清末行政綱目訳註(一)
著者名(日)
千葉 正史
雑誌名
東洋大学文学部紀要. 史学科篇
号
37
ページ
165-186
発行年
2011
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002433/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja清末行政綱目訳註
(一)
千 葉 正 史
1.行政綱目解題
(1)はじめに 本稿では、一九一〇年に清朝政府の手で作成された「行政綱目」と題された文書の原文ならびに訳註稿を掲載する、ま ず最初に、この文書の歴史的価値と研究上における認知の状況を簡単に紹介することとしたい、 二十世紀初頭が中国の近代史にあって大きく改革が進展した時期であるということは、近年の研究においてほぼ共通し た認識とされるようになってきている この時期に清朝政府は「新政」と称される包括的な改革に取り組んでいた,その 目的は、中国において欧米や日本をモデルとする近代国家体制を確立することであり、特に政治体制の面で近代立憲政体 への移行を目指して全般的な改革が推進された。当初は一九一六年、後に一九一三年を目標として取り組まれた憲法の公 布と国会の開設を柱とする政治体制改革は、結局辛亥革命の勃発により中途にして終焉を迎えたが、この間に取り組まれ た課題と成果は相応に大きなものがあった。その一つが行政システムの再編であり、中国において独自の形成・発展を遂 げてきた王朝体制の行政機構を、近代立憲政体に適合する形態へと改編することが重要な課題とされるようになっていっ た。その総合的な改革案として作成されたのが行政綱目であり、この時点では六年後に予定されていた憲法公布までに行 清末行政綱目訳註二) 六五六六 政体制の体系的な再編を実現すべく、政府部内の改革設計部門で検討・立案された。そこでは長らく維持されてきた中国 王朝の統治システムを、どのように近代立憲国家のシステムへとスムーズに移行させていくかが課題とされたのであり、 中国における政治体制の近代化の過程において重要な取り組みの一つとなったと指摘できるのである. このような重要性にもかかわらず、これまで行政綱目に関しては必ずしも十分にはその意義が認識されず、研究の上で も取り上げられてこなかった 一例を挙げれば、同時期の政治体制改革に関する中国での代表的な概説書である章慶遠ら の『清末憲政史』においては、行政綱目に関する記述自体が見当たらない,いわゆる革命史観に立脚して清朝の側の改革 については専ら否定的に位置付けてきた中国の歴史研究では、こうした不備も理解できるのだが、日本の中国近代史研究 でも行政綱目の存在が取り上げられるようになったのは、実はここ十年あまりのことである.、その早い事例が一九九八年 の熊達雲氏の研究であり、同時期の日本をモデルとした改革過程の中で行政綱目が作成される経緯を明らかにしている。 ただ、行政綱目そのものについては「所在はいま不明であり、当時の記事によれば「表一三、付表一の他に、凡例一二条 が記された」としか分からなかったので、どんな改革のビジョンが描かれたかは知る術がない」として実は内容不明であ ハニ るとし、間接的な史料よりその概要を推測するにとどまっている.、その内容が具体的に取り上げられるようになったのは ごく近年のことで、たとえば曽田三郎氏は二〇〇九年の著書で行政綱目の掲載された新聞記事をもとに、その内容の紹介 を行っている。ただ、「「申報』紙上では七月二九日の「学部行政事務分配表第九」が最後で、未完のまま終わっている」 タ と述べており、その全体内容は把握されずに終わっている。 以上のような行政綱目に関する研究の立ち後れは、史料上の制約が一因であったことが指摘できる。清末の政治体制改 革に関しては、一九七九年に出版された『清末簿備立憲棺案史料』が包括的な史料集として編纂されており、上記の研究 も多くこれに依拠しているのだが、実は行政綱目はそこには収録されていない。これ以外の関連した各種の史料にも、ほ
