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東アジア経済の共変関係について 利用統計を見る

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(1)

東アジア経済の共変関係について

著者

千明 誠

著者別名

Chigira Makoto

雑誌名

経済論集

25

2

ページ

79-90

発行年

2000-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005405/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

東アジア経済の共変関係について

千 明

1.はじめに 2.マクロ共変関係と相互依存関係の深化 3.実証分析 4.おわりに

1

.

はじめに

東アジア経済は「世界の成長センター」として, 1980年代, 90年代前半の世界経済の牽引車の役 割を果たしてきた。 "1995Repo口onthe APEC Regional Economy" によれば,東アジア経済の経済成 長率は 1986年から 95年の平均で約6.0%で, A P E C全体の約3.6%を大きく上回っている。東アジ アには日本も含まれるので,上記のデータには92年以降の日本の長期不況が影響しているが,仮に 臼本を除いた東アジア経済を考えればその経済成長率はさらに高いことがわかる。 そうした高い経済成長の中で,東アジア経済を含むアジア・太平洋地域の相互依存関係は一層の 深化を見せた。この相互依存関係の深化は IA P E Cの高い経済成長の結果であると同時に,高い 経済成長をもたらす原因でもあった」といわれている。 その後, 97年に起こったタイの通貨危機をきっかけとしたアジア通貨危機により,東アジア経済 の経済成長率は一時鈍化していたが,最近急速に回復しつつある。 河合・奥村(1996) はこうした A P E Cの相互依存関係の深化により,東アジア経済のマクロ経 済変数が相互にどのような相聞をもっているのか,その大きさを定量的に把握することを試みた。 その際,石油ショックや日米のマクロ経済ショックの影響を考慮し,それらの影響を除いた上で, 構造的 V A Rモデルによって推計された各国の需要・供給ショックの相関を求めた。また, Kawai and Chigira (1996) は分析を拡張し,対象国にオーストラリア,ニュージーランドを含め,共通 ショックとして

EU

の影響も考慮に入れ,さらにショックの性質についても供給・需要・名目の

3

種類のショックに分類してその相聞を求めた。これらの研究によれば,共通ショックの影響を除い 79

(3)

た後でも,東アジア経済のマクロ的な相互依存関係は依然として強いことがわかった。 しかし,これらの研究では東アジア経済のマクロ経済変数の高い相関がどのような相互依存関係 によってもたらされたのか,という点は分析を行っていない。経済的な相互依存関係の形態として は様々な形が考えられるが,とりわけ貿易を通じた関係と直接投資を通じた関係が重要であろう。 また,貿易を通じた関係が直接投資を誘発し,直接投資を通じた関係が貿易を誘発するといった貿 易と直接投資の相互連関も重要である。先に述べたAPECのレポートでも, APECの相互依存 関係の深化を貿易と直接投資の点から詳細に検討している。そこで,本稿の目的は東アジア経済の マクロ経済変数のうち,経済成長率の相聞がどのような相互依存関係の形態と関連しているか,と いう点を調べることにある。ただし,上述したように,貿易と直接投資は互いに関連があり,また その関連性も複雑であるために,本稿の分析結果からストレートにマクロ経済の相互依存関係が何 によってもたらされたのかを判断することには無理があるかもしれない。しかし,そうした問題に 答えるための第l歩として,本稿で行うような分析には意味があると考える。 次章以降の構成は次の通りである。 2章では,東アジア経済の経済成長率の相関と,経済的相互 依存関係の深化の実態をデータによって確認する。 3章では, 2章で示したデータを使って生産の 相闘がどのような経済的相互依存関係と関連が高いのか実証分析を行ない 得られた結果について いくつかの解釈を試みる。 4章では,まとめと今後の課題について述べる。

2

.

マクロ共変関係と相互依存関係の深化

まず,アメリカを含む日本,韓国,香港,台湾,シンガポール,インドネシア,マレーシア, フィリピン,タイ,中国の聞の経済成長率の相聞を確認しておこう。 表lは1971年から 93年の実質 GDP成長率の相関を示している。各国・地域間の相関係数の平均 は0.26,負の相関の存在を考慮して相関係数の絶対値をとった平均は0.33である。これらの値をも とにして,各国・地域聞の相関の特徴を以下に整理してみよう。 東アジア経済の各国・地域はアメリカ,日本との経済関係が深いので,両国との相関の特徴をま とめておこう。アメリカの経済成長率はフィリピンを除くすべての国・地域と正の相聞を示してい る。各国・地域との相関の平均は0.33であるが,韓国,香港,台湾,シンガポールのアジア N I E S諸国・地域に対しては平均0.50と高い相関を示し,特に韓国,香港,台湾との相闘が高い。イン ドネシア,マレーシア,フィリピン,タイのASEAN4諸国に対しては平均O.18と低い値を示し ている。日本の経済成長率は中国を除くすべての国・地域と正の相闘を示している。各国・地域と の相関の平均は0.30で,アジア NIES諸国・地域との平均は0.40と高いが,アメリカのそれより は低い。その中で特に香港,台湾,シンガポールとの相聞が高い。 ASEAN4諸国との相関は平 80

