東京国道事務所における維持管理の効率化を
目指した取り組み
~地域の景観にあった新しい街路樹の設置~
外山
直幸
関東地方整備局 東京国道事務所 管理第二課 (〒 102-8340 東京都千代田区九段南 1-2-1 15 階) 東京国道事務所では東京 23 区内の国道 10 路線 162km の維持管理を担当しているが、 植栽関係では高木約 16,000 本の剪定、植樹帯の除草など植栽の維持管理を効率的に実施 していくことが大きな課題となっている。 そこで、電線共同溝整備のため一時撤去していた植栽を現状に戻す予定の所を、地域の 景観に配慮し成長が穏やかな植種や防草対策に有効な植種にするなどの工夫により維持管 理コストに配慮した植栽計画に取り組んだ事例について報告する。 キーワード 維持管理、街路樹、コスト削減 1.はじめに 東京国道事務所は、東京23区内の国道10 路線約162kmの整備、管理を通じて、安心・ 安全で魅力ある東京づくりを支えています。 また、電線類の地中化が概ね7割完了してい る所であり、万世橋出張所管内では昨年度3 件の電線共同溝に関わる路面復旧工事が発 注された。 今回は、電線共同溝事業の最終仕上げと なる歩道復旧工事において苦情削減および 維持管理の効率化を目指した取り組みとし て、既存道路植栽の樹種変更を行う事例に ついて紹介したい。 2.現状と課題 東京都内における街路樹は、緑陰の確保 や排気ガスや騒音への対策としての大きな 役割を果たすと共に、コンクリートやアス ファルトに囲まれた都心部において人に憩 いや安らぎを与えている。沿道には、街路 樹に愛着を持っている方も多く存在するた め、東京都においても H20 年度から緑の東 京 10 年プロジェクトとして街路樹を 100 万 本に増やす取り組みを行うなど道路緑化に 対し高い関心がある事が伺える。 一方で、万世橋出張所管内の苦情・要望 は、年間約 600 件程度寄せられており、そ のうち樹木の剪定や除草などに関する苦情 ・要望は、約 1 割程度となっている。苦情 ・要望の件数自体は減少傾向にあるが、樹 木に関する苦情・要望は、ほぼ変わらず寄 せられている。また、樹種に応じた剪定回 数など適切な維持管理を実施しないと台風 や強風時には倒木の危険性も高く、H23 年 の台風では東池袋地区で 16 本も倒木が発生 している経緯がある。 高木剪定については、通常 3 年に 1 回実 施しているが、プラタナスについては、1 年 に 2 回実施し、除草は交通安全上必要と思 われる箇所を優先的に実施している。しか し、高木のほとんどが落葉樹であったり、 低木においても繁茂の早い樹種が多いため、最低毎年 1 回の寄植え剪定対応が必要とな り維持管理コストの増大につながっている。 抜本的な対策としては、繁茂の早い樹種 や落ち葉の多い木を撤去し、繁茂の遅い樹 種や落ち葉の少ない木へ樹種自体を更新す る事が最良と考えられる。しかし、緑地管 理工事での更新では予算的な制約が大きく 1 年に更新出来る本数がごく少量になってし まうため長期にわたる期間を要し、効果を 実感しづらく、更新が終わるまで相当な時 間を要してしまう。 3.取り組み内容 そこで今回、電線共同溝の路面復旧工事 (国道 254 号東池袋地区、国道 17 号坂下地 区)を対象とし、維持管理しやすい植栽計 画(低中高木の更新・雑草の繁茂しない工 夫等)について検討を行うこととした。 本取組みは、都市緑化の専門家である千 葉大学池邊教授のご指導及び事務所管理第 二課、道路工事調整課と連携し検討作業を 進めることとなった。 低 木 及 び 雑 草 繁 茂 状 況 イチョウの落葉状況 ・国道 254 号東池袋地区 ・国道 17 号坂下地区 ①コンセプト まずは各地区のブランディングを行い、 植栽計画のコンセプトを決定した。ブラン ディングとは、「イメージ作り」と「その定 着」を狙うものである。 現在の東池袋地区は、「駅に近く雑居ビル が建ち並ぶどこにでもあるイメージ」、坂下 地区は「江戸の入り口であった名残として 一里塚が残されているイメージ」であるこ とから、東池袋地区には「既往イメージの 払拭と新たなイメージを興す事」、坂下地区 には「潜在的ポテンシャルを生かす事」を 目的に、下記の通りコンセプトを決定した。