とんどの場合は}部分しか収録されておらず、文字通り稀観に属する文書として部分的な内容しか知られてこなかった, 現時点で確認できるその全文を収録した史料は、『大清宣統新法令』という当時の定期刊行物であり、管見の限りではこ ニパ れを使用して行政綱目の内容を取り上げた研究は、二〇〇六年に刊行された拙著のみであるようである。ただ、そこで具 体的に引用することができたのは交通行政に関する郵伝部の所管部分のみであり、その全体内容を知ることができる研究 文献は、未だ発表されていないのである.、 本稿の目的は、近代中国における政治制度改革の上で重要な意味を持ちながら、このようにこれまでその内容を十分に 把握されてこなかった行政綱目を広く紹介することにある.、そこで次に、その解題としてその作成に至る背景と構成・内 容について順次述べておきたい。 (2)行政体制の再編と行政綱目の作成 清末新政の過程で本格的に行政体制の改革が取り組まれたのは、↓九〇六年に実行された中央官制の再編である。一九 ●五年から翌年にかけて実施した各国政治制度考察の成果をふまえ、清朝政府は一九〇六年九月一日(光緒三二年七月一 .二日)に立憲制の導入方針を決定した。そしてその前提として、欧米や日本の制度を参考にした官制改革に着手すること となり、まず中央の政府機構について再編が実施されることとなった。これにより、それまでの吏部・戸部・礼部・兵部・ 刑部.工部の六部を基礎とする中央官制は惰唐以来はじめて全面的に改編され、同年二月六日(九月二〇日)に図1に 示したような十一部からなる新たな体制が確立された。これ以後、立憲制移行に向けた清朝の改革は、これらの各部を単 位に推進されることとなった、その体系的な取り組みとしては、一九〇八年より開始された「逐年講備事宜」にもとつく 政策年次計画がある.同年八月二七日(光緒三四年八月一日)に八年後の憲法公布決定とともに立案され、同年を第一年 清末行政綱口訳註(こ 一六七
六八
=
図1 1906年官制改革に伴う中央各部の再編 として一九一六年までの九ヶ年に実行すべき政策課題が担当 部門とともに列挙された.さらに翌年にかけては各部ごとの 政策年次計画もこれに準じる形式で立案され、憲法公布に向ロ
けた各分野の準備が推進された。 こうした行政システムの再編について、より体系的な改革 を実行すべく作成されたのが行政綱目である。その経緯につ いては、前掲の曽田三郎氏の研究が詳細に明らかにしており、 それによると一九〇七年から一九〇九年にかけて行われた李ほ
家駒の日本での長期にわたる政治制度考察が契機となった。 そこで李は法学者の有賀長雄より詳細な近代立憲政治制度に 関するレクチャーを受けており、その成果をふまえて自国に おける政治制度とりわけ行政体制の改革の必要性を認識する に至った。そして帰国後は制度改革の検討設計機関である憲政編査館の長官である提調に任命され、日本での考察の成果 を実行に移すべく包括的な行政制度改革案の作成に着手した。そして一年後の一九一〇年四月八日(宣統二年二月二九日) に同館により提出されたのが行政綱目であり、行政の全分野について包括的な管轄再編案が示された.。以後、関係各部門 による検討を経て同年二月五日(宣統二年一〇月四日)に改めて修正案が同館より提出され、清朝政府の改革方針とし て策定されたが、ただその実行は、辛亥革命までの実質一年足らずに終わったのである。(3)行政綱目の構成と概要 次にその構成と概要について述べておきたい。行政綱目は先に述べた熊達雲氏の研究にあるように十三の表からなり、 パ これに冒頭の総論が付属する以下のような構成である。 行政綱目総論 国家行政事務類別表 第一 国家行政事務分部表 第二 国家行政機関等級表 第三 外交行政事務分配表 第四 財政事務分配表 第五 軍政事務分配表 第六 司法行政事務分配表 第七 民政部行政事務分配表 第八 学部行政事務分配表 第九 農工商部行政事務分配表 第十 郵伝部行政事務分配表 第十一 理藩部行政事務分配表 第十二 附各路将軍×臣官治表 その内容は、まず国家行政の定義とその種類、管轄官庁の設置そして執行主体の在り方が最初の三表で説明され、そし 清末行政綱日訳註(二 六九