(4)

表1 実質 G D P成長率の相関 1971~93 年 米 国 日 本韓国香港台湾シンガポー}~インドネシアマレーシアフィリピンタイ 中 国 米 国 1.00 日 本 0.42 1.00 韓 国 0.45 0.30 1.00 香 港 0.58 0.35 0.29 1.00 台 湾 O. 73 0.59 0.43 0.76 1.00 シンガポール 0.25 0.36 0.00 0.43 0.39 1.00 インドネシア 0.27 0.30 0.10 0.48 0.38 0.58 1.00 マレーシア 0.22 0.24 0.12 0.43 0.24 O. 77 0.62 1.00 フィリピン 0.07 0.22 O. 15 0.33 0.24 0.49 0.42 0.42 1.00 タ イ 0.28 0.31 0.39 O. 16 0.23 0.26 0.20 0.44 0.32 1.00 中 国 0.20 0.11 0.06 0.19 0.06 O. 18 0.33 0.37 0.52 0.06 1.00 均0.27と低いが,アメリカのそれよりは高くなっている。日米の影響という点では,アジアNIE Sの方が ASEAN4より日米との相聞が高いこともわかる。 アジアNIESの各国・地域間では,韓国と香港,韓国とシンガポールの相聞を除いて,高い値 を示している。韓国は域内の相聞が他国・地域と比較して相対的に低い。香港・シンガポールは域 内だけでなくASEAN4諸国に対しでも高い相聞を示している。特にシンガポールは ASEAN 4諸国に対して平均0.53と,他のアジアNIES各国・地域との平均0.27を大きく上回る高い相関 を示している。しかし,シンガポール以外の各国・地域はアジアNIES域内の諸国・地域との相 関の方がASEAN4諸国との相関より高い。 ASEAN4各国間では,タイとインドネシア,タイとフィリピンの相関を除いて,高い相関を 示している。 ASEAN4の国々でも,シンガボールとの相聞が高いにもかかわず, ASEAN4 諸国との相関の方がアジアNIES諸国・地域との相関より高い。 中国はアメリカとタイを除くすべての国・地域と負の相聞を示している。その大きさはアジアN 1 E S諸国・地域との相関が平均 O.13, A S E A N 4諸国との相聞は平均 0.29となり,負の相 聞の程度はASEAN4諸国との方が大きい。 次に,東アジア経済の相互依存関係の実態について見てみよう。先に述べたように,相互依存関 係としては様々な形態が考えられるが,ここでは貿易と直接投資に対象をしぼって考察する。東ア ジア各国・地域の貿易依存度はこの20年間に大幅な高まりを示した。 1975年の全輸出のGDP比は 38.1% (タイ,中国を除く),全輸入のG D P比は44.0%(中国を除く)に対し, 90年のそれは 55.5%, 56.1%でそれぞれ大きく上昇している。これに伴い東アジア域内の貿易依存度,および地 域内貿易構造も大きく変化している。 表2は地域内輸出構造の1991年から93年の平均を表したものである。表の値は,各列の国・地域 (輸出側)の輸出に占める各行の国・地域(輸入側)の割合をパーセントで示したものである。例 81

(5)

