著者
宣 賢奎
著者別名
Hyeon-Kyu SEON
雑誌名
国際地域学研究
巻
24
ページ
41-61
発行年
2021-03-01
URL
http://doi.org/10.34428/00012393
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja[概要] 本研究では、韓国における介護サービス供給状況を通して介護サービス供給の地域差を明らかに するとともに、介護サービス供給の地域差の拡大・縮小の状況についても明らかにした。 研究の結果、①韓国の介護事業所の増加率は日本に比べて緩やかである、②在宅介護事業所より 介護保険施設の増加率が高い、③都市部の多い自治体は介護保険施設が少なく、中山間地域の多い 自治体は在宅介護事業所が少ない、④訪問介護サービスへの依存度が高い、⑤介護事業所の約半数 が首都圏に集中している、⑥在宅介護事業所に比べて介護保険施設の地域差が相対的に大きい、⑦ 昼夜間保護事業所は地域差が解消されつつあるが、訪問看護事業所は依然として地域差が解消され ていない、⑧療養保護士の地域差が最も大きく、歯科衛生士の地域差が最も小さい、⑨サービス提 供人員の規模が介護サービス供給に影響を及ぼしているという結果が得られた。介護サービス利用 者の便益を考えると、介護サービス供給の地域差は看過できないため、介護サービス供給の地域差 を是正するための政策的な支援が強く求められる。 [キーワード] 長期療養保険制度、介護サービス供給、地域差
1.はじめに
1.1 研究目的および問題意識
本研究は、韓国の長期療養保険制度の施行 10 年目の介護サービス供給の現状を概観しつつ、韓 国における介護サービス供給の地域差を明らかにすることを目的とする。2008 年 7 月に始まった 韓国の長期療養保険制度は今年 7 月に丸 12 年目を迎えた。安定的な介護サービス提供体制の構築、 介護サービス受給者の増加、家族の介護負担の軽減、介護労働者の新たな雇用創出などの成果を上 げたが1、2)、限定的な給付対象者、認知症高齢者に対する不十分な要介護認定、低いサービス給付 水準、重い利用者負担、サービス供給の地域格差、療養保護士の低賃金と低い専門性、低い介護報 酬、介護報酬の不正請求、介護の家族化、介護サービスの質の確保、ケアマネジメントの未確立に よる利用者中心のニーズマネジメントの不在などの課題を抱えている2-4)。これらの課題のうち、韓国における介護サービス供給の地域差
宣 賢 奎
1) 1)共栄大学国際経営学部(東洋大学国際学部非常勤講師)一部の課題は制度の安定化とともに改善しつつあるが、未だに課題は多い。 そこで本研究では、数多くある課題のうち、介護サービス供給の地域差の問題に焦点を当て、介 護サービス供給の地域差を明らかにしたい。介護サービス供給の地域差による「保険(負担)あっ て給付なし」の状態は看過できない。介護サービス供給の地域差が是正されない限り、介護保険の 前提である利用者の選択性が保障されない。 筆者はこれまでの研究において、韓国の介護サービス供給の地域差について論究してきた5-7)。 また介護保険制度開始から 20 年目を迎えた日本でも、介護サービス供給の地域差が存在する状況 に鑑み、その現状を明らかにするとともに、地域差是正のための解決策を提示してきた8-10)。 日韓両国の介護サービス供給の地域差に関する詳細な研究結果については、紙幅の都合のため、 本稿では割愛するが、両国の研究とも、市区町村(韓国では市区郡)別の地域差の研究が不十分で あった。筆者の先行研究によると、地域差は都道府県間だけでなく、同一市区町村内でも存在する。 本研究では、先行研究の課題を解決するため、韓国の市区郡別の介護サービス供給の地域差を明ら かにしたい。日本の市区町村別の地域差の研究は別稿に譲る。
1.2 研究方法
国民健康保険公団(韓国の長期療養保険制度の保険者)が公表している「老人長期療養保険統計 年報」を用い、2018 年 12 月時点における 229 自治体の介護サービス供給の実態を明らかにする。「老 人長期療養保険統計年報」には 9 道(日本の都道府県に相当)・1 特別市、6 広域市(人口 100 万人 以上の市であり、日本の政令指定都市に相当)、1 特別自治市別の長期療養機関(以下、介護事業所) 数が公表されており、京きょ畿んぎ道が最も多く、世せじ宗ょん特別自治市が最も少ないという状況になっている。 しかし、このデータはそれぞれの自治体の人口でウェイトづけしていないため、介護事業所数の地 域差の検証が困難である。このような状況下では、各自治体の介護サービスの供給状況を客観的に 知ることはできない。 そこで本研究では、介護事業所数を各自治体の 65 歳以上の高齢者人口でウェイトづけし、韓国 の介護サービス供給(本研究では介護サービス供給量を表す変数として介護事業所数と定員を用い る)の地域差について、可及的に日本と比較しながら検証する。そのうえ、2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点の介護事業所等を比較検討することで介護サービス供給の地域差の拡大・縮小の状況 を明らかにする11)。比較検討する項目は介護事業所合計、在家療養機関(以下、在宅介護事業所) 合計、施設療養機関(以下、介護保険施設)合計、訪問介護事業所、訪問入浴介護事業所、訪問看 護事業所、昼夜間保護事業所、短期保護事業所、福祉用具貸与・販売事業所数であるが、介護サー ビス供給に影響を及ぼすと考えられるサービス提供人員数(社会福祉士、医師、看護師など)につ いても比較検討する。具体的には、これらの各変数の 2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点のデータの 標準偏差と分散を比較することで、各変数別の地域差の拡大・縮小の状況を明らかにする。 なお本研究では、介護サービス供給の地域差を検証するため、次のような仮説を立てる。筆者の 先行研究によると、農漁村などの中山間地域は12)、人口が密集している大都市に比べて介護サー ビスの需要があまり期待できないため、介護事業所が少ない傾向にある。とくに、サービス提供の ための移動時間、交通費などの動線コストがかかる地域特性により、中山間地域の在宅介護事業所 は都市部に比べて相対的に少ない13)。1.3 研究の意義
介護サービス利用者に客観的な情報を提供するとともに、介護サービスの供給が相対的に少ない 地域の介護サービスの基盤整備に貢献できる本研究の意義は大きい。本研究により、韓国において 介護サービスの需要と供給のミスマッチが是正され、介護サービス利用者のサービス需要の機会と 選択の幅が広がることを期待する。介護サービスの基盤整備にかかわる日本における今後の応用研 究の基礎資料としての活用も期待できよう。2.介護サービスの供給状況
2.1 介護事業所の推移
制度創設の準備過程で最も憂慮されたのが介護サービスの基盤整備であったが、2008 年 12 月時 点で 8,318 か所だった介護事業所が 2018 年 12 月には 2 万 1,290 か所へと約 2.6 倍増えている(図 1)。 年間ベースでの比較が可能な 2009 年 12 月時点の 1 万 4,560 か所と比べると約 1.5 倍増となっている。 厚生労働省の「介護給付費等実態調査月報」によると、日本の場合、2000 年 4 月の介護保険制度 施行から起算して 10 年間に介護事業所が約 2.5 倍増えているので(2001 年 3 月時点の 12 万 9,103 か所が 2011 年 3 月時点には 32 万 8,268 か所へと増加)、韓国の介護事業所は日本に比べて増加の スピードが緩やかであることがわかる。韓国の介護事業所の推移を在宅と施設に分けてみると、介 護保険施設はこの 10 年間に約 3.1 倍(2008 年の 1,700 か所→2018 年の 5,320 か所)増えているの に対し、在宅介護事業所は約 2.4 倍(2008 年の 6,618 か所→2018 年の 15,970 か所)増にとどまっ ている。介護保険施設に比べて在宅介護事業所の増加率が相対的に高い日本とは状況が異なる14)。 図 1 介護事業所数の推移 注:数字は各年 12 月 31 日時点である。 出所:国民健康保険公団「2008~2018 老人長期療養保険統計年報」より作成 25 000 , (か所) 20,3-77 21,290 1Q 1QR -20,000 14,560 14,979 14,918 15,000ヽ
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11,228 10,857 10,730 11,056 11,672i
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10,000 8,3C 1 -6,618 4,648 4,871 5,085 5,187 5,304 5,320 5,000 A nh1 4.326゜
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 在宅介護事業所 一 介護保険施設 ー 合計2.2 サービス別の介護事業所