一七◎ ピ て中央の各部のうち将来的に責任内閣の所管から外れる吏部と礼部を除いた九部を単位として、国家行政の各分野を分類 した「行政事務分配表」が列挙された 各表の構成は個々の行政事務について、①中央政府が直接執行する「直接官治」、 ②中央政府が地方官僚に委任して法令に基づき執行させる「間接官治」、③地方官僚が法令に従って執行する一,地方官治」、 ④地方自治体の職員が法令に従って執行する「地方自治」の四等級に区分して配列するものとなっており、これに説明文 が付されている、なお外交行政事務分配表は外務部、財政事務分配表は度支部、軍政事務分配表は陸軍部、司法行政事務 分配表は法部のそれぞれ管轄分野に該当し、最後の附各路将軍大臣官治表は藩部の統治に当たる官僚機構の改革案である. こうした行政綱目の内容を理解する上で重要な史料となるのが、同時に憲政編査館より提出された立案主旨についての 上奏文である。そこでは現状の行政体制の問題点が列挙され、このままでは立憲政治体制へのスムーズな移行に支障が出 かねないと論じられた.一つは新たに設けられる国会を中心とした立法機関との関係をどう構築するかということであり、 それとともに既存の行政体制それ自体についても権限の明確化の必要ということが指摘された.特に中央政府と地方当局 との関係について根本的な見直しが求められるとし、両者の間での行政事務執行権限ならびに財政の画分が提起されたの である、こうした課題はこれ以後「国地劃分」と称され、清朝の滅亡後も中華民国時期まで引き継がれていくこととなる のだが、その背景には伝統的な中国王朝体制における行政システムと、近代国家体制におけるそれとの本質的な差異が存 在している,、詳細な説明は紙幅の関係で難しいが、イメージを図示すれば図2のように両者の違いは描くことができるで あろう..すなわち王朝体制においては国家による行政執行は皇帝に直属する地方官の手で行われ、六部などの中央政府機 構の役割は基本的にその内容の適正さを審査するものにとどまっていた。こうした両者の役割分担は、特に明清時期に皇 帝独裁体制の強化とともに徹底されたものとなり、近代にまで継続されていたのだが、まさにここに至って近代立憲制の 導入とともに、図2に示したような新たな行政執行体制へと抜本的に再編することが求められた、その実行のためには全
皇 指示 (殊批) 検討指示 帝 中央政府機構(六部等)
←一
結果上奏 地方官僚機構(省一府一州県) ↓執行∪
帝 皇 認 承 輔弼 1 中 央 政 府 機 構 (責 任 内 閣 ) 監督 地 方 官 僚 構 監督 地方自治体 執行 (地方自治) (地方官治) (間接官治) 値接官治) 図2 行政綱目に基づく行政執行体制の再編概念図 ての行政事務について執行主体を明示する 必要があり、こうした形式で作成された行政 綱目がその具体的な指針として位置付けら れることとなったのである・ 以上に述べたような行政綱目の価値を理 解するためにも、その全文について紹介する 意昧は大きい,現時点では唯一その内容を確 認することができる『大清宣統新法令』を収 蔵する機関自体が限られていることも鑑み て、本稿ではまず原文を掲載し、その上で筆 者による訳文を掲載することとした.、紙幅の 都合から今回は冒頭の「部分のみの掲載と せざるを得なかったが、次号以降に継続して 掲載することにより、今後全文の紹介を完成 させることとしたい.. 清末行政綱目訳註くこ 一ヒ.七一
2.行政綱目訳註(一)
凡例 ・テキストは『大清宣統新法令』第18冊葉31〜61に収録されたものを用いた.. ・最初に憲政編査館による提出時の上奏文を収録し、その後に行政綱目のうち「総論」から「国家行政事務分部表 第二」 までを収録した. ・原文については、筆者の手で段落分けや句読点を施した、 ・訳文については、筆者により補った部分を〔〕で示した。補註を施した部分には丸数字で標示し、各編の末尾に註文 を掲載した 憲政編査館奏酌擬行政事務明定擢限辮法摺 窺維、君主立憲政罷、統治権属諸君上、而立法・司法・行政、則分権執行,是爲立憲要義。謹案欽定憲法大綱、君上有 統治国家之大権、凡立法・行政・司法、皆錦紹撹。而以議院協賛立法、以政府輔弼行政、以法院遵律司法、仰見朝廷博采 成規、折衷至當、風聲所樹、観聴一新 両年以來、業経壽備事項、如開設諮議局爲各省採取輿論之所、開辮資政院爲上下議院之基 又法院編制法亦経欽定頒行、 其京師.