えば,アメリカの輸出に占める日本の割合は11%であり,日本の輸出に占めるアメリカの割合は 29%である。他の条件が一定ならば,輸出の増加による総需要の増加は輸出国・地域の生産を拡大 させるので,この値は需要面を通じた相互依存関係の大きさを表す指標のーっと考えられる。すな わち,上のデータに即して言えば,輸出市場という需要面からの役割としては,アメリカの日本へ の依存度よりも日本のアメリカへの依存度の方が大きい。 東アジア経済にとって輸出市場としてのアメリカの役割は非常に大きく,輸出先に占めるアメリ カの割合は平均22.9%にも達する。一番依存度が高いのがフィリピンの38%で,次いで日本,台湾 の29%となっている。アジアN I E SとASEAN4を比較すると,平均して考えると24%と23% であまり遣いはないが,フィリピンを除いて考えればアジアN I E Sの方がA S E A N 4よりアメ リカへの依存度が高いといえる。 表2 地域間輸出構造 1991~93年平均 米 国 日 本韓国香港台湾シンガポールインド平シアマレーシアフィリピンタ イ 中 国 米 国 29.00 24.00 23.00 29.00 20.00 13.00 19.00 38.00 22.00 12.00 日 本 11.00 15.00 5.00 11.00 8.00 33.00 14.00 18.00 18.00 15.00 韓 国 3.00 6.00 2.00 2.00 2.00 6.00 4.00 2.00 1.00 3.00 香 港 1.00 6.00 7.00 19.00 8.00 2.00 4.00 5.00 5.00 38.00 台 湾 2.00 6.00 3.00 3.00 5.00 4.00 3.00 3.00 2.00 1.00 シンガポール 2.00 4.00 4.00 3.00 3.00 9.00 23.00 3.00 10.00 3.00 インドネシア 1.00 2.00 2.00 1.00 2.00 0.00 1.00 0.00 1.00 1.00 マレーシア 1.00 2.00 2.00 1.00 2.00 14.00 1.00 1.00 3.00 1.00 フィリピン 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 0.00 0.00 タ イ 0.00 3.00 2.00 1.00 2.00 6.00 1.00 3.00 2.00 1.00 中 国 1.00 4.00 4.00 30.00 0.00 2.00 4.00 2.00 1.00 1.00 出典) 1995Report on the APEC Regional Economy " 注) 値は各列の国・地域の全輸出に占める各行の国・地域の割合。単位は%。例,米国の輸出に占める 日本の割合は11%。 値のうち0.00は1%未満ないしゼロの場合。 日本の輸出市場としての役割は,東アジア全体の平均では15.22%でアメリカより低い。また, アジアN I E Sの平均が9.75 %, A S E A N 4の平均が20.75%であることから,アジアN I E S にとって日本の役割は小さく, A S E A N 4にとってはアメリカと同程度の重要性を持っている。 アジアN I E Sや A S E A N 4の役割はどうであろうか。アジアN I E Sの国・地域にとってア ジアN I E Sの割合は平均15.25%で日本を上回り, A S E A N 4の割合は平均9.75%で日本と等 しくなっている。同様に, A S E A N 4諸国にとってアジアN I E Sの割合は21.5%でアメリカ, 日本にほぼ匹敵し, A S E A N 4の割合は3.75%である。また,日本にとってのアジアN I E Sの 割合は22%,A S E A N 4の割合は8 %である。 これらの値から,東アジア経済にとって輸出市場の重要性としては,第ーにアメリカ,次いでア ジアN 1 E S,日本の順になる。特に,東アジア域内のみを対象にして考えれば,アジアN I E S

(6)

-82-の役割が非常に重要であることがわかる。 表 3は地域内輸入構造の 1991年から 93年の平均を表したものである。表の値は,前の表と同様に 各列の国・地域(輸入側)の輸入に占める各行の国・地域(輸出側)の割合をパーセントで示した ものである。 表3 地域間輸入構造 1991~93年平均 米 国 日 本韓国香港台湾シンガポールインドネシアマレーシアフィリピンタイ 中 国 米 国 23.00 22.00 8.00 22.00 16.00 13.00 16.00 20.00 11.00 11.00 日 本 18.00 24.00 16.00 30.00 21.00 23.00 27.00 21.00 30.00 18.00 韓 国 3.00 5.00 4.00 3.00 3.00 7.00 3.00 5.00 4.00 3.00 香 港 2.00 1.00 1.00 2.00 3.00 1.00 2.00 5.00 1.00 21.00 台 湾 5.00 4.00 2.00 9.00 4.00 5.00 5.00 6.00 5.00 8.00 シンガポール 2.00 1.00 2.00 4.00 2.00 6.00 16.00 4.00 7.00 2.00 インドネシア 1.00 5.00 3.00 1.00 2.00 0.00 2.00 2.00 1.00 2.00 マレーシア 2.00 3.00 2.00 1.00 2.00 15.00 2.00 2.00 4.00 1.00 フィリピン 1.00 1.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 1.00 0.00 0.00 タ イ 1.00 3.00 1.00 1.00 1.00 4.00 1.00 2.00 1.00 1.00 中 国 5.00 7.00 4.00 36.00 1.00 3.00 3.00 2.00 1.00 3.00 出典) “1995 Report on the APEC Regional Economy " 注) f直は各列の国・地域の全輸入に占める各行の国・地域の割合。単位は%。例,米国の輸入に占 める日本の割合は 18%。 値のうち 0.00は 1%未満ないしゼロの場合。 輸出の場合と同様に,東アジア各国,地域にとって輸入先としてもアメリカ,日本の役割は大き い。しかし,その割合は輸出の場合とは逆に日本がアメリカを上回っている。輸入先に占める日本 の割合は平均23.33%であるのに対し,アメリカの割合は平均 16.2%と日本を大きく下回っている。 日本への依存度が最も高いのが台湾,タイで30%,次いでマレーシア 27%,韓国24%の順である。 アジア

