「住み慣れた地域に在宅医療環境を整えるための医療及び看護・介護職と薬剤師の連携強化に関する研究」
7
0
0
全文
(2) 【はじめに】 高 齢 化 が 急 速 に 進 む わ が 国 に お い て 、住 み 慣 れ た 地 域 で 適 切 な 医 療 や 介 護 が 受けられる環境を整えることは重 要 な 課 題 で あ る 。2007 年( 平 成 19)4 月 よ り 施 行 さ れ た 医 療 法 の 改 正 に よ り 、薬 局 は 病 院 、診 療 所 、歯 科 医 院 と 同 様 に 医 療 計 画 に お け る 医 療 提 供 施 設 と し て 位 置 づ け ら れ た 。身 近 な 地 域 に あ る 薬 局 の 薬 剤 師 が 医 師 や ケ ア マ ネ ジ ャ ー 、 訪 問 看 護 師 、 ヘ ル パ ー 等 と 連 携 し 、 処方内容の説明や 残薬の確認、薬剤に関する情報を提供することで患 者 や 家 族 は 、安 心 し て 在 宅 で 療 養 生 活 を 継 続 す る こ と が で き る 。「 在 宅 患 者 訪 問 薬 剤 管 理 指 導 」( 以 下 、 訪 問 薬 剤 指 導 )は 、在 宅 療 養 を 行 っ て い る 患 者 で あ っ て 、通 院 が 困 難 な 者 に 対 し 医 師 の指示に基づき患者の自宅で薬剤の管理や指導を行うことができる診療報酬 の 制 度 で あ る 。療 養 の 場 が 在 宅 へ 拡 大 し 医 療 ニ ー ズ が 多 様 化 す る 中 で 、専 門 的 知 識 を も つ 薬 剤 師 が 在 宅 医 療 に 積 極 的 に 関 わ り 患者の生 活 背 景 を 考 慮 し た 服 薬 指 導 を 行 う こ と で 、在宅における医療や介護のネットワークを強化することができる。 しかし、訪問薬剤指導に取り組む薬剤師に関する情報が患者や在宅医療に携わる他職種に 十分伝わっていない現状があり、在宅における薬剤師の活動内容を発信する必要があるの ではないかと考えた。本研究は、訪問薬剤指導の現状と課題を明らかにすることを目的と して実施した。 【方法】 足立区薬剤師会員(171 名)に対し、薬局の事業形態、薬剤師の数、管理者の性別、年代、 訪問薬剤指導実施の有無や利用者の特性、在宅における訪問薬剤指導を実施したきっかけ、 連携をとる職種や機関、実施内容について質問紙を作成し送付した。訪問薬剤指導の内容 や意見など自由記載等から課題を抽出した。個人情報保護に努め、事前に帝京科学大学の 倫理審査委員会の承認を得た。 【結果】 1.基本属性について アンケートの回答者は、171 名中 111 名であった(回収率 65%)。その内訳としては、 男性 60 名(54.1%)、女性 51 名(45.9%)であった。最も多かった年代は、40~50 歳代 の 52 名(46.8%)であった。開局してからの年数では、10 年以上 20 年未満が 43 名(38.7%) で最も多かった。事業の形態は、個人経営が 29 名(26.1%)、個人で複数の薬局を経営 33 名(29.7%)、チェーン店としての経営 47 名(42.3%)であった。薬剤師の人数は、2 名 以下が 48 名(43.2%)、5 名以上が 29 名(26.1%)であった。ケアマネジャーなどの介護 に関する有資格者がいる薬局が 25 名(22.5%)であった。 2.訪問薬剤指導の実施状況 訪問薬剤指導を実施している薬局は、25 件(22%)で全体の 2 割程度であった。利用者 の特性としては、自宅で独居が 43%、75 歳以上が 53%で最も多かった。開始するきっかけ としては、主治医、ケアマネジャー、訪問看護師からの依頼が多かった。訪問の手段とし ては徒歩や自転車などを利用し、薬局から比較的近い場所を訪問していた。 3.訪問薬剤指導を実施していない薬局の状況 訪問薬剤指導を実施していない薬局(86 件)に今後の訪問の可能性について質問した。 その結果、訪問依頼があった場合、「訪問が可能あるいは条件によっては可能である」と 回答した者は全体の 48 名(56%)で、 「現在の状況では困難であると」回答した 36 名(42%) よりも割合が高かった。訪問薬剤指導を実施していない理由(複数回答)として、「薬剤 師の不足」(52 名)、「訪問の依頼がほとんどない」(48 名)、「夜間や休日対応が困難」 (42 名)という回答を選択する者の割合が高かった。 2.
