主要な研究成果
背 景
水力構造物の周辺斜面の維持管理に利用される地質構造や地形調査結果、動態計測の結果などの地盤情報は、
当該構造物に関係する各店所で個別に管理されていることが多い。そのため、斜面の安定に関する問題が生じ
てから解決するまでに多大な労力と時間が必要とされる.効率的な斜面の対策や維持管理を行うためには、こ
れらの地盤情報を一元化するとともに、ネットワーク上でデータ分析し、斜面の安定性を評価する維持管理支
援システムが必要である。このため地質構造や地形などのデータベースとして汎用的に利用されている地理情
報システム(GIS)上で、データの管理と分析、安定性評価を可能にするツールの開発が必要である。
目 的
既設構造物周辺斜面の維持管理を対象として、地盤情報を一元管理することのできる GIS を用いて合理的に
分析・評価できるシステムを開発し、その機能の適用性を、実斜面を例に検証する。
主な成果
1.GISを用いた斜面維持管理支援システムに用いるツールの開発
斜面の維持管理の段階(点検、計測、安定性評価)に応じて整理できる地盤の情報は、位置と地盤の変状
などの属性からなる空間情報である。空間情報は地図(マップ)として表現可能であり、GIS に構築される
データベース(DB)により一元化できる。そこで、維持管理の段階に応じた空間情報を整理する既往の
データ管理や支援ツールを調査した結果、個別の段階でマップを作成するツールはあるが有効に活用されて
いないこと、さらに各々を一元管理できていないことが分かった。そこで、地盤情報の一元管理に必要な次
のツールを開発した(図 1)。
1)斜面の点検記録や調査結果などの地盤情報と、地表面や地中の変位などの計測情報を蓄積する DB およ
び DB による変状マップ。
2)斜面の複雑な動きを反映した変位などの計測情報から、斜面に卓越する動きを主成分分析によって把握
する全体挙動分析ツール及びそれによる全体挙動マップ。
3)数値解析による斜面の安定性評価をもとに変形・危険度マップを作り、GIS 上に総合的に表示できる可
視化ツール。
2.GISを用いた斜面維持管理支援システムの機能検証
開発したツールを備える斜面維持管理支援システムを既設水力構造物周辺の斜面に適用し、維持管理段階
に応じたマップの作成により各々のツールの機能を検証した。従来、個別管理されていた各々のマップの重
ね併せによる分析が可能であることが分かった。これにより、維持管理の段階に得られた地盤情報の妥当性
の検討や、新たな計測・点検箇所などの検討が容易となり、維持管理の迅速化や効率化が期待できる(図 2)。
今後の展開
インターネットや LAN などの環境と融合させ、既設の構造物周辺の斜面や地盤の維持管理システムとして
の合理的な運用を図る。
主担当者 地球工学研究所 地圏科学領域 主任研究員 小早川 博亮
関連報告書 「GIS を用いた斜面維持管理支援システムの開発と既設構造物周辺斜面への適用」電力中央
研究所報告: N06029(2007 年 6 月)
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GISを用いた既設構造物周辺斜面の
維持管理支援システムの開発
9.電力施設建設・保全
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変状マップと斜面の全体挙動マップの重ね合わせ
図1 GISを用いた斜面維持管理支援システムの概念図
本システムはGIS上で稼動するデータベース、全体挙動データの分析、安定性評価の3つのツールからな
り、それらを用いて維持管理の段階(点検、計測、安定性評価)に応じた変状MAP、斜面の全体挙動
MAP、安全率MAPを作成することができる。
全体挙動マップと解析結果の重ね合わせ
図2 GISを用いた斜面維持管理支援システムの維持管理への適用事例
3つのツールから作成したマップを重ね合わせて維持管理に適用することで、迅速化、効率化が期待できる。
要素安全率と全体挙動マップの重ね合わせ:
安全率が低い箇所と変位の大きい箇所との関
係が把握できる。
せん断ひずみと全体挙動マップの重ね合わせ:
ひずみの集中箇所と計測による変位の大きい箇
所との関係が把握できる。
・解析結果の妥当性検討
・危険箇所の特定
・新たな計測位置の検討 等
・点検箇所、計測箇所、の妥当性検討
・新たな計測位置や点検箇所の検討
観察・計測・安定性評価結果
の一元管理による
維持管理の迅速化・効率化