2018 年 12 月時点の介護事業所数は 3 万 3,312 か所であるが、在宅介護事業所が 2 万 7,992 か所(重 複あり)、介護保険施設が 5,320 か所となっている。在宅介護事業所数をサービス別にみると、訪 問介護 1 万 2,335 か所(在宅介護事業所の 41.1%)、訪問入浴介護 9,665 か所(同 32.2%)、訪問看 護 682 か所(同 2.3%)、昼夜間保護(日本の通所介護に相当)3,211 か所(同 10.7%)、短期保護(日 本の短期入所生活介護に相当)179 か所(同 0.6%)、福祉用具貸与・販売 1,920 か所(同 6.4%)と なっている(図 2 および表 1)。在宅介護事業所の 41.1%が訪問介護事業所であることからして、 事業所数の偏りが大きい。ちなみに、韓国と比較可能なほぼ同時期の厚生労働省の「平成 20 年介 護サービス施設・事業所調査結果の概況」によると、2008 年 10 月時点の日本の居宅サービス事業 所(8 万 2,590 か所)に占める訪問介護事業所(2 万 885 か所)の割合は 25.3%であった15)。 一方、2018 年 12 月時点の介護保険施設をサービス別にみると、老人療養施設(日本の介護老人 福祉施設に相当)が 3,389 か所(介護保険施設の 63.7%)、老人療養共同生活家庭(日本の認知症 対応型共同生活介護に相当。日本では居宅サービスであるが、韓国では介護保険施設に分類される) が 1,931 か所(同 36.3%)となっている。 年間ベースでの比較が可能な 2009 年からの 9 年間の在宅介護事業所の増減率をみると、事業所 が増えているのは昼夜間保護(190.3%増)、福祉用具貸与・販売(76.8%増)、訪問入浴介護(53.9 %増)、訪問介護(46.1%増)、減っているのは短期保護(86.9%減)と訪問看護(13.3%減)である。 一方の介護保険施設の増減率は、老人療養共同生活家庭が 106.7%増、老人療養施設が 99.9%増 となっている。在宅介護事業所に比べて相対的に増加率が高いが、老人療養施設の増加分には 2010 年から 2013 年にかけて短期保護から老人療養施設に転換した 1,187 か所が含まれている。 図 2 サービス種類別の介護事業所の推移 注:数字は各年 12 月 31 日時点である。なお、サービス種別の在宅介護事業所数は重複ありの数字である。 出所:国民健康保険公団「2008~2018 老人長期療養保険統計年報」より作成 (か所) (か所) 14,000 31,878 33,312 35,000 30,314 12,000 28,006 30,000 10,000 21,701 23,698 23,566 9 357 9 65 25,000 8 09 8,000 20,000 6,000 7,162 7,028 7,146 15,000 4,000 2,714 2,935 3,137 3,289 3,389 10,000 2,489 2,588 2,498 2,000 5,000゜
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018゜
合計(右目盛り) 一 訪間介護 一 訪間入浴介護 一 訪問看護 一 昼夜間保護 一 短期保護 一 幅祉用具貸与・販売 一 老人療養施設 _ 老人療養共同生活家庭表 1 サービス別の介護事業所の推移 (単位:か所) 年 サービス 2008 2009 2010 2011 2012 2013 在宅介護事業所 訪問介護 4,206 8,446 9,164 8,709 8,500 8,620 訪問入浴介護 2,959 6,279 7,294 7,162 7,028 7,146 訪問看護 592 787 739 692 626 597 昼夜間保護 790 1,106 1,273 1,321 1,331 1,427 短期保護 694 1,368 199 234 257 368 福祉用具貸与・販売 720 1,086 1,278 1,387 1,498 1,574 小 計(重複あり) 9,961 19,072 19,947 19,505 19,240 19,732 介護保険施設 老人療養施設 375 725 1,078 1,352 1,646 2,494 老人療養施設 (老人福祉法の適用) 482 488 450 411 369 2 老人専門療養施設 (老人福祉法の適用) 522 482 415 334 244 1 老人療養共同生活家庭 321 934 1,343 1,572 1,739 2,150 老人療養施設 (短期保護から転換) - - 465 392 329 1 小 計 1,700 2,629 3,751 4,061 4,327 4,648 合 計(在宅事業所の重複あり) 11,661 21,701 23,698 23,566 23,567 24,380 年 サービス 2014 2015 2016 2017 2018 在宅事業所 訪問介護 9,073 10,077 11,072 11,662 12,335 訪問入浴介護 7,479 8,253 8,957 9,357 9,665 訪問看護 586 574 598 650 682 昼夜間保護 1,688 2,018 2,410 2,795 3,211 短期保護 322 299 267 218 179 福祉用具貸与・販売 1,599 1,700 1,823 1,892 1,920 小 計(重複あり) 20,747 22,921 25,127 26,574 27,992 介護保険施設 老人療養施設 2,714 2,935 3,137 3,289 3,389 老人療養施設 (老人福祉法の適用) - 老人専門療養施設 (老人福祉法の適用) - 老人療養共同生活家庭 2,157 2,150 2,050 2,015 1,931 老人療養施設 (短期保護から転換) - 小 計 4,871 5,085 5,187 5,304 5,320 合 計(在宅事業所の重複あり) 25,618 28,006 30,314 31,878 33,312 注:1)2008 年は半年間(7 月~12 月分)の合計額である。 2)「老人福祉法」に定められた老人療養施設と老人専門療養施設は、2010 年から「老人長期療 養保険法」による老人療養施設への統合が進み、2013 年 12 月までに完全に統合された。 出所:国民健康保険公団「2008~2018 老人長期療養保険統計年報」より作成
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2.3 開設主体別の介護事業所
介護事業所の開設主体は、個人(日本の営利法人に相当する民間事業者)81.0%、法人 17.4%、 地方公共団体 1.2%、その他 0.4%となっている。これをサービス種別にみると、在宅介護事業所は 個人 83.8%、法人 14.9%、地方公共団体 0.8%、その他 0.4%、介護保険施設は個人 72.6%、法人 25.1%、地方公共団体 2.1%、その他 0.2%となっており、両方とも個人経営が最も多い。訪問介護、 訪問入浴介護、訪問看護、福祉用具貸与・販売、老人療養共同生活家庭に至っては 8 割以上が個人 経営である(表 2)。日本と異なり、すべてのサービスにおいて個人事業者の占める割合が圧倒的 に多いのが韓国の特徴であるが、その割合は増加傾向にある。紙幅の都合のため掲載は割愛するが、 2009 年 12 月時点の開設主体は個人 69.6%、法人 26.7%、地方公共団体 1.6%、その他 2.1%となっ ていた。この 10 年あまりに法人の割合が 10%程度減少し、個人事業者の占める割合が 10%程度増 加していることがわかる。日本では介護保険施設は社会福祉法人と医療法人の経営する割合が圧倒 的に高いが、韓国では介護保険施設でさえ、個人事業者が経営する割合が高い。 厚生労働省の「平成 30 年介護サービス施設・事業所調査結果の概況」によると、2018 年 10 月 1 表 2 開設主体別の介護事業所および構成割合 (2018 年 12 月時点) 開設主体 サービス (か所、%)事業所数 上段:実数(か所)、下段:構成割合(%) 地方公共団体 法人 個人 その他 在宅介護事業所 訪問介護 (100.0)12,335 (0.2)30 (12.7)1,563 (86.7)10,689 (0.4)53 訪問入浴介護 (100.0)9,665 (0.2)16 (11.5)1,116 (87.9)8,495 (0.4)38 訪問看護 (100.0)682 (0.6)4 (16.7)114 (82.4)562 (0.3)2 昼夜間保護 (100.0)3,211 (3.8)121 (28.2)905 (67.6)2,171 (0.4)14 短期保護 (100.0)179 (2.8)5 (19.6)35 (77.7)139 - 福祉用具貸与・販売 (100.0)1,920 - (13.5)259 (85.9)1,650 (0.6)11 小 計 (重複を除外) (100.0)15,970 (0.8)135 (14.9)2,374 (83.8)13,390 (0.4)71 介護保険施設 老人療養施設 3,389 (100.0) (3.0)100 (34.3)1,161 (62.6)2,120 (0.2)8 老人療養共同生活家庭 (100.0)1,931 (0.5)10 (9.0)173 (90.3)1,744 (0.2)4 小 計 (100.0)5,320 (2.1)110 (25.1)1,334 (72.6)3,864 (0.2)12 合 計 (在宅事業所の重複を除外) (100.0)21,290 (1.2)245 (17.4)3,708 (81.0)17,254 (0.4)83 注:1)「地方公共団体」とは地方公共団体直営または地方公共団体が民間事業者に委託する公設民営であ る。 2)「法人」とは社会福祉法人、医療法人、社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人などである。 3)「個人」とは営利を目的とする民間事業者であるが、法人格を有していない場合がほとんどである。 出所:国民健康保険公団「2018 老人長期療養保険統計年報」より作成\