NIES

ASEAN4

を比較すると,日本の割合はアジア

NIES

で平均22.75%,

A

S

EAN4

で平均25.25%,アメリカの割合はそれぞれ 17%と15%で,どちらも日本がアメリカを上 回っている。ただし,アジア

NIES

のアメリカへの依存度は

ASEAN4

のそれを上回り,

AS

EAN4

の日本への依存度はアジア

NIES

のそれを上回っている。したがって,どちらの地域も アメリカより日本の役割の方が大きいが,相対的にアジア

NIES

はアメリカとの関係が,

ASE

AN4

は日本との関係がより密接である。 アジア

NIES

の同域内に対する平均は9.75%,

ASEAN4

に対しては8.25%である。一方,

ASEAN4

の同域内に対する平均は4.5%,アジア

NIES

に対しては20.5%である。輸出面で はアジア

NIES

諸国・地域は互いに依存度が高かったが,輸入面ではさほど高くない。これはこ の地域にとって日本,アメリカからの輸入量が大きいためである。

ASEAN4

にとっては輸入面 からもアジア

NIES

の役割は大きい。これらの値から輸入先としては,アジア

NIES

にとって 83

(7)

は日本,アメリカが重要であり, ASEAN4にとっては日本,アジアN 1 E S,アメリカが重要 であることが明らかになった。 次に直接投資による関係を見てみよう。 1980年以降の東アジア経済全体でみた対外直接投資は10 年間で10倍以上に拡大し,対内直接投資もおよそ7倍に拡大した。表4は, 1992年時点の累積ベー スでみた対外直接投資を示している。表の値は,各列の国・地域(投資国)からの直接投資に占め る各行の国・地域(受入国)の割合をパーセントで示したものである。この表は各国・地域からの 直接投資にとってどの受入国・地域が重要であるかを表している。 国 本 国 港 湾 米 日 韓 香 台 シンガポール インドネシア マレーシア フィリピシ タ イ 中 国 出典) 注) 米 国 日 本 42.01 5.33 0.57 1.20 1.75 2.98 0.58 0.89 1.35 0.90 0.32 0.35 0.52 0.10 表4 対外直接投資(累積ベース) 1992年 韓 国 香 港 台 湾シ;ガポールインドネシアマレーシアフィリピン 28.84 4.34 31.76 8.96 4.24 3.47 7.78 1.88 1.45 0.31 0.43 0.38

o

.

33 O. 06 O. 37 O. 02 O. 07 1.83 0.07 17.20 0.38 0.13 9.22 0.20 4.19 1.97 2.20 7.18 57.27 タ イ 中 国 35.32 12.94 0.57 0.68 0.45 29.41 51.57 0.30 12.83 3.02 1.11 0.01 6.59 11.05 2.03 3. 73 1.25 0.50 1.52 1.16 0.58 15. 15 3.23 2.38 2.23 6.44 4.96 12.35 1.73 0.62 4.51 54.87 1.63 5.21 17.03 4.30 7.18 0.0

1.57 64.16 6.20 10.46 1.69 5.07 0.80 5.01 2.09 2.91 1.85 22.08 0.60 2.58 1.59 34.52 O. 70 1.08 0.56 2.20 1.41 “1995Report on the APEC Regional Economy .. f直は各3日jの国・地域(投資国)の全直接投資に占める各行の国・地域(受入国)の割合。単位は%。 例,米国の対外直接投資に占める日本の害JI合は5.33%。 印はデータ入手が不可能であった。 受入国としての日本の割合は,東アジア諸国・地域の平均で0.81%,最も高い韓国でさえ1.88% と非常に低い。アジアN I E SとA S E A N 4に分けると,それぞれ1.02%,0.48%でアジアN I E Sの方が高い。アメ1)カの割合は日本 (42%),タイ (35%),台湾 (32%),韓国 (29%)で高 く,こちらもアジアN I E SとA S E A N 4に分けるとアジアN I E Sの方が高い。 アジアN I E Sの割合は,マレーシアにとってのシンガポール (64%),フィリピンにとっての 台湾 (57%),タイにとっての香港 (29%)などの影響のために, A S E A N 4にとって平均 48.8%と最大の受入地域となっている。また,アジアN I E Sにとって自身の割合は平均8.35%で 貿易の場合と違って低い。日本にとってその割合は7.1%で次に述べるA S E A N 4とほぼ同じ大 きさである。アメリカにとってはA S E A N 4の2倍の割合を占めるが,それでも4.25%と低い。 ASEAN4の割合はアジアN I E Sで高く平均25.8%である。その理由は,韓国,香港はイン ドネシアへの直接投資の割合が高く,台湾,シンガポールはマレーシアへの割合が高いためである。 A S E A N 4自身の割合は,インドネシアにとってのマレーシア (34.5%)が高いため,平均する

