離島・僻地の在宅療養支援におけるアドバンス・ケア・プランニングの実態と課題
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(2) 要. 約. 離島・僻地という、医療資源の少ない地域の ACP の実態と課題について明らかにする。 離島・僻地のケアを担う看護師や介護・福祉職 13 名にインタビュー調査を行った(調査 1)。 また、在宅療養支援を行う医師・訪問看護師、地域包括支援センターの保健師、社会福祉士、 介護支援専門員、各 400 名を対象に郵送法による質問紙調査を行った。調査内容は、基本 属性の他に、担当地域の人口区分・地域区分、終末期ケアの実施状況、終末期ケアシステム の現状、ACP 研修の現状、在宅での看取りを困難にする要因、多職種連携行動尺度につい てであった。人口区分・地域区分、職種間の比較を行い検討した(調査 2)。 調査 1 は、M-GTA を用いてインタビュー内容を分析した。コア概念である『離島・僻地 医療の現状と課題』 『離島・僻地での終末期への不安』 『ACP の受け止め方』 『住み慣れた地 域で最期まで過ごすための要素』、15 カテゴリー、55 サブカテゴリーが抽出された。離島・ 僻地は、過疎化、高齢化が進んでおり、家族形態の変化や医療や介護を支える慢性的な人材 不足があった。医療資源の衰退に対しては離島・僻地への医療サポートシステムや地域独自 の生活援助があり、介護士不足は【看護師の力量】や、 【地域の強み】によって支援されて いた。 『住み慣れた地域で最期まで過ごすための要素』は、 【地域の強み】 、 【信頼できる医師 の存在】 【看護師の力量】によって療養者や家族の【覚悟を支える】であった。ACP の実態 として【家族が決める】【まだ考えていない】 【自分らしく過ごす】と受け止めていた。 調査 2 では、505 名から回答が得られ、対象の 25%は『離島・僻地』であった。医師、 訪問看護師の 9 割以上、介護支援専門員(44.0%) 、社会福祉士(31.8%) 、保健師(24.1%) の順で過去 1 年間に終末期ケアの実践経験があった。また、患者〔利用者〕の終末期の過ご し方に対する思いを知る機会が「ある」割合は、医師(98.5%) 、訪問看護師(94.4%)、社 会福祉士(83.6%)で、保健師や介護支援専門員よりも高かった。休日夜間対応可能な医療 システムや介護システムが整っている割合は『離島・僻地』が低かった。ACP 研修会は、 医療・介護・福祉職向け研修会は 6 割以上、一般市民向け研修会は 5 割以上で「年に 1 回 以上」行われており、 『離島・僻地』の方が少なかった。在宅での看取りを困難にする要因 は、マンパワー不足、在宅医療システムや介護システムなどの終末期ケアシステムが構築で きないことであった。人口 5 万人未満と 5 万人以上の地域で境界があり、人口が少ないほ うが在宅の看取りが困難であった。しかし、人口 5 千人以下の『離島・僻地』では、マンパ ワー不足や 24 時間の支援体制構築は困難であるが、医師の在宅での看取りの関心が高く、 病院スタッフに在宅移行の視点が高いという特徴があった。 離島や僻地で最期まで過ごすためには、地域の医療資源の活用だけでは限界がある。本調 査で明らかになった『離島・僻地』の医師が、在宅での看取りへの関心が高いことや多職種 連携行動が高いことを活かすだけでなく、地域のニードを把握している専門職の活動に期 待したい。比較的元気なうちから“人生の最期をどう過ごしたいか”意思決定支援を行うこ と、<地域独自の生活支援サービス>や、住民の家族背景が手に取るようにわかる【地域の 強み】を活かした疾病予防、介護予防に着目してアプローチすることが必要である。. 1.
(3) Ⅰ.はじめに 医療資源が乏しい離島や僻地では、サービスを提供する人材の確保はもとより、人口が 集中していないことに起因する非効率性から、都市部と同じような多職種による手厚い 終末期ケアの提供は、非常に困難であると予測される。離島・僻地という、医療資源の少 ない地域の ACP に着目したところに本研究の独創性がある。離島や僻地など医療資源が 乏しい地域における在宅療養支援の現状、中でも、療養者自身の終末ケアに対する思いで ある、アドバンス・ケア・プランニングの実態と課題を明らかにすることを目的とする。 大きく 2 つの調査からなる(図Ⅰ-1 研究の枠組み) 。 地域の連携の特徴(強み、弱み)をふまえて、地域格差なく自分らしい終末期の在宅療 養支援を実現するための基礎的な資料となる。また、人口規模や交通アクセスなどの地域 特性や、在宅療養支援を行う医療・介護・福祉職の連携行動が ACP の現状にどのように 影響しているのか、それぞれの課題は何かを明らかにすることによって、地域や職種によ る ACP の実態と課題の特徴をふまえた自分らしい終末期の在宅療養支援を実現するため の基礎的な資料となる。. 離島・僻地の在宅療養支援における アドバンス・ケア・プランニングの実態と課題. 研究の枠組み. 【調査1】 インタビュ-調査. 【調査2】 質問紙調査. 対象:長崎県・愛知県の離島・僻地約5か所に勤務する 訪問看護師、介護職8~10名 目的:離島・僻地におけるACPの実態と課題を明らかにする. 対象:東京都・愛知県・長崎県で在宅療養支援に携わる 医療・介護・福祉職 2000名 目的:都市部と離島・僻地、職種によるACPの実態を比較 することで、地域や職種によるACPの実態と課題を明ら かにする. 交通アクセス・専門職の連携力 地域の強み・インフォーマル資源 研修システム・住民への広報. 交通アクセス・医療資源 在宅療養を支える専門職 地域の強み インフォーマル資源 研修システム・住民への広報. ACPの実態. ACPの課題. A~C 地域包括支援センター400か所 1200名. 療養者・家族の 思い. (A:社会福祉士、B:保健師、C:介護支援専門員各1名). ACPの 課題. ACPの実態. D 在宅療養支援に携わる医師 400名 E 訪問看護ステーション200か所 各2名 400名. 離島・僻地. 都市部. 離島・僻地 比較. 地域の強み・特徴を活かしたACP実践への示唆 住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられる 人生の最終段階における大切にしたい思いを伝える・共有する仕組み. 図Ⅰ-1 研究の枠組み. 2.
(4) Ⅱ.調査1について 離島・僻地における ACP の実態と課題(在宅療養支援を担うケア提供者の思い) 1.目的 離島や僻地で在宅療養を支援している訪問看護師や介護職の方にインタビューを行い、 どのように療養者の思いを汲み取り実現しているのか、ACP の実態と課題を明らかにす ることを目的とした。 2.方法 1)調査対象地域 長崎県及び愛知県各 3 か所、計 6 か所を対象とした。いずれも高齢化、過疎化が進み、 交通アクセスが良くない。 長崎県 離島 A(人口約 20,000 人 屈曲した海岸線が多く平坦地に乏しい) 僻地 B(人口 2000 人弱 隣接地域も訪問範囲である) 僻地 C(人口 2000 人前後 近隣離島も訪問範囲である) 愛知県 山間地指定 D(人口約 1,000 人) 山間地指定 E(人口約 3000 人) 僻地 F(人口 22,000 人 近隣 2 島も訪問範囲である) 2)対象者 長崎県 3 か所(看護師 5 名、介護・福祉職 3 名)、愛知県 3 か所(保健師 1 名、看 護師 2 名、介護職 2 名)合計 13 名 3)データ収集方法 インタビューガイドを用いた半構造的インタビューを実施した。インタビューガイド の内容は、担当地域での終末期の在宅療養支援の現状について、ACP について(地域住 民は終末期のことをどのように考えているのか) 、終末期ケアに対する地域のニードと地 域の強みについて、であった。インタビュー内容は録音の許可が得られなかった 1 名に ついては承諾を得てインタビュー中に内容を記録した。また、他の 12 名については研究 参加者の許可を得てインタビュー内容を録音した。 4)分析方法 本研究において離島・僻地住民は終末期の迎え方をどのように受け止め、住み慣れた地 域で最期まで過ごすためにはどのようなことが必要かという、住民の思いと在宅療養支 援プロセスに着目するために、木下1 の修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ 木下康仁,( 2003):グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践-質的研究への誘い, 弘文堂 1. 3.