日時点(本稿執筆時点の最新データ)における日本の居宅介護事業所の開設主体は、訪問介護(当 該サービスの開設主体に占める割合は 67.6%)、訪問入浴介護(同 64.1%)、訪問看護ステーション (同 51.4%)、通所介護(同 51.0%)、福祉用具貸与(同 93.4%)、特定福祉用具販売(同 94.5%)は 営利法人、短期入所生活介護(同 84.0%)は社会福祉法人が最も多い(韓国の長期療養保険制度に おけるサービスのみの比較)。一方、介護老人福祉施設は社会福祉法人が 94.9%と最も割合が高く、 介護老人保健施設および介護療養型医療施設は医療法人がそれぞれ 75.6%、83.9%と最も高くなっ ている。
3.介護サービス供給の地域差
3.1 自治体別の地域差
介護事業所数を地域別にみると、2018 年 12 月時点で在宅介護事業所の 44.6%、介護保険施設の 48.6%が首都圏(ソウル特別市、仁いんちょん川広域市、京きょ畿んぎ道)に立地しており、その割合は拡大傾向にあ る(表 3)。韓国には日本の都道府県・政令指定都市に相当する道・市が 17(1 特別市、6 広域市、 1 自治市、9 道)あるが、首都圏の 2 市 1 道に介護事業所の約半数が集中していることからして事 表 3 自治体別の介護事業所の推移 (単位:か所) 年 自治体 2009 2011 2013 2015 2017 2018 在宅 施設 在宅 施設 在宅 施設 在宅 施設 在宅 施設 在宅 施設 ソウル特別市 1,738 265 1,828 439 1,913 521 2,807 553 3,040 524 3,121 515 釜山広域市 914 106 748 143 712 134 923 121 1,055 116 1,143 110 大邱広域市 644 68 569 177 601 251 939 261 1,065 257 1,103 244 仁川広域市 591 131 552 229 609 282 1,070 338 1,225 355 1,259 367 光州広域市 430 58 434 95 418 100 574 107 662 100 677 95 大田広域市 459 61 405 94 421 102 617 115 667 119 711 124 蔚山広域市 211 30 161 42 156 40 212 44 239 46 254 47 世宗特別自治市 - - - - 23 11 40 11 51 10 53 11 京畿道 2,459 788 2,253 1,172 2,245 1,366 4,201 1,535 4,853 1,680 5,115 1,705 江原道 393 153 338 208 364 238 717 286 770 305 786 306 忠清北道 320 155 312 224 298 243 620 259 738 282 782 283 忠清南道 543 139 546 238 519 251 869 271 1,026 297 1,071 300 全羅北道 704 162 573 203 597 221 945 223 1,074 235 1,106 227 全羅南道 766 175 593 259 596 284 997 297 1,121 303 1,181 305 慶尚北道 833 159 689 277 749 321 1,238 369 1,431 382 1,483 384 慶尚南道 803 144 728 213 704 221 1,030 228 1,164 229 1,242 232 済州道 123 35 128 48 131 62 203 67 196 64 203 65 合 計 11,931 2,629 10,857 4,061 11,056 4,648 18,002 5085 20,377 5,304 21,290 5,320 首都圏(再掲) (構成比、%) (40.1)4,788 (45.0)1,184 (42.7)4,633 (45.3)1,840 (43.1)4,767 (46.7)2,169 (44.9)8,078 (47.7)2,426 (44.7)9,118 (48.2)2,559 (44.6)9,495 (48.6)2,587 注:1)統計は各年 12 月 31 日時点であり、在宅介護事業所数は重複なしの統計である。 2)「首都圏」とはソウル特別市、仁川広域市、京畿道である。なお、構成比は介護保険事業所総数に占める割合である。 3)列幅の都合のため、2008 年の統計を割愛するとともに、2009 年以降の統計は隔年の掲載とする。 4)済州道は 2006 年に「済州特別自治道」に改編されたが、本稿では便宜上「済州道」とする。 出所:国民健康保険公団「2009~2018 老人長期療養保険統計年報」より作成\
表 4 介護事業所の要介護認定者比 区分 自治体 2018 年 12 月時点 事業所(か所) 要介護認定者 (人) 要介護認定者千人当たりの 事業所数(か所) 在宅 施設 在宅 施設 ソウル特別市 3,121 515 99,868 31.3 5.2 釜山広域市 1,143 110 40,688 28.1 2.7 大邱広域市 1,103 244 28,650 38.5 8.5 仁川広域市 1,259 367 36,542 34.5 10.0 光州広域市 677 95 17,463 38.8 5.4 大田広域市 711 124 17,899 39.7 6.9 蔚山広域市 254 47 9,316 27.3 5.0 世宗特別自治市 53 11 2,758 19.2 4.0 京畿道 5,115 1,705 142,770 35.8 11.9 江原道 786 306 27,744 28.3 11.0 忠清北道 782 283 24,848 31.5 11.4 忠清南道 1,071 300 38,236 28.0 7.8 全羅北道 1,106 227 36,660 30.2 6.2 全羅南道 1,181 305 41,778 28.3 7.3 慶尚北道 1,483 384 49,760 29.8 7.7 慶尚南道 1,242 232 47,195 26.3 4.9 済州道 203 65 8,635 23.5 7.5 合 計 21,290 5,320 670,810 31.7 7.9 区分 自治体 2009 年 12 月時点 事業所(か所) 要介護認定者 (人) 要介護認定者千人当たりの 事業所数(か所) 在宅 施設 在宅 施設 ソウル特別市 1,738 265 46,083 43.5 5.8 釜山広域市 914 106 21,679 47.1 4.9 大邱広域市 644 68 13,997 50.9 4.9 仁川広域市 591 131 16,201 44.6 8.1 光州広域市 430 58 10,356 47.1 5.6 大田広域市 459 61 10,409 50.0 5.9 蔚山広域市 211 30 4,352 55.4 6.9 世宗特別自治市 - - - - - 京畿道 2,459 788 58,781 55.2 13.4 江原道 393 153 12,846 42.5 11.9 忠清北道 320 155 10,688 44.4 14.5 忠清南道 543 139 18,255 37.4 7.6 全羅北道 704 162 20,228 42.8 8.0 全羅南道 766 175 23,668 39.8 7.4 慶尚北道 833 159 24,567 40.4 6.5 慶尚南道 803 144 25,202 37.6 5.7 済州道 123 35 4,990 31.7 7.0 合 計 11,931 2,629 322,302 45.2 8.2 注:在宅介護事業所数は重複除外の統計である。 出所:国民健康保険公団「2009 老人長期療養保険統計年報」および「2018 老人長期療養保険統 計年報」より作成
口
□
業所の地域差が大きいと言える。 参考までに、介護事業所の要介護認定者比をみると、都市部の多い自治体(ソウル特別市、仁川 広域市を除く広域市)は介護保険施設が少なく、中山間地域の多い自治体は在宅介護事業所が少な い傾向にある(表 4)。 2018 年 12 月時点の介護事業所数を 2009 年 12 月時点と比較してみると、2009 年に比べて要介護 認定者千人当たりの介護事業所数が少ない。とくに、在宅介護事業所はその差が大きく、要介護者 増に比べて事業所があまり増えていないと言える。
3.2 サービス別の地域差
