の共用化を図っているが,軽油と違い粘性が低いガソ リン用高圧ポンプにおいては,プランジャの焼付きや磨耗 を回避する構造が必要となる.そこで特にプランジャ摺動 部の設計において,焼付き・磨耗の主要因である面圧の抑 制,潤滑性確保の技術を確立している.現在量産中の高圧 ポンプの構成を図 6 に示す.プランジャとカムリフタは, スプリング荷重により下向きの力を受けており,カムリフ タ下部に配置される駆動用カムの動きに追従する.調量弁 は通電しない時には開弁しており,カムが上死点から下死 点へ至る際にプランジャが追従して下降し,燃料が調量弁 を介してプランジャ室内に流入する.カムが下死点から上 死点に至る際,プランジャ室に満たされた燃料は,調量弁 を介して燃料吸入側に排出されるが,所定のタイミングに て調量弁を通電すると,調量弁が閉弁し,プランジャ室内 の燃料が圧縮開始され,カム上死点までの間,チェック弁 を介してデリバリパイプ側 (インジェクタ側) に吐出され る.調量弁の通電タイミング (閉弁タイミング) を変えるこ とで,吐出量を増減することができ,所定の燃料圧力に制 御可能としている.  現在量産中の高圧ポンプの製造上の特徴を以下に示す. 1) シングルプランジャ構造による高効率と構造簡素化,小 Fig.3 DENSO Direct Injection Fuel Injectors

Fig.4 Construction of DENSO Direct Injection Fuel Injector

Fig.5 DENSO Direct Injection Fuel Pumps

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2.2. ディーゼル噴射システム  ディーゼルエンジンは熱効率が高く,燃費に優れ,かつ, 低速から大トルクを発生できるという特性を有し,長らく バスやトラックといった商用車に多く適用されてきた.一 方,乗用車においては,日本においても 1990 年代におい て RV 車やミニバン等に多く適用されていたが,2010 年現 在,日本での乗用車はほとんど皆無の状態である.一方, 欧州においては 1990 年代後半から乗用車用エンジンに適 用され始め,もともとの燃費の良さ,すなわち CO2 排出量 の少なさと,アウトバーンをはじめとした高速走行に適し た『ファントゥドライブ』を実現する性能と相まって,現 在では市場の 50 % を占めるに至っている.そして,この ディーゼルエンジンの急進展を牽引したのが,コモンレー ルシステム (以下 CRS と記す) と呼ばれる燃料噴射装置の 出現である. 2.2.1. コモンレールシステム  図 7 にデンソーの乗用車向け CRS の構成製品を示す. CRS は燃料を吸入,昇圧,圧送するサプライポンプと,燃 料を蓄圧するコモンレールと,燃料をエンジン燃焼室へ噴 射するインジェクタ,および圧力,噴射を制御するエンジ ンコントロールユニット (ECU) からなる.  CRS の特徴は,大きく下記の 2 点である. 1) 非常に高圧の噴射が達成できること. 2) 高精度に,自由度の高い噴射が達成できること.  超高圧の噴射は図 8 に示すように,噴霧の微粒化を促進 し,クリーンで省燃費な燃焼を実現してきた.  また,1 燃焼行程に複数回の噴射を行うマルチ噴射の技 術は,図 9 に示すように燃焼騒音を劇的に低減させること を可能にした.図 10 にデンソーの CRS の開発ロードマッ プを示す.1995 年に世界で始めて CRS を量産した時には 最高噴射圧は 120 Mpa,マルチ噴射回数 2 回であったもの が,2007 年には超高応答のピエゾ式インジェクタを量産し, 200 Mpa,マルチ噴射回数 9 回を実現している. 1) 超高圧噴射の実現  200 MPa のような超高圧での燃料噴射の信頼性を達成す るためには,効率良く昇圧することと,高圧下での強度の 確保が課題となる. a) サプライポンプ  効率化の実現のため,CRS ではサプライポンプの圧送量 を可変にし,消費された燃料量だけを補充している.その ため,サプライポンプの気筒数に関わらず,小型のリニア ソレノイド 1 個を用いて,サプライポンプへの吸入燃料量 を調量する方式が主流となっている.  また,高圧下での強度確保のために,CRS では偏心円弧 のような低速度カムが採用されている.これは CRS にお いて,サプライポンプはコモンレール内の燃料の消費分す なわち不足分のみを補充すればよいため,低速カムの採用

