蓄積する。また、測定データは地図上で示され、誰でもその結果を閲覧できるというものである。 KURAMAについては、文部科学省や福島県のモニタリングにおいて活用され、その後技術的 な課題の改良を図り、より簡便な計測が可能で小型のKURAMA2が新たに開発され、平成24 年3月に文部科学省が自治体と協力して行ったモニタリングに活用された。今後、文部科学省で 継続的に実施するモニタリングで使用されるほか、生活圏内でのきめ細かな放射線計測での使用 が期待される。 放射性物質の分析については、国や福島県において土壌の環境試料の継続的なモニタリングを 実施したほか、関係する分野の研究者たちによる自主的な取組が進められた。このような中、文 部科学省及び農林水産省は、科学技術戦略推進費を活用し、日本学術会議と連携して国内の100 を超える大学及び研究機関、400名を超える研究者の参画を得て、「東京電力株式会社福島第一原 子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の分布状況等に関する調査」を実施した。その実 施に当たっては、放射線に関する様々な専門家により構成される「放射線量等分布マップの作成 等に係る検討会1」の専門的知見を活用して、福島県を中心に、約2,200か所の土壌サンプルの放 射線測定やKURAMAを使用した走行サーベイ(第1-2-9図)、放射性物質の移行状況調査、農 地土壌における放射性物質の分析等を行った。この調査結果は、計測値の妥当性の確認を行った 後、分かりやすいマップとデータベースとして文部科学省のウェブサイトで公開された。 第1-2-9図/KURAMAを用いた走行サーベイによる連続的な空間線量率の測定結果 (平成23年12月時点) 資料:文部科学省作成 1 放射線量等分布マップの作成に当たり、①放射性物質の分布状況を把握するための「線量測定マップ」の作成、②土壌表層中の放射性物質 の蓄積状況を把握するための「土壌濃度マップ」の作成、③農地土壌における放射性物質の蓄積状況を把握するための「農地土壌放射能濃 度分布マップ」の作成、④地表面からの放射性物質の移行状況の確認、に係る技術的事項の検討を行うために開催
第2章
② 海洋汚染シミュレーションの実施 一方、海域については、放射能測定と東シナ海から東経180度付近まで日本近海の海流につい て最も精度高く予測するシステム「日本海予測可能性実験モデル21」を用いたシミュレーション も行われた。海洋研究開発機構は、放射線医学総合研究所、気象研究所、金沢大学と協力して、 東電福島第一原発事故1か月後における人工放射性核種セシウムー137等の西部北太平洋におけ る拡散状況について調査した。海洋地球研究船「みらい」を利用し、航跡に沿って表層海水を採 取、分析し検証データとして活用し、東電福島第一原発近海の放射能濃度を基に日本近海の放射 能の濃度分布のシミュレーションを実施し、西部北太平洋の広い範囲での東電福島第一原発由来 の放射性物質の拡散状況を明らかにした。しかし、北緯40度以北の海水で計測されたセシウムの 存在は、飲料水の暫定基準よりもはるかに低かったものの、このモデルのシミュレーションで説 明できなかったため、別途大気塵拡散のシミュレーションを行い、加味することとした(第1-2-10 図)。その結果、東電福島原発事故1か月後の西部北太平洋における人工放射性核種の拡散は、汚 染水とともに大気塵としてこの地域に輸送された汚染塵によるものであることが推定された。 第1-2-10図/汚染水によるセシウム-137拡散状況シミュレーション結果と大気塵による セシウム-137拡散状況シミュレーション結果 㧔ᐲ㧕 ᧲⚻㧔ᐲ㧕 䋴 㪈㪋 ᣣ䈎䉌䋴 㪉㪍 ᣣ䈱ᐔဋ୯ 䋳 㪈㪈 ᣣ䈎䉌䋴䋱ᣣ䉁䈪䈱Ⓧ▚୯ ർ✲ 㧔ᐲ㧕 ᧲⚻㧔ᐲ㧕 㧔Bq/m2㧕 ർ✲ 資料:海洋研究開発機構作成 海域のシミュレーションでは北緯40度以北(赤丸地点で計測)のセシウムは算出されなかったが、大気塵のシミュ レーションでは算出されたことから、西部北太平洋における人工放射性核種の拡散は、汚染水とともに汚染塵によるも のであると推定された。左図中の○は、海水採集地点を示す。 ③ ゼオライト等を利用した除染技術 従来の放射性物質の除染手法は、研究施設内等の狭い範囲でのごく微量な放射性物質の除染を 対象とした手法・手順であり、事故由来放射性物質の除染のためには、新たな除染剤や除染手法 を開発する必要があった。 市街地に飛散し、家屋や道路、公園等に堆積した放射性物質は速やかに除染する必要があった が、市街地の除染は、専門家だけではなく住民が安全に作業に携わり、確実に除染できなければ ならないだけでなく、費用面にも制限がある。このようなかつてない状況において、除染手法の開発に学会や多くの研究者が取り組んだ。その結果は平成23年12月に「除染関係ガイドライン」 として環境省よりまとめられた。そのほかに、屋外プール貯留水中のセシウムの除去については、 日本原子力研究開発機構がゼオライト1と凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)を使用した手法を開発 し、別途マニュアル化した(第1-2-11図)。 