(5) /Modified Grounded Theory Approach(M-GTA)を用いて分析した。 分析テーマを「離島や僻地で在宅療養を支援している訪問看護師や介護・福祉職がとら えた療養者の ACP に対する思い」、分析焦点者は「離島や僻地で在宅療養を支援してい る訪問看護師や介護・福祉職」として以下の手順で分析を行った。 分析手順 (1)インタビュー内容をもとに得られた質的データを逐語録にし、逐語録を何度も読 み返し、離島・僻地住民は終末期の迎え方をどのように受け止め、住み慣れた地域 で最期まで過ごすためにはどのようなことが必要か、着目する語句や表現(ヴァリ エーション)を見つけ出す。 (2)分析テーマ「離島や僻地で在宅療養を支援している訪問看護師や介護・福祉職が とらえた療養者の ACP に対する思い」に沿って、分析ワークシートを作成し、ヴ ァリエーションから概念を抽出する。 (3)抽出した概念をそれぞれカテゴリーに括る。その際、研究者間で概念を検討しな がら住民の思いと在宅療養支援プロセスに着目して概念化を洗練させる。 (4)各概念の関係性のプロセスを概念図に示し、ストーリーラインを完成させる。 5)倫理的配慮 研究対象者の所属長(訪問看護ステーション所長、居宅介護支援事業所所長 等)に調 査協力の同意を得たうえで、研究テーマ、目的、方法、データ管理方法、個人情報保護等 について口頭および文書で研究者が研究対象者に説明し同意を得た。研究協力は任意で 研究への参加を拒否した場合でも不利益を受けることはなく、いつでも中止できること、 個人は特定されないこと、インタビューに際し、IC レコーダーに録音の許可を得て行う ことを説明した。なお、本研究は活水女子大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(倫 18-007) 。. 3.結果 分析の結果をもとに、概念図を作成した(図Ⅱ-1)。コア概念である『離島・僻地医 療の現状と課題』 『離島・僻地での終末期への不安』 『ACP の受け止め方』 『住み慣れた地 域で最期まで過ごすための要素』、15 カテゴリー、55 サブカテゴリーが抽出された。 カテゴリーを【 】、サブカテゴリーを< >で示す。概念の相互作用のプロセスにつ いて、青矢印は影響の方向を示し、赤矢印は支援の方向を示している。赤い点線の矢印は、 ACP 推進のために必要な支援を示している。. 4.
(6) 図Ⅱ-1.離島・僻地におけるアドバンス・ケア・プランニングの概念図. 1)全体のストーリーライン 医療の機能に見合った資源の効果的かつ効率的な配置を促し、急性期から回復期、慢性 期まで患者が状態に見合った病床で、医療サービスを受けられる体制によって、急性期医 療の都市部集中が進んでいる。また、病院で医療が完結するのではなく、在宅医療にシフ トしている。物理的に医療へのアクセスが困難な離島・僻地においては、電子カルテや診 療データを共有する<遠隔地情報共有システム>や、救急時の<ドクターヘリ>といっ た医療サポート、離島・僻地での生活を支える<地域独自の生活支援サービス>や<介護 保険の恩恵>による公的な生活への支援体制がとられていた。 過疎化・高齢化が進んでいる離島・僻地医療の現状と課題として、<有床診療所の閉鎖 ><地域で診られない>という【医療資源の衰退】があり、 【医師不足】 、【看護師不足】 という人的資源も乏しい。医師のネットワークや、離島医療の研修医、派遣ナースによっ て支援があるが、住民にとっては「目的を達成したらいなくなる」「慣れたころにいなく なる」という思いがあった。また、 【介護士不足】も<若い人がいない><夜勤ができな い>という慢性的な人材不足があり、【介護への不安】に関連していた。. 5.
(7) 離島・僻地での終末期への不安のカテゴリーは、 【急変時の不安】 、 【介護への不安】 、 【看 取りは不安】の 3 カテゴリーから構成された。地域での診療を担っている<有床診療所 の閉鎖>や専門的な治療は<地域で診られない>といった【医療資源の衰退】 、<働き方 改革>によって<夜間が困る><土日はない>といった【医師不足】による【急変時の不 安】や、離島・僻地ならではの人間関係のつながりの深さによる<近所の人が心配する> といった【看取りは不安】 、介護の担い手である【家族形態の変化】や【介護士不足】に よる【介護への不安】に関連していた。 ACP の受け止め方は、離島・僻地での終末期への不安と関連しており、3 つのカテゴ リー【家族が決める】、 【まだ考えていない】 、 【自分らしく過ごす】で構成された。<高齢 化世帯>や<介護する子供が側にいない>ため、自分自身の意思を貫くことなく、<家族 にゆだねる>ことや<言わなくてもわかるだろう>という終末期の過ごし方について自 己決定は【家族が決める】という受け止め方や、<入院をきっかけに考える>や、<体調 が悪くなってから考える>、<まだ遠い話>と【まだ考えていない】という受け止め方で あった。また、<やりたいことがやれる><ここから離れたくない>という【自分らしく 過ごす】カテゴリーを支える住み慣れた地域で最期まで過ごすための要素によって実現 できていた。 住み慣れた地域で最期まで過ごすための要素として【地域の強み】 、 【信頼できる医師の 存在】、 【看護師の力量】 、 【覚悟を支える】の 4 カテゴリーから構成された。<誰かが気に かける>ことや<困りごとはついでに>といった、住民同士のつながりの強さである【地 域の強み】や、「〇〇しかできない、では通用しない」<ジェネラリスト>としての【看 護師の力量】とお互いに活用しながら支えあい、担い手の少ない【介護士不足】や【介護 への不安】を支えていた。 <いざという時に相談できる>【信頼できる医師の存在】は、【急変時の不安】を支え ており、 【看護師の力量】ともお互いに連携を取りながら、療養者や家族の【覚悟を支え る】ことで【自分らしく過ごす】ことを実現させていた。また、 【看護師の力量】は、 【看 取りは不安】を支えていた。 終末期について【まだ考えていない】という ACP の受け止めに対しても、これらの住 み慣れた地域で最期まで過ごすための要素によって、考えるきっかけにつながり、支援の 必要性が示唆されるというプロセスであった。 分析テーマ「離島や僻地で在宅療養を支援している訪問看護師や介護・福祉職がとらえ た療養者の ACP に対する思い」については、調査 2 の後に、まとめて考察する。. 6.
(8) Ⅲ.調査 2 について 終末期ケア提供者に対する質問紙調査(地域や職種による ACP の実態) 1.目的 都市部および、離島や僻地で在宅療養を支援している医師・訪問看護師・保健師・介護 支援専門員・社会福祉士に質問紙調査を行い、どのように療養者の思いを汲み取りそれを 実現しているのか、ACP の実態と課題を明らかにすることを目的としている。. 2.調査対象 本調査では、長崎県、愛知県(都市部、僻地) 、東京都(都市部、離島・僻地)を調査 対象とした。 1)地域設定の根拠(離島・僻地と都市部の比較) 離島・僻地は医療資源が乏しく人口流出や高齢化が進んでいる。長崎県は離島・僻地を 有し交通アクセスの利便性が良くない。へき地保健医療計画、在宅医ドクターネットなど、 在宅療養を支える取り組みが行われている。人口 10 万人あたりの医師の数は多いが、自 宅死率は全国でも下位である。東京都は、人口 10 万人あたりの医師数が多く、自宅死率 が全国平均より高い(全国第 2 位) 。愛知県は、県内での人口の偏りが大きく都市部と僻 地の差が大きい。自宅死率は全国平均のほぼ中央にある。 2)在宅療養支援に携わる職種の設定根拠(医療・介護・福祉職の比較) 在宅療養における終末期ケアに携わる専門職として、医師、訪問看護師、介護職を設定 した。医師は、在宅診療を行う上で主治医としての役割を果たし、治療方針を決定する。 訪問看護師は、看取りなど終末期ケアを実践する上で不可欠である。介護職への調査では、 介護を行う上での課題も明らかとなる。また、ACP は、終末期だけのものではなく、比 較的元気なうちから療養者の大切にしたい思いを家族や多職種で共有することが必要で ある。そのため、介護保険の要支援者や介護予防に取り組んでいる地域包括支援センター の社会福祉士、保健師、介護支援専門員を設定している。 3)設定数の根拠 一番人口規模が小さい長崎県を基準としてサンプル数を検討した。 (例えば長崎県は、 地域包括支援センターは 52 か所、在宅支援診療所は 99 か所、訪問看護ステーションは 112 か所である)。統計処理を行う上で職種の属性による偏りが大きくならないように各 職種 400 名と設定した。在宅支援診療所は、各県の医療情報サービスサイトの HP で「訪 問診療・往診」をキーワードにして検索した。対象の選定では、調査対象地域の各市区町. 7.