東三省所辮各級審判磨、先已成立.、各直省亦次第壽設、剋期施行,是立法・司法両大端、基礎已具.若於行政機關不亟設法整理、匪惟不利推行、且恐滋生弊害-、敬爲我皇上纏晰陳之 一日、行政権將爲立法権所操縦也.三権分立、固爲憲政之精神、而君主立憲國、則以君主統治大権、冠諸其上、三権之 中、惟司法機關イ然燭立・其互相維繋、而慮於封待之地位者、則立法與行政二者而已、然徴諸實事、則二者封待、各不相 下 必有一焉、隠握運用之権、始剤於平。其在議院政治之國、則議會操縦政府。其在大権政治之國、則政府操縦議會。不 於此、則於彼、東西各國有明徴秦、我國憲法、既採大権政治主義、則於議院政治、絶不相容,故造端之始、三権機關、必 須同時設立、不可偏廃、否則立法之基先具、既有以磨属其才、増進其識、而行政機關襲故踏常、不能相副、難有人才、無 從歴練..優劣相形、勢必成以立法権操縦行政権之局,而君主立憲主旨、將破壊而不可牧拾 、 一日、行政之統系及責任不分明也.凡國家行政同一之事務、必以同一之官府統之、統系既明、責任自專、方能定趨響、 而促進行 現制、有一事而分隷敷部者、有一官而兼轄諸務者,互相牽制、則召争、互相推護、則廃事.至於宮府不分、皇 室事務與國家事務、混而爲.一 職掌未定、常設機關與特設機關、動行抵梧。此敷端、是行政之機關、整理愈不容緩芙。 一日、國家行政與地方行政界限不明也。行政事務、何者雁闘中央直轄、何者磨蹄地方管理、究其性質、本有專司、不容 牽酒些現制、毎有磨蹄中央直轄之重要事務、而畢以責諸地方者。相沿日久、遂難分析、以致政令不齊、無從書一。上年各 省諮議局開會、亦以界限不明之故、動靱有侵越槽限之虞。迭経各督撫、以國家行政與地方行政作何逼別、電詞臣館、亦因 標準未定、不能詳析指明..本年資政院召集在遽,若不先期詳爲規定、尤恐権限争執無己時突、 一日、行政事類不分、則財政無從清理也.壽備事宜、既有國家財政與地方財政之分。則國家行政事類與地方行政事類、 必先逐一書分、然後行政経費、始有所檬、以爲分配、清理財政、始能措手、預算決算、乃可實行 今則内而各部之計書、 外而各省之措施、倶以限於財力、不能進行。遇有要政、部臣不能爲謀、所需之経費、或令其自行簿措、或遥灘派於各省.. 究其闘也、往往以無款可壽之故、要政因以不行,此尤臣等所焦思而重慮也。 清末行政綱目訳註(一) 一七三
一七四 行政關係之鋲若此、則整理機關、實爲本原、不容置爲緩圖也明芙。惟是治病者、必察其源、治綜者、先理其勢..方今行 政之病、由於職掌不清、以致権限不明。則整理之法、必先規定職掌、以明権限所在、方能牧整齊書一之効。是書分行政職 権、又爲整理行政本原中之本原也.、 考行政之要義、有二、一、匿分事務之性質、二、逼分執行之機開、 國家行政事務、本極繁蹟.、必辮其類、以匿之、而立爲部、以統之。行政事類、大別有五。日内務行政、日外務行政、日 財政、日軍政、日司法行政.其他事務、不在國家行政之列、即不属國務統系之中。至分部之法、各國多寡不同。我國現制、 設有外務部掌外務行政、度支部掌財政、陸軍部掌軍政、法部掌司法行政.。而民政部・學部・農工商部・郵博部・理藩部分 掌内務行政、.較之各國編制、難有異同、揆諸國情、折衷已麗允當。蓋五類行政之機關、訣一不可立國、中外固無二致也。 至於執行機關、約分四繰、一日、直接官治。由中央政府依握法令直接管轄、或由部特設專員分赴各省辮理、直達於部者 也、二日、間接官治.由中央政府委任各省官吏、遵照法令執行、不再由部特設專員者也.、三日、地方官治。由各省官吏遵 照法令奉行者也。四日、地方自治..由各自治職遵照法令奉行者也。凡中央集権之國、不須設地方官治一級、以事統於民部 之故,凡地方分権之國、不須設間接官治一級、以事分隷於地方之故。惟是我國情形不同、純然中央集権與純然地方分権之 制、均難適用.揆時度勢、似以四級具備爲宜。 臣等再四壽維、擬以各部現行職掌爲経、以四級機關爲緯、分別部居、列爲簡表.、遇有雁行改併増減之庵、附加按語、纂 成「行政綱目」一編、繕具清本、恭呈御覧。侯命下後、即由臣館杏送各該衙門、逐條核酌。如有尚須量爲攣通損益、及事 隷両部或敷部者、由各該衙門分別會商、詳細篭注、限雨月杏覆到館。再由臣館詳加麓訂、會同内閣・會議政務慮覆核、具 奏請旨、欽定實行。此後壽備事宜、如麓訂官制・清理財政等項、悉糠此以爲準的。其資政院暫諮議局権限、亦即以此爲範 園、庶幾綱畢目張、有條不素夷,