(8)

-84-と14%になる。

香港と中国は相

E

にその割合が50%を超えるほどつながりが強い。

これらの値から,直接投資の受入国について,日本にとってはアメリカが,アジア

NIES

に とっては

ASEAN

4

,アメリカが,

ASEAN4

にとってはアジア

NIES

が重要であることが わかる。また,香港と中国は相互に受入国として大きな役割を担っている。日本は,貿易の場合と 違って,受入国としての重要性は非常に低い。 表5は, 1992年時点の累積ベースでみた対内直接投資を示している。表の値は,各列の国・地域 (受入国)への直接投資に占める各行の国・地域(投資国)の割合をパーセントで示したものであ る。この表は各国・地域への直接投資にとってどの投資国・地域が重要であるかを表している。 投資国としての日本の割合は,受入国としてのそれとは違い,全体の平均で27%と最も高い。特 に,韓国 (43%),香港 (40%),タイ (34%),台湾 (29%)で高く,アジア

NIES

平均が34%,

ASEAN4

平均が24%と、アジア

NIES

での割合が高い。アメリカの割合も全体の平均が23%, アジア

NIES

平均が25%,

AS

EAN

4

平均が20%と,こちらもアジア

NIES

の方が高い。

表5 対内直接投資(累積ベース) 1992年 米 国 日 本韓国香港台湾シンガポールインドネシアマレーシアフィリピンタ イ 中 国 米 国 I 41.87 日 本 I 22.92 韓 国

I

0.19 0.14 香 港 I 0.43 2.28 台 湾

I

0.26 0.15 シンガポールI0.21 0.16 インドネシアI0.02 0.03 マレーシアI0.02 フィリピンI0.02 タ イ I 0.04 中 国 I 0.03 0.03 q υ ヴ d q L 1 A 8 T 1 i つ ゐ ヴ t 1 i n u A U q L q L ' l p o ' i Q u n 4 Q u q 4 •••••••••• ウ t q u n u c o n U ハ リ η δ n u n U A U 旬i n L -弓 d η 4 1 A ヴ t n J 今 ふ っ L q u つ ο 1 9 1 7 4 3 9 0 2 •••••••• 勺 4 0 0 n u n u d せ ハ U A U 勺 O ハ u q L ワ & 1 i q d a u G u t -T A η 3 1 i Q u n d 勾 d poqd 内 d n u F b n u Q V ワ U 7 e a u -nunU ハu n u n h u ハ U ハu n u n U 胃 I n ぺ υ a 斗 ‘ ρ h u ワ 4 ウ a n 4 d F h υ 冒 I ρ h u -T i a υ 1 i G u n u n u . . . , . . . 6 3 1 0 0 0 0 2 4 4.31 20.74 4. 70 8.31 6.25 3.27 0.21 0.02 O. 15 9.04 47.41 17.29 9.29 21.57 21.04 34.02 11.89 3.31 1.61 0.54 0.32 3.25 6.58 15.39 60.96 17.11 0.90 6.77 4.00 10.40 0.95 8.50 1.10 3.64 0.14 0.07 0.29 0.37 0.08 0.20 0.06 0.11 0.29 0.47 0.51 0.17 出典) “1995 Repo口on出eAPEC Regional Economy " 注) 値は各列の国・地域(受入国)への全直接投資に占める各行の国・地域(投資国)の割合。 単位は%。伊U,米国の対内直接投資に占める日本の割合は22.92%。 印はデータ入手が不可能であった。 アジア

NIES

の割合は,韓国 (2.5%),シンガポール (6.5%),香港 (6.9%)で低いため, アジア

NIES

自身にとっては平均7.8%と低い。これはアジア

NIES

に対しては日本,アメリ カなど先進国からの直接投資が多額なためである。他方,

ASEAN4

にとってその割合は平均 24.5%と日本を上回り,最大となっている。

ASEAN4

の割合はどの国・地域にとっても非常に小さい。 F h u o o

(9)

これらの値から,投資国としては,日本にとってはアメリカが,アジア

NIES

にとっては日本, アメリカが,

ASEAN4

にとってはアジア

NI

E

S

,日本,アメリカが重要であり, i雁 行 形 態Jと呼ばれる地域聞の経済関係と関連する関係を読みとることができる。

3

.