(9) 村に必ず 1 票、複数ある場合にはランダムに抽出した(表Ⅱ-1)。 表Ⅱ-1.質問紙配布内訳 長崎県. 愛知県. 在宅療養支援診療所. 医師. 100 か所. 100 名. 100 か所. 訪問看護ステーション. 訪問看護師. 102 か所. 各2名. 60 か所. 地域包括支援センター. 保健師 社会福祉士. 50 か所. 各1名. 130 か所. 100 名 各2名. 各1名. 東京都 200 か所 51 か所. 220 か所. 200 名 各2名. 各1名. 介護支援専門員. 3.方法 1)調査内容 基本属性の他に、①担当地域の人口区分・地域区分 ②対象の“終末期ケアの実施状況” (過去 1 年間の終末期ケア実践経験の有無、患者[利用者]の終末期の過ごし方に対する 思いを知る機会があるか、過去 1 年間の ACP 研修受講の有無) ③担当地域の“終末期 ケアシステムの現状” (休日夜間に対応可能な在宅医療システム・介護システム、職場内 外の多職種での情報共有、デスカンファレンスの有無、医師ネットワークの有無) 、 “ACP 研修の現状” ④担当地域の“在宅での看取りを困難にする要因” ⑤多職種連携行動尺 度についてであった。 2)分析方法 (1)基本属性と人口・地域区分 対象の年齢、性別、職務経験年数、職種のほか、 “終末期ケアの実施状況” 、および人 口・地域区分は、記述統計量を算出し傾向を把握した。 人口区分は、事業所がある市町村のおおよその人口について 5 千人未満~50 万人位 以上まで 10 項目の中から選択してもらった。地域については、 『離島』、 『僻地:過疎地 域、中山間地域』、 『離島・僻地ではない』で分類した。また、日常生活動作に制限がな い場合に、車がなくても公共交通機関の利用のみで日常生活をまかなうことができる か割合を『離島・僻地』、 『離島・僻地ではない』の 2 群に分け人口区分毎に把握した。 (2) 担当する地域の“終末期ケアシステムの現状” 担当する地域の終末期ケアシステムの現状について、『離島・僻地』、 『離島・僻地で はない』の 2 群間で比較を行った。 休日夜間に対応可能な在宅医療システムが整っているか、休日夜間に対応可能な介 護システムが整っているか、患者(または利用者)の終末期の過ごし方に対する思いは 8.
(10) 支援する職場内外の多職種で共有できているかについては 4 段階(4:そう思う~1: そう思わない)で配点し、マンホイットニーU 検定を行った。 デスカンファレンスなど提供したケアについて振り返りを行う機会の有無、在宅で の看取りを推進するための医師のネットワークシステムの有無については、χ二乗検 定を行った。 (3)担当地域の ACP 研修の現状 過去 1 年間に医療・介護・福祉職向け ACP 研修が行われているか、一般市民向け ACP 研修が行われているか、担当する地域の ACP 研修の現状については、χ二乗検定 を行った。 (4)在宅での看取りを困難にする要因 対象者の担当する地域について、24 時間支援体制構築困難、マンパワー不足、地理 的に訪問が困難、急変時に救急車を要請する、在宅移行の視点がない、地域住民が在宅 療養をできる可能性を知らない、療養者の過ごし方に対する思いを共有する仕組みが 整っていないなど、在宅での看取りを困難にする要素となる 11 項目を把握した。「と ても当てはまる:4」~「全く当てはまらない:1」の 4 段階で配点し、得点が高いほど 困難であることを示す。 『離島・僻地』、 『離島・僻地ではない』の 2 群で、マンホイッ トニーU 検定を用いて比較した。 さらに、別の角度から考察するために、看取りを困難にする要因と人口区分のクロス 集計を行った。各項目の全体の得点平均値と比較し、人口区分による看取りを困難にす る要因の傾向を把握した。 (5)多職種連携行動尺度 藤田らにより開発された在宅ケアにおける医療職と介護職を含めた多職種による連 携行動(連携力)を評価できる尺度2である。信頼性、妥当性も藤田らにより確認され ている。終末期ケア研修受講や過去 1 年間に終末期ケアを経験していた場合は有意に 連携行動の得点が高いとされている3。尺度開発者の承諾を得たうえで使用した。 因子Ⅰ:チームの関係構築、因子Ⅱ:意思決定支援、因子Ⅲ:予測的判断、因子Ⅳ: ケア方針の調整、因子Ⅴ:24 時間体制の 5 因子 17 項目からなり、 「とても当てはまる: 5」~「全く当てはまらない:1」で評価する。 多職種連携行動尺度については、各因子について平均値を算出し傾向を把握し、『離 藤田淳子、福井小紀子、池崎澄江, (2015):在宅ケアにける医療・介護職の多職種連携尺 度の開発,厚生の指標,1-9. 3 福井小紀子、藤田淳子、池崎澄江 他, (2015): “顔の見える関係”ができた後の多職種 連携とは?「連携」の中身を評価しよう-連携力の 3 つのレベルと評価尺度,訪問看護と 介護,vol20,No11,936-942. 2. 9.
(11) 島・僻地』 、 『離島・僻地ではない』の 2 群間で、マンホイットニーU 検定で比較した。 さらに、多職種連携行動と人口区分、職種でクロス集計を行った。各項目の全体の得 点平均値を比較し傾向を把握した。 いずれも有意水準 5%で有意差ありとした。なお、調査結果の分析は SPSS Statistics Ver26 を使用した。 3)倫理的配慮 研究協力者である施設責任者(以下、研究協力者)には研究の趣旨、個人情報の保護、 倫理的配慮等を文書で説明し、研究協力の同意を得た。その際、研究対象者用の「研究参 加依頼書」 「質問紙」 「返信用封筒」をセットにしたファイルを同封し、内容を確認いただ いた上で対象者に渡してもらった。 研究対象者には、 「研究参加依頼書」を用いて本研究の趣旨・方法や本研究への参加は 自由意思であること、研究の不参加及び途中辞退によって不利益は生じないこと、またデ ータは本研究のみに使用し、回収したデータの情報・結果は個人を特定できないようにす ること等を文書で説明し、参加を依頼した。質問紙には無記名で回答し、質問紙の回収も って研究参加への同意を得たものとした。なお、本研究は活水女子大学倫理審査委員会の 承認を得て実施した(倫 19-004)。. 4.結果 1,013 箇所(保健師 400 名、社会福祉士 400 名、介護支援専門員 400 名、医師 400 名、 訪問看護師 426 名)2,026 名に質問紙調査を行い、郵送法にて回収した。505 名から回 答が得られた(回収率 24.9%)。 1)対象者の概要と終末期ケアの実施状況 対象者 505 名のうち、職種について記載していないもの、医師・訪問看護師・保健師・ 社会福祉士・介護支援専門員以外の職種を記載したものを削除した 477 名分の概要と終 末期ケアの実施状況を表Ⅱ-2に示す。 医師は、50 代が一番多く、50~60 代が半数を占め、男女比では男性の割合が高かった。 訪問看護師は、50 代が一番多く、40~50 代が 8 割以上を占め、女性の割合が高かった。 保健師は 30 代が約半数で 30~40 代が 7 割以上を占め、女性の割合が高かった。社会福 祉士は、40 代が一番多いが 20 代も 16.4%おり、他の職種よりも年齢層が若い分布であ った。また、男女比も女性の割合が高いが他の職種よりも差は少なかった。介護支援専門 員は、50 代が一番多く、40~50 代が約 8 割を占め、男女比は女性のほうが多かった。 過去 1 年間に終末期ケアの実践経験では、医師、訪問看護師は「あり」が 9 割以上を占 めるのに対し、介護支援専門員は 51 名(44.0%) 、社会福祉士 35 名(31.8%)、保健師. 10.
(12) 19 名(24.1%)と職種による差がみられた。また、患者[利用者]の終末期の過ごし方 に対する思いを知る機会については、医師、訪問看護師は、実践経験と同様に 9 割以上で あり、次に多いのは社会福祉士 92 名(83.6%) 、介護支援専門員 94 名(81.0%)で、保 健師は 58 名(73.4%)であった。 過去 1 年間の ACP 研修受講の有無については、 一番多いのが訪問看護師 66 名 (61.7%) で、介護支援専門員 64 名(55.2%) 、医師 31 名(47.7%)、保健師 32 名(40.5%) 、社会 福祉士 41 名(37.3%)の順であった。. 表Ⅱ-2.対象者の概要と終末期ケアの実施状況. n=477. 医師. 訪問看護師. 保健師. 社会福祉士. 介護支援専門員. (65). (107). (79). (110). (116). 年代 20代. 0. 0.0%. 0. 0.0%. 6. 7.6%. 18. 16.4%. 2. 1.7%. 30代. 3. 4.6%. 13. 12.1%. 37. 46.8%. 31. 28.2%. 7. 6.0%. 40代. 12. 18.5%. 36. 33.6%. 25. 31.6%. 43. 39.1%. 42. 36.2%. 50代. 22. 33.8%. 52. 48.6%. 9. 11.4%. 17. 15.5%. 50. 43.1%. 60代. 20. 30.8%. 6. 5.6%. 2. 2.5%. 1. 0.9%. 14. 12.1%. 8. 12.3%. 0. 0.0%. 0. 0.0%. 0. 0.0%. 0. 0.0%. 1. 0.9%. 70代以上 記載なし. 性別 男性. 54. 83.1%. 5. 4.7%. 13. 16.5%. 46. 41.8%. 28. 24.1%. 女性. 11. 16.9%. 98. 91.6%. 65. 82.3%. 62. 56.4%. 87. 75.0%. 4. 3.7%. 1. 1.3%. 2. 1.8%. 1. 0.9%. 記載なし. 過去1年間に終末期ケアの実践経験はありますか あり. 60. 92.3%. 97. 90.7%. 19. 24.1%. 35. 31.8%. 51. 44.0%. なし. 5. 7.7%. 9. 8.4%. 60. 75.9%. 75. 68.2%. 65. 56.0%. 患者(利用者)の終末期の過ごし方に対する思いを知る機会がありますか あり. 64. 98.5%. 101. なし. 1. 1.5%. 6. 94.4%. 58. 73.4%. 92. 83.6%. 94. 81.0%. 5.6%. 21. 26.6%. 18. 16.4%. 22. 19.0%. 過去1年間にアドバンス・ケア・プランニングの研修を受講しましたか あり. 31. 47.7%. 66. 61.7%. 32. 40.5%. 41. 37.3%. 64. 55.2%. なし. 34. 52.3%. 41. 38.3%. 47. 59.5%. 69. 62.7%. 52. 44.8%. 職務経験年数. 14.03 ± 11.04年. ※医師・訪問看護師・保健師・社会福祉士・介護支援専門員、以外の職種を記載した分はこの表に含めていない。. 11.