如蒙愈允、即由臣館盗行各衙門、欽遵辮理、謹奏。 宣統二年二月二十九日、奉旨。「著依議」。欽此。 行政綱目縛論 謹按憲法大綱、「君主立憲政酷、君上有統治國家之大権、凡立法・行政・司法、皆蹄縛撹、而以議院協賛立法、以政府 輔弼行政、以法院遵律司法」等語..是所謂政府者、乃君主行使大権所設機關之一、決非以君主爲政府之長。所謂君主無責 任也、惟君主無責任、斯必有負責任之政府、又必先將政府事務分配明確、始知責任之何所屡也、。凡一國之事務、大別有二.. 一日國家事務、一日皇室事務、立憲政髄、必先於此二者分別規定、是爲第一要義. 中國政治、自昔宮府不分.國朝難設内務府以領賛御左右諸司、而所司職掌僅當今世各國宮内省之一部分。此外特設衙門 慮所、及事之散隷於各部院者尚多、將來固磨與皇室×典別爲規定. 藪謹先就國家行政事務分別部居、條分而縷析之、計爲表十有二、各附以説。全國行政綱目略具、於是由是董定官制、清 理財政、編制法令、悉將依此爲準 而諮議局・資政院議事之権限、亦有一定之範園 。 國家行政事務類別表 第一 國家行政
司財軍外内
法政政務務
清末行政綱目訳註(.) .七五七六 謹按、内務・外務・軍政・財政・司法、五者訣一、 義、揆諸學理事實、均極精確、莫可増減者也. 不可以立國、而國家行政事務、此五者足以蓋之,是爲行政分類之通 國家行政事務分部表 第二 内務 外務 軍政 司 財 法 政 民政部 學部 農工商部 郵傳部 理藩部 外務部 陸軍部 海軍部 度支部 法部 謹按、各國建置部省之敷、多寡不同、而悉準此五類、以爲分合。五類之中、有必不可析爲二部者如外務、如財政、如 司法、皆惟一而不可分、各國亦無分設者、.軍政有海陸軍之殊、各國或砥設一部、或並設二部、則視乎其國軍事之繁簡若何、 至於内務行政、範園最廣、事務較繁、各國大率分設多部以司之.、我國現設民政部・學部・農工商部・郵博部・理藩部.五
者皆麗内務行政、適合現在情形、固可母庸増減。其吏・礼雨部、既不負憲法之責任、即不麗國務之統系、故未列表。此外 簿備事宜清軍及官制草案、如弼徳院・軍諮府・行政審判院・審計院之麗、皆爲特設機關、而不在責任官制之列。惟其事既 麗國家行政、此項経費、働列入予算案之内焉, 【訳註】 憲政編査館の行政事務権限明確化に関する手法検討の上奏文 ひそかに思いまするに、君主立憲政体では統治権は君主に属し、その上で立法・司法・行政は、権限を分けて執行いた します「.これこそ立憲の要義であります。謹んで欽定憲法大綱を案じまするに、君主は国家を統治する大権を有し、およ そ立法・行政・司法はみなその総撹に帰します.その上で議院が立法を協賛し、政府が行政を輔弼し、法院が法律に遵っ て司法を行うことになっております・、まことに朝廷が広く〔諸外国の〕先例を採用して適切にまとめたことがうかがえる 内容で、〔改革へと向けた〕気運が確立されることで社会の見識は一新されるでありましょう。 この二年間、既に各項目の準備がなされ、例えば各省の輿論を採り上げる場所として諮議局が開設され、上下議院の基 礎として資政院の開設も着手されました。また法院編制法も既に頒布され、首都や東三省においては各級の審判庁が成立 し、その他の各省においても順次設立に着手され、期限通りに実施を見ています。このように立法・司法の両分野におい ては、基礎は既に確立されております、もし行政機関についてすみやかに整理の法を講じなければ、改革の推進に利なら ざるのみならず、かつ弊害の多々生ずることを恐れるものであります。つつしんで我が皇帝陛下のために、詳しくご説明 申し上げます. まず第一に、行政権が立法権により操縦されるようになることであります。三権分立は、もとより憲政の精神でありま 清末行政綱目訳註(こ .七七