(3) アンケート回答薬局の基本属性 アンケート回収状況 会員数. 171. 64.9%. 回答者. 0. 111. 50. 100. 150. 200. 会員数. 53.2%. 39.6%. 品目. 保険調剤. 業数 (%). 111 100%. 訪問薬剤管理指導の実施状況. はい. 22.5%. いいえ. 0. 20. いる. 40. 86. 60. 80. 74 66.7%. 38 34.2%. 衛生材料. 介護用品. 69 62.2%. 29 26.1%. 介護に関連した有資格者数. 25. 74.5%. OTC医薬 サプリメント 品. 25. いない. 100. 86. 0. 20. 会員数. 40. 60. 80. 会員数. 有資格者の職種名 職種名 会員数 職員数 ケアマネジャー 20 1.05±0.22 ヘルパー 7 1 福祉用具相談員住 環境福祉コーディ 1 1 ネータ (複数回答). 3. 100.
(4) 4.
(5) 「訪問薬剤管理指導」を開始するための回答 「訪問薬剤管理指導」を実施していない理由. 訪問薬剤管理指導依頼が殆どない 薬局の性格上在宅医療のニーズが殆ど ない 訪問薬剤管理のスキルが乏しい 報酬の算定用件が複雑で手続きが煩雑 その他. 回答数 52 42 2. 40 35. 30 25. 48 20 13 9 8. 件数. 課題項目 対応できる薬剤師の不足 夜間や休日の対応が困難 患者や家族の理解を得ることが難しい. 要請があった場合の可能性. 20 15 10 5 0 可能. 3つまで回答 全回答数 86. 回答数. 20. 条件によっ ては可能. 現在の状況 では困難. その他. 28. 36. 2. 全回答数 86. 5.
(6) 開始するための医療機関への要望 開始するために必要な条件 項 目 回答数 在宅医療についての研修 43 宅医療や介護に関する相談窓口 15 在宅介護についての研修 21 訪問看護ステーション等との連携 40 他の調剤薬局との連携 12 コミュニケーションの研修 4 在宅医療にかかわる薬局、医療機関等 16 のリストの整備 薬剤師が在宅医療の担い手となることに 43 対する医師や看護師などからの理解 患者の容態変化に伴う緊急時訪問の算 10 定ができる制度の整備 その他 3 3つまで回答 全回答数 86. 項 目. 回答数. 薬剤師として医師に処方内容のアドバイ スを行う. 16. 薬剤師の退院時カンファレンスへの参 加 薬剤師への十分な情報提供 薬剤師として医師へ処方意図を相談で きる体制 訪問診療の見学 その他. 23 61 57. 16 5. 全回答数 86. 開始するための看護師や介護職への要望 項 目 服薬状況についての情報提供 多職種間で実施するカンファレンスへの参加 利用者とのコミュニケーションのアドバイス 訪問看護や介護の見学 その他. 回答数 60 37 46 12 5. 全回答数 86. 【考察】 薬 剤 師 会 の 会 員 65% か ら ア ン ケ ー ト の 回 答 が 得 ら れ た 。そ の 中 で 訪 問 薬 剤 指 導 を 実 施 し て い る 薬 局 は 、25 件 あ り 全 体 の 2 割 程 度 で あ っ た 。薬 局 の ス タ ッ フ で 薬 剤 師 の 資 格 を 有 す る 者 が 2 名 以 下 と 回 答 し た 者 が 全 回 答 者 111 名 中 48 名 ( 43.2% )で あ っ た 。