(13) 2)対象が担当する地域について 対象の担当する地域について選択してもらい、人口別にさらに『離島』 、 『僻地(過疎地 域、中山間地域を含む)』 、 『離島・僻地ではない』に分類した(表Ⅱ-3)。また、日常生 活動作に制限がない場合に、車がなくても日常生活をまかなうことができるかを表Ⅱ- 4に示した。. 表Ⅱ-3.離島・僻地の割合. n=505 離島・僻地. 人口区分. 離島・僻地. 総数. 離島. 僻地. 13 ( 81.3% ). 7. 6. 3. 16. ではない. 区分1. 5千人未満. 区分2. 5千人~1万人未満. 8 ( 53.3% ). 1. 7. 7. 15. 区分3. 1万人~2万人未満. 13 ( 54.2% ). 3. 10. 11. 24. 区分4. 2万人~3万人未満. 16 ( 61.5% ). 14. 2. 10. 26. 区分5. 3万人~5万人未満. 15 ( 28.8% ). 6. 9. 37. 52. 区分6. 5万人~10万人未満. 11 ( 15.1% ). 0. 11. 62. 73. 区分7. 10万人~20万人未満. 9.7% ). 0. 9. 84. 93. 区分8. 20万人~50万人未満. 33 ( 20.8% ). 7. 26. 126. 159. 区分9. 50万人以上. 0 (. 0.0% ). 0. 0. 32. 32. 記載なし. 8 ( 53.3% ). 1. 7. 7. 15. 126 ( 25.0% ). 39. 87. 379. 505. 合計. 9 (. 表Ⅱ-4.公共交通機関の利用で日常生活をまかなうことができる割合 n=505 公共交通機関を利用して日常生活が可能. 人口区分. 離島・僻地. 離島僻地ではない. 合計. (n=126). (n=379). (n=505). 区分1 5千人未満. 6 ( 46.2% ). 0 (. 0.0% ). 6 ( 37.5% ). 区分2 5千人~1万人未満. 2 ( 25.0% ). 1 ( 14.3% ). 3 ( 20.0% ). 区分3 1万人~2万人未満. 3 ( 23.1% ). 2 ( 18.2% ). 5 ( 20.8% ). 区分4 2万人~3万人未満. 0 (. 0.0% ). 4 ( 40.0% ). 4 ( 15.4% ). 区分5 3万人~5万人未満. 2 ( 13.3% ). 14 ( 37.8% ). 16 ( 30.8% ). 区分6 5万人~10万人未満. 2 ( 18.2% ). 26 ( 41.9% ). 28 ( 38.4% ). 区分7 10万人~20万人未満. 0 (. 0.0% ). 49 ( 58.3% ). 49 ( 52.7% ). 22 ( 66.7% ). 81 ( 64.3% ). 103 ( 64.8% ). 0.0% ). 29 ( 90.6% ). 29 ( 90.6% ). 2 ( 25.0% ). 3 ( 42.9% ). 5 ( 33.3% ). 39 ( 31.0% ). 209 ( 55.1% ). 248 ( 49.1% ). 区分8 20万人~50万人未満 区分9 50万人以上 記載なし 合計. 0 (. 12.
(14) 『離島・僻地』は、全体の 25%であった。 『離島』は、人口 5 千人未満~人口 3 万人未 満(区分 1~4)と、20 万人~50 万人未満(区分 8)の 2 つの分布であった。 『僻地』は、 人口 5 千人未満~人口 50 万人未満(区分 1~8)まで分布している。 『離島・僻地』のう ち、人口 5 万人~20 万人未満は、『僻地(過疎地域、中山間地域を含む) 』のデータとい える。 人口が多いほど車がなくても公共交通機関を使用して日常生活をまかなうことができ る傾向にあった。人口が 50 万人以上(区分 9)の地域の 90.6%は、車がなくても日常生 活をまかなうことができていた。 『離島・僻地』では、人口が 5 千人未満(区分 1)の 46.2% は、車がなくても日常生活をまかなうことが可能であった。人口 2 万人から 3 万人未満 (区分 4) 、および人口 10 万人~20 万人未満(区分 7)の『離島・僻地』は、車がないと 日常生活をまかなうことができない地域であった。 3)担当する地域の“終末期ケアシステムの現状”について 担当する地域について、 (1)休日夜間の緊急時に対応な在宅医療・介護システム、 (2) 終末期の過ごし方に対する多職種の職場内外での情報共有、 (3)デスカンファレンスの 機会の有無、 (4)医師のネットワークシステムの有無について『離島・僻地』、 『離島・ 僻地ではない』の 2 群で比較した(表Ⅱ-5) 。 (1)休日夜間の緊急時に対応可能な在宅医療・介護システム 担当する地域において休日夜間の緊急時に対応可能な在宅医療のシステムが整って いるかについて、 『離島・僻地』 では、 「そう思う」 「ややそう思う」あわせて 55 人 (43.6%) で、32 人(25.4%)は、 「そう思わない」と回答した。 『離島・僻地』は、休日夜間の緊 急時の在宅医療システムが整っていなかった(p<0.01)。 担当する地域において休日夜間の緊急時に対応可能な介護システムが整っているか について『離島・僻地』は、 「整っている」と回答したのは 7 人(5.6%)で、休日夜間 の緊急時に利用できる介護システムが整っている割合は低かった(p<0.01) 。 在宅医療システムと比較すると『離島・僻地』 『離島・僻地ではない』いずれの地域 でも介護システムは「整っている」割合が低かった。 (2)終末期の過ごし方に対する多職種の職場内外での情報共有 患者(利用者)の終末期の過ごし方に対する思いについて、支援する職場内の多職種 で情報共有できているかについて、 『離島・僻地』 『離島・僻地ではない』いずれの地域 でも「そう思う」 「ややそう思う」は、5 割以上であった。 『離島・僻地』 『離島・僻地で はない』の 2 群で有意差はなかった(p=0.062,n.s.) 。 一方、職場外の多職種で情報共有できているかについて、『離島・僻地』の方が職場 外の多職種との情報共有ができていなかった(p<0.01) 。また、職場内の多職種で情報. 13.
(15) 共有できている割合と比較すると、職場外で情報共有できている割合は低かった。. 表Ⅱ-5.担当地域の終末期ケアシステムの現状 離島・僻地. 離島・僻地ではない. (n=126). (n=379). p値. 検定. 休日夜間に対応可能な在宅医療システムが整っている, n(%) そう思う. 14 ( 11.1% ). 145 ( 38.3% ). ややそう思う. 41 ( 32.5% ). 128 ( 33.8% ). あまりそう思わない. 40 ( 31.7% ). 85 ( 22.4% ). そう思わない. 32 ( 25.4% ). 21 ( 5.5% ). 0.000**. a). 0.000**. a). 休日夜間に対応可能な介護システムが整っている, n(%) そう思う. 7 ( 5.6% ). 58 ( 15.3% ). ややそう思う. 26 ( 20.6% ). 102 ( 26.9% ). あまりそう思わない. 53 ( 42.1% ). 151 ( 39.8% ). そう思わない. 40 ( 31.7% ). 67 ( 17.7% ). 記載なし. 1 ( 0.3% ). 職場内の多職種で情報共有できている, n(%) そう思う. 20 ( 15.9% ). 85 ( 22.4% ). ややそう思う. 52 ( 41.3% ). 164 ( 43.3% ). あまりそう思わない. 41 ( 32.5% ). 117 ( 30.9% ). そう思わない. 9 ( 7.1% ). 12 ( 3.2% ). 記載なし. 4 ( 3.2% ). 1 ( 0.3% ). 0.062 n.s. a). 職場外の多職種で情報共有できている, n(%) そう思う. 11 ( 8.7% ). 44 ( 11.6% ). ややそう思う. 45 ( 35.7% ). 185 ( 48.8% ). あまりそう思わない. 57 ( 45.2% ). 130 ( 34.3% ). そう思わない. 13 ( 10.3% ). 20 ( 5.3% ). 0.002**. a). デスカンファレンスを行いケアの振り返りを行う機会がある, n(%) ある. 23 ( 18.3% ). ない. 103 ( 81.7% ). 103 ( 27.2% ) 0.045*. b). 276 ( 72.8% ). 在宅看取りを推進するための医師のネットワークシステム, n(%) ある. 57 ( 45.2% ). 229 ( 60.4% ) 0.000**. ない. 68 ( 54.0% ). 144 ( 38.0% ). 1 ( 0.8% ). 6 ( 1.6% ). 記載なし. b). a)Mann–Whitney U test ,b)χ²検定 **p<0.01,*P<0.05,n.s.:not significant. 14.