Fig.7 DENSO Common Rail System Compone

Fig.8 SMD Variation by Injection Pressure

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により,低駆動トルクで,駆動機構へのストレスも小さく, かつカム接触面への面圧も低下でき,トライボロジの観点 からも非常に有利となる[4].現在量産中の HP-3 型サプラ イポンプの構成を図 11 に示す.HP-3 型ポンプは偏心カム を備えたボクサータイプの 2 プランジャポンプであり,プ ランジャはスプリング荷重によりカムリングに当接してい る.カムシャフトがエンジンからの駆動力により回転され ると,偏心カムの作用により一方のプランジャは上昇し燃 料を圧送する.他方は逆に下降し燃料吸入工程となり,結 果としてポンプ 1 回転で 2 回の燃料の圧送を行う.サプラ イポンプにはトロコイド型の機械式低圧フィードポンプが 備えられており,燃料タンクから燃料フィルタを通りサプ ライポンプまで燃料を吸引する.吸引された燃料は吸入調 量弁 (SCV) を通り,プランジャ上部へ導入される.SCV は 燃料通路中のスリットの開口面積を連続的に可変調整する リニアソレノイドであり,この開口面積の調整によりプラ ンジャへ導入する燃料量を調量する. b) インジェクタ  200 MPa という高圧下においてはインジェクタ内部の摺 動部分から漏れる燃料量,すなわちリーク量は無視するこ とができない.したがって,摺動部のクリアランス低減や, 摺動シール部そのものの廃止などにより,徹底したリーク 量の低減が図られており,3 方弁機構を採用したピエゾ式 インジェクタにおいては静的なリーク量 0 を達成してい る.  また,材料の観点においては,特に常時高圧の燃料にさ らされる燃料通路のストレスは大きく,鋼材の改良は必須 である.  燃料通路孔を形成する材料は硬度の高い特殊鋼を用いる のが一般的であるが,特に鋭角で交差する燃料通路孔部で の強度確保が重要である.図 12 に示すように,デンソー では材料表面のミクロな欠陥による応力集中までも考慮 し,鋼材に含まれる微細な不純物の大きさ,量を最適化し た特殊材料を,材料メーカー殿と共同で開発し,200 MPa を超える圧力でも割れの発生する確率が 1ppm を下回る強 度を達成することが可能となった[5]. 2) 高精度,高自由度噴射の実現  ディーゼル燃焼においては,マルチ噴射へのニーズは高 い.古くは燃焼騒音を低減させる手法として,パイロット 噴射が適用された.最近では,燃焼速度,温度を制御する ためのプレ,アフター噴射に始まり,さらには,DPF (ディー ゼルパーティキュレートフィルタ) に堆積したすすの燃焼 (再生制御) を促進するポスト噴射にまで要求は拡大してい る (図 13).  マルチ噴射を実現するためには, a) 各噴射の噴射間隔を短縮する近接噴射. b) 各噴射の噴射量精度の向上. が,特に重要な技術と考えられる. a) 近接噴射の実現  現在量産中の,高速ソレノイドインジェクタの構成を図 14 に示す.現在のディーゼル用インジェクタは,燃料を噴 射するノズルニードルを直接駆動するのではなく,ノズル ニードルに軸力を伝達するコントロールピストンの上部に ある制御室の圧力を,ソレノイドのコントロールバルブの 開閉により高圧あるいは低圧にスイッチング制御すること Fig.10 DENSO Common Rail System Road Map