ここでは介護事業所数を 65 歳以上の高齢者人口でウェイトづけし、各自治体のサービス別の介 護サービス供給の地域差を検証する。そのうえ、2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点の介護事業所等 を比較検討することで介護サービス供給の地域差の拡大・縮小の状況も明らかにする16)。あわせて、 介護サービス供給に影響を及ぼすと考えられるサービス提供人員(社会福祉士、医師、看護師など) についても比較検討する。研究方法において既述したように、サービス別の事業所数と定員の標準 偏差と分散を用いて地域差の状況を明らかにするが17)、これが大きいほど地域差が大きいことを 意味する。 表 5 は韓国の 17 道・市の介護事業所数をサービス別にみたものであるが、高齢者人口千人当た りの事業所数、定員とも在宅介護事業所より介護保険施設の地域差が大きい。在宅介護事業所をサ ービス別にみると、事業所数では訪問介護、定員ベースでは昼夜間保護が最も地域差が大きい。介 護保険施設の場合、事業所数では老人療養施設、定員ベースでは老人療養共同生活家庭のほうの地 域差が大きい。 2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点の介護事業所数と定員を比較してみると、両方とも 2018 年 12 月時点の標準偏差と分散が大きいことからして(2009 年の事業所数の標準偏差は .56980、分散は .325、定員の標準偏差は 7.80205、分散は 60.872、2018 年の事業所数の標準偏差は .60025、分散は .360、定員の標準偏差は 10.56521、分散は 111.624)、地域差は拡大傾向にあると言える。2009 年 12 月時点と比べて地域差が縮小しているサービスは訪問介護、訪問看護、短期保護のみで、その他の サービスはすべて拡大している(表 5)。3.3 区市郡別の地域差
介護サービス供給の地域差を区市郡別に明らかにするため、高齢者人口千人当たりの介護事業所 と定員の上位 20 位と下位 20 位の構成比をみる18)。2018 年 12 月時点の介護事業所数合計では、上 位 20 位にランクしているのは区部の自治体が 30.0%、市部が 55.0%、郡部が 15.0%、下位 20 位に ランクしているのは区部が 50.0%、市部が 20.0%、郡部が 30.0%となっている。定員ベースでは、 上位 20 位にランクしている区部は 10.0%、市部は 60.0%、郡部は 15.0%、下位 20 位にランクして いる区部は 95.0%、市部は 5.0%、郡部はゼロとなっている(表 6)。 上位にランクしている自治体の介護サービス供給が多いと解釈できるので、事業所数では区市部 が郡部に比べて相対的に介護サービス供給が多く、定員ベースでは区市部のほうが介護サービスの 供給が少ないと言える。在宅介護事業所と介護保険施設別にみると、在宅介護事業所は区部、介護表 5 高齢者人口千人当たりのサービス別の介護事業所数および定員(道・市ベース) 2018 年 12 月時点 最小値 最大値 平均値 標準偏差 分散 在宅介護事業所 訪問介護 事業所 1.00 2.50 1.6294 .43123 .186 訪問入浴介護 事業所 .70 2.10 1.2294 .35136 .123 訪問看護 事業所 .05 .15 .0941 .02740 .001 昼夜間保護 事業所 .20 .60 .4588 .13257 .018 定員 98.50 201.80 131.2647 32.05054 1,027.237 短期保護 事業所 0.00 .05 .0165 .01579 .000 定員 0.00 .05 .0135 .01412 .000 福祉用具貸与・販売 事業所 .20 .40 .2471 .07174 .005 小 計 事業所 1.40 3.10 2.1059 .49557 .246 定員 6.90 19.30 12.0529 3.08851 9.539 介護保険施設 老人療養施設 事業所 .10 .70 .4588 .18391 .034 定員 8.80 37.10 22.4471 8.20588 67.336 老人療養共同生活家庭 事業所 0.00 .40 .2118 .13639 .019 定員 .30 3.70 1.9353 1.16294 1.352 小 計 事業所 .20 1.10 .6765 .27733 .077 定員 10.50 37.90 24.3706 8.82077 77.806 合 計 事業所 1.80 3.80 2.7824 .60025 .360 定員 17.40 51.70 36.4353 10.56521 111.624 2009 年 12 月時点 最小値 最大値 平均値 標準偏差 分散 在宅介護事業所 訪問介護 事業所 1.10 2.60 1.7563 .46900 .220 訪問入浴介護 事業所 .80 2.00 1.2688 .31138 .097 訪問看護 事業所 .10 .28 .1544 .04457 .002 昼夜間保護 事業所 .10 .40 .2250 .08563 .007 定員 33.60 87.40 57.8813 15.59454 243.190 短期保護 事業所 .15 .42 .2800 .08430 .007 定員 .15 .42 .2419 .07687 .006 福祉用具貸与・販売 事業所 .10 .30 .2188 .05439 .003 小 計 事業所 1.60 3.30 2.4438 .53537 .287 定員 4.50 9.30 6.3125 1.29865 1.687 介護保険施設 老人療養施設 事業所 .10 .60 .3750 .16125 .026 定員 5.30 31.10 17.8000 6.79461 46.167 老人療養共同生活家庭 事業所 0.00 .40 .1500 .10954 .012 定員 .10 3.40 1.3313 .82196 .676 小 計 事業所 .20 .90 .5250 .21134 .045 定員 6.50 31.20 19.1313 6.96512 48.513 合 計 事業所 1.80 4.00 2.9750 .56980 .325 定員 11.60 40.40 25.4438 7.80205 60.872 注:事業所数および定員の最大値と最小値の単位は、それぞれ「か所」と「人」である。 出所:国民健康保険公団「2009 老人長期療養保険統計年報」および「2018 老人長期療養保険統計年報」 より作成
表 6 高齢者人口千人当たりの区市郡別の介護事業所数および定員の構成比 (単位:%) 2018 年 12 月 上位 20 位 下位 20 位 区 市 郡 区 市 郡 利用率 5.0 35.0 60.0 90.0 5.0 5.0 在宅介護事業所 訪問介護 事業所 55.0 30.0 15.0 15.0 35.0 50.0 訪問入浴介護 事業所 50.0 25.0 25.0 15.0 15.0 70.0 訪問看護 事業所 15.0 50.0 35.0 0.0 30.0 70.0 昼夜間保護 事業所定員 30.05.0 55.040.0 40.030.0 35.020.0 10.05.0 55.075.0 短期保護 事業所定員 35.045.0 25.025.0 40.030.0 0.00.0 40.040.0 60.060.0 福祉用具貸与・販売 事業所 60.0 30.0 10.0 5.0 5.0 90.0 小 計 事業所 55.0 30.0 15.0 20.0 30.0 50.0 定員 25.0 40.0 35.0 25.0 5.0 75.0 介護保険施設 老人療養施設 事業所 5.0 60.0 35.0 100.0 0.0 0.0 定員 5.0 55.0 40.0 100.0 0.0 0.0 老人療養共同生活家庭 事業所定員 20.020.0 55.055.0 25.025.0 10.010.0 25.025.0 65.065.0 小 計 事業所 5.0 75.0 20.0 95.0 0.0 5.0 定員 5.0 65.0 30.0 100.0 0.0 0.0 合 計 事業所定員 30.010.0 55.060.0 15.030.0 50.095.0 20.05.0 30.00.0 2009 年 12 月 上位 20 位 下位 20 位 区 市 郡 区 市 郡 利用率 0.0 5.0 95.0 75.0 20.0 5.0 在宅介護事業所 訪問介護 事業所 50.0 10.0 40.0 35.0 45.0 20.0 訪問入浴介護 事業所 25.0 20.0 55.0 40.0 15.0 45.0 訪問看護 事業所 20.0 30.0 50.0 0.0 15.0 85.0 昼夜間保護 事業所 5.0 20.0 75.0 35.0 30.0 35.0 定員 5.0 30.0 65.0 30.0 15.0 55.0 短期保護 事業所定員 25.00.0 30.035.0 70.040.0 40.045.0 20.015.0 40.040.0 福祉用具貸与・販売 事業所 50.0 15.0 35.0 0.0 10.0 90.0 小 計 事業所 35.0 25.0 40.0 40.0 40.0 20.0 定員 10.0 35.0 55.0 35.0 15.0 50.0 介護保険施設 老人療養施設 事業所 0.0 25.0 75.0 90.0 0.0 10.0 定員 0.0 20.0 80.0 80.0 10.0 10.0 老人療養共同生活家庭 事業所定員 5.00.0 40.050.0 55.050.0 0.00.0 15.015.0 85.085.0 小 計 事業所 0.0 20.0 80.0 90.0 5.0 5.0 定員 0.0 20.0 80.0 85.0 5.0 10.0 合 計 事業所 25.0 25.0 50.0 55.0 35.0 10.0 定員 0.0 20.0 80.0 90.0 0.0 10.0 注:表内の太字は当該サービスに占める割合が最も高いことを意味する。なお、同率は太字 にしていない。 出所:国民健康保険公団「2009 老人長期療養保険統計年報」および「2018 老人長期療養保 険統計年報」より作成