実証分析

(1 ) 実証モデル 本章では,前章で確認した東アジア経済における成長率の共変関係が どのような経済的相互依 存関係の形態と関連しているかという点について検討する。我々の考え方は非常に単純である。成 長率の共変関係はすべての国・地域に影響を与える共通ショックと各国・地域間の輸出,輸入,対 外直接投資,対内直接投資による関係を通じて生じると考える。例えは,共通ショックとしては原 油価格の変動がある。本稿で分析の対象とした東アジア諸国・地域は輸入原油に大きく依存してい るため,原油価格の高騰は成長率の低下を招き,各国・地域の成長率の共変関係を生じさせる。 したがって,我々が推定すべきモデルは,以下の式で表される線形連立方程式モデルとなる。 y'tB+x'tC=u't (

-

) Ytは各国・地域の成長率からなる成長率ベクトル,'"は定数項要因 (=1) と共通ショックから なる共通ショックベクトル, u,は各国・地域の援乱項からなる撹乱項ベクトルである。 Bは各国・ 地域間の相互依存関係により生じる関係を表す行列である。 Cは定数項と共通ショックが各国・地 域の成長率に与える影響を表すパラメータ行列である。 上で述べたように,相互依存関係は輸出,輸入,対外直接投資,対内直接投資を通じて形成され る。そこで,我々は行列Bを次のように仮定する。

B=I+b1XEX十b2XIM+b3XFDI +b4XDDI (2)

Iは単位行列, EX, 1M, FDI, DDIは対角要素をゼロとする。

EXは輸出による関係を表す行列で, [i, kJ要素は k国・地域の輸出に占める i国・地域の割合を 表している。 1Mは輸入による関係を表す行列で, [i, kJ要素は k国・地域の輸入に占める i国・地 域の割合を表している。 FDIは対外直接投資による関係を表す行列で, [i, kJ要素は k国・地域か ら海外への直接投資に占める i国・地域の割合を表している。 DDIは対内直接投資による関係を表 す行列で, [i, kJ要素は海外から k国・地域への直接投資に占めるi国・地域の割合を表している。 EXは輸出先の成長率の変化が輸出を通じて輸出元の国・地域の成長に影響を与えるというルート を, I Mは輸入元の成長率の変化が輸入を通じて輸入国・地域の成長に影響を与えるというルート n h u o o

(10)

を表し,それぞれ貿易を通じたり[[上」と r}[[下」への影響を表していると考えられる。(注1)同様 に, FDIは直接投資先(ホスト国・地域)の成長率の変化が投資国・地域の成長に影響を与えると いうルートを, DDIは投資元の成長率の変化が投資先であるホスト国・地域の成長に影響を与え るというルートを表し,直接投資を通じたり[[上」と「川下」への影響を表していると考えられる。 分析の対象とする国・地域は日本,韓国,香港,台湾,シンガポール,インドネシア,マレーシ ア,フィリピン,タイ,中国の10カ国である。これらの国・地域は輸入原油に大きく依存している 点と,アメリカとの関係が深い点から,共通ショックとしてはアメリカの卸売物価指数でデフレー トした実質世界原油価格の変化率,アメリカの実質GDP成長率,各国・地域の対ドル実質為替 レート変化率を用いることにした。 使用するデータは台湾を除いてIMFのIntemationalFinancial Statisticsより求め,サンプル期間 は1970年から94年とした。行列Bに関するデータは 2章で示した APECの報告書のデータを用い ることにした。 我々は, (1), (2)で表される連立方程式モデルのパラメータ b,から b4を推定することで,各 国・地域間の成長率の共変関係がどのような相互依存関係の形態(ルート)から影響を受けている のか検討する。推定方法は各国・地域の撹乱項が系列相関を持つことを想定してGMMで推定を行 うことにした。 (2) 実証結果 パラメータb,から b4の推定結果は表6にまとめられている。その結果,輸入関係を表す1Mのパ ラメータb2が1.177で5 %有意水準で有意となり,対内直接投資の関係を表すDDIのパラメータ b4 が-0.453で10%有意水準で有意となることがわかった。ここから,東アジア諸国・地域間の経済 成長率の共変関係は,輸入と対内直接投資を通じた相互依存関係と関連が高いといえる。 表6 bの推定結果 b

bz b3 b4 推 定 値 0.110 1.177 ー0.118 0.453 標準誤差 (0.364) (0.341) (0.153) (0.261)