(16) (3)デスカンファレンスについて 患者(または利用者)の死後、デスカンファレンスを行いケアの振り返りを行ってケ アの振り返りを行う機会があるかについて、 『離島・僻地』 『離島・僻地ではない』いず れもデスカンファレンスを行っている割合は、3 割未満であった。 『離島・僻地』のほうが、デスカンファレンスを行いケアの振り返りを行っている割 合は低く有意差があった(p<0.05)。 (4)医師のネットワークシステムについて 担当する地域で、在宅での看取りを推進するための医師のネットワークシステムが あるかについて『離島・僻地』では、 「ある」が 57 人(45.2%)で『離島・僻地ではな い』よりも低く有意差があった(p<0.01) 。 3)アドバンス・ケア・プランニング研修会 過去 1 年間に、医療・介護・福祉職向けの ACP 研修会が行われているかについて、6 割以上は、 「年に 1 回以上」行われていた。 『離島・僻地』のほうが、医療・介護・福祉職 向け研修会を行っている割合は低く、有意差があった(p<0.01)。 一般市民向けの ACP 研修会は、5 割以上は、「年に 1 回以上」行われていた。 『離島・ 僻地』の方が「年に 1 回以上」行われている割合が低く有意差があった(p<0.01)。 医療・介護・福祉職向け ACP 研修会と、一般市民向けの ACP 研修会を比較すると一 般市民向け ACP 研修会の方が低く、有意差があった(p<0.01)。. 表Ⅱ-6.アドバンス・ケア・プランニング研修会の実施状況 離島・僻地 n. 離島・僻地ではない. %. n. %. p値. 医療・介護・福祉職向けのACP研修会(n=496) 年に1回以上. 84 ( 68.3% ). 290 ( 77.7% ). 行われていない. 39 ( 31.7% ). 83 ( 22.3% ). 0.000. **. 一般住民向けのACP研修会(n=477). 0.000. 年に1回以上. 64 ( 53.3% ). 209 ( 58.5% ). 行われていない. 56 ( 46.7% ). 148 ( 41.5% ). . 0.000. **. χ²検定, **p<0.01. 15. **.
(17) 4)担当地域の在宅での看取りを困難にする要因 担当する地域の在宅での看取りを困難にする要因について「とても当てはまる:4」 「や や当てはまる:3」 「やや当てはまらない:2」 「全く当てはまらない:1」を配点し、 『離島・ 僻地』と『離島・僻地ではない』の 2 群で比較した(表Ⅱ-7)。得点が高いほど困難で ある。いずれの項目も『離島・僻地』のほうが、得点が高く在宅での看取りが困難であっ た。 「家族が療養者の急変時に救急車を要請してしまう」は、 『離島・僻地ではない』のほ うが得点は高いが、有意差は見られなかった(p=0.679,n.s.) 。また、 「医療・介護職が 療養者の急変時に救急車を要請してしまう」は、『離島・僻地』の方が得点は高いが、有 意差は見られなかった(p=0.328,n.s.) 。 『離島・僻地』で在宅での看取りを困難にする要因として一番得点が高いのは、 「医療 スタッフが少なく 24 時間体制の支援体制構築が困難」 「マンパワー不足で終末期まで対 応できない」などの人的資源の不足であり、 『離島・僻地』 『離島・僻地ではない』2 群間 で有意差がみられた(p<0.01) 。また、「地域住民(患者・家族)が、在宅療養ができる 可能性を知らない」 「療養者の過ごし方に対する思いを共有する仕組みが整っていない」 など、住民への周知とシステムの構築も在宅での看取りを困難にする得点が高かった。. 表Ⅱ-7.在宅での看取りを困難にする要因 離島・僻地である. 離島・僻地ではない. (平均±SD). (平均±SD). p. 医療スタッフが少なく24時間体制の支援体制構築が困難. 2.96 ± 0.91. 2.41 ± 0.87. 0.000 **. 在宅に力を入れている診療所がない. 2.54 ± 0.95. 2.15 ± 0.88. 0.000 **. 医師の在宅看取りへの関心が低い. 2.43 ± 0.90. 2.18 ± 0.82. 0.009 **. 地理的に訪問困難な地域が多い. 2.69 ± 0.92. 1.52 ± 0.70. 0.000 **. マンパワー不足で終末期まで対応できない. 2.95 ± 0.83. 2.28 ± 0.84. 0.000 **. 家族が療養者の急変時に救急車を要請してしまう. 2.79 ± 0.78. 2.80 ± 0.72. 0.679 n.s.. 医療・介護職が療養者の急変時に救急車を要請してしまう. 2.34 ± 0.75. 2.27 ± 0.78. 0.328 n.s.. 病院スタッフに在宅移行の視点がない. 2.32 ± 0.75. 2.08 ± 0.77. 0.001 **. 地域住民(患者・家族)が、在宅療養ができる可能性を知らない. 2.94 ± 0.70. 2.74 ± 0.68. 0.005 **. 療養者の過ごし方に対する思いを共有する仕組みが整っていない. 2.83 ± 0.72. 2.64 ± 0.79. 0.010 *. 火葬を行う施設が存在しないのでご遺体を遠方まで搬送する必要がある. 1.52 ± 0.79. 1.32 ± 0.61. 0.006 **. Mann–Whitney U test, **p<0.01, *p<0.05, n.s.:not significant とても当てはまる:4点 やや当てはまる:3点 やや当てはまらない:2点 全く当てはまらない:1点 点数が高いほど困難であることを示す. 16.
(18) また、在宅での看取りを困難にする要因と人口区分のクロス集計を行い各項目の全体 の得点平均と比較した(表Ⅱ-8) 。 人口 5 千人未満(区分 1)の地域では、「マンパワー不足で終末期間で対応できない」 「医療スタッフが少なく、24 時間体制の支援体制構築が困難」の平均値は高いが、 「医師 の在宅看取りの関心が低い」 「医療・介護職が療養者の急変時に救急車を要請してしまう」 「病院スタッフに在宅移行の視点がない」は、平均値が低く、地域の特徴であった。 「マンパワー不足で終末期間で対応できない」 「医療スタッフが少なく、24 時間体制の 支援体制構築が困難」というマンパワー不足や、「地理的で訪問困難な地域が多い」 、 「在 宅に力を入れている診療所がない」では、人口 3 万人~5 万人未満(区分 5)の地域と、 人口 5 万人以上~10 万人未満(区分 6)の地域で境界があり、人口が少ないほうが平均 値は高かった。 「病院スタッフに在宅移行の視点がない」は、2 万~3 万人未満から、5 万~10 万人未満 (区分 4~6)の地域で平均値が高く境界があった。. 表Ⅱ-8.在宅での看取りを困難にする要因と人口区分のクロス表 n=490 人口区分 看取りを困難にする要因. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 全体. 医療スタッフが少なく24時間体制の支援体制構築が困難. 3.50 3.29 2.88 2.96 2.96 2.56 2.46 2.31 2.03 2.56. 在宅に力を入れている診療所がない. 2.69 2.57 2.58 2.88 2.69 2.22 2.16 2.09 1.63 2.26. 医師の在宅看取りへの関心が低い. 1.81 2.36 2.50 2.92 2.77 2.22 2.15 2.11 1.84 2.25. 地理的に訪問困難な地域が多い. 2.38 2.80 2.17 2.38 2.06 1.60 1.46 1.85 1.16 1.81. マンパワー不足で終末期まで対応できない. 3.38 2.87 2.92 2.85 2.63 2.35 2.32 2.39 1.81 2.46. 家族が療養者の急変時に救急車を要請してしまう. 2.31 3.14 2.96 2.84 2.80 2.82 2.80 2.76 2.91 2.80. 医療・介護職が療養者の急変時に救急車を要請してしまう. 1.81 2.77 2.38 2.46 2.33 2.32 2.20 2.31 2.13 2.29. 病院スタッフに在宅移行の視点がない. 1.94 2.00 2.13 2.35 2.41 2.21 2.12 2.08 1.84 2.14. 地域住民(患者・家族)が、在宅療養ができる可能性を知らない. 2.75 3.07 2.83 3.04 3.04 2.85 2.76 2.75 2.44 2.81. 療養者の過ごし方に対する思いを共有する仕組みが整っていない. 2.69 3.23 2.50 2.96 2.88 2.83 2.63 2.61 2.50 2.70. 火葬を行う施設が存在しないのでご遺体を遠方まで搬送する必要がある. 1.63 1.50 1.33 1.35 1.50 1.45 1.31 1.36 1.06 1.37. ※地域区分を記載してある490名分を分析した。 ※点数が高いほど困難であることを示す。全体平均よりも高値を太字、人口で境界がみられるものを網掛けした。 ※担当地域の人口区分 区分1:5千人未満, 区分2:5千人~1万人未満, 区分3:1万人~2万人未満, 区分4:2万人~3万人未満, 区分5:3万人~5万人未満, 区分6:5万人~10万人未満, 区分7:10万人~20万人未満, 区分8:20万人~50万人未満, 区分9:50万人以上. 17.