訪 問 薬 剤 指 導 が 実 施 で き な い 背 景 に は 、窓 口 業 務 を 行 い な が ら 訪 問 業 務 を 行 え る 薬 剤 師 の マ ン パ ワ ー の 不 足 が あ る と 考 え ら れ た 。利 用 者 の 特 性 と し て は 、 独 居 者 や 75 歳 以 上 の 後 期 高 齢 者 が 多 か っ た 。 一 人 暮 ら し の 高 齢 者 が ADL の 低 下 や 病 状 な ど に よ っ て 通 院 や 薬 局 に 行 く こ と が 困 難 な 状 況 が あ る と 考 え ら れ た 。訪 問 薬 剤 指 導 を 実 施 し て い る 薬 局 は 、訪 問 の 手 段 と し て 徒 歩 や 自 転 車 を 利 用 し て い た 。地 域 の 状 況 や 患 者 の 生 活 背 景 を 知 る 身 近 な 薬 局 の 薬 剤 師 が 、自 宅 を 訪 ね 薬 剤 管 理 を 行 う こ と で 病 状 の 観 察 だ け で な く 生 活 状 況 を 把 握 す る こ と も 可 能 で あ る 。ま た 、本 調 査 で は 、 薬 剤 師 以 外 の 有 資 格 者 と し て 、ケ ア マ ネ ジ ャ ー や ヘ ル パ ー 等 介 護 に 関 す る 有 資 格 者 が い る と 回 答 し た 薬 局 が 22.5% あ っ た 。薬 局 で 介 護 に 関 す る 専 門 知 識 を も っ た ス タ ッ フ が 求 め ら れ て い る か ら だ と 考 え ら れ る 。在 宅 医 療 で チ ー ム の 一 員 と し て 介 護 保 険 制 度 に お い て も 薬 剤 師 の 役 割 を 明 確 に し 、薬 剤 師 が 実 施 で き る 活 動 を 看 護 や 介 護 職 な ど の 他 職 種 に も 理 解 し て も ら う 働 き か け が 必 要 で あ る 。一 方 、訪 問 薬 剤 指 導 を 実 施 し て い な い 薬 局 86 件 の 回 答 で 最 も 多 か っ た 理 由 に「 対 応 で き る 薬 剤 師 の 不 足 」 が あ げ ら れ て お り 、訪 問 に 携 わ る 薬 剤 師 の 確 保 が 課 題 で あ っ た 。し か し 、現 在 、 実 施 し て い な い が 要 請 が あ っ た 場 合「 訪 問 は 可 能 あ る い は 条 件 に よ っ て は 可 能 で あ る 」と 回 答 し た 薬 局 も 56% と 半 数 以 上 あ り 、そ の 中 に は「 訪 問 薬 剤 指 導 の 依 頼 が ほ と ん ど な い 」と 回 答 す る 者 も 多 か っ た 。こ れ は 、薬 剤 師 が 患 者 の 自 宅 を 訪 問 し 薬 剤 管 理 指 導 を 実 施 で き る こ と を 患 者 や 医 師 、看 護 師 、介 護 職 な ど に 十 分 に 理 解 さ れ て い な い 現 状 が あ る こ と や 、薬 剤 師 自 身 も 医 療 保 険 や 介 護 保 険 制度の中で実施する在宅医療に対する理解や経験の不足があるからではない かと考えられた。 6.