七八 すが、君主立憲国では君主の統治大権がその上に位置付けられています、三権の中では、ただ司法機関のみが単身独立し ております 互いに関連しあい、対等の地位にあるものは、立法と行政の二者であります、しかし実際状況に照らしてみ れば、この二者が対等であると、どちらも譲歩しようとしません、必ずや片方のいずれかが運用の権を実質的に握ること で、はじめて調和の取れた状況になります・その議院政治の国にあっては、すなわち議会が政府を操縦します。その大権 政治の国にあっては、すなわち政府が議会を操縦します。こちらでなければ、すなわちあちらというわけで、その明証は 東西各国〔の事例〕より徴することができます。我が国の憲法は、既に大権政治主義を採用しており、すなわち議院政治 は絶対に相い容れるものではありません ゆえに制度確立の始めにあたっては、三権の機関は必ずや同時に設立するべき で、いずれかを欠くことは不可でありますそうでなければ立法の基礎が先に確立され、〔立法分野の人材は〕その能力 を錬磨して知識を増進していく一方で、行政機関は旧態依然たるままで、とてもそれに対応することができません。たと え人材があったとしても、〔能力を〕育成していくすべがないのです 優劣は明白で、必然的に立法権が行政権を操縦す る局面が出現しましょう.かくして君主立憲の主旨は、破壊されて収拾不可能となるのであります. 第二に、行政の系統及び責任が不明確となることであります.およそ国家行政で同一の事務は、必ずや同一の官庁が統 轄します・系統が明らかとなれば、責任は自然と〔特定機関の〕専門に帰し、〔政策の〕方向を定めて進行を促すことが できます、現在の制度では、一つの事務で複数の部局に属するものがあり、一つの官庁で諸々の事務を兼轄するものがあ ります..互いに牽制すれば紛争を招き、互いに押し付けあえば事務を停滞させます宮中と政府の未分離ということにつ いて言えば、皇室事務と国家事務とが混合して一体化したままであります職掌の未確定ということについて言えば、常 設機関と特設機関とがややもすると〔権限をめぐり〕対立しあいます。これらの数点は、行政機関の整理がいよいよ待っ た無しであるということを示しております
第三に、国家行政と地方行政との権限の境界が不明確となるということであります.、行政事務のどの分野が中央の直轄 に帰し、どの分野が地方の管理に帰すべきかは、その性質を見きわめた上で、本来〔帰属する〕特定の部署があるべきこ とで、混乱があってはなりません,現在の制度では、本来中央の直轄に帰すべきでありながら地方の責任としている重要 事務が往々にしてあります.・久しく踏襲されてきて、区分することは困難であり、そのことで政令の不一致がもたらされ、 統一化するすべがありません。昨年各省の諮議局が開会しましたが、また〔両者の〕境界が不明確なことから、ややもす ると権限を侵犯する心配がありました。たびたび各省の総督・巡撫より国家行政と地方行政をどう区別すべきかというこ とについて、本館に問い合わせがありましたが、基準がいまだ定められていないことから、明確に回答指示することはで きませんでした..本年資政院の召集は目前に迫っております。もしそれに先立って詳細に規定を行わなければ、権限の争 執がやむことがないことを最も恐れるものであります, 第四に、行政事務の分類がなされないことで、財政の整理に着手できないことであります 「逐年壽備事宜」では、既 に国家財政と地方財政の区分があります..すなわち国家行政事務の分類と地方行政事務の分類は、必ずや先に逐一画分し ておくべきであります、そうした後に、行政経費ははじめて根拠を得て配分できるようになり、財政の整理ははじめて措 置をとれるようになって、予算決算も実行可能となります,現状では中央での各部の計画も、地方での各省の措置も、と もに財力の限界で推進することができません、重要な政策課題があっても、各部の大臣は〔具体的に実行方針を〕検討で きず、必要な経費は〔担当部局に〕自ら捻出させるか直接各省に割り当てて拠出させます その結果を追究すると、往々 にして調達可能な財源がないことで、重要政策が実行できないということに行き着きます これは臣らが最も深刻に憂慮 するところであります 以ヒに述べましたように、行政の関係するところはまことに大きく、〔行政〕機関の整理は実に本源的な問題で先延ば 清末行政綱目訳註(二 、七九