(19) 5)多職種連携行動尺度(地域、人口区分、職種による比較) (1)地域による比較 多職種連携行動尺度は、5 因子 17 項目からなる。 「とても当てはまる:5」~「全く 当てはまらない:1」で得点化し、 『離島・僻地』と『離島・僻地ではない』の 2 群で平 均値を比較した(表Ⅱ-9)。 「第 1 因子:チームの関係構築」 、「第 2 因子:意思決定支援」、 「第 3 因子:予測的 判断の共有」 、 「第 5 因子:24 時間体制」の 4 つの因子において、 『離島・僻地』の方が 『離島・僻地ではない』地域よりも多職種連携行動尺度の平均点は低かったが、有意差 は見られなかった。 「第 4 因子:ケア方針の調整」は、 「ケア方針・ケア計画について多職種と意見交換 した」、 「ケア方針・ケア計画についてチーム全体で合意を図った」、 「病状の変化に応じ てケアプランの変更(多職種のサービス内容や頻度も含め)を、チームを組んだ多職種 に提案した」の下位項目からなる。 「第 4 因子:ケア方針の調整」において『離島・僻 地』 『離島・僻地ではない』の 2 群間に有意差がみられた(p<0.05)。 (2)人口区分と多職種連携行動尺度 人口区分による多職種連携行動尺度の傾向を他の角度から検討を行うために人口区 分毎にクロス集計を行ったものが表Ⅱ-10 である。全体の平均よりも大きい数値を太 字にした。その結果、人口 5 千人未満の『離島・僻地』および人口 3 万人~5 万人未満 の『離島・僻地』の方が、同じ人口区分の『離島・僻地ではない』地域よりも平均値が 高く、多職種での連携行動がとられていた。 また、人口 50 万人以上(離島・僻地は該当なし)も因子の平均値が高く、特に「第 2 因子:意思決定支援」の平均値が最も高く(平均:4.02)多職種での連携行動がとら れていた。 「第 1 因子:チームの関係構築」は、 「チームを組んだ他職種と気後れせずに何でも 聞ける関係を築いた」、 「他職種が提供しているサービスの具体的な内容を情報収集し た」 、 「自分が提供しているサービスの具体的な内容を他職種に伝えた」、 「他職種に対し てねぎらいの言葉や肯定的評価を伝えた」、 「普段から定期的に他職種と顔合わせの機 会を持った(勉強会やカンファレンスなど) 」の 5 つの下位項目からなる。人口 5 千人 未満の『離島・僻地』で平均値が最も高く(平均:3.96) 、チームの関係構築が行われ ていた。 「第 5 因子:24 時間体制」は、 「平常時において、チームを組んだ多職種間で情報共 有できる体制をとった(連絡網や情報交換ツール) 」 「緊急時において、チームを組んだ 多職種間で即座に連絡が可能な体制をとっていた」の 2 つの下位項目からなる。人口 5 千人~1 万人未満の『離島・僻地』で平均値が最も低く(平均:2.44) 、多職種で 24 時 間体制の連携行動がとられていなかった。. 18.
(20) 表Ⅱ-9.多職種連携行動尺度の地域による比較 離島・僻地である. 離島・僻地ではない. (平均±SD). (平均±SD). p. 第1因子 チームの関係構築. 3.66 ±. 0.74. 3.66 ±. 0.83. 0.662 n.s.. 第2因子 意思決定支援. 3.79 ±. 0.78. 3.90 ±. 0.82. 0.069 n.s.. 第3因子 予測的判断の共有. 3.71 ±. 0.87. 3.73 ±. 0.88. 0.855 n.s.. 第4因子 ケア方針の調整. 3.60 ±. 0.84. 3.78 ±. 0.88. 0.036 *. 第5因子 24時間支援体制. 3.47 ±. 0.93. 3.55 ±. 0.99. 0.253 n.s.. 因子平均. 3.65 ±. 0.71. 3.72 ±. 0.76. 0.251 n.s.. Mann–Whitney U test, *p<0.05, n.s.: not significant. 表Ⅱ-10.多職種連携行動尺度と人口区分のクロス表. 離島・僻地である. 因子 人口区分. 離島・僻地ではない. 因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 平均. 全体. 因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 平均 平均. 5千人未満. 3.96 4.15 4.06 4.00 3.38. 3.91. 3.58. 5千人~1万人未満. 3.19. 2.44. 3.20. 3.50 3.68 3.57 3.62 3.43 3.56 3.37. 1万人~2万人未満. 3.65 3.48. 3.38. 3.49. 3.61 3.81 3.63 3.54. 2万人~3万人未満. 3.61 3.64 3.42. 3.16. 3.47. 3.67 3.97 3.93 3.59 3.67 3.76 3.58. 3万人~5万人未満. 3.50. 3.69 3.63 3.04 3.56 3.36 3.52. 3.33. 3.00. 3.33. 3.67. 3.38 3.80. 3.69 3.64 3.55. 4.00 3.73 3.67 3.70 3.72. 3.46. 3.58 3.43. 3.64 3.32. 3.49 3.55. 5万人~10人万未満 3.53. 3.50. 3.51. 3.81 3.65 3.63 3.43. 3.60 3.58. 10万人~20万人未満. 3.66. 3.97 3.81. 3.83. 3.83. 4.09 3.83. 3.96 3.73. 3.89 3.88. 20万人~50万人未満. 3.76 3.75 3.82 3.61. 3.70. 3.64. 3.90 3.75. 3.75. 3.70 3.70. 3.41. 3.37. 3.67 3.49. 3.85 3.83 3.56. 50万人以上. 3.92 4.02 3.88. 3.48. 3.98 3.70. 3.90. -. ※多職種連携行動尺度(因子1~因子5) 因子1:チームの関係性構築, 因子2:意思決定支援, 因子3:予測的判断の共有, 因子4:ケア方針の調整, 因子5:24時間体制 値は平均値,太字は、全体平均値よりも高値を示す. 表Ⅱ-11.多職種連携行動尺度と職種のクロス表. 因子. 離島・僻地である. 離島・僻地ではない. 全体. 職種. 因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 平均. 医師. 4.05 4.06 4.22 3.95 4.05 4.01. 3.86 3.99 4.08. 3.81. 3.64. 3.88. 3.92. 訪問看護師. 3.71. 3.80 4.05 4.02. 3.84. 3.85 3.91. 3.87. 保健師. 3.55 3.72. 3.80 3.91. 3.68. 3.68. 3.39. 3.39. 3.16 3.44. 3.19 3.65 3.55 3.45. 3.10. 3.37. 3.39. 社会福祉士. 3.54 3.76 3.52. 3.45. 3.20. 3.49. 3.48 3.74. 3.41 3.57. 3.39 3.52. 3.51. 介護支援専門員. 3.51. 3.54. 3.52. 3.52. 3.88 4.03. 3.66 4.04. 3.67 3.86. 3.79. 3.58. 3.43. 3.75. 因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 平均 平均. ※多職種連携行動尺度(因子1~因子5) 因子1:チームの関係性構築, 因子2:意思決定支援, 因子3:予測的判断の共有, 因子4:ケア方針の調整, 因子5:24時間体制 値は平均値,太字は、全体平均値よりも高値を示す. 19.