○東池袋地区 街行く人の視線を誘導する新しいスタイ リッシュな空間を演出 ○坂下地区 中山道としての伝統的な和風イメージを 持ちつつ現代のモダンなビルやマンション の景観にも合う新しい街路景観の形成 ②樹種の選定と配置計画 樹種の組み合わせは、従来から「高木+ 低木」であったが、今回は、植栽計画のコ ンセプトとブランディングを基に「高木+グ ランドカバー(地被植物)」の配置計画とし、下 記の通りとした。 ○東池袋地区 高木:葉が明るく樹形も美しい 「カツラ」 地被植物:青芝の美しい花を咲かす 「ビンカマジョール」 東池袋地区整備イメージ 東池袋地区配置計画イメージ ○坂下地区 高木:日本の固有種である 「ハナノキ」 低木+地被植物: 伝統的な和のイメージのある 「ツゲ+フッキソウ」 坂下地区においては、伝統的なイメージ をより高めるために、日本庭園でも利用さ れている「ツゲ」を併せて植栽することと した。 次に植栽配置計画については、基本的に 電線共同溝整備の際に既存植栽を撤去した 箇所へ植樹するが、東池袋地区では幅の広 い歩道が、坂下地区には過年度工事で撤去 された植樹桝があることから、新設植樹桝 の整備も併せて行うこととした。 ③コスト縮減の検討 コスト縮減効果としては、東池袋地区はプ ラタナスから、坂下地区はイチョウからの 樹種変更となるが、地被植物により雑草が 生えずらくなり、抜根除草が必要無くなる こと、プラタナスからカツラに変更したこ 坂下地区整備イメージ 坂下地区配置計画イメージ
とにより、剪定回数が2回/年から1回/3年に なる。これにより年間の維持管理コストが 試算では東池袋地区が「52万円/年」→「6 万円/年」に、坂下地区が「55万円/年」→ 「35万円/年」と全体で約6割削減となった。 また、更なる維持管理コストの縮減につい ては、地元町会へのボランティア活動の働 きかけや、地元町会と一緒に清掃活動を行 うなど検討中である。 ④地元町会等への説明 計画策定後、短期間で円滑な道路植栽の 施工を実施するため、事前に地元町会長及 び関係機関への説明に伺った。 対象の自治会・町会は、東池袋地区で 2 町会、坂下地区で2 町会の計 4 町会があり、 各町会長へこれまでの維持管理についての 課題を踏まえ今回のコンセプトと樹種につ いて説明したが、「美観に優れる上に、手間 の掛からない植栽になるのであれば、地元 としてはとても嬉しい」と賛同された。し かし、近年の植栽の剪定回数が減っている ことや除草が行き届いていないなどの維持 管理については苦言を呈された。 また、地元町会等への説明も終わり、植 栽整備に向けて植樹桝の施工途中において、 坂下地区で自分の店舗の前は植栽整備をし てもらいたくない、との苦情・要望が寄せ られた。 早速、要望者に伺い、これまでの維持管 理についての課題を踏まえコンセプトと樹 種を決定し試験的に施工したい事を説明し たところ、今回の試験施工の取り組み、コ 植樹桝撤去要望箇所 ンセプト、樹種については理解をしてもら ったが、区道への左折車両と自転車歩行者 との事故の危険があること等、植栽整備の 了解が頂けなかったため、今回工事での整 備からは除外する事となった。 ⑤記者発表 今回の取り組みについて、東京国道事務 所として維持管理コストを抑えた試験植栽 が初めてだったため、記者発表を行うこと とした。 記者発表は 1 月 29 日(水)に実施。3 社か ら取材申し込みがあり、計 4 回新聞掲載さ れた。 新聞名 掲載日 建設通信新聞(全国版) H26.2.3 日本経済新聞(地方面) H26.2.6 環境緑化新聞 H26.2.15 建設通信新聞(地方面) H26.3.13 そのうち、日本経済新聞に掲載された記事 を見て、「自宅の庭の防草対策として使用し たいので、地面を覆う植物の名前を教えて もらいたい」との問い合わせが 1 件あった。 また、1 月 29 日(水)の記者発表に合わせ、 各自治会長へ記者発表について報告に廻っ た。その際に東池袋地区の自治会長から「住 民から空いている植樹桝には何を植えるの か?とよく聞かれるよ」との話を頂いた。 東池袋地区は、樹種統一のために高木を 15 本撤去する予定があったため、撤去のお知 らせ張り紙に今後植樹する木を記載し、住 民の方への周知を図った。また、ビンカマ ジョールについては横断防止柵にイメージ 写真を設置し、イメージを深めてもらった。 ⑤施工 植樹は下記日程で施工を実施した。 ・東池袋地区 2/4~2/21 ・坂下地区 2/13~2/24
施工中、東池袋地区は 2 回、坂下地区は 1 回降雪に見舞われた。 東池袋地区はビンカマジョールが雪の下 に埋まってしまい葉っぱが無くなり、坂下 地区はツゲの葉っぱが一部茶色くなってし まった。 その後、3,4月と暖かい日が続きビン カマジョールも葉っぱが生え花も付き、ツ ゲも葉っぱが緑色になりフッキ草も成長し、 景観の形成に向けたスタートが切れた。 降雪後坂下地区状況 4.おわりに 3月に植栽整備が完了し、検討してきた ものが形となった。維持管理コストが下が るかどうかは、植樹直後の1~2年間の対 応が重要となるため、施工後6ヶ月後など 定期的にフォローアップを行い雑草の繁茂 状況や樹種の成長状況など検証していきた い。特に東池袋地区については、今後も電 線共同溝の路面復旧工事の延伸が計画され ているため、本検証を踏まえ、考え方を継 続していけるようにつなげていきたい。 今後は、本検討箇所において地元町会で 年数回の国道歩道部の清掃作業を行ってい ると伺っている事から、地元町会長から試 行についての了解をもらったことで終わり とせず、今後も地域とのコミュニケーショ ンを積極的に取り、共同での清掃作業を行 うなど、地元と連携した道路管理を行って いけるように努力していきたい。