八 しにできることではないということは明白であります.ただ、病を治める者は必ずやその原因を察し、糸を整える者は必 ずやまずその乱れを正します 現在の行政の弊害は、職掌がはっきりせず、そのこと一、L権限が不明確になることに由来し ております ならば整理の法は、必ずや先に職掌を規定して権限の所在を明らかにするべきであり、そうすることではじ めて整理統一の効果を収めることができますこのように行政職権の画分は、行政整理の本源中の本源と言って良いこと なのであります 行政の要義を考えまするに、二つのことが挙げられます 一つめは事務の性質を区分すること、二つめは執行の機関を 区分することであります 国家行政事務は、本来きわめて煩填であります。必ずやその種類を分類して区分し、その上で部を設置して統轄させま す.行政事務の種類は、×きく五つに分けられます,いわく内務行政、いわく外務行政、いわく財政、いわく軍政、いわ く司法行政 その他の事務は、国家行政の列にはなく、即ち国家行政事務の系統には属しません.部の分け方については、 各国で多少違いがあります.我が国の現在の制度では、外務部を設置して外務行政を司らせ、以下度支部は財政、陸軍部 は軍政、法部は司法行政をそれぞれ司らせております。民政部・学部・農工商部・郵伝部・理藩部については、分担して 内務行政を司らせております.各国の制度と比較すると異同があるものの、国情に照らせば変更点も妥当に属すると言え ましょう けだしこの五分類による行政機関というのは、どれか一つが欠けても国政が成り立たないものであり、このこ とは中国も各国ももとより共通していることなのであります.. 執行機関については、おおよそ四級に分かれます。第一は直接官治。中央政府が法令によって直接管轄し、あるいは各 部が特に専門担当員を置いて各省に派遣して事務を執行させ、その直属のもとにあるものであります。第二は間接官治.、 中央政府が各省の官吏に委任して法令に基づき執行させ、各部からは特に専門担当員を派遣しないものであります。第三
は地方官治.各省の官吏が法令に遵って執行するものです、第四は地方自治.、各自治体の職員が法令に遵って執行するも のです,およそ中央集権の国では、〔行政の〕事務は民政部に統轄されることから、地方官治の一級は設けません.、およ そ地方分権の国では、〔行政の〕事務は地方に所属することから、間接官治の一級は設けません.ただ我が国は状況が異 なり、純然たる中央集権制と純然たる地方分権制は、いずれも適用が困難であります。現時点での状況をはかりますに、 この四級を全て備えるのが適切であろうと思われます。 臣らは再三検討を行い、各部現行の職掌を横列に、四級の各機関を縦列にとって〔行政事務の〕種類ごとに分けて表を 作成することにいたしましたもし改編や加除をすべきところがあれば、意見を付け加えておきました。以上を「行政綱 目」一編としてまとめ、清書して御覧に呈します、御裁可の下るのを待って本館より該当の各官庁に送付し、項目ごとに 検討させます、もしすべからく変更・修正を加えるべきもの、及び複数の部門に管轄がまたがるものがあれば、該当する 各官庁によりそれぞれ協議して詳細に意見を付け加えさせ、二ヶ月以内に本館へ提出させます.、そして再度本館より詳細 に訂正を加えた上で、内閣・会議政務処と合同で上奏して勅旨を仰ぎ、欽定を得て実行に移します。これ以後の官制の改 正や財政の整理などといった〔憲法公布に向けた〕準備事項については、ことごとくこれを基準にすることといたします. 資政院および諮議局の権限も、またこの内容を範囲とすることで、計画が明確に定まって秩序正しく行えるようになるこ とを期待するものであります.. もし御裁可を蒙りましたら、ただちに本館より各官庁に送付し、勅命に遵って実行いたします。謹んで上奏いたします,. 宣統二年二月二十九日、勅旨を奉ず..「議するところに従って執り行え」と。これを承った。 ・ユニ九二八年八月二七日(光緒三四年八月一日)に憲政編査館より提出された憲法概要案。②正式の議会開設に先立って設置されるこ とになった各省の諮問議会.一九=九年に第一回開会。③諮議局議員の互選などにより選出された議員で構成された全国の諮問議会.. 清末行政綱目訳註(こ 八