(21) (3)職種と多職種連携行動尺度 職種による多職種連携行動尺度の傾向について検討を行うために職種別にクロス集 計を行ったものが表Ⅱ-11 である。全体の平均よりも大きい数値を太字にした。 『離島・僻地』 『離島・僻地ではない』のいずれの地域でも、医師、訪問看護師、介 護支援専門員、社会福祉士、保健師の順に多職種連携行動尺度の平均値が高かった。 『離島・僻地』の医師は、平均値が他の職種と比較して最も高く(平均:4.01) 、特 に今後起こりうる病状や生活状況の変化、家族の状況の変化などの「第 3 因子4:予測 的判断の共有」の平均値は 4.22 で、多職種連携行動が高かった。 保健師は、 『離島・僻地』 『離島・僻地ではない』いずれの地域でも他の職種よりも平 均値が低かった。保健師は、 「第 2 因子:意思決定支援」が、 『離島・僻地』 『離島・僻 地ではない』いずれの地域でも高いが、 「第 1 因子:チーム関係の構築」は『離島・僻 地』の方が高い傾向にあった(離島・僻地:3.55>離島・僻地ではない:3.19) 。. Ⅳ.考察 1.終末期ケア実践の実態 1)離島・僻地における終末期ケアの事態 終末期ケアを提供するためには 24 時間の支援体制構築が必須とされ、24 時間対応を 行っている訪問看護事業所では、在宅看取り数が多いことが示されている5。離島・僻地 で在宅での看取りを困難にする要因は、マンパワー不足、医療スタッフが少なく人的資源 の不足によって在宅医療システムや介護システムなどの終末期ケアシステム構築が整わ ないことであった。また、 「地域住民が(患者・家族)が、在宅療養ができる可能性を知 らない」 「療養者の過ごし方に対する思いを共有できていない」など、住民への周知がで きていないことも要因であった。 在宅での看取りを困難にする要因と人口区分とのクロス表では、人口 5 千人以上~5 万 人未満(区分 2~5)の地域と、人口 5 万人~人口 10 万人未満(区分 6)との間で境界が 4. 多職種連携行動尺度「第 3 因子:予測的判断の共有」は、以下の下位項目からなる。 「今後起こりうる利用者の病状の変化(例:病気の進行に伴って生じる症状の出現など)に ついて、自身の専門性から予測し他職種に伝えた」 「今後起こりうる利用者の生活状況の変化(例:食事の摂取量や排泄の自立度の低下など) について、自身の専門性から予測し他職種に伝えた」 「今後起こりうる家族の状況の変化(例:家族の気持ちや介護負担の増強など)について、 自身の専門性から予測し他職種に伝えた」. 5. 福井小紀子. (2012). 在宅看取りを支える全国訪問看護 事業所の実態とその選定指標の 提案 : 在宅看取りを支える要因分析の結果をエビデンスとして. 社会保険旬報, 2488:16-23. 20.
(22) あった。人口 5 千人~5 万人未満(区分 2~5)は、対象の 61.5%(24 名)は『離島』で あり、地理的にも医療へのアクセスが困難な地域であると考えられる。 しかし、必ずしも人口が少ない地域が、在宅での看取りが困難であるとは限らなかった。 5 千人未満(区分 1)では、他の地域よりマンパワー不足による困難さ(平均:3.50)は あるが、 「医師の在宅での看取りの関心が低い:平均 1.81」 、 「病院スタッフの在宅移行の 視点がない:平均 1.94」の得点が低く、地域で中心的になる医師、専門職の存在があると 推測される。また、「地域住民(患者・家族)が在宅療養ができる可能性を知らない:平 均 2.75」 、 「療養者の過ごし方に対する思いを共有する仕組みが整っていない:平均 2.69」 も、人口 5 千人以上~10 万人未満(区分 2~6)の地域よりも困難要因の平均値は低くか った。さらに多職種連携行動尺度と人口区分のクロス表においても、人口 5 千人未満(区 分 1)の平均値は 3.91 と高く、地域ぐるみで多職種が連携しながら住民への取り組みが 行われていると思われる。 また、「病院スタッフに在宅移行の視点がない」という在宅での看取りを困難にする要 因は、人口 5 千人未満~人口 2 万人未満(区分 1~3)において平均よりも得点が低く、 人口 2 万人未満の地域では、他の地域よりも病院スタッフに在宅移行の視点があるとい える。 2)多職種連携と終末期ケア 『離島・僻地』は、『離島・僻地ではない』と比較して在宅での看取りを行うための医 師のネットワークシステムや職場外の多職種で情報共有ができていなかったが、多職種 連携行動尺度の第 1 因子,第 2 因子,第 3 因子,第 5 因子の平均値に有意差はなかった。 「第 4 因子:ケア方針の調整」は、 『離島・僻地』で『離島・僻地ではない』と比較す ると平均値が低く有意差がみられた。離島・僻地は、複数主治医の体制をとっていないこ とやサービス提供事業所の選択肢が限定され、連携する職種が限られているからと思わ れる。また、多職種連携行動尺度と人口区分のクロス表において「第 3 因子:予測的判 断」は、人口 5 千人未満~1 万人未満(区分 1~2)の『離島・僻地』で平均値が高かっ た。地理的に医療へのアクセスが難しいことも考えられ、今後予測される病状や生活の変 化、家族の介護負担などを事前に説明することが多職種により行われていると思われる。 職種別の終末期ケアの実施状況では、過去 1 年間に終末期ケアの実践経験が「ある」割 合は、医師 92.6%、訪問看護師 90.7%で、介護支援専門員は 44.0%であった。多職種連 携行動尺度と職種のクロス表を見ると、 『離島・僻地』の医師の多職種連携行動尺度の平 均値が他の職種よりも最も高かった(4.01) 。 『離島・僻地』では、終末期ケアにおける多 職種の連携行動の意識が高い医師主導で行われていると思われる。 患者(利用者)の終末期の過ごし方に対する思いを知る機会が「ある」は、医師 98.5%、 訪問看護師 94.4%の次に、社会福祉士 83.6%であった。社会福祉士は、保健師や介護支 援専門員よりも終末期の過ごし方に対する思いを知る機会が「ある」割合が高く、多職種. 21.
(23) 連携行動尺度の「第 2 因子:意思決定支援」の平均値が高いため、利用者や家族の思いを 職種間で共有するようなかかわりをしていると思われる。 保健師は、終末期ケアの実践経験の機会が少なく、多職種連携行動尺度の平均値が他の 職種よりも低かった。全国の市区町村保健師に対する先行研究6によると、業務経験が長 いほど、常勤であるほど連携を行っていることが明らかになっており、本調査の対象の年 齢層が他の職種より若く、看取り経験が少ないことも影響していたと思われる。 介護支援専門員の多職種連携行動尺度の平均値は、他の職種に比べて『離島・僻地』と 『離島・僻地ではない』の地域による差が一番大きかった(離島・僻地:3.52,離島・僻 地ではない:3.86)。本研究の対象者が地域包括支援センターの専門職であるため、担当 している患者や利用者の介護度が要支援など比較的介護度が低いことが想定される。ま た、社会福祉士や保健師は、直接的な終末期ケアを行う機会は少ないが、福祉的支援が必 要な患者や家族、担当地域の住民の終末期の過ごし方についてニードを把握して関わっ ていると思われる。. 2.アドバンス・ケア・プランニングの実態 1)離島・僻地におけるアドバンス・ケア・プランニングの受け止め方 ACP はその人にとって大切なことや譲れないことについて、意思表明し、その明らか になった意思を大切な誰かに伝えるプロセスが重要である。しかし、一般に話し合いの大 切さを認識しながら、実際には人生の最終段階における医療や療養について話し合った ことがあるのはわずかである7。差し迫った病状で行う意思決定のための対話であるエン ドオブライフディスカッションが行われているのが現状であろう。 在宅療養を継続するためには、在宅療養が開始されてからではなく、比較的健康な時期 から療養者と家族の意思を明確にする必要性がある。離島・僻地の住民は、終末期の迎え 方について【家族が決める】 【まだ考えていない】 【自分らしく過ごす】と受け止めていた。 離島・僻地の人材不足は、療養の場所の選択肢が狭くなることにつながっている。 【家族 が決める】という思いは、 【家族形態の変化や】 、 【急変時の不安】 、 【介護への不安】また、 <近所の人が心配する>など離島・僻地特有のコミュニティーの狭さや、医療へのアクセ スが困難で、在宅での看取りに消極的になることも影響していると思われる。 人生の最期の過ごし方について、<体調が悪くなってから考える><入院をきっかけ に考える>など、 【まだ考えていない】と受け止めている場合には、病院で過ごすことや 家族にゆだねることだけが選択肢ではなく、最期の時を過ごしたい本当の場所はどこな 6. 7. 筒井孝子、東野貞律. (2006). 全国の市区町村保健師における「連携」の実態に関する研 究. 日本公衛誌, 第 10 号,762-776. 厚生労働省, (2018).平成 29 年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査結果 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000200749. pdf(2020.10.4 閲覧) 22.