保険施設は市部の介護サービス供給が多い傾向にある。サービス別にみると、訪問介護、訪問入浴 介護、福祉用具貸与・販売は区部、訪問看護、昼夜間保護、老人療養施設、老人療養共同生活家庭 は市部の介護サービス供給が多い。全体的に区市部の介護サービス供給が郡部に比べて多い傾向に あるが、下位 20 位に入っている郡部の自治体の割合が高いことからも同様のことが言える。 2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点の介護事業所と定員の上位 20 位と下位 20 位の構成比を比較し てみると、2009 年 12 月では区市部より郡部における介護サービス供給が多い。在宅介護事業所と 介護保険施設別、サービス別にみても同様の傾向がみられる。この結果に基づくと、2018 年まで の 9 年間に区市部の介護サービス供給が郡部に比べて相対的に増加したと言えよう。 ちなみに、介護サービス供給に影響を及ぼすと考えられる介護サービス利用率は、2009 年、 2018 年とも区市部より郡部の割合が高い。需要・供給の法則により、介護サービス利用率が高い 自治体は介護サービス供給が多くなると考えられるが、上記の結果に基づくと必ずしも供給が多い とは限らないという結果が示された。
3.4 サービス提供人員の地域差
高齢者人口千人当たりのサービス提供人員の地域差をみると、療養保護士が最も大きく、歯科衛 生士が最も小さい(表 7)。2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点のサービス提供人員の地域差を比較し てみると、社会福祉士、医師、機能訓練士は拡大、看護師、歯科衛生士、療養保護士は縮小している。 表 7 高齢者人口千人当たりのサービス提供人員(道・市ベース) 2018 年 12 月時点 最小値 最大値 平均値 標準偏差 分散 社会福祉士 2.00 3.70 2.9529 .53282 .284 医師(嘱託を含む) .10 .50 .3235 .10914 .012 看護師 .20 1.00 .4353 .18007 .032 看護助手 .60 2.00 1.3882 .42849 .184 歯科衛生士 .00 .00 .0011 .00143 .000 機能訓練士 .20 .50 .2941 .09663 .009 療養保護士 36.80 76.30 51.3118 11.53180 132.982 栄養士 .10 .40 .1765 .07524 .006 2009 年 12 月時点 最小値 最大値 平均値 標準偏差 分散 社会福祉士 .80 2.20 1.3375 .32838 .108 医師(嘱託を含む) .10 .50 .2375 .10878 .012 看護師 .40 1.40 .7125 .24187 .059 看護助手 .40 1.40 .8813 .27379 .075 歯科衛生士 .00 .02 .0042 .00634 .000 機能訓練士 .20 .60 .3000 .09661 .009 療養保護士 33.20 102.20 62.7375 16.51516 272.751 注:最大値と最小値の単位は「人」である。なお、2009 年の栄養士はデータ不在である。 出所:国民健康保険公団「2009 老人長期療養保険統計年報」および「2018 老人長期療養保険統計 年報」より作成3.5 介護事業所数および定員とサービス提供人員の相関
先述した需要・供給の法則により、サービス提供人員が多い自治体は、専門のスタッフを確保し やすいと考えられるため、介護サービス供給が多くなると推測される。そこで、ここでは高齢者人 口千人当たりの介護事業所数および定員とサービス提供人員の相関分析を通して、サービス提供人 員の規模が介護サービス供給にどれだけの影響を及ぼすのかについて検証する。 表 8 に示したとおり、5%水準以下で有意差が認められる変数が多いので、全体的にみてサービ ス提供人員と介護サービス供給には相関があると言える。2018 年 12 月時点の介護事業所数合計で は、社会福祉士(R=.795、p<.001)、看護助手(R=.710、p<.001)、療養保護士(R=.661、p< .001)、医師(R=.456、p<.001)、機能訓練士(R=.423、p<.001)の順に相関係数が高くなってお り、その影響度が高い。定員ベースでは、看護助手(R=.884、p<.001)、機能訓練士(R=.776、 p<.001)、医師(R=.678、p<.001)、社会福祉士(R=.644、p<.001)、栄養士(R=.542、p<.001) の順に影響力が強い(表 8)。 在宅介護事業所と介護保険施設別にみると、在宅介護事業所の事業所数は療養保護士、定員ベー スは看護助手の影響度が最も高く、介護保険施設は事業所数、定員とも看護助手の影響度が最も高 い。サービス別では、訪問介護、訪問入浴介護、福祉用具貸与・販売は療養保護士、訪問看護は看 護師、昼夜間保護、老人療養施設、老人療養共同生活家庭は看護助手の影響力が最も強くなってお り、サービスの特性との相関がみられる。なお、影響度を職種別にみると、在宅介護事業所は療養 保護士、社会福祉士、看護助手、介護保険施設は看護助手、機能訓練士、医師の影響力が強い傾向 にある。 一方、2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点の介護事業所数および定員とサービス提供人員の相関関 係の変化をみると、全体的にみてサービス提供人員が介護事業所数および定員に及ぼす影響力が大 きくなっている。職種別の影響度の変化を事業所数ベースでみると、療養保護士、医師、看護助手、 機能訓練士、社会福祉士の順にその影響度が上昇している。4.考察
韓国の介護サービスの供給状況と介護サービス供給の地域差について、日本と比較する形で考察 を行う。4.1 介護サービスの供給状況に関する考察
介護保険制度施行から起算して約 10 年間の介護事業所の増加率は韓国が約 1.5 倍、日本が約 2.5 倍となっており、韓国の増加率は日本に比べて緩やかである。理由のひとつとして考えられのは、 介護サービス需要者である要介護者数の違いである。2018 年 12 月時点の要介護者は日本が約 658 人、韓国が約 67 万人となっている。両国の人口規模が異なるので、当然ながら日本の要介護者が 多いが、ここで注目したいのは両国の要介護認定率の違いである。高齢者に占める要介護認定率は 日本が 18.7%(高齢者人口は約 3,511 万人)であるのに対し、韓国は日本の半分以下の 8.8%(高 齢者人口は約 761 万人)に過ぎない。韓国の要介護度は 5 段階(認知症患者向けの長期療養認知支援等級を除く)であるが、日本の要支援 1、要支援 2、要介護 1 のような軽度要介護者は認定を受 けられず、介護サービスが利用できない。要するに、韓国は介護サービス需要者が日本に比べて相 対的に少ないため、需要・供給の法則により、介護事業所が少なく、その増加率も緩やかであると 考えられる。 表 8 高齢者人口千人当たりの介護事業所数および定員とサービス提供人員の相関関係 2018 年 12 月 SW Dr Ns NA DH PT CW Dt 在宅介護事業所 訪問介護 事業所 .641*** .074 .158* .227** .039 .100 .785*** -.103 訪問入浴介護 事業所 .599*** .063 .203** .253*** .036 .108 .753*** -.094 訪問看護 事業所 .238*** .030 .601*** .147* .059 .063 .198** -.045 昼夜間保護 事業所 .505 *** .380*** .269*** .590*** -.084 .366*** .181** .193** 定員 .576*** .376*** .275*** .584*** -.067 .390*** .306*** .176** 短期保護 事業所 .006 .122 .038 .133 * -.026 -.066 -.011 -.084 定員 .057 .028 -.001 .103 -.021 -.101 -.020 -.076 福祉用具貸与・販売 事業所 .381*** -.001 .256*** .050 .051 .051 .561*** -.064 小 計 事業所 .709 *** .165* .241*** .350*** .041 .182** .798*** -.068 定員 .574*** .374*** .271*** .586*** -.067 .376*** .301*** .167* 介護保険施設 老人療養施設 事業所 .559 *** .680*** .221** .825*** -.078 .676*** .111 .458*** 定員 .535*** .660*** .274*** .797*** -.095 .826*** .124 .643*** 老人療養共同生活家庭 事業所 .289 *** .429*** .169* .674*** .042 .233*** .109 .065 定員 .286*** .428*** .172** .668*** .039 .226** .104 .065 小 計 事業所 .512 *** .662*** .229*** .886*** -.031 .565*** .118 .337*** 定員 .543*** .682*** .282*** .844*** -.083 .807*** .132* .612*** 合 計 事業所 .795 *** .456*** .300*** .710*** .013 .423*** .661*** .119 定員 .644*** .678*** .325*** .884*** -.090 .776*** .217** .542*** 2009 年 12 月 SW Dr Ns NA DH PT CW Dt 在宅介護事業所 訪問介護 事業所 .473*** -.002 .052 .187** -.009 .059 .701*** 訪問入浴介護 事業所 .401*** -.004 .025 .165* -.006 .048 .701*** 訪問看護 事業所 .153* .157* .389*** .204** .027 .110 .178** 昼夜間保護 事業所 .436 *** .191** .241*** .480*** -.039 .295*** .145* 定員 .418*** .172** .283*** .389*** -.003 .292*** .087 短期保護 事業所 .391 *** .379*** .334*** .580*** -.009 .426*** .037 定員 .242*** .348*** .137* .431*** .002 .170* .088 福祉用具貸与・販売 事業所 .348*** -.096 -.014 -.007 -.028 -.062 .406*** 小 計 事業所 .583 *** .113 .187** .309*** -.034 .154* .549*** 定員 .437*** .324*** .280*** .526*** -.001 .306*** .113 介護保険施設 老人療養施設 事業所 .503 *** .543*** .321*** .771*** -.007 .503*** -.009 定員 .522*** .526*** .383*** .729*** .098 .618*** -.017 老人療養共同生活家庭 事業所 .073 .048 -.061 .412 *** -.068 -.030 .030 定員 .050 .031 -.089 .401*** -.068 -.040 .014 小 計 事業所 .430 *** .451*** .226** .796*** -.036 .383*** .006 定員 .515*** .517*** .363*** .757*** .087 .598*** -.015 合 計 事業所 .655 *** .260*** .241*** .552*** -.041 .270*** .473*** 定員 .564*** .537*** .391*** .799*** .077 .604*** .015 注:SW は社会福祉士、Dr は医師、Ns は看護師、NA は看護助手、DH は歯科衛生士、PT は機能訓練士、CW は療養保護士、 Dt は栄養士を指す。N=229、*p<.05、**p<.01、***p<.001 出所:国民健康保険公団「2009 老人長期療養保険統計年報」および「2018 老人長期療養保険統計年報」より作成
事業所種別では、介護保険施設に比べて在宅介護事業所の増加率が相対的に高い日本とは状況が 異なり、韓国は在宅介護事業所より介護保険施設の増加率が高い19)。比較検討可能な 2001 年から 2009 年までの 8 年間の日本の介護保険施設の増加率は 4.8%増にとどまっているのに、2009 年から 数えて 8 年目に当たる 2015 年までの韓国の介護保険施設の増加率は 193.3%である(老人療養施設 は 173.1%増、老人療養共同生活家庭は 230.1%増)。こうしてみると、日本の介護保険施設の増加 率の低さが際立つ。韓国においてこの 8 年間に介護保険施設が 2 倍近く増加した理由のひとつとし て、日本同様、韓国でも要介護高齢者とその家族の施設選好意識が強く、在宅介護サービスに比べ て介護保険施設の需要が相対的に高いことが考えられる。もうひとつの理由は、韓国では複合ビル を活用して開設する介護保険施設が多いことが上げられよう20)。自己所有のビルに開設したり複 合ビルのワンフロアまたは複数のフロアを借用して開設したりするケースが多いが、この開設手法 は土地を購入または借用して施設を開設する手法に比べて初期投資費がそれほどかからない。この ような開設手法だと、介護老人福祉施設の開設コストが地域によっては 1 床 1 億円といわれる日本 に比べて開設コストがかなり抑えられるため、韓国における介護保険施設の増加率が高いと考えら れる。ちなみに、韓国では要介護者の需要を満たすだけの老人療養施設が供給されているため、日 本で問題になっている介護老人福祉施設への入居待機者問題はほぼ起きていない。 サービス別では、在宅介護事業所の 41.1%が訪問介護事業所であり、居宅サービス事業所に占め る訪問介護事業所の割合が 25.3%である日本に比べて訪問介護サービスへの偏りが大きい。韓国で は昼夜間保護と短期保護事業所の在宅介護事業所に占める割合が日本より低く、訪問介護事業所が 昼夜間保護と短期保護の代替サービスとして機能していると考えられる。日本の居宅サービスに占 める割合は通所介護が 27.1%、短期入所生活介護が 8.9%となっているが(2008 年 10 月時点)、韓 国では昼夜間保護が 10.7%であり、短期保護に至っては 0.6%に過ぎない。 昼夜間保護事業所は在宅介護事業所に占める割合が日本に比べて低いものの、2009 年からの 9 年間の増加率は最も高い。2009 年 12 月時点では昼夜間保護事業所が 1 か所もない自治体が 9 か所(自 治体の 3.9%)だったが、2018 年 12 月にはたった 1 か所にまで減少している。少ないケアスタッ フで多くの利用者を集団ケアできる同サービスはスケールメリット(規模の経済性)が得られやす いため、日本でも事業所の増加率が高いが21)、韓国でも同様の理由で増加率が高いと考えられる。 事業所が減少しているのは短期保護と訪問看護事業所である。短期保護事業所が急減しているのは、 短期保護サービスの 1 回あたり利用可能日数を大幅に短縮した 2010 年 3 月の「長期療養保険法」 の改正による影響であると推察される。この改正により、短期保護から老人療養施設に転換した事 業所が増え、2010 年から 2013 年までの 4 年間に転換した施設が 1,187 か所にのぼる。訪問看護事 業所も減少幅が大きいが、訪問看護事業所は指定事業者取得のための人員基準が訪問介護および訪 問入浴介護事業所に比べて相対的に厳しいうえ22)、日本同様、サービス利用が訪問介護事業と競 合する関係にあるため、利用者が訪問看護より利用者負担の安い訪問介護を選ぶ傾向にあることが 減少の一因であると考えられる23)。
4.2 介護サービス供給の地域差に関する考察
介護サービスの供給状況を自治体別にみると、首都圏の 2 市 1 道(ソウル特別市、仁川広域市、 京畿道)に介護事業所の約半数が集中していることからして事業所の地域差が大きい状況にある。ただ、総人口に占める首都圏在住者の比率が約 50%にのぼっているので、人口対比でみると、一概 に地域差が大きいとは言えない。厚生労働省の「平成 30 年介護サービス施設・事業所調査結果の 概況」によると、日本の場合は 2018 年 10 月時点において居宅サービス事業所の 27.7%(15 万 8,515 か所のうちの 4 万 3,857 か所)、介護保険施設の 28.5%(8,079 か所のうちの 2,306 か所)が首 都圏 7 都県(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に立地しているので、 介護事業所の首都圏集中の程度は韓国に比べて小さい。ちなみに、総務省の「平成 30 年 10 月 1 日 現在人口推計」によると、首都圏 7 都県の総人口に占める在住者の比率は韓国より低い 34.3%である。 介護事業所の要介護認定者比をみると、都市部の多い自治体は介護保険施設が少なく、中山間地 域の多い自治体は在宅介護事業所が少ない傾向にあるという結果が得られている。日本同様、人口 密集地域である大都市は土地代が高く、施設開設のための建設用地の確保が難しいうえ、建物の賃 貸料も高いため、介護保険施設が中山間地域に比べて相対的に少ないと考えられる。 サービス別の介護サービス供給の地域差をみると、事業所数、定員とも在宅介護事業所より介護 保険施設の標準偏差が大きく、地域差が大きい状況にある。介護保険施設は在宅介護事業所に比べ て相対的に開設コストがかかるため、地価と賃貸料が高い大都市部(とくに区のみで構成されるソ ウル特別市と 6 つの広域市)での供給が少ないことが影響していると考えられる。事業所数と定員 の区市郡別の上位 20 位と下位 20 位の構成比を通して介護サービス供給の地域差を明らかにした分 析において、介護保険施設は開設コストが高いと考えられるソウル特別市と 6 つの広域市の区部は、 中小都市に比べて上位に占める割合が低いことが示されている。2009 年 12 月時点では中山間地域 である郡部の占める割合が事業所数、定員とも 80%にのぼっていたことは、大都市部において介 護保険施設の供給が少ないことの大きな裏づけとなろう。 