Title
ウマにおける卵巣の内部動態の画像解析に関する研究( 内容
の要旨(Summary) )
Author(s)
平野, 悠子
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第255号
Issue Date
2008-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23200
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 平 野 悠 子(東京都) 博士(獣医) 獣医博甲第255号 平成20年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 帯広畜産大学 ウマにおける卵巣の内部動態の画像解析に関する研究 主査 帯広畜産大学 教 授 三 宅 陽 副査 帯広畜産大学 ・教 授 副査 岩 手大学 教 授 副査 東京農工大学 教 授 副査 岐阜大学 教 授 西 村 昌 居在家 義 田 谷 一 宮 澤 清 数 昭 善 志 論 文 の 内 容 の 要 旨 本研究は他の動物とは異なるウマの繁殖季節における卵巣の構造的変化に注 目して,その特徴を立体的に把握することを目的として,3次元内部構造顕微 鏡装置による発情周期中のウマの卵巣の内部構造および妊娠期および分娩期に おける卵巣内部構造について明らかにするために研究を実施したものである。 その結果,以下の成績を得た。
⊥…3次元内部構造顕微鏡装置によるウマ卵巣の内部構造解析法の検討
3D_ISMではスライサで切削した断面をCCDカメラで撮影し,それを画像 記録装置に記録することでフルカラーの連続断面画像を取得することができる。 さらに,これらの断面画像をPC内で画像処理することが可能である。3D-ISM に適用できる試料サイズは最大18cmX13.5cmX20cmまでであり,ウマ卵巣へ の適用が期待された。そこで,3D-ISMを用いてウマ卵巣の連続断面画像を作 成し,内部構造の解析に適しているかを検討したところ,以下のような結果が 得られた。①ウマ卵巣内部の皮質と髄質の配置や,卵胞,黄体様構造物および排卵窟の
位置関係が明確に示された。黄体様構造物は「出血体」,「黄体」,および「退②卵胞や黄体に画像抽出を試みたところ,それらの明瞭な3次元画像が得ら
れ,同時に抽出された構造物の体積および表面積の測定が可能であること が示された。さらに,卵巣内部での卵胞や黄体の配置を可視化する方法を 確立することができた。③排卵喬と卵胞の空間的位置関係を解析するために,それらの空間配置を全
て数値化して,客観的な検討を行う方法を確立した。 これらの結果より,3D-ISMがウマ卵巣の内部構造の解析に適していること が示された。そこで,発情周期中や妊娠期および分娩後のウマ卵巣を用いて以 下の2つの実験を行った。 旦_発情周期中のウマの卵巣の内部構造 ホルモン測定値に基づき区分された3群のウマ卵巣の内部構造について検討 したところ,プロジエステロン(㌔)が高値を示した群では出血体または黄体 が存在した。また,中型の卵胞(30mm以上)も観察され,ウマ特有の発情休 止期における卵胞発育ではないかと推察された。一方,㌔値が低く,エストラ ジオール17β(ち)値が高い群では大型の卵胞(棚mm以上)とともに多数 の小卵胞が観察された。この群の卵巣が他群と比べて有意に大きいのはこれら の構造物の存在によると考えられた。さらに,全群で複数の退行黄体が認めら れた。 本研究の結果より,3D-ISMによる検索結果にホルモン測定値による生理学 的情報を付随することで,ステージ別の卵巣内構造が比較検討できることが示 唆された。また,超音波診断装置では判別できなかった小卵胞や退行黄体の解 析に有用であることが示された。 Ⅲ ウマの妊娠期および分娩期における卵巣内部構造 3D一ISMを用いたウマ卵巣の内部構造観察により,妊娠前期に中型の卵胞が 認められた。また,妊娠前期から中期にかけて妊娠黄体または副黄体が観察さ れたが,妊娠後期以降では退行黄体しか認められず,代わりに多数の小卵胞が 存在し,その数は妊娠末期に最も多かった。さらに,卵巣体積は妊娠前期から 末期にかけて漸減していた。一方,分娩後には中型の卵胞が認められ,分娩後 7日以降には大型の卵胞が観察された。また,卵巣体積は増加するとともに左 右の卵巣体積差が大きくなっていた。以上の結果より,妊娠期における卵巣体 積の減少は卵胞発育の停止や黄体の退行によるものと考えられた。さらに,妊娠末期の小卵胞の出現に続き,分娩後に卵胞が発育し,分娩7日以降では大型