*

*

本 注) 林は5%. *は10%の有意水準で有意。 貿易を通じた相互依存関係について考えてみよう。上の結果は,ある国・地域の経済成長率は輸 出先ではなく輸入元の国・地域の成長率と関連し,それは正の共変関係をもたらすというものであ 1) Shea(1995)は園内の産業問で共変関係が生じるメカニズムについて検討している。その中で産業連関表によって表現さ れ る りI[上j効 果 と りI[下j効果が分析対象の一部となっている。

(11)

-87-る。前章で述べたように,東アジア諸国・地域の最大の輸入元は日本である。日本を除く各国・地 域にとって全輸入に占める日本の割合は平均

23.3%

,東アジア地域からの輸入に占める割合で見る と平均

46%

で,この地域からの輸入の約半分が日本からの輸入である。

1

9

9

3

年の日本の輸出の品目 構成を見ると

57.6%

が資本財である。また, ASEAN4各国はアジア NIESからの輸入の割合 も高く,東アジア地域からの輸入の約4割がアジア NIESからのもので,そのうち台湾の輸出の 4割は資本財の輸出である。一方,輸入の品目構成を見ると,台湾,フィリピン,タイの輸入の約 4割が資本財の輸入である。{註2)これらの事実から判断して,輸入を通じた共変関係においては資 本財に体化された形での技術伝播が重要な役割を演じている可能性が高いと考えられる。すなわち, 輸入元の国・地域,あるいは企業で生じた生産性ショックは資本財に体化された形で輸入を通じて 輸入側の国・地域に同様な生産性ショックをもたらす。これは川上から川下への財を通じた技術伝 播と言えるだろう。仮に,輸入国の成長が輸入の増加を通じ需要面から輸入元の国・地域の成長に 影響を与えるという需要面の連関も想定できるが,その場合には

EX

で表される輸出行列のパラ メータが有意になるはずであるが,そのような結果は得られなかった。 また,直接投資を通じた相互依存関係について上の結果は,ある国・地域の成長率は自身が投資 した投資先のホスト国・地域ではなく,自身が投資を受け入れた投資元の国・地域の成長率と関連 し,それは負の共変関係をもたらすというものである。直接投資とは技術知識や経営ノウハウなど の「経営資源」の移転と考えられる。{注3)直接投資を行う理由については市場確保,低コスト追求, 貿易摩擦回避など様々な理由があげられる。このうち,低コスト追求型の直接投資により企業は国 際的な生産のネットワークを形成し,本国,投資先を含めた各国・地域のコスト条件を考慮して最 適な生産の配分を行うことが可能になる。多くの研究が指摘しているように,日本の東アジア向け 直接投資は低コスト追求型の投資が多くを占めていると考えることができる。輸入の場合と同様に, 東アジア経済において日本からの直接投資の役割は大きい。前章で述べたように,他の東アジア各 国・地域への直接投資に占める日本の割合は平均

27%

で,日本はこの地域の最大の投資元となって いる。また, ASEAN4にとってはアジア NIESからの直接投資も平均

24.5%

と大きな割合を 占めている。

1

9

8

5

年以降の円高によって,日本と東アジアとの相対的なコスト関係は大きく変化し, それまで以上に低コスト追求型の直接投資が増加した。こうした日本企業の生産拠点の移動により 成長率の負の共変関係が生じたものと思われる。なお,明確な資料はないが,アジアNIESから ASEAN4向けの直接投資についても同様なメカニズムが働いたと考えられるのではないだろう か。 以上のように,東アジア経済の成長率の共変関係は,輸入元や直接投資元の国・地域の企業行動 2)輸出・輸入の品目構成については,すべての国・地域についてデ タを入手することができなかった。 3) 例えば,小宮(1975)を参照せよ。

(12)

88-の役割が重要である。また,輸入,直接投資のどちらのルートも供給面の要因により生じていると 言える。

4.