在宅介護の事業所数では訪問介護、定員では昼夜間保護、介護保険施設の施設数では老人療養施 設、定員では老人療養共同生活家庭の地域差が最も大きいという結果が得られている。一般的に事 業所数と定員が多いほど、標準偏差が大きくなる傾向にある。本研究によると、在宅介護事業所で は 1 万 2,335 か所とその数が最も多い訪問介護事業所、定員が短期保護に比べて多い昼夜間保護事 業所(2018 年 12 月時点の昼夜間保護事業所の定員は 8 万 3,674 人、短期保護事業所は 1,646 人) のほうの標準偏差が大きいため、その地域差が最も大きくなっていると考えられる。介護保険施設 についてみると、施設数では標準偏差との関連性がみられるが、2018 年 12 月時点で 1 施設当たり の定員が老人療養施設は 48.2 人、老人療養共同生活家庭は 8.8 人となっていることからして、定員 に関しては定員が多いほど標準偏差が大きくなるという論理は成り立たない。ただ、1 施設当たり の入居定員数が 9 人以下と決まっている小規模施設の老人療養共同生活家庭と大規模施設の老人療 養施設の定員数の単純比較には統計学的な限界がある。 本研究ではこれまでの筆者の先行研究を踏まえ、「農漁村などの中山間地域は人口が密集してい る大都市に比べて介護サービスの需要があまり期待できないため、介護事業所が少ない傾向にあり、 サービス提供のための移動時間、交通費などの動線コストがかかる在宅介護事業所は都市部に比べ て中山間地域が相対的に少ない」という理論上の仮説を立てた。分析の結果、在宅介護事業所は区 部、介護保険施設は市部ほど多いという結果が得られているので、仮説が立証されたと言えよう。 ちなみに、2018 年 12 月末時点において、韓国には日本の市区町村に当たる市区郡が 250 か所あ るが、訪問看護事業所がまったくない自治体は 57 か所(自治体の 22.8%)、1 か所しかない自治体
は 53 か所(同 21.2%)にのぼっている。2009 年 12 月末時点では 1 か所もない自治体が 35 か所(同 14.5%)だったので(2009 年時点における自治体は 241 か所)、訪問看護では地域差が拡大している。 訪問看護事業所が皆無の自治体の住民らは、「保険あって給付なし」の状態に置かれていると言わ ざるを得ない24)。 最後に、介護サービス供給に影響を及ぼすと考えられるサービス提供人員の地域差について考察 する。2018 年 12 月時点の資格者別のサービス提供人員数は社会福祉士 2 万 2,305 人、医師(嘱託 を含む)2,210 人、看護師 2,999 人、看護助手 1 万 726 人、歯科衛生士 10 人、機能訓練士 2,122 人、 療養保護士 37 万 9,822 人、栄養士 1,132 人となっているが、人数が最も多い療養保護士の地域差が 最も大きく、最も人数が少ない歯科衛生士の地域差が最も小さい。療養保護士、社会福祉士、看護 助手の順に標準偏差が大きくなっているので、先ほど触れたように、該当する数字が大きいほど、 標準偏差が大きくなる傾向にあると言えよう。療養保護士と歯科衛生士の地域差は縮小しつつある が、歯科衛生士に関しては他職種に比べてその数が極端に少ないのでデータとしての有効性に欠け、 地域差と地域差の縮小・拡大について論じること自体、無理がある。 介護事業所数および定員とサービス提供人員の相関分析においては、サービス提供人員と介護サ ービス供給量の間に相関があるという結果が得られている。在宅介護事業所の数は療養保護士、定 員は看護助手の影響度が最も高く、介護保険施設は数、定員とも看護助手の影響度が最も高いとい う結果に鑑みると、これらの資格者の拡充が介護サービスの供給の拡大につながると考えられる。 職種別では、在宅介護事業所は療養保護士、社会福祉士、看護助手、介護保険施設は看護助手、 機能訓練士、医師の順に影響力が強く、サービス別では訪問介護、訪問入浴介護、福祉用具貸与・ 販売は療養保護士、訪問看護は看護師、昼夜間保護、老人療養施設、老人療養共同生活家庭は看護 助手の影響力が強い傾向にある。したがって、介護事業者は展開する事業所の種別、サービス種類 別にサービス提供人員を採用・拡充することが肝要であろう。韓国では日本のような介護職員の不 足の問題は現時点では起きていないが、将来的には人手が足りない日本のような状況に陥る可能性 は排除できない。日本が直面している現在の状況に鑑み、事業所の安定経営のための計画的な人材 確保が重要であることは言を俟たない。サービス提供人員が介護事業所数および定員に及ぼす影響 力が大きくなりつつある状況からしても、事業所の種別とサービスの特性に基づく計画的かつ中長 期的な人材確保は介護サービスの安定供給には欠かせない。
5.おわりに
本研究では、韓国における介護サービス供給の現状を概観しつつ、韓国の自治体別の介護サービ ス供給の地域差を明らかにした。また、2009 年 12 月と 2018 年 12 月時点の介護事業所等を比較検 討することで介護サービス供給の地域差の拡大・縮小の状況についても明らかにした。 研究の結果、以下のことは明らかになった。 1.介護保険制度施行から起算して約 10 年間の介護事業所の増加率は韓国が約 1.5 倍、日本が 約 2.5 倍となっており、韓国の増加率は日本に比べて緩やかである。2.介護保険施設に比べて在宅介護事業所の増加率が相対的に高い日本とは状況が異なり、韓国 は在宅介護事業所より介護保険施設の増加率が高い状況である。 3.都市部の多い自治体は介護保険施設が少なく、中山間地域の多い自治体は在宅介護事業所が 少ない傾向にある。 4.在宅介護事業所の 41.1%が訪問介護事業所であり、居宅サービス事業所に占める訪問介護事 業所の割合が 25.3%である日本に比べて訪問介護サービスへの偏りが大きい。 5.介護事業所の約半数が首都圏の 2 市 1 道(ソウル特別市、仁川広域市、京畿道)に集中して おり、介護サービスの供給が偏在しているが、首都圏在住者が総人口の約半分であることを 勘案すると、必ずしも地域差が大きいとは言えない。 6.介護事業所数、定員とも在宅介護事業所より介護保険施設の標準偏差が大きく、介護保険施 設の地域差が相対的に大きい。 7.在宅介護の事業所数では訪問介護、定員では昼夜間保護、介護保険施設の施設数では老人療 養施設、定員では老人療養共同生活家庭の地域差が最も大きい。 8.昼夜間保護事業所は 2009 年からの 9 年間の事業所の増加率が最も高く、地域差は解消され つつある。 9.事業所数が減少している訪問看護事業所がまったくない自治体は 22.8%にのぼっており、地 域差は解消されていない。 10.サービス提供人員は療養保護士の地域差が最も大きく、歯科衛生士の地域差が最も小さい状 況であるが、介護事業所数および定員とサービス提供人員の相関分析によると、サービス提 供人員と介護サービス供給量の間には相関がある。 11.サービス提供人員の職種別では、在宅介護事業所は療養保護士、社会福祉士、看護助手、介 護保険施設は看護助手、機能訓練士、医師の順に影響力が強く、サービス別では訪問介護、 訪問入浴介護、福祉用具貸与・販売は療養保護士、訪問看護は看護師、昼夜間保護、老人療 養施設、老人療養共同生活家庭は看護助手の影響力が強い傾向にある。 以上のように、韓国では介護サービス供給とサービス提供人員の地域偏在が見られるとともに、 サービスによっては地域差が拡大している状況が確認された。本研究の問題意識と研究の意義でも 述べたように、介護サービス供給の地域差による「保険あって給付なし」の状態は看過できず、こ の地域差が是正されない限り、介護サービス利用者の選択性は保障されない。 介護サービス供給の地域差は韓国に限ったことではない。先述した筆者の先行研究を改めて取り 上げるまでもなく、日本でも介護サービス供給の地域差が認められる。したがって、日韓両国にお いて介護サービス利用者のサービス需要の機会と選択の幅を広げるためには、介護サービスの需要 と供給のミスマッチを是正するための政策的な支援が今まで以上に求められる。筆者が先行研究で 論じたように、介護サービス供給の地域差を是正するためには、介護サービス供給が足りない傾向 にある中山間地域への介護事業者の進出を疎外する要因を抽出してそれに対処するとともに、事業 者の進出を積極的に促進するための制度的な装置が必要であることを改めて提言したい。本研究は 介護サービス供給の現状分析と地域差の検証に焦点を当てた研究なので、地域差の是正のためのさ らなる政策提案については今後の研究課題としたい。
謝辞