Fig.11 Construction of DENSO HP-3 Fuel Supply Pump

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によりノズルニードルの動きを制御するのが一般的であ る.ソレノイドへの通電により磁力が上向きに発生しコン トロールバルブは上部へ吸引される.バルブが上昇すると, アウトレットオリフィスを通り,制御室内の燃料はイン ジェクタの外へリークされる.その結果,制御室内の圧力 が下がり,ノズル部の高圧燃料との圧力差により,ノズル ニードルが上昇する.一方,ソレノイドへの通電が中止さ れると,コントロールバルブは着座し,再びアウトレット オリフィスは閉ざされ,インレットオリフィスから供給さ れる燃料により制御室内は再び高圧となり,ノズルニード ルは下降する.コモンレールに繋がる高圧燃料はノズル部 にまで導入されており,ノズルニードルが上昇している間, 筒内に噴射される.したがって,アクチュエータであるソ レノイドの役割はこのスイッチングであり,近接噴射を実 現するためには,高応答で高作動力の電磁弁が不可欠であ る.  高応答の電磁弁を達成するため,構造としては最も磁気 効率の高い閉磁路平板型が採用され,かつ最大飽和磁束密 度の高い材料が選択されている.さらには,電磁石の磁力 を阻害する渦電流の発生を完全に遮断する,複合軟磁性材 も採用されている.これらの技術の導入により,CRS の初 期には噴射間隔が 0.7 msec 程度であったものが,現在では 0.2 msec 程度の近接噴射まで可能になっている.  しかし,厳しい排気ガス規制に対応するためには,さら なる近接噴射実現の要求があり,原理的に電磁弁より高応 答かつ高作動力が実現できるピエゾスタックをアクチュ エータとしたピエゾ式インジェクタが開発され,噴射間隔 が 0.1 msec を下回るレベルまで実現されている.  また,ピエゾ式インジェクタの高応答性によって,マル チ噴射の自由度の向上だけでなく,図 15 に示すように, ペネトレーション (噴霧貫徹力) が強く蒸発の早い噴霧も実 現している[6]. b) 高精度噴射の実現  マルチ噴射の実現,特にメイン噴射に先立つパイロット, プレ噴射を行うためには,0.7∼3 mm3/st 程度と非常に微 小の噴射量制御が必要である.そのため,インジェクタ間 の噴射量のバラツキを低減する 2 次元コードを利用した補 正制御が用いられている.  さらに,これらの微小噴射量の精度は初期の補正だけで なく,市場での経時変化についても考慮しなければならな い.デンソーでは図 16 に示すように,2002 年の第 2 世代 CRS の量産にあわせ,『微小噴射量学習制御』技術を開発し, 車両搭載状態で自律的に,微小噴射量を学習補正し,経時 変化を補償することを可能にしている.この学習制御では, 車両走行中のシフトチェンジや,減速中などの燃料カット 時に,瞬間的に所定気筒のみ微小な噴射を行い,その時の エンジン回転数の微小な変化によりエンジンのトルク変化 を算出する.トルクは筒内に噴射された噴射量と相関が強 Fig.13 Function of Multiple Fuel Injection

Fig.14 Construction and Operation of Solenoid Fuel Injector

Fig.15 Comparison of Spray Characteristics at High Pressure and Temperature Chamber

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いことから,算出されたトルク変化量を,所定気筒に噴射 された微小噴射の量に換算し,正確に経時変化を検出する ものである.このように,高精度な噴射量制御の実現には ECU による制御を駆使したシステム補償が欠かせなくなっ ている.