八一 一九一二年に北京で第一回開会。(き奉天・吉林・黒龍江の東北(満洲)三省の総称。⑤日本の裁判所に該当。⑥君主に実権の存在す る政治の在り方、穂積八束の学説より引用(前掲曽田『立憲国家中国への始動』76〜77頁参照三⑦清代に省を単位として設置された 民生.軍政双方を統轄する上級地方官僚。通例で総督は複数省を管轄し、そのドに一省を管轄する巡撫が置かれる、⑤いずれも清朝 中央の中枢機関、当時は明代以来の内閣とともに、軍機大臣に各部尚書らが加わった構成で一九⊃六年一一月九日(光緒二二年九月 二一.一日)に新設された会議政務処がその役割を果たした。 行政綱目総論 謹んで憲法大綱を案じますに、「君主立憲政体では、君主は国家を統治する大権を有し、およそ立法・行政・司法は、 みなその総撹に帰す,その上で議院が立法を協賛し、政府が行政を輔弼し、法院が法律に遵って司法を行う」との言葉が あります.ここで言う政府とは、すなわち君主が大権を行使するために設けた機関の一つであり、決して君主が政府の長 であるわけではありません,いわゆる君主無責任ということであります。ただ君主無責任ということは、必ずや責任を負 う政府があり、また必ずや先に政府の事務分担が明確になされていて、はじめて責任がどこに属するのか認識できるので す。およそ一国の事務は、×きく二つに分けることができます。一つは国家事務、もう一つは皇室事務です。立憲政体で は、必ず先にこの二者を分別規定しなければなりません.これが第一の要義であります、 中国の政治では、古来より宮中と政府を分けてきませんでした。わが清朝では内務府を設けて〔宮中の〕様々な雑務を 行う部局を統率しているものの、司る職掌は僅かに今日の各国の宮内省の一部分に当たるのみであります。このほかに特 に官庁.部局を設けたり、各部や院の管轄に分散している〔皇室〕事務はなお多く、将来は皇室大典とともに別に規定を 設けるべきことであります、 ここに謹んで先に国家行政事務を種類ごとに整理し、条項ごとに分けて細部まで解析し、合計で十二表を作成してそれ
それ説明を付加いたしました。全国行政の綱目が具わったことで、これからは官制の改正、財政の整理、法令の編制は、 全てこれを基準といたします。諮議局・資政院の議事の権限も、また↓定の範囲があるようになりましょう。 ①清朝時代に設置された宮廷事務に関する機関、 国家行政事務類別表 第一 国家行政
司財軍外内
法政政務務
謹んで案じますに、内務.外務.軍政・財政・司法の各分野は、五者のどれか一つが欠けても国家が成り立たなくなり ます.そして国家行政事務は、この五者で包括するに足りるのです。これは行政分類の通義であり、学術理論と実際の双 方に照らして考えても極めて適切で、これ以上の追加もまた削減もできぬものであります, 清末行政綱目訳註二) 八三八四 国家行政事務分部表 第二 内務 外務 軍政
司財
法政
民政部 学部 農工商部 郵伝部 理藩部 外務部 陸軍部 海軍部 度支部 法部 謹んで案じますに、各国の部・省の設置数はそれぞれ差異があるものの、いずれもこの五分類を基準として構成されて おります。五分類の中には、二つに分割できないものがあります。外務・財政・司法がそれで、いずれも分割せずに一つ の部のみを置いており、各国でも分割設置しているところはありません..軍政は海軍と陸軍の区別があり、国によってた だ一つの部のみを設けるか、あるいは二つの部を並設するかは、その国における軍事の重要性の程度を見て決められてお ります。内務行政については、範囲が最も広く、事務も比較的煩雑なことから、各国はおおむね複数の部を設けて分割し て管轄させております、我が国は現在民政部・学部・農工商部・郵伝部・理藩部を設けております。この五部はみな内務行政に属しており、現在の情形にも適合していることから、もとより増減を加える必要はありません.吏部と礼部につい ては、憲法に規定される責任を負わず、国務の系統にも属さないことから、この表には配列いたしません。このほか「簿 備事宜清単」及び官制草案にある弼徳院・軍諮府・行政審判院・審計院などについては、みな特設機関であり、〔ここで 列挙すべき〕責任官制の列にはありません。ただ、その事務は国家行政に属することから、その経費については予算案の 中に盛り込んでおきます。 一q日本の枢密院に該当 ②参謀本部に該当 ③行政裁判所に該当。㊧会計検査院に該当. 清未行政綱目訳註(こ 一八五
註 (1) (2) (3) (4∀ (5) (6) (7)