(24) のか、まずは“自分が大切にしたい思いについて意思表示をすること”が大切である。大 園ら8は、 「看取りの場所について十分に理解できていない家族や外来受診ができなくなっ たら入院させるという方針をもつ医師が主治医であると、本人の意向があまり重視され ない状態で入院に至るケースがある。」と述べている。離島や僻地で最期まで過ごすため には、在宅での看取りを行うための地域の医療資源の活用だけでは限界がある。医療資源 と選択肢が少ない離島・僻地だからこそ、 “思いを伝えることの大切さ”が周知されるこ とが望ましい。 医療・介護・福祉職向け ACP 研修会の実施状況は、 『離島・僻地』のほうが「年に 1 回 以上」の割合が低く有意差があった。『離島・僻地』では、研修会に参加したくても職場 で代わりとなる人を確保できなければ参加が難しい。また、地域住民向けの ACP 研修会 は、企画実行する地域でのリーダーシップも必要となるであろう。西川ら9は、「ACP フ ァシリテーターを中心とした ACP の組織化は在宅医療や地域包括ケアと連動して、患者 家族への恩恵のみならず国益に資する活動になる。」と述べている。ACP を推進していく ためには、本調査で、明らかになった『離島・僻地』の医師が、在宅での看取りへの関心 が高いことや多職種連携行動が高いことを活かすだけでなく、社会福祉士が療養者の思 いを知る機会がある割合が高いことなど、地域のニードを把握している専門職の活動に 期待したい。. 3.住み慣れた地域で最期まで過ごすために必要なこと 1)住み慣れた地域で最期まで過ごすために必要な要素 住み慣れた地域で最期まで過ごすために必要な要素は、 【信頼できる医師の存在】 【地域 の強み】 【看護師の力量】 【覚悟を支える】であった。これらの要素によって<やりたいこ とがやれる><ここから離れたくない>という【自分らしく過ごす】という意思決定を支 えるプロセスがあった。 池口10は、在宅で看取りを行う看護師に求められる実践能力は、“患者や家族に必要な タイミングや内容を見極めながら、揺らぐ患者を支え、最後までどう生きたいのかという 自己決定ができるように、また家族のグリーフワークを促すように、デス・エデュケーシ ョンを行う”と述べている。療養者の意思決定や、代理決定者の家族の<揺れ動く気持ち を支える>、<入院中からかかわる>、<在宅環境を整える>こと、また<家族の息抜き 大園康文、福井小紀子、川野英子. (2014). 終末期がん患者の在宅療養継続を促進・阻害 する出来事が死亡場所に与えた影響ー経時的なパターンの分類化ー. Palliative Care Research, 9(1):121-128. 9 西川満則、高梨早苗、久保川直美 他. (2015). アドバンスケアプランニングとエンドオ ブライフディスカッション. 日本老年医学会雑誌, 52 巻 3 号、217-223. 10 池口佳子. (2016). 在宅ホスピスケアにおけるデス・エデュケーションの実際ー終末期が ん患者の自己決定を支えるー. 聖路加看護学会誌, V0l.19 No.2,29-35. 8. 23.
(25) も必要>でサービスを調整することによって【覚悟を支える】ことができれば、 【自分ら しく過ごす】支援ができる。そのためにも、離島・僻地では【信頼できる医師の存在】や 【看護師の力量】が求められる。 「入院病床がなくなりますから、ゼロになった時に果たして地元でどれほどの医療が. 展開できるのか、やはり何か困った時に知っている先生がいて、見てくれるというバ ックボーンがあるから動けるので。〔介護支援専門員〕」 吉岡ら(2002)11は、「僻地診療所の看護師は、多岐における業務を行い、保健福祉介 護といった他の専門職役割も担う」と述べている。また、春山ら12は、 「へき地診療所の看 護活動の特徴はアウトリーチ活動や予防活動を含むマルチで包括的な活動で保健福祉介 護といった他の専門職役割も担っている」と述べている。離島・僻地で看護職は、<看護 師の枠を超えて>て、<誰かが気にかける>【地域の強み】を活かし、【介護士不足】を 補いながら【自分らしく過ごす】療養生活を支えていた。 「(訪問)看護に行きながら、 (訪問)介護に行くっていう感じです。料理も作りますよ。. 年取った看護師はね、料理好きやけん、料理行くよって。…(中略)…だから、ちょっ とした夏場の健康管理とか。ここにポータブル置いていたら骨折しやすいから場所を 変えるとか。そういうところは看護の視点が入るので。広い家に一人で住んでいる高齢 者なんか、掃除も大変よ。多職種連携じゃなくて、看護師が何でもせんといかん。多職 種って、そもそも連携する人がいないからね。〔看護師〕」 「地域の人たちが、お互い、お互いのことを見守っているんじゃないですかね。行き来し. ながら。やっぱりこうやって歩いているだけで誰かが気にしている。〔看護師〕」 「通院している方は、家族背景から生活背景まで、だいたい理解できています。小さい. ところですから、ケアマネさんとか、社会福祉協議会だったり、老人ホームだったり の関わりもやっぱり強いんですよね。強いというか、小さいので普通に(連携)でき ますから。〔看護師〕」. 11. 12. 吉岡多美子、小林文子、大平肇子 他. (2002). ルーラルナーシングにおける専門家役割 モデルの検証. 三重県立看護大学紀要, 85-94. 春山早苗、江角伸吾、関山友子 他. (2015). 我が国のへき地診療所における看護活動の 特徴. 日本ルーラルナーシング学会誌, 第 10 巻,1-13. 24.
(26) 2)強みを生かした取り組み へき地の高齢者は都市部の高齢者よりも住み慣れた地域で最期まで住み続けたいとい うニードがある13と言われている。終活の現状について都市部と地方の比較調査14では、 “終活については都市部の方が積極的であり、両地域において相談場所の認知度が低く、 適切な情報が得られていないことが想定される”と述べられている。本調査において一般 市民向け ACP 研修会は、 「まだ行っていない」が 4 割以上であった。自分が大切にした い思いを【まだ考えていない】住民には、機会を提供することで“どう過ごしたいか”考 えるきっかけとなる。人生の最期について考えるのは、本人だけでなく、残される家族に とっても意義のあることである。本研究では、離島・僻地の公的生活援助として、郵便物 と一緒に日用品を配達したり、コミュニティーバスや乗り合いタクシー、地域で高齢者が 集う場があることなど、通院や買い物、食事や交流といった日常生活を支える<地域独自 の生活支援サービス>があった。これらの生活支援や、住民の家族背景が手に取るように わかる【地域の強み】を活かした疾病予防、介護予防に着目してアプローチすることが必 要である。. 4.謝辞 本研究の実施に際し、ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。本研究は、公 益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の研究助成を受けたものです。. 参考文献 藤田淳子、福井小紀子、池崎澄江. (2015). 在宅ケアにおける医療・介護職の多職種連携行 動尺度の開発. 厚生の指標. 福井小紀子. (2012). 在宅看取りを支える全国訪問看護 事業所の実態とその選定指標の提 案 : 在宅看取りを支える要因分析の結果をエビデンスとして. 社会保険旬報, 2488:16-23. 福井小紀子、藤田淳子、池崎澄江、辻村真由子、乙黒千鶴. (2015). ”顔が見える関係”がで きた後の多職種連携とは?「連携」の中身を評価しよう-連携力の 3 つのレベルと 評価尺度. 936-942. 春山早苗、江角伸吾、関山友子 他. (2015). 我が国のへき地診療所における看護活動の特 徴. 日本ルーラルナーシング学会誌, 第 10 巻,1-13.. 13. 14. 松井美帆、川崎涼子、新田章子 他. (2009). 離島高齢者における終末期ケアの意向に関 する調査. 厚生の指標, 56(3),18-23. 岡本美代子、島田広美、齋藤尚子. (2017). 都市と地方における高齢者の死生観と終活の 現状. 順天堂大学医療看護学部 医療看護研究, 第 13 巻 2 号,62-69. 25.
(27) 池口佳子. (2016). 在宅ホスピスケアにおけるデス・エデュケーションの実際ー終末期がん 患者の自己決定を支えるー. 聖路加看護学会誌, V0l.19 No.2,29-35. 木下康仁. (2003). グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践ー質的研究への誘い. 弘文 堂. 厚生労働省. (2018). 平成 29 年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査結果. https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/ 0000200749.pdf(2019.10.4 閲覧) 松井美帆、川崎涼子、新田章子 他. (2009). 離島高齢者における終末期ケアの意向に関す る調査. 厚生の指標, 56(3),18-23. 西川満則、高梨早苗、久保川直美. 他. (2015). アドバンスケアプランニングとエンドオブ. ライフディスカッション. 日本老年医学会雑誌, 52 巻 3 号、217-223. 岡本美代子、島田広美、齋藤尚子. (2017). 都市と地方における高齢者の死生観と終活の現 状. 順天堂大学医療看護学部 医療看護研究, 第 13 巻 2 号,62-69. 大園康文、福井小紀子、川野英子. (2014). 終末期がん患者の在宅療養継続を促進・阻害す る出来事が死亡場所に与えた影響ー経時的なパターンの分類化ー. Palliative Care Research, 9(1):121-128. 筒井孝子、東野貞律. (2006). 全国の市区町村保健師における「連携」の実態に関する研究. 日本公衛誌, 第 10 号,762-776. 吉岡多美子、小林文子、大平肇子. 他. (2002). ルーラルナーシングにおける専門家役割モ. デルの検証. 三重県立看護大学紀要, 85-94.. 26.
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ケース③
視覚障がいの総数は 2007 年に 164 万人、高齢化社会を反映して 2030 年には 200
⚗万円以上~10万円未満 1,773円 10万円以上 2,076円..
そこで、現行の緑地基準では、敷地面積を「①3 千㎡未満(乙地域のみ) 」 「②3 千㎡以上‐1 万㎡未満」 「③1 万㎡以上」の 2
1 人あたりの GNI:510US ドル 面積:75.3 万㎢(日本の約 2 倍). 人口:1,735 万人 (2018 年
命令した。と(