3. 燃料噴射系製品の将来展望

3.1. エンジンにおける改良課題と製品要求  地球温暖化防止に向けた大幅な燃費向上および大気汚染 防止に向けた厳しい排気規制に対応することが,今後のエ ンジン改良の命題であることに変わりはない.ただし,ガ ソリンエンジン,ディーゼルエンジンそれぞれで取り組む べき課題は異なる (図 17).ガソリンエンジンでは,現在の クリーンな排気ポテンシャルを維持しつつ,いかに燃費性 能を改善するか,ディーゼルエンジンでは,現在の燃費ポ テンシャルを目減りさせることなく,いかに排気性能を改 善するかが主要な課題である.  ガソリンエンジンにおける燃費低減策としては,熱効率 向上に向けた高圧縮比化,過給器併用によるダウンサイジ ング,ポンプ損失低減に向けた希薄燃焼,大量 EGR など が有効である。その際,燃料噴射系製品としては,高圧縮比, 過給器併用時に課題となるノッキングに対して筒内冷却作 用を有し,希薄燃焼時に課題となる混合気の制御性に対し て燃料噴射の制御自由度の高さをあわせ持つ筒内噴射の展 開が加速するものと考えられる.  ディーゼルエンジンにおける排気クリーン方策として は,高過給・大量 EGR を基本とした低 NOx,低スモーク 燃焼によるアプローチと,尿素 SCR (選択還元式 NOx 触媒) や NSC (NOx 吸蔵還元式触媒) などの後処理を基本とした アプローチが検討されている.一方,燃料噴射系製品とし ては,低温燃焼や均質燃焼などの燃焼制御が検討されてお り,従来からの CRS の特徴をさらに発展させ,さらなる 高圧噴射,ノズル噴孔加工の微細化による噴霧微粒化の促 進,マルチ噴射の自由度,精度向上による燃焼制御自由度 の向上が有効になると考えられる. 3.2. ガソリン筒内噴射システム  今後は,エンジンのダウンサイジングによる燃費向上を ねらった,過給システムと均質混合気燃焼の組み合わせが 主流となるものと思われる.その対応のために,エンジン 排気量当りの出力可変範囲が拡大するので,低流量から高 流量まで制御可能とするように噴射量のダイナミックレン ジを拡大すること,また,エンジンが小型化された際にも 燃焼室形状の制約を受けにくい噴霧形態の実現に向け,微 粒化や貫徹力を制御する技術が必要となる.  また,一部の大型車種には,燃費改善を追及したスプレ −ガイド成層混合気燃焼や HCCI 燃焼が普及するものと考 えられる.そのためのインジェクタ要求としては,前記噴 霧形態の形成自由度の拡大に加え,マルチ噴射等による混 合気形成の時間的,空間的な制御自由度の向上が必要とな る.  さらに,現在,規制化が議論されているガソリンエンジ ンへの PM 規制への対応として,燃料の蒸発を促進し混合 気を均質化しうる燃料噴霧のさらなる微粒化も重要課題で ある.  以上の要求に向け,噴霧形成自由度や微粒化向上の技術 開発が一層重要となるものと考える.また,ディーゼルエ ンジン同様,マルチ噴射化による混合気形成の最適化に向 けて,より高応答に作動するアクチュエータ技術が重要で ある.この点では,すでにガソリンエンジン用としてピエ ゾ駆動のインジェクタも製品化されている[7]。また,噴霧 の微粒化と高流量化の両立策として,燃料噴射のさらなる 高圧化も一つの解と考えられる (図 18). 3.3. ディーゼル噴射システム  先に述べたように今後のディーゼルエンジン開発は,燃 焼をベースとしたアプローチと,後処理技術をベースにし たアプローチと,さらにはその複合の 3 つの流れが想定さ れる.主に燃焼をベースにするアプローチは比較的小型の 乗用車などに有効であると考えられ,一方後処理技術は大 型の商用車に必須になる可能性が高い.すなわち,今後の ディーゼル噴射系に求められる技術は地域および車両セグ メントごとに考える必要がある.