第1-2-11図/プール除染の様子 ワイパー 塵取り 麻袋 麻袋 虫取り網 資料:日本原子力研究開発機構福島支援本部「学校プール水の除染の手引き~安全にプールの利用を再開するために~」 東電福島第一原発内では、セシウムによる大量の放射性汚染水を処理する必要があった。汚染 水中のセシウムの分離回収の検討は以前から行われてきたが、今回の事故で発生した大量の汚染 水には海水が含まれていたため、この影響を新たに検証する必要があった。吸着材としては、国 内で多量に産出し、極めて安価なゼオライトが注目された。3月中に日本原子力研究開発機構を はじめ、国内の複数の大学の有志研究者等約60名から成る研究チームが発足し、ゼオライト工業 会ほか産業界、吸着材供給メーカーも加わって、ゼオライトのほか様々な吸着物質についてセシ ウム、ストロンチウム、ヨウ素の吸着実験を行った。これら物質の吸着率に及ぼす海水濃度、水 素イオン濃度、吸着材量/汚染水量の比、放射性物質の濃度、吸着時間の影響など汚染水処理シス テムの構築に役立つ網羅的なデータ600点を約1か月で取得し、その結果は「福島第一原子力発 電所内汚染水処理技術のための基礎データ収集」としてウェブサイト上で公表された。そのほか、 物質・材料研究機構を中心とした諸機関では、様々な産地・化学組成の吸着材約60種に対して基 礎的データ800点近くを収集し、12月にデータベースとして公開した。 また、吸着材自体の開発も数多く行われ、物質・材料研究機構や日本原子力研究開発機構では、 新たなセシウム吸着材や、セシウムを高濃度に吸蔵し、長期間にわたって安定に閉じ込めること ができる新しい素材などの開発に取り組んでいる。 1 沸石とも呼ばれる鉱物で、トンネル状構造を有しておりその孔路内にセシウムを吸着する。工業的には触媒等に使用されるほか、観賞用の 水槽の浄化、ペット屎し尿の脱臭等広く活用されている。
第2章
˱͋͞ ˱͋͞チェルノブイリなど世界の経験を福島の復興に活
いかすために
チェルノブイリ原子力発電所事故を経験したロシア、ベラルー シ、ウクライナの科学者などを招いたシンポジウムとセミナーが 平成24年2月に東京と福島で開催された1。このシンポジウムと セミナーは国際科学技術センター(ISTC2)とウクライナ科 学技術センター(STCU3)が、米国エネルギー省の資金協力 を得て開催したもので、平成24年2月3日に東京で開催された シンポジウムでは約250人、翌4日に福島で開催されたセミナー では、約200人の参加者があった。 東京で開催されたシンポジウムにおいては、放射性物質による 汚染土壌の回復技術や除染剤等についての講演が行われたほか、 チェルノブイリ原発事故対策に当たった経済協力開発機構原子 力機関(OECD/NEA4)関係者からは、復興のプロセスで は放射線の基準や食品の安全確保等、様々な事項を決めていく必 要があるが、その中で地元住民や農業生産者、消費者等影響を受 ける利害関係者(ステークホルダー)が関与することの重要性と、具体的事例の紹介があった。 福島では、早期復興に向けて、福島の住民、行政、専門家による対応に参考になることを目指したパネル ディスカッション中心のセミナーが開催された。冒頭、細野環境大臣兼原発事故の収束及び再発防止担当内 閣府特命担当大臣が、チェルノブイリ原発事故をはじめとする原子力事故に対処した国際的経験に学ぶとと もに、日本式の復興スタイルを確立していく必要がある、と挨拶した。続いて挨拶に立った佐藤福島県知事 からも、福島の復興に当たってチェルノブイリ原子力発電所事故の経験が最も参考になるはず、として来日 した専門家への謝意とセミナーに対する期待が述べられた。 パネル討論ではチェルノブイリ原発事故後の対応に携わったウクライナ、ベラルーシ、英国の医療、行政、 教育関係者により議論が行われた。会場からは、海外での放射線量の基準や国への信頼度についての質問が 出され、パネリストが自国での経験を基に回答した。 チェルノブイリ原子力発電所事故では、当事国のベラルーシ、ウクライナ、ロシアに加えて、放射性物質 が拡散した欧州諸国でも様々な経験が蓄積されており、科学的な知見のみならず、復興に向けた社会的合意 の形成等も含めて、今後様々な形で情報交換や協力を進めていくことが有意義である。 ④ 震災後の電力需給 迫ぱくを受けた再生可能エネルギーの利用拡大への取組 東電福島原発事故を契機に、再生可能エネルギーの活用に対する関心が高まる中、再生可能エ ネルギーの利用拡大を目指すため、北九州市などでは、スマートコミュニティの構築に向けた技 術的・社会的課題を検証する社会実証等の取組が行われている。 1 福島復興のためのシンポジウムとセミナー~ロシア、ウクライナ等の除染・環境修復に関する研究成果や技術・経験に学ぶ~2 International Science and Technology Center
3 Science and Technology Center in Ukraine
4 Organisation for Economic Co-operation and Development/ Nuclear Energy Agency
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シンポジウム(東京会場)の様子
提供:文部科学省
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