本研究は、平成 30 年度日本学術振興会科学研究費助成事業〔基盤研究 C〕(研究代表者:宣賢奎、 課題番号:18K02115)に基づく研究成果の一部である。記して感謝する次第である。 注および引用文献 1)林春植・宣賢奎・住居広士『韓国介護保険制度の創設と展開-介護保障の国際的視点-』ミネルヴァ書房、 pp.10-13、2010 年。 2)宣賢奎「韓国の介護保険制度創設の成果と今後の課題-家族の介護負担の軽減に視点をおいて-」『関西福祉 大学・地域社会福祉政策研究所発行「日本・韓国・台湾における社会的介護システムとインフォーマル・ケア に関する比較研究」』pp.42-48、2012 年。 3)林春植・宣賢奎・住居広士『韓国介護保険制度の創設と展開-介護保障の国際的視点-』ミネルヴァ書房、 pp.142-151、2010 年。 4)宣賢奎「韓国の長期療養保険制度の最新動向と課題」『共栄大学論集』第 14 号、pp.1-37、2015 年。 5)林春植・宣賢奎「韓国老人長期療養保険制度における在宅療養給付の問題点と改善策」『日本在宅ケア学会誌』 Vol.15-1、pp.21-25、2011 年。 6)宣賢奎「介護サービス供給の地域間格差に関する一考察-韓国老人長期療養保険制度に対する政策的視座-」『共 栄大学研究論集』第 10 号、pp.1-22、2012 年。 7)宣賢奎「韓国における介護サービス供給の地域格差」『介護福祉研究』第 23 巻第 1 号、pp.35-39、2016 年。 8)宣賢奎「首都圏における介護サービス供給の地域格差」『介護福祉研究』第 21 巻第 1 号、pp.23-27、2014 年。 9)宣賢奎「首都圏における介護サービス供給の地域格差と要因分析」『共栄大学研究論集』第 13 号、pp.1-23、 2015 年。 10)宣賢奎「介護保険制度の地域格差とその是正策」『介護福祉研究』第 24 巻第 1 号、pp.16-22、2017 年。 11)制度が施行された 2008 年のデータは 2008 年 7 月から 12 月までの半年分のデータであるため、分析データと しての有効性に欠ける。したがって、制度施行初期の 1 年分のデータである 2009 年のデータを用いる。なお、 比較検討する 2018 年のデータは本稿執筆開始時点における最新データである。 12)自治体である市区郡邑面(日本の市区町村にあたる)のうち、「郡」が中山間地域(韓国では「農漁村地域」 と呼ばれている)である。 13)宣賢奎『介護ビジネスと自治体政策』大学教育出版、2006 年。 14)厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査結果の概況」に基づき、サービス事業所の実数が公表されて いて比較検討可能な 2001 年と 2009 年(両方とも 10 月 1 日時点)の 8 年間の介護保険施設と在宅介護事業所の 増加率をみると、在宅介護事業所は約 1.7 倍(4 万 7,288 か所から 8 万 2,590 か所、韓国では介護保険施設に分類 されている認知症対応型共同生活介護事業所および韓国には存在しない居宅介護支援事業所は除外)増えてい るのに対し、介護保険施設は 1 万 1,222 か所から 1 万 1,767 か所へと微増にとどまっている。 15)日本の認知症対応型共同生活介護は、韓国では介護保険施設に分類されているため、居宅サービス事業所数 に含めなかった。韓国には存在しない居宅介護支援事業所数も除外している。 16)2009 年と 2018 年を比較検討する際の整合性を図るため、2009 年からの市区郡変遷情報に基づき、2018 年 12 月時点の 250 市区郡と 2009 年 12 月時点の 241 市区郡を 229 市区郡に再編した。 17)筆者は先行研究(宣賢奎「韓国の長期療養保険制度の最新動向と課題」『共栄大学論集』第 14 号、p.24、2015年)において、「長期療養保険施設に関していえば、地域格差はあるものの、施設によって定員が異なるため、 単純に事業所数の過多のみで地域格差があると結論づけるのは早計過ぎる」と論じたが、このことを踏まえ、 本研究では定員を含めた地域差を検証することにした。 18)ランキング表示は 229 自治体の上位 10%、下位 10%程度に当たる上位 20 位と下位 20 位とする。なお、229 自治体の内訳は区(1 特別市および 6 広域市の区)が 69、市が 78、郡が 82 自治体である。なお、本稿でいう「区 部」は区のみで構成されるソウル特別市と 6 つの広域市の区、「市部」は世せじ宗ょん特別自治市と郡で構成される 9 道 における市、「郡部」は 9 道の郡である。市部にも区は存在するが、本稿では 9 道にある区は市部に含めている。 19)ただ、日本では居宅サービスに分類されている認知症対応型共同生活介護が韓国では介護保険施設に分類さ れているので単純比較はできない。ちなみに、老人療養共同生活家庭を除外した老人療養施設のみの 2009 年か ら 2015 年までの 8 年間の増加率は 173.1%である。 20)老人療養施設全体に占める複合ビル型老人療養施設の割合に関する公式なデータは存在しないが、関係者に 対する筆者のヒアリングによると、本稿執筆時点において大よそ 30%である。これまで複数回行ってきた筆者 の介護事業所の立地調査においても同様の状況が窺えた。 21)厚生労働省の「介護給付費等実態調査月報」によると、2000 年から 2018 年までの通所介護事業所の増加率は 538.8%である。 22)訪問看護事業所は、2 年以上の看護業務の経験がある看護師または 3 年以上の看護補助業務の経験があり訪間 看護補助師教育(700 時間)を受講した看護補助師を 1 人以上置かなければならない。また、口腔衛生を提供す る場合は歯科衛生士を 1 人以上置く必要がある。 23)このことは、筆者の拙稿である「韓国の長期療養保険制度の最新動向と課題」『共栄大学論集』第 14 号、 pp.1-37、2015 年においても論述したので、そちらもご参照されたい。 24)2018 年 12 月時点の 250 市区郡と 2009 年 12 月時点の 241 市区郡を 229 市区郡に再編して分析したところ、 2009 年 12 月時点において、訪問看護事業所が 1 か所もない自治体は 20 か所(自治体の 8.7%)であり、中山間 地域に当たる郡部(82 自治体)に限って言えば 17 か所(郡部の 20.7%)であった。2018 年 12 月時点において も事業所が 1 か所もない自治体は 20 か所のままであるので、訪問看護事業所の地域差は依然として解消されて いないと言える。ただ、郡部は 14 か所(郡部の 17.1%)に減っているので、僅かながら地域差が解消している と言えよう。
Regional Disparities of Long-Term Care Services in South Korea
Hyeon-Kyu SEON
Abstract
The purpose of this study is to clarify the regional differences in the availability of long-term care
service providers and the current status of its expansion and contraction in South Korea.
This study reveals the rate of increase in numbers of 1) long-term care providers in South Korea is
slower than that of Japan. 2) The rate of increase of long-term care insurance-certified facilities is
higher than that of home care providers. 3) While larger cities have a fewer number of long-term care
insurance-certified facilities, mountainous regions have a fewer number of home care providers. 4)
South Korea is highly dependent on home care services. 5) About half of the long-term care providers
are concentrated in metropolitan areas. 6) Regional differences in availability of long-term care
insurance-certified facilities are greater than that of home care providers. 7) Although, regional
differences in the availability of adult day care providers are being resolved, those of home health
providers have not yet been resolved. 8) Regional differences in the availability of nurse’s aides are
greater whereas that of dental hygienists are lesser. 9) The number of employees has an impact on the
availability of long-term care services. This study shows the benefits of long-term care beneficiaries
and the regional differences in the availability of long-term care services are unbalanced and political
support to limit and reduce the regional differences is strongly required.
Keywords