Fig.17 Challenges of Gasoline and Diesel Engines

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装置への負担低減. ・シンプルな構成で低価格の実現. ・長時間/長期間使用に対する信頼性の向上. ・バイオ燃料を含む,多種,多様化燃料へのロバスト性向 上.  多種多様化燃料への対応に関しては噴射系部品へのコー ティング技術や,材料の変更のみならず,燃料タンクや, 燃料フィルタまで含めた開発が必要になると考えられる.  一方,欧米日を始めとする先進国においては,基本的に は乗用車,小型商用車への展開が主流となり,さらに厳し くなる排出ガス規制や燃費規制への対応のため,大幅な燃 焼改善が求められる.同時にハイブリッド車まで含めた, 排気/燃費性能での有利性を考慮する必要があり,より高 コストパフォーマンスなシステムが要求されると考えられ る.  以上より,噴射系へのニーズは, ・マルチ噴射を始めとする噴射自由度のさらなる向上と噴 射中の噴射率を可変する可変噴射技術の開発. ・さらなる高圧化による微粒化の促進と,ノズルデザイン の最適化による空気利用率を高める噴霧の実現. ・噴射量,噴射時期精度の向上による,生涯精度の保証と, 適合容易化の実現.  この分野では,ノズルニードルをアクチュエータで直接 駆動する新しい直動ピエゾインジェクタなどを用いた研究 が報告され始めている (図 19).  以上のように,燃料噴射系製品はこれからも,クリーン な排気,高燃費を実現するために重要な製品であり,上記 の課題の克服を進めていく必要がある. 3.4. 燃料多様化への対応  前章でも一部取り上げたが,自動車から排出される CO2 排出量削減のためには,バイオ燃料等の再生可能燃料を利 用することも有効で,バイオ燃料のガソリン,軽油への混 合の義務化の動きが世界規模で進行している.  バイオ燃料としては,ガソリン混入用にサトウキビやト ウモロコシ等を原料として発酵,蒸留処理したバイオエタ ノール燃料,軽油混入用に菜種,パームヤシ,大豆や廃食 油等を原料としてメタノールを加えてエステル化処理した バイオディーゼル燃料が知られている.図 20 に燃料用バ イオエタノールの生産量を示す[8].  米国では,2017 年までに運輸部門の石油消費量を 2007 年比で 20 % 低減することを目標として,2012 年に年間 75 億ガロン (約 28 百万キロリットル) の再生可能燃料使用義 務付けに続き,2017 年に年間 350 億ガロン (約 132 百万キ ロリットル) のバイオ燃料の導入が提言されている.この 場合の再生可能燃料は,ほとんどがバイオエタノール燃料 である.  欧州では,2020 年までに CO2 排出量を 1990 年比で 20 % 低減することを目指して,2010 年には 5.75 % (22 百万キロ リットル),2020 年には 10 % (38 百万キロリットル) のバイ オ燃料混入を目標としている.2006 年における欧州のバイ オ燃料生産では,バイオディーゼル油の比率がバイオ燃料 全体の 75 % を占める.  またわが国でも,2030 年までに運輸部門の石油消費量を 2006 年比で 20 % 低減することを目指している.バイオ燃 料の導入および混入について義務化の計画は明らかになっ ていないが,2003 年よりエタノール混入量 3 % のものまで をガソリン,バイオディーゼル混入量 5 % のものまでを軽 油として販売できるようになっている.  今後,ガソリン,軽油とも再生可能燃料の増加に伴い, バイオ燃料の高濃度化が進んで行く.燃料噴射系製品に とっては,性能上と信頼性の両面からの対応を余儀なくさ れる.すなわち性能上からは,アルコールの低熱量に起因 する燃料噴射弁の大流量化対応 (ガソリンや軽油と同じ発 熱量を得るためには流量を増やす必要がある),およびアル コールの揮発性に起因する低温始動性の改善やエンジンオ Fig.19 Performance of Direct acting Piezo injector with Rate Shaping

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イルの希釈への対策が必要になる[9].種々の濃度のバイオ 燃料が用いられる場合には,適切な噴射量制御を行うため にアルコール濃度の検出と制御システムも必要となる.ま た信頼性上からは,アルコール成分による燃料タンク,ポ ンプおよび燃料配管に使用されるゴム部品の膨潤や金属部 品の腐食,アルコール中に溶け込んだ水分による金属部品 の腐食,および酸化劣化燃料によるインジェクタのノズル 詰まりなどが懸念されており,バイオ燃料の利用に対応し た燃料噴射系製品の開発が大きな課題となっている.

4. 結言

 冒頭にも述べたように,現在および将来にわたり,地球 温暖化防止に向けた大幅な燃費向上を達成することや,大 気汚染防止に向けた厳しい排気規制に対応することが,燃 料噴射系製品に携わるわれわれ技術者の大きな課題となっ ている.加えて,今後の自動車市場の急激な成長が予想さ れる BRICs をはじめとする発展途上国に向け,低コストな 製品を提供することもわれわれへの大きな期待と認識して いる.また,バイオ燃料等,燃料が多様化する過程では, 性能向上や信頼性確保への取り組みも必要となり,考慮す べき課題はつきない.  これら多くの課題を克服することによって,燃料噴射系 製品はいっそう進化するに違いなく,われわれ技術者がそ の一端を担っていきたいと思う.

References

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参照

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