おわりに

本稿では,東アジア経済の共変関係について,どのような経済的相互依存関係が共変関係を生じ させる要因となっているのか分析を行った。その結果,東アジア諸国・地域の成長率は輸入元,お よび直接投資母国の成長率と関係が強く,輸入元とは正の,直接投資母国とは負の共変関係が成立 することがわかった。このことは,貿易や直接投資の国・地域別割合から判断して,東アジア地域 では先に工業化に乗り出した国・地域の経済が貿易や直接投資を通じて後発の途上国経済に影響を 与えるというメカニズムが成立していることを意味する。これは,需要面を通じた関係よりも,資 本財の輸入や企業の生産拠点の移動など有形・無形の技術伝播による供給面を通じた関係の役割が 大きいことを示唆していると考えられる。 以上の結論をもとに,東アジア経済の今後にとってのインプリケーションを考えてみよう。まず, 東アジア経済全体にとって日本経済の回復は重要である。それは,日本の景気回復が東アジア地域 に日本への輸出需要の増加をもたらすという点よりも,むしろ日本経済の構造改革による技術革新 や生産性の上昇という点で重要である。日本経済の構造改革は日本企業の生産ネットワークを東ア ジア地域に一層拡張していくことにつながり,相互依存関係の一層の強化をもたらすだろう。 また,東アジア経済にとってアメリカ経済は日本と同様な役割を演じている。(注4)日本経済の構 造改革が遅れると,東アジア各国・地域にとって日本経済の相対的地位は弱まり,かわってアメリ カ経済との相互依存関係の強化が進行していく可能性もある。更に.

ASEAN4

に対するアジア

NIES

の役割も今後益々大きくなっていくと思われる。日本がこれからもアジア経済の中で現在 と同程度,あるいはそれ以上の役割を演じていくためにも,経済構造改革は急務な課題であるとい える。 これまで,いくつかの東アジア諸国・地域にとって中国との関係は政治的な理由によJり制限され ていた側面が強い。今後,中国の世界貿易機関

(WTO)

への加盟により,中国との経済関係は一 層拡大していくと予想されるが,このことは東アジア諸国・地域の経済相互依存関係を通じたダイ ナミックな経済成長を促進していく大きな要因として作用するであろう。 最後に,本稿の問題点と今後の課題について若干述べておこう。本稿の分析はサンプル期間とし てアジア通貨危機以前を対象としている。これは,通貨危機による混乱の影響を除き,過去

2

0

年間 4) アメリカを加えて地域を拡張して実証分析を行った結果,本稿と同僚に輸入と対内直接投資のパラメータが優位で,符 号も本稿の結論と同じになった。したがって,アメリカとの相互依存関係の大きさを考えると,アメリカは日本と向織 な役割を演じていると結論できる。

(13)

-89-に東アジアで形成されてきた関係に焦点を当てるためである。ただし,相互依存関係を表すデータ の時期によって結論が影響を受ける可能性がある。本稿では 1990年代初めに成立していた関係を用 いて分析を行っているが,今後は全期間の平均などを用いて再検討する必要があるかもしれない。 また,相互依存関係としては貿易や直接投資などの直接的なもの以外にも様々なものが考えられる。 そうした要因も含めた分析の拡張が今後の課題である。 【参考文献】 河合正弘・奥村綱雄 「東アジア地域におけるマクロ経済的相互依存」 河合正弘編著『アジアの 金融・資本市場』 日本経済新聞社(1996)。 小宮隆太郎 『現代日本経済研究』 畠中道雄 『計量経済学の方法』 東京大学出版会(1975)。 倉JI文社(1991)。 和 合 肇 ・ 伴 金 美 WT S Pに よ る 経 済 デ ー タ の 分 析 第 2版」 東京大学出版会(1995)。 APEC, 1995 Report on the APEC Regional Econom

y

.

(1995).

Greene, Wi11iam H円 EconometricAnalysis 3rd ed..Prentice Hal1(1997).

Kawai, Masahiro and Makoto Chigir,a"Intemationa1 Interdependence of Macroeconomic Shocks:An

EmpiricalAnalysis of the East Asian Economies," mimeo (1997).

She John, ,a "Complementarities and Comovements," NBER Working Paper 5305 (1995).

U

Q d

表 1 実質 G D P 成長率の相関 1 9 7 1   ~93 年 米 国 日 本韓国香港台湾シンガポー}~インドネシアマレーシアフィリピンタイ 中 国 米 国 1 .  0 0  日 本 0
表 5 対内直接投資(累積ベース) 1 9 9 2 年 米 国 日 本韓国香港台湾シンガポールインドネシアマレーシアフィリピンタ イ 中 国 米 国 I  4 1 .  8 7  日 本 I  2 2

参照

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