卵◆胞が成熟していることが示唆された。これによりウマ特有のフォールヒート が引き起こされるのではないかと推察された。今後,本研究がウマの分娩後早 期の発情回帰におけるメカニズムの一端の解明に寄与できることを期待したい。-207-3D_ISMは形態解析の新たなツールとして非常に有用であり,とくに他の晴 乳類と比べて特異的な形態を示すウマ卵巣には最適であることが本研究を通じ て示された。さらに,この装置によりウマ卵巣の3次元的な解析が可能となり, これまで2次元で論じられてきたウマの発情周期中や妊娠期および分娩後の卵 巣動態の研究に新たな知見をもたらすことが示唆された。とくに,超音波画像
診断装置所見やホルモン測定結果では明らかにできない立体的な形態をとらえ
るこ上が可能となり,さらにそれらの研究成果を裏付けるデータを提供できる ものと考えられた。 審 査 結 果 の 要 旨 長日性の季節繁殖動物であるウマの卵巣は他の哺乳類と比べてユニークな形 態と卵巣周期を持っている。発情期においては主席卵胞が直径4∼6cmと非 常に大きくなることが知られている。一方,妊娠初期には子宮内膜杯から産生 されるeCG作用により多数の卵胞が発育し,排卵または閉鎖黄体化して複数の副黄体が形成される。さらに,他の家畜では泌乳中には卵巣機能が抑制されて
排卵が停止するが,ウマでは分娩後約1週間で卵巣内に卵胞が発育し,排卵を 伴う初回発情(ねalbeat)を示す。しかし,分娩後発情に伴う卵胞発育過程・に ついては不明な点が多い。超音波画像診断装置とホルモンアッセイ技術の向上 により,ウマの繁殖生理学領域の研究は大きな進展がみられる。しかし,解剖 学的研究はウマ卵巣の大きさ故に,従来の組織学的手法を.用いた観察からあま り進歩が見られていなかった。そこで,学位申請者である平野悠子氏は,これまで解明されていない卵巣内部の詳細な構造ならびに阜の変化を明らかにする
ために,従来の観察方法とは異なる3次元内部構造顕微鏡装置を用いて解析を 行い,以下の新知見を得た。 Ⅰ 3次元内部構造顕微鏡装置によるウマ卵巣の内部構造解析法の検討を行い, これによってウマ卵巣内部の皮質と髄質の配置や,卵胞,黄体様構造物および 排卵■寓の位置関係が明確に示されること,卵巣内部での卵胞や黄体の配置を可 視化する方法を確立することができた。さらに,排卵喬と卵胞の空間的位置関 係を解析するための客観的な検討を行う方法を確立した。 Ⅱ 発情周期中のウマの卵巣の内部構造に関する研究においては,ホルモン測 定値に基づき区分された3群のウマ卵巣の内部構造について検討したところ, プロジュステロンが高値を示した群では出血体または黄体が存在した。一方, プロジエステロン値が低く,エストラジオールー17β値が高い群では大型の卵胞 とともに多数の小卵胞が観察された。この群の卵巣が他群と比べて有意に大き いのはこれらの構造物の存在によると考えられた。体または副黄体が観察されたが,妊娠後期以降では多数の小卵胞が存在し,そ の数は妊娠末期に最も多かった。一方,分娩後には中型の卵胞が認められ,分 娩後7日以降には大型の卵胞が観察された。 これらの結果より,3次元内部構造顕微鏡装置がウマ卵巣の内部構造の解析 に適していることを明らかにした。また,3次元内部構造顕微鏡装置による検 索結果にホルモン測定値による生理学的情報を付随することで,ステージ別の 卵巣内構造が比較検討できることを示唆した。さらに,妊娠期における卵胞発 育の停止や黄体の退行,分娩後の卵胞の発育を立体的に捉えることに成功した。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究 科の学位論文として充分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1)題 各:ObservationofovarianinternalstruCtureSduringtheestrouscycleofmares 著 者 名:Hiran0,Y,Kimura,J.,Nambo,Y,%kota,H.,Nakamura,S.,Takemoto, S.,Himeno,R.,Mishima,T.,Matsui,M.andMiyake,YlI. 学術雑誌名 A血malReproductionScience 巻・号・頁・発行年月:94(卜4):210-214,2006 既発表学術論文 1)題 名:Three-dimensionalreconstruCtionoftheequineovary 著 者 名:Kimwa,J.,Hiran0,Yl,Takemoto,S.,Nambo,Y,Ishinazaka,T.,一Himeno, R.,Mishima,T.,Tsumagari,S.andYbkota,H. 学術雑誌名 AnatomiaHistologiaEmbryologia 巻・号・頁・発行年月:34(1):48-51,2005