(7) 【結論】 足立区における、「在宅患者訪問薬剤管理指導」の現状と課題について以下が明らかに なった。ア ン ケ ー ト に 回 答 し た 者 の 2 割 が 「 訪 問 薬 剤 指 導 」 を 実 施 し て い た 。 また、現在実施していないと回答した者の中に、「条件が整えば実施したい」 と 回 答 し た 者 も 半 数 以 上 お り 、訪 問 薬 剤 指 導 に 対 す る 関 心 や 積 極 的 な 姿 勢 が み ら れ た 。今 後 、訪 問 薬 剤 指 導 を 実 施 す る た め の 条 件 整 備 が 必 要 で あ る 。 患 者 の 自 宅 を 訪 問 で き な い 理 由 と し て 、大 部 分 の 薬 局 が「 薬 剤 師 が 足 り な い 」と い っ た マ ン パ ワ ー 不 足 を あ げ て い た 。し か し 、時 間 や 人 員 が 限 ら れ た 中 で 、工 夫 し て 訪 問 活 動 を 実 施 し て い る 薬 局 も あ っ た 。患 者 と の 日 頃 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン や 他 職 種 と の 情 報 交 換 等 在 宅 医 療 に 対 す る ア ン テ ナ を 高 く し て 、在 宅 で 必 要 な 知 識 や 技 術 を 磨 く こ と が 、マ ン パ ワ ー 不 足 を 補 う こ と に 繋 が る の で は な い だ ろ う か 。訪 問 薬 剤 指 導 を 実 施 す る た め に 必 要 な 条 件 に つ い て「 在 宅 医 療 に つ い て の 研 修 」「 訪 問 看 護 ス テ ー シ ョ ン と の 連 携 」「 訪 問 指 導 に 対 す る 医 師 や 看 護 師 の 理 解 」を あ げ る も の が 多 か っ た 。訪 問 活 動 に 取 り 組 ん で い る 薬 局 と こ れ か ら 取 り 組 も う と し て い る 薬 局 の ニ ー ズ は 異 な る が 、個々の薬剤師の経験や知識を共有 するための研修や在宅医療に関する知識や技術の向上を目指した他職種との交流を深める 場が必要であると思われた。施設中心に実施されていた医療を在宅へ円滑に移行していく ためには、限られた資源を有効に活用し、医療と介護の切れ目ない連携を図る必要がある。 地域においても、医師や看護師、介護職などと「チームで関わる」意識の中で活動するこ とが薬剤師に求められている。 【謝辞】 本研究は、「公 益 財 団 法 人 在 宅 医 療 助 成 勇 美 記 念 財 団 2012 年 度 ( 後 期 )」 の助成を受けて実施しました。一昨年 9 月から、帝京科学大学の身近な地域で ある足立区の薬剤師会の協力を得ながら意欲あるメンバーたちと在宅における 薬剤管理の課題について話し合いを重ねてきました。今回、在宅医療研究助成 事業に採択され研究内容を充実させることができたことを 心より感謝致します。 本研究に取り組むことで、在宅療養者の薬剤管理の実態や課題を明らかにする ことができ、地域における多職種連携の必要性も再確認できました。研究 成果 をもとに実施した学習会では、訪問薬剤指導に積極的に取り組んでいる薬剤師 の講演や事例発表を企画し、地域包括支援センターの職員の方にも参加 してい ただき貴重な意見を頂くことができました。地域で活動する看護師や薬剤師が 職種や所属を越え在宅における薬剤管理の現状についてそれぞれの立場や経験 から意見交換をすることで有意義な時間を共有できこれから取り組まなければ ならない課題も見えてきました。今後も、大学と地域の連携を深め住み慣れた 地域に在宅医療環境を整えるための活動を継続していきたいと思います。. 7.
(8)
関連したドキュメント
高齢者介護、家族介護に深く関連する医療制度に着目した。 1980 年代から 1990
生活習慣病の予防,早期発見,早期治療など,地域の重要
医療保険制度では,医療の提供に関わる保険給
小児在宅酸素療法 ホット 在宅酸素療法を始められるお子様とご家族のための HOT 入門 監修 東京女子医科大学臨床教授東医療センター新生児科部長 長谷川久弥先生 東医療センター新生児科助教鶴田志緒先生
東医療センター 新生児科部長 長谷川 久弥 先生.. 二酸化炭素
医師と薬剤師で進めるプロトコールに基づく薬物治療管理( PBPM
居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について 介護保険における居宅介護住宅改修費及び居宅支援住宅改修費の支給に関しては、介護保険法
17 委員 石原 美千代 北区保健所長 18 委員 菊池 誠樹 健康福祉課長 19 委員 飯窪 英一 健康推進課長 20 委員 岩田 直子 高齢福祉課長
・石川DMAT及び県内の医 療救護班の出動要請 ・国及び他の都道府県へのD MAT及び